(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固有振動特定手段は、前記揺動検出手段によって検出された時系列の揺動データに高速フーリエ変換をかけて前記縦揺れ固有振動値及び前記横揺れ固有振動値を特定することを特徴とする請求項1記載の積載重量検出装置。
前記固有振動特定手段によって特定される前記縦揺れ固有振動値及び前記横揺れ固有振動値は、固有振動周波数であることを特徴とする請求項1又は2記載の積載重量検出装置。
前記総重量算出手段は、前記移動体の動揺中心軸から重心位置までの垂直方向の高さと、前記移動体の動揺中心軸から重心位置までの水平方向の変位と、前記移動体における荷台の静止傾斜角を考慮して前記移動体の総重量を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の積載重量検出装置。
前記固有振動特定手段は、前記揺動検出手段によって検出された時系列の揺動データに高速フーリエ変換をかけて前記縦揺れ固有振動値を特定することを特徴とする請求項5又は6記載の積載重量検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態の積載重量検出装置は、
図1及び
図2を参照すると、移動体である貨物車両(トラック)10の総重量Mを検出する装置であり、振動検出部20と、データ処理部30とを備えている。貨物車両10の総重量M(厳密には総質量)は、貨物車両10の車体重量m
aと、貨物車両10の荷台11に積載された貨物1の貨物重量m
bとを加算した値であり、車体重量m
aが既知である場合には、結果として貨物重量m
bが検出されることになる。なお、第1の実施の形態では、荷台11に対して垂直な方向を上下方向、貨物車両10の縦幅方向を前後方向、貨物車両10の横幅方向を左右方向とする。また、重力が作用する自重方向をZ軸方向、Z軸方向及び前後方向と直交する方向をX軸方向、Z軸方向及び左右方向と直交する方向をY軸方向とし、荷台12が水平な状態では、上下方向とZ軸方向とが、前後方向とY軸方向とが、左右方向とX軸方向とがそれぞれ一致する。
【0011】
振動検出部20は、加速度センサ21と、A/D変換器22とを備え、貨物車両10の荷台11の上下方向の揺動を検出可能な位置に設置されている。貨物車両10は、
図3に示すように、車軸13を挟んだ両側が仮想バネ2とみなすことができるタイヤやサスペンションによる緩衝用弾性力によってそれぞれ支えられている。従って、移動体である貨物車両10の荷台11は、走行中に地面からの外乱により、貨物車両10の総重量Mに応じた固有振動を生じる。この固有振動は、直線運動と回転運動に大別されるが、貨物車両10の総重量Mに応じて直接的に固有振動を生じるのは、自重方向(Z軸方向)の単振動である。
【0012】
加速度センサ21は、荷台11の上下方向の揺動を検出するように感度軸が調整されており、荷台11の上下方向の揺動を荷台11の自重方向(Z軸方向)の揺動として検出し、A/D変換器22は、加速度センサ21からアナログ信号として出力される揺動データ(検出結果)をデジタル信号に変換してデータ処理装置30に出力する。なお、加速度センサ21には、特に限定はなく、例えば水晶音叉式のセンサや振動式のセンサを用いることができ、3軸(3次元)の角速度センサを用いても良い。
【0013】
データ処理装置30は、
図1に示すように、例えば、運転席12に設置され、
図2を参照すると、マイクロプロセッサ等からなる演算部31と、ROM(リードオンリーメモリ)やRAM(ランダムアクセスメモリ)等からなる記憶部32と、表示部及び入力部として機能するタッチパネル33と、スピーカ等の報知部34と、受信部35とを備え、各部はバス36によって接続されている。
【0014】
記憶部32には、総重量Mを導くための演算プログラムが記憶されている。演算部31は、一定期間、加速度センサ21から出力を記憶部32に記憶させ、記憶部32に記憶されている演算プログラムに従って、記憶部32に記憶した加速度センサ21からの出力を演算することで、貨物車両10の総重量Mを算出する。そして演算部31は、算出した貨物車両10の総重量Mから車体重量m
aを減算することで貨物重量m
bを算出し、タッチパネル33によって表示通知したり、報知部34から音声通知したりして出力する。
【0015】
次に、第1の実施の形態における積載重量検出動作について
図4及び
図5を参照して詳細に説明する。
【0016】
図4を参照すると、例えば、貨物車両10のエンジンの始動に連動して、積載重量検出装置の電源が投入されると、演算部31は、まず、初期設定データが記憶部32に記憶されているか否かを判断する(ステップA1)。ステップA1で初期設定データが記憶部32に記憶されていない場合には、演算部31は、
図5(a)に示す初期設定画面40をタッチパネル33に表示させ(ステップA2)、貨物車両10の車体重量m
aの入力と、荷台11に載置する初期設定用貨物重量m
b0の入力とを受け付ける(ステップA3)。初期設定画面40には、貨物車両10の車体重量m
aの入力を受け付ける車体重量受付欄41と、荷台11に載置する初期設定用貨物重量m
b0の入力を受け付ける貨物重量受付欄42と、初期設定ボタン43とが設けられている。なお、荷台11に積載する貨物1の貨物重量m
b0は、貨物車両10の走行によって荷台11の上下方向の揺動を生じさせる重量とする。
【0017】
操作者は、荷台11に初期設定用貨物重量m
b0を有する貨物1を積載すると共に、初期設定画面40において、車体重量受付欄41への貨物車両10の車体重量m
aの入力と、貨物重量受付欄42への初期設定用貨物重量m
b0の入力とを行う。そして、既知である初期設定用貨物重量m
b0の貨物1を積載した状態で貨物車両10(既知の総重量m
0=車体重量m
a+初期設定用貨物重量m
b0)を走行させ、貨物車両10の走行中に、初期設定画面40の初期設定ボタン43を操作する。貨物車両10が走行すると、タイヤが路面の凹凸を踏み続けることにより、ランダムな外乱がタイヤ及びサスペンションを通して貨物車両10の車体に伝わる。なお、荷台11自体や荷台11に取り付けられたクレーン等の付属物に相応の重量があり、荷台11に貨物1を積載することなく、荷台11に十分な上下方向の揺動が生じる場合には、ステップA3で貨物車両10の車体重量m
aのみの入力を受け付け、空荷の状態で貨物車両10(既知の総重量m
0=車体重量m
a)を走行させながら、初期設定画面40の初期設定ボタン43を操作するようにしても良い。
【0018】
次に、演算部31は、初期設定ボタン43の操作を監視し(ステップA4)、貨物車両10の走行中に初期設定ボタン43が操作されると、振動検出部20によって検出される荷台11の上下方向の揺動データを予め設定された所定時間の時系列揺動データとして記憶部32に記憶させる(ステップA5)。
【0019】
次に、演算部31は、記憶部32に記憶させた時系列揺動データに高速フーリエ変換をかけ、荷台11の自重方向(Z軸方向)の固有振動として縦揺れ固有振動周波数V
z0を特定する(ステップA6)。そして、演算部31は、ステップA3で入力を受け付けた車両10の車体重量m
a及び初期設定用貨物重量m
b0と、ステップA6で特定した縦揺れ固有振動周波V
z0とを初期設定データとして記憶部32に記憶させ(ステップA7)、ステップA1に戻る。ステップA2〜A7までの処理動作は、貨物車両10に本実施の形態の積載重量検出装置を設置した段階で初期設定動作として行われ、通常は、初期設定データを記憶部32に記憶させた状態でユーザに提供されることになる。
【0020】
ステップA1で初期設定データが記憶部32に記憶されている場合には、演算部31は、測定指示ボタン51が配置された
図5(b)に示す測定画面50をタッチパネル33に表示させ(ステップA8)、測定指示ボタン51の操作を監視する(ステップA9)。
【0021】
ドライバーは、貨物重量m
bの未知の貨物1を積載した状態で貨物車両10(未知の総重量M=車体重量m
a+未知の貨物重量m
b)を走行させ、貨物車両10の走行中に、測定画面50の測定指示ボタン51を操作する。貨物車両10が走行すると、タイヤが路面の凹凸を踏み続けることにより、ランダムな外乱がタイヤ及びサスペンションを通して貨物車両10の車体に伝わる。貨物車両10の走行中に測定指示ボタン51が操作されると、振動検出部20によって検出される荷台11の上下方向の揺動データを予め設定された所定時間の時系列揺動データとして記憶部32に記憶させる(ステップA10)。
【0022】
次に、演算部31は、記憶部32に記憶させた時系列揺動データに高速フーリエ変換をかけ、荷台11の自重方向(Z軸方向)の固有振動として縦揺れ固有振動周波数V
zを特定する(ステップA11)。そして、演算部31は、特定した縦揺れ固有振動周波数V
zと初期設定データとを用いて演算することで、未知の総重量Mを算出すると共に(ステップA12)、算出した未知の総重量Mから車体重量m
aを減算することで未知の貨物重量m
bを算出し(ステップA13)、算出した未知の貨物重量m
bを
図5(c)に示す重量通知画面60によってタッチパネル33で表示通知したり、報知部34から音声通知したりして出力する(ステップA14)。
【0023】
次に、演算部31による未知の総重量Mの算出動作(ステップA12)を詳細に説明する。
移動体である貨物車両10は、走行中に地面からの外乱により、貨物車両10の総重量(厳密には総質量)に応じた固有振動を生じる。この固有振動は、直線運動と回転運動に大別されるが、貨物車両10の総重量に応じて直接的に固有振動を生じるのは、自重方向(Z軸方向)の単振動である。先に本出願人が特許第4517107号で提案した三次元重心検知理論を適用して、貨物車両10における垂直方向の単振動を定式化すると、次式で表すことができる。
【0025】
〔数1〕において、Mは貨物車両10の車体重量m
aに貨物1の未知の重量m
bを加えた総重量、V
zは総重量Mである貨物車両10の縦揺れ固有振動周波数、k
0は仮想バネ2であるタイヤやサスペンションの弾性係数(バネ定数)、πは円周率である。
【0026】
〔数1〕を変形することで、総重量Mは、次式で表すことができる。
【0028】
〔数2〕において、縦揺れ固有振動周波数V
zは、加速度センサ21から出力される自重方向(Z軸方向)の揺動データを所定時間記憶した時系列揺動データに、高速フーリエ変換をかけることで算出可能である。従って、仮想バネ2の弾性係数k
0が分かると、〔数2〕を用いて貨物車両10の総重量「M」を算出することができる。
【0029】
仮想バネ2の弾性係数「k
0」は、〔数1〕を変形することで、貨物車両10の既知の総重量「m
0」と、総重量「m
0」である貨物車両10の縦揺れ固有振動周波数「V
Z0」を用いて、次式で表すことができる。
【数3】
【0030】
そして、〔数2〕に〔数3〕を代入することで、次式が得られる。
【数4】
【0031】
ここで、既知の総重量m
0(車体重量m
a+貨物重量m
b0)と、総重量m
0である貨物車両10の縦揺れ固有振動周波数V
z0とは、初期設定によって、記憶部32に記憶させた初期設定データである。従って、未知の貨物重量m
bの貨物1を積載した貨物車両10の走行中に、演算部31は、縦揺れ固有振動周波数V
zを求め、さらに、〔数4〕を演算することで、未知の総重量M(車体重量m
a+貨物重量m
b)を算出することができる。
【0032】
以上説明したように、第1の実施の形態は、貨物車両10に積載される貨物1の貨物重量m
bを検出する積載重量検出装置であって、貨物車両10の車体重量m
aと貨物1の初期設定用貨物重量m
b0との入力を受け付ける初期設定入力手段として機能するタッチパネル33と、貨物車両10の揺動を検出する揺動検出部20と、揺動検出部20によって検出された揺動データに基づいて、貨物車両10の自重方向の固有振動を縦揺れ固有振動値として特定する固有振動特定手段と機能する演算部31と、貨物車両10に初期設定用貨物重量m
b0である貨物1を積載した状態で演算部31によって特定された縦揺れ固有振動値と共に、タッチパネル33によって受け付けた車体重量m
a及び初期設定用貨物重量m
b0を初期設定データとして記憶する記憶部32とを具備し、演算部31は、特定した縦揺れ固有振動値と初期設定データとに基づいて、貨物1を積載した貨物車両10の総重量Mを算出する総重量算出手段として機能するように構成されている。
この構成により、多種多様な貨物車両10に適用可能であると共に、貨物車両10の車体重量m
aと貨物1の初期設定用貨物重量m
b0とを入力変数として入力するだけで正確に積載重量を検出することができるという効果を奏する。
【0033】
さらに、第1の実施の形態において、演算部31は、揺動検出部20によって検出された時系列の揺動データに高速フーリエ変換をかけて縦揺れ固有振動値を特定するように構成されている。
【0034】
さらに、第1の実施の形態において、演算部31は、貨物車両10の自重方向の固有振動を縦揺れ固有振動値である縦揺れ固有振動周波数V
zとして特定するように構成されている。
【0035】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の積載重量検出装置は、
図6を参照すると、加速度センサ21に加えて、角速度センサ23を備えた振動検出部20aを用い、データ処理装置30aの演算部31aが車軸13を中心とするY軸周りの固有振動も考慮をして、移動体である貨物車両(トラック)10の総重量Mを検出する点で第1の実施の形態と異なっている。
【0036】
角速度センサ23は、車軸13を中心とした回転方向の角度、すなわち車軸13を中心としたY軸周りの横揺れ(揺動)を検出するように感度軸が調整されている。角速度センサ23には、特に限定はなく、例えば水晶音叉式のセンサや振動式のセンサを用いることができ、加速度センサ21及び角速度センサ23として3軸(3次元)の角速度センサを用いても良い。
【0037】
データ処理装置30aは、マイクロプロセッサ等からなる演算部31aを備えている。記憶部32には、総重量Mを導くための演算プログラムが記憶されている。演算部31aは、一定期間、加速度センサ21及び角速度センサ23から出力を記憶部32にそれぞれ記憶させ、記憶部32に記憶されている演算プログラムに従って、記憶部32に記憶した加速度センサ21及び角速度センサ23からの出力を演算することで、貨物車両10の総重量Mを算出する。そして演算部31aは、算出した貨物車両10の総重量Mから車体重量m
aを減算することで貨物重量m
bを算出し、タッチパネル33によって表示通知したり、報知部34から音声通知したりして出力する。
【0038】
次に、第2の実施の形態における積載重量検出動作について
図7を参照して詳細に説明する。なお、第1の実施の形態における積載重量検出動作と同様の処理動作については、同一のステップ番号を付して一部説明を省略している。
【0039】
図7を参照すると、貨物車両10の走行中にステップA4で初期設定ボタン43が操作されると、演算部31aは、振動検出部20aの加速度センサ21によって検出される荷台11の上下方向の揺動データと、角速度センサ23によって検出されるY軸周りの揺動データとを予め設定された所定時間の時系列揺動データとしてそれぞれ記憶部32に記憶させる(ステップB1)。なお、貨物車両10における仮想バネ2(タイヤやサスペンション)間の幅bは、タッチパネル33等の入力手段からの入力によって事前に受け付けて初期設定データとして記憶部32に予め記憶されているものとする。
【0040】
次に、演算部31aは、記憶部32に記憶させた上下方向の時系列揺動データに高速フーリエ変換をかけ、荷台11の縦揺れ固有振動周波数V
z0を特定すると共に(ステップA6)、記憶部32に記憶させたY軸周りの時系列揺動データに高速フーリエ変換をかけ、Y軸周りの固有振動として横揺れ固有振動周波数V
x0を特定する(ステップB2)。そして、演算部31aは、ステップA3で入力を受け付けた車両10の車体重量m
a及び初期設定用貨物重量m
b0と、ステップA6で特定した縦揺れ固有振動周波V
z0と、ステップB2で特定した横揺れ固有振動周波数V
x0とを初期設定データとして記憶部32に記憶させ(ステップB3)、ステップA1に戻る。ステップA2〜B3までの処理動作は、貨物車両10に本実施の形態の積載重量検出装置を設置した段階で行われ、通常は、初期設定データを記憶部32に記憶させた状態でユーザに提供されることになる。
【0041】
また、総重量Mが未知である貨物車両10の走行中にステップA9で測定指示ボタン51が操作されると、演算部31aは、振動検出部20aの加速度センサ21によって検出される荷台11の上下方向の揺動データと、角速度センサ23によって検出されるY軸周りの揺動データとを予め設定された所定時間の時系列揺動データとしてそれぞれ記憶部32に記憶させる(ステップB4)。
【0042】
次に、演算部31aは、記憶部32に記憶させた上下方向の時系列揺動データに高速フーリエ変換をかけ、荷台11の縦揺れ固有振動周波数V
zを特定すると共に(ステップA11)、記憶部32に記憶させたY軸周りの時系列揺動データに高速フーリエ変換をかけ、Y軸周りの固有振動として横揺れ固有振動周波数V
xを特定する(ステップB5)。そして、演算部31aは、特定した縦揺れ固有振動周波数V
zと横揺れ固有振動周波数V
xと初期設定データとを用いて演算することで、未知の総重量Mを算出する(ステップB6)。以降、第1の実施の形態と同様に算出した未知の総重量Mから車体重量m
aを減算することで未知の貨物重量m
bを算出し(ステップA13)、算出した未知の貨物重量m
bを
図5(c)に示す重量通知画面60によってタッチパネル33で表示通知したり、報知部34から音声通知したりして出力する(ステップA14)。
【0043】
次に、演算部31aによる未知の総重量Mの算出動作(ステップB6)について
図8を参照して詳細に説明する。
【0044】
第1の実施の形態における未知の総重量Mの算出は、貨物車両10を支える左右のばね定数k
0が同じであるという仮定に基づいている。すなわち、貨物1を含む貨物車両10の重心位置が左右の中央にあるという前提である。しかしながら現実には、貨物車両10上の乗員や貨物1は任意に配置されるため、重心位置が左右の中央にあるという保証はない。例えば、貨物1を含む貨物車両10の総合的なばね定数の値は、
図8に示すように、貨物車両10の重心位置に応じて変化し、次式で表せる。
【0046】
〔数5〕において、k
(s)は貨物1を含む貨物車両10の総合的なばね定数、bは貨物車両10における仮想バネ2(タイヤやサスペンション)間の幅、sは貨物車両10の左右中心から重心位置までの水平方向の変位である。
【0047】
また、先に本出願人が特許第4517107号で提案した三次元重心検知理論を適用すると、貨物車両10の重心位置とY軸周りの固有振動との関係は、次式で表すことができる。
【0049】
〔数6〕において、V
xは貨物車両10のY軸周り(車軸13周り)の横揺れ固有振動周波数、l
xは貨物車両10の車軸13から重心位置までの上下方向の高さ、s
xは貨物車両10の車軸13から重心位置までの左右方向の変位、α
xは荷台11の静止傾斜角(水平面と動揺中の中立面とがなす角で位相に相当する)である。
【0050】
〔数6〕を〔数5〕と合わせて未知の総重量Mで展開すると、次式で表すことができる。
【0052】
同様に、既知の総重量m
0で〔数6〕を展開し、ばね定数k
0を求める形にすると、次式が得られる。
【0054】
ここで、V
x0は、既知の総重量m
0である貨物車両10の横揺れ固有振動周波数を、l
x0は、既知の総重量m
0である貨物車両10の動揺中心軸から重心位置までの垂直方向の高さを、s
x0は、既知の総重量m
0である貨物車両10の動揺中心軸から重心位置までの水平方向の変位を、α
x0は、既知の総重量m
0である貨物車両10における荷台11の静止傾斜角(動揺中心角)をそれぞれ示す。
【0055】
そして、〔数9a〕に〔数10a〕を代入すると、次式が得られる。
【0057】
〔数11a〕において、貨物車両10における仮想バネ2(タイヤやサスペンション)
間の幅bは、初期設定データとして記憶部32に予め記憶されており、既知の総重量m
0(車体重量m
a+初期設定用貨物重量m
b0)と、総重量m
0である貨物車両10の横揺れ固有振動周波数V
x0と、総重量m
0である貨物車両10の縦揺れ固有振動周波数V
z0は、初期設定によって、記憶部32に記憶させた初期設定データである。そして、横揺れ固有振動周波数V
x0と、縦揺れ固有振動周波数V
z0とにより、高さl
x0と、水平方向の変位s
x0と、静止傾斜角α
x0をそれぞれ求め、これらも初期設定データとして記憶させる。なお、仮想バネ2間の幅bも初期設定時の入力によって受け付けるようにしても良い。また、車体重量m
aは、タッチパネル33等の入力手段からの入力によって事前に受け付けて初期設定データとして記憶部32に予め記憶させておいても良い。
【0058】
静止傾斜角α
x0は、横揺れ固有振動周波数V
x0と、縦揺れ固有振動周波数V
z0とを用いて、先に本出願人が提案したWO2011067939A1に記載されている〔式12〕と〔式14〕と連立して解くことで、求めることができる。この連立方程式は超越関数を含むため、解析的には解けないが、広く一般に公知の応用数学の手法を用いれば、数値解として解くことができ、vに横揺れ固有振動周波数V
x0を、v’に縦揺れ固有振動周波数V
z0をそれぞれ代入し、αを解として求めることで、静止傾斜角α
x0が算出される。
【0059】
なお、静止傾斜角α
x0は、水準器を用いて走行を開始する前に計っても良く、高性能な船舶航空機用のジャイロ等を設置して計ることもできる。
【0060】
高さl
x0と、水平方向の変位s
x0とは、横揺れ固有振動周波数V
x0と、縦揺れ固有振動周波数V
z0と、静止傾斜角α
x0とを用いて、先に本出願人が提案した特許4517107に記載されている〔数15〕と〔数16〕と連立して解くことで、求めることができる。この連立方程式は超越関数を含むため、解析的には解けないが、広く一般に公知の応用数学の手法を用いれば、数値解として解くことができ、vに横揺れ固有振動周波数V
x0を、v’に縦揺れ固有振動周波数V
z0を、αに静止傾斜角α
x0をそれぞれ代入し、lとsを解として求めることで、高さl
x0と、水平方向の変位s
x0とがそれぞれ算出される。
【0061】
次に、未知の貨物重量m
bの貨物1を積載した貨物車両10の走行中に、演算部31は、縦揺れ固有振動周波数V
zと、横揺れ固有振動周波数V
xとを求め、さらに、縦揺れ固有振動周波数V
zと、横揺れ固有振動周波数V
xとを用いて、高さl
x0、水平方向の変位s
x0及び静止傾斜角α
x0を求めた同様の方法で、高さl
xと、水平方向の変位s
xと、静止傾斜角α
xをそれぞれ求める。
【0062】
そして、演算部31は、初期設定データ(横揺れ固有振動周波数V
x0、縦揺れ固有振動周波数V
z0、高さl
x0、水平方向の変位s
x0、静止傾斜角α
x0)と、縦揺れ固有振動周波数V
z、横揺れ固有振動周波数V
x、高さl
x、水平方向の変位s
x、静止傾斜角α
xを〔数11a〕に代入する。これにより、〔数11a〕において、未知数は、未知の総重量Mのみとなり、〔数11a〕を演算することで、未知の総重量M(車体重量m
a+貨物重量m
b)を算出することができる。そして、そして演算部31aは、算出した貨物車両10の総重量Mから車体重量m
aを減算することで貨物重量m
bを算出し、タッチパネル33によって表示通知したり、報知部34から音声通知したりして出力する。
【0063】
ここで、〔数11a〕において、s
x0とs
xを0と置くと、つまり、重心が左右方向の中心にあると仮定すると、〔数11a〕は〔数4〕に帰着する。つまり、〔数4〕は、〔数11a〕の理論体系に包含されたものである。したがって、〔数11a〕は、任意の重心位置における重量の割り出しに、理論的に適切に用いることができる。
【0064】
以上説明したように、第2の実施の形態では、貨物車両10に積載される貨物1の貨物重量m
bを検出する積載重量検出装置であって、貨物車両10の車体重量m
aと貨物車両10における仮想バネ2間の幅bと貨物1の初期設定用貨物重量m
b0との入力を受け付ける初期設定入力手段として機能するタッチパネル33と、貨物車両10の揺動を検出する揺動検出部20aと、揺動検出部20aによって検出された揺動データに基づいて、貨物車両10の自重方向の固有振動を縦揺れ固有振動値として特定すると共に、貨物車両10の車軸周りの固有振動を横揺れ固有振動値として特定する固有振動特定手段と機能する演算部31aと、貨物車両10に初期設定用貨物重量m
b0である貨物1を積載した状態で演算部31aによって特定された縦揺れ固有振動値及び横揺れ固有振動値と共に、タッチパネル33によって受け付けた車体重量m
a、仮想バネ2間の幅b及び初期設定用貨物重量m
b0を初期設定データとして記憶する記憶部32とを具備し、演算部31aは、特定した縦揺れ固有振動値及び横揺れ固有振動値と初期設定データとに基づいて、貨物1を積載した貨物車両10の総重量Mを算出する総重量算出手段として機能するように構成されている。
この構成により、多種多様な移動体に適用可能であると共に、貨物車両10の車体重量m
aと貨物1の初期設定用貨物重量m
b0とを入力変数として入力するだけで、重心位置を考慮してより正確に積載重量を検出することができるという効果を奏する。
【0065】
さらに、第2の実施の形態において、演算部31aは、揺動検出部20aによって検出された時系列の揺動データに高速フーリエ変換をかけて縦揺れ固有振動値及び横揺れ固有振動値をそれぞれ特定するように構成されている。
【0066】
さらに、第2の実施の形態において、演算部31aは、貨物車両10の自重方向の固有振動を縦揺れ固有振動値である縦揺れ固有振動周波数V
zとして特定すると共に、貨物車両10の車軸周りの固有振動を横揺れ固有振動値である横揺れ固有振動周波数V
xとして特定するように構成されている。
【0067】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態の積載重量検出装置は、第1の実施の形態と初期設定動作が異なって
おり、初期設定データとして車体重量m
aを入力することなく、車体重量m
aを算出可能である。従って、貨物車両10が不明であったり、大きすぎて測りようがなかったりした場合にも対応することができる。
【0068】
以下、第3の実施の形態における積載重量検出動作について
図9及び
図10を参照して詳細に説明する。
【0069】
図9を参照すると、例えば、貨物車両10のエンジンの始動に連動して、積載重量検出装置の電源が投入されると、演算部31は、まず、初期設定データが記憶部32に記憶されているか否かを判断する(ステップA1)。ステップA1で初期設定データが記憶部32に記憶されていない場合には、演算部31は、
図10(a)に示す第1初期設定画面70をタッチパネル33に表示させ(ステップC1)、貨物車両10の荷台11に載置する第1初期設定用貨物重量m
b1の入力を受け付ける(ステップC2)。第1初期設定画面70には、荷台11に載置する第1初期設定用貨物重量m
b1の入力を受け付ける貨物重量受付欄71と、第1初期設定ボタン72とが設けられている。なお、荷台11に積載する貨物1の第1貨物重量m
b1は、貨物車両10の走行によって荷台11の上下方向の揺動を生じさせる重量とする。
【0070】
操作者は、荷台11に第1初期設定用貨物重量m
b1を有する貨物1を積載すると共に、第1初期設定画面70において、貨物重量受付欄71への第1初期設定用貨物重量m
b1の入力とを行う。そして、既知である第1初期設定用貨物重量m
b1の貨物1を積載した状態で貨物車両10を走行させ、貨物車両10の走行中に、第1初期設定画面70の第1初期設定ボタン72を操作する。貨物車両10が走行すると、タイヤが路面の凹凸を踏み続けることにより、ランダムな外乱がタイヤ及びサスペンションを通して貨物車両10の車体に伝わる。
【0071】
次に、演算部31は、第1初期設定ボタン72の操作を監視し(ステップC3)、貨物車両10の走行中に第1初期設定ボタン72が操作されると、振動検出部20によって検出される荷台11の上下方向の揺動データを予め設定された所定時間の時系列揺動データとして記憶部32に記憶させる(ステップC4)。
【0072】
次に、演算部31は、記憶部32に記憶させた時系列揺動データに高速フーリエ変換をかけ、荷台11の自重方向(Z軸方向)の固有振動として第1縦揺れ固有振動周波数V
z1を特定する(ステップC5)。
【0073】
次に、演算部31は、
図10(b)に示す第2初期設定画面80をタッチパネル33に表示させ(ステップC6)、貨物車両10の荷台11に載置する第2初期設定用貨物重量m
b2の入力を受け付ける(ステップC7)。第2初期設定画面80には、荷台11に載置する第2初期設定用貨物重量m
b2の入力を受け付ける貨物重量受付欄81と、第2初期設定ボタン82とが設けられている。なお、荷台11に積載する貨物1の第2貨物重量m
b2は、貨物車両10の走行によって荷台11の上下方向の揺動を生じさせる重量とする。なお、荷台11自体や荷台11に取り付けられたクレーン等の付属物に相応の重量があり、荷台11に貨物1を積載することなく、荷台11に十分な上下方向の揺動が生じる場合には、第1初期設定用貨物重量m
b1と第2初期設定用貨物重量m
b2とのいずれかを「0kg」として入力しても良い。
【0074】
操作者は、荷台11に第2初期設定用貨物重量m
b2を有する貨物1を積載すると共に、第2初期設定画面80において、貨物重量受付欄81への第2初期設定用貨物重量m
b2の入力を行う。そして、既知である初期設定用貨物重量m
b2の貨物1を積載した状態で貨物車両10を走行させ、貨物車両10の走行中に、第2初期設定画面80の第2初期設定ボタン82を操作する。貨物車両10が走行すると、タイヤが路面の凹凸を踏み続けることにより、ランダムな外乱がタイヤ及びサスペンションを通して貨物車両10の車体に伝わる。
【0075】
次に、演算部31は、第2初期設定ボタン82の操作を監視し(ステップC8)、貨物車両10の走行中に第2初期設定ボタン82が操作されると、振動検出部20によって検出される荷台11の上下方向の揺動データを予め設定された所定時間の時系列揺動データとして記憶部32に記憶させる(ステップC9)。
【0076】
次に、演算部31は、記憶部32に記憶させた時系列揺動データに高速フーリエ変換をかけ、荷台11の自重方向(Z軸方向)の固有振動として第2縦揺れ固有振動周波数V
z2を特定する(ステップC10)。
【0077】
次に、演算部31は、車体重量m
aを算出する(ステップC11)。すなわち、〔数4〕は、次式〔数14〕で表すことができ、これに第1初期設定用貨物重量m
b1及び第2初期設定用貨物重量m
b2と、第1縦揺れ固有振動周波数V
z1及び第2縦揺れ固有振動周波数V
z2とを代入することで車体重量m
aを算出することができる。
【0079】
そして、演算部31は、ステップC11で算出した車両10の車体重量m
aと、ステップC2で入力を受け付けた第1初期設定用貨物重量m
b1と、ステップC5で特定した第1縦揺れ固有振動周波V
z1とを初期設定データとして記憶部32に記憶させ(ステップC12)、ステップA1に戻る。ステップC2〜C12までの処理動作は、貨物車両10に本実施の形態の積載重量検出装置を設置した段階で初期設定動作として行われ、通常は、初期設定データを記憶部32に記憶させた状態でユーザに提供されることになる。なお、ステップC12では、ステップC7で入力を受け付けた第2初期設定用貨物重量m
b2と、ステップC10で特定した第2縦揺れ固有振動周波V
z2とを初期設定データとして記憶部32に記憶させるようにしても良い。
【0080】
以上説明したように、第3の実施の形態は、貨物車両10に積載される貨物1の貨物重量m
bを検出する積載重量検出装置であって、貨物1の第1初期設定用貨物重量m
b1及び第2初期設定用貨物重量m
b2との入力を受け付ける初期設定入力手段として機能するタッチパネル33と、貨物車両10の揺動を検出する揺動検出部20と、揺動検出部20によって検出された揺動データに基づいて、貨物車両10の自重方向の固有振動を縦揺れ固有振動値として特定する固有振動特定手段と機能する演算部31とを備え、演算部31は、タッチパネル33によって受け付けた第1初期設定用貨物重量m
b1及び第2初期設定用貨物重量m
b2、貨物車両10に第1初期設定用貨物重量m
b1である貨物1を積載した状態で特定した第1縦揺れ固有振動値、及び貨物車両10に第2初期設定用貨物重量m
b2である貨物1を積載した状態で特定した第2縦揺れ固有振動値に基づいて貨物車両10の車体重量m
aを算出する車体重量算出手段として機能し、算出した車体重量m
a、第1初期設定用貨物重量m
b1、及び第1縦揺れ固有振動値を初期設定データとして記憶部32に記憶する。そして、演算部31は、特定した縦揺れ固有振動値と初期設定データとに基づいて、貨物1を積載した貨物車両10の総重量Mを算出する総重量算出手段として機能するように構成されている。
この構成により、貨物車両10が不明であったり、大きすぎて測りようがなかったりした場合にも、正確に積載重量を検出することができるという効果を奏する。
【0081】
なお、第3の実施の形態では、第1の実施の形態で未知の総重量Mの算出に用いた〔数4〕に基づいて、車体重量m
aを算出するように構成したが、第2の実施の形態で未知の総重量Mの算出に用いた〔数9a〕〜〔数11a〕に基づいて、車体重量m
aを算出するようにしても良い。この場合には、演算部31aによって、荷台11に第1初期設定用貨物重量m
b1を有する貨物1を積載した状態で、第1縦揺れ固有振動周波数V
z1と第1横揺れ固有振動周波数V
x1とを特定すると共に、荷台11に第2初期設定用貨物重量m
b2を有する貨物1を積載した状態で、第2縦揺れ固有振動周波数V
z2と第2横揺れ固有振動周波数V
x2とを特定させる。そして、演算部31aによって車体重量m
aを算出させる。すなわち、〔数11a〕は、次式〔数15〕で表すことができ、より正確な車体重量m
aを算出することができる。
【0083】
次に、第1の実施の形態の実証実験を貨物車両10として12トン車を用いて行った。この実験車両の車体重量m
aは、13,000kgであり、台貫秤によって静的に重量計測した10,000kgの分銅を貨物1として荷台11に積載した。これにより、既知の総重量m
0=23,000kgとなる。そして、初期設定動作として、
図5(a)に示すように、タッチパネル33に表示された初期設定画面40において、車体重量受付欄41に車体重量m
aの値(13,000kg)を、貨物重量受付欄42に初期設定用貨物重量m
b0の値(10,000kg)をそれぞれ入力した。
【0084】
次に、公道上を車の流れに沿って走行しながら、測定画面50の測定指示ボタン51を操作し、縦揺れ固有振動周波数V
z0を特定した。
図11(a)は、初期設定動作で記憶部32に記憶された上下方向の時系列揺動データであり、
図11(b)は、初期設定動作で記憶部32に記憶された上下方向の時系列揺動データに高速フーリエ変換をかけて得られたグラフである。
図11(b)において、最大振幅の周波数が縦揺れ固有振動周波数V
z0として特定され、縦揺れ固有振動周波数V
z0=2.83203Hzが得られた。これにより、初期設定データとして、車体重量m
a=13,000kgと初期設定用貨物重量m
b0=10,000kgと縦揺れ固有振動周波数V
z0=2.83203Hzとが記憶されることになる。
【0085】
次に、荷台11に積載する貨物1を台貫秤によって静的に重量計測した5,000kgの分銅に載せ代えて、公道上を車の流れに沿って走行しながら、測定画面50の測定指示ボタン51を操作し、縦揺れ固有振動周波数V
zを特定した。
図11(c)は、重量測定動作で記憶部32に記憶された上下方向の時系列揺動データであり、
図11(d)は、重量測定動作で記憶部32に記憶された上下方向の時系列揺動データに高速フーリエ変換をかけて得られたグラフである。
図11(d)において、最大振幅の周波数が縦揺れ固有振動周波数V
z0として特定され、縦揺れ固有振動周波数V
z=3.1250Hzが得られた。そして、得られた縦揺れ固有振動周波数V
zと初期設定データとを〔数4〕に代入することで、未知の車体重量M=18,889.6kgが算出され、この値から車体重量m
aを減算すると、未知の貨物重量m
b=5,889.6kgとなり、10%強の誤差となった。この誤差の大きな要因は、重心位置が、正確に左右中心には置かれていなかったことが考えられる。
【0086】
そこで、第2の実施の形態の実証実験を第1の実施の形態と同様に貨物車両10として12トン車を用いて行った。この実験車両の車体重量m
aは、13,000kgであり、台貫秤によって静的に重量計測した10,000kgの分銅を貨物1として荷台11に積載した。これにより、既知の総重量m
0=23,000kgとなる。また、貨物車両10における仮想バネ2(タイヤやサスペンション)間の幅b=1.05mである。そして、初期設定動作として、
図5(a)に示すように、タッチパネル33に表示された初期設定画面40において、車体重量受付欄41に車体重量m
aの値(13,000kg)を、貨物重量受付欄42に初期設定用貨物重量m
b0の値(10,000kg)をそれぞれ入力した。
【0087】
次に、公道上を車の流れに沿って走行しながら、測定画面50の測定指示ボタン51を操作し、自重方向(Z軸方向)の縦揺れ固有振動周波数V
z0に加えて、横揺れ固有振動周波数V
x0を特定した。
図12(a)は、初期設定動作で記憶部32に記憶されたY軸周りの時系列揺動データであり、
図12(b)は、初期設定動作で記憶部32に記憶されたY軸周りの時系列揺動データに高速フーリエ変換をかけて得られたグラフである。
図12(b)において、最大振幅の周波数が横揺れ固有振動周波数V
x0として特定され、横揺れ固有振動周波数V
x0=1.172Hzが得られた。そして、横揺れ固有振動周波数V
x0と、縦揺れ固有振動周波数V
z0とにより、高さl
x0=1.18m、水平方向の変位s
x0=0.077m、静止傾斜角α
x0=0.01がそれぞれ得られた。これにより、初期設定データとして、仮想バネ2間の幅b=1.05mと、車体重量m
a=13,000kgと、初期設定用貨物重量m
b0=10,000kgと、縦揺れ固有振動周波数V
z0=2.83203Hzと、横揺れ固有振動周波数V
x0=1.172Hzと、高さl
x0=1.18mと、水平方向の変位s
x0=0.077mと、静止傾斜角α
x0=0.01とが記憶部32に記憶されることになる。
【0088】
次に、荷台11に積載する貨物1を台貫秤によって静的に重量計測した5,000kgの分銅に載せ代えて、公道上を車の流れに沿って走行しながら、測定画面50の測定指示ボタン51を操作し、自重方向(Z軸方向)の縦揺れ固有振動周波数V
zに加えて、横揺れ固有振動周波数V
xを特定した。
図12(c)は、重量測定動作で記憶部32に記憶されたY軸周りの時系列揺動データであり、
図12(d)は、重量測定動作で記憶部32に記憶されたY軸周りの時系列揺動データに高速フーリエ変換をかけて得られたグラフである。
図12(d)において、最大振幅の周波数が横揺れ固有振動周波数V
xとして特定され、横揺れ固有振動周波数V
x=1.270Hzが得られた。そして、横揺れ固有振動周波数V
xと、縦揺れ固有振動周波数V
zとにより、高さl
x=1.21m、水平方向の変位s
x=0.096m、静止傾斜角α
x=0.01がそれぞれ得られた。得られた縦揺れ固有振動周波数V
zと、横揺れ固有振動周波数V
xと、高さl
xと、水平方向の変位s
xと、静止傾斜角α
xと、初期設定データとを〔数11a〕に代入することで、未知の車体重量M=18,650kgが算出され、この値から車体重量m
aを減算すると、未知の貨物重量m
b=5,650kgとなった。第1の実施の形態に比べて、誤差が改善されたことが分かる。なお、実験時において初期設定用貨物重量m
b0として載せた分銅は10,000kgであり、未知の貨物重量m
bとして載せた分銅は5,000kgであった。この状況から考えると、前者の方が低い位置に重さが集中するので、高さl
x0<高さl
xとなるのは妥当である。また、両者共に積載状態は荷台に低く左右均等になるように敷き詰めた。従って水平方向の変位s
x0、静止傾斜角α
x0、水平方向の変位
sx、静止傾斜角α
xがごく小さな値となったことも妥当である。
【0089】
なお、本実施の形態では、縦揺れ固有振動周波数と横揺れ固有振動周波数とを特定する際に高速フーリエ変換を用いているため、最小周波数単位の限界から誤差が生じる。上述の実証実験では、サンプリング間隔は、0.005秒であった。この場合、高速フーリエ変換時の最小周波数単位は、0.0049Hzとなり、これより細かい固有周波数の特定はできない。仮に、横揺れ固有振動周波数V
xに最小周波数単位の半分の誤差が生じていと仮定して、横揺れ固有振動周波数V
x=1.270+(0.0049/2)Hzとして〔数4〕に代入すると、未知の車体重量Mは、約63kg程度小さくなる。従って、第2の実施の形態の実証実験で生じた誤差は許容範囲内であると考えられ、加速度センサ21及び角速度センサ23による計測時間をより長くしたり、数学的に最小周波数間にある真の周波数を特定したり、或いは走行中の計測を繰り返して平均化したりすることで、誤差を小さくすることが可能である。
【0090】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。例えば、本実施の形態では、移動体である貨物車両10をトラックとして説明したが、貨物車両10である鉄道車両にも本発明を適用することができる。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。