特許第6352158号(P6352158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6352158洗浄具、洗浄具の製造方法、および、基板洗浄装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352158
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】洗浄具、洗浄具の製造方法、および、基板洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   H01L21/304 644G
   H01L21/304 644C
   H01L21/304 622Q
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-235191(P2014-235191)
(22)【出願日】2014年11月20日
(65)【公開番号】特開2016-100423(P2016-100423A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】石橋 知淳
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−173966(JP,A)
【文献】 特開2002−028584(JP,A)
【文献】 特開平09−134896(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3192429(JP,U)
【文献】 特開平10−135166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/02
B08B 1/04
B08B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながら被洗浄基板を洗浄する洗浄部材と、
それぞれが前記洗浄部材の側面の一部を挟み込む複数のチャック爪に下部が分割されており、前記洗浄部材の周囲に沿って設けられるスリーブと、を備え、
前記複数のチャック爪のそれぞれの内面には、前記洗浄部材の回転方向と略平行に並んでおり、先端が前記洗浄部材の側面に接触する複数の突起が設けられる、洗浄具。
【請求項2】
前記複数の突起は、前記洗浄部材に食い込んでおり、
前記複数の突起の隙間には、前記洗浄部材の側面がせり出している、請求項1に記載の洗浄具。
【請求項3】
前記スリーブの外周に嵌まるリング部材を備え、
前記リング部材が前記スリーブに嵌まることで、前記突起が前記洗浄部材に食い込む、請求項2に記載の洗浄具。
【請求項4】
前記スリーブが回転駆動される際、前記複数の突起が前記洗浄部材に回転方向の駆動力を伝達する、請求項1乃至3のいずれかに記載の洗浄具。
【請求項5】
前記複数のチャック爪のそれぞれの内面には、前記複数の突起が設けられる位置とは異なる位置に、前記洗浄部材の回転方向と略直交する方向に延びており、先端が前記洗浄部材に接触する別の突起がさらに設けられる、請求項1乃至4のいずれかに記載の洗浄具。
【請求項6】
前記洗浄部材を前記スリーブの中心に配置する位置決め機構を備える、請求項1乃至5のいずれかに記載の洗浄具。
【請求項7】
前記洗浄部材の上面の略中心には凹部が設けられ、
当該洗浄具は、前記スリーブと固定される保持芯体であって、前記洗浄部材の上面と対向する面の略中心に、前記凹部と係合する凸部が設けられる保持芯体を備える、請求項1乃至6のいずれかに記載の洗浄具。
【請求項8】
前記洗浄部材の上面と、この上面と対向する前記保持芯体の面と、の間には、隙間があり、
前記洗浄部材は弾性を有し、
前記隙間の幅と、前記洗浄部材の凹部に前記保持芯体の凸部が係合されない状態での前記凹部の深さと、の和より、前記保持芯体の凸部の高さが大きい、請求項7に記載の洗浄具。
【請求項9】
前記凹部の底部と接触する前記凸部の面には、溝が設けられている、請求項8に記載の洗浄具。
【請求項10】
前記洗浄部材は、下側円柱部と、前記下側円柱部より径が小さい上側円柱部と、から構成され、
前記下側円柱部の下面は、洗浄面であり、
前記下側円柱部の上面は、前記スリーブの下面と接触し、
前記上側円柱部の側面は、前記チャック爪によって挟み込まれ、
前記上側円柱部の上面に、前記凹部が設けられる、請求項8または9に記載の洗浄具。
【請求項11】
前記凹部の断面は、直線で形成される、請求項7乃至10のいずれかに記載の洗浄具。
【請求項12】
被洗浄基板を保持して回転させる基板保持回転機構と、
前記被洗浄基板を洗浄する、請求項1乃至11のいずれかに記載の洗浄具と、
前記洗浄具が装着され、前記洗浄具を前記被洗浄基板上で回転させる洗浄具装着機構と、を備える基板洗浄装置。
【請求項13】
下面の略中心に凸部が設けられた保持芯体を、スリーブの上部の開口から挿入する工程と、
上面の略中心に凹部が設けられた洗浄部材を、複数のチャック爪に分割された前記スリーブの下部の開口から挿入し、前記凹部に前記凸部を係合させる工程と、
前記複数のチャック爪のそれぞれの内面には、前記洗浄部材の回転方向と略平行に並んだ複数の突起が設けられており、リング部材を前記スリーブの外周に嵌めることで、前記複数の突起を前記洗浄部材に食い込ませる工程と、を備える洗浄具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を洗浄する洗浄具およびその製造方法、ならびに、基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体ウエハなどの基板を洗浄する基板洗浄装置が開示されている。この基板洗浄装置は、洗浄部材を回転させながら半導体ウエハに接触させることで、その表面を洗浄するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−173966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、半導体ウエハの大きさは直径300mmのものが多かった。しかしながら、近年では半導体ウエハの大型化が進んでおり、直径450mmの半導体ウエハが主流になりつつある。特許文献1に記載の基板洗浄装置は、これを単に大型化しても十分な洗浄力が得られるとは限らないなどの問題があり、必ずしも大きな基板の洗浄に適した構造にはなっていない。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、大型な基板の洗浄にも適した洗浄具およびその製造方法、ならびに、そのような洗浄具を用いた基板洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、回転しながら被洗浄基板を洗浄する洗浄部材と、それぞれが前記洗浄部材の側面の一部を挟み込む複数のチャック爪に下部が分割されており、前記洗浄部材の周囲に沿って設けられるスリーブと、を備え、前記複数のチャック爪のそれぞれの内面には、前記洗浄部材の回転方向と略平行に並んでおり、先端が前記洗浄部材の側面に接触する複数の突起が設けられる、洗浄具が提供される。
このような複数の突起を設けることで、洗浄部材が大きな場合でもその空転を抑制でき、大型な基板も洗浄できる。
【0007】
前記複数の突起は、前記洗浄部材に食い込んでおり、前記複数の突起の隙間には、前記洗浄部材の側面がせり出しているのが望ましい。そのために、洗浄具は、前記スリーブの外周に嵌まるリング部材を備え、前記リング部材が前記スリーブに嵌まることで、前記突起が前記洗浄部材に食い込むようにしてもよい。
また、前記スリーブが回転駆動される際、前記複数の突起が前記洗浄部材に回転方向の駆動力を伝達するのが望ましい。
【0008】
さらに望ましくは、前記複数のチャック爪のそれぞれの内面には、前記複数の突起が設けられる位置とは異なる位置に、前記洗浄部材の回転方向と略直交する方向に延びており、先端が前記洗浄部材に接触する別の突起がさらに設けられる。これにより、空転防止の効果が向上する。
【0009】
前記洗浄部材を前記スリーブの中心に配置する位置決め機構を備えていてもよい。また、前記洗浄部材の上面の略中心には凹部が設けられ、当該洗浄具は、前記スリーブと固定される保持芯体であって、前記洗浄部材の上面と対向する面の略中心に、前記凹部と係合する凸部が設けられる保持芯体を備えていてもよい。これにより、精度よく洗浄部材をスリーブの中心に位置決めでき、洗浄部材が偏心した状態で回転するのを防止し、洗浄部材が長寿命化する。
【0010】
望ましくは、前記洗浄部材の上面と、この上面と対向する前記保持芯体の面と、の間には、隙間があり、前記洗浄部材は弾性を有し、前記隙間の幅と、前記洗浄部材の凹部に前記保持芯体の凸部が係合されない状態での前記凹部の深さと、の和より、前記保持芯体の凸部の高さが大きい。これにより、洗浄部材の中心部に下向きの圧力が加わり、洗浄力が増す。
また、前記凹部の底部と接触する前記凸部の面には、溝が設けられているのが望ましい。洗浄部材が回転する際に溝の縁に力が集中し、洗浄力が増す。
【0011】
洗浄部材の具体的な構成例として、前記洗浄部材は、下側円柱部と、前記下側円柱部より径が小さい上側円柱部と、から構成され、前記下側円柱部の下面は、洗浄面であり、前記下側円柱部の上面は、前記スリーブの下面と接触し、前記上側円柱部の側面は、前記チャック爪によって挟み込まれ、前記上側円柱部の上面に、前記凹部が設けられてもよい。
望ましくは、前記凹部の断面は、直線で形成される。これにより、凹部を容易に形成できるとともに、直線部分が回転方向の駆動力を洗浄部材に伝達できる。
【0012】
また、本発明の別の態様によれば、被洗浄基板を保持して回転させる基板保持回転機構と、前記被洗浄基板を洗浄する、上記の洗浄具と、前記洗浄具が装着され、前記洗浄具を前記被洗浄基板上で回転させる洗浄具装着機構と、を備える基板洗浄装置が提供される。
【0013】
また、本発明の別の態様によれば、下面の略中心に凸部が設けられた保持芯体を、スリーブの上部の開口から挿入する工程と、上面の略中心に凹部が設けられた洗浄部材を、複数のチャック爪に分割された前記スリーブの下部の開口から挿入し、前記凹部に前記凸部を係合させる工程と、前記複数のチャック爪のそれぞれの内面には、前記洗浄部材の洗浄面と略平行に並んだ複数の突起が設けられており、リング部材を前記スリーブの外周に嵌めることで、前記複数の突起を前記洗浄部材に食い込ませる工程と、を備える洗浄具の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
スリーブのチャック爪の内面に、洗浄部材の回転方向と略平行に並ぶ複数の突起を設ける。そのため、洗浄部材が大きな場合でもその空転を抑制でき、大型な基板も洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】基板洗浄装置の概略構成を示す斜視図。
図2】洗浄具3の断面図。
図3】洗浄具3の分解斜視図。
図4】洗浄部材31の斜視図。
図5】洗浄部材31の中心を通る垂直方向断面図。
図6】保持芯体33の円柱部33aの下面の拡大図。
図7】洗浄部材31の上面および保持芯体33の円柱部33aの下面の拡大図。
図8】保持芯体33の凸部33dの変形例を示す図。
図9】洗浄部材31の凹部31cの変形例を示す図。
図10】チャック爪32aの内面の拡大図。
図11】チャック爪32aが洗浄部材31の上側円柱部31bを挟む様子を示す図。
図12】チャック爪32aの内面の別の例の拡大図。
図13】洗浄具3の製造方法を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0017】
図1は、基板洗浄装置の概略構成を示す斜視図である。基板洗浄装置は、基板保持回転機構1と、洗浄具装着機構2と、洗浄具3と、ノズル4と、容器5とを備えている。
【0018】
基板保持回転機構1は、半導体ウエハなどの被洗浄基板Wfを保持し、回転させる。より具体的には、基板保持回転機構1は、被洗浄基板Wfを保持するためのチャック11が装着された複数本(図1では4本)のアーム12、アーム12が一体的に取り付けられる基台13、基台13を回転させる回転軸14などから構成される。
【0019】
洗浄具装着機構2には洗浄具3が装着され、洗浄具3を被洗浄基板Wf上で回転させながら、洗浄具3を被洗浄基板Wfの中心から縁(あるいは縁から縁)まで揺動させる。より具体的には、洗浄具装着機構2は、先端に装着された洗浄具3を回転させる回転軸21、洗浄具3を揺動および昇降させる揺動軸22、一端に揺動軸22が固定され他端に回転軸21を介して洗浄具3が取り付けられた揺動アーム23などから構成される。
【0020】
洗浄具3は、その下面が被洗浄基板Wfの表面に接触した状態で揺動および回転することで、被洗浄基板Wfを洗浄する。本発明は、洗浄具3の構造を工夫することにより、大きな被洗浄基板Wf、例えば直径450mmの半導体ウエハの洗浄にも適した基板洗浄装置を実現するものである。
ノズル4は純水などの洗浄液を被洗浄基板Wf上に供給する。容器5には洗浄液が入っており、被洗浄基板Wfを洗浄した後の洗浄具3を洗浄する。
【0021】
このような構成の基板洗浄装置は以下のように動作する。基板保持回転機構1の回転軸14によって回転されている被洗浄基板Wf上に、ノズル4から洗浄液が噴射される。同時に、洗浄具装着機構2の回転軸21が洗浄具3を回転させるとともに、揺動軸22が洗浄具3の下面を被洗浄基板Wfの表面に接触させた状態で洗浄具3を揺動させる。これにより被洗浄基板Wfが洗浄される。洗浄が終了すると、揺動軸22は揺動アーム23を旋回させ、洗浄具3を容器5内の洗浄液に浸漬させる。一方、洗浄が終了した被洗浄基板Wfは基板保持回転機構1の回転軸14によって高速回転され、スピン乾燥させた後、ロボットアーム(図示せず)などで次の処理行程に移送される。
続いて、洗浄具3について説明する。
【0022】
図2および図3は、それぞれ洗浄具3の断面図および分解斜視図である。洗浄具3は、洗浄部材31と、スリーブ32と、保持芯体33と、リング部材34と、ネジ35とを備えている。
【0023】
洗浄部材31は、弾性および吸液性を有する柔らかい多孔質体、例えばスポンジ(多孔質基気質PVF(ポリビニルホルマール))やPVA(ポリビニルアルコール)から形成される。洗浄部材31は、下側円柱部31aと、これより径が小さい上側円柱部31bとから構成される。下側円柱部31aの中心上に上側円柱部31bの中心が位置している。
【0024】
図2に示すように、下側円柱部31aの上面外周はスリーブ32の下面に接触しており、スリーブ32から下向きの圧力を受ける。下側円柱部31aの下面(すなわち洗浄部材31の下面)が洗浄面である。洗浄面が回転しながら被洗浄基板Wfの表面に接触することで、被洗浄基板Wfが洗浄される。被洗浄基板Wfの直径が450mmである場合、例えば下側円柱部31aの直径は42mm程度である。
【0025】
上側円柱部31bは、その側面がスリーブ32によって挟み込まれており、その上面は隙間36を空けて保持芯体33の下面と対向している。また、上側円柱部31bの上面のほぼ中央には凹部31cが形成されている。
【0026】
スリーブ32は、上部および下部が開口し、内部が空洞になっている。また、スリーブ32の上部および下部は厚く、中央部は薄くなっている。図3に示すように、スリーブ32の外周には、下端から上方に向かって延びる4本の切り溝が設けられ、これによりスリーブ32の下部は4本のチャック爪32aに分割されている。
【0027】
スリーブ32の下部開口から洗浄部材31の上側円柱部31bが挿入され、各チャック爪32aは洗浄部材31の周囲に沿って位置している。洗浄部材31を挿入しやすいよう、後述するリング部材34が嵌められていない状態では、各チャック爪32aが若干外側に広がっていてもよい。
【0028】
図2に示すように、チャック爪32aの内面には、先端が洗浄部材31の側面に接触する複数の突起32bが設けられている。これらの突起32bにより洗浄部材31を確実に挟み込むことができる。また、チャック爪32aの上部には、ネジ35がねじ込まれるネジ穴32cが形成される。さらに、チャック爪32aの下部には外側に向かう突起32dが形成される。突起32dの上方には突起32dより低い突起32eが形成される。
【0029】
保持芯体33は、円柱部33aと、その上部に形成された外径寸法が大きい鍔体33bとから構成される。鍔体33bにはネジ35が貫通する貫通孔33b1が形成されている。貫通孔33b1はスリーブ32のネジ穴32cの上方に形成されており、ネジ35が貫通孔33b1を介してスリーブ32のネジ穴32cにねじ込まれることで、保持芯体33はスリーブ32に固定される。
【0030】
円柱部33aの内側には凹部33cが形成されており、本洗浄具3を保持して回転させる回転軸21(図1参照)の先端が凹部33cに係合される。回転軸21が回転することで、保持芯体33およびこれに固定されたスリーブ32が回転駆動される。円柱部33aの下面には、そのほぼ中心に、洗浄部材31の凹部31cに係合する凸部33dが設けられている。凸部33dが設けられない部分においては、円柱部33aの下面と洗浄部材31の上面との間に隙間36がある。
【0031】
リング部材34はその内径がスリーブ32の外周とほぼ等しい円筒体であり、スリーブ32の外側に嵌まっている。そして、リング部材34の内周面に形成された溝34aがチャック爪32aの突起32eに係合しており、リング部材34の下面はスリーブ32の突起32dによって支持される。リング部材34によってスリーブ32のチャック爪32aは内側に向かって締め付けられる。
次に、洗浄具3の特徴の1つである洗浄部材31上面の凹部31cおよび保持芯体33下面の凸部33dについて詳しく説明する。
【0032】
図4は、洗浄部材31の斜視図であり、図5は、洗浄部材31の中心を通る垂直方向断面図である。図4に示すように、洗浄部材31の上面のほぼ中央に凹部31cが形成されている。凹部31cの幅(直径)は、例えば上側円柱部31bの直径の15%程度である。同図では凹部31cの水平方向断面が円形である例を示しているが、三角形などの多角形であってもよい。凹部31cの垂直方向断面は、図5(a)に示すような矩形でもよい。あるいは、図5(b)に示すように、凹部31cの底部が尖っており、底部の端から中央に向かって深くなっていてもよい。洗浄部材31は弾性を有するが、外力が加わらない状態での凹部31cの深さをaとする。深さaは、例えば上側円柱部31bの60%程度である。
【0033】
図6は、保持芯体33の円柱部33aの下面の拡大図である。図示のように、円柱部33aの下面のほぼ中心に、洗浄部材31の凹部31cに係合する凸部33dが形成されている。凸部33dの形状は洗浄部材31の凹部31cの形状に応じたものとなっている。凹部31cが図5(a)に示すように矩形であれば、凸部33dも矩形とする(図6(a))。また、凹部31cが図5(b)に示すように底部が尖った形状であれば、凸部33dも先端が尖った形状とする(図6(b))。凸部33dの高さ、すなわち円柱部33aの下面から凸部33dの先端までの長さをbとする。
【0034】
図7は、洗浄部材31の上面および保持芯体33の下面の拡大図である。図7(a)は図5(a)および図6(a)に対応しており、図7(b)は図5(b)および図6(b)に対応している。図示のように、洗浄部材31の上側円柱部31bの上面と、保持芯体33の円柱部33aの下面との間には、隙間36がある。隙間36を設ける理由は、洗浄部材31の高さに製造誤差がある場合であっても、この隙間36で製造誤差を吸収できるためである。この隙間36の高さをcとする。そして、保持芯体33の凸部33dは、洗浄部材31の凹部31cに係合している。
【0035】
洗浄部材31の凹部31cおよび保持芯体33の凸部33dがないと、特に被洗浄基板Wfの大型化に伴って洗浄部材31も大きくする場合に、保持芯体33に対して洗浄部材31を正確に位置決めするのが困難である。例えば洗浄部材31の中心と保持芯体33の中心とがずれていた場合、洗浄部材31をスリーブ32のチャック爪32aでしっかりと挟み込むことができない。また、偏心した状態で洗浄部材31を回転させると洗浄部材31が早く消耗してしまうこともある。
【0036】
これに対し、本実施形態では、保持芯体33に凸部33dを、洗浄部材31に凹部31cを設ける。凸部33dおよび凹部31cが、洗浄部材31をスリーブ32の中心に配置する位置決め機構として機能するため、洗浄部材31を保持芯体33の中心に精度よく配置できる。凹部31cが図5(b)に示す形状であれば、洗浄部材31をより正確に位置決めできる。
【0037】
このような位置決めのためには、少なくとも凸部33dの先端が凹部31cに届くよう、凹部31cの深さa、凸部33dの高さbおよび隙間36の高さcを設計すればよい。より望ましくは、下記(1)式を満たすよう、凹部31cの深さa、凸部33dの高さbおよび隙間36の高さcの少なくとも1つが設計される。
b>a+c ・・・(1)
【0038】
この関係を満たす場合、保持芯体33の凸部33dの先端は洗浄部材31の凹部31cの底部に確実に届き、凸部33dは洗浄部材31に下向きの圧力を加える。これにより、洗浄部材31の中心部分が被洗浄基板Wfに押圧され、洗浄力が増す。特に、上記(1)式の左辺bと右辺a+cとの差を大きくすることで、洗浄部材31の中心部分によって被洗浄基板Wfにより高い荷重をかけることができる。
【0039】
仮に上記(1)式が満たされない場合、図2から分かるように、洗浄部材31が被洗浄基板Wfに押圧される部分は、主にスリーブ32の下面からの圧力を受ける洗浄部材31の外周付近である。この外周付近の面積は、従来の小型な洗浄部材を単に大型化しても、ほとんど変わらない。そのため、大きな被洗浄基板Wfを十分に洗浄できないおそれがある。
【0040】
これに対し本実施形態では、保持芯体33の凸部33dが洗浄部材31の中心部分を押圧するため、洗浄部材31の外周付近に加えて中心部分でも被洗浄基板Wfを洗浄でき、大きな被洗浄基板Wfの洗浄にも好適である。
【0041】
図8は、保持芯体33の凸部33dの変形例を示す図であり、同図(a)は断面図、同図(b)は凸部33dを下から見た図である。凸部33dの下面に、1または複数の、例えばリング状の溝33eを設けてもよい。なお、洗浄部材31の無回転部分に荷重汚染の懸念がある場合、凸部33dの下面中心に凹部を設け、洗浄部材31の中心が被洗浄基板Wfを押圧しないようにしてもよい。
【0042】
このような溝33eを設けることで、洗浄部材31が揺動した際に溝の33eの縁が被洗浄基板Wf上を横切ることとなる。縁には力が集中するため、洗浄力が向上する。溝33eを設けるのであれば、洗浄部材31の表面は平坦であってもよい。また、仮に洗浄部材31が空転したとしても、洗浄部材31が揺動さえしていれば溝33eによって被洗浄基板Wfを洗浄できる。
【0043】
図9は、洗浄部材31の凹部31cの変形例を示す図であり、洗浄部材31の上側円柱部31bを上から見た図である。
【0044】
図9(a)に示すように、製造上可能であれば、凹部31の幅を大きめに、具体的には上側円柱部31bの直径の50%以上と広くするのが望ましい。洗浄部材31が被洗浄基板Wfを押圧する面積を大きくでき、洗浄力が向上する。
図9(b)に示すように、上側円柱部31bの中心のみならず、その周囲に等間隔で配置される複数の凹部31b’を設けてもよい。これにより、中心の凹部31bが小さくても、洗浄部材31が被洗浄基板Wfを押圧する面積を大きくできる。
【0045】
図9(c)〜(f)に示すように、凹部31bの断面の少なくとも一部、望ましくは全てが直線で形成されていてもよい。その理由は、洗浄部材31を加工して凹部31bを形成するのが容易になるためである。直線のみで形成することで、凹部31bの直線部分が洗浄部材31の回転方向の駆動力を洗浄部材31に伝達できるという利点もある。また、洗浄部材31のより多くの部分が被洗浄基板Wfに押圧されることで、洗浄部材31への圧力が分散し、洗浄部材31が長寿命化する。
【0046】
具体的な凹部31bの形状に特に制限はなく、凹部31bの形状は、上側円柱部31bの中心を通る長方形でもよいし(図9(c))、十字型でもよいし(図9(d))、上側円柱部31bの縁に達する十字型でもよいし(図9(e))、中心から縁に向かって等間隔に延びる複数(例えば3つ)の辺から形成されてもよい(図9(f))。ただし、位置決めのためには、いずれの形状であっても、上側円柱部31bの中心は凹んでいるのが望ましい。
なお、保持芯体33の凸部33dは、洗浄部材31の凹部31cの形状に合わせておけばよい。
【0047】
次に、洗浄具3の別の特徴であるチャック爪32aの内面の突起32bについて詳しく説明する。
【0048】
図10は、チャック爪32aの内面の拡大図である。図10(a)に示すように、チャック爪32aの下端には、内側に向かって伸びる複数(図10(a)では3つ)の突起32bが、洗浄部材31の回転方向に沿って、水平面すなわち洗浄部材31の洗浄面とほぼ平行に、並んで設けられている。突起32bと突起32bとの間には隙間32fが設けられている。突起32bの幅は隙間32fの幅より大きくてもよいし、隙間32fの幅と同程度であってもよい。また、隙間32fの底部はチャック爪32aの内面と同一面上にあってもよい。
【0049】
これらの突起32bは、例えば、図10(b)に示すように隙間32fがない状態の1つの長い突起32b’から、隙間32fに相当する部分を除くことによって形成される。突起32bは、チャック爪32aと一体に形成されてもよいし、チャック爪32aとは別の部材であってもよい。
【0050】
また、チャック爪32aの内面であって、隙間32f(あるいは突起32b)の上方には、垂直方向、すなわち、洗浄部材31の洗浄面とほぼ直交する方向に延びる突起32gがさらに設けられてもよい。
【0051】
図11は、チャック爪32aが洗浄部材31の上側円柱部31bを挟む様子を示す図であり、これらを上から見た図である。リング部材34がスリーブ32の外周に嵌められることで、チャック爪32aが内側に向かって押さえつけられる。これにより、弾性を有する洗浄部材31が変形し、突起32bが上側円柱部31bの側面に食い込むとともに、隙間32fに上側円柱部31bの側面がせり出す。
【0052】
このように洗浄部材31を変形させるためには、洗浄部材31の凹部31cおよび保持芯体33の凸部33dを利用して洗浄部材31をチャック爪32aの中心に正確に配置した上で、4つのチャック爪32aで均等に洗浄部材31を挟み込むのが望ましい。洗浄部材31が中心からずれていると、中心から離れたチャック爪32aの突起32bは十分に洗浄部材31を挟み込めないためである。
【0053】
図11に示す状態で、洗浄具装着機構2の回転軸21が回転し、これに伴って保持芯体33およびスリーブ32が回転駆動されると、突起32bが洗浄部材31に回転方向の駆動力を伝達する。これにより、保持芯体33およびスリーブ32は回転するが洗浄部材31が回転しないという空転を抑えることができ、被洗浄基板Wfを効率よく洗浄できる。
【0054】
複数の突起32bがなく、回転方向に沿った長い1つの突起(図10(b))で洗浄部材31を挟む場合、回転方向の駆動力が洗浄部材31に十分に伝達されず、洗浄部材31が空転しまうことがある。特に、大きな被洗浄基板Wf用に大きな洗浄部材31を用いる場合、洗浄部材31の外周の回転速度が高くなるため空転が起きやすい。
【0055】
これに対し、本実施形態では、洗浄面と平行に(すなわち回転方向に)並ぶ複数の突起32bをチャック爪32aの内面に設ける。突起32bが空転防止機構として機能するため、空転を防止できる。
【0056】
図12は、チャック爪32aの内面の別の例の拡大図である。図示のように、チャック爪32aの下端には、内側に向かって伸びる突起32hが設けられる。さらに、突起32hの上には、内側に向かって伸びる複数(図12では2つ)の突起32iが、洗浄部材31の回転方向に沿って、水平面すなわち洗浄部材31の洗浄面とほぼ平行に、並んで設けられている。
図10(a)および図12に示すように、チャック爪32aには内側に向かう凹凸が形成されていればよい。
【0057】
次に、上述した洗浄部材31、スリーブ32、保持芯体33およびリング部材34を組み立てて洗浄具3を製造する方法を説明する。
【0058】
図13は、洗浄具3の製造方法を示す工程図である。まず、保持芯体33の円柱部33aをスリーブ32の上部開口から挿入し、鍔体33bの下面をスリーブ32の上面に接触させる(ステップS1)。これにより、保持芯体33の凸部33dはスリーブ32の内部に位置する。
【0059】
続いて、保持芯体33の貫通孔33b1を介してスリーブ32のネジ穴32cにネジ35をねじ込み、保持芯体33とスリーブ32とを固定する(ステップS2)。
【0060】
次に、洗浄部材31の上側円柱部31bをスリーブ32の下部開口から挿入し、下側円柱部31aの上面をスリーブ32の下面に接触させるとともに、上側円柱部31bの上面に設けられた凹部31cに保持芯体33の凸部33dを係合させる(ステップS3)。これにより、洗浄部材31がスリーブ32の中心に精度よく配置される。なお、この状態では、必ずしもチャック爪32a内面の突起32bが洗浄部材31に接触していなくてもよい。
【0061】
その後、リング部材34をスリーブ32の外周に嵌める(ステップS4)。これにより、スリーブ32は締め付けられ、図11に示すように、突起32bが洗浄部材31の側面に食い込み、洗浄部材31がスリーブ32に強固に取り付けられる。
なお、図13は洗浄具3を製造する方法であるが、同様にして消耗品である洗浄部材31を交換することもできる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態では、チャック爪32aの内面に、洗浄面の回転方向に沿って並ぶ複数の突起32bを設ける。そのため、洗浄部材31が強固にスリーブ32に取り付けられ、洗浄部材31が大きい場合でも空転を抑えることができる。また、洗浄部材31の上面に凹部31cを設けるとともに、これに係合する凸部33dを保持芯体33に設けることで、洗浄部材31をスリーブ32の中心に位置決めでき、空転防止効果の向上および洗浄部材31の長寿命化を図れる。さらに、凸部33dを長くすることで洗浄部材31の中心付近に下向きの力が加わり、洗浄力が向上する。このように、本洗浄具3を用いた基板洗浄装置により、大きな被洗浄基板Wfも高い洗浄力で洗浄できる。
【0063】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0064】
1 基板保持回転機構
2 洗浄具装着機構
3 洗浄具
4 ノズル
5 容器
31 洗浄部材
31a 下側円柱部
31b 上側円柱部
31c 凹部
32 スリーブ
32a チャック爪
32b,32g,32i 突起
33 保持芯体
33d 凸部
33e 溝
34 リング部材
35 ネジ
36 隙間
Wf 被洗浄基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13