(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明による接合方法の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0021】
(第1実施形態)
図1を参照して本発明に係る第1構造体100の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る第1構造体100を示す模式図である。以下、ガラスとガラスとが接合されている第1構造体100について説明する。
【0022】
第1構造体100は、ベース10と部品30と導電部材20とを備える。本実施形態では、ベース10と部品30として、ガラスを用いる。あるいは、ベース10と部品30として、ガラスの他、シリカガラス、シリコンカーバイドまたはシリコン上に形成したガリウムナイトライドを用いる。
【0023】
ベース10は、照射する光に対して透過性を有する。ベース10は、透明である。ベース10は、接合面41aと非接合面42aとを有する。接合面41aは、部品30と接合する面である。非接合面42aは接合面41aの反対側に位置する。
【0024】
部品30は、照射する光に対して透過性を有する。部品30は、透明である。部品30は、接合面41bと非接合面42bとを有する。接合面41bは、ベース10と接合する面である。非接合面42bは接合面41bの反対側に位置する。
【0025】
導電部材20は、めっき膜、蒸着処理、エッチング箔膜処理によって形成されている。
【0026】
ベース10と部品30とは、導電部材20を介して接合している。ベース10と部品30とは、透過性を有するベース10または部品30の方向から導電部材20に光を照射し接合されている。
【0027】
図2を参照して、本発明に係る第1構造体100の製造方法の実施形態を説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る第1構造体100の製造方法を示す模式的な側面図である。
【0028】
まず、
図1(a)に示すように、ベース10および部品30を用意する。
【0029】
次に、
図1(b)に示すように、導電部材20をベース10および部品30にそれぞれ形成する。ベース10および部品30のそれぞれの接合面(接合面41aおよび接合面41b)に導電部材20のメッキ処理、蒸着処理、エッチング箔膜処理を施すことによって、導電部材20は、ベース10および部品30に形成される。
【0030】
次に、
図1(c)に示すように、ベース10と部品30とを導電部材20aおよび導電部材20bを介して積層する。すなわち、ベース10の接合面41aと部品30の接合面41bが対向するように、部品30をベース10に載置する。この段階では、ベース10と部品30とは積層されているだけで、分離している。すなわち、ベース10と部品30とは接合していない。
【0031】
次に、
図1(d)に示すように、光50を照射する。光50は、例えば、高出力のフラッシュ光源から照射される。光50は、例えば、可視光である。光50を照射する時間は、例えば、1分である。光50の照射は、常温環境下で行われればよい。部品30が照射される光に対して透過性を有するため、照射された光50は、部品30を通過し導電部材20(導電部材20aおよび導電部材20b)に到達する。導電部材20に到達した光によって、導電部材20は接合面間で焼結される。導電部材20が焼結されると、ベース10と部品30とは接合される。
【0032】
以上、
図1および
図2を参照して説明したように、本発明に係る第1構造体100の製造方法は、導電部材20(導電部材20aおよび導電部材20b)をベース10および部品30の少なくとも一方に形成する工程と、ベース10と部品30とを導電部材20を介して積層する工程と、透過性を有するベース10または部品30の方向から導電部材20に光50を照射することによってベース10および部品30を接合する工程とを包含する。光50を照射することによって導電部材20を接合(焼結)するため、接合(焼結)にかかる時間が短い。したがって、短時間でベース10に部品30を実装することができる。
【0033】
また、光50を照射することによって導電部材20を焼結するため、広い範囲を一度に焼結を行うことができる。したがって、均一に焼結でき効率よくベース10と部品30とを接合することができる。
【0034】
また、一般的な加熱炉で加熱することによって導電部材20を焼結する方法では、200℃以上の高温化での熱処理が必要であったが、本発明に係る接合方法では、常温環境下で導電部材20の焼結を行うことができる。したがって、ベース10または部品30が耐熱温度の低い場合であっても、ベース10と部品30とを接合することができる。
【0035】
また、本発明に係る第1構造体100の製造方法では、光50を照射することによって導電部材20を焼結するため、加熱炉などの大掛かりな装置を必要としない。したがって、低コストでベース10と部品30とを接合することができる。
【0036】
(第2実施形態)
図3を参照して、本発明に係る第2構造体200の実施形態を説明する。
図3は、本発明に係る第2構造体200を示す模式図である。以下、ポリエステル(polyester:PET)基板(以下、PET基板と記載する)(ベース10)と半導体チップ(部品30)とが接合されている第2構造体200について説明する。
【0037】
第2構造体200は、ベース10と部品30と導電部材(導電部材20aおよび導電部材20b)とを備える。本実施形態では、ベース10はPET基板である。部品30は半導体チップである。
【0038】
ベース10は、透光性を有する。ベース10は、透明である。ベース10は、接合面41と非接合面42とを有する。接合面41は、部品30と接合する面である。非接合面42は接合面41の反対側に位置する。
【0039】
導電部材20には、銀、銅またはニッケルの金属粒子が分散されている。粒子分散の導電部材20は、金属粒子とアルコール等の溶媒とを混合してペースト化することによって作製される。
【0040】
導電部材20aは、導電部材20bと短絡しないように間隔をあけてベース10に形成されている。導電部材20aおよび導電部材20bの一端は、電極(図示せず)または他の部品の端子(図示せず)に接続されている。
【0041】
部品30は、一端が導電部材20aと接触している。一方、部品30は、他端が導電部材20bと接触している。
【0042】
図4を参照して、本発明に係る第2構造体200の製造方法の実施形態を説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る第2構造体200の製造方法を示す模式的な側面図である。
【0043】
まず、
図4(a)に示すように、ベース10を用意する。
【0044】
次に、
図4(b)に示すように、導電部材20(導電部材20aおよび導電部材20b)をベース10に形成する。導電部材20は、所定のパターンを描くようにベース10に形成(塗布)される。所定のパターンを描くように導電部材20をベース10に形成するため、導電部材20は、例えば、スクリーン印刷などの印刷法でベース10に形成(塗布)されることが好ましい。
【0045】
次に、
図4(c)に示すように、ベース10と部品30とを導電部材20aおよび導電部材20bを介して積層する。すなわち、部品30は、一端が導電部材20aと接触するように載置される。一方、部品30は、他端が導電部材20bと接触するように載置される。この段階では、ベース10と部品30とは積層されているだけで、分離している。すなわち、ベースと10と部品30とは接合していない。
【0046】
次に、
図4(d)に示すように、光50を照射する。本実施形態では、部品30が透光性を有さない場合、照射される光に対して透過性を有するベース10側(
図4(d)の下側)から光50が照射される。ベース10が照射される光に対して透過性を有するため、照射された光50は、ベース10を通過し導電部材20aおよび導電部材20bに到達する。導電部材20aおよび導電部材20bに到達した光によって、導電部材20は接合(焼結)される。導電部材20が焼結されると、ベース10と部品30とは接合される。同時に、導電部材20aおよび導電部材20bの部品30と接触していない部分(配線部分)に対してキュア(硬化)を行うことができる。
【0047】
図4を参照して説明したように、本発明に係る接合構造体の製造方法は、ベース10と部品30とを接合する工程と同時に、配線部分に対してキュアを行うことができる。したがって、部品の実装にかかる工程を削減することができる。その結果、部品の実装にかかる時間を短縮することができる。
【0048】
また、
図2を参照して上述したように、本発明に係る接合構造体の製造方法では、常温環境下で導電部材20の焼結を行うことができる。したがって、
図4で示したように、ベース10が耐熱温度の低いPET基板であっても、部品30を接合することができる。その結果、PET基板のようなフレキシブルなベース10に部品30を実装することが可能となる。
【0049】
また、
図4を参照して説明したように、ベース10および部品30を接合する工程において、 非接合面の方向から導電部材に光を照射する。したがって、部品30が照射される光に対して透過性を有さない場合でも、導電部材20の焼結を行うことができる。
【0050】
(第3実施形態)
図5を参照して、本発明に係る第3構造体300の実施形態を説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る第3構造体300の製造方法を示す模式的な側面図である。以下、パッド(第1導電部材21aおよび第1導電部材21b)を介してPET基板と半導体チップとが接合されている第3構造体300について説明する。
【0051】
第3構造体300は、ベース10と部品30と第1導電部材(第1導電部材21aおよび第1導電部材21b)と第2導電部材(第2導電部材22aおよび第2導電部材22b)とを備える。本実施形態では、ベース10はPET基板である。部品30はLEDチップである。
【0052】
ベース10は、照射する光に対して透過性を有する。ベース10は、透明である。ベース10は、接合面41と非接合面42とを有する。接合面41は、部品30と接合する面である。非接合面42は接合面41の反対側に位置する。
【0053】
第1導電部材21aは、第1導電部材21bと短絡しないように間隔をあけてベース10に形成されている。第1導電部材21aおよび第1導電部材21bは、パッドを形成する。
【0054】
第2導電部材22aは、第1導電部材21aと接続している。また、第2導電部材22bは、第1導電部材21bと接続している。第1導電部材は、ポリマーを含有する。ポリマーは、例えばポリエチレン、エポキシ、フェノール、アクリル、ウレタン、ポリカーボネートおよびシリコーンの中から少なくとも1種選ばれる。ポリマーの体積含有量は、3%〜60%である。
【0055】
部品30は、一端が第1導電部材21aと接触している。一方、部品30は、他端が第1導電部材21bと接触している。
【0056】
図6を参照して本発明に係る第3構造体300の製造方法の実施形態を説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る第3構造体300の製造方法を示す模式図である。
【0057】
まず、
図6(a)に示すように、ベース10を用意する。
【0058】
次に、
図6(b)に示すように、第1導電部材(第1導電部材21aおよび第1導電部材21b)をベース10に形成する。第1導電部材21aおよび第1導電部材21bは、部品と接合する領域を示す部品接合領域A1に形成される。第1導電部材21aおよび第1導電部材21bは、間隔をあけてベース10に形成されている。
【0059】
次に、
図6(c)に示すように、第2導電部材(第2導電部材22aおよび第2導電部材22b)をベース10に形成する。第2導電部材22aおよび第2導電部材22bは、部品と接合しない領域を示す部品非接合領域A2に形成される。第2導電部材22aは、第1導電部材21aと接続するように形成される。また、第2導電部材22bは、第1導電部材21bと接続するように形成される。
【0060】
次に、
図6(d)に示すように、ベース10と部品30とを導電部材21aおよび導電部材21bを介して積層する。すなわち、部品30は、一端が第1導電部材21aと接触するように載置される。一方、部品30は、他端が第1導電部材21bと接触するように載置される。この段階では、ベース10と部品30とは積層されているだけで、分離している。すなわち、ベースと10と部品30とは接合していない。
【0061】
次に、
図6(e)に示すように、光50を照射する。本実施形態においては、部品30が照射される光に対して透過性を有さない場合、照射される光に対して透過性を有するベース10側(
図6(e)の下側)から光50が照射する。ベース10が照射される光に対して透過性を有するため、照射された光50は、ベース10を通過し第1導電部材21a、第1導電部材21b、第2導電部材22aおよび第2導電部材22bに到達する。第1導電部材21a、第1導電部材21b、第2導電部材22aおよび第2導電部材22bに到達した光によって、導電部材20は焼結される。導電部材20が焼結されると、ベース10と部品30とは接合される。同時に、第2導電部材22aおよび第2導電部材22b(配線部分)に対してキュア(硬化)を行うことができる。
【0062】
図5および
図6を参照して説明したように、本発明に係る接合構造体の製造方法は、導電部材をベースに塗布する工程において、部品と接合する領域に第1導電部材を形成する工程と、部品と接合しない非接合領域に第2導電部材を形成する工程とを含む。第1導電部材はポリマーを含有する。したがって、ベース10と部品30との接合性が高まる。
【0063】
(装置)
図7を参照して本発明に係る装置400の実施形態を説明する。
図7は、本発明に係る装置400を示す模式図である。
【0064】
装置400は、
図5を参照して説明した構造体を備える。具体的には、装置400は、ベース10と第1導電部材(第1導電部材21a、第1導電部材21b、第1導電部材21c、第1導電部材21d、第1導電部材21eおよび第1導電部材21f)と第2導電部材(第2導電部材22a、第2導電部材22b、第2導電部材22cおよび第2導電部材22d)と部品(部品30a、部品30bおよび部品30c)とを備える。装置400は、例えば、照明装置として用いられる。
【0065】
部品(部品30a、部品30bおよび部品30c)は、LEDチップである。第1導電部材21a、第1導電部材21cおよび第1導電部材21eはパッドを形成しており、それぞれ部品30a、部品30aおよび部品30cのアノード(正極)と接触している。第1導電部材21b、第1導電部材21dおよび第1導電部材21fはパッドを形成しており、それぞれ部品30a、部品30aおよび部品30cのカソード(負極)と接触している。
【0066】
第1導電部材21aおよび第1導電部材21bは短絡しないように間隔をあけてベース10に形成されている。第1導電部材21cおよび第1導電部材21dは短絡しないように間隔をあけてベース10に形成されている。第1導電部材21eおよび第1導電部材21fは短絡しないように間隔をあけてベース10に形成されている。
【0067】
第2導電部材22aは、第1導電部材21aと接続している。また、第2導電部材22bは、第1導電部材21bおよび第1導電部材21cと接続している。また、第2導電部材22cは、第1導電部材21dおよび第1導電部材21eと接続している。また、第2導電部材22dは、第1導電部材21fと接続している。
【0068】
第2導電部材22aの一端を電極(図示せず)に接続し、第2導電部材22dの一端をグランド(図示せず)に接続し、電極に電圧をかけることによって、装置400は点灯する。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
図8を参照して、本発明に係る第1構造体100の製造方法の実施例を説明する。
図8は、本発明の第1実施形態に係る第1構造体100を示す写真である。
【0071】
まず、2枚のガラスにAg/Tiをスパッタメタライズし、ガラスに膜を形成する。次に、スパッタメタライズされた2枚のガラスを接着する。220V、1400us、500回、1.5Hzの条件で光を照射する。光が照射されることによって、Agは焼結され、ガラスが接合する。光源として、NovaCentrix社製のPulseForgeを用いた。
【0072】
[実施例2]
図9および
図10を参照して、本発明に係る第2構造体200の製造方法の実施例を説明する。
図9は、銀フレークペーストを用いた配線を示す写真である。
図10は、PET基板とダミーチップとを接合した本発明の第3実施形態に係る第3構造体300を示す写真である。
【0073】
まず、導電性接着剤(XA910:藤倉化成(株)製)を使用し、PET基板にギャップ1.5mmで2mm×2mmのパッドを2つ作製した。次に、パッドの上にブリッジするようにダミーチップを配置した。ダミーチップを配置した後、PET基板の裏面から電圧:190V、パルス時間:1800us、パルス回数:100回、パルス周波数:1.5Hz条件で光照射しダミーチップを接合した。次に、銀フレーク(C239:福田金属(株)製)をエチレングリコール(ethylene glycol:EG)に分散しペースト化させた。ペースト化したインクを2mm×300mm、膜厚0.05mmでPET基板上にスクリーン印刷をし、チップ接合部の導電性接着剤から配線し、電圧:210V、パルス時間:1600μs、パルス回数:150回、パルス周波数:1.5Hzの条件で光照射し、ダミーチップ接合配線を作製した。本実施例のせん断強度は、45.67Nを示した。
図10に示すようにPET基板を折り曲げても、ダミーチップの接合がはがれることはなかった。
【0074】
[実施例3]
図11を参照して、本発明に係る第3構造体300の製造方法の実施例を説明する。
図11(a)、
図11(b)および
図11(c)は、PET基板とLEDチップとを接合した本発明の第3実施形態に係る第3構造体300を示す写真である。
【0075】
まず、導電性接着剤(XA910:藤倉化成(株)製)を使用し、PET基板にそれぞれギャップ1.5mmで2mm×2mmのパッドをそれぞれ2つずつ作製した。次に、パッドの上にブリッジするようにダミーチップを配置した。ダミーチップを配置した後、PET基板の裏面から電圧:190V、パルス時間:1800us、パルス回数:100回、パルス周波数:1.5Hz条件で光照射しダミーチップを接合した。次に、銀フレーク(C239:福田金属(株)製)をエチレングリコール(ethylene glycol:EG)に分散しペースト化させた。ペースト化したインクを2mm×300mm、膜厚0.05mmでPET基板上にスクリーン印刷をし、チップ接合部の導電性接着剤から配線し、電圧:210V、パルス時間:1600μs、パルス回数:150回、パルス周波数:1.5Hzの条件で光照射しダミーチップ接合配線を作製した。
図11(a)に示すようにPET基板を折り曲げても、LEDチップの接合がはがれることはなかった。さらに
図11(b)および
図11(c)に示すようにPET基板を折り曲げた状態であっても、LEDを点灯させることができた。
【0076】
[光の波長と配線抵抗率の関係]
図12は、本発明に係る接合構造体に照射するパルス電圧(加速電圧)と配線抵抗率の関係を示すグラフである。X軸はパルス発生電圧を示す。Y軸は配線抵抗率(体積抵抗率)を示す。パルス電圧により波形は変化し、電圧が高いほど全照射量は多くなる。光の波長は、300nm〜1000nmが好ましい。また、Cu配線およびNi配線よりもAg配線の方が配線抵抗率を小さくすることができるので、導電部材20にAg配線を用いることが好ましい。また、照射する光のパルス時間は長い方が配線抵抗率を小さくすることができるので、基板にダメージを与えない程度に照射する光のパルス時間は長い方が好ましい。
【0077】
[照射時間と接合強度の関係]
図13は、本発明に係る接合構造体への、波長(300nm〜1000nm)の光の照射時間と接合構造体のせん断強度の関係を示すグラフである。X軸は波長(300nm〜1000nm)の光の照射時間を示す。何れの条件でも、加速電圧に対して接合強度が最大となる最適値が存在する。例えば、パルス時間が1200μ秒の場合、加速電圧が180Vの際、接合強度が最大となる。また、パルス時間が1400μ秒の場合、加速電圧が190Vの際、接合強度が最大となる。また、パルス時間が1600μ秒の場合、加速電圧が220Vの際、接合強度が最大となる。Y軸はせん断強度を示す。光の波長が(300nm〜1000nm)の光の照射時間は、1000μ秒から1600μ秒が好ましいが、加速電圧とも関係し、150Vから300Vが望ましい。
【0078】
図14(a)は、本発明に係る接合構造体の製造方法によって製造した構造体の強度と接合面組織とを示す図である。
図14(b)は、第1構造体100を示す図である。構造体がSiC/Cuである場合、接合強度は20MPaであった。また、構造体がGaN/Si/Cuである場合、接合強度は10MPaであった。また、構造体がシリコンガラス/シリコンガラスである場合、接合強度は25MPaであった。また、構造体がガラス/ガラスである場合、接合強度は25MPaであった。本発明に係る接合構造体の製造方法によって製造した構造体(SiC/Cu、GaN/Si/Cu、シリカガラス/シリカガラスおよびガラス/ガラス)からは、いずれも良好な接合強度の測定結果が得られた。
【0079】
従来の接合や配線技術では、加熱により金属粒子を焼結するために、銀および金などの基金属粒子で、ナノ粒子では常温で焼結も出来るが、通常は150℃以上の温度範囲で焼結が進み、10
-6Ωcmオーダーの低抵抗率が得られる。銀のマイクロメーターサイズのフレーク粒子では、特異的に200℃前後で焼結が進行できる場合もあるが、一般的では無い。しかし銅の場合は、焼結時に酸化するために、200℃以上の温度で真空や還元雰囲気を要し、ニッケルはさらに抵抗値が高いという欠点があった。いずれにしても、PETなどは150℃以上の温度には保たないので、単純な加熱による配線形成が困難であった。
【0080】
これに対して本技術の光焼結では、強い光がパルスで照射され、光を吸収する部位だけが短時間で昇温し、光を透過するPET、PEN(ポリエチレンナフタレート:polyethlene naphthalate)およびPI(ポリイミド:Polyimide)などのポリマー、ガラス、シリコンカーバイド並びにガリウムナイトライドなどは、ほとんど300nm〜1000nmの範囲の光をあまり吸収しないのでほとんど加熱されない。
図15(a)は、Pulseforgeの光強度分布とPETフィルムの光吸収率の波長変化を示している。
図15(b)は、光照射に用いた光源Pulseforgeの写真である。Pulseforgeによる光照射では、380nm〜1000nmの波長の範囲で強い光が発生しているが、PETは300nm以上の波長の光の吸収が急激に減少している。このため、基材となるPETは加熱されず、所望の部位のみが短時間加熱され、粒子間や接合面間で焼結が進行し、銅およびニッケルの場合も溶剤の蒸発と雰囲気形成により著しくは酸化が進まない。
【0081】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば、以下のような変形も可能である。
【0082】
(1)
図1〜
図7を参照して説明した接合方法では、可視光を照射して導電部材20を焼結していたが、導電部材20に照射する光は可視光に限定されない。例えば、紫外光および赤外光であってもよい(
図12参照)。例えば、ベース10がシリコンである場合、シリコンを透過しやすい赤外光を導電部材に照射する光に用いることが好ましい。
【0083】
(2)
図1を参照して説明した接合方法では、ベース10、部品30としてガラスを用いていたが、シリコンカーバイド(SiC)や、シリコンやサファイア上に形成したガリウムナイトライド(GaN)を用いることができる。シリコンカーバイドなどは、透光性を有するため本発明による接合構造体の製造方法を好適に適用し得る。
【0084】
(3)
図6を参照して説明した接合方法では、第1導電部材(第1導電部材21aおよび第1導電部材21b)をベース10に形成した後に、第2導電部材(第2導電部材22aおよび第2導電部材22b)をベース10に形成していたが、これに限定されない。例えば、第2導電部材(第2導電部材22aおよび第2導電部材22b)をベース10に形成した後に、第1導電部材(第1導電部材21aおよび第1導電部材21b)をベース10に形成してもよい。
【0085】
(4)
図6を参照して説明した接合方法では、第1導電部材(第1導電部材21aおよび第1導電部材21b)および第2導電部材(第2導電部材22aおよび第2導電部材22b)をベース10に形成した後に、部品30を積層し、光を照射して接合をしていたが、これに限定されない。例えば、第2導電部材をベース10に形成した後に光照射する。その後、第1導電部材(第1導電部材21aおよび第1導電部材21b)をベース10に形成した後に部品30を積層する。そして光を照射して接合を行ってもよい。なお、第2導電部材に光を照射する際、第2導電部材の上面から光を照射してもよい。
【0086】
(5)
図2を参照して説明した接合方法では、ベース10と部品30とを接合したが、これに限定されない。ベース10とベース10とを接合してもよい。