特許第6352047号(P6352047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6352047異なる極性をもつ化合物を含む試料の一斉分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352047
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】異なる極性をもつ化合物を含む試料の一斉分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/02 20060101AFI20180625BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20180625BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20180625BHJP
   B01J 20/286 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   G01N30/02 N
   G01N30/26 A
   G01N30/88 C
   B01J20/286
   G01N30/26 L
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-99910(P2014-99910)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-215320(P2015-215320A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年2月9日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)「質量分析用超臨界流体抽出分離装置の開発」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085464
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 繁雄
(72)【発明者】
【氏名】馬場 健史
(72)【発明者】
【氏名】福▲崎▼ 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】田口 歌織
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−250186(JP,A)
【文献】 特開2010−243258(JP,A)
【文献】 特開昭63−001968(JP,A)
【文献】 特開2004−177180(JP,A)
【文献】 米国特許第05376789(US,A)
【文献】 High-throughput simultaneous analysis of pesticides by supercritical fluid chromatography/tandem mass spectrometry,Journal of Chromatography A,2012年 9月28日,Vol.1266,P143-148
【文献】 Simultaneous determination of water-and fat-soluble vitamins in pharmaceutical preparations by high-performance liquid chromatography coupled with diode array detection,Analytica Chimica Acta,2004年 4月 9日,Vol.520,P57-67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/02−30/88
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動相送液部、前記移動相送液部からの分析流路に配置された分離カラム、前記移動相送液部と前記分離カラムとの間の分析流路に試料を注入する試料注入部、前記分離カラムから溶出した試料成分を検出する検出器、及び前記分析流路の移動相の流れに対して前記分離カラムの下流に配置された背圧弁を備えたクロマトグラフを用いた分析方法であって、
以下のステップ(A)から(C)のステップを含む分析方法。
(A)前記移動相送液部から送液する移動相における超臨界流体とモディファイアの組成を、移動相が超臨界状態となる状態から移動相が液体状態となる状態までの範囲にわたって、その移動相における超臨界流体に対するモディファイアの割合を時間的に増加させるステップ、
(B)前記試料注入部から試料を注入するステップ、及び
(C)前記分離カラムから溶出した試料成分を前記検出器により検出するステップ。
【請求項2】
脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンを含む混合溶液を前記試料注入部から注入してビタミンを分離分析する請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
前記分離カラムとしてシリカにオクタデシル炭素鎖が結合した充填材を固定相としたもの、シリカにプロピルフルオロフェニル基が結合した充填材を固定相としたもの、又はシリカにオクタデシルシリル基が結合した充填材を固定相としたものであり、
前記モディファイアがメタノール又はメタノールに水を含む溶液である請求項2に記載の分析方法。
【請求項4】
前記移動相はさらにアンモニウムイオンを含む添加剤を含んでいる請求項2又は3に記載の分析方法。
【請求項5】
前記ステップ(A)において、移動相液体状態とするために、該ステップ(A)では移動相における超臨界流体に対するモディファイアの割合を85%以上まで高める請求項1から4のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項6】
前記ステップ(A)では移動相における超臨界流体に対するモディファイアの割合を100まで高める請求項5に記載の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動相として超臨界流体を使用した超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)に関するものであり、さらに具体的には超臨界流体クロマトグラフィーよりも広い移動相組成範囲を含むクロマトグラフィー、いわゆる統一クロマトグラフィー(Unified Chromatograpy)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィーでは、通常、液体、気体又は超臨界流体といった単一状態の移動相が使用され、目的に応じていずれかの移動相が選択される。しかし、標的化合物の化学的性質が広範囲にわたる場合には、移動相の異なる複数のクロマトグラフィーが組み合させる。
【0003】
超臨界流体クロマトグラフィーは、ガスクロマトグラフィー(GC)と液体クロマトグラフィー(LC)に対する相補的な分離技術であり、移動相として超臨界二酸化炭素(SCCO2)又は亜臨界二酸化炭素を用いる。超臨界は臨界温度及び臨界圧力を超えた状態であり、亜臨界は臨界点よりも低い近傍の領域にある状態である。
【0004】
臨界温度および/または臨界圧力の近く又はそれを越えた状態にある二酸化炭素(CO2)からなる流体である超臨界二酸化炭素は、臨界圧力が7.38MPaであり、臨界温度が31.1℃と比較的常温に近く、引火性や化学反応性がなく、純度の高いものが安価に手に入ることなどから、超臨界流体クロマトグラフィーで最もよく利用されている。超臨界二酸化炭素は低粘度と高拡散性というクロマトグラフィーとして好ましい性質をもち、超臨界二酸化炭素クロマトグラフィーは、液体クロマトグラフィーと比べると、より高速で、かつより良好な分離を得ることができる。
【0005】
超臨界流体クロマトグラフィーの移動相の主な流体である超臨界流体二酸化炭素は、非極性でn−ヘキサンに類似していることから、超臨界流体クロマトグラフィーは順相クロマトグラフィーであり、非極性化合物の分析に適したものと考えられてきた。しかし、非極性の超臨界流体二酸化炭素は、メタノールやエタノールといった極性をもつ有機溶媒に対して相溶性をもつことから、これらの極性有機溶媒をモディファイアとして添加することにより移動相に極性をもたせることが行われている。モディファイアはその添加割合が時間とともに徐々に増加させられていき、一般には30−40%まで増加させられる。
【0006】
超臨界流体クロマトグラフィーでは、非極性化合物だけでなく、モディファイアを添加することにより極性化合物も分析できる可能性がある。そのようにして極性化合物と非極性化合物の同時分析に超臨界流体クロマトグラフィーを活用したという報告(非特許文献1、2参照。)があるが、その数は非常にすくない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ishibashi, M.; Ando, T.; Sakai, M.; Matsubara, A.; Uchikata, T.; Fukusaki, E.; Bamba, T. J. Chromatogr. A 2012, 1266, 143-148.
【非特許文献2】Taguchi, K.; Fukusaki, E.; Bamba, T. J. Chromatogr. A 2013, 1299, 103_9.
【非特許文献3】Berger, T. A. J. Chromatogr. A 1997, 785, 3-33.
【非特許文献4】Grand-Guillaume Perrenoud, A.; Boccard, J.; Veuthey, J.-L.; Guillarme, D. J. Chromatogr. A 2012, 1262, 205-13.
【非特許文献5】Brunelli, C.; Zhao, Y.; Brown, M. H.; Sandra, P. J. Chromatogr. A 2008, 1185, 263-72.
【非特許文献6】Berger, T. A.; Deye, J. F. J. Chromatogr. 1991, 547, 377-392.
【非特許文献7】Luo, X.; Chen, B.; Ding, L.; Tang, F.; Yao, S. Anal. Chim. Acta 2006, 562, 185-189.
【非特許文献8】West, C. Chromatogr. Today 2013, 22-27.
【非特許文献9】Moreno, P.; Salvado, V. J. Chromatogr. A 2000, 870, 207-15.
【非特許文献10】Delgado-Amarreno, M. M.; Gonzalez-Maza, I.; Sanchez-Perez, a; Carabias-Martinez, R. J. Chromatogr. A 2002, 953, 257-62.
【非特許文献11】Klejdus, B.; Petrlova, J.; Potesil, D.; Adam, V.; Mikelova, R.; Vacek, J.; Kizek, R.; Kuban, V. Anal. Chim. Acta 2004, 520, 57-67.
【非特許文献12】Dabre, R.; Azad, N.; Schwammle, A.; Lammerhofer, M.; Lindner, W. J. Sep. Sci. 2011, 34, 761-72.
【非特許文献13】Yin, C.; Cao, Y.; Ding, S.; Wang, Y. J. Chromatogr. A 2008, 1193, 172-7.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、極性化合物と非極性化合物の同時分析、又は親水性化合物と疎水性化合物の同時分析といった異なる極性をもつ化合物を含む試料の一斉分析方法を対象にする。後述の実施の形態では、そのような化合物の一例としてビタミンをとりあげる。ビタミンは人間と動物にとって不可欠な栄養素であり、正常な成長、身体の維持と機能発揮のために必要である。また、ビタミンが欠乏したり取り過ぎたりすると特有の病気になる。それ故、食品中または体内のビタミンを測定する研究が精力的に行われてきた。ビタミンは、それらの溶解度に応じて2つのグループに分類される。すなわち、脂溶性ビタミン(FSV)と水溶性ビタミン(WSV)である。水溶性に関して2つのグループ間には大きな差異がある。その差異は、表1に示すように、logPで表して−2.11から10.12に及ぶ。
【0009】
【表1】
【0010】
表1中の1−8番は脂溶性ビタミン、9−17番は水溶性ビタミンである。脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンは酸塩基としての挙動も異なっているので、それらを同時に分析することは、従来のクロマトグラフィーでは困難である。
【0011】
本発明は、超臨界流体クロマトグラフィーを発展させて、異なる極性をもつ化合物を含む試料を同時に分析する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、移動相送液部、前記移動相送液部からの分析流路に配置された分離カラム、前記移動相送液部と前記分離カラムとの間の分析流路に試料を注入する試料注入部、前記分離カラムから溶出した試料成分を検出する検出器、及び前記分析流路の移動相の流れに対して前記分離カラムの下流に配置された背圧弁を備えたクロマトグラフを用いた分析方法であり、以下のステップ(A)から(C)のステップを含んでいる。
(A)前記移動相送液部から送液する移動相における超臨界流体とモディファイアの組成を、移動相が超臨界状態となる超臨界流体過剰の状態から移動相が液体状態となるモディファイア過剰の状態までの範囲にわたって、その移動相における超臨界流体に対するモディファイアの割合を時間的に変化させるステップ、
(B)前記試料注入部から試料を注入するステップ、及び
(C)前記分離カラムから溶出した試料成分を前記検出器により検出するステップ。
【0013】
クロマトグラフィー技術は、移動相の物理的な状態が気体であればガスクロマトグラフィー、超臨界流体であれば超臨界流体クロマトグラフィー、液体であれば液体クロマトグラフィーというように分類されるのが一般的である。そのため、本発明の方法は、一般的な分類方法の観点からみると、超臨界流体クロマトグラフィーと呼ぶのは正確ではない。というのは、本発明の方法を通して観察される移動相の状態は超臨界状態だけではないからである。
【0014】
2以上の移動相状態を使用する分離技術は、統一クロマトグラフィーと呼ばれる。本発明の方法は、二酸化炭素の相状態に関して、超臨界状態、亜臨界状態及び液体状態の3つの状態を使用するので、統一クロマトグラフィーに属し、移動相及び分析条件を時間とともに変化させることにより、1つのクロマトグラフィーの中で超臨界流体クロマトグラフィーと液体クロマトグラフィーをともに実現するものである。その詳しい方法については実施の形態で説明するが、一例として、移動相の状態を超臨界から亜臨界を経て液体へと連続的に変化させる。そのために、移動相として二酸化炭素にモディファイアの添加割合を増加させていくグラジエント法を採用し、超臨界状態、例えば100%に近い超臨界二酸化炭素の状態で分析を開始し、移動相が液体状態になるまでモディファイアの割合を100%近くまで徐々に増やしていく。
【0015】
本発明の統一クロマトグラフィーにおける重要な点は、二酸化炭素の相状態が変化しても移動相において不連続な遷移がみられないことである。温度又は圧力を制御することによって、移動相はガスから超臨界へ、又は超臨界から液体へと連続して変化させることができる。その際、一連の分析を通して二酸化炭素は常に又はほぼ常に存在している。分析開始時は二酸化炭素の相状態は超臨界であるが、モディファイアの割合を増していくにつれて亜臨界から液体へと変化していくものと考えられる。しかしそれだけではない。本発明では、移動相は液体状態となるまで二酸化炭素がモディファイアで置換されるまで組成が変化させられるので、本発明の方法は超臨界流体クロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーに比べて、さらにはモディファイアの割合を30−40%までしか増やさない従来の統一クロマトグラフィーに比べて、移動相の溶媒和力を高めることができる。すなわち、広い極性範囲の多様な化合物を分析できる可能性を与えることができる。さらに、超臨界流体クロマトグラフィーと液体クロマトグラフィーの間の境界をなくし、2つのクロマトグラフィー技術を一体化するものでもある。
【0016】
本発明の統一クロマトグラフィーを達成するためには、重要な事柄がある。それは適切なカラムを選択することである。それにより多様な化合物の同時分析の可能性が高まる。移動相の二酸化炭素をモディファイアで置き換えていくことによって移動相の極性の多様性を高めるだけでなく、カラムを選択して多様な化合物を分離できるようにすることは実用的な面で重要である。
【0017】
そこで、本発明の好ましい実施形態では、分離カラムとしてシリカにオクタデシル炭素鎖が結合した充填材を固定相としたもの、シリカにプロピルフルオロフェニル基が結合した充填材を固定相としたもの、又はシリカにオクタデシルシリル基が結合した充填材を固定相としたもの(BEH:Ethylene Bridged Hybrid)を使用し、モディファイアとしてメタノール又はメタノールに水を含む溶液を使用する。そのようにカラムの特性と移動相溶媒とを選択することにより、統一クロマトグラフィーが多様な化合物の分析に有用なものとなる。
【0018】
超臨界流体二酸化炭素は酸、塩基及び水に対しても相溶性をもつので、モディファイアのほかにそれらの物質を添加剤として添加することにより、同時に分析できる化合物の範囲をさらに広げることもできる。そこで、本発明のさらに他の実施形態ては、移動相はモディファイアのほかにさらにアンモニウムイオンを含む添加剤を含んでいてもよい。
【0019】
また、さらに他の実施形態ては、ステップ(A)において、移動相が液体状態となるモディファイア過剰の状態とするために、ステップ(A)では移動相における超臨界流体に対するモディファイアの割合を70%以上、好ましくは85%以上まで高めてもよく、さらに、100%まで高めてもよい。
【0020】
好ましい一実施形態では、極性の異なる脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンを含む混合溶液を試料として分離分析する。これは、本発明方法を特定の化合物の分析に限定するのではなく、統一クロマトグラフィーの1回の分析で化合物の範囲をどこまで広げられるかをみる上で、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンを含むビタミン類の同時分析は実用的で直接的な指標となりうるからである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の統一クロマトグラフィーによれば、移動相における超臨界流体とモディファイアの組成を、移動相が超臨界状態となる超臨界流体過剰の状態から移動相が液体状態となるモディファイア過剰の状態までの範囲にわたって時間的に変化させるので、1回の分析で移動相の極性範囲を広げることができ、例えば、実施例に示すように、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンを含むlogPで2.11から10.12にわたるような広い範囲にある17種類のビタミンの同時分析が可能になる。しかもその分析を従来の超臨界流体クロマトグラフィーに比べて短時間で実行できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の統一クロマトグラフィーが実施されるクロマトグラフの一例を示す流路図である。
図2】実施例1において移動相に添加物として塩基を添加したときのピーク形状に与える影響を示すクロマトグラムである。
図3】実施例1において移動相にギ酸アンモニウムを添加したときのチアミンとピリドキシンのピーク形状を示すクロマトグラムである。
図4】実施例1においてカラムの長さを異ならせたピーク形状に与える影響を示すクロマトグラムである。
図5】実施例1において移動相にギ酸を添加したときのピーク形状を示すクロマトグラムである。
図6】実施例1において移動相にギ酸アンモニウムを添加し、その濃度を変化させたときのピーク形状を示すクロマトグラムである。
図7】実施例2で得られたピーク形状を示すクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明方法が実施されるクロマトグラフの一例を図1に示す。ボンベ2に収容された超臨界流体をSFCポンプ4により送液する送液流路6と、モディファイア溶液8をモディファイアポンプ10により送液するモディファイア送液流路12がミキサ14に接続されている。ポンプ4,10及びミキサ14を含む流路が移動相送液部である。超臨界流体としては超臨界二酸化炭素を使用する。
【0024】
ミキサ14から移動相が送られる流路が分析流路16である。分析流路16上には、移動相の流れに対する上流側から、この分析流路16に試料を注入する試料注入部18、分離カラム20、背圧弁22及び検出器24が配置されている。分離カラム20はカラムオーブン21内に収容されて一定温度に保たれる。試料注入部18は例えばオートサンプラである。背圧弁22は分析流路16内の移動相の状態を維持するために、分析流路16内を所定の圧力に保つためのものである。
【0025】
検出器24としては、特に限定されるものではないが、この実施例では質量分析計、例えばタンデム四重極質量分析計を使用する。検出器24としての質量分析計は、ESI(エレクトロスプレーイオン化)源を備えている。背圧弁22の上流側の分析流路16内では移動相は超臨界状態、亜臨界状態又は液体状態であるが、背圧弁22の下流側では移動相は大気圧下に放出されるため、カラム20で分離されて溶出した試料成分は背圧弁22の下流側で移動相とともに霧状になって放出される。移動相の放出口と質量分析計のイオン化室の間に電圧(エレクトロスプレー電圧)を印加することにより、溶出した試料成分がイオン化され、質量分析計により分析される。
【0026】
検出器24として質量分析計を使用する場合は、質量分析計のイオン化室での試料成分のイオン化を促進するために、移動相にギ酸やアンモニア等のイオン化促進剤を添加しておいてもよい。また、カラム20と背圧弁22との間の分析流路に、イオン化補助剤となるメイクアップ溶液をポンプにより供給するようにしてもよい。そのメイクアップ溶液としては、例えばメタノールなどの有機溶媒又は水に、ギ酸やアンモニア等のイオン化促進剤を含む溶液を使用することができる。
【0027】
このクロマトグラフにおいて、背圧弁22の圧力、移動相での超臨界二酸化炭素とモディファイアの割合、分離カラム20の温度、及び試料注入部18からの試料注入は制御部(図示略)により管理されている。分析動作を開始すると、超臨界流体とモディファイア溶液がポンプ4,10により送られ、ミキサ14で混合され、移動相として分析流路16に導入される。グラジエント分析を行うために、超臨界流体とメタノールの割合が時間とともに変化するように、同制御部に保持されたプログラムに従ってポンプ4,10の流量が調節される。分析流路16は背圧弁22によって内圧が所定の圧力に制御されており、分析流路16に導入された移動相は超臨界から亜臨界、液体へと相状態が変化する。試料注入部18により注入された試料は移動相によって分離カラム20に搬送されて成分ごとに分離され、分離カラム20から背圧弁22を経て検出器24の質量分析計に導入されて検出される。
【0028】
(実施例1)
実施例1では、移動相としてモディファイアの割合を60%まで増加させるグラジエント法を実施し、最適なモディファイアとカラムの組合せを検討し、さらに添加剤の有効性を検討した。グラジエント条件は表2の通りである。背圧弁の圧力は1800psiとした。
【0029】
【表2】
【0030】
(移動相)超臨界二酸化炭素とモディファイア
モディファイアとして以下の4種類を検討した。
(1)2−プロパノール(IPA)、
(2)アセトニトリル(ACN)、
(3)メタノール(MeOH)、
(4)メタノール/水(95/5、v/v)(95%MeOH)。
移動相は質量分析の際のイオン化促進剤として0.1%(v/v)のギ酸を含む。
【0031】
移動相流量:1.0mL/分
試料注入量:1μL
カラム温度:35℃
試料温度:6℃
背圧(ABPR):14.2 MPa
【0032】
(カラム)
カラムとして以下の6種類を検討した。
(1)ACQUITY UPC2 BEH(BEH)
(2)ACQUITY UPC2 2−Ethylpyridine(2−EP)
(3)ACQUITY UPC2 CSH Fluoro−Phenyl(FP)
(4)ACQUITY UPC2 HSS C18 SB(C18SB)
(5)ACQUITY HSS Cyano(Cyano)
(6)ACQUITY CSH Phenyl−Hexyl(PH)
(いずれもWaters社の製品、サイズは内径3.0mm、長さ100mm、充填材のサイズは2μm)
【0033】
質量分析時の装置パラメータ:
キャピラリー電圧:0.8KV
脱溶媒和温度:600℃
円錐ガス流量:50L/時間
脱溶媒和ガス流速:1200L/時間
【0034】
17種のビタミンを質量分析計により検出し、そのときのクロマトグラムピークを検出するためのMRM(Multiple Reaction Monitoring)パラメータは表3のように設定した。
【0035】
【表3】
【0036】
イオン化は大気圧イオン化法の一つであるエレクトロスプレーイオン化法を採用した。超臨界流体クロマトグラフから試料溶液を供給するキャピラリーと対向電極の間に高電圧(キャピラリー電圧)を印加するとともに霧化ガスを噴霧させる。これにより、キャピラリー先端に円錐状の液体コーン(テイラーコーン)が形成され、その先端には高度に帯電した液滴が生成する。さらに、帯電した液滴はヒートブロックを通った脱溶媒和ガスの噴霧と脱溶媒管での脱溶媒和温度にて溶媒が気化され、最終的にプロトン付加による正イオン(表3でのSelected Ion [M+H])やプロトン脱離による負イオンが生成される。生成したイオンが表3での「Precursor Ion」である。その後、質量分析計内部でArガスを用いた衝突活性化解離(CID)(表3でのCollision Energy)によって特定のイオンに開裂され、生じたフラグメントイオンの中で選択したイオン(表3でのProduct Ion)を検出器にて測定する。それぞれのビタミンについて選択したイオン(Product Ion)の検出信号強度を時間に対して表示したのが図2図7に示したMRMクロマトグラムである。表3中の「Span」はMRMでモニタリングするm/zの幅、「Cone Voltage」はサンプリングコーンの電圧値で、インターフェースで生じたイオンを質量分析計に導入するために加える電圧である。なお、上記の装置パラメータはエレクトロスプレーイオン化質量分析計において汎用的な数値を一例として示したものであり、そのような装置パラメータに限定されるものではない。
【0037】
(試料調製)
各ビタミンを希釈剤に溶解して標準溶液を調製した。希釈剤は以下の通りである。
脂溶性ビタミン用の希釈剤:クロロホルム:メタノール=50:50
水溶性ビタミン用の希釈剤:メタノール:水=50:50
ビタミンVC用の希釈剤:水100%
それらの標準溶液をさらにメタノールで希釈して最終混合標準溶液とした。
【0038】
カラムの検討:
上述のBEH、2−EP、FP、C18SB、Cyano及びPHの6種類のカラムと、上述の2−プロパノール、アセトニトリル、メタノール、メタノール/水(95/5(v/v))の4種類のモディファイアの組合せについて検討した。モディファイアは質量分析計による検出の際のイオン化を促進するために、0.1%(v/v)のギ酸を含んでいる。
その結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
表4の符号A−Fは脂溶性ビタミン、符号G−Nは水溶性ビタミン(WSV)である。表4の結果に基づき、ピーク形状と検出されたピークの数に応じて、カラムとモディファイアの好ましい組合せとして以下の3つを選択した。
(1)C18SBカラムとメタノールの組合せ
(2)C18SBカラムとメタノール/水(95/5(v/v))の組合せ
(3)FPカラムとメタノールの組合せ
【0041】
FPカラムは、シリカに配位子としてプロピルフルオロフェニル(propyl fluorophenyl)基が結合した充填材を固定相としたものであり、モディファイアとしてメタノールをした場合はすべてのビタミンを溶出している。しかし、FPカラムはC18SBカラムに比べて脂溶性ビタミン(FSV)に対する保持力が弱く、保持時間が短い。
【0042】
C18SBカラムは、シリカに配位子としてオクタデシル炭素鎖(octadecyl carbon chain)が結合した充填材を固定相としたものであり、検討したカラムの中では化合物に対して疎水性相互作用をする傾向が最も強い。C18SBカラムが脂溶性ビタミンを非常によく保持するのはそのためである。一方、C18SBカラムは、エンドキャップされていない(non-endcapping)固定相上の残留シラノール基による親水性相互作用により親水性化合物を保持することもできる。C18SBカラムにおけるオクタデシル炭素鎖とシラノール基の反対の性質が脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの両方に重要な保持挙動を与えていると考えられる。すなわち、オクタデシル炭素鎖が水溶性ビタミンの保持に寄与し、固定相上のシラノール基が水溶性ビタミンの保持に寄与している。その結果、単一のカラムであっても、広範囲の極性の化合物に適用することができる。
【0043】
C18SBカラムに関しては、モディファイアとしてのメタノールとメタノール/水は、検出されたピークの数に関しては有意の差がなかった。しかし、観察されたピーク形状はモディファイアとしてメタノールを用いた方がメタノール/水を用いた場合よりもわずかに良好であった。
以上の検討結果に基づいて、以下の分析では、カラムとしてC18SBカラムを使用する。
【0044】
(添加剤の検討)
カラムとしてC18SBカラムを使用し、モディファイアとしてメタノールを使用すると脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの両方を保持できるが、クロマトグラムに関して改善の余地がある。一つは表4の結果ではチアミン(符号L)のピークが欠けていることであり、他の一つはピリドキシン(符号I)とビタミンVC(符号N)のピーク形状がテーリングをもっている点である。
【0045】
表4のデータは測定時間を10分間に設定したときのものであり、測定時間をさらに長くするとチアミンのピークが観察されたが、チアミンの保持時間が長すぎる点は問題である。
【0046】
ピリドキシンとビタミンVCのピークにはピークテーリングが観察された。ピリドキシンについては、ピリドキシンは複素環式のアミン環をもっているので、それがカラム内のシラノール基と相互作用するのがテーリングの原因であると考えられる。テーリングに関しては、移動相に塩基性添加剤を添加することにより塩基性化合物のピーク形状が改善するという報告がある(非特許文献3参照。)。また、超臨界流体クロマトグラフの移動相中に水酸化アンモニウムが存在すると塩基性化合物のピーク形状が改善するという報告もある(非特許文献4参照。)。
【0047】
そこで、ピリドキシンのピークテーリングに関し、添加物としての塩基の影響を検討した結果のMRMクロマトグラムを図2に示す。図2中の符号1−13は次の13種類のビタミンを示している。1はA acetateとA palmitate、2はα-Tocopherol、3はK2、4はK1、5はβ-Carotene、5はNicotinamide、7はNicotinic acid、8はPyridoxine、9はd-Pantothenic acid、10はBiotin、11はThiamine、12はRiboflavin、13はVCである。A−Cは移動相に添加した塩基の種類と濃度を示しており、Aは0.1%(v/v)ギ酸、Bは0.2%(v/v)ギ酸、Cは0.1%(v/v)水酸化アンモニウムである。
【0048】
図2の結果によれば、ピリドキシン(符号8)のピーク形状は、移動相に水酸化アンモニウムを添加するとよく改善されているが、ギ酸を添加しても改善されていない。
【0049】
さらに、移動相にギ酸アンモニウムを添加した場合のチアミンとピリドキシンのピーク形状を図3に示す。Aは0.1%(w/v)ギ酸アンモニウムを添加した場合であり、Bの0.1%(v/v)ギ酸と0.1%(v/v)水酸化アンモニウムを添加した場合と同様にテーリングが改善されている。この結果から、ピーク形状の改善をもたらすのは水酸イオンではなくアンモニウムイオンであり、アンモニウムイオンがC18SBカラム上でのシラノール残基とピリドキシン内のアミンとの間の相互作用を切断することによってピークテーリングを短くするように作用するものと考えられる。
【0050】
次にチアミンの保持時間が長すぎる点と、ビタミンVCのピークテーリングの問題を検討する。添加物のさらなる検討の前に、カラムの長さを短くすることを検討した。つまり、カラムの長さが短くなるとシラノール基が減少することによって保持時間とピークテーリングの問題が解決するかもしれないと考えられるからである。その結果を図4に示す。Aはカラム長さが5cm、Bはカラム長さが10cmの場合である。符号1−12はビタミンの種類を表し、1はA acetateとA palmitate、2はα-Tocopherol、3はK2、4はK1、5はβ-Carotene、6はNicotinamide、7はNicotinic acid、8はPyridoxine、9はD-Pantothenic acid、10はBiotin、11はThiamine、12はVCである。カラム長さを10cmから5cmに短くすると、チアミンは保持時間が短くなって7分以内に溶出し、しかもピーク形状もよくなっている。ピリドキシンもピーク形状がよくなっている。しかし、ビタミンVCのピーク形状は改善されていない。
【0051】
試料が塩基性化合物と酸性化合物を含んでいる場合、モディファイアとともに移動相に添加する添加剤として、酸だけでなく塩基も添加するとピーク形状が改善されるという報告がある(非特許文献5参照。)。また、超臨界流体クロマトグラフィーにおいて、酸性溶質のピーク形状の改善には溶質よりも強い酸の添加が有効であり、カルボン酸のピークテーリングに対しては酸を添加して溶質のイオン化を抑えることが非常に重要であるという報告もある(非特許文献3、6参照。)。強酸の使用はビタミンVCのピーク形状を改善することができるものの、検出器として質量分析計を使用する場合には、例えばトリフルオロ酢酸のような強酸を使用するとバックグラウンドノイズをもたらす問題がある。
【0052】
そこで、弱酸を用いてビタミンVCのピーク形状の改善が達成できるかどうかをみるために、ギ酸を添加してその効果を検討した。その結果のMRMクロマトグラムを図5に示す。AはビタミンB12、BはビタミンVC、Cはピリドキシン、Dはチアミンである。符号1−4は添加した弱酸を表している。符号1は0.1%(w/v)ギ酸アンモニウムのみ、符号2は0.1%(w/v)ギ酸アンモニウムと0.2%ギ酸、符号3は0.1%(w/v)ギ酸アンモニウムと0.4%ギ酸、符号4は0.1%(w/v)ギ酸アンモニウムと0.6%ギ酸である。モディファイアはメタノールである。
【0053】
図5に示されるように、ギ酸濃度を増加させるとビタミンVC(符号B)のピーク形状が改善されていくことがわかる。ピリドキシン(符号C)ではピーク形状が歪んでいく。また、ビタミンB12(符号A)では感度が低下していき、それはギ酸の添加によってビタミンB12のイオン化が妨げられていくことを示している(非特許文献7参照。)。
【0054】
次に、ギ酸アンモニウム濃度を変化させた場合の結果を図6に示す。Aは0.2%(w/v)ギ酸アンモニウムの場合、Bは0.1%(w/v)ギ酸アンモニウムの場合である。モディファイアはメタノール/水(95/5(v/v))である。符号1−15はビタミンの種類を表している。1はA acetate、2はA palmitate、3はα-Tocopherol、4はK2、5はK1、6はβ-Carotene、7はNicotinamide、8はNicotinic acid、9はPyridoxine、10はd-Pantothenic acid、11はBiotin、12はThiamine、13はRiboflavin、14はVC、15はB12である。ビタミンVC(符号14)についてはギ酸アンモニウム濃度が0.1%から0.2%に増加するとピーク幅が狭くなるように改善されている。ギ酸アンモニウム濃度が増加しても他のビタミンのピーク形状は悪化していない。
【0055】
図5図6の結果は、統一クロマトグラフィーでの分離におけるビタミンVCのピーク形状の改善には添加剤の濃度が他の重要な要因であることを示している。図6の結果を得るための分析では、統一クロマトグラフィーでのギ酸アンモニウムの析出をできるだけ抑えるためにメタノールに水を加えているが、そのことによって何等の悪影響も現れていない。
【0056】
ビタミンB12に関し、図5の符号1(モディファイアがメタノールで、それに0.1%(w/v)ギ酸アンモニウムを添加したもの)のピーク形状と、図6のBの符号15(モディファイアがメタノール/水(95/5(v/v)で、それに0.1%(w/v)ギ酸アンモニウムを添加したもの)のピーク形状とを比較すると、水を添加することによってテーリングが改善されている。
【0057】
(実施例2)
モディファイア組成の検討:
統一クロマトグラフィーの分離において、ピーク形状は添加剤を添加することによりある程度改善できることが分かった。しかし、十分とはいえない。特にビタミンVCとビタミンB12に関してはまだ改良の余地がある。経験則として、超臨界流体クロマトグラフィーにおける好ましい分析対象は、メタノールに対して少なくとも1mg/mLの溶解度をもつものである(非特許文献8参照。)。実際、ビタミンVCはメタノールに対する溶解度がその基準値とされる1mg/mLより低いので、超臨界流体クロマトグラフィーの延長線上にある統一クロマトグラフィーでの測定にふさわしい化合物とはいえない。ビタミンB12に関しては、ビタミンB12はメタノールに対して1mg/mLの溶解度をもっているが、ビタミンB12はリン酸基をもち、それが親水性をもたらす。そのため、移動相の溶媒和力はビタミンVCとビタミンB12を溶出するには十分な強さではないと考えられる。この考えに基づいて、より良好なピーク形状をもって化合物を溶出させるために移動相の極性をさらに増加させることを試みた。
【0058】
モディファイアに極性をもたせる最も簡単な方法は水を加えることである。実施例1では水を5%添加した場合についてすでに検討した。さらに水を加えるとなると、二酸化炭素に対する混和性の問題からシステム圧力が不安定になるおそれがある。
【0059】
そこで、別の方法としてグラジエントにおけるモディファイアの組成をさらに増加させることを検討した。従来の統一クロマトグラフィーではモディファイアの組成は30−40%まで増加させるのが普通であり、実施例1では60%まで増加させた。この実施例では、それをさらに70%まで又は100%まで増加させた。
【0060】
この実施例では、カラムとしてACQUITY UPC2 BEH(BEH)(Waters社の製品、サイズは内径3.0mm、長さ50mm、充填材のサイズは1.7μm)を使用した。このカラムはシリカにオクタデシルシリル基が結合した充填材を固定相としたものである。移動相は以下の溶媒Aと溶媒Bを用い、モディファイアの組成を100%まで増加させる場合はその組成を表5のグラジエント条件に基づいて時間により変化させた。溶媒Aは二酸化炭素、溶媒Bはモディファイアとしてのメタノール/水(95/5(v/v))(0.2%のギ酸アンモニウムを含む)である。カラム温度を40℃とした。
【0061】
【表5】
【0062】
背圧弁の圧力グラジエント条件は表6の通りである。
【表6】
【0063】
以上の条件で分析を10分間実行した。その結果を図7に示す。図7は17種類のビタミンのMRMクロマトグラムであり、符号1から17はビタミンの種類を示している。1はA acetate、2はA palmitate、3はD2、4はα-Tocopherol、5はK2、6はK1、7はα-Tocopherol acetate、8はβ-Carotene、9はNicotinamide、10はNicotinic acid、11はPyridoxine、12はd-Pantothenic acid、13はBiotin、14はThiamine、15はRiboflavin、16はB12、17はVCである。横軸は統一クロマトグラフィーでの保持時間である。図7の結果によれば、モディファイアの最終組成を100%まで増加させたが、モディファイアの組成が85%の状態ですべてのビタミンの溶出が完了している。その結果をみれば、ピーク幅が縮小されてピー形状が改善された。例えばビタミンVC(符号17)とビタミンB12(符号16)のピーク形状をみると、モディファイアの最終組成を70%までとした場合と比べると、ピーク幅がビタミンVCでは0.23分から0.11分に縮小され、ビタミンB12では0.25分から0.10分に縮小された。
【0064】
そして、ピーク幅が縮小されて各ビタミンのピーク間の分離がよくなったことにより、分析を短時間で終了させることができるようになり、図7に示されるように17種類のビタミン17を約4分間で分離することができた。この分離時間は、いままで報告されている超臨界流体クロマトグラフィーの分離時間(非特許文献9−13参照。)よりも短い。
【0065】
また、複数回の繰返し測定により、各ビタミンが再現性よく検出されることも確認された。その結果を表5に示す。
【0066】
【表7】
【0067】
表7には、各ビタミンのピークの保持時間とピーク面積の測定値の平均値(Ave.)と相対標準偏差(%RSD)(=(標準偏差/平均値)×100)が示されている。その結果によれば、保持時間の再現性は0−0.51%RSD、ピーク面積の再現性は1.24−15.63%RSDとなっており、良好な再現性を示している。
【0068】
本発明は、実施例により具体的に示したように、超臨界流体クロマトグラフィーから液体クロマトグラフィーにまたがる統一クロマトグラフィーを用いて多様な化合物を同時分析できる。実施例ではビタミンを用いた分析例について示したが、本発明はビタミンの分析に限定されるものではない。超臨界流体クロマトグラフィーだけであれば、その移動相の溶媒和力は限られたものであるが、本発明の統一クロマトグラフィーはグラジエントにより移動相の二酸化炭素をメタノールに大きく置換することにより、移動相の極性の多様性を広げることができる。その結果、ビタミンの分析に適用した場合は、移動相中の二酸化炭素に対するメタノールの割合を2%から85%まで変化させる実施例のグラジエント方法により、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンを4分間で同時に分析できた。実施例2の方法は、従来の超臨界流体クロマトグラフィーと比べて分析時間が短い。
【0069】
統一クロマトグラフィーは、二酸化炭素なしでは達成できないので超臨界流体クロマトグラフィーを発展させた手法といえる。本発明は統一クロマトグラフィーに対する新しい手法を与えるものである。すなわち、移動相の物理的状態を制御し、かつ二酸化炭素をメタノールで大きく置き換えることにより、統一クロマトグラフィーが移動相中の溶媒和力を高めることができる。その結果、ビタミンに限らず多様な化学的性質を有する化合物の分析方法として適用できることは明らかであり、広い範囲の極性をもつ多様な化合物のための分離手段となりうることは明らかである。
【符号の説明】
【0070】
4 SFCポンプ
10 モディファイアポンプ
14 ミキサ
16 分析流路
18 試料注入部
20 分離カラム
22 背圧弁
24 検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7