特許第6352517号(P6352517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6352517
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】温度センサ用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20180625BHJP
   G01K 7/16 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C09K3/00 E
   G01K7/16 S
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-223711(P2017-223711)
(22)【出願日】2017年11月21日
【審査請求日】2018年1月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代プリンテッドエレクトロニクス材料・プロセス基盤技術開発/次世代プリンテッドエレクトロニクス材料・プロセス基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 将人
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/001465(WO,A1)
【文献】 特開2004−335730(JP,A)
【文献】 特開平4−133790(JP,A)
【文献】 特開平3−211702(JP,A)
【文献】 特開平3−12901(JP,A)
【文献】 特開昭58−8775(JP,A)
【文献】 特開昭56−159203(JP,A)
【文献】 特開昭52−42779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/00、
G01K7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)及び(b)を含む温度センサ用組成物。
(a)HOMO レベルが4.8eV以上、5.5eV未満であるπ共役系高分子化合物
(b)フッ素置換共役低分子化合物であって、さらに以下のいずれかの要件を満たす
・B,N,Sのいずれかの原子を有する
・フラーレン骨格を有する
【請求項2】
前記(b) がB原子を有するフッ素置換共役低分子化合物であることを特徴とする請求項1に記載の温度センサ用組成物。
【請求項3】
前記(a)がさらに縮合環を構成単位に有するπ共役系高分子化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の温度センサ用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の温度センサ用組成物を一対の電極間に設けてなることを特徴とする温度センサデバイス。
【請求項5】
請求項4に記載の温度センサデバイスを複数備えることを特徴とする温度センサアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度による抵抗値の変化で温度変化を検知する温度センサに用いられるπ共役系高分子化合物とフッ素置換共役低分子化合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度センサとしては、無機酸化物の焼結体を用いたサーミスタが広く実用化されている。サーミスタでは、一点の温度計測には適しているが、面状の温度分布を計測するには複数のデバイスを配置する必要がある。面状の温度分布を検知する温度センサとして、酸によりドープされたポリピロール、ポリアニリン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を用いた感温体が開示され(特許文献1、非特許文献1)、温度により抵抗値変化を示すことが知られている。また、曲面の温度分布を検知するためにドープしたポリアニリンを感温体に用い、フレキシブルな基板上に配置した温度センサアレイが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−211702号公報
【特許文献2】WO2012/001465号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Synthetic Metals vol.159 (2009) p.1174.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、酸によりドープされた、ポリピロール、PEDOT等の高分子半導体を用いた感温センサでは温度による抵抗値の変化が十分でなかった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、温度センサとして温度による抵抗値の変化を大きくできる、π共役系高分子化合物とフッ素置換共役低分子化合物を含む組成物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の一態様に係る温度センサ用組成物は、特定のHOMO(最高被占軌道)レベルを有するπ共役系高分子化合物と特定のフッ素置換共役低分子化合物を含む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の組成物は、下記(a)及び(b)を含む温度センサ用組成物である。
(a)HOMOレベルが4.8eV以上、5.5eV未満であるπ共役系高分子化合物
(b)フッ素置換共役低分子化合物であって、さらに以下のいずれかの要件を満たす
・B,N,Sのいずれかの原子を有する
・フラーレン骨格を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷法でフレキシブル基板上に形成でき、温度による抵抗値変化の大きい温度センサ用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】温度センサデバイスAを用いた温度及び抵抗値の時間依存性を表すグラフ
図2】温度センサデバイスAを用いた温度と抵抗値変化の繰り返し特性を表すグラフ
図3】温度センサデバイスAを用いた温度と抵抗値変化を−5℃〜105℃の範囲で表すグラフ
図4】温度センサデバイスHを用いた温度及び抵抗値変化の時間依存性を表すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
[組成物]
まず、本発明の組成物について説明する。本発明の組成物は、下記(a)及び(b)を含む組成物であれば特に限定されない。
(a)HOMOレベルが4.8eV以上、5.5eV未満であるπ共役系高分子化合物
(b)フッ素置換共役低分子化合物であって、さらに以下のいずれかの要件を満たす
・B,N,Sのいずれかの原子を有する
・フラーレン骨格を有する
本発明において、高分子化合物とは、分子内の主鎖が共有結合で結合しており、重量平均分子量が1万程度以上の化合物を意味する。本発明において、低分子化合物とは、上記高分子化合物以外の化合物を意味し、典型的には、分子量が5000以下の化合物を意味する。本発明の組成物に含まれるπ共役系高分子化合物としては、繰り返し単位として芳香環を少なくとも一つ有しているものが好ましい。芳香環とは芳香族性を示す環構造で、環上のπ電子系に含まれる電子の数が 4n + 2 (n = 0, 1, 2, 3, ...) 個である構造である。本発明において、「繰り返し単位として環を有している」とは、環状化合物から複数の(典型的には2個)の水素を除去してなる基を繰り返し単位として有することを意味する。芳香環としては、ベンゼン環等の炭化水素芳香環、チオフェン環等の複素芳香環が例示される。π共役系高分子化合物が芳香環を繰り返し単位として有することにより、隣り合う芳香環の間で、π共役が広がり易くなり、キャリアの伝導性が向上する。
【0013】
本発明の組成物に含まれるπ共役系高分子化合物としては、繰り返し単位として縮合環を少なくとも一つ有しているものが好ましい。縮合環を繰り返し単位として有することにより、π共役系高分子化合物の主鎖骨格の平面性が向上し、主鎖間がπ-πスタックしやすくなることによりキャリアの伝導性が向上する。また、縮合環にすることにより分子構造が大きくなり、熱運動による分子振動が抑制され、キャリアの散乱が減少する。
繰り返し単位に含まれる縮合環としては、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾジチオフェン、フルオレン、シクロペンタジチオフェン、インダセノジチオフェン、ジチエノインダセノジチオフェン、ナフトジシクロペンタジチオフェン、ベンゾチエノジシクロペンタジチオフェン、チエノピロールジオン、ジチエノピラン、ジチエノシロール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾビスチアジアゾール、ピリダルチアジアゾール(チアジアゾロピリジン)、ジヒドロピロロピロール、イソインディゴ等が例示され、フルオレン、シクロペンタジチオフェン、ジチエノピラン、ベンゾチアジアゾール、ピリダルチアジアゾール、ジヒドロピロロピロール、ジヒドロピロロピロール等が好ましく、シクロペンタジチオフェン、ジチエノピラン、ベンゾチアジアゾール、ピリダルチアジアゾール、ジヒドロピロロピロールがπ共役系高分子化合物の主鎖骨格の平面性がより向上することからより好ましい。
【0014】
繰り返し単位に含まれるこれらの環構造は、有機溶剤への溶解性向上、主鎖骨格の平面性向上のため、置換基を有していてもよい。置換基としては炭素数4から24のアルキル基、炭素数4から24のアルコキシ基、オキソ基、ハロゲン原子(塩素、フッ素、臭素、ヨウ素等。好ましくはフッ素)等が例示され、炭素数8以上のアルキル基、オキソ基、ハロゲン原子(塩素、フッ素、臭素、ヨウ素等。好ましくはフッ素)が好ましい。炭素数4から24のアルキル基としては、有機溶剤への溶解性がより高くなることから炭素数8以上の分岐を有したアルキル基がより好ましい。環構造1個当たりの置換基の数は特に限定されないが、例えば、1〜5個、1〜3個、1〜2個等が挙げられる。ここで、縮合環の場合、環構造1個とは、縮合環全体を1個と数える。
【0015】
また、π共役系高分子化合物の繰り返し単位として、ドナー性の繰り返し単位とアクセプター性の繰り返し単位を有したドナー−アクセプター型のπ共役系高分子化合物がより好ましい。ドナー−アクセプター型にすることにより、分子間の相互作用が促進され、π共役系高分子化合物の主鎖骨格の平面性が向上し、主鎖間がよりπ-πスタックしやすくなることによりキャリアの伝導性が向上する。
【0016】
ドナー性の環を有した繰り返し単位としては、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾジチオフェン、フルオレン、シクロペンタジチオフェン、インダセノジチオフェン、ジチエノインダセノジチオフェン、ナフトジシクロペンタジチオフェン、ベンゾチエノジシクロペンタジチオフェン、チエノピロールジオン、ジチエノピラン、ジチエノシロールが例示され、フルオレン、シクロペンタジチオフェン、ジチエノピランが好ましく、シクロペンタジチオフェン、ジチエノピランが繰り返し単位のドナー性をより高められることからより好ましい。これらの繰り返し単位はさらに置換基を有していてもよい。
【0017】
アクセプター性の環を有した繰り返し単位としては、ベンゾチアジアゾール、ベンゾビスチアジアゾール、ピリダルチアジアゾール(チアジアゾロピリジン)、ジケトピロロピロール、イソインディゴが例示され、ベンゾチアジアゾール、ベンゾチアジアゾール、ピリダルチアジアゾール、ジケトピロロピロールが好ましく、ベンゾチアジアゾール、ピリダルチアジアゾール、ジケトピロロピロールが繰り返し単位のアクセプター性をより高められることからより好ましい。これらの繰り返し単位はさらに置換基を有していてもよい。
【0018】
ドナー性の環を有する繰り返し単位とアクセプター性の環を有する繰り返し単位の組み合わせとしては、ジチエノピランとベンゾチアジアゾール、ジチエノピランとピリダルチアジアゾール、フルオレンとトリフェニルアミン、ジケトピロロピロールとクォータチオフェンの組み合わせが好ましく、ジチエノピランとベンゾチアジアゾール、ジチエノピランとピリダルチアジアゾールの組み合わせがドナー性、アクセプター性の差が大きくなり、分子間の相互作用が強くなるので特に好ましい。
【0019】
本発明の組成物に含まれるπ共役系高分子化合物は、繰り返し単位として縮合環以外に、π共役分子を持つ繰り返し単位を有していてもよい。例えば、チオフェン、ビチオフェン、ターチオフェン、クォータチオフェン、トリフェニルアミンが例示され、クォータチオフェンがチオフェン環同士がπ-πスタックしやすくなりより好ましい。
【0020】
本発明においてπ共役系高分子化合物のHOMOレベルの下限値は4.8eVであるが、HOMOレベルが5.0eV以上であることが好ましい。また本発明において、π共役系高分子化合物のHOMOレベルの上限値は5.5eVであるが、HOMOレベルが5.4eV以下であることが好ましい。本発明の好ましい実施形態において、π共役系高分子化合物としては、HOMOレベルが5.0eV以上、5.5eV未満の範囲にあるものが好ましく、5.0eV以上、5.4eV以下の範囲にあるものがより好ましい。HOMOレベルが4.8eV未満になると、π共役系高分子化合物が酸化されやすくなり不安定となる。また、HOMOレベルが5.5eV以上になるとフッ素置換共役低分子化合物と混合した場合、π共役系高分子化合物からフッ素置換共役低分子化合物へ電子が移動しにくくなり、キャリアの発生効率が悪くなる。本発明において、π共役系高分子化合物のHOMOレベルは、光電子分光法により測定することができる。
【0021】
フッ素置換共役低分子化合物は、上記π共役系高分子化合物の抵抗値を調整するために添加される。π共役系高分子化合物のHOMOレベルから、フッ素置換共役低分子のLUMOレベル(最低空軌道)へ電子が移動することにより、π共役系高分子化合物中に正孔キャリアが生成し、生成したキャリア数により導電率(抵抗値)を調整することができる。フッ素置換共役低分子のLUMOレベルへの電子移動が効率よく起こるためには、フッ素置換共役低分子のLUMOレベルはπ共役系高分子化合物のHOMOレベルとの差が小さいか、π共役系高分子化合物のHOMOレベルよりも低い方が良い。フッ素置換共役低分子化合物としては、そのLUMOレベルを下げることができることから、できるだけ多くのフッ素原子で置換された共役低分子化合物がより好ましい。さらに、B,N,Sのいずれかの原子を有するフッ素置換共役低分子化合物、またはフラーレン骨格を有するフッ素置換共役低分子化合物が特に好ましい。
【0022】
B,N,Sのいずれかの原子を有するフッ素置換共役低分子化合物としては、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,2‘(パーフルオロナフタレン−2、6−ジイリデン)ジマロノニトリル、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボラート、トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、モリブデントリス(1,2−ビス(トリフルオロメチル)エタン−1,2−ジチオレン)、モリブデントリス−(1−(メトキシカルボニル)−2−(トリフルオロメチル)エタン−1,2−ジチオレン)、モリブデントリス−(1−トリフルオロアセチル)−2−(トリフルオロメチル)エタン−1,2−ジチオレン)等が挙げられる。本発明においては、B,N,Sのいずれかの原子を有するフッ素置換共役低分子化合物のうちホウ素原子を有するフッ素置換共役低分子化合物が好ましい。ホウ素原子を有するフッ素置換共役低分子化合物のうち、フッ素又はパーフルオロアルキル基(例えば、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、好ましくはパーフルオロメチル)で置換されたフェニル基が3又は4個ホウ素に結合した化合物又はその塩が好ましく、フッ素又はパーフルオロアルキル基で置換されたフェニル基が4個ホウ素に結合した化合物又はその塩がより好ましく、フッ素で置換されたフェニル基が4個ホウ素に結合した化合物又はその塩がさらに好ましい。フッ素で置換されたフェニル基としては、例えば、1〜5個(好ましくは3〜5個、より好ましくは5個)のフッ素で置換されたフェニル基が挙げられる。パーフルオロアルキル基で置換されたフェニル基としては、例えば、1〜5個(好ましくは2〜4個、より好ましくは3個)のパーフルオロアルキル基で置換されたフェニル基が挙げられる。フッ素又はパーフルオロアルキル基で置換されたフェニル基が3又は4個ホウ素に結合した化合物と塩を形成する化合物としては特に限定されないが、例えば、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウム、テトラブチルアンモニウム、N,N,−ジメチルアニリニウム、テトラフェニルホスホニウム、トリ−tert−ブチルホスホニウム、及びトリフェニルメチリニウムが挙げられる。フッ素化フラーレンとしては無置換のフラーレンが有する水素原子の個数の2〜80%がフッ素で置換されているものが好ましく、60〜80%がフッ素で置換されているものが好ましい。フッ素化フラーレンとしては、C6036、C6048、C7054が例示される。これらのフッ素置換共役低分子化合物のうち、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N,−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルメチリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、モリブデントリス(1,2−ビス(トリフルオロメチル)エタン−1,2−ジチオレン)、モリブデントリス−(1−(メトキシカルボニル)−2−(トリフルオロメチル)エタン−1,2−ジチオレン)、モリブデントリス−(1−トリフルオロアセチル)−2−(トリフルオロメチル)エタン−1,2−ジチオレン)、フッ素化フラーレンC6036が好ましく、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N,−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、フッ素化フラーレンC6036が、ドーピング効率を高く、温度センサ特性の安定性を高くできることからより好ましく、特に4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N,−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートが好ましい。
【0023】
フッ素置換共役低分子化合物の添加量は、用いる温度センサに要求される特性で適宜選択すればよいが、π共役系高分子化合物及びフッ素置換共役低分子化合物の合計質量を100質量%とした場合、例えば0.1質量%から30質量%の範囲が好ましく、より好ましくは1質量%から20質量%の範囲である。π共役系高分子化合物に対するフッ素置換共役低分子化合物の添加量を上記範囲にすることにより、抵抗値が適度に低下し、温度に対する抵抗値の変化を大きくすることができるため好ましい。
【0024】
[温度センサデバイス]
本発明の温度センサ用組成物を一対の電極間に堆積することにより温度センサデバイスとすることができる。
【0025】
具体的には、絶縁性の基板上に、ITOなどの酸化物、金、銀、銅、クロム、ニッケル、アルミニウムなどの金属を用い、一対の電極パターンを形成する。その上に温度センサ用組成物の溶液を用いて、塗布法により、温度センサ用組成物層を形成することにより温度センサデバイスが形成できる。また、温度センサ用組成物層の上に一対の電極パターンを形成してもよいし、一対の電極パターン間に温度センサ用組成物層を形成してもよい。
【0026】
絶縁性の基板としては、セラミックス基板、ガラス基板およびPET、PEN、ポリイミドなどのフィルムを用いることができる。フレキシブルな温度センサデバイスにできることからPET、PEN、ポリイミドなどのフィルムが好ましい。
【0027】
一対の電極パターンは、スパッタ法、蒸着法、印刷法により形成することができる。製造コストを低くできることから、Agペースト、Cuペースト等を用いた印刷法で形成することが好ましい。
【0028】
電極パターンとしては、電極間隔(チャネル長)、電極幅(チャネル幅)を、用いる温度センサに要求される特性で適宜選択すればよいが、チャネル長としては5μmから200μmの範囲で、チャネル幅としては10μmから5000μmの範囲が例示される。
【0029】
温度センサ用組成物の溶液は、π共役系高分子化合物およびフッ素置換共役低分子化合物を有機溶剤に溶解することにより得ることができる。溶液は、π共役系高分子化合物およびフッ素置換共役低分子化合物を固体で混合してから、有機溶剤に溶解しても良いし、π共役系高分子化合物およびフッ素置換共役低分子化合物それぞれを有機溶剤に溶解してから、混合してもよい。
【0030】
温度センサ用組成物の溶液に用いる有機溶剤としては、π共役系高分子化合物およびフッ素置換共役低分子化合物を溶解すれば特に制限はないが、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、アニソール等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン等の炭化水素系溶剤、およびそれらの混合溶剤を用いることができるが、環境への負荷が低いことからトルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン等の炭化水素系溶剤およびそれらの混合溶剤が好ましい。
【0031】
温度センサ用組成物の溶液の固形分濃度としては、温度センサ用組成物層を形成する方法に応じて適宜選択すればよいが、0.1質量%から20質量%の範囲が例示される。
【0032】
温度センサ用組成物層を形成する方法としては、温度センサ用組成物の溶液を用いた印刷法、例えば、インクジェット法、ディスペンサ法、反転印刷法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法が例示される。
【0033】
温度センサ用組成物層の厚みとしては、特に限定されず、用いる温度センサに要求される特性で適宜選択すればよいが、例えば10nmから5μmの範囲が例示され、30nmから5μmの範囲が好ましく、フレキシブルな温度センサデバイスにするには50nmから300nmの範囲がより好ましい。
【0034】
温度センサ用組成物層の上に保護層を設けてもよい。保護層用材料としては、温度センサの特性を阻害しなければとくに制限はないが、温度センサ用組成物を溶解しない溶剤を用いた塗布法で形成することが好ましく、テフロン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル樹脂などが例示される。
【0035】
温度センサデバイスに用いられる、組成物層の抵抗値としては、温度センサデバイスの電極形状、温度センサ用組成物層の膜厚によって調整することができるが、25℃における抵抗値(R25)で、1×10Ω以上、1×108Ω以下であることが好ましく、1×104Ω以上、1×107Ω以下に調整されることが、温度センサとして温度を検出するのに適していることから特に好ましい。
【0036】
温度センサデバイスの温度による抵抗値変化の指針として、25℃における抵抗値(R25)と60℃における抵抗値(R60)の比(R25/R60)を用いることができる。R25/R60として、1.8以上であることが好ましく、2.0以上がより好ましい。R25/R60が1.8未満の場合は、温度による抵抗値変化が小さく、温度センサデバイスとして十分な性能を得ることができない。
【0037】
温度センサデバイスは、単一のデバイスとしても用いることもできるが、複数の温度センサデバイスを配列して、温度センサアレイとして用いることもできる。温度センサアレイとすることにより面状の温度分布を測定することができる。さらに、基板をフレキシブルとすることにより曲面の温度分布を測定することもできる。
【0038】
温度センサアレイは、マトリックス状に形成した電極の交差点部分に温度センサ用組成物層を形成したパッシブマトリックス方式で用いることもできるし、マトリックス状に形成した電極の交差点部分にスイッチングトランジスタと温度センサ用組成物層を形成したアクティブマトリックス方式で用いることもできる。また、マトリックス状に形成した電極の交差点部分に、温度センサ用組成物層と他物性を計測できる活性層、例えば感圧層を配置することにより、複数の物性の分布を計測できるセンサアレイを形成することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
π共役系高分子化合物のHOMOレベルは、大気中光電子分光装置(AC−2理研計器製)を用いて測定した。
【0041】
温度センサ特性の測定には、ペルチェ素子のホットプレート(アンペール製UTD70U100F)で温度を変化させ、パワー・ソース(Agilent製B2912A)を用い抵抗値を測定、熱電対の電圧をデータロガー(日置電機(株)製メモリハイロガーLR8431)で取り込み、変換した温度を記録した。
【0042】
(実施例1)
[組成物の作成]
WO2011/052709の実施例63に記載の方法で縮合環を有する繰り返し単位A(5,5-di-3,7-dimethyloctyl-5H−Dithieno[3,2−b:2',3'−d]pyran)と繰り返し単位B(Pyridal[2,1,3]thiadiazole)を有するπ共役系高分子化合物Aを合成した。π共役系高分子化合物AのHOMOレベルは5.0eVであった。π共役系高分子化合物Aをテトラリンに溶解し、テトラリン2質量%溶液を作成した。別途、フッ素化フラーレンC6036(Material Technology Research Ltd.製)をテトラリンに溶解し、2質量%テトラリン溶液を作成した。次いで作成したπ共役系高分子化合物AとC6036の2質量%テトラリン溶液を87.5:12.5の質量比で混合して、π共役系高分子化合物A及びC6036の合計量100質量%に対し、C6036を12.5質量%含む組成物Aの2質量%テトラリン溶液を作成した。
【0043】
[温度センサデバイスの作成]
ナノ銀インク(アルバック製T2-D12)を用い、ガラス基板上に反転印刷法により幅100μm、チャネル長20μmの一対の電極パターンを形成し、180℃、1時間焼成し、低抵抗のAg電極とした。この電極上に組成物Aの溶液を用いて、ディスペンサ法により組成物Aの薄膜を100nmの厚みで形成し、80℃、10分ベークし、乾燥した。さらにAg電極の上に、テフロン溶液をディスペンサ法により、組成物Aの薄膜を覆うように約5μmの厚みで形成し、80℃、1時間ベークし、乾燥、温度センサデバイスAを作成した。
【0044】
[温度センサ特性の測定]
ペルチェ素子のホットプレート上に、上記温度センサデバイスAと電極付近のガラス基板上に熱電対を固定した。ホットプレートを25℃に設定し、25℃、10Vにおける抵抗値6.8×10Ωを得た。また、ホットプレートの温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ(4℃/min)、パルス電圧(パルス幅10ms、パルス電圧10V、パルス周期500ms)を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。温度および抵抗値の時間変化を図1に、温度を横軸に抵抗値を縦軸にプロットしたグラフを図2に示す。このときの25℃と60℃の抵抗値の比はR25/R60=2.1と高い値を示した。また、図2から7往復の温度変化においても、抵抗値の温度変化にヒステリシスは見られなかった。
また、ドライエアーをフローしたグローブボックス中(湿度<10%)で、ホットプレートの温度を−5℃から100℃の間で変化させたときの、温度による抵抗値の変化を図3に示す。広い範囲の温度変化を検出できることが確認できた。
【0045】
(実施例2)
実施例1と同様にして、C6036に替えて4-Isopropyl-4'-methyldiphenyliodonium Tetrakis(pentafluorophenyl)borate(I−TePFB:東京化成製)を用いて、π共役系高分子化合物A及びI−TePFBの合計量100質量%に対し、I−TePFBを3質量%含む組成物Bの2質量%テトラリン溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例1と同様にして温度センサデバイスBを作成した。
温度センサデバイスBを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0046】
(実施例3)
[組成物の作成]
WO2011/052709の実施例54に記載の方法で縮合環を有する繰り返し単位A(5,5-di-3,7-dimethyloctyl-5H−Dithieno[3,2−b:2',3'−d]pyran)と繰り返し単位C(Difluorobenzothiadiazole)を有するπ共役系高分子化合物Bを合成した。π共役系高分子化合物BのHOMOレベルは5.2eVであった。π共役系高分子化合物Bをテトラリンに溶解し、1.5質量%テトラリン溶液を作成した。別途、フッ素化フラーレンC6036をテトラリンに溶解し、1.5質量%テトラリン溶液を作成した。次いで作成したπ共役系高分子化合物BとC6036のテトラリン1.5%溶液を90:10の質量比で混合し、C6036を10質量%添加したπ共役系高分子化合物Bを含む組成物Cの1.5質量%テトラリン溶液を作成した。
組成物Aに代えて組成物Cを用いる以外、実施例1と同様にして温度センサデバイスCを作成した。
温度センサデバイスCを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0047】
(実施例4)
6036に替えて4-Isopropyl-4'-methyldiphenyliodonium Tetrakis(pentafluorophenyl)borate(I−TePFB:東京化成製)を用いる以外、実施例3と同様にして、π共役系高分子化合物B及びI−TePFBの合計量100質量%に対し、I−TePFBを3質量%含む組成物Dの1.5質量%テトラリン溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例1と同様にして温度センサデバイスDを作成した。
温度センサデバイスDを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を25℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0048】
(実施例5)
実施例3で用いたπ共役系高分子化合物Bをo−ジクロロベンゼン(ODCB)に溶解し、0.4質量%ODCB溶液を作成した。別途、2,3,5,6-Tetrafluoro-7,7,8,8-tetracyanoquinodimethane(F4−TCNQ、東京化成製)をODCBに溶解し、0.4質量%ODCB溶液を作成した。次いで作成したπ共役系高分子化合物BとF4−TCNQのODCB0.4%溶液を80:20の質量比で混合し、π共役系高分子化合物B及びF4−TCNQの合計量100質量%に対し、F4−TCNQを20質量%含む組成物Eの0.4質量%ODCB溶液を作成した。この組成物Eの溶液を用いて、実施例1と同様にして温度センサデバイスEを作成した。
温度センサデバイスEを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0049】
(実施例6)
6036に替えてTris(pentafluorophenyl)borane(TPFB:東京化成製)を用いる以外、実施例3と同様にして、π共役系高分子化合物B及びTPFBの合計量100質量%に対し、TPFBを20質量%含む組成物Fの1.5質量%テトラリン溶液を作成した。
ガラス基板上に真空蒸着法により幅100μm、チャネル長20μmの一対のAu電極パターンを形成した。この電極上に組成物Fの溶液を用いて、実施例1と同様にして温度センサデバイスFを作成した。
温度センサデバイスFを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0050】
(実施例7)
TPFBに替えてMolybdenum tris(1,2-bis(trifluoromethyl) ethane-1,2-dithiolene)(Mo(tfd):シグマアルドリッチ製)を用いる以外、実施例6と同様にして、π共役系高分子化合物B及びMo(tfd)の合計量100質量%に対し、Mo(tfd)を10質量%含む組成物Gの1.5質量%テトラリン溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例6と同様にして温度センサデバイスGを作成した。
温度センサデバイスGを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0051】
(比較例1)
F4−TCNQに替えてBis(4-tert-butylphenyl)iodonium Hexafluorophosphate(I−HFP:東京化成製)を用いる以外、実施例5と同様にして、π共役系高分子化合物B及びI−HFPの合計量100質量%に対し、I−HFPを10質量%含む組成物Hの0.4質量%ODCB溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例6と同様にして温度センサデバイスHを作成した。
温度センサデバイスHを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定したところ、抵抗値の時間変化は徐々に増大し不安定であった(図4)。また、このときR25/R60は最大でも1.4であった。
【0052】
(実施例8)
Poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl)(P3HT:東京化成製、HOMOレベル4.8eV)をテトラリンに溶解し、1質量%テトラリン溶液を作成した。別途、フッ素化フラーレンC6036をテトラリンに溶解し、1質量%テトラリン溶液を作成した。次いで作成したP3HTとI−TePFBの1質量%テトラリン溶液を95:5の質量比で混合して、P3HT及びI−TePFBの合計量100質量%に対し、I−TePFBを5質量%含む組成物Iの1質量%テトラリン溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例1と同様にして温度センサデバイスIを作成した。
温度センサデバイスIを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0053】
(実施例9)
WO2000/55927に記載の方法で縮合環を有する繰り返し単位D(9,9-dioctylfluorene)と繰り返し単位E(N,N-diphenyl-4-sec-butylphenylamine)を有するπ共役系高分子化合物Cを合成した。π共役系高分子化合物CのHOMOレベルは5.4eVであった。π共役系高分子化合物Bに替えてπ共役系高分子化合物Cを用いる以外、実施例4と同様にして、π共役系高分子化合物C及びI−TePFBの合計量100質量%に対し、I−TePFBを15質量%含む組成物Jの1.5質量%テトラリン溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例6と同様にして温度センサデバイスJを作成した。
温度センサデバイスJを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0054】
(比較例2)
US5777070に記載の方法で縮合環を有する繰り返し単位D(9,9-dioctylfluorene)と繰り返し単位F(Bithiophene)を有するπ共役系高分子化合物Dを合成した。π共役系高分子化合物DのHOMOレベルは5.5eVであった。π共役系高分子化合物Bに替えてπ共役系高分子化合物Dを用いる以外、実施例4と同様にして、π共役系高分子化合物D及びI−TePFBの合計量100質量%に対し、I−TePFBを15質量%含む組成物Kの1.5質量%テトラリン溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例6と同様にして温度センサデバイスKを作成した。
温度センサデバイスKを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値を測定したところ、2.5×10Ωと抵抗値が十分低くならなかった。
【0055】
(実施例10)
Journal of American Chemical Society Vol.133 (2011) p.2198.に記載の方法で縮合環を有する繰り返し単位G(Diketopyrrolopyrrole)と繰り返し単位H(Quaterthiophene)を有するπ共役系高分子化合物Eを合成した。π共役系高分子化合物EのHOMOレベルは5.0eVであった。π共役系高分子化合物Eをo−ジクロロベンゼン(ODCB)に溶解し、0.4質量%ODCB溶液を作成した。別途、I−TePFBをODCBに溶解し、0.4質量%ODCB溶液を作成した。次いで作成したπ共役系高分子化合物EとI−TePFBの0.4質量%ODCB溶液を99:1の質量比で混合し、π共役系高分子化合物E及びI−TePFBの合計量100質量%に対し、I−TePFBを1質量%含む組成物Lの0.4質量%ODCB溶液を作成した。この組成物Lの溶液を用いて、実施例6と同様にして温度センサデバイスLを作成した。
温度センサデバイスLを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0056】
(実施例11)
I−TePFBに替えてN,N-Dimethylanilinium Tetrakis(pentafluorophenyl)borate(N−TePFB:東京化成製)を用いる以外、実施例4と同様にして、π共役系高分子化合物B及びN−TePFBの合計量100質量%に対し、N−TePFBを1質量%含む組成物Mの0.4質量%ODCB溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例6と同様にして温度センサデバイスMを作成した。
温度センサデバイスMを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0057】
【表1】
【0058】
以上、実施例に示したように、本発明に係る温度センサ用組成物を用いて温度センサデバイスを作成することにより、温度による抵抗値の変化を大きくできるデバイスが得られた。
【要約】
【課題】温度センサとして温度による抵抗値の変化を大きくできる、π共役系高分子化合物とフッ素置換共役低分子化合物を含む組成物を提供すること。
【解決手段】 下記(a)、及び(b)を含む温度センサ用組成物。
(a)HOMO レベルが4.8eV以上、5.5eV未満であるπ共役系高分子化合物
(b)フッ素置換共役低分子化合物であって、さらに以下のいずれかの要件を満たす
・B,N,Sのいずれかの原子を骨格に有する
・フラーレン骨格を有する
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4