(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0014】
(1)本発明の実施の形態に係るアンテナ装置は、曲面形状の第1反射面を有する第1反射部と、1次放射器とを備え、上記1次放射器は、上記第1反射面と対向する第2反射面を有する第2反射部と、上記第2反射部に接続された絶縁部と、上記絶縁部に接続された導波管と、上記導波管および同軸ケーブルを接続する接続部と、上記導波管に設けられ、上記導波管の内部空間へ突出し、かつ金属を含む突出部とを含む。
【0015】
このように、同軸ケーブルおよび第2反射部間において、電波の伝送特性の劣化を抑制する突出部が設けられた導波管、および絶縁部を介して電波を伝送する構成により、電波の減衰が大きい同軸線路を用いて1次放射器の先端まで電波を伝送する構成と比べて、電波を効率よく伝送することができる。
【0016】
(2)好ましくは、上記突出部は、上記内部空間への突出量を調整可能に構成されている。
【0017】
このような構成により、内部空間への突出部の突出量を変更することで導波管における電波の伝送特性の調整を容易に行うことができる。
【0018】
(3)好ましくは、上記突出部は、上記絶縁部のうちの上記第2反射面から最も離れた部分から、上記導波管の延伸方向に管内波長離れた位置までの範囲に設けられている。
【0019】
このように、第2反射面により近い位置に突出部を設ける構成により、内部空間において、電波の伝送特性を劣化させる定在波を効果的に抑制することができるので、同軸ケーブルおよび第2反射部間において電波をより効率よく伝送することができる。
【0020】
(4)本発明の実施の形態に係るアンテナ装置は、曲面形状の第1反射面を有する第1反射部と、1次放射器とを備え、上記1次放射器は、上記第1反射面と対向する第2反射面を有する第2反射部と、上記第2反射部に接続された絶縁部と、上記絶縁部に接続された導波管と、上記導波管および同軸ケーブルを接続する接続部と、上記第2反射部における上記第2反射面側に設けられ、上記第1反射面または上記絶縁部から伝搬した電波を伝搬元への方向とは異なる方向へ反射する電波制御部とを含み、上記電波制御部は、上記第2反射部から脱着可能である。
【0021】
このように、第1反射面から、または絶縁部経由で同軸ケーブルから伝搬した電波を伝搬元への方向とは異なる方向へ反射する電波制御部を用いて同軸ケーブルおよび第1反射部間において電波を伝送する構成により、同軸ケーブルおよび第1反射部間における電波の伝送特性を向上させることができる。
【0022】
また、電波制御部を脱着可能な構成により、電波の反射特性の異なる電波制御部への交換を可能とし、同軸ケーブルおよび第1反射部間における電波の伝送特性を簡易な作業でより向上させることができる。したがって、電波の減衰が大きい同軸線路を用いて1次放射器の先端まで電波を伝送し放射する構成と比べて、電波を効率よく伝送することができる。
【0023】
(5)好ましくは、上記絶縁部には、上記電波制御部が進入可能なサイズの穴が設けられており、前記導波管の延伸方向において、上記電波制御部と上記穴との最大距離は、上記第2反射面と対向する上記絶縁部の部分のうち、上記穴以外の部分と上記第2反射面との距離より長い。
【0024】
このような構成により、電波制御部のサイズを小さくした場合だけでなく、電波制御部のサイズを大きくした場合においても絶縁部に設けられた穴に電波制御部を進入させることができる。これにより、絶縁部および第2反射面の配置を維持したまま電波制御部のサイズを変更することができるので、絶縁部等の形状を変更することなく伝送特性の調整を容易に行うことができる。
【0025】
(6)好ましくは、上記絶縁部には、上記導波管の内部空間へ伸びる凸部が設けられており、上記凸部は、上記導波管の幅方向の断面において一部を占めている。
【0026】
このような構成により、絶縁部のサイズを小さくした場合において、電波を効率よく伝送し、かつコンパクトで衝撃耐性の強いアンテナ装置を提供することができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0028】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係る通信装置の構成を示す図である。
【0029】
図1を参照して、通信装置201は、アンテナ装置101と、送受信回路151と、同軸ケーブルCBLh,CBLvとを備える。アンテナ装置101は、第1反射部1と、1次放射器2とを備える。以下、同軸ケーブルCBLh,CBLvの各々を同軸ケーブルCBLとも称する。
【0030】
送受信回路151は、たとえば、同軸ケーブルCBLを介してアンテナ装置101へCDバンドの電波を出力する。また、送受信回路151は、たとえば、同軸ケーブルCBLを介してアンテナ装置101からCDバンドの電波を受ける。
【0031】
アンテナ装置101において、第1反射部1は、図示しない治具に固定されている。また、1次放射器2は、第1反射部1を貫通するように上記治具に固定されている。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態に係る1次放射器の
図1におけるII−II線に沿う断面を示す断面図である。なお、
図2では、同軸ケーブルCBL、および第1反射部1の一部が示されていない。
【0033】
図1および
図2を参照して、1次放射器2は、導波管11と、端子部12v,12hと、フランジ部13と、調整用金属ねじ(突出部)14と、固定用樹脂ねじ15と、絶縁部16と、電波制御部17と、第2反射部18と、減衰棒19と、固定用金属ねじ20,21と、金属ねじ固定用ナット22と、調整機構23とを含む。
【0034】
以下、端子部12v,12hの各々を端子部12とも称する。端子部12は、コネクタ部12cと、放射部12dとを含む。
【0035】
[第1反射部1の形状]
アンテナ装置101における第1反射部1は、バーティカルプレート1pと、曲面形状の反射面1mとを有する。反射面1mの形状は、たとえば、パラボラ形状等の2次曲面形状である。ここでは、反射面1mの形状はパラボラ形状であり、この場合、反射面1mは放物面である。
【0036】
以下、当該放物面の軸であって当該放物面の頂点1vから焦点1fへの方向に向いた軸をz軸とも称する。z軸は、たとえば水平方向に沿っている。また、z軸と垂直な軸をx軸と定義する。x軸は、たとえば鉛直上方へ向いている。x軸およびz軸と垂直な軸をy軸と定義する。y軸は、x軸,y軸,z軸により右手系の座標軸を形成するような向きを有する。
【0037】
なお、反射面1mは、放物面に限らず、球面の一部であってもよい。また、反射面1mの形状は、たとえば2次曲面形状の一部を含む形状であってもよい。
【0038】
バーティカルプレート1pは、たとえば、中心に円筒形の穴部が設けられた円板形状の部材であり、第1反射部1における反射面1m側に固定されている。たとえば、導波管11の延伸方向Deに沿ってバーティカルプレート1pを移動させることが可能である。バーティカルプレート1pが反射する電波であって導波管11の内部空間11cへ戻る電波の位相は、バーティカルプレート1pの位置に応じて変化するので、バーティカルプレート1pを移動させることにより後述する電圧定在波比を調整することが可能である。
【0039】
[導波管11の概要]
1次放射器2における導波管11は、たとえば、断面が円形である円形導波管である。導波管11は、閉じられた第1端11aと、開口した第2端11bとを有する。なお、導波管11は、たとえば、断面が角型の方形導波管であってもよいし、円形導波管および方形導波管を組み合わせた導波管であってもよい。
【0040】
フランジ部13は、たとえば、中心に円筒形の穴部を有する円板形状の部材であり、当該穴部に挿通される導波管11の外面に溶接、ろう付け、またはバンドおよびねじ等を用いて固定されている。フランジ部13は、たとえば図示しないねじを用いて上記治具に固定されている。なお、アンテナ装置101では、第1反射部1および導波管11がそれぞれ上記治具に固定される構成であるとしたが、これに限定するものではない。第1反射部1および導波管11同士が接合された状態で、第1反射部1および導波管11のいずれか一方が上記治具に固定される構成であってもよい。
【0041】
導波管11は、第1反射部1を貫通している。より詳細には、導波管11は、第1端11aが第1反射部1に対して反射面1mの焦点1fの反対側に位置し、第2端11bが第1反射部1に対する反射面1mの焦点1f側に位置し、バーティカルプレート1pに設けられた穴部を貫通し、かつ導波管11の中心軸がz軸に沿うようにフランジ部13を介して上記治具に固定されている。
【0042】
[端子部12の位置]
端子部12は、導波管11および同軸ケーブルCBLを接続している。より詳細には、端子部12におけるコネクタ部12cは、たとえば、同軸ケーブルCBLと電気的かつ機械的に接続することが可能なN型コネクタである。なお、コネクタ部12cは、N型コネクタ以外の形状のコネクタであってもよい。
【0043】
端子部12における放射部12dは、具体的には、アンテナとして機能する電極であり、コネクタ部12cを介して同軸ケーブルCBLの内部導体と電気的に接続され、当該内部導体経由で受ける電波を放射することが可能である。また、放射部12dは、導波管11から受けた電波を同軸ケーブルCBLの内部導体へコネクタ部12cを介して出力することが可能である。
【0044】
端子部12v,12hは、たとえば、放射部12dが導波管11の内部空間11cへ突出するように導波管11に固定されている。
【0045】
より詳細には、端子部12vは、たとえば、フランジ部13に対する第1端11a側において、放射部12dおよびコネクタ部12cがx軸方向に並ぶように導波管11に固定されている。この場合、端子部12vにおける放射部12dは、x軸に沿って導波管11の内部空間11cへ突出している。
【0046】
端子部12vにおけるコネクタ部12cは、たとえば同軸ケーブルCBLvの第1端とコネクタにより結合している。同軸ケーブルCBLvの第2端は送受信回路151における対応の端子に接続されている。これにより、端子部12vおよび送受信回路151は電気的に接続される。
【0047】
端子部12vは、たとえば、同軸ケーブルCBLv経由で送受信回路151から受ける電波を、電界方向がx軸方向(以下、垂直偏波とも称する)の電波として導波管11へ放射する。
【0048】
減衰棒19は、たとえば、導波管11の内径より小さい直径を有しかつ金属で形成された棒であり、端子部12vおよび第1端11aの間において、x軸に沿うように導波管11の内部空間11cに固定されている。減衰棒19および導波管11は、導通している。減衰棒19は、垂直偏波の電波を反射する一方、電界方向がy軸方向(以下、水平偏波とも称する)の電波には影響を与えない。
【0049】
端子部12vから放射された垂直偏波の電波のうち、減衰棒19へ伝搬する電波は減衰棒19によって反射されるので、第1端11a側へは伝搬しない。このため、端子部12vから放射された垂直偏波の電波は、すべて1次放射器2から放射される。
【0050】
これにより、TE11モードの垂直偏波の電波が導波管11の内部空間11cにおいて生成される。また、端子部12vは、たとえば、導波管11の内部空間11cにおける垂直偏波のTE11モードの電波を受けて、受けた電波を同軸ケーブルCBLv経由で送受信回路151へ出力する。
【0051】
端子部12hは、たとえば、減衰棒19に対する第1端11a側において、放射部12dおよびコネクタ部12cがy軸方向に並ぶように導波管11に固定されている。この場合、端子部12hにおける放射部12dは、y軸に沿って導波管11の内部空間11cへ突出している。
【0052】
端子部12hにおけるコネクタ部12cは、たとえば同軸ケーブルCBLhの第1端とコネクタにより結合している。同軸ケーブルCBLhの第2端は送受信回路151における対応の端子に接続されている。これにより、端子部12hおよび送受信回路151は電気的に接続される。
【0053】
端子部12hは、たとえば、同軸ケーブルCBLh経由で送受信回路151から受ける電波を、水平偏波の電波として導波管11へ放射する。
【0054】
端子部12hから放射された水平偏波の電波のうち、導波管11の第1端11aへ伝搬する電波は第1端11aによって反射される。また、上述したように、減衰棒19は、水平偏波の電波には影響を与えない。このため、端子部12hから放射された水平偏波の電波は、すべて1次放射器2から放射される。
【0055】
これにより、TE11モードの水平偏波の電波が導波管11の内部空間11cにおいて生成される。また、端子部12hは、たとえば、導波管11の内部空間11cにおける水平偏波のTE11モードの電波を受けて、受けた電波を同軸ケーブルCBLh経由で送受信回路151へ出力する。
【0056】
したがって、端子部12は、導波管11および同軸ケーブルCBLを電気的かつ機械的に接続する接続部として機能する。
【0057】
[絶縁部16の固定]
導波管11には、たとえば、フランジ部13に対する第2端11b側において、絶縁部16を導波管11に固定するための固定用樹脂ねじ15を挿通するための貫通穴11hが導波管11の周方向に90度間隔で4つ設けられている。
【0058】
貫通穴11hは、導波管11の内部空間11cを伝搬する電波の偏波方向を乱さないように、挿通される固定用樹脂ねじ15の軸がx軸またはy軸と平行になるように設けられている。
【0059】
図3は、本発明の実施の形態に係る絶縁部の側面図である。
図4は、本発明の実施の形態に係る絶縁部の斜視図である。
【0060】
図3および
図4を参照して、絶縁部16は、凸部16aと、ベース部16bと、テーパー部16cと、凹部16dとを含む。
【0061】
絶縁部16は、たとえば、誘電損失が小さいPTFE(polytetrafluoroethylene)を用いて無垢で形成されている。絶縁部16における凸部16a、ベース部16b、テーパー部16cおよび凹部16dは、たとえば一体に形成されている。
【0062】
なお、絶縁部16の内部に空洞があってもよい。また、絶縁部16における凸部16a、ベース部16b、テーパー部16cおよび凹部16dの一部または全部は、たとえば別個に形成され、別個に形成された各部が接合される構成であってもよい。
【0063】
ベース部16bは、たとえば、導波管11の内径と略同じ外径を有する円筒形状の部材であり、第1端面16bfと第2端面16bsとを有する。また、ベース部16bには、固定用樹脂ねじ15を挿通するためのねじ穴16btがベース部16bの周方向に90度間隔で4つ設けられている。
【0064】
テーパー部16cは、テーパー形状を有する。テーパー部16cは、導波管11の外径と略同じ直径を有し、かつテーパー部16cの軸およびベース部16bの軸が一致するようにベース部16bの第2端面16bsと接続された第1端面16cfと、第1端面16cfの直径より大きい直径を有する第2端面16csとを有する。
【0065】
テーパー部16cには、固定用金属ねじ20を挿通するための貫通穴16chが、テーパー部16cの周方向に90度間隔で4つ設けられている。貫通穴16chおよびねじ穴16btは、テーパー部16cおよびベース部16bの周方向において互いに対応する位置に設けられている。
【0066】
絶縁部16には、電波制御部17が進入可能なサイズの凹部16dが設けられている。具体的には、第2反射部18における反射面18mと対向する絶縁部16の端面、すなわちテーパー部16cにおける第2端面16csには、電波制御部17が進入可能なサイズの凹部16dが設けられている。
【0067】
より詳細には、凹部16dは、テーパー部16cにおける第2端面16csの中央部において、テーパー部16cの軸に垂線が沿った円錐形状の穴である。凹部16dの開口径は、たとえば導波管11の外径より大きい。また、凹部16dの深さは、後述する電波制御部17の高さより大きい。なお、凹部16dの開口径は、導波管11の外径以下であってもよい。
【0068】
凸部16aは、たとえば、導波管11の内部空間11cへ伸びるように設けられている。より詳細には、凸部16aは、たとえば、導波管11の内部空間11cへ導波管11の延伸方向Deに沿って伸びるように設けられている。
【0069】
また、凸部16aは、たとえば、導波管11の幅方向の断面において一部を占めている。言い換えると、凸部16aは、導波管11の内周面から間隔を隔てて設けられている。具体的には、凸部16aは、たとえば、円形の導波管11の径方向の断面において一部を占めている。
【0070】
凸部16aは、導波管11の内径より小さい外径を有する円筒形状の部材であり、第1反射部1における反射面1mと対向する第1端面16afと、凸部16aの軸およびベース部16bの軸が一致するようにベース部16bの第1端面16bfと接続された第2端面16asとを有する。なお、凸部16aの形状は、長方形の断面を有する四角柱形状であってもよいし、多角形の断面を有する角柱形状であってもよい。
【0071】
絶縁部16は、導波管11に接続される。より詳細には、絶縁部16は、凸部16aおよびベース部16bの順に導波管11の第2端11bから内部空間11cへ挿入される。凸部16aおよびベース部16bが導波管11の内部空間11cへ挿入されると、テーパー部16cにおける第1端面16cfおよび導波管11の第2端11bが密着した状態で固定用樹脂ねじ15によりベース部16bが導波管11に固定される。この場合、固定用樹脂ねじ15は、x軸またはy軸と平行な貫通穴11hを挿通してベース部16bにおけるねじ穴16btと螺合するので、x軸またはy軸と平行になる。したがって、固定用樹脂ねじ15は、導波管11の内部空間11cを伝搬する電波の偏波方向を乱さない。
【0072】
[第2反射部18および電波制御部17の固定]
図5は、
図2に示す断面図の絶縁部付近を拡大した図である。
【0073】
図5を参照して、第2反射部18は、第1反射部1における反射面1mと対向する反射面18mを有する。より詳細には、第2反射部18は、第1反射部1における反射面1mより小さく、かつ反射面1mと正対する反射面18mを反射面1m側に有する。
【0074】
具体的には、第2反射部18は、テーパー部16cにおける第2端面16csの外径と略同じ外径を有する円板形状の部材であり、金属、具体的にはアルミニウムで形成される。第2反射部18における端部の近傍には、たとえば、固定用金属ねじ20を挿通するためのねじ穴18tが第2反射部18の周方向に90度間隔で4つ設けられている。
【0075】
また、第2反射部18における中央部の近傍には、たとえば、固定用金属ねじ21を挿通するための図示しない貫通穴が、第2反射部18の周方向に90度間隔で4つ設けられている。当該貫通穴は、第2反射部18の周方向におけるねじ穴18tの位置に対する当該周方向に45度回転した位置に設けられている。なお、固定用金属ねじ21は、第2反射部18に対して導波管11の反対側に設けられるので、内部空間11cを伝搬する電波の偏波方向を乱さない。このため、第2反射部18の周方向におけるねじ穴18tの位置に対する当該貫通穴の当該周方向の角度は、45度以外の角度でもよい。
【0076】
第2反射部18は、第1反射部1における反射面1mと対向する第1端面18fと、第2端面18sとを有する。すなわち、第2反射部18における第1端面18fは、反射面18mに相当する。
【0077】
電波制御部17は、たとえば、絶縁部16のテーパー部16cにおける凹部16dの開口径以下の直径の底面17aを有する円錐形状の部材であって、金属、具体的にはアルミニウムで形成される。
【0078】
また、第2反射部18における反射面18mに対する電波制御部17の側面17bの角度αは、反射面18mに対する凹部16dの底面16dbの角度β以下である。
【0079】
電波制御部17は、たとえば第2反射部18の反射面18m側に設けられている。より詳細には、電波制御部17は、固定用金属ねじ21を挿通するためのねじ穴が設けられている底面17aと第2反射部18における第1端面18fとが対向し、かつ電波制御部17の軸と第2反射部18の軸とが一致するように固定用金属ねじ21により第2反射部18に固定される。たとえば、電波制御部17は、第2反射部18の反射面18m上に設けられている。なお、電波制御部17は、反射面18m上に設けられる構成に限らず、たとえば、第2反射部18が樹脂等の絶縁体で形成され、形成された絶縁体の表面の一部に金属膜を形成することにより反射面18mが形成される場合、第2反射部18のうち、当該金属膜以外の部分に電波制御部17が設けられる構成であってもよい。
【0080】
第2反射部18は、絶縁部16に接続される。より詳細には、第2反射部18は、テーパー部16cにおける第2端面16csおよび第2反射部18における第1端面18fが対向し、かつテーパー部16cの軸および第2反射部18の軸が一致するように固定用金属ねじ20により絶縁部16に固定される。
【0081】
第2反射部18が絶縁部16に接続された状態において、導波管11の延伸方向Deにおいて、電波制御部17と凹部16dとの最大距離は、第1端面18fすなわち反射面18mと対向する絶縁部16の部分のうち、凹部16d以外の部分と反射面18mとの距離より長くなる。
【0082】
具体的には、上述したように、凹部16dおよび電波制御部17は、ともに円錐形状を有している。また、凹部16dの深さは電波制御部17の高さより大きい。また、凹部16dの軸および電波制御部17の軸は一致しかつ延伸方向Deに沿っている。また、角度αは、角度β以下である。
【0083】
したがって、導波管11の延伸方向Deにおける電波制御部17と凹部16dとの最大距離Lmaxは、
図5に示す、凹部16dの最深部および電波制御部17の頂点間の距離である。
【0084】
また、電波制御部17の底面17aの直径は凹部16dの開口径以下である。このため、第2反射部18が絶縁部16に接続された状態において、テーパー部16cにおける第2端面16csのうち凹部16d以外の部分と反射面18mとが密着する。また、電波制御部17は、側面17bが凹部16dの底面16dbに接することなく収まる。
【0085】
すなわち、側面17bおよび底面16dbは密着しないので、導波管11の延伸方向Deにおける電波制御部17と凹部16dとの最大距離Lmaxは、第2端面16csのうち凹部16d以外の部分と反射面18mとの距離より長くなる。
【0086】
なお、第2端面16csのうち凹部16d以外の部分と反射面18mが密着する構成に限らず、最大距離Lmaxが、上記部分と反射面18mとの距離より長くなる構成であればよい。
【0087】
図6は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置における電波の伝搬を模式的に示した図である。
【0088】
図6を参照して、第1反射部1における反射面1mの焦点距離Lfすなわち頂点1vおよび焦点1fの距離は、たとえば、225.0ミリメートルである。また、頂点1vおよび第2反射部18における反射面18mの距離は、たとえば202.5ミリメートルである。
【0089】
電波制御部17における底面17a以外の表面すなわち側面17bは、第1反射部1における反射面1mまたは絶縁部16から伝搬した電波を伝搬元への方向とは異なる方向へ反射する。
【0090】
具体的には、電波制御部17における側面17bは、たとえば、絶縁部16を経由して導波管11から伝搬した電波を第1反射部1における反射面1mへ反射する。また、電波制御部17における側面17bは、たとえば、第1反射部1における反射面1mから伝搬した電波を絶縁部16経由で導波管11へ反射する。
【0091】
より詳細には、たとえば、反射面18mおよび側面17bは平行でないので、反射面18mが導波管11の延伸方向Deと垂直な面である場合、側面17bは、導波管11の延伸方向Deと垂直にならない。
【0092】
したがって、導波管11から反射面18mへの方向に伝搬する電波のうち、導波管11の延伸方向Deとほぼ平行な方向に伝搬する電波Pp1,Pp2は、反射面18mへの入射角が小さいために電波制御部17が無い場合は導波管11へ戻ってしまうが、反射面18mの代わりに側面17bと反射することにより、導波管11へ戻ることなく第1反射部1における反射面1mへ伝搬される。
【0093】
また、導波管11の延伸方向Deと大きく異なる方向に伝搬する電波Pnp1,Pnp2は、反射面18mへの入射角が大きいので、導波管11へ戻ることなく第1反射部1における反射面1mへ伝搬される。
【0094】
したがって、電波制御部17を第2反射部18の反射面18m側に設ける構成により、導波管11から伝搬した電波を効率よく第1反射部1へ伝送し、かつ第1反射部1から伝搬した電波を効率よく導波管11へ伝送することができる。すなわち、導波管11および第1反射部1間における電波の伝送特性を向上させることができる。
【0095】
なお、アンテナ装置101では、第2反射部18における反射面18mが頂点1vおよび焦点1f間に位置する構成であるとしたが、これに限定するものではない。反射面18mは、アンテナ装置101の伝送特性を最適化することが可能な位置に設ければよく、焦点1fに位置してもよいし、焦点1fに対して頂点1vの反対側に位置してもよい。
【0096】
[調整用金属ねじ14の概要]
再び
図5を参照して、調整用金属ねじ14は、導波管11に設けられ、導波管11の内部空間11cに突出している。また、調整用金属ねじ14は、絶縁部16のうちの第2反射部18における反射面18mから最も離れた部分である最遠部分16eから、導波管11の延伸方向Deに管内波長λg離れた位置までの範囲に設けられている。
【0097】
より詳細には、導波管11には、たとえば、導波管11の内部空間11cにおける定在波を減衰させるための調整用金属ねじ14をx軸方向およびy軸方向に沿って挿通するためのねじ穴11tが導波管11の周方向に90度間隔で4つ設けられている。
【0098】
調整用金属ねじ14は、金属、具体的にはステンレスで形成されている。調整用金属ねじ14のうちx軸方向に沿って挿通される2つの調整用金属ねじ14(以下、垂直偏波調整用ねじ14とも称する。)は、導波管11の内部空間11cにおける垂直偏波の定在波を減衰するために用いられる。
【0099】
また、y軸方向に沿って挿通される2つの調整用金属ねじ14(以下、水平偏波調整用ねじ14とも称する。)は、導波管11の内部空間11cにおける水平偏波の定在波を減衰させるために用いられる。
【0100】
調整機構23は、ねじ穴11tと、調整用金属ねじ14と、金属ねじ固定用ナット22とを有する。調整機構23は、内部空間11への調整用金属ねじ14の突出量Ldを調整可能に構成されている。言い換えると、調整機構23は、内部空間11への調整用金属ねじ14の突出量Ldを調整可能である。
【0101】
具体的には、調整用金属ねじ14は、たとえばボルトである。調整用金属ねじ14を回転させることにより、調整用金属ねじ14の先端の導波管11の内部空間11cにおける突出量Ldを調整することができる。突出量Ldが調整された調整用金属ねじ14は、たとえば、調整用金属ねじ14と螺合した金属ねじ固定用ナット22を、導波管11の外側から締め付けることにより導波管11に固定される。
【0102】
なお、調整用金属ねじ14は、たとえば調整用金属ねじ14と螺合したねじ棒であってもよい。
【0103】
ここでは、第2反射部18における反射面18mから最も離れた絶縁部16の部分である最遠部分16eは、絶縁部16における凸部16aの第1端面16afである。なお、たとえば、絶縁部16に凸部16aが形成されない場合、より詳細には、絶縁部16におけるベース部16bの第1端面16bfの全部が導波管11の内部空間11cと接続される場合、または第1端面16bfに後述する凹部が形成される場合、最遠部分16eは、第1端面16bfである。
【0104】
管内波長λgは、導波管11の内部空間11cを伝搬する電波の真空中における波長、導波管11の形状およびサイズ、ならびに電波の伝搬モードに基づいて定まる波長である。
【0105】
具体的には、真空中における波長λ0の電波が、半径Raを有する円形の導波管11の内部空間11cにおいてTE11モードで伝搬する場合、管内波長λgは、非特許文献1(倉石源三郎著、「例題・演習 マイクロ波回路」、東京電機大学出版局、昭和58年3月30日、p.74およびP.88)に示すように以下の式(1)により表される。
【数1】
【0106】
ここで、遮断波長λcは、以下の式(2)により表される。
【数2】
【0107】
具体的には、たとえば、Raが15.5ミリメートルである場合、CDバンドに対応する管内波長λgは、69.4〜99.0ミリメートルであり、また、EFバンドに対応する管内波長λgは、33.1〜35.1ミリメートルである。
【0108】
したがって、
図5に示すように、絶縁部16における最遠部分16eからねじ穴11tを含む導波管11の断面までの距離Lxは、管内波長λgより短い。
【0109】
具体的には、たとえば、CDバンドを伝送対象とするアンテナ装置101において、距離Lxは、CDバンドの中心周波数に対応する管内波長より短い。より好ましくは、距離Lxは、たとえば69.4ミリメートルより短い。
【0110】
[電圧定在波比の最適化]
再び
図2を参照して、アンテナ装置101における1次放射器2では、たとえば、送受信回路151から出力された電波が第2反射部18を介して第1反射部1へ放射される。この際、1次放射器2は、送受信回路151から出力される電波を効率よく第1反射部1へ放射する構成であることが好ましい。
【0111】
なお、1次放射器2が第1反射部1から電波を受ける場合の動作は、1次放射器2が第1反射部1へ電波を放射する動作の逆であるため、上記構成は、第1反射部1から受けた電波を送受信回路151へ効率よく出力する構成に相当する。したがって、以下では、1次放射器2が第1反射部1へ電波を放射する動作について代表的に説明を行う。
【0112】
より詳細には、導波管11において、送受信回路151から端子部12経由で受ける電波は、導波管11の内部空間11cおよび絶縁部16を経由して電波制御部17および第2反射部18へ進行波として伝搬する。
【0113】
この際、たとえば、調整用金属ねじ14、絶縁部16、電波制御部17、および第2反射部18における反射面18mにより進行波が反射され、導波管11の内部空間11cを第2端11bから第1端11aへの方向へ伝搬する反射波が発生する場合がある。
【0114】
このような反射波は、第1反射部1へ放射されないため、1次放射器2の効率を下げる。このため、反射波を抑制することが好ましい。
【0115】
また、導波管11の内部空間11cでは、反射波および進行波が干渉し、定在波が生成される。定在波の大きさを表す指標として電圧定在波比(以下、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio)とも称する。)が用いられる。VSWRが1に近いほど、反射波の振幅が小さくなるので、1次放射器2の効率が向上する。したがって、1次放射器2では、VSWRが1に近くなるように、調整用金属ねじ14、絶縁部16、電波制御部17、および第2反射部18における反射面18mを配置することが好ましい。
【0116】
[電圧定在波比のシミュレーション]
再び
図5を参照して、VSWRを算出可能なシミュレーションを行うことにより、たとえば、外径および内径がそれぞれ35.0ミリメートルおよび31.0ミリメートルの導波管11の内部空間11cにCDバンドの電波を伝搬させる場合において、VSWRが1に近くなるように、調整用金属ねじ14、絶縁部16、電波制御部17および第2反射部18の反射面18mの配置の最適化を行った。
【0117】
まず、最終的に最適化された配置を導出する際に、値を固定したパラメータについて説明する。
【0118】
絶縁部16のテーパー部16cにおける第1端面16cfの直径、第2端面16csの直径ならびに第1端面16cfおよび第2端面16cs間の距離は、それぞれ35.0ミリメートル、100.0ミリメートルおよび24.0ミリメートルに固定した。第2反射部18の外径は、100.0ミリメートルに固定した。電波制御部17の底面17aの直径は、37.0ミリメートルに固定した。
【0119】
以下、値を可変にしたパラメータについて説明する。絶縁部16における、ベース部16bの長さLb、ならびに凸部16aの長さLcおよび外径Dcは、可変とした。また、電波制御部17の円錐の高さHcは、可変とした。また、導波管11の第2端11bから調整用金属ねじ14の位置までの長さLt、および調整用金属ねじ14の導波管11の内部空間11cへの突出量Ldは、可変とした。
【0120】
なお、上記シミュレーションでは、絶縁部16のテーパー部16cにおける第1端面16cfの直径、第2端面16csの直径、第1端面16cfおよび第2端面16cs間の距離、第2反射部18の外径、ならびに電波制御部17の底面17aの直径の値を固定のパラメータとして扱ったが、これらのパラメータの一部または全部を可変のパラメータとして扱ってもよい。
【0121】
図7は、本発明の実施の形態に係る1次放射器におけるVSWRの周波数変化の一例を示す図である。横軸は、周波数を示し、縦軸は、VSWRを示す。
【0122】
図7を参照して、シミュレーションにより最適化を行った結果、パラメータをLb=45.0ミリメートル、Lc=20.0ミリメートル、Dc=11.5ミリメートル、Hc=6.0ミリメートル、Lt=86.0ミリメートルおよびLd=5.5ミリメートルに設定することにより、
図7における曲線Opt1に示すように、CDバンドにおけるVSWRを概ね1.8以下に抑制することが可能となる。以下、上記設定を最適化設定とも称する。
【0123】
このように、シミュレーションにより最適化されたパラメータに基づいて1次放射器2は製造される。
【0124】
[電波制御部17の高さの効果]
たとえば、1次放射器2を製造する場合において、製造時における各部品のサイズの誤差および組み付け誤差、ならびに設計時における計算誤差等により、製品の実際のVSWR特性が
図7に示す曲線Opt1からずれるときがある。
【0125】
このとき、絶縁部16のサイズおよび形状等を設計変更すると、たとえば、絶縁部16を形成するための金型を作り直したり、無垢のPTFEから絶縁部16の複雑な形を削り出したりする必要があるため、コストがかかってしまう。
【0126】
たとえば、電波制御部17の高さHcを6.0ミリメートルから8.0ミリメートルに高く設定することにより、シミュレーションにおけるVSWR特性を曲線Opt1から曲線Phc2へ変更することができる。
【0127】
また、たとえば、電波制御部17の高さHcを6.0ミリメートルから4.0ミリメートルに低く設定することにより、シミュレーションにおけるVSWR特性を曲線Opt1から曲線Mhc2へ変更することができる。
【0128】
電波制御部17は固定用金属ねじ21を用いて第2反射部18に固定されており、また、第2反射部18は固定用金属ねじ20を用いて絶縁部16に固定されているので、最適化されたHcである6.0ミリメートルの高さを有する電波制御部17を4.0ミリメートルまたは8.0ミリメートルの高さを有する電波制御部17に交換することは容易である。
【0129】
また、たとえば、絶縁部16において深さが8.0ミリメートルの凹部16dが設けられている場合、8.0ミリメートルの高さを有する電波制御部17を取り付けた第2反射部18を絶縁部16に接続しても、テーパー部16cにおける第2端面16csのうち凹部16d以外の部分と反射面18mとの密着を維持しながら電波制御部17を凹部16dに収めることが可能である。
【0130】
したがって、たとえば、複数種類の高さ、具体的には、Hc=4.0、6.0および8.0ミリメートルの高さの電波制御部17を用意し、製品の実際のVSWR特性に応じて固定用金属ねじ21により第2反射部18から電波制御部17を脱着して交換する構成により、簡易かつ低コストでVSWR特性の調整を行うことができる。
【0131】
[球面タイプの絶縁部]
次に、1次放射器の変形例について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0132】
図8は、本発明の実施の形態に係る絶縁部、電波制御部および第2反射部の変形例を含む1次放射器の絶縁部付近の断面図である。
【0133】
図8を参照して、絶縁部16の変形例である絶縁部36は、
図3および
図4に示す絶縁部16と比べて、凸部16aおよびベース部16bの代わりに凹部36aが形成されたベース部36b、ならびにテーパー部16cの代わりに球面部36cを含む。絶縁部36における凹部16dは、
図4に示す絶縁部16における凹部16dと同様である。
【0134】
電波制御部17の変形例である電波制御部37は、
図5に示す電波制御部17と比べて、6.0ミリメートルの高さHcの代わりに4.7ミリメートルの高さHcを有する。電波制御部37の高さHc以外の構成は、電波制御部17の構成と同様である。
【0135】
第2反射部18の変形例である第2反射部38は、
図5に示す第2反射部18と比べて、100.0ミリメートルの外径の代わりに167.0ミリメートルの外径を有する。第2反射部38の外径以外の構成は、第2反射部18の構成と同様である。
【0136】
絶縁部36は、
図3に示す絶縁部16と同様に、たとえばPTFEで形成されている。絶縁部36における凹部36a、ベース部36b、球面部36cおよび凹部16dは、たとえば一体に形成されている。
【0137】
ベース部36bは、たとえば、導波管11の内径と略同じ外径を有する円筒形状の部材であり、第1端面36bfと、第2端面36bsとを有する。また、ベース部36bには、固定用樹脂ねじ15を挿通するためのねじ穴16btがベース部36bの周方向に90度間隔で4つ設けられている。
【0138】
球面部36cは、平行な2つの平面で半径Rs1の球S1の一部を切り取った形状を有し、電波を収束するレンズ効果を有する。より詳細には、球面部36cは、導波管11の外径より大きい直径を有し、かつ球面部36cの軸およびベース部36bの軸が一致するようにベース部36bの第2端面36bsと接続された第1端面36cfと、第1端面36cfの直径より大きくかつ第2反射部38の外径より小さい直径を有する第2端面36csとを有する。
【0139】
具体的には、第1端面36cfおよび第2端面36csの直径は、それぞれ59.0ミリメートルおよび156.0ミリメートルである。また、球S1の半径Rs1は、98.2ミリメートルである。
【0140】
第1端面36cfおよび第2端面36cs間の距離d1、具体的には34.0ミリメートルは、たとえば球S1の半径Rs1より小さい。また、球面部36cは、たとえば球S1の中心CS1を含まない。
【0141】
球面部36cには、固定用金属ねじ20を挿通するための貫通穴16chが、球面部36cの周方向に90度間隔で4つ設けられている。貫通穴16chおよびねじ穴16btは、ベース部36bおよび球面部36cの周方向において互いに対応する位置に設けられている。
【0142】
球面部36cにおける第2端面36csには、電波制御部37が進入可能なサイズの凹部16dが設けられている。
【0143】
凹部36aは、たとえば、ベース部36bの第1端面36bfの略中央に設けられている円筒形状の穴である。より詳細には、凹部36aは、ベース部36bの外径すなわち導波管11の内径より小さい外径を有する円筒形状の穴であり、当該穴の軸およびベース部36bの軸が一致するようにベース部36bの第1端面36bfから第2端面36bsへ向かう方向へ設けられている。
【0144】
具体的には、凹部36aの直径および深さは、それぞれ11.5ミリメートルおよび22.0ミリメートルである。また、絶縁部36におけるベース部36の長さは、34.0ミリメートルである。
【0145】
絶縁部36は、導波管11に接続される。より詳細には、絶縁部36は、導波管11の第2端11bからベース部36bが導波管11の内部空間11cへ挿入される。ベース部36bが導波管11の内部空間11cへ挿入されると、球面部36cにおける第1端面36cfおよび導波管11の第2端11bが密着した状態で固定用樹脂ねじ15によりベース部36bが導波管11に固定される。この場合、固定用樹脂ねじ15は、x軸またはy軸と平行な貫通穴11hを挿通してベース部36bにおけるねじ穴16btと螺合するので、x軸またはy軸と平行になる。したがって、固定用樹脂ねじ15は、導波管11の内部空間11cを伝搬する電波の偏波方向を乱さない。
【0146】
第2反射部38は、第1反射部1における反射面1mと対向する反射面38mを有する。より詳細には、第2反射部38は、第1反射部1における反射面1mより小さい反射面38mを反射面1m側に有する。
【0147】
第2反射部18は、第1反射部1における反射面1mと対向する第1端面38fと、第2端面38sとを有する。すなわち、第2反射部38における第1端面38fは、反射面38mに相当する。
【0148】
電波制御部37は、固定用金属ねじ21を挿通するためのねじ穴が設けられている底面37aと第2反射部38における第1端面38fとが対向し、かつ電波制御部37の軸と第2反射部38の軸とが一致するように固定用金属ねじ21により第2反射部38に固定される。
【0149】
第2反射部38は、球面部36cにおける第2端面36csおよび第2反射部38における第1端面38fが対向し、かつ第2反射部38の軸および球面部36cの軸が一致するように固定用金属ねじ20により絶縁部36に固定される。
【0150】
電波制御部37の底面37aの直径は凹部16dの開口径より小さい。このため、第2反射部38が絶縁部36に接続された状態において、球面部36cにおける第2端面36csのうち凹部16d以外の部分と反射面38mとが密着する。また、電波制御部37は、側面37bが凹部16dの底面16dbに接することなく収まる。
【0151】
ここでは、第2反射部38における反射面38mから最も離れた絶縁部36の部分である最遠部分16eは、絶縁部36におけるベース部36bの第1端面36bfである。
【0152】
調整用金属ねじ14は、絶縁部36におけるベース部36bの第1端面36bfから、導波管11の延伸方向Deに9.5ミリメートル離れた位置に設けられている。
【0153】
したがって、調整用金属ねじ14は、最遠部分16eから、導波管11の延伸方向Deに管内波長λg離れた位置までの範囲に設けられている。
【0154】
[凸部16aの効果]
図9は、本発明の実施の形態に係る1次放射器におけるVSWRの周波数変化の一例を示す図である。横軸は、周波数を示し、縦軸は、VSWRを示す。
【0155】
図9を参照して、本願発明者らは、当初、絶縁部36および第2反射部38を含むアンテナ装置101の開発を行っていたが、絶縁部36の球面部36cおよび第2反射部38のサイズが大きいため、重量が重く、かさ張り、かつ重い重量のため1次放射器2を固定している治具に加わるトルクが大きいすなわち衝撃耐性が良くないことを認識した。
【0156】
そこで、本願発明者らは、絶縁部36の球面部36cのサイズを小さくしつつ、球面部36cより製造が容易なテーパー部16cを含む絶縁部16と第2反射部38よりサイズの小さい第2反射部18とを含むアンテナ装置101の開発を行った。
【0157】
たとえば、絶縁部16のベース部16bの第1端面16bfにおいて凹部を形成した場合におけるVSWRの周波数変化は、
図9に示す曲線Cc1のようになり、CDバンドにおけるVSWRが1に近くなる、前述のシミュレーションにおいて説明したパラメータを算出することが困難であった。
【0158】
そして、本願発明者らは、第1端面16bfにおいて、凹部の代わりに凸部を形成することにより、電波の伝送特性が向上することを見出した。
【0159】
具体的には、第1端面16bfにおいて、外径および長さがそれぞれ11.5ミリメートルおよび20.0ミリメートルを有する円筒形状の凸部16aを形成することにより、VSWRの周波数変化が
図9に示す曲線Opt1のようになり、CDバンドにおけるVSWRを概ね1.8以下に抑制することができた。
【0160】
[調整用金属ねじ14の効果]
本願発明者らは、当初、調整用金属ねじ14を含まないアンテナ装置101の開発を行っていたが、CDバンドにおけるVSWRを1に近づけることが可能な、前述のシミュレーションにおいて説明したパラメータを算出することが困難であった。
【0161】
これに対して、本願発明者らは、調整用金属ねじ14の突出量Ldの調整を行うことによりCDバンドにおけるVSWRを大幅に変化させることが可能であることを見出した。さらに、調整用金属ねじ14を設ける位置を変化させることによりCDバンドにおけるVSWRを大幅に変化させることが可能であることを見出した。
【0162】
本願発明者らは、絶縁部16、電波制御部17および第2反射部18等の各サイズおよび形状を変化させながら調整用金属ねじ14の最適な設置位置を探索するシミュレーションを繰り返し行い、以下のことを見出した。すなわち、絶縁部16のうちの第2反射部18における反射面18mから最も離れた部分である最遠部分16eから、導波管11の延伸方向Deに管内波長λg離れた位置までの範囲に調整用金属ねじ14を設ける構成により、導波管11の内部空間11cにおいて、電波の伝送特性を劣化させる定在波であって調整用金属ねじ14の方向と平行な偏波を有する定在波を効果的に抑制することができることを見出した。
【0163】
より詳細には、最遠部分16eから導波管11の延伸方向Deに管内波長λg離れた位置までの範囲に垂直偏波調整用ねじ14または水平偏波調整用ねじ14をそれぞれ設ける構成により、垂直偏波の定在波または水平方向の定在波を別々にかつ効果的に抑制することができることを見出した。
【0164】
すなわち、最遠部分16eから、導波管11の延伸方向Deに管内波長λg離れた位置までの範囲に調整用金属ねじ14を設ける構成により、CDバンドにおけるVSWRを1に近づけることが可能なパラメータを算出することできる。
【0165】
図10は、本発明の実施の形態に係る1次放射器におけるVSWRの周波数変化の一例を示す図である。横軸は、周波数を示し、縦軸は、VSWRを示す。
【0166】
図10を参照して、具体的には、上記最適化設定を行った1次放射器2では、曲線Opt1に示すように、CDバンドにおけるVSWRを概ね1.8以下に抑制することが可能となる。
【0167】
また、調整用金属ねじ14を設けない場合、すなわち上記最適化設定を行った1次放射器2において調整用金属ねじ14の突出量Ldをゼロミリメートルに設定した場合、VSWRの周波数変化は曲線Cnsのようになる。曲線Cnsが曲線Opt1と大きく異なることから、調整用金属ねじ14を設けるか否かに応じてVSWRの周波数特性が大きく変化することが分かる。
【0168】
なお、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置における1次放射器では、導波管11の内部空間11cに突出し、かつ金属により形成される調整用金属ねじ14が導波管11に設けられる構成であるとしたが、これに限定するものではない。調整用金属ねじ14は、金属を含むねじであればよく、たとえば、絶縁体で形成されたねじを金属で被膜したねじ、金属で形成されたねじを絶縁体で被膜したねじを用いる構成であってもよい。また、金属で形成された棒が導波管11の内部空間11cに一体成型、接合または挿通により突出するように設けられる構成であってもよい。
【0169】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置における1次放射器では、2本の垂直偏波調整用ねじ14を用いる構成であるとしたが、これに限定するものではない。アンテナ装置では、1本の垂直偏波調整用ねじ14を用いる構成であってもよい。一方、1本の垂直偏波調整用ねじ14を用いる構成と比べて調整の自由度を大きくすることが可能な2本の垂直偏波調整用ねじ14を用いる構成が好ましい。
【0170】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置における1次放射器では、2本の水平偏波調整用ねじ14を用いる構成であるとしたが、これに限定するものではない。アンテナ装置では、1本の水平偏波調整用ねじ14を用いる構成であってもよい。一方、1本の水平偏波調整用ねじ14を用いる構成と比べて調整の自由度を大きくすることが可能な2本の水平偏波調整用ねじ14を用いる構成が好ましい。
【0171】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置における1次放射器では、複偏波に対応するために、垂直偏波調整用ねじ14および水平偏波調整用ねじ14を含む構成であるとしたが、これに限定するものではない。垂直偏波調整用ねじ14および水平偏波調整用ねじ14のいずれか一方を含む、単偏波に対応可能な構成であってもよい。
【0172】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置における1次放射器は、ねじ穴11t、調整用金属ねじ14および金属ねじ固定用ナット22を有する調整機構23を含む構成であるとしたが、これに限定するものではない。1次放射器2では、導波管11に設けられ、導波管11の内部空間11cへ突出し、かつ金属を含む突出部が、内部空間11cへの突出量を調整可能に構成されていればよい。具体的には、1次放射器2では、たとえば、導波管11において、ねじ穴11tの位置に設けられた貫通穴に当該貫通穴の断面と略同じ断面を有する金属棒を圧入することで、当該金属棒の突出量が調整可能な構成であってもよい。
【0173】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置における1次放射器では、電波制御部17,37は円錐形状を有する構成であるとしたが、これに限定するものではない。電波制御部17,37は多角錐形状を有する構成であってもよい。この場合、多角錐形状として四角錐および八角錐等の垂直偏波の方向および水平偏波の方向の両方向に対して対称な多角錐形状が好ましい。たとえば、電波制御部17が四角錐形状または八角錐形状等を有する構成である場合、垂直偏波のビーム幅および水平偏波のビーム幅をそれぞれ独立に調整することが可能となる。
【0174】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置における1次放射器は、調整用金属ねじ14および電波制御部17の両方を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。1次放射器は、調整用金属ねじ14および電波制御部17のいずれか一方を備える構成であってもよい。
【0175】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置における1次放射器では、たとえば、絶縁部16におけるテーパー部16cの第2端面16csに銅層を無電解めっきにより形成し、形成した銅層を第2反射部とする構成であってもよい。
【0176】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置における1次放射器では、導波管11および絶縁部16、ならびに絶縁部16および第2反射部18をそれぞれ固定用樹脂ねじ15および固定用金属ねじ20を用いて固定する構成であるとしたが、これに限定するものではない。1次放射器では、固定用樹脂ねじ15および固定用金属ねじ20の代わりに、たとえば樹脂製のピンおよび金属製のピンをそれぞれ用いる構成であってもよい。
【0177】
ところで、特許文献1および2に記載の同軸型1次放射器では、1次放射器の先端まで同軸線路により電波が伝送されている。このような特許文献1および2に記載の技術を超えて、電波の伝送特性の良いアンテナ装置が求められている。
【0178】
これに対して、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置は、曲面形状の反射面1mを有する第1反射部1と、1次放射器2とを備える。1次放射器2は、反射面1mと対向する反射面18mを有する第2反射部18と、第2反射部18に接続された絶縁部16と、絶縁部16に接続された導波管11と、導波管11および同軸ケーブルCBLを接続する端子部12と、導波管11に設けられ、導波管11の内部空間11cへ突出し、かつ金属を含む調整用金属ねじ14とを含む。
【0179】
このように、同軸ケーブルCBLおよび第2反射部18間において、電波の伝送特性の劣化を抑制する調整用金属ねじ14が設けられた導波管11、および絶縁部16を介して電波を伝送する構成により、電波の減衰が大きい同軸線路を用いて1次放射器の先端まで電波を伝送する構成と比べて、電波を効率よく伝送することができる。
【0180】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置では、調整機構23は、調整用金属ねじ14の内部空間11cへの突出量Ldを調整可能に構成されている。
【0181】
このような構成により、内部空間11cへの調整用金属ねじ14の突出量Ldを変更することで導波管11における電波の伝送特性の調整を容易に行うことができる。
【0182】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置では、調整用金属ねじ14は、絶縁部16のうちの反射面18mから最も離れた部分である最遠部分16eから、導波管11の延伸方向Deに管内波長λg離れた位置までの範囲に設けられている。
【0183】
このように、反射面18mにより近い位置に調整用金属ねじ14を設ける構成により、内部空間11cにおいて、電波の伝送特性を劣化させる定在波を効果的に抑制することができるので、同軸ケーブルCBLおよび第2反射部18間において電波をより効率よく伝送することができる。
【0184】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置は、曲面形状の反射面1mを有する第1反射部1と、1次放射器2とを備える。1次放射器2は、反射面1mと対向する反射面18mを有する第2反射部18と、第2反射部18に接続された絶縁部16と、絶縁部16に接続された導波管11と、導波管11および同軸ケーブルCBLを接続する端子部12と、第2反射部18における反射面18m側に設けられ、反射面1mまたは絶縁部16から伝搬した電波を伝搬元への方向とは異なる方向へ反射する電波制御部17とを含む。そして、電波制御部17は、第2反射部18から脱着可能である。
【0185】
このように、反射面1mから、または絶縁部16経由で同軸ケーブルCBLから伝搬した電波を伝搬元への方向とは異なる方向へ反射する電波制御部17を用いて同軸ケーブルCBLおよび第1反射部1間において電波を伝送する構成により、同軸ケーブルCBLおよび第1反射部1間における電波の伝送特性を向上させることができる。
【0186】
また、電波制御部17を脱着可能な構成により、電波の反射特性の異なる電波制御部17への交換を可能とし、同軸ケーブルCBLおよび第1反射部1間における電波の伝送特性を簡易な作業でより向上させることができる。したがって、電波の減衰が大きい同軸線路を用いて1次放射器の先端まで電波を伝送し放射する構成と比べて、電波を効率よく伝送することができる。
【0187】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置では、絶縁部16には、電波制御部17が進入可能なサイズの凹部16dが設けられている。そして、導波管11の延伸方向Deにおいて、電波制御部17と凹部16dとの最大距離Lmaxは、反射面18mと対向する絶縁部16の部分のうち、凹部16d以外の部分と反射面18mとの距離より長い。
【0188】
このような構成により、電波制御部17のサイズを小さくした場合だけでなく、電波制御部17のサイズを大きくした場合においても絶縁部16に設けられた凹部16dに電波制御部17を進入させることができる。これにより、絶縁部16および反射面18mの配置を維持したまま電波制御部17のサイズを変更することができるので、絶縁部16等の形状を変更することなく伝送特性の調整を容易に行うことができる。
【0189】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置では、絶縁部16には、導波管11の内部空間11cへ伸びる凸部16aが設けられている。そして、凸部16aは、導波管11の幅方向の断面において一部を占めている。
【0190】
このような構成により、絶縁部16のサイズを小さくした場合において、電波を効率よく伝送し、かつコンパクトで衝撃耐性の強いアンテナ装置101を提供することができる。
【0191】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0192】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0193】
[付記1]
曲面形状の第1反射面を有する第1反射部と、
1次放射器とを備え、
前記1次放射器は、
前記第1反射面と対向する第2反射面を有する第2反射部と、
前記第2反射部に接続された絶縁部と、
前記絶縁部に接続された導波管と、
前記導波管および同軸ケーブルを接続する接続部と、
前記導波管に設けられ、前記導波管の内部空間へ突出し、かつ金属を含む突出部とを含み、
前記第1反射面の形状は、パラボラ形状であり、
前記第2反射部は、前記第1反射面と正対する円板形状の第2反射面を有し、
前記絶縁部は、無垢のPTFE(polytetrafluoroethylene)により形成され、
前記接続部では、前記導波管および前記同軸ケーブルがN型コネクタを介して接続され、
前記突出部は、金属製のねじである、アンテナ装置。
【0194】
[付記2]
曲面形状の第1反射面を有する第1反射部と、
1次放射器とを備え、
前記1次放射器は、
前記第1反射面と対向する第2反射面を有する第2反射部と、
前記第2反射部に接続された絶縁部と、
前記絶縁部に接続された導波管と、
前記導波管および同軸ケーブルを接続する接続部と、
前記第2反射部における前記第2反射面側に設けられ、前記第1反射面または前記絶縁部から伝搬した電波を伝搬元への方向とは異なる方向へ反射する電波制御部とを含み、
前記電波制御部は、前記第2反射部から脱着可能であり、
前記第1反射面の形状は、パラボラ形状であり、
前記第2反射部は、前記第1反射面と正対する円板形状の第2反射面を有し、
前記絶縁部は、無垢のPTFE(polytetrafluoroethylene)により形成され、
前記接続部では、前記導波管および前記同軸ケーブルがN型コネクタを介して接続され、
前記電波制御部は、円錐形状を有し、前記第2反射面の略中央に設けられている、アンテナ装置。