(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2光学部材の1つの凹面では、前記第1光学部材で前記第2偏光の光に変換された、前記表示部の複数の画素のうち一部の複数の画素からの光が反射される請求項1から10の何れか一項記載の表示装置。
前記第1偏光の光は第1直線偏光の光であり、前記第2偏光の光は第1円偏光の光であり、前記第3偏光の光は第2円偏光の光であり、前記第4偏光の光は第2直線偏光の光である請求項2記載の表示装置。
前記第1円偏光の光は、前記第2円偏光の光と偏光方向が逆であり、前記第1直線偏光の光と前記第2直線偏光の光とは偏光方向が直交している請求項12記載の表示装置。
前記第1円偏光の光は右円偏光の光であり、前記第2円偏光の光は左円偏光の光であり、前記第1直線偏光の光はP偏光の光であり、前記第2直線偏光の光はS偏光の光である請求項13記載の表示装置。
前記表示部の複数の画素からの光のうち第1偏光の光は、前記第1光学部材で前記第2偏光の光に変換されて前記第2光学部材に入射し、前記第1光学部材で変換された前記第2偏光の光は、前記第2光学部材の複数の凹面で反射し前記第1光学部材に入射し、前記第2光学部材の複数の凹面で反射された前記第2偏光の光は、前記第1光学部材で前記第3偏光の光に変換されて反射して前記第2光学部材に入射し、前記第3偏光の光は、前記第2光学部材の複数の凹面を透過する請求項1から16の何れか一項記載の表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を模式的に示す斜視図である。表示装置100は、いわゆるインテグラルフォトグラフィ方式の立体映像表示装置であり、液晶ディスプレイ110と、液晶ディスプレイ110の表示面に対向して設置されたマイクロミラーアレイ120とを備える。液晶ディスプレイ110の表示面には、矩形形状を有する多数の表示画素(ピクセル)111が二次元状に正方配列されている。
【0009】
マイクロミラーアレイ120は、円形形状を有する多数のマイクロミラー121を二次元状に千鳥配列したものである。液晶ディスプレイ110の表示面全体のうち、1つのマイクロミラー121により被覆される範囲には、複数の表示画素111が存在している。
【0010】
なお、
図1ではマイクロミラーアレイ120と液晶ディスプレイ110とを模式的に間隔を空けて図示しているが、実際にはマイクロミラーアレイ120と液晶ディスプレイ110との間隔は非常に少ないか、または存在しない。本実施形態では、マイクロミラーアレイ120は薄いフィルム状に形成され、液晶ディスプレイ110の表示面に貼り合わされる。
【0011】
液晶ディスプレイ110の表示面には、例えばマイクロミラーアレイ120を介して撮影した画像が表示される。液晶ディスプレイ110に表示されたこの画像を、観察者がマイクロミラーアレイ120を介して観察すると、観察者は三次元の立体画像を視認することができる。このような三次元画像の閲覧方式は、インテグラルフォトグラフィ方式として周知である。
【0012】
(マイクロミラーの構成の説明)
図2は、マイクロミラー121の構成を模式的に示す断面図である。マイクロミラーアレイ120は、
図2に示したマイクロミラー121が二次元状に多数配列されたものである。なお、
図2では分かりやすさのために、1つのマイクロミラー121を構成する各部材および液晶ディスプレイ110を互いに分離して図示しているが、実際には各部材は密着して形成される。
【0013】
マイクロミラー121は、液晶ディスプレイ110の表示面側から順に、反射型直線偏光板122と、四分の一波長(1/4λ)板123と、反射鏡124と、を積層することにより形成される。
【0014】
反射型直線偏光板122は、入射光のうちS偏光成分を反射し、P偏光成分を透過させる機能を有する。四分の一波長板123は、反射型直線偏光板122の軸に対して45度の向きに設置される。
【0015】
反射鏡124は、透明基板に凹面を形成した後、凹面を透明基板と同一な屈折率を持つ光学接着剤で充填したものである。凹面(またはその裏側の凸面)にはコレステリック液晶が塗布され、円偏光分離層を形成している。コレステリック液晶による円偏光分離層は、左円偏光を通過させ、右円偏光を右円偏光のまま反射させる。反射鏡124は、その焦点位置に液晶ディスプレイ110の表示面が位置するよう設置される。凹面は右円偏光に対し反射鏡として働くので、凹面の曲率半径Rに対し、その焦点距離fはR/2となる。これに対して、従来の平凸マイクロレンズの場合には、焦点距離fは2Rとなる。つまり、反射鏡124を用いることにより、焦点距離fを従来の1/4の長さにできるということである。
【0016】
以上のように形成されたマイクロミラー121の働きについて説明する。
図2の右側に置かれた液晶ディスプレイ110の表示面から反射型直線偏光板122に対して、P偏光の光10が出射する。P偏光の光10は反射型直線偏光板122を透過して四分の一波長板123に入射する。そして、四分の一波長板123を通過することにより右円偏光11に変化し、反射鏡124の凹面に入射する。前述の通り、凹面は円偏光分離層により、右円偏光11に対し凹面鏡として働く。
【0017】
右円偏光11は反射鏡124の凹面で反射し、再び四分の一波長板123に向かう。右円偏光11は四分の一波長板123を通過することによりS偏光の光12に変化し、反射型直線偏光板122に入射する。反射型直線偏光板122はS偏光の光12を反射させる。反射したS偏光の光12は四分の一波長板123を通過して左円偏光13になり、反射鏡124を透過して観察者に向かう。前述の通り、反射鏡124の凹面には、透明基板と同一な屈折率を持つ光学接着剤が充填されているので、反射鏡124を透過する左円偏光13は凹面による屈折効果を受けない。
【0018】
以上のように、マイクロミラーアレイ120からは、液晶ディスプレイ110の表示面に焦点を持つ光束が、観察者に向けて出射される。
【0019】
上述した第1の実施の形態による表示装置によれば、次の作用効果が得られる。
(1)マイクロミラー121は、四分の一波長板123と、四分の一波長板123の一方の面に対向して配置され、P偏光成分を透過しS偏光成分を反射する反射型直線偏光板122と、四分の一波長板123の他方の面に対向する凹面を有し、凹面に入射した右円偏光成分を反射し左円偏光成分を透過する反射鏡124とを備える。このようにしたので、マイクロミラーアレイ120を用いる表示装置100を薄型化することができる。また、従来のマイクロレンズに比べて、開放絞り値が小さく(明るく)且つ色収差が生じないマイクロミラーを用意することが可能になる。
【0020】
(2)反射鏡124は、凹面を形成した透明基材を有し、凹面には透明基材と同一の屈折率を有する光学接着剤が充填される。このようにしたので、左円偏光成分が、凹面により屈折効果を受けることなく反射鏡124を透過することができる。
【0021】
(3)表示装置100は、マイクロミラー121を二次元状に複数配列したマイクロミラーアレイ120と、表示面が反射鏡124の凹面の裏面に対向するように配置された液晶ディスプレイ110とを備える。このようにしたので、表示装置100を薄型化することができる。
【0022】
(第2の実施の形態)
上述した第1の実施の形態の表示装置には、観察者側からマイクロミラー121に向かって入射する外光によって、液晶ディスプレイ110に表示された映像のコントラストが低下してしまうという問題がある。以下、この問題を解決した、第2の実施の形態に係る表示装置の構成を説明する。
【0023】
図3は、第2の実施の形態に係るマイクロミラーの構成を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明では、第1の実施の形態に係る表示装置との違いについて説明し、第1の実施の形態と同一の部材については第1の実施の形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0024】
マイクロミラー221は、第1の実施の形態に係るマイクロミラー121に、反射鏡124の凸面(円偏光分離層が形成されている凹面の裏面)に対向する四分の一波長板125と、四分の一波長板125を介して反射鏡124の凸面に対向する吸収型直線偏光板126と、を付け加えた構成を有する。四分の一波長板125は、既に説明した四分の一波長板123と同一の構成を有する部材である。吸収型直線偏光板126は、入射光のうちS偏光成分を吸収し、P偏光成分を透過させる機能を有する。
【0025】
図3の右側に置かれた液晶ディスプレイ110の表示面から反射型直線偏光板122に対して、P偏光の光10が出射する。この光10は、第1の実施の形態で説明した経路を辿り、左円偏光13となって反射鏡124を出射する。左円偏光13は四分の一波長板125を通過してP偏光の光14となり、吸収型直線偏光板126を透過して観察者に向かう。
【0026】
次に、観察者側からマイクロミラー221に入射する外光について検討する。吸収型直線偏光板126および四分の一波長板125が存在しない場合(すなわち
図2に示す第1の実施の形態と同様の構成の場合)、
図2の左側から反射鏡124に向かう外光のうち右円偏光成分は、反射鏡124の凸面で反射して観察者側に向かう。つまり、外光が反射鏡124で反射して観察者側に戻されてしまうので、観察対象の映像のコントラストが低下してしまう。
【0027】
他方、本実施形態では、外光のうちS偏光成分は吸収型直線偏光板126により吸収され、P偏光成分のみが吸収型直線偏光板126を透過する。このP偏光成分の光は、四分の一波長板125を通過して右偏光成分の光に変化し、反射鏡124の凸面で反射して再び四分の一波長板125に向かう。この右円偏光成分は四分の一波長板125を通過することによりS偏光成分の光に変化し、吸収型直線偏光板126により吸収される。以上のように、外光は全て吸収型直線偏光板126により吸収される。
【0028】
上述した第2の実施の形態による表示装置によれば、次の作用効果が得られる。
(1)マイクロミラー221は、反射鏡124の凸面に対向して設けられ、P偏光成分を透過しS偏光成分を吸収する吸収型直線偏光板126と、反射鏡124と吸収型直線偏光板126との間に設けられた四分の一波長板125とを備える。このようにしたので、外光による観察像のコントラスト低下を防止することができる。
【0029】
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態に係る表示装置について説明する。なお、以下の説明では、第2の実施の形態に係る表示装置との違いについて説明し、第2の実施の形態と同一の部材については第2の実施の形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
図4(a)は、第3の実施の形態に係るマイクロミラーの構成を模式的に示す断面図である。マイクロミラー321は、第2の実施の形態に係るマイクロミラー221に、反射型直線偏光板122と四分の一波長板123との間に設けられた液晶板127を付け加えた構成を有する。
【0031】
液晶板127は、透明電極を貼り付けた一対の透明基材の間に液晶素子による液晶層を形成したものであり、透明電極への電圧の印加の有無(液晶層への電圧の印加の有無)に応じて液晶素子の配向方向が変化し、入射光がそのまま出射するか、180度の位相差を生じて出射するかを切り替えることができる。例えば、電圧が印加されている場合には、入射光はそのままの状態で液晶板127を通過し、電圧が印加されていない場合には入射光は180度の位相差を生じて出射する。つまり液晶板127は、電圧の印加に応じて、液晶板127の位置に二分の一偏光板を抜き差しするのと同様の効果が得られる部材である。このような部材は、例えばTN型やSTN型の液晶パネルとして周知である。
【0032】
本実施形態の表示装置は、三次元画像の観察に加えて、二次元画像の観察を行うことができる。三次元画像の観察を行いたい場合、表示装置は液晶板127に電圧を印加する。このとき、
図4(a)に示すように、液晶板127に入射した光は入射したときと同じ偏光方向のままで液晶板127から出射するので、マイクロミラー321は、
図3で説明した第2の実施の形態のマイクロミラー221と同様に働く。
【0033】
他方、二次元画像の観察を行いたい場合には、表示装置は液晶板127に電圧を印加しない。このとき、
図4(b)に示すように、液晶ディスプレイ110から出射したP偏光の光10が液晶板127に入射すると、液晶板127の液晶層により180度の位相差が生じ、S偏光の光15に変化する。S偏光の光15は四分の一波長板123を通過することにより左円偏光16に変化して反射鏡124に向かう。左円偏光16は反射鏡124の円偏光分離層を透過して四分の一波長板125を通過し、P偏光の光17に変化する。P偏光の光17は、吸収型直線偏光板126を透過して観察者に向かう。つまり、液晶板127に電圧が印加されない場合には、液晶ディスプレイ110からの光はマイクロミラー321を素通りして観察者に向かう。
【0034】
上述した第3の実施の形態による表示装置によれば、次の作用効果が得られる。
(1)マイクロミラー321は、四分の一波長板123と反射型直線偏光板122との間に配置され、二分の一波長板と略同一の光学特性を有する状態と、入射光の偏光状態を変化させずに透過する状態とを電気的に切替可能な液晶板127を備える。このようにしたので、三次元画像の観察と二次元画像の観察とを電気的に切り替えることができる。
【0035】
(第4の実施の形態)
以下、本発明の第4の実施の形態に係る表示装置について説明する。なお、以下の説明では、第2の実施の形態に係る表示装置との違いについて説明し、第2の実施の形態と同一の部材については第2の実施の形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
図5は、第4の実施の形態に係るマイクロミラーの構成を模式的に示す断面図である。マイクロミラー421は、第2の実施の形態に係るマイクロミラー221と同様に、反射型直線偏光板122と、四分の一波長板123と、反射鏡424と、四分の一波長板125と、吸収型直線偏光板126とを備える。反射鏡424の円偏光分離層は、第2の実施の形態とは逆に、右円偏光成分を透過し左円偏光成分を反射するように構成される。
【0037】
マイクロミラー421を構成する各部材の配置は、第2の実施の形態とは異なる。具体的には、液晶ディスプレイ110の表示面から順に、四分の一波長板125、反射鏡424、四分の一波長板123、反射型直線偏光板122、吸収型直線偏光板126の順で各部材が配置されている。また、反射鏡424は、凹面が液晶ディスプレイ110に対して凸になるように配置されている。つまり、反射鏡424は観察者の方向を向いて配置されている。なお、反射鏡424は、その焦点位置と光学的に等価な位置に液晶ディスプレイ110の表示面が位置するように配置される。
【0038】
以下、
図5を参照して、本実施の形態におけるマイクロミラー421の働きを説明する。
図5の右側に置かれた液晶ディスプレイ110の表示面から四分の一波長板125に対して、P偏光の光10が出射する。P偏光の光10は四分の一波長板125を通過することにより右円偏光20に変化する。右円偏光20は反射鏡424の凸面を通過して四分の一波長板123に向かう。前述の通り、反射鏡424の凹面には、透明基板と同一な屈折率を持つ光学接着剤が充填されているので、反射鏡424を透過する右円偏光20は凹面による屈折効果を受けない。
【0039】
右円偏光20は四分の一波長板123を通過することによりS偏光の光21に変化する。S偏光の光21は反射型直線偏光板122に向かい、反射型直線偏光板122により反射されて再び四分の一波長板123に向かう。そして、四分の一波長板123を通過することにより左円偏光22に変化する。
【0040】
この左円偏光22は反射鏡424の凹面に向かう。前述の通り、凹面は円偏光分離層により、左円偏光22に対し凹面鏡として働く。左円偏光22は凹面で反射し、四分の一波長板123を通過してP偏光の光23に変化する。P偏光の光23は再び反射型直線偏光板122に向かい、反射型直線偏光板122および吸収型直線偏光板126を透過して観察者に向かう。以上のように、マイクロミラー421からは、液晶ディスプレイ110の表示面に焦点を持つ光束が、観察者に向けて出射される。
【0041】
なお、吸収型直線偏光板126は、第2の実施の形態と同様に、観察者側からマイクロミラー421に向かって入射する外光が観察者側に反射しないように設けられている。吸収型直線偏光板126が存在しない場合、マイクロミラー421に入射した外光のS円偏光成分は、反射型直線偏光板122によって観察者に向けて反射されてしまう。本実施形態では吸収型直線偏光板126により、外光のうち観察者側へ反射されてしまうS偏光成分を吸収しているので、外光によるコントラスト低下が発生しない。
【0042】
なお、第3の実施の形態で説明した液晶板127を反射型直線偏光板122と四分の一波長板123との間に設けることで、第3の実施の形態と同様に、三次元画像の観察と二次元画像の観察とを切り替えることができる。
【0043】
上述した第4の実施の形態による表示装置によれば、次の作用効果が得られる。
(1)反射鏡424の凹面は、観察者側を向いている。このようにしたので、反射鏡424の凹面に形成された円偏光分離層が左円偏光成分を完全に反射しきれない場合(つまり左円偏光成分の一部が反射鏡424を透過してしまう場合)であっても、反射鏡424を意図せず透過してしまった光は液晶ディスプレイ110の表示面に吸収され、観察者側に向かうことがない。
【0044】
(第5の実施の形態)
以下、本発明の第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態は、上記の実施の形態で説明をした表示装置の構成を近接眼観察システムであるヘッドマウントディスプレイシステム(ヘッドマウント表示装置)に応用した例を示す。
【0045】
図6は、凸レンズ501を使用した簡単な近接眼観察システムを示す。この図を使用して、近接眼観察システムであるヘッドマウントディスプレイシステムに凸レンズ501を使用した場合の問題点について説明をする。
図6のヘッドマウントディスプレイシステムは、ルーペで2次元表示素子510を観察する方式である。たいていのヘッドマウントディスプレイシステムは、このタイプから一部光路を延長して表記を別のところに設けたり、レンズを複数枚入れたりする部分的な改良をおこなっているだけであって、本質的にこのシステムと変わりない。
【0046】
このシステムの問題点は、装置を小型化しようとするにはfを小さくするほかないが、そうするとレンズの口径が制限される。具体的には、焦点距離fのレンズを実現するには曲率がf/2のレンズが必要で、この場合口径はfより大きくなり得ない(fで半球)、また、口径をこの限界に近づくくらい大きくするとディストーションも大きくなり、実用に耐えなくなる。レンズの枚数を増やす選択肢もあるが、これは当然、装置の厚さを増やして、最初の焦点距離での小型化の方向性を阻害する。
【0047】
例えば、焦点距離fを20mmとすると、レンズの曲率rは10mmとなり、半球レンズならレンズ厚は(周辺―中心)は10mmとなる。
【0048】
そこで、上記の実施の形態で説明をした表示装置の構成を採用した偏光折り返し光学系をヘッドマウントディスプレイシステムに導入する。
図7は、偏光折り返し光学系521をヘッドマウントディスプレイシステムに応用した例を示す。図では、説明の便宜上、ヘッドマウントディスプレイシステム500として、眼球502に近接して配置される偏光折り返し光学系521および2次元表示素子510のみを記載し、その他の構成は省略している。
【0049】
本実施の形態の偏光折り返し光学系521は、第4の実施の形態のマイクロミラー421に第3の実施の形態の液晶板127を設けた構成に類似する。ただし、第4の実施の形態のマイクロミラー421は二次元状に多数配列しマイクロミラーアレイ120を構成するが、本第5の実施の形態の偏光折り返し光学系521は、1つの眼球502および1台の2次元表示素子510に対応して1つの偏光折り返し光学系521が設けられ、ヘッドマウントディスプレイ500を構成する。すなわち、偏光折り返し光学系521は、
図7からも分かるように、1つの眼球502に対応する大きさであって、第4の実施の形態のマイクロミラー421の1つの大きさよりかなり大きな光学系となる。
【0050】
偏光折り返し光学系521は、2次元表示素子510の表示面から順に、四分の一波長板525、反射鏡524、液晶板527、四分の一波長板523、反射型直線偏光板522が配置されている。2次元表示素子510は第4の実施の形態の液晶ディスプレイ110に対応し、四分の一波長板525は第4の実施の形態の四分の一波長板125に対応し、反射鏡524は第4の実施の形態の反射鏡424に対応し、液晶板527は第3の実施の形態の液晶板127に対応し、四分の一波長板523は第4の実施の形態の四分の一波長板123に対応し、反射型直線偏光板522は第4の実施の形態の反射型直線偏光板122に対応する。
【0051】
反射鏡524の円偏光分離層は、コレステリック液晶により形成され、第4の実施の形態と同様に、右円偏光成分を透過し左円偏光成分を反射するように構成されている。また、反射鏡524は、第4の実施の形態と同様に、凹面が2次元表示素子510に対して凸になるように配置されている。つまり、反射鏡524は観察者の方向を向いて配置されている。なお、反射鏡524は、その焦点位置と光学的に等価な位置に2次元表示素子510の表示面が位置するように配置される。
【0052】
以下、本実施の形態における偏光折り返し光学系521の働きを説明する。
図7の右側に置かれた2次元表示素子510の表示面から四分の一波長板525に対して、P偏光の光が出射する。P偏光の光は四分の一波長板525を通過することにより右円偏光に変化する。右円偏光は反射鏡524の凸面を通過して液晶板527に向かう。第4の実施の形態と同様に、反射鏡524の凹面には、透明基板と同一な屈折率を持つ光学接着剤が充填されているので、反射鏡524を透過する右円偏光は凹面による屈折効果を受けない。
【0053】
液晶板527は、第3の実施の形態の液晶板127と同様な液晶板であり、透明電極への電圧の印加の有無(液晶層への電圧の印加の有無)に応じて液晶素子の配向方向が変化し、入射光がそのまま出射するか、180度の位相差を生じて出射するかを切り替えることができる。これにより、例えば、電圧が印加されている場合(オン)には、入射光はそのままの状態で液晶板527を通過し、電圧が印加されていない場合(オフ)には入射光は180度の位相差を生じて出射する。本実施の形態の偏光折り返し光学系521は、この液晶板527により、2次元表示素子510の像を拡大するかシースルーして拡大しないかを切り換えることができる。なお、液晶板527への電圧を印加するかしないかの制御(オンオフ制御)は制御装置528により行う。
【0054】
拡大画像の観察を行いたい場合、液晶板527に電圧を印加する。反射鏡524を通過した右円偏光は液晶板527に入射し、液晶板527に入射した光は入射したときと同じ偏光方向のまま、すなわち右円偏光のままで液晶板527から出射する。右円偏光は、四分の一波長板523を通過してS偏光の光に変化する。S偏光の光は反射型直線偏光板522に向かい、反射型直線偏光板522により反射されて再び四分の一波長板523に向かう。そして、四分の一波長板523を通過することにより左円偏光に変化する。
【0055】
この左円偏光は反射鏡524の凹面に向かう。前述の通り、凹面は円偏光分離層により、左円偏光に対し凹面鏡として働く。左円偏光は凹面で反射し、液晶板527をそのまま透過し四分の一波長板523に向かい、四分の一波長板523を通過してP偏光の光に変化する。P偏光の光は再び反射型直線偏光板522に向かい、反射型直線偏光板522を透過して観察者に向かう。以上のように、偏光折り返し光学系521からは、2次元表示素子510の表示面に焦点を持つ光束が、観察者に向けて出射される。
【0056】
他方、シースルーで拡大しない画像の観察を行いたい場合には、液晶板527に電圧を印加しない。このとき、反射鏡524を透過する右円偏光が液晶板527に入射すると、液晶板127の液晶層により180度の位相差が生じ、右円偏光に変化し四分の一波長板523に向かう。右円偏光の光は四分の一波長板523を通過することによりP偏光の光17に変化する。P偏光の光は反射型直線偏光板522を透過して観察者に向かう。つまり、液晶板527に電圧が印加されない場合には、2次元表示素子510からの光は偏光折り返し光学系521を素通りして観察者に向かう。
【0057】
本実施の形態の偏光折り返し光学系521では、パワーは凹面鏡で発するので同じ焦点距離に対して曲率は4倍つまり、r=2fとなる。同口径だと厚さは2.4mmとなる。さらに凹面から表示面までの距離は、表示素子(510)→1/4λ(525)→凹面鏡(通過)(524)→液晶(通過往路)→1/4λ(523)→偏光反射板(522)→1/4λ(523)→TN液晶(復路)(527)→凹面鏡(反射)(524)の経路をとるので凹面鏡の厚さと液晶板を2度通り、この空間を往復で利用することができるために、ほほ半減することができる。
【0058】
これから、中心厚を薄くして、必要であった焦点距離だけのスペースを半減することで全体の幅を半分程度にすることができる。この効果を口径の方向につかって、口径を大きくしてもよい、口径を大きくすると眼の位置の許容量が大きくなり、非常に見やすいあるいはpd(瞳孔間距離)の調整を不要にする。
【0059】
一方、液晶板527で偏光面を回転すると、表示素子(510)→1/4λ(525)→凹面鏡(通過)(524)→TN液晶(通過往路)(527)→1/4λ(523)→偏光反射板(通過)(522)となり、この系は屈折力を有さない。これは制御装置528により動的に切り替えることが可能であるから、一定のデューティで切り替えをおこなえば、シースルーのディスプレイとなる。
【0060】
上述した第5の実施の形態によるヘッドマウントディスプレイシステムによれば、次のような作用効果が得られる。
(1)光学系を上記のような偏光折り返し光学系521としたので、ヘッドマウントディスプレイシステムの光学系として、薄型化され、開放絞り値が小さく(明るく)、かつ、色収差が生じない光学系を使用することが可能になる。
【0061】
(2)また、このような偏光折り返し光学系521をヘッドマウントディスプレイシステムに使用することにより、ヘッドマウントディスプレイシステムの表示部を、薄型化し、開放絞り値を小さく(明るく)し、かつ、色収差がない像の観察が可能になる。
【0062】
(3)さらに、2次元表示素子510の画像を拡大して観察するか、拡大せずシースルーで観察するかを液晶板527のオンオフにより電気的に切り替えることができる。
【0063】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0064】
(変形例1)
上述した各実施の形態において、P偏光成分とS偏光成分との透過・反射(吸収)の関係は変更可能である。例えば
図2において、反射型直線偏光板122がS偏光成分を透過しP偏光成分を反射するようにしてもよい。この場合、反射鏡124に形成された円偏光分離層は、右円偏光成分を透過し左円偏光成分を反射するように形成すればよい。また、吸収型直線偏光板126はS偏光成分を透過しP偏光成分を吸収するようにし、液晶ディスプレイ110からはP偏光成分の光でなくS偏光成分の光を出射させればよい。
【0065】
(変形例2)
マイクロミラーアレイにおける複数のマイクロミラーの配列は、上述した各実施の形態のような千鳥配列に限定されない。例えば複数のマイクロミラーを正方配列したマイクロミラーアレイに本発明を適用してもよい。
【0066】
(変形例3)
レンチキュラー方式により立体画像を観察する表示装置に本発明を適用することも可能である。この場合、細長い形状(短冊状)のレンチキュラーレンズを、上述した各実施の形態におけるマイクロミラーのように形成し、一次元状に配列することになる。
【0067】
(変形例4)
上述した各実施の形態では、三次元画像を観察可能な表示装置に本発明を適用した例について説明したが、本発明はそのような実施の形態に限定されない。例えば、撮像装置や光学系の収差測定装置に本発明を適用することも可能である。この場合、液晶ディスプレイ110の代わりに、CCDやCMOS等の撮像素子を、撮像面の位置が反射鏡124の焦点位置と合致するように設置すればよい。その他、従来は複数のマイクロレンズを利用していた種々の装置に、本発明の光学部材(マイクロミラー)を適用することが可能である。
【0068】
(変形例5)
第5の実施の形態では、偏光折り返し光学系521をヘッドマウントディスプレイに使用する例を説明したが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。偏光折り返し光学系521のような光学系を、観察対象を拡大して観察する種々の場合に応用することができる。また、変形例4と同様に、撮像装置や光学系の収差測定装置などに本発明を適用することも可能である。この場合、2次元表示素子510の代わりに、CCDやCMOS等の撮像素子を、撮像面の位置が反射鏡524の焦点位置と合致するように設置すればよい。
【0069】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0070】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2013年第34585号(2013年2月25日出願)