【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
π共役系高分子化合物のHOMOレベルは、大気中光電子分光装置(AC−2理研計器製)を用いて測定した。
【0041】
温度センサ特性の測定には、ペルチェ素子のホットプレート(アンペール製UTD70U100F)で温度を変化させ、パワー・ソース(Agilent製B2912A)を用い抵抗値を測定、熱電対の電圧をデータロガー(日置電機(株)製メモリハイロガーLR8431)で取り込み、変換した温度を記録した。
【0042】
(実施例1)
[組成物の作成]
WO2011/052709の実施例63に記載の方法で縮合環を有する繰り返し単位A(5,5-di-3,7-dimethyloctyl-5H−Dithieno[3,2−b:2',3'−d]pyran)と繰り返し単位B(Pyridal[2,1,3]thiadiazole)を有するπ共役系高分子化合物Aを合成した。π共役系高分子化合物AのHOMOレベルは5.0eVであった。π共役系高分子化合物Aをテトラリンに溶解し、テトラリン2質量%溶液を作成した。別途、フッ素化フラーレンC
60F
36(Material Technology Research Ltd.製)をテトラリンに溶解し、2質量%テトラリン溶液を作成した。次いで作成したπ共役系高分子化合物AとC
60F
36の2質量%テトラリン溶液を87.5:12.5の質量比で混合して、π共役系高分子化合物A及びC
60F
36の合計量100質量%に対し、C
60F
36を12.5質量%含む組成物Aの2質量%テトラリン溶液を作成した。
【0043】
[温度センサデバイスの作成]
ナノ銀インク(アルバック製T2-D12)を用い、ガラス基板上に反転印刷法により幅100μm、チャネル長20μmの一対の電極パターンを形成し、180℃、1時間焼成し、低抵抗のAg電極とした。この電極上に組成物Aの溶液を用いて、ディスペンサ法により組成物Aの薄膜を100nmの厚みで形成し、80℃、10分ベークし、乾燥した。さらにAg電極の上に、テフロン溶液をディスペンサ法により、組成物Aの薄膜を覆うように約5μmの厚みで形成し、80℃、1時間ベークし、乾燥、温度センサデバイスAを作成した。
【0044】
[温度センサ特性の測定]
ペルチェ素子のホットプレート上に、上記温度センサデバイスAと電極付近のガラス基板上に熱電対を固定した。ホットプレートを25℃に設定し、25℃、10Vにおける抵抗値6.8×10
5Ωを得た。また、ホットプレートの温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ(4℃/min)、パルス電圧(パルス幅10ms、パルス電圧10V、パルス周期500ms)を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。温度および抵抗値の時間変化を
図1に、温度を横軸に抵抗値を縦軸にプロットしたグラフを
図2に示す。このときの25℃と60℃の抵抗値の比はR25/R60=2.1と高い値を示した。また、
図2から7往復の温度変化においても、抵抗値の温度変化にヒステリシスは見られなかった。
また、ドライエアーをフローしたグローブボックス中(湿度<10%)で、ホットプレートの温度を−5℃から100℃の間で変化させたときの、温度による抵抗値の変化を
図3に示す。広い範囲の温度変化を検出できることが確認できた。
【0045】
(実施例2)
実施例1と同様にして、C
60F
36に替えて4-Isopropyl-4'-methyldiphenyliodonium Tetrakis(pentafluorophenyl)borate(I−TePFB:東京化成製)を用いて、π共役系高分子化合物A及びI−TePFBの合計量100質量%に対し、I−TePFBを3質量%含む組成物Bの2質量%テトラリン溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例1と同様にして温度センサデバイスBを作成した。
温度センサデバイスBを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0046】
(実施例3)
[組成物の作成]
WO2011/052709の実施例54に記載の方法で縮合環を有する繰り返し単位A(5,5-di-3,7-dimethyloctyl-5H−Dithieno[3,2−b:2',3'−d]pyran)と繰り返し単位C(Difluorobenzothiadiazole)を有するπ共役系高分子化合物Bを合成した。π共役系高分子化合物BのHOMOレベルは5.2eVであった。π共役系高分子化合物Bをテトラリンに溶解し、1.5質量%テトラリン溶液を作成した。別途、フッ素化フラーレンC
60F
36をテトラリンに溶解し、1.5質量%テトラリン溶液を作成した。次いで作成したπ共役系高分子化合物BとC
60F
36のテトラリン1.5%溶液を90:10の質量比で混合し、C
60F
36を10質量%添加したπ共役系高分子化合物Bを含む組成物Cの1.5質量%テトラリン溶液を作成した。
組成物Aに代えて組成物Cを用いる以外、実施例1と同様にして温度センサデバイスCを作成した。
温度センサデバイスCを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0047】
(実施例4)
C
60F
36に替えて4-Isopropyl-4'-methyldiphenyliodonium Tetrakis(pentafluorophenyl)borate(I−TePFB:東京化成製)を用いる以外、実施例3と同様にして、π共役系高分子化合物B及びI−TePFBの合計量100質量%に対し、I−TePFBを3質量%含む組成物Dの1.5質量%テトラリン溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例1と同様にして温度センサデバイスDを作成した。
温度センサデバイスDを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を25℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0048】
(実施例5)
実施例3で用いたπ共役系高分子化合物Bをo−ジクロロベンゼン(ODCB)に溶解し、0.4質量%ODCB溶液を作成した。別途、2,3,5,6-Tetrafluoro-7,7,8,8-tetracyanoquinodimethane(F4−TCNQ、東京化成製)をODCBに溶解し、0.4質量%ODCB溶液を作成した。次いで作成したπ共役系高分子化合物BとF4−TCNQのODCB0.4%溶液を80:20の質量比で混合し、π共役系高分子化合物B及びF4−TCNQの合計量100質量%に対し、F4−TCNQを20質量%含む組成物Eの0.4質量%ODCB溶液を作成した。この組成物Eの溶液を用いて、実施例1と同様にして温度センサデバイスEを作成した。
温度センサデバイスEを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0049】
(実施例6)
C
60F
36に替えてTris(pentafluorophenyl)borane(TPFB:東京化成製)を用いる以外、実施例3と同様にして、π共役系高分子化合物B及びTPFBの合計量100質量%に対し、TPFBを20質量%含む組成物Fの1.5質量%テトラリン溶液を作成した。
ガラス基板上に真空蒸着法により幅100μm、チャネル長20μmの一対のAu電極パターンを形成した。この電極上に組成物Fの溶液を用いて、実施例1と同様にして温度センサデバイスFを作成した。
温度センサデバイスFを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0050】
(実施例7)
TPFBに替えてMolybdenum tris(1,2-bis(trifluoromethyl) ethane-1,2-dithiolene)(Mo(tfd)
3:シグマアルドリッチ製)を用いる以外、実施例6と同様にして、π共役系高分子化合物B及びMo(tfd)
3の合計量100質量%に対し、Mo(tfd)
3を10質量%含む組成物Gの1.5質量%テトラリン溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例6と同様にして温度センサデバイスGを作成した。
温度センサデバイスGを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0051】
(比較例1)
F4−TCNQに替えてBis(4-tert-butylphenyl)iodonium Hexafluorophosphate(I−HFP:東京化成製)を用いる以外、実施例5と同様にして、π共役系高分子化合物B及びI−HFPの合計量100質量%に対し、I−HFPを10質量%含む組成物Hの0.4質量%ODCB溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例6と同様にして温度センサデバイスHを作成した。
温度センサデバイスHを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定したところ、抵抗値の時間変化は徐々に増大し不安定であった(
図4)。また、このときR25/R60は最大でも1.4であった。
【0052】
(実施例8)
Poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl)(P3HT:東京化成製、HOMOレベル4.8eV)をテトラリンに溶解し、1質量%テトラリン溶液を作成した。別途、フッ素化フラーレンC
60F
36をテトラリンに溶解し、1質量%テトラリン溶液を作成した。次いで作成したP3HTとI−TePFBの1質量%テトラリン溶液を95:5の質量比で混合して、P3HT及びI−TePFBの合計量100質量%に対し、I−TePFBを5質量%含む組成物Iの1質量%テトラリン溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例1と同様にして温度センサデバイスIを作成した。
温度センサデバイスIを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0053】
(実施例9)
WO2000/55927に記載の方法で縮合環を有する繰り返し単位D(9,9-dioctylfluorene)と繰り返し単位E(N,N-diphenyl-4-sec-butylphenylamine)を有するπ共役系高分子化合物Cを合成した。π共役系高分子化合物CのHOMOレベルは5.4eVであった。π共役系高分子化合物Bに替えてπ共役系高分子化合物Cを用いる以外、実施例4と同様にして、π共役系高分子化合物C及びI−TePFBの合計量100質量%に対し、I−TePFBを15質量%含む組成物Jの1.5質量%テトラリン溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例6と同様にして温度センサデバイスJを作成した。
温度センサデバイスJを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0054】
(比較例2)
US5777070に記載の方法で縮合環を有する繰り返し単位D(9,9-dioctylfluorene)と繰り返し単位F(Bithiophene)を有するπ共役系高分子化合物Dを合成した。π共役系高分子化合物DのHOMOレベルは5.5eVであった。π共役系高分子化合物Bに替えてπ共役系高分子化合物Dを用いる以外、実施例4と同様にして、π共役系高分子化合物D及びI−TePFBの合計量100質量%に対し、I−TePFBを15質量%含む組成物Kの1.5質量%テトラリン溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例6と同様にして温度センサデバイスKを作成した。
温度センサデバイスKを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値を測定したところ、2.5×10
9Ωと抵抗値が十分低くならなかった。
【0055】
(実施例10)
Journal of American Chemical Society Vol.133 (2011) p.2198.に記載の方法で縮合環を有する繰り返し単位G(Diketopyrrolopyrrole)と繰り返し単位H(Quaterthiophene)を有するπ共役系高分子化合物Eを合成した。π共役系高分子化合物EのHOMOレベルは5.0eVであった。π共役系高分子化合物Eをo−ジクロロベンゼン(ODCB)に溶解し、0.4質量%ODCB溶液を作成した。別途、I−TePFBをODCBに溶解し、0.4質量%ODCB溶液を作成した。次いで作成したπ共役系高分子化合物EとI−TePFBの0.4質量%ODCB溶液を99:1の質量比で混合し、π共役系高分子化合物E及びI−TePFBの合計量100質量%に対し、I−TePFBを1質量%含む組成物Lの0.4質量%ODCB溶液を作成した。この組成物Lの溶液を用いて、実施例6と同様にして温度センサデバイスLを作成した。
温度センサデバイスLを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0056】
(実施例11)
I−TePFBに替えてN,N-Dimethylanilinium Tetrakis(pentafluorophenyl)borate(N−TePFB:東京化成製)を用いる以外、実施例4と同様にして、π共役系高分子化合物B及びN−TePFBの合計量100質量%に対し、N−TePFBを1質量%含む組成物Mの0.4質量%ODCB溶液を作成し、この溶液を用いて、実施例6と同様にして温度センサデバイスMを作成した。
温度センサデバイスMを用いて、実施例1と同様にして、25℃、10Vにおける抵抗値および温度を20℃から65℃の間で繰り返し変化させ、パルス電圧を印加したときの抵抗値および温度変化を測定した。結果を表1にまとめる。
【0057】
【表1】
【0058】
以上、実施例に示したように、本発明に係る温度センサ用組成物を用いて温度センサデバイスを作成することにより、温度による抵抗値の変化を大きくできるデバイスが得られた。