【実施例1】
【0031】
図1は、本発明の実施形態1を太陽光発電システムに適用した場合の構成の説明図である。
図1において、モニタリング通信子機1が本発明による太陽光発電動作点検出を含む太陽光発電モニタリングを行い、電力線通信によりモニタリング通信親機2にデータを伝送する。このデータ伝送には、特許文献1に記載の通信手段が利用可能である。
【0032】
複数(この図の例では3)の太陽電池パネル3が直列に接続され、逆流防止ダイオード4を経由してPCS(パワーコンディショナ)5に発電した電力を送電する。太陽電池ストリング6は、上記複数の太陽電池3が直列接続されたものであり、複数(この図の例では3)の太陽電池パストリング6が並列に接続された太陽電池アレイ8が、PCS5に接続している。
【0033】
電流センサー7は、太陽電池ストリング6ごとにそれぞれの電流を計測するもので、シャント抵抗あるいはホール素子と、計測アンプから構成される。
【0034】
図2は、本発明のモニタリング通信子機1のブロック構成図である。
図2において、電圧接続は、PCS5の入力電圧に接続し、これは太陽電池ストリング6の電圧にほぼ等しい。分圧器11は、電圧接続の端子の電圧を抵抗器で分圧し、電圧接続の端子間電圧に比例する電圧を出力する。
【0035】
信号切替器12は、電圧接続の端子間電圧に比例する電圧、複数の電流値入力にそれぞれ対応する電圧、温度センサー16の出力電圧のいずれか1つの電圧を選択する。この電圧はA/D変換器13によりアナログ値からデジタル値に変換される。
【0036】
これらの電圧値のデジタル情報は、CPU14に入力され、後述の演算処理により、太陽光発電動作点検出の演算を行う。また、CPU14は、太陽光発電動作点、太陽電池ストリング電圧、太陽電池ストリング電流などのデータを特許文献1記載の手法により変調して送信信号を生成する。この送信信号は、ドライバー15により電力線通信に適した信号の形式で電圧接続端子に出力される。
【0037】
信号切替器12、A/D変換器13、CPU14は、ワンチップ化されたマイコン等が利用可能である。
【0038】
太陽電池ストリング6の電圧は、通常太陽電池アレイ8の電圧に等しく、太陽光発電システムのPCS5によって最大電力動作点の追尾を行うため、電圧が変調されていることが一般的であり、この電圧変調によってストリングの電流も変化している。
【0039】
この電圧変調と電流変調の波形を模式的に表したグラフを
図3に示す。最大電力動作点においては、電圧変調波形と電流変調波形は、逆位相で、変調の割合が等しい。
【0040】
本発明の太陽光発電モニタリング子機では、この電圧変調によって発生したストリングの電圧変化と電流変化を以下のようにして検出する。
図4の図(a)、図(b)は、太陽電池ストリングの電流電圧特性および電力電圧特性のグラフの模式図である。
【0041】
図4のグラフにおいて、(A)は正常な太陽電池ストリングの特性、(B)はストリングを構成する太陽電池パネルの一部が発電しない不具合がある太陽電池ストリングの特性を示す。図示のように(B)のグラフでは、最大電力動作点の電圧Vmpが正常のものに比べて低い。
【0042】
太陽光発電システムでは、通常は大半の太陽電池ストリングが正常動作していると考えられ、この場合、並列接続された太陽電池ストリングの電圧は、太陽電池ストリングの最大電力動作点の電圧Vmpを中心にPCSからの変調電圧が重畳されていると考えられる。
【0043】
正常な太陽電池ストリングでは、最大電力動作点の電圧Vmpと太陽電池アレイの電圧Vaがほぼ等しいことから、Vaを中心に図中の矢印のように変調電圧によって電圧が変化している。
【0044】
図4(b)において、(A)では、最大電力動作点であるため、変調電圧により電圧が変化しても電力値の変化は小さい、しかしながら、(B)では、Vaが最大電力動作点Vmpの電圧より高いため、
図4のグラフより明らかなように、Va近傍の電圧において、電圧が上昇する場合は、電力が低下する。
【0045】
図5は、太陽電池ストリングの電力(P)の電圧(V)に関する微分特性(dP/dV)のグラフの模式図であり、A)正常時、B)不具合時の特性曲線を模式的に示したものである。
【0046】
A)正常時、B)不具合時のいずれの最大電力動作点においては、電力が最大値であり、電圧に関する電力変化の割合がほぼ0になることから、dP/dVは必ず0である。また、最大電力動作点よりも高い電圧においてはdP/dVは負である。
【0047】
図6(a)から
図6(f)は、太陽電池ストリングのA)正常時、B)不具合時それぞれにおける、電圧波形、電圧の時間微分波形(dV/dt)、電流波形、電力波形、電力の時間微分波形(dP/dt)、(ΔP×sign(ΔV))の波形を模式的に示したものである。
【0048】
図6の各図において、変調波形の1周期の時間間隔を図中の縦点線で示す。この時間間隔は、PCSによる変調周期であり、一般的に数ミリ秒から数秒の範囲内である。また、説明の便宜上、図の波形は変調の振幅が実際の振幅よりも大きい。
【0049】
図6(c)、
図6(a)に示した正常時および不具合時の一定期間の電流および電圧特性は、
図4に示した電流電圧特性の(A)および(B)に対応し、動作点は正常時が最大電力動作点であり、不具合時は不具合時の最大電力動作点よりも高い電圧である。
【0050】
正常時には、電圧の振幅と電流の振幅は大きさがほぼ同じで位相は逆であり、電力波形の脈流分は小さく、電力の時間微分波形(dP/dt)も小さい。
不具合時には、電圧の振幅に対して電流の振幅が大きく位相は逆である。電力波形の脈流分が図のように大きく、電力の時間微分波形(dP/dt)も大きい。
【0051】
この関係から、電圧の変化と電力の変化の関係を調べることにより動作電圧(動作点)における最大電力動作点との位置関係を知ることが可能である。このための好適な演算処理について以下に具体的に説明する。
【0052】
太陽光発電モニタリング子機において、ストリングの電流と電圧を1ミリ秒ごとに計測(サンプリング)する。これは、PCSにおける電圧変調の周期が数ミリ秒から数秒の範囲であり、その周期よりも短い時間間隔で電圧値および電流値を取得することが好適なためである。
CPU14で、電力値を計測した電圧値と電流値から計算する。
【0053】
【数4】
【0054】
現在の計測点と1つ前の計測点の電圧値、電力値の差分をそれぞれ計算し、電圧値の差分をΔV、電力値の差分をΔPとする。ΔVは、サンプリングのタイミングにより、正であったり負であったりする。
【0055】
(A)の場合は、
図4の電力と電圧の関係のグラフから、ΔPはほぼ0である。
(B)の場合は、
図4の電力と電圧の関係のグラフから、ΔVが正の場合はΔPが負であり、ΔVが負の場合はΔPが正である。
【0056】
ΔVの符号の影響をのぞくため、本発明では、ΔP×sign(ΔV)を計算することを特徴とする。ここで、signは、引数が負の場合は−1を、正の場合は1を与える関数である。
【0057】
(A)の場合は、ΔP×sign(ΔV)は、ほぼ0である。
(B)の場合は、ΔP×sign(ΔV)は、負である。
【0058】
また、同様にして、仮に最大電力動作点がVmpよりも高い場合には、ΔP×sign(ΔV)は、正である。
【0059】
さらにまた、ΔP×sign(ΔV)の絶対値の大きさは、最大電力動作点の電圧とVmpの電圧の差に比例する。
【0060】
実施例1では、電圧変化に関する情報として、電圧変化ΔVの絶対値の積算値、
【0061】
【数5】
【0062】
の値を計算する。また、電力変化に関する情報として、まず、電圧値と電流値の積を計算して電力値Pを求め、その電力値の変化に電圧値の変化の符号を掛けたものを積算する。
【0063】
【数6】
【0064】
このとき、積算時間は、たとえば、太陽光発電モニタリングにおける通信頻度(数十秒)である。
【0065】
上記の2つの情報、すなわち、電圧変化に関する情報Σ|ΔV|と電力変化に関する情報Σ(ΔP×sign(ΔV))の2つの情報から、
【0066】
【数7】
を計算する。この値は、太陽電池動作点の最大電力動作点からのずれ量に相当する。
【0067】
この値が0であれば、太陽電池の動作点が最大電力動作点であり、この値が負であれば、太陽電池の動作点の電圧が最大電力動作点の電圧より高いところに存在する。この値の絶対値は、太陽電池の動作点が最大電力動作点からどのくらい離れているかを示す。
【0068】
この結果により、太陽電池ストリングに含まれる太陽電池パネルに不具合があるかどうかを検知することができるので、適宜不具合太陽電池パネルを交換すればよい。
【0069】
なお、上記の2つの情報は、積算期間につき2つの数値であり、このデータを親機に伝送して式7の計算を親機で実行してもよい。この場合は、除算の演算を子機でなく親機で行うことから子機のマイコンの計算リソースを節約することができる。