(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定対象物の表面の変位を測定する第一のレーザ変位計および第二のレーザ変位計と、上記第一のレーザ変位計および第二のレーザ変位計を移動可能に保持する変位計保持部と、上記レーザ変位計で測定された第一の変位および第二の変位から、演算によって測定対象物の厚さを算出する算出装置と、測定対象物を移動可能に保持する測定対象物保持部とを備え、
上記第一のレーザ変位計および第二のレーザ変位計は、測定対象物の表裏面の変位を測定するために一直線上に対向配置され、
上記測定対象物保持部は測定対象物を載置する載置台を備え、上記載置台は、測定対象物の裏面の一部を露出させる複数の開口部を有することを特徴とする厚さ測定器。
測定対象物の表面または裏面に対して、上記第一のレーザ変位計および第二のレーザ変位計を結ぶ直線が直交することを特徴とする請求項1または2に記載の厚さ測定器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
〔測定対象物〕
測定対象物は、特に限定されるものではないが平板状であることが望ましく、例えば、チップのベースとなるウエハや、当該ウエハを含む積層体、サポートプレート(支持体)が好適である。上記ウエハの表面上には接着層や分離層等の各種層が形成されていてもよい。また、ウエハは、接着層側の面に、電子回路等の微細構造が形成された基板であってもよい。さらに、接着層を介してガラス、シリコン、アクリル系樹脂、セラミック等で構成されているサポートプレートが貼り付けられた積層体であってもよい。尚、測定対象物としては、積層体や、サポートプレート、ウエハからなる基板に限定されず、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等の任意の基板を選択することもできる。
【0013】
以下、測定対象物として、ウエハからなる基板、接着層、およびガラスからなるサポートプレートが積層されてなる積層体を主に例に挙げて説明することとする。
【0014】
〔厚さ測定器〕
本発明の一実施形態に係る厚さ測定器について、
図1および
図2を用いて以下に説明する。
図1および
図2に示すように、厚さ測定器57は、測定対象物である例えば積層体の厚さを測定するための装置であり、積層体の表裏面の複数個所の厚さを測定して厚み分布を得る場合には厚み分布測定装置とも称される。ここで、測定対象物である積層体の厚み分布とは、積層体の上面(サポートプレートの上面)または下面(基板の下面)における面内分布を示す。厚さ測定器57は、非接触のレーザ変位計を備えているので、積層体の厚み分布を好適に測定することができる。
【0015】
図1および
図2に示すように、厚さ測定器57は、測定対象物である例えば積層体の表面の変位(第一の変位)を測定する第一のレーザ変位計26および積層体の裏面の変位(第二の変位)を測定する第二のレーザ変位計27を移動可能に保持する変位計保持部21、並びに、積層体を保持する測定対象物保持部22を主に備えている。
【0016】
変位計保持部21は、第一移動部材23、一対のレール部材24、および第二移動部材25で主に構成されている。また、変位計保持部21は、第一移動部材23および第二移動部材25を駆動する駆動部(図示せず)を備えている。
【0017】
一対のレール部材24は、測定対象物保持部22を挟んで互いに平行に配置されており、第一移動部材23を移動可能に支持し、測定対象物保持部22に近づく方向、および測定対象物保持部22から遠ざかる方向(
図1における矢印方向)に、上記第一移動部材23を移動させるためのガイドとなっている。
【0018】
第一移動部材23は、第二移動部材25を移動可能に支持し、第一移動部材23の移動方向と直交する方向(
図1,2における矢印方向)に、上記第二移動部材25を移動させるためのガイドとなっている。
【0019】
第二移動部材25は、側面から見た形状が測定対象物保持部22側に向かって開いた「コ」字型となっており、測定対象物保持部22側に向かって上下に突き出た測定治具25a,25bの先端部に第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27を保持している。具体的には、上側に突き出た測定治具25aの先端部に第一のレーザ変位計26が保持されており、下側に突き出た測定治具25bの先端部に第二のレーザ変位計27が保持されている。また、測定治具25aの先端部には、第一のレーザ変位計26の位置合わせを行うための位置調節部材26aが設けられている。
【0020】
上記第一のレーザ変位計26は、測定対象物である積層体にレーザ光を照射する照射部と、積層体の表面で反射したレーザ光だけを受光する受光部と、受光したレーザ光を信号に変換して算出装置に送信する送信部(何れも図示せず)とを備えている。同様に、上記第二のレーザ変位計27は、測定対象物である積層体にレーザ光を照射する照射部と、積層体の裏面で反射したレーザ光だけを受光する受光部と、受光したレーザ光を信号に変換して算出装置に送信する送信部(何れも図示せず)とを備えている。尚、上記第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27は、測定対象物である積層体の表面の変位を非接触で測定することができればよく、特に限定されるものではないが、分光干渉式レーザ変位計であることがより好ましい。
【0021】
上記第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27は、測定対象物保持部22上に載置された積層体(図示せず)の表裏面の変位を測定するために、一直線上に対向配置されている。また、上記第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27は、測定対象物保持部22上に載置された積層体の表面または裏面に対して、第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27を結ぶ直線が直交するように、測定治具25a,25bの先端部に取り付けられている。従って、第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27は、変位計保持部21の駆動によって移動しても、或いは、装置が微振動しても、互いの相対的な位置や距離は常に一定である。
【0022】
そして、変位計保持部21は、第一移動部材23および第二移動部材25を移動させることにより、測定治具25a,25bの先端部に保持した第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27を、測定対象物保持部22上に載置された積層体の所望の位置に移動させるようになっている。つまり、変位計保持部21は、測定対象物保持部22に対して、第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27を相対移動させる構成となっている。具体的には、変位計保持部21は、第一のレーザ変位計26を、上記積層体の表面における所望の位置に移動させると共に、第二のレーザ変位計27を、上記積層体の裏面における、上記所望の位置に対応する位置に移動させるようになっている。但し、本発明において上記「所望の位置」とは、保持ステージ31に形成されている、積層体の裏面の一部を露出させることができる複数の孔の位置に対応する位置を指す。
【0023】
測定対象物保持部22は、測定対象物である例えば積層体を保持する保持ステージ(載置台)31を備えている。また、上記保持ステージ31は、積層体を保持ステージ31に載置して固定するための吸着機構を備えている。吸着機構を用いて積層体を保持ステージ31に固定することにより、厚さ測定器57は、反っている積層体であっても反りを抑制して当該積層体の厚さを正確に測定することができる。尚、吸着機構の構成は、特に限定されるものではなく、真空ポンプ等を備えた公知の吸着装置を用いればよい。
【0024】
また、保持ステージ31には、例えば10mm間隔の碁盤目状に配置された多数の孔(開口部)(図示せず)が形成されている。これにより、積層体を保持ステージ31に保持した状態において、上記孔を介して、当該積層体の裏面の一部を露出させることができるようになっている。尚、孔同士の間隔は、特に限定されるものではなく、例えば測定対象物の大きさ等に応じて適宜設定すればよい。
【0025】
さらに、厚さ測定器57は、上記第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27で測定された第一の変位および第二の変位から、演算によって積層体の厚さを算出して例えば外部表示装置に出力する算出装置(図示せず)を備えている。算出装置の構成は、特に限定されるものではなく、公知の演算装置や、厚さを記憶する記憶装置を備えていればよい。
【0026】
また、厚さ測定器57は、変位計保持部21および測定対象物保持部22の駆動や、第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27の動作を制御する制御部(図示せず)を備えている。従って、第一移動部材23および第二移動部材25を駆動する駆動部は、上記制御部によって、その動作が制御されている。
【0027】
尚、
図1および
図2においては、変位計保持部21が、測定対象物保持部22に対して、第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27を相対移動させる構成となっているが、厚さ測定器は当該構成に限定されるものではなく、測定対象物保持部が、変位計保持部に保持されている第一のレーザ変位計および第二のレーザ変位計に対して相対移動する構成となっていてもよく、変位計保持部および測定対象物保持部が互いに相対移動する構成となっていてもよい。また、変位計保持部および測定対象物保持部の相対移動は、直線移動、回転移動等、どのような移動であってもよく、積層体の表裏面の複数個所の厚さを測定することができるようになっていればよい。
【0028】
〔厚さ測定方法〕
次に、上記構成の厚さ測定器57を用いて積層体の厚さを測定する方法について、
図3を参照しながら、順に説明する。
【0029】
先ず、測定対象物である積層体40を測定対象物保持部22の保持ステージ31に載置し、吸着機構を用いて当該積層体40を保持ステージ31に固定する。このとき、変位計保持部21はホームポジション(初期位置)に位置している。
【0030】
次に、変位計保持部21を駆動し、第一移動部材23および第二移動部材25を移動させて、第一のレーザ変位計26を、上記積層体40の表面における所望の位置に移動させると共に、第二のレーザ変位計27を、上記積層体40の裏面における、上記所望の位置に対応する位置に移動させる。これにより、一直線上に対向配置された第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27の間に積層体40が配置されることになる。また、積層体40の表面または裏面に対して、上記第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27を結ぶ直線を直交させることになる。
【0031】
移動後、第一のレーザ変位計26から、積層体40の上面(サポートプレート43の上面)にレーザ光を照射し、積層体40で反射したレーザ光Aを受光する一方、第二のレーザ変位計27から、保持ステージ31に形成された孔32を通じて、積層体40の下面(基板41の下面)にレーザ光を照射し、積層体40で反射したレーザ光Bを受光する。これにより、積層体40の表面の第一の変位および裏面の第二の変位を測定する(測定工程)。
【0032】
このとき、第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27は、レーザ光を同時に照射して積層体40の表裏面の変位を同時に測定してもよく、レーザ光を別々に照射して積層体40の表裏面の変位を別々に測定してもよい。或る一つの孔32での測定においては、第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27の位置は見かけ上、固定されていることになるので、レーザ光の照射のタイミングは互いに同時であってもよく、互いに異なっていてもよい。但し、同時にレーザ光を照射した方がより正確に厚さを測定することができ、また、測定時間を短縮することができる。
【0033】
また、第一のレーザ変位計26の受光部は、積層体40の表面で反射したレーザ光Aだけを受光し、第二のレーザ変位計27の受光部は、積層体40の裏面で反射したレーザ光Bだけを受光する。つまり、第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27は、積層体40の表裏面からの反射光だけを検出し、サポートプレート43や接着層42、基板41を透過若しくはこれら各層で反射したレーザ光を検出しないので、レーザ光A,Bが互いに干渉することはない。
【0034】
第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27は、受光したレーザ光を信号に変換して算出装置に送信する。算出装置は、上記第一の変位および第二の変位から、演算によって積層体40の厚さを算出し(算出工程)、結果を例えば外部表示装置に出力したり、記憶装置に記憶したりする。
【0035】
或る一つの孔32での積層体40の表裏面の変位の測定が終われば、厚さ測定器57は、変位計保持部21を駆動し、第一移動部材23および第二移動部材25を移動させて、第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27を、次に測定する位置、具体的には、次の孔32の位置に対応する位置に相対的に移動させる。これにより、次の孔32の位置での積層体40の表裏面の変位を測定し、積層体40の厚さを算出する。
【0036】
その後、上記測定を積層体40の大きさ等に応じて繰り返し、積層体40の表面の変位を複数測定する。厚さ測定器57は、第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27を積層体40に対して相対的に移動させて測定するので、積層体40の表裏面全体にわたって厚さを測定することができる。従って、積層体40の厚み分布を測定することができる。また、第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27は、互いの相対的な位置や距離が常に一定であるので、装置の微振動や、積層体40の表裏面の凹凸の有無等に左右されることなく、当該積層体40の厚さを正確に測定することができる。
【0037】
尚、上記説明においては、変位計保持部21によって第一のレーザ変位計26および第二のレーザ変位計27を測定対象物保持部22に対して相対移動させる方法となっているが、厚さ測定方法は当該方法に限定されるものではなく、測定対象物保持部を、変位計保持部に保持されている第一のレーザ変位計および第二のレーザ変位計に対して相対移動させる方法であってもよく、変位計保持部および測定対象物保持部が互いに相対移動する方法であってもよい。
【0038】
〔積層体形成システム〕
上記構成の厚さ測定器57を備えた積層体形成システムについて、
図4を用いて以下に説明する。積層体形成システムは、基板と支持体であるサポートプレートとを、接着層を介して貼り合わせて積層体を形成するシステムである。
【0039】
積層体形成後における基板の薄化、実装等のプロセスを考慮すると、積層体の厚み分布の値は小さいことが好ましく、製品の品質管理のためには、半導体ウエハの製造工程において積層体の厚み分布を測定することが好ましい。本実施形態では、積層体形成システムが厚さ測定器57を備えることにより、積層体形成のプロセス中に積層体の厚み分布を測定することができ、効率的である。また、積層体の厚み分布に関する情報は、例えば、製造される積層体の異常の検出に有用である。
【0040】
また、本実施形態において、厚さ測定器57は、基板との貼り付け前のサポートプレートの厚み分布を測定する。積層体の厚み分布は、サポートプレートの厚み分布によっても左右されるため、サポートプレートの厚み分布を予め測定することにより、製造される積層体の異常が何に起因するのかを知ることができる。また、サポートプレートの厚み分布に関する情報は、例えば、サポートプレートの異常の検出に有用である。
【0041】
図4に示すように、積層体形成システム1は、基板上に接着剤を塗布するスピンナー(塗布装置)52と、接着剤が塗布された基板を加熱して当該基板上に接着層を形成するベークプレート(加熱装置)51と、基板とサポートプレートとを、接着層を介して貼り合わせて積層体を形成する重ね合わせ部6および貼付部(貼付装置)7と、積層体の厚み分布を測定する厚さ測定器57とを備えている。そして、積層体形成システム1は、キャリアステーション(格納部)50と、温度調節部56と、第一搬送装置4と、第二搬送装置54と、洗浄装置53とをさらに備えている。積層体形成システム1は、保持部3および重ね合わせ部6を備えていてもよい。尚、積層体形成システム1は、各装置の動作を制御する制御部(図示せず)を備えている。
【0042】
以下、積層体形成システム1の各装置について説明する。
【0043】
(塗布装置)
スピンナー(塗布装置)52は、基板上に接着剤を塗布する装置である。本実施形態においては、第二搬送装置54が基板をスピンナー52に搬入して載置する。スピンナー52は、載置された基板を例えば3000rpmで回転させながら当該基板上に接着剤をスピン塗布する。基板への接着剤の塗布方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法が挙げられる。また、基板の回転速度も特に限定されるものではなく、接着剤の種類、基板の大きさ等に応じて適宜設定すればよい。
【0044】
また、スピンナー52は、基板上に接着剤を塗布するときに、基板の端面または裏面に付着した接着剤を洗浄するための洗浄液を基板にさらに塗布する洗浄部を備えていてもよい。これにより、接着剤を洗浄する洗浄装置を別途設けることなく、基板上に接着剤を塗布しながら当該基板の端面または裏面を洗浄することができる。よって、本発明に係る積層体形成システム1においては、省スペース化することができ、また、積層体の形成時間を短縮することができる。
【0045】
(加熱装置)
ベークプレート(加熱装置)51は、スピンナー52により接着剤が塗布された基板を加熱して、基板上に接着層を形成する装置である。本実施形態においては、スピンナー52により基板上に接着剤を塗布した後に、当該基板をベークプレート51に載置し、接着剤をベークする。ベークプレート51に熱源を取り付けることにより、または天板に熱源を取り付けることにより、接着剤をベークすることができる。熱源の例としては、例えば、温水ヒータ、温風ヒータ、赤外線ヒータ、電熱ヒータ等が挙げられる。
【0046】
(重ね合わせ部)
重ね合わせ部6は、基板およびサポートプレートを、接着層を介して重ね合わせる装置である。例えば、本実施形態において、重ね合わせ部6は、基板とサポートプレートとの相対位置を、位置調整部(図示せず)を用いて調整した後に、基板とサポートプレートとを重ね合わせるようになっている。
【0047】
(貼付装置)
貼付部(貼付装置)7は、基板とサポートプレートとを、接着層を介して貼り合わせて積層体を形成する装置である。貼付部7では、重ね合わせ部6にて重ね合わされた基板およびサポートプレートを押圧しながら接着層を加熱する。具体的には、例えば、貼付部7内の上下にプレスプレートを設け、この上下のプレスプレート間に、重ね合わせた基板およびサポートプレートを載置し、押圧すればよい。これにより、積層体を形成することができる。
【0048】
(貼り合わせユニット)
本実施形態において、上記重ね合わせ部6および貼付部7は、貼り合わせユニット2を構成している。貼り合わせユニット2は、一つの処理室の内部を二つの処理部屋に仕切る壁を設けた構造とすることができる。或いは、貼り合わせユニット2は、重ね合わせ部6と貼付部7とがそれぞれの側面において隙間無く互いに接している構造とすることもできる。重ね合わせ部6および貼付部7の境界には、重ね合わせ部6で重ね合わせた基板およびサポートプレート、並びに、貼付部7で貼り合わせて形成した積層体の受け渡しを行うためのゲート8が設けられている。ゲート8はシャッターによってその開閉が制御されている。ゲート8の開閉には従来公知の構造を用いることができ、例えばゲートバルブ構造を適用することができる。
【0049】
また、重ね合わせ部6には、貼り合わせユニット2と第一搬送装置4との間で基板、サポートプレート、および積層体の受け渡しを行うための受け渡し窓9が開閉可能に設けられている。重ね合わせ部6および貼付部7には、公知の減圧装置(図示せず)がそれぞれ設けられており、重ね合わせ部6および貼付部7の内部圧の状態をそれぞれ独立に制御することができる。さらに、貼り合わせユニット2には、ゲート8を介して重ね合わせ部6および貼付部7間で積層体の受け渡しを行う内部搬送装置(図示せず)が設けられている。
【0050】
貼付部7は減圧可能な構成であるため、減圧雰囲気下において基板とサポートプレートとを、接着層を介して貼り合わせることができる。減圧雰囲気下において接着層に基板を圧着させることによって、基板表面の凹凸パターンの窪みに空気が存在しない状態で、接着層を当該窪みに入り込ませることができるため、接着層と基板との間での気泡の発生を、より確実に防止することが可能である。
【0051】
ゲート8は、シャッターが開いた状態で、重ね合わせた基板およびサポートプレートを重ね合わせ部6から貼付部7に移動させることができるように、また、積層体を貼付部7から重ね合わせ部6に移動させることができるように形成されている。従って、ゲート8は、重ね合わせ部6および貼付部7の何れも減圧させた状態でシャッターを開けることにより、重ね合わせた基板およびサポートプレートを重ね合わせ部6から貼付部7に、また、積層体を貼付部7から重ね合わせ部6に、減圧下で移動させることができる構造となっている。
【0052】
(格納部)
キャリアステーション(格納部)50は、基板およびサポートプレートを格納している。また、本実施形態においては、キャリアステーション50を介して、基板およびサポートプレートを積層体形成システム1に投入することができる。また、貼付部7にて形成した積層体を、キャリアステーション50を介して、積層体形成システム1から取り出すことができる。
【0053】
(保持部)
保持部3は基板およびサポートプレートのアライメントをする装置である。保持部3は、撮像部および中心位置検出部(図示せず)を備えており、重ね合わされる前の基板またはサポートプレートを保持するようになっている。
【0054】
撮像部は、例えばCCDカメラで構成されており、保持された基板またはサポートプレートの互いに異なる端面を含む領域をそれぞれ撮像するようになっている。当該領域は、例えば、保持された基板またはサポートプレートの凡そ対角線上に設定されていることが好ましい。
【0055】
中心位置検出部は、撮像部が撮像した複数の画像に基づいて、保持された基板またはサポートプレートの中心位置を検出する。中心位置検出部は、円板の端面の画像に基づいて、仮想円を算出し、中心位置を検出するようになっていればよい。端面の画像に基づく中心位置の検出技術は、公知の画像処理を用いればよく、特に限定されない。
【0056】
基板またはサポートプレートは、保持部3において中心位置が検出された後、第一搬送装置4により、重ね合わせ部6に搬送される。そして、基板またはサポートプレートは、重ね合わせ部6において、重ね合わせの前に、位置調整部(図示せず)によって、保持部3において検出した互いの中心位置が重なるように位置が調整される。
【0057】
(温度調節部)
温度調節部56は基板を冷却することにより、基板の温度調節を行う冷却板(図示せず)と、基板の位置を調整する位置調整装置(図示せず)とを備えている。本実施形態においては、温度調節部56を挟んで、第一搬送装置4と第二搬送装置54とが基板の受け渡しを行う。
【0058】
基板または積層体を冷却板に載置することで、これら基板または積層体を冷却することができる。また、冷却時に位置調整装置を用いて、基板のアライメントを行うことができる。よって、積層体形成システム1を省スペース化することができるとともに、積層体の形成時間を短縮することができる。
【0059】
さらに、温度調節部56は接着層を形成した後の基板および積層体を自然冷却するための冷却エリアを有している。冷却エリアは、基板および積層体の熱を効率的に逃がすことができる構成であればよい。例えば、冷却エリアには、基板および積層体を支持するための支持点が形成されており、基板および積層体の面の内周部を三点〜十点において支持点に支持させることにより、基板および積層体全体の熱を効率的に逃がすことができる。
【0060】
(第一搬送装置)
第一搬送装置4は、キャリアステーション50、貼り合わせユニット2、温度調節部56および厚さ測定器57の間で基板を搬送する。また、第一搬送装置4は、
図4における矢印方向に、第一搬送装置走行路5内を移動する。第一搬送装置4は、必要な処理が終了した後に次の処理を行うために、基板、サポートプレートおよび積層体をそれぞれ所望の位置まで搬送する。
【0061】
(第二搬送装置)
第二搬送装置54は、温度調節部56、ベークプレート51、スピンナー52、および洗浄装置53の間で基板を搬送する。また、第二搬送装置54は、
図4における矢印方向に、つまり、第一搬送装置4の移動方向と直交する方向に、第二搬送装置走行路55内を移動する。第二搬送装置54は、必要な処理が終了した後に次の処理を行うために、基板をそれぞれ所望の位置まで搬送する。
【0062】
(洗浄装置)
洗浄装置53は、接着剤を塗布した基板を洗浄する装置である。本実施形態において、洗浄装置53は、基板上に接着剤を塗布した後に、基板の端面または裏面に付着した接着剤を洗浄する。洗浄方法としては、例えば、端面または裏面に接着剤が付着した基板を3000rpmで回転させながら、洗浄液を端面または裏面に塗布すればよい。
【0063】
洗浄液は、接着剤を溶解させることができる溶剤を含んでいればよく、特に限定されるものではないが、例えば、直鎖状の炭化水素、炭素数4から15の分岐状の炭化水素、テルペン系溶剤、ラクトン類、ケトン類、多価アルコール類、多価アルコール類の誘導体、環式エーテル類、エステル類、芳香族系有機溶剤等を用いることができる。洗浄液としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)がより好ましい。
【0064】
〔積層体形成方法〕
次に、
図5に示すフローチャートを参照しながら、積層体形成システム1を用いて積層体を形成する工程について順に説明する。
図5に示すステップS1〜S10は、基板に関する処理を表し、ステップS11〜S13は、サポートプレートに関する処理を表し、ステップS14〜S17は、積層体に関する処理を表す。
【0065】
ステップS1において、第一搬送装置4が基板をキャリアステーション50から積層体形成システム1内に投入する。第一搬送装置4は、基板を支持した状態で当該基板を温度調節部56まで搬送する。
【0066】
ステップS2において、第一搬送装置4は基板を温度調節部56の冷却板に載置し、温度調節部56は基板の温度を調節する。そして、温度調節部56の位置調整装置によって、基板のアライメントを冷却板上で行う。アライメント終了後に、第二搬送装置54は、基板を支持した状態で当該基板をスピンナー52に搬入する(第一搬入工程)。
【0067】
ステップS3において、第二搬送装置54は基板をスピンナー52に載置し、スピンナー52は基板に接着剤を塗布する(接着剤塗布工程)。ステップS2で基板のアライメントを行っているため、基板の表面に均等に接着剤をスピン塗布することができる。また、ステップS2において基板の温度調節を行っているので、一定の塗布条件で接着剤を塗布することができる。基板に接着剤を塗布した後に、スピンナー52に設けられた洗浄部は、基板の裏面を洗浄(バックリンス)する。また、必要に応じて、洗浄部は、基板の端面を洗浄(エッジバックリンス)してもよい。洗浄終了後に、第二搬送装置54は、基板を支持した状態で当該基板をベークプレート51に搬送する(第二搬入工程)。
【0068】
ステップS4において、第二搬送装置54は基板をベークプレート51に載置し、熱源を用いて基板に塗布された接着剤をベークする。接着剤をベークすることにより、溶剤を適切に揮発させることができる。また、接着剤をベークする温度(t
1℃)は、接着剤の種類に応じて適宜定めることができる。
【0069】
ステップS5において、接着剤をさらにベークする。接着剤をさらにベークする温度(t
2℃)は、接着剤の種類に応じて適宜定めることができる。ベーク終了後に、第二搬送装置54は、基板を支持した状態で当該基板を温度調節部56まで搬送する。
【0070】
ステップS6において、第二搬送装置54は基板を冷却板に載置し、温度調節部56は基板を冷却する。そして、位置調整装置により冷却板上で基板のアライメントを行う。アライメント終了後に、第二搬送装置54は、基板を支持した状態で当該基板を洗浄装置53に搬入する。
【0071】
ステップS7において、第二搬送装置54は基板を洗浄装置53に載置し、洗浄装置53は基板の端面をエッジバックリンスし、基板の裏面をバックリンスする。これにより、スピンナー52にて接着剤を基板にスピン塗布したときに、当該基板の端面および裏面に付着した接着剤を除去することができる。ここで、ステップS6において、基板の位置調整を行っているので、基板の端面(エッジ)を正確に洗浄することができる。基板の洗浄終了後に、第二搬送装置54は、基板を支持した状態で当該基板をベークプレート51まで搬送する。
【0072】
ステップS8において、第二搬送装置54は基板をベークプレート51に載置し、熱源を用いて基板に塗布された接着剤をさらにベークする。接着剤をさらにベークする温度(t
3℃)は、接着剤の種類に応じて適宜定めることができる。これにより、基板上の接着剤が乾燥し、接着層が形成される(接着層形成工程)。
【0073】
ステップS4、S5およびS8において、接着剤をベークする温度をそれぞれt
1、t
2、t
3(℃)とすると、t
1<t
2<t
3(但し、t
1≧60(℃)およびt
3≦250(℃)であることが好ましい)を満たすように、ステップ間で接着剤をベークする温度を段階的に上げることが好ましい。接着剤の塗布が終了した直後に高温でベークすると、接着剤の収縮による基板の反り、接着剤表面のシワ、接着剤の発泡等の不具合が発生し易くなり、均一な接着層を形成することができないおそれがあるが、ベークする温度を段階的に上げることにより均一な接着層を形成することができる。
【0074】
接着層の形成後に、第二搬送装置54は、基板を支持した状態で当該基板を温度調節部56まで搬送する。
【0075】
ステップS9において、第二搬送装置54は基板を冷却エリアの支持点に支持させ、温度調節部56は基板を自然冷却する。自然冷却後に、第一搬送装置4は、基板を支持した状態で当該基板を保持部3まで搬入する。
【0076】
ステップS10において、第一搬送装置4は基板を保持部3に搬入し、載置する。保持部3は、基板のアライメントを行う。アライメント後に、第一搬送装置4は、基板を支持した状態で当該基板を重ね合わせ部6に搬入する(第三搬入工程)。
【0077】
そして、基板に関する上記ステップS1〜S10の前、終了後、または並行して、サポートプレートに関するステップS11〜S13を行う。先ず、ステップS11において、第一搬送装置4がサポートプレートをキャリアステーション50から積層体形成システム1内に投入する。第一搬送装置4は、サポートプレートを支持した状態で当該サポートプレートを厚さ測定器57に搬入する。
【0078】
ステップS12において、第一搬送装置4は、サポートプレートを厚さ測定器57に載置し、厚さ測定器57は、サポートプレートの厚み分布を測定する(支持体厚み分布測定工程)。厚み分布を測定した後に、第一搬送装置4はサポートプレートを支持した状態で当該サポートプレートを保持部3まで搬入する。サポートプレートを基板に貼り合わせる前に、サポートプレートの厚み分布の測定を行うことにより、サポートプレートの異常を検出することができる。
【0079】
ステップS13において、第一搬送装置4は、サポートプレートを保持部3に搬入し、載置する。そして、保持部3はサポートプレートをアライメントする。アライメントした後に、第一搬送装置4は、サポートプレートを支持した状態で当該サポートプレートを重ね合わせ部6に搬入する(第四搬入工程)。
【0080】
サポートプレートに分離層が形成されている場合には、第一搬送装置4は、分離層がサポートプレートよりも鉛直上方に位置するようにしてサポートプレートを搬送してから、サポートプレートの上下を反転させて、重ね合わせ部6に搬送することが好ましい。重ね合わせ部6に搬入する前まで、分離層が形成されていないサポートプレートの裏面を第一搬送装置4が支持することにより、分離層と第一搬送装置4とが接触する時間を短くして、第一搬送装置4によって分離層が汚染または損傷されることを抑制することができる。
【0081】
第一搬送装置4は、サポートプレートが分離層よりも鉛直上方に位置するようにしてサポートプレートを重ね合わせ部6に搬送する。そして、第三搬入工程にて第一搬送装置4が重ね合わせ部6に搬送した基板と上記サポートプレートとを、分離層と接着層とが対面した状態で重ね合わせる。
【0082】
基板およびサポートプレートの重ね合わせは、重ね合わせ部6内の位置調整部(図示せず)を用いて基板とサポートプレートとの相対位置を調整してから行ってもよい。これにより、基板およびサポートプレートの中心位置がずれることなく、これらの中心位置を重ね合わせることができる。
【0083】
内部搬送アーム(図示せず)は、重ね合わせた基板およびサポートプレートを支持した状態で、これら基板およびサポートプレートを貼付部7に搬入する。
【0084】
ステップS14において、貼付部7は、重ね合わせた基板およびサポートプレートを、接着層を介して貼り合わせる(貼付工程)。このとき、プレスプレートで、基板およびサポートプレートを押圧しながら、接着層を形成する熱可塑性材料がガラス転移点以上の温度になるまで加熱する。これにより、接着層の熱流動性が向上し、容易に変形するようになるため、積層体を形成することができる。
【0085】
積層体の形成後、第一搬送装置4は、積層体を支持した状態で当該積層体を温度調節部56に搬送する。ステップS15において、第一搬送装置4は、積層体を冷却エリアの支持点に支持させ、温度調節部56は積層体を自然冷却する。自然冷却することにより、積層体の反りを低減することができる。また、自然冷却以外に基板内に温度分布が生じないようにゆるやかに強制排気を行うことによって、より短時間で冷却が完了する。冷却が終了した後に、第一搬送装置4は積層体を支持した状態で当該積層体を厚さ測定器57に搬入する(第五搬入工程)。
【0086】
ステップS16において、厚さ測定器57に搬入された積層体の厚み分布を測定する(積層体厚み分布測定工程)。ステップS15にて積層体を自然冷却しているため、室温(例えば25℃)における積層体の厚み分布を測定することができる。
【0087】
積層体の厚み分布を測定することによって、積層体の品質を確認することができる。また、ステップS12にて、サポートプレートの厚み分布を測定しているため、サポートプレートの厚み分布と積層体の厚み分布とを比較することにより、積層体における凹凸が、サポートプレートまたは接着層の何れに起因するものであるのかを知ることができる。
【0088】
また、基板またはサポートプレートに品番等を設けることにより、積層体毎の貼付精度を管理することができ、積層体形成処理にフィードバックすることができる。
【0089】
ステップS17において、積層体の厚み分布の測定終了後に、第一搬送装置4は、厚さ測定器57からキャリアステーション50に積層体を搬送する。そして、積層体をキャリアステーション50から取り出す。
【0090】
よって、ステップS1〜S17のステップにより、基板およびサポートプレートを、接着層を介して貼り合わせた積層体を形成することができる。
【0091】
また、上述した二つの搬送装置(第一搬送装置4、第二搬送装置54)を使い分けて搬送を行うことにより、積層体形成システム1を構成する多数の装置を
図4に示すようにコンパクトに配置したとしても、装置間での基板、サポートプレートおよび積層体の受け渡しを効率的に行うことができ、従って積層体を効率的に形成することができる。
【0092】
キャリアステーション50から取り出された基板は、サポートプレートに支持された積層体の状態で、薄化、実装等のプロセスに供される。そして、プロセス終了後に、サポートプレートを介して光を分離層に照射し、分離層を変質させることにより、サポートプレートと基板とを容易に分離することができる。
【0093】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。