特許第6351447号(P6351447)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351447
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】半導体製造装置および半導体製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20180625BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20180625BHJP
   C30B 25/14 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   H01L21/205
   C23C16/44 J
   C30B25/14
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-179387(P2014-179387)
(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公開番号】特開2016-54217(P2016-54217A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100174540
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 廣美
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【弁理士】
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 序章
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−035855(JP,A)
【文献】 特開2007−197302(JP,A)
【文献】 特開平06−188199(JP,A)
【文献】 特開平02−058325(JP,A)
【文献】 特開2004−281955(JP,A)
【文献】 特開2003−027242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205、21/31、21/365、21/469、
21/86、
C23C 16/00−16/56、
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、
前記処理容器内の空間の少なくとも一部を、成長部とクリーニング部とに区分する隔壁と、
前記成長部内に配置された基板保持部材と、
前記成長部内に原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記クリーニング部内にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給系と、
前記成長部および前記クリーニング部を加熱するヒータと
を有し、
ガス流方向の位置に関して、前記原料ガス供給系の下流側の端、および、前記クリーニングガス供給系の下流側の端が、前記隔壁の上流側の端と一致しているかそれよりも下流側に配置されている半導体製造装置。
【請求項2】
処理容器と、
前記処理容器内の空間の少なくとも一部を、成長部とクリーニング部とに区分する隔壁と、
前記成長部内に配置された基板保持部材と、
前記成長部内に原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記クリーニング部内にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給系と、
前記成長部および前記クリーニング部を加熱するヒータと
を有し、
前記隔壁は、前記処理容器内に、前記成長部側に露出する面と前記クリーニング部側に露出する面とを反転させることができるように設置されている半導体製造装置。
【請求項3】
前記原料ガス供給系は、塩素系ガスを用いて塩化物原料ガスを生成させる塩化物原料ガス生成部を有し、
前記クリーニングガス供給系は、前記塩化物原料ガス生成部で用いられる塩素系ガスの供給源に共通に接続されている請求項1または2に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
処理容器と、
前記処理容器内の空間の少なくとも一部を、成長部とクリーニング部とに区分する隔壁と、
前記成長部内に配置された基板保持部材と、
前記成長部内に原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記クリーニング部内にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給系と、
前記成長部および前記クリーニング部を加熱するヒータと
を有し、
ガス流方向の位置に関して、前記原料ガス供給系の下流側の端、および、前記クリーニングガス供給系の下流側の端が、前記隔壁の上流側の端と一致しているかそれよりも下流側に配置されている半導体製造装置
を用いる半導体製造方法であって、
前記ヒータで前記成長部および前記クリーニング部が加熱された状態で、前記成長部内に配置された前記基板保持部材に保持された基板に対し、前記原料ガス供給系から原料ガスを供給して、前記基板上に半導体を成長させると同時に、前記クリーニング部内に配置された被クリーニング物に対し、前記クリーニングガス供給系からクリーニングガスを供給して、前記被クリーニング物に堆積した半導体を除去する工程
を有する半導体製造方法。
【請求項5】
処理容器と、
前記処理容器内の空間の少なくとも一部を、成長部とクリーニング部とに区分する隔壁と、
前記成長部内に配置された基板保持部材と、
前記成長部内に原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記クリーニング部内にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給系と、
前記成長部および前記クリーニング部を加熱するヒータと
を有し、
前記隔壁は、前記処理容器内に、前記成長部側に露出する面と前記クリーニング部側に露出する面とを反転させることができるように設置されている半導体製造装置
を用いる半導体製造方法であって、
前記ヒータで前記成長部および前記クリーニング部が加熱された状態で、前記成長部内に配置された前記基板保持部材に保持された基板に対し、前記原料ガス供給系から原料ガスを供給して、前記基板上に半導体を成長させると同時に、前記クリーニング部内に配置された被クリーニング物に対し、前記クリーニングガス供給系からクリーニングガスを供給して、前記被クリーニング物に堆積した半導体を除去する工程
を有し、
基板と被クリーニング物を取り換えながら前記工程を複数回行い、
ある回の前記工程で使用した前記隔壁を、前記成長部側に露出していた面と前記クリーニング部側に露出していた面とを反転させて、その次回の前記工程で使用する、半導体製造方法。
【請求項6】
基板と被クリーニング物を取り換えながら前記工程を複数回行う半導体製造方法であって、
前記処理容器内の半導体が堆積する位置に配置される部材として、同種の部材が着脱可能に複数用意されており、これらのうち、ある回の前記工程で使用済みとなって半導体が堆積した前記部材を、使用済みとなった回以降に行われる前記工程での被クリーニング物とし、クリーニング済みとなった前記部材を、クリーニング済みとなった回以降に行われる前記工程で再使用する、請求項4または5に記載の半導体製造方法。
【請求項7】
前記工程では、前記原料ガスに含まれる塩化物原料ガスを、塩素系ガスを用いて生成させ、前記塩化物原料ガスを生成させるために用いる塩素系ガスと同種の塩素系ガスを、前記クリーニングガスとして用いる請求項4〜6のいずれか1項に記載の半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置および半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
砒化ガリウム(GaAs)、燐化ガリウム(GaP)、窒化ガリウム(GaN)等のGa系化合物半導体を高速で結晶成長する方法として、いわゆるハイドライド気相成長(HVPE)法が知られている(例えば特許文献1参照)。HVPE法では、成長装置内に置かれた高温(300℃〜800℃程度)の金属Gaに、塩化水素(HCl)ガスあるいは塩素(Cl)ガス等の塩素系ガスを接触させて作り出されるGaClガスあるいはGaClガスを、III族原料ガスとして用いる。
【0003】
HVPE法は、成長速度が数100μm/h〜数mm/hに達するため、基板上への厚膜成長や自立基板の製造に用いられている。HVPE法の欠点としては、成長厚が有機金属気相成長(MOVPE)法の数μmと比較して数100μm/h〜数mm/hと格段に厚いため、ノズルや基板トレーなどにも厚く半導体が堆積し、これが次回以降の成長で蒸発、飛散し、表面欠陥の原因となりやすい点が挙げられる。
【0004】
このため、通常は、成長後に基板を装置から取り出した後に、基板をセットせずに装置を再度高温状態にし、炉内を塩素系ガスでエッチングすることで、装置内に堆積した半導体を除去するクリーニング、いわゆるベーキングが行われる。このベーキング工程は、成長装置を長時間使用するため、HVPE法を用いた製造において生産性を低下させる原因となっている。
【0005】
成長後に半導体の堆積した治具を取り外し、成長装置とは別のベーキング専用装置を用いてクリーニングすることで、HVPE装置自体の生産性を高めるという方法もあるが、この場合には、ベーキング装置の導入、稼働、維持管理のため、費用および人手が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−58741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、部材に堆積した堆積物を除去するクリーニングを効率的に行うことができる半導体製造技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、
処理容器と、
前記処理容器内の空間の少なくとも一部を、成長部とクリーニング部とに区分する隔壁と、
前記成長部内に配置された基板保持部材と、
前記成長部内に原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記クリーニング部内にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給系と、
前記成長部および前記クリーニング部を加熱するヒータと
を有する半導体製造装置
が提供される。
【0009】
本発明の他の観点によれば、
処理容器と、
前記処理容器内の空間の少なくとも一部を、成長部とクリーニング部とに区分する隔壁と、
前記成長部内に配置された基板保持部材と、
前記成長部内に原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記クリーニング部内にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給系と、
前記成長部および前記クリーニング部を加熱するヒータと
を有する半導体製造装置を用いる半導体製造方法であって、
前記ヒータで前記成長部および前記クリーニング部が加熱された状態で、前記成長部内に配置された前記基板保持部材に保持された基板に対し、前記原料ガス供給系から原料ガスを供給して、前記基板上に半導体を成長させると同時に、前記クリーニング部内に配置された被クリーニング物に対し、前記クリーニングガス供給系からクリーニングガスを供給して、前記被クリーニング物に堆積した半導体を除去する工程
を有する半導体製造方法
が提供される。
【発明の効果】
【0010】
隔壁が処理容器内を成長部とクリーニング部とに区分していることにより、成長部内に供給される原料ガスの流れと、クリーニング部内に供給されるクリーニングガスの流れとを分離することができ、成長部における成膜処理と、クリーニング部におけるクリーニング処理とを、同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)は、本発明の実施形態による半導体製造装置の縦断面図である。図1(B)は、図1(A)のAA線に沿った横断面図である。図1(C)は、基板を保持するホルダーの構造例を示す断面図(縦断面図)である。
図2図2は、実施形態による半導体製造方法における成膜およびクリーニング処理の基本的な手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態による半導体製造装置および半導体製造方法について説明する。
【0013】
(1)半導体製造装置
まず、図1(A)〜図1(C)を参照して、実施形態による半導体製造装置について説明する。図1(A)は、実施形態による半導体製造装置の縦断面図である。図1(B)は、図1(A)のAA線に沿った横断面図である。図1(C)は、基板を保持するホルダーの構造例を示す断面図(縦断面図)である。
【0014】
本実施形態の半導体製造装置は、以下に説明するように、ハイドライド気相成長(HVPE)法により基板上への半導体の結晶成長処理(成膜処理)を行うと同時に、被クリーニング物から半導体の堆積物を除去するクリーニング処理を行うことができるように構成されている。なお、煩雑さを避けるため、「半導体の堆積物を除去するクリーニング」について「半導体の堆積物のクリーニング」のように表現することもある。除去対象となる「半導体の堆積物」を、単に「堆積物」と呼ぶことや、単に「半導体」と呼ぶこともある。
【0015】
本実施形態では、成長およびクリーニング対象の半導体として、III−V族化合物半導体である砒化ガリウム(GaAs)、燐化ガリウム(GaP)、窒化ガリウム(GaN)等のGa系化合物半導体(Ga含有化合物半導体)を例示する。より具体的には、GaNを例として説明を進める。
【0016】
(反応炉)
実施形態による半導体製造装置であるHVPE装置1は、処理容器として、石英ガラス等の耐熱性材料によって例えば円筒状に形成された反応炉10を備える。反応炉10は、ステンレス等の金属材料で形成されたフランジ11a,11bによって、その両端縁が閉塞されている。フランジ11a,11bは、反応炉10に対して、必要に応じて着脱し得るように装着されている。フランジ11a,11bが着脱し得ることによって、反応炉10の端縁における開口部分が開閉自在となる。
【0017】
反応炉10内には、後に詳述するように、反応炉10の一端側から他端側(図1(A)に示す例ではフランジ11a側からフランジ11b側)に向かうガス流が形成される。以下、ガス流の上流側、下流側を、それぞれ、単に上流側、下流側と呼ぶこともある。
【0018】
反応炉10の内部は、上流側の空間である上流部12と、上流部12に対し下流側の空間である下流部13とに区分されている。上流部12は、後述のガス供給系が配置される空間であるガス供給部12として構成されている。
【0019】
下流部13は、反応炉10内に設けられた隔壁40を挟んで、ガス流方向と交差する方向に、より具体的には例えば上下方向に区分されている。下流部分13の隔壁40に対し一方側、より具体的には例えば上方側が、基板30上への成膜を行う空間である成長部13aとして構成されており、下流部分13の隔壁40に対し他方側、より具体的には例えば下方側が、被クリーニング物50から堆積物を除去するクリーニング(いわゆるベーキング)を行う空間であるクリーニング部(ベーキング部)13bとして構成されている。
【0020】
ガス流方向の位置に関し、上流部12と下流部13との境界は、隔壁40の上流側の端40aで画定され、隔壁40の上流端40aに対し、上流側の空間が上流部12、下流側の空間が下流部13となっている。なお、上流部12と下流部13との間は、構造物で仕切られている必要はない。
【0021】
(ヒータ)
反応炉10の外周側には、反応炉10内を加熱するためのヒータ14が設けられている。ヒータ14は、上流部(ガス供給部)12の周囲に配置された上流側ヒータ14aと、下流部13(成長部13aおよびクリーニング部13b)の周囲に配置された下流側ヒータ14bとを有する。上流側ヒータ14aと、下流側ヒータ14bとは、それぞれ、ガス供給部12と、成長部13aおよびクリーニング部13bとを、独立な温度に(例えば、ガス供給部12を850℃程度、成長部13aおよびクリーニング部13bを1000℃程度に)加熱し得るように構成されている。
【0022】
(ガス供給部)
ガス供給部12内には、石英ガラス等の耐熱性材料によって形成され、金属原料20を収容する格納容器21が配置されている。格納容器21は、後述する配管22,23を除き、ガス漏れ等が生じない密閉容器として構成されており、その密閉容器内に金属原料20を収容する構造となっている。
【0023】
格納容器21が収容する金属原料20は、基板30に対して供給されるIII族原料ガスの基になるIII族原料として用いられる。具体的には、金属原料20として、例えばガリウム(Ga)が用いられる。なお、Gaは、融点が29.8℃と比較的低いため、格納容器21内においては、溶融された状態(すなわち液体状)で存在することになる。
【0024】
格納容器21の上流側に、石英ガラス等の耐熱性材料によって形成された配管22が接続されている。配管22の上流側端部が、フランジ11aを貫通して反応炉10の外部に連通し、塩素系ガス(塩素含有ガス)の供給源に接続されている。配管22に供給される塩素系ガスとしては、例えば塩化水素(HCl)ガスを用いることができる。配管22の下流側端部が、格納容器21に接続されている。配管22を介して、塩素系ガスを、格納容器21内に供給することができる。
【0025】
例えば、金属原料20としてGaを用い、塩素系ガスとしてHClガスを用いる場合、格納容器21内では、上流側ヒータ14aによる適度な加熱条件下で、GaとHClガスとが反応し、III族原料ガスとして、金属塩化物ガス(塩化物原料ガス)である塩化ガリウム(GaCl)ガスが生成される。格納容器21と配管22とを含んで、塩化物原料ガス生成部が構成される。配管22に供給される塩素系ガスを、原料用塩素系ガスと呼ぶこともある。
【0026】
格納容器21の下流側に、石英ガラス等の耐熱性材料によって形成された配管23が接続されている。配管23の上流側端部が、格納容器21に接続されている。配管23は、成長部13aに向かって下流側に延在している。配管23を介して、格納容器21内で生成されたIII族原料ガス(塩化物原料ガス)を、成長部13a内に供給することができる。
【0027】
ガス供給部12内には、また、配管22,23と並行するように、石英ガラス等の耐熱性材料によって形成された配管24が配置されている。配管24の上流側端部が、フランジ11aを貫通して反応炉10の外部に連通し、V族原料ガスの供給源に接続されている。V族原料ガスとしては、例えばアンモニア(NH)ガスを用いることができる。配管24は、成長部13aに向かって下流側に延在している。配管24を介して、V族原料ガスを、成長部13a内に供給することができる。
【0028】
III族原料ガスおよびV族原料ガスが、半導体を成長させる原料ガスとなる。格納容器21および配管22,23を含んで、III族原料ガス供給系が構成される。配管24を含んで、V族原料ガス供給系が構成される。III族原料ガス供給系とV族原料ガス供給系とを含んで、原料ガス供給系が構成される。塩化物原料ガス生成部は、III族原料ガス供給系に含まれ、原料ガス供給系に含まれる。
【0029】
ガス供給部12内には、さらに、配管22,23および配管24と並行するように、石英ガラス等の耐熱性材料によって形成された配管25が配置されている。配管25の上流側端部が、フランジ11aを貫通して反応炉10の外部に連通し、塩素系ガスの供給源に接続されている。配管25に供給される塩素系ガスとしては、例えば、配管22に供給される原料用塩素系ガスと同種のガス、例えばHClガスを用いることができる。配管25は、クリーニング部13bに向かって下流側に延在している。配管25を介して、クリーニングガスとしての塩素系ガスを、クリーニング部13b内に供給することができる。配管25に供給される塩素系ガスを、クリーニング用塩素系ガスと呼ぶこともある。
【0030】
配管25を含んで、クリーニングガス供給系が構成される。原料ガス供給系とクリーニングガス供給系とを含んで、ガス供給系が構成される。
【0031】
HVPE装置1で用いられる各種のガスのガス供給源を、まとめて、概略的にガス供給源60として示す。クリーニング用塩素系ガスとして、原料用塩素系ガスと同種のガスを用いる場合は、配管22が接続される塩素系ガスの供給源に、配管25も共通に接続される。つまり、クリーニングガス供給系は、塩化物原料ガス生成部で用いられる塩素系ガスの供給源に共通に接続される。
【0032】
ガス供給系の配管22〜25を備えることによって、反応炉10内には、ガス供給部12側から成長部13aまたはクリーニング部13b側に向かうガス流(フランジ11a側からフランジ11b側に向かうガス流)が形成されることになる。なお、下流側のフランジ11bには、反応炉10内のガスを排気するための排気口が設けられている。フランジ11bに設けられた排気口からの排気により、フランジ11a側からフランジ11b側へのガス流の形成を確実なものとすることができる。
【0033】
(成長部)
成長部13a内には、基板保持部材として、カーボン等の耐熱性材料によって形成されたホルダー31が配置されている。成膜の下地となる基板30が、ホルダー31に保持される。ホルダー31は、反応炉10の円筒軸方向に沿って延びる回転軸32に着脱可能に取り付けられ、回転軸32を中心にして所定速度で回転させ得るように、基板30を保持する。
【0034】
基板30としては、例えばサファイア基板が用いられる。なお、基板30は、成膜の下地層として、表面に何らかの層(例えばAlNバッファ層やGaNバッファ層)が既に形成されているものであってもよい。
【0035】
図1(A)に、基板30を保持した状態のホルダー31を概略的に示す。図1(C)に、基板30を保持した状態のホルダー31のより具体的な構造例を示す。ホルダー31は、回転軸32への取り付け部311と、基板30を収容するトレー部312と、基板押さえ部313とを含んで構成される。取り付け部311の取り付け構造としては、例えば、回転軸32の端部に取り付け部311を差し込むような構造が挙げられる。
【0036】
トレー部312に基板30が収容された状態で、トレー部312の縁上に、ドーナツ板状の基板押さえ部313を取り付けて、基板30の縁部を押さえ込むことにより、ホルダー31に基板30を保持することができる。ホルダー31に基板30が保持された状態で、基板押さえ部313の開口内に露出した基板30の表面上に、成膜を行うことができる。成膜後は、基板押さえ部313を取り外すことで、ホルダー31から基板30を取り外すことができる。
【0037】
回転軸32は、フランジ11bを貫通するように、フランジ11bに取り付けられている。これにより、回転軸32、回転軸32に取り付けられたホルダー31、および、ホルダー31に保持された基板30を、フランジ11bの着脱に伴って、反応炉10内に設置したり反応炉10内から取り出したりすることが可能となる。つまり、反応炉10のフランジ11b側の端縁の開口部分が、基板30等の搬出入口として機能する。そして、フランジ11bを反応炉10から取り外した状態で、回転軸32に対しホルダー31を着脱したり、ホルダー31に対し基板30を着脱したりすることが可能となる。
【0038】
ホルダー31に保持された基板30に対し、原料ガスが供給されるよう、基板30と対向する位置に、原料ガス供給系の配管23,24の先端部(ノズル)23a,24aが配置されている。ノズル23a,24aは、それぞれ、配管23,24の本体部分に対し着脱可能に取り付けられている。ノズル23a,24aは、石英ガラス等の耐熱性材料によって形成されている。ノズル23a,24aは、それぞれ、配管23,24の本体部分と同一の耐熱性材料で形成されていることが、熱膨張率を同等として損傷を防止する観点から好ましい。
【0039】
原料ガス供給系から原料ガスを供給することで、基板30上への半導体の成長が行われる。これに伴い、基板30近傍に配置されている部材であるホルダー31やノズル23a,24a等の表面に、半導体が堆積することになる。
【0040】
反応炉10内に配置された部材に堆積した半導体は、次回以降の成膜処理時に、蒸発、飛散し、基板30上に成長させる膜における欠陥の原因となる。このため、半導体が堆積した部材に対し、堆積物を除去するクリーニング(ベーキング)を行うことが必要となる。
【0041】
本実施形態によるHVPE装置1では、ホルダー31や、原料ガス供給系のノズル23a,24a等、反応炉10内の半導体が堆積する位置に配置され、適宜クリーニングを行うことが望ましい部材(被クリーニング物50となる部材)は、取り換えが可能なように、反応炉10内に着脱可能な態様で、同種のものが複数用意されている。これにより、後述のように、同種の部材で清浄なもの(クリーニング済みのもの)は成膜処理に使用し、クリーニングを要するもの(使用済みのもの)は成膜処理と同時にクリーニング処理する、という運用が可能になっている。
【0042】
(クリーニング部)
クリーニング部13bには、被クリーニング物50を設置するための領域が確保されている。より具体的には、例えば、クリーニング部13bの反応炉10の底面上に、被クリーニング物50を載置することができる。
【0043】
クリーニング部13bに設置された被クリーニング物50に対し、クリーニングガスが供給されるよう、被クリーニング物50と対向する位置に、クリーニングガス供給系の配管25の先端部(ノズル)25aが配置されている。
【0044】
被クリーニング物50は、例えば、本HVPE装置1に取り付けられるホルダー31やノズル23a,24a等であって、前回以前の成膜処理に使用されることで半導体が堆積したものである。図1(A)および図1(B)では、被クリーニング物50として、ホルダー31を例示している。
【0045】
なお、被クリーニング物50の設置態様としては、反応炉10の底面上に直接載置する態様に限らず、例えば、クリーニングガスが適切に当たる位置に被クリーニング物50を保持できるような保持具を用いた設置態様としてもよい。
【0046】
(隔壁)
隔壁40は、カーボン等の耐熱性材料によって例えば板状に形成され、反応炉10内の空間の少なくとも一部を成長部13aとクリーニング部13bとに区分する。隔壁40は、反応炉10内に、成長部13a側に露出する面とクリーニング部13b側に露出する面とを反転させる(裏返す)ことができるように着脱可能に設置されている。
【0047】
例えば、反応炉10の内壁に設けられた突起部10a上に隔壁40を載せることで、隔壁40を、反応炉10内に、面を裏返すことができるよう着脱可能に設置することができる。
【0048】
原料ガス供給系から成長部13aに向かって供給される原料ガスの流れと、原料ガスの流れと並行してクリーニングガス供給系からクリーニング部13bに向かって供給されるクリーニングガスの流れとの間に、隔壁40が配置されることにより、原料ガスの流れとクリーニングガスの流れとが、相互に混ざらないように分離される。
【0049】
なお、原料ガスの流れとクリーニングガスの流れとは並行しており、そのままでもある程度は混ざりにくい。このため、原料ガスが流れる空間とクリーニングガスが流れる空間とが連通しないよう反応炉10内を厳密に仕切るような隔壁を設けなくともよい。
【0050】
原料ガスの流れとクリーニングガスの流れとの分離をより確実にするためには、以下のような構造とすることが好ましい。
【0051】
ガス流方向の位置に関し、原料ガス供給系の配管23,24の下流側の端は、隔壁40の上流端40aと一致しているかそれよりも下流側に配置されていることが好ましく、隔壁40の上流端40aよりも下流側に配置されていることがより好ましい。つまり、原料ガス供給系の配管23,24の下流端は、成長部13a内に入り込むように配置されていることがより好ましい。
【0052】
また、ガス流方向の位置に関し、クリーニングガス供給系の配管25の下流側の端は、隔壁40の上流端40aと一致しているか、それよりも下流側に配置されていることが好ましく、隔壁40の上流端40aよりも下流側に配置されていることがより好ましい。つまり、クリーニングガス供給系の配管25の下流端は、クリーニング部13b内に入り込むように配置されていることが、より好ましい。
【0053】
なお、HVPE装置1がそもそも成膜装置であるという観点からは、成膜処理を行うための成長部13aが、クリーニング処理を行うためのクリーニング部13bよりも広く確保されるように、隔壁40を配置することが好ましい。
【0054】
(制御装置)
制御装置100が、ガス供給系への各種ガスの供給動作や、ヒータ14による加熱動作等を制御する。
【0055】
(2)半導体製造方法の手順
次に、図2を参照して、実施形態による半導体製造方法について説明する。本実施形態による半導体製造方法では、上述したHVPE装置1を用いて、基板30上に半導体を成長させる成膜処理と同時に、被クリーニング物50から半導体を除去するクリーニング処理を行う。図2は、本実施形態の成膜およびクリーニング処理の基本的な手順の一例を示すフローチャートである。ガス供給系への各種ガスの供給動作や、ヒータ14による加熱動作は、制御装置100により制御される。
【0056】
(成膜およびクリーニング処理)
以下、実施形態による成膜およびクリーニング処理の流れを、ステップに分けて説明する。
【0057】
(基板および被クリーニング物搬入工程)
まず、基板および被クリーニング物搬入工程(ステップ11、以下ステップを「S」と略す。)において、基板30および被クリーニング物50を、反応炉10内に搬入する。
【0058】
基板30は、例えば、サファイア基板、GaNバッファ層が形成されたサファイア基板またはAlNバッファ層が形成されたサファイア基板である。取り外された状態のフランジ11bの回転軸32に、基板30を保持したホルダー31を取り付けた後、フランジ11bを反応炉10に取り付けることにより、成長部13a内に、基板30を設置する。
【0059】
被クリーニング物50は、例えば、前回以前の成膜処理に使用されることで半導体が堆積したホルダー31である。基板30を設置するフランジ11bの取り付け前、反応炉10が開放された状態で、例えば、クリーニング部13bの底面上に載置することにより、クリーニング部13b内に、被クリーニング物50を設置する。
【0060】
(昇温工程)
基板および被クリーニング物搬入工程(S11)で反応炉10内に基板30および被クリーニング物50を設置したら、例えば不活性ガスの供給により反応炉10内から大気を追い出した後に、昇温工程(S12)を行う。
【0061】
昇温工程(S12)では、ヒータ14により反応炉10内を所定温度に加熱する。具体的には、上流側ヒータ14aにより、ガス供給部12を例えば850℃程度まで加熱し、下流側ヒータ14bにより、成長部13aおよびクリーニング部13bを1000℃程度まで加熱する。
【0062】
ガス供給部12に対する加熱温度は、溶融状態の金属原料20であるGaと、塩素系ガスであるHClガスとを反応させて、塩化物原料ガス(III族原料ガス)となるGaClガスを生成させることができるような温度に選択されている。
【0063】
成長部13aおよびクリーニング部13bに対する加熱温度は、成長部13aに設置された基板30上でGaNを成長させることができるような温度に選択されている。GaNは、その成長温度近傍の温度条件で、塩素系ガス(塩素含有ガス)によりエッチングすることができる。このため、成長部13aおよびクリーニング部13bに対する加熱温度は、成長部13aに設置された基板30上での半導体成長に適した温度であるとともに、クリーニング部13bに設置された被クリーニング物50から半導体をクリーニングすることができるような温度でもある。
【0064】
(成膜およびクリーニング処理工程)
昇温工程(S12)の後、ヒータ14による所定温度への加熱状態を保ちつつ、次に、成膜およびクリーニング処理工程(S13)を行う。成膜およびクリーニング処理工程(S13)では、成長部13a内に設置された基板30に対し、原料ガス供給系から原料ガスを供給して、基板30上に半導体を成長させると同時に、クリーニング部13b内に設置された被クリーニング物50に対し、クリーニングガス供給系からクリーニングガスを供給して、被クリーニング物50から半導体を除去する。成膜およびクリーニング処理工程(S13)は、より具体的には、以下のようにして行われる。
【0065】
配管22を通じて格納容器21内に原料用塩素系ガスとしてのHClガスを供給する。HClガスを供給すると、格納容器21内では、GaとHClガスとが反応して、金属塩化物ガス(塩化物原料ガス)であるGaClガスが生成される。そして、GaClガスは、格納容器21内から配管23を通じて成長部13aへ案内され、III族原料ガスとして、成長部13aに設置された基板30に対して供給される。
【0066】
また、配管24を通じてV族原料ガスとしてのNHガスを、成長部13aに設置された基板30に対して供給する。これにより、成長部13aでは、III族原料ガスであるGaClガスとV族原料ガスであるNHガスとが合流し、基板30上でGaNの結晶が成長する。このような結晶成長を所定時間継続して行うことで、基板30上に、所定膜厚のGaN層を形成する。
【0067】
成長部13aにおける基板30上でのGaN層の成膜処理と同時に、配管25を通じてクリーニング用塩素系ガスとしてのHClガスを、クリーニング部13bに設置された被クリーニング物50に対して供給する。これにより、クリーニング部13bでは、被クリーニング物50に堆積していたGaNが除去されて、クリーニングが行われる。
【0068】
このようにして、成膜およびクリーニング処理工程(S13)では、成長部13aでの成膜処理工程と、クリーニング部13bでのクリーニング処理工程とが同時に行われる。
【0069】
なお、必要に応じて、成膜処理工程よりもクリーニング処理工程を、先に終了させたり後に終了させたり、あるいは、先に開始させたり後に開始させたりしてもよい。つまり、成膜処理工程とクリーニング処理工程とは、処理期間を完全に一致させる必要はない。成膜処理工程の開始と終了は、原料ガス供給の開始と終了で制御することができる。クリーニング処理工程の開始と終了は、原料ガス供給の開始と終了の制御とは独立に、クリーニングガス供給の開始と終了で制御することができる。ある部材のクリーニング処理工程を、複数回の成膜処理工程にまたがって実施することもできる。
【0070】
なお、成長部13aに設置された基板30に対してGaClガスおよびNHガスを供給する際には、キャリアガスまたは希釈ガスとしてHガスやNガス等の不活性ガスあるいはこれらの混合ガスを、配管22,23,24を通じて併せて供給するようにしても構わない。
【0071】
(降温処理)
成膜およびクリーニング処理工程(S13)を行った後、次に、降温工程(S14)を行う。降温工程(S14)では、ヒータ14による加熱を停止し、反応炉10内の温度を自然降下させる。
【0072】
(基板および被クリーニング物搬出工程)
降温工程(S14)で反応炉10内を例えば常温となるまで降下させたら、続いて、基板および被クリーニング物搬出工程(S15)を行う。基板および被クリーニング物搬出工程(S15)では、フランジ11bを反応炉10から取り外すことにより、ホルダー31、およびホルダー31に保持された基板30を取り出す。
【0073】
取り外されたフランジ11bの回転軸32からホルダー31を取り外し、ホルダー31から基板30を取り外す。また、クリーニング部13bから、被クリーニング物50を取り出す。このようにして、成膜処理済みの基板30とクリーニング処理済みの被クリーニング物50とが搬出される。
【0074】
このようにして、1回分の成膜およびクリーニング処理が行われる。その後、基板30や被クリーニング物50を取り換えながら、必要に応じて、成膜およびクリーニング処理を複数回繰り返して行うことができる。
【0075】
例えば、基板および被クリーニング物搬出工程で、回転軸32から取り外されたホルダー31(使用済みホルダー31と呼ぶこととする)は、今回の成膜処理により半導体が堆積していることにより、クリーニングを行うべき対象物となっている。一方、今回のクリーニング処理で被クリーニング物50としたホルダー31(クリーニング済みホルダー31と呼ぶこととする)は、クリーニング処理されて清浄化されている。
【0076】
次回の成膜およびクリーニング処理は、今回処理でのクリーニング済みホルダー31を新たな基板30を保持するホルダー31として使用するとともに、今回の処理での使用済みホルダー31を被クリーニング物50として、行うことができる。
【0077】
このように、清浄化されて新たな成膜処理に使うことができるクリーニング済み部材と、使用済みでクリーニングされるべきクリーニング対象部材とを交換しながら、本実施形態の成膜およびクリーニング処理を繰り返し行うことができる。
【0078】
なお、使用済みとなった部材のクリーニングは、使用済みとなった回の次回(直後の回)の成膜およびクリーニング処理で行うことが必須ではなく、使用済みとなった回以降のいずれかの回の成膜およびクリーニング処理で行えばよい。また、クリーニング済みとなった部材は、クリーニング済みとなった回の次回(直後の回)の成膜およびクリーニング処理で再使用することが必須ではなく、クリーニング済みとなった回以降のいずれかの回の成膜およびクリーニング処理で再使用することができる。
【0079】
隔壁40は、一方の面は成長部13a側に露出して半導体が堆積し、その裏面はクリーニング部13b側に露出して半導体が堆積しない(クリーニングされる)。このため、隔壁40は、ある回の成膜およびクリーニング処理で成長部13a側に配置されて半導体が堆積した面を、次回の成膜およびクリーニング処理ではクリーニング部13b側に配置して堆積物がクリーニングされるように、裏返して用いることができる。このようにして、1枚の隔壁40を効率的に用いることができる。なお、隔壁40も、ホルダー31等のように複数用意しておき、クリーニング済みのものとクリーニング対象のものとを交換しながら用いてもよい。
【0080】
(3)本実施形態の効果
本実施形態によれば、以下に述べる1つまたは複数の効果が得られる。
【0081】
(a)本実施形態では、隔壁40により、反応炉10内を成長部13aとクリーニング部13bとに区分している。これにより、成長部13aで基板30に対して供給される原料ガスの流れと、クリーニング部13bで被クリーニング物50に対して供給されるクリーニングガスの流れとを分離することができるので、同一の半導体製造装置で(同一の反応炉10内で)、成長部13aにおける基板30上への成膜処理と、クリーニング部13bにおける被クリーニング物50のクリーニング処理とを、同時に行うことができる。このようにして、クリーニング処理が効率的に行われる。
【0082】
例えば、同一の半導体製造装置で、成膜処理と、成膜処理後に基板をセットせずに行うクリーニング(ベーキング)処理とを行う技術に比べ、処理の効率化が図られ、生産性が向上する。また例えば、成膜処理を行う半導体製造装置の他に、クリーニング処理を専用に行う装置(ベーキング装置)を用いる技術に比べ、必要な装置が減るので、コスト低減が図られる。
(b)ガス流方向の位置に関して、原料ガス供給系の下流側の端、および、クリーニングガス供給系の下流側の端は、好ましくは、隔壁40の上流側の端40aと一致しているかそれよりも下流側に配置される。このような構造により、原料ガスの流れとクリーニングガスの流れとの分離をより確実にすることができる。
【0083】
(c)ヒータ14(下流側ヒータ14b)は、成長部13aおよびクリーニング部13bを同時に加熱する。これにより、成膜処理(結晶成長)に必要な加熱と、クリーニング処理に必要な加熱とを共通にでき、効率的な加熱が行われる。クリーニング部13bを加熱するヒータを、成長部13aを加熱するヒータと別に設置する必要がないので、クリーニングのためにヒータを追加するコストが必要ない。
【0084】
(d)HVPE法での成膜で用いられる原料ガスに含まれる塩化物原料ガス(上述の例ではGaClガス)を生成させるために用いる塩素系ガス(上述の例ではHCl)を流用して、クリーニングガスとしても用いることができる。つまり、クリーニングガスとして、塩化物原料ガスを生成させるために用いる塩素系ガスと同種の塩素系ガスを用いることができる。これにより、原料ガスに用いるガスの他にクリーニングガスを準備しなくてもよくなる。なお、必要に応じて、塩化物原料ガスを生成させるために用いる塩素系ガスと、クリーニングガスとして用いる塩素系ガスとを、異なる種類のガスとすることもできる。
【0085】
(e)成膜処理工程とクリーニング処理工程とを同時に行うことができるが、成膜処理工程の開始・終了タイミングとクリーニング処理工程の開始・終了タイミングとは、必要に応じてずらすことができる。これにより、成膜処理工程とクリーニング処理工程との所要時間が異なるような場合でも適切な処理ができる。
【0086】
例えば、成膜処理工程がまだ終わらない間にクリーニング処理工程は完了してしまい、堆積物除去が完了した後もクリーニングガスの供給が続くことで、被クリーニング物のオーバーエッチングが生じてしまうような場合は、先にクリーニングガスの供給を停止してクリーニング処理工程は終了させることにより、不具合を防止できる。なお、カーボン製や石英製の部材は、塩素系ガスのクリーニングガスでのオーバーエッチングがされにくい。
【0087】
(f)ホルダー31等の部材は、新たな成膜処理に使用できるクリーニング済み部材と、クリーニングされるべき使用済み部材とを交換しながら、用いることができる。成膜およびクリーニング処理が終わるごとに、使用済みになった部材と交換できるクリーニング済み部材を準備することができるので、生産性が高まる。
【0088】
(g)隔壁40は、反応炉10内に着脱可能に設置されており、成膜およびクリーニング処理ごとに、一方の面とその裏面とを裏返して用いることができる。これにより、清浄な面は成長部13a側に配置して成長部13aの内壁の一部として使用するとともに、反対側の半導体が堆積した面はクリーニング部13b側に配置してクリーニングを行うことができる。このようにして、1枚の隔壁40を効率的に用いることができる。
【0089】
(4)他の実施形態
以上、実施形態に沿って本発明について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、改良、組み合わせ等が可能である。
【0090】
例えば、上述の実施形態では、塩素系ガスとしてHClガスを例示したが、塩素系ガスはHClガスに限定されず、例えば塩素(Cl)ガス等の他のガスを用いることもできる。
【0091】
上述の実施形態では、成長およびクリーニング対象の半導体として特にGaNを例示したが、GaAs、GaP等の他のGa系化合物半導体の成長およびクリーニングを行うこともできる。例えばGaAs、GaPは、700℃程度の温度で成長およびクリーニングを行うことができる。さらに、例えばInN、AlN、AlGaN、InGaN等のような、HVPE法で成長でき、成長温度と同等の温度で塩素系ガスをクリーニングガスとして除去できるような半導体に対して、上述の実施形態で説明した技術を適用することができる。
【0092】
被クリーニング物は、成膜およびクリーニング処理を行うHVPE装置自体の有するホルダー等の部材に限定されず、他の装置における結晶成長等に起因して半導体が堆積したような部材であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 HVPE装置
10 反応炉
10a 突起部
11a,11b フランジ
12 下流部(ガス供給部)
13 上流部
13a 成長部
13b クリーニング部
14 ヒータ
14a 上流側ヒータ
14b 下流側ヒータ
20 金属原料
21 格納容器
22,23,24,25 配管
23a,24a,25a ノズル
30 基板
31 ホルダー
32 回転軸
40 隔壁
50 被クリーニング物
60 ガス供給源
100 制御装置
図1
図2