(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高周波電源が接続された第1の電極と、該第1の電極に対向して配置される第2の電極との間においてプラズマを発生させ、該プラズマによって基板へプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、
前記プラズマの着火前における前記高周波電源から見た接地までの負荷インピーダンスと、前記プラズマの着火後における前記高周波電源から見た接地までの負荷インピーダンスとの差を減少させる補助回路を設ける第1のステップと、
前記プラズマを着火する第2のステップと、
前記プラズマを維持する第3のステップとを有し、
前記プラズマの着火前に前記高周波電源から発せられる高周波電流が流れる第1の経路は、前記プラズマの着火後に前記高周波電源から発せられる高周波電流が流れる第2の経路と異なり、
前記補助回路は前記第1の経路に配置され、
前記補助回路は、前記第1の経路の反射最小周波数と、前記第2の経路の反射最小周波数との差を減少させ、
前記プラズマの着火後に、前記補助回路の容量を調整することを特徴とするプラズマ処理方法。
高周波電源が接続された第1の電極と、該第1の電極に対向して配置される第2の電極との間においてプラズマを発生させ、該プラズマによって基板へプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、
前記プラズマの着火前における前記高周波電源から見た接地までの負荷インピーダンスと、前記プラズマの着火後における前記高周波電源から見た接地までの負荷インピーダンスとの差を減少させる補助回路を備え、
前記プラズマの着火前に前記高周波電源から発せられる高周波電流が流れる第1の経路は、前記プラズマの着火後に前記高周波電源から発せられる高周波電流が流れる第2の経路と異なり、
前記補助回路は前記第1の経路に配置され、
前記補助回路は前記第1の電極へ接続されることを特徴とするプラズマ処理装置。
【背景技術】
【0002】
容量結合型のプラズマを用いるプラズマ処理装置、例えば、平行平板型のプラズマ処理装置では、処理室内の上部電極及び下部電極の間に処理ガスを導入し、該導入した処理ガスを電界によって励起させてプラズマを発生させる(プラズマが着火する)。
【0003】
したがって、プラズマを着火する際には高周波電源に接続された電極(上部電極又は下部電極)の電圧を高めて上部電極及び下部電極の間に電界を生じさせる必要があるが、プラズマが着火する前には上部電極及び下部電極の間に導体として機能するプラズマが存在しないため、高周波電源110から発する高周波電流は上部電極111及び下部電極としてのサセプタ112の間を流れず、寧ろ、高周波電源110に接続された上部電源111からチャンバ113の絶縁部材(インシュレータ等)を介して接地へ流れる。
【0004】
一方、プラズマが着火した後には、上部電極111及びサセプタ112の間にプラズマPが存在するため、高周波電源110から発する高周波電流は上部電極111及びサセプタ112の間を介して接地へ流れる。
【0005】
すなわち、プラズマPが着火する前の高周波電流の第1の経路L
1(
図11中の実線で示す矢印)と、プラズマPが着火した後の高周波電流の第2の経路L
2(
図11中の破線で示す矢印)とが異なり、第1の経路L
1にはインシュレータ等のパス容量が存在する一方、第2の経路L
2にはシースS
1のパス容量、プラズマPのパス容量、シースS
2のパス容量、ウエハW−サセプタ112の間のパス容量が存在し、第1の経路L
1のパス容量と第2の経路L
2のパス容量は異なるため、プラズマPの着火前後において高周波電源110から見た接地までの負荷インピーダンスが大きく変化する。
【0006】
経路のパス容量が変化すると経路の共振周波数が変化し、引いては共振周波数近傍の反射最小周波数も変化するため、プラズマPが着火する前に高周波電源110が第1の経路L
1の反射最小周波数で高周波電流を発している場合、プラズマPが着火して高周波電流の経路が第1の経路L
1から第2の経路L
2へ変わると、当該高周波電流の周波数が第2の経路L
2の反射最小周波数と異なるため、高周波電流の大部分が高周波電源110へ反射されてしまう。その結果、第2の経路L
2に高周波電流が殆ど流れず、上部電極111及びサセプタ112の間の電界が維持できないため、プラズマPの維持ができない。
【0007】
これに対して、プラズマの着火前後において高周波電源から発せられる高周波電流の周波数を変化させることが提案されている。特に、高周波電源110と上部電極111の間においた配置された整合回路(マッチャー)114の可変コンデンサ115の容量を変化させることは、高周波電源110から発せされる高周波電流の周波数を変化させることと等価であるため、プラズマの着火前後においてマッチャー114の可変コンデンサ115の容量を変化させることが提案されている。
【0008】
しかしながら、可変コンデンサ115の容量の変化は可変コンデンサ115における機械的な動作を伴うため、ある程度時間がかかり、プラズマの着火前後における第1の経路L
1の反射最小周波数から第2の経路L
2の反射最小周波数への変化へ時間的に追従できず、結果として、第2の経路L
2に高周波電流が殆ど流れない期間が生じてプラズマPを維持できないことがある。
【0009】
そこで、近年、高周波電源110から発せられる高周波電流の周波数を電子的に変化させる技術、例えば、高周波電流の周波数を高周波電源とは別に設けられた制御器によって制御し、プラズマの着火時に高周波電流の周波数を高くする技術も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。高周波電流の周波数を電子的に変化させる場合、周波数を素早く変化させることができるため、高周波電流の周波数は、第1の経路L
1の反射最小周波数から第2の経路L
2の反射最小周波数への変化へ時間的に追従することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
まず、本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0020】
図1において、プラズマ処理装置10は、内部を減圧可能な略円筒状のチャンバ11(処理室)と、該チャンバ11内の底部に配置されて半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)を載置する台状のサセプタ12(第2の電極)と、該サセプタ12において載置されたウエハWを囲むように配置される円環状のフォーカスリング13と、チャンバ11の天井部においてサセプタ12と対向する上部電極14(第1の電極)と、上部電極14へマッチャー15(整合回路)を介して接続される周波数可変電源(以下、「VF電源」という。)16と、上部電極14に接続されて接地する補助回路17とを備える平行平板容量結合型のプラズマ処理装置である。
【0021】
プラズマ処理装置10では、減圧されたチャンバ11の内部へ処理ガスが導入されるとともにチャンバ11の内部へVF電源16から高周波電力が供給され、供給された高周波電力によって生じた電界がプラズマPを着火して生成し、該プラズマPによってウエハWへ所望のプラズマ処理、例えば、ドライエッチング処理や成膜処理が施される。
【0022】
電界は上部電極14と下部電極として機能するサセプタ12との間に生じるため、プラズマPも上部電極14とサセプタ12との間に生じる。このとき、上部電極14及びプラズマPの間にはシースS
1が介在し、プラズマP及びサセプタ12の間にはシースS
2が介在する。
【0023】
VF電源16は供給する高周波電力の周波数を所定の範囲、例えば、±1MHzの範囲で電子的に変化させることができ、マッチャー15は可変コンデンサ18を有してVF電源16から発せられる高周波電流の上部電極14における反射を最小限に留めるように可変コンデンサ18の容量を変化させる。また、チャンバ11は絶縁部材であるインシュレータ等(図示しない)を有し、接地され、補助回路17は配線を切断可能なスイッチ19とコンデンサ20と抵抗21とを有する。
【0024】
このプラズマ処理装置10では、プラズマPが着火する(プラズマPが生じる)前において、上部電極14及びサセプタ12の間の空間(以下、「処理空間」という。)に導体として機能するプラズマPが存在せず、処理空間の静電容量が極めて小さいため、VF電源16から発せられる高周波電流は処理空間を流れず、上部電極14から補助回路17を介して接地へ流れる。
【0025】
一方、プラズマPを着火した後には、処理空間にプラズマPが存在するため、VF電源16から上部電極14を介して静電容量の大きいサセプタ12が見えるようになり、VF電源16から発せられる高周波電流は処理空間を流れてサセプタ12を介して接地へ流れる。
【0026】
すなわち、プラズマ処理装置10では、プラズマPが着火する前の高周波電流の第1の経路L
1(
図1中の実線で示す矢印)と、プラズマPが着火した後の高周波電流の第2の経路L
2(
図1中の破線で示す矢印)とが異なり、第1の経路L
1には、例えば、マッチャー15のパス容量や補助回路17のパス容量が存在し、第2の経路L
2には、例えば、シースS
1のパス容量、プラズマPのパス容量、シースS
2のパス容量、ウエハW−サセプタ12の間のパス容量が存在するため、第1の経路L
1及び第2の経路L
2はそれぞれ異なる固有のパス容量を有する。高周波電流の経路の共振周波数は経路の固有のパス容量によって決まるため、第1の経路L
1の共振周波数と第2の経路L
2の共振周波数も異なる。
【0027】
ところで、一般的に、高周波電流の経路の共振周波数の近傍、具体的には、並列共振周波数及び直列共振周波数の間には当該経路における高周波電流の反射率が最も低くなる反射最小周波数が存在し、当該経路へ反射最小周波数の高周波電流を流せば、効率よく多量の高周波電流を流すことができるため、例えば、プラズマPが着火する前、処理空間に電界を生じさせるべく上部電極14の電圧を高めるためには、VF電源16から反射最小周波数F
1(以下、単に「反射最小周波数F
1」という。)の高周波電流を発して第1の経路L
1に多量の高周波電流を流せばよい。一方、プラズマPが着火した後、処理空間の電界を維持すべく処理空間に多量の高周波電流を流すためには、VF電源16から反射最小周波数F
2(以下、単に「反射最小周波数F
2」という。)の高周波電流を発すればよい。
【0028】
ここで、プラズマ処理装置10において、仮に補助回路17が存在しないとすると、第1の経路L
1には、主にマッチャー15のパス容量とチャンバ11のインシュレータ等のパス容量のみしか存在しなくなり、第1の経路L
1の固有のパス容量は非常に小さくなるため、静電容量の大きいサセプタ12が存在する第2の経路L
2の固有のパス容量との差が大きくなり、
図2に示すように、第1の経路L
1の反射特性(一点鎖線)と第2の経路L
2の反射特性(破線)の差が大きくなり、反射最小周波数F
1と反射最小周波数F
2の差も大きくなる。
【0029】
反射最小周波数F
1と反射最小周波数F
2の差が大きいと、例えば、VF電源16から反射最小周波数F
1の高周波電流を発している場合、プラズマの着火後に処理空間の電界を維持するために高周波電流の周波数を反射最小周波数F
2へ変化させようとしても、反射最小周波数F
2がVF電源16の周波数可変範囲を外れ、高周波電流の周波数を反射最小周波数F
2まで変化させられない場合がある。
【0030】
そこで、本実施の形態では、これに対応して、プラズマPが着火する前に第1の経路L
1の固有のパス容量を調整して反射最小周波数F
1と反射最小周波数F
2との差を減少させる。具体的には、補助回路17のパス容量を調整して第1の経路L
1の固有のパス容量を増加させ、第1の経路L
1の負荷インピーダンス(プラズマの着火前における高周波電源から見た接地までの負荷インピーダンス)と、第2の経路L
2の負荷インピーダンス(プラズマの着火後における高周波電源から見た接地までの負荷インピーダンス)との差を減少させる。例えば、適切な容量のコンデンサ20の選択や抵抗21の抵抗値の調整により、
図2に示すように、第1の経路L
1の反射特性(一点鎖線、実線)を第2の経路L
2の反射特性(破線)へ近づける(図中の白抜き矢印参照)。
【0031】
これにより、反射最小周波数F
1及び反射最小周波数F
2が近づいてVF電源16が反射最小周波数F
1の高周波電流と、反射最小周波数F
2の高周波電流とのいずれも発することができるようになるため、プラズマPを確実に着火できるとともに、プラズマPを確実に維持することができる。特に、上述したプラズマ処理装置10では、反射最小周波数F
1及び反射最小周波数F
2がVF電源16の周波数可変範囲に収まることが好ましく、具体的には、反射最小周波数F
1及び反射最小周波数F
2の差が2MHz以内であるのが好ましい。
【0032】
また、VF電源16は内部において機械的に回路を切り替えることによって発する高周波電流の周波数を変化させることが無いため、故障し難く、もって、プラズマ処理装置10の信頼性を向上することができる。
【0033】
次に、本実施の形態に係るプラズマ処理方法について説明する。
【0034】
図3は、本実施の形態に係るプラズマ処理方法を説明するための図である。
【0035】
図3において、まず、プラズマPが着火する前に、補助回路17のスイッチ19を閉じ(ONにし)、第1の経路L
1に補助回路17を経由させる(第1のステップ)。このとき、適切な容量のコンデンサ20の選択や抵抗21の抵抗値の調整により、
図2に示すように、第1の経路L
1の反射特性を第2の経路L
2の反射特性へ近づける。
【0036】
次いで、VF電源16から反射最小周波数F
1の高周波電流を発し、処理空間に処理ガスを導入する(図中「T
1」)。ここで、第1の経路L
1の反射最小周波数が反射最小周波数F
1なので、第1の経路L
1には多量の高周波電流が流れ、上部電極14の電圧が高まり、処理空間に電界が生じる。
【0037】
やがて、電界が十分に発達すると、処理ガスが励起されてプラズマPが着火し、処理空間におけるプラズマPの発光強度が増す(図中「T
2」)(第2のステップ)。
【0038】
プラズマPの発光強度、上部電極14の電圧や上部電極14からの高周波電流の反射等をモニタし、これらの変化点を検出することにより、プラズマPの着火を確認した後、スイッチ19を開き(OFFにし)(図中「T
3」)、VF電源16から発する高周波電流の周波数を反射最小周波数F
1から反射最小周波数F
2へ変化させる(
図4(A))。このとき、第1の経路L
1の固有のパス容量が低下し、反射最小周波数F
1が上昇して反射最小周波数F
2から大きく離れるため、第1の経路L
1に高周波電流は殆ど流れず、第2の経路L
2に効率よく高周波電流が流れ、処理空間においてプラズマPが維持される(第3のステップ)。
【0039】
上述したプラズマ処理方法によれば、プラズマPが着火する前に高周波電流の周波数が反射最小周波数F
1に設定されるので、第1の経路L
1に多量の高周波電力を流して上部電極14の電圧を大きく高めることができ、もって、プラズマPを確実に着火できるだけでなく、プラズマPの着火速度を向上でき、さらに、プラズマPの失火を防止することができる。これにより、プラズマPの失火の衝撃に起因するVF電源16やマッチャー15の故障を未然に防止することができる。
【0040】
また、上述したプラズマ処理方法によれば、プラズマPが着火した後に高周波電流の周波数が反射最小周波数F
2に設定されるので、プラズマPが着火した後に第2の経路L
2に多量の高周波電流を流して処理空間の電界を維持することができ、もって、プラズマPを確実に維持することができる。
【0041】
上述したプラズマ処理方法では、プラズマPの着火前後においてVF電源16から発せられる高周波電流の周波数を変更したが、プラズマPの着火前後において高周波電流の周波数を変更しなくてもよい。この場合、高周波電流の周波数を、例えば、
図4(B)に示すように、反射最小周波数F
1及び反射最小周波数F
2の間の周波数F
3に設定する。周波数F
3では、第1の経路L
1の反射特性における反射係数及び第2の経路L
2の反射特性における反射係数がいずれもある程度小さい値に留まるため、プラズマPが着火する前において第1の経路L
1にある程度の高周波電流が流れ、プラズマPが着火した後においても第2の経路L
2にある程度の高周波電流が流れる。これにより、高周波電流の周波数を変更しなくても、プラズマPの着火及びプラズマPの維持を両立することができる。
【0042】
また、適切な容量のコンデンサ20の選択や抵抗21の抵抗値の調整によっても、反射最小周波数F
1を反射最小周波数F
2へ十分に近づけることができない場合、プラズマPの着火後にマッチャー15の可変コンデンサ18の容量を変化させることにより、第2の経路L
2の固有のパス容量を変化させ(
図4(C)中の黒矢印参照)、反射最小周波数F
2を反射最小周波数F
1へ近づけてもよい。これにより、反射最小周波数F
1及び反射最小周波数F
2をVF電源16の周波数可変範囲に収めることができる。
【0043】
上述したプラズマ処理方法は、プラズマPを確実に着火でき、且つプラズマPを確実に維持することができるため、特に、プラズマ処理においてチャンバ11の内部の圧力が高くプラズマが着火しにくい処理条件や着火しにくい処理ガスを用いる処理条件において高い効果がある。
【0044】
上述した本実施の形態では、反射最小周波数F
1を反射最小周波数F
2に近づけるが、
図2に示すように、反射最小周波数F
1及び反射最小周波数F
2とも反射係数は0とならないため、VF電源16はある程度、高周波電流の反射を許容する反射耐性が高いものが好ましく、また、高周波電流の反射を見越して必要とされる高周波電流の量よりも多くの量の高周波電流を発するのが好ましい。
【0045】
また、補助回路17の形態としては、
図1に示す形態に限られず、コイルを有するものであってもよく、補助回路17自体の浮遊容量がコンデンサを兼ねてもよく、さらに、補助回路17の配線がコイル特性を有していてもよい。
【0046】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。
【0047】
本実施の形態は、その構成や作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであり、補助回路の構成が異なる点で上述した第1の実施の形態と異なる。したがって、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0048】
図5は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0049】
図5において、プラズマ処理装置22は、上部電極14に接続されて接地する補助回路23を備え、補助回路23は可変コンデンサ24と抵抗21とを有する。
【0050】
本実施の形態においても、プラズマPが着火する前に補助回路23のパス容量を調整して第1の経路L
1の固有のパス容量を増加させ、第1の経路L
1の負荷インピーダンスと、第2の経路L
2の負荷インピーダンスとの差を減少させる。例えば、補助回路23の可変コンデンサ24の容量や抵抗21の抵抗値を調整し、第1の経路L
1の反射特性を第2の経路L
2の反射特性へ近づける。これにより、反射最小周波数F
1が低下して反射最小周波数F
1が反射最小周波数F
2に近づくので、VF電源16が反射最小周波数F
1の高周波電流と、反射最小周波数F
2の高周波電流とのいずれも発することができるようになり、プラズマPを確実に着火できるとともに、プラズマPを確実に維持することができる。
【0051】
次に、本実施の形態に係るプラズマ処理方法について説明する。
【0052】
図6は、本実施の形態に係るプラズマ処理方法を説明するための図である。
【0053】
図6において、まず、プラズマPが着火する前に、補助回路23の可変コンデンサ24の容量を増大させ、第1の経路L
1の固有のパス容量を増加させ、
図2に示すように、第1の経路L
1の反射特性を第2の経路L
2の反射特性へ近づけて反射最小周波数F
1を低下させることにより、第1の経路L
1を第2の経路L
2へ近づける。
【0054】
次いで、VF電源16から反射最小周波数F
1の高周波電流を発し、処理空間に処理ガスを導入する(図中「T
1」)。このとき、第1の経路L
1には多量の高周波電流が流れ、上部電極14の電圧が高まり、処理空間に電界が生じる。
【0055】
やがて、電界が十分に発達すると、処理ガスが励起されてプラズマPが着火し、処理空間におけるプラズマPの発光強度が増す(図中「T
2」)。
【0056】
次いで、プラズマPの着火を確認した後、補助回路23の可変コンデンサ24の容量を低下させ(図中「T
3」)、VF電源16から発する高周波電流の周波数を反射最小周波数F
1から反射最小周波数F
2へ変化させる。このとき、第1の経路L
1の固有のパス容量が低下し、反射最小周波数F
1が上昇して反射最小周波数F
2から大きく離れるため、第2の経路L
2に効率よく高周波電流が流れ、処理空間においてプラズマPが維持される。
【0057】
本実施の形態において、補助回路23の形態としては、
図5に示す形態に限られず、容量を変化できるものであればよく、例えば、可変抵抗を有するものであってもよい。
【0058】
なお、本実施の形態では、プラズマPが着火した後も補助回路23の配線が切断されることがないため、第1の経路L
1にも微量の高周波電流が流れることがあり、これにより、処理空間においてプラズマPの分布が多少乱れるおそれがある。そこで、複数の補助回路23を上部電極14の中心に関して対称に配置するのが好ましい。これにより、上部電極14の中心に関して微量の高周波電流が流れる複数の第1の経路L
1を対称に配置することができ、処理空間においてプラズマPの分布が乱れるのを抑制することができる。
【0059】
次に、本発明の第3の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。
【0060】
本実施の形態は、その構成や作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであり、補助回路がサセプタに接続される点で上述した第1の実施の形態と異なる。したがって、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0061】
図7は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0062】
図7において、プラズマ処理装置25は、サセプタ12に接続されて接地する補助回路26を備え、補助回路26は可変コンデンサ24と抵抗21とを有する。
【0063】
このプラズマ処理装置25では、プラズマPが着火する前の高周波電流の第1の経路L
1(
図7中の実線で示す矢印)と、プラズマPが着火した後の高周波電流の第2の経路L
2(
図7中の破線で示す矢印)とが同じであるが、第1の経路L
1及び第2の経路L
2を比較すると、プラズマPのパス容量が存在する点で第2の経路L
2は第1の経路L
1と異なるため、第1の経路L
1及び第2の経路L
2はそれぞれ異なる固有のパス容量を有する。
【0064】
そこで、本実施の形態では、これに対応して、プラズマPが着火する前に補助回路26のパス容量を調整して反射最小周波数F
1と反射最小周波数F
2との差を減少させる。具体的には、プラズマPが着火する前に、補助回路26の可変コンデンサ24の容量を増大させて第1の経路L
1の固有のパス容量を増加させ、第1の経路L
1の反射特性を第2の経路L
2の反射特性へ近づける。これにより、反射最小周波数F
1が低下して反射最小周波数F
1が反射最小周波数F
2に近づくので、VF電源16が反射最小周波数F
1の高周波電流と、反射最小周波数F
2の高周波電流とのいずれも発することができるようになり、プラズマPを確実に着火できるとともに、プラズマPを確実に維持することができる。
【0065】
また、プラズマPが着火した後には、補助回路26の可変コンデンサ24の容量を低下させて第1の経路L
1の固有のパス容量を減少させる。これにより、反射最小周波数F
1を上昇させて反射最小周波数F
1を反射最小周波数F
2から大きく離す。その結果、第2の経路L
2に効率よく高周波電流が流れ、処理空間においてプラズマPが維持される。
【0066】
次に、本発明の第4の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。
【0067】
本実施の形態は、その構成や作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであり、補助回路がチャンバの側壁部に配置される電極に接続される点で上述した第1の実施の形態と異なる。したがって、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0068】
図8は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0069】
図8において、プラズマ処理装置27は、チャンバ11の側壁11aにおいてプラズマPに面するように配置される側壁電極28(第3の電極)と、側壁電極28に接続されて接地する補助回路29を備え、補助回路29は可変コンデンサ24と抵抗21とを有する。
【0070】
このプラズマ処理装置27では、プラズマPが着火する前の高周波電流の第1の経路L
1(
図8中の実線で示す矢印)は、マッチャー15、側壁電極28及び補助回路29を経由して接地し、プラズマPが着火した後の高周波電流の第2の経路L
2(
図8中の破線で示す矢印)は、マッチャー15、シースS
1、プラズマP、シースS
2、ウエハW及びサセプタ12を経由して接地する。すなわち、第1の経路L
1と第2の経路L
2は異なり、第1の経路L
1及び第2の経路L
2はそれぞれ異なる固有のパス容量を有する。
【0071】
そこで、本実施の形態においても、プラズマPが着火する前に補助回路29のパス容量を調整して反射最小周波数F
1と反射最小周波数F
2との差を減少させる。具体的には、プラズマPが着火する前に、補助回路29の可変コンデンサ24の容量を増大させて第1の経路L
1の固有のパス容量を増加させ、第1の経路L
1の反射特性を第2の経路L
2の反射特性へ近づける。これにより、VF電源16が反射最小周波数F
1の高周波電流と、反射最小周波数F
2の高周波電流とのいずれも発することができるようになり、プラズマPを確実に着火できるとともに、プラズマPを確実に維持することができる。
【0072】
また、プラズマPが着火した後には、補助回路29の可変コンデンサ24の容量を低下させて第1の経路L
1の固有のパス容量を減少させて反射最小周波数F
1を反射最小周波数F
2から大きく離す。その結果、第2の経路L
2に効率よく高周波電流が流れ、処理空間においてプラズマPが維持される。
【0073】
上述した本実施の形態では、プラズマPが着火した後に、補助回路29の可変コンデンサ24の容量を低下させるが、処理空間にプラズマPが存在する場合、側壁電極28はプラズマPを介して上部電極14の対向電極としても機能するので、プラズマPが着火した後に可変コンデンサ24の容量を低下させない、若しくは、微少に低下させることにより、側壁電極28の電位を調整し(例えば、側壁電極28の電位をサセプタ12の電位と同じにし)、プラズマ処理装置27におけるアノード/カソード比を調整することができる。
【0074】
また、処理空間にプラズマPが存在する場合、プラズマPから陽イオンが側壁電極28の電位に応じてチャンバ11の側壁11aの内表面へ打ち込まれるため、プラズマPが着火した後に可変コンデンサ24の容量を低下させない、若しくは、微少に低下させることにより、陽イオンのスパッタリングによって当該内表面に堆積した堆積物等を除去し、チャンバ11の側壁11aの内表面をクリーニングすることができる。
【0075】
次に、本発明の第5の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。
【0076】
本実施の形態は、その構成や作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであり、VF電源がサセプタへ接続され、補助回路が上部電極に接続される点で上述した第1の実施の形態と異なる。したがって、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0077】
図9は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0078】
図9において、プラズマ処理装置30では、VF電源16がマッチャー15を介してサセプタ12へ接続され、補助回路31が上部電極14に接続されるとともに接地する。
【0079】
このプラズマ処理装置30では、プラズマPが着火する前の高周波電流の第1の経路L
1(
図9中の実線で示す矢印)と、プラズマPが着火した後の高周波電流の第2の経路L
2(
図9中の破線で示す矢印)とは同じであるが、第1の経路L
1及び第2の経路L
2を比較すると、第3の実施の形態と同様に、プラズマPのパス容量が存在する点で第2の経路L
2は第1の経路L
1と異なるため、第1の経路L
1及び第2の経路L
2はそれぞれ異なる固有のパス容量を有する。
【0080】
そこで、本実施の形態でも、これに対応して、プラズマPが着火する前に、補助回路31の可変コンデンサ24の容量を増大させて反射最小周波数F
1を反射最小周波数F
2に近づける。これにより、VF電源16が反射最小周波数F
1の高周波電流と、反射最小周波数F
2の高周波電流とのいずれも発することができるようになり、プラズマPを確実に着火できるとともに、プラズマPを確実に維持することができる。
【0081】
また、プラズマPが着火した後には、補助回路31の可変コンデンサ24の容量を低下させて反射最小周波数F
1を反射最小周波数F
2から大きく離す。その結果、第2の経路L
2に効率よく高周波電流が流れ、処理空間においてプラズマPが維持される。
【0082】
次に、本発明の第6の実施の形態に係るプラズマ処理装置について説明する。
【0083】
本実施の形態は、その構成や作用が上述した第4の実施の形態と基本的に同じであり、チャンバの側壁部に配置される電極が直接接地し、補助回路がサセプタに接続される点で上述した第4の実施の形態と異なる。したがって、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0084】
図12は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0085】
図12において、プラズマ処理装置40では、側壁電極28が直接接地し、サセプタ12は補助回路41を介して接地する。補助回路41は可変コンデンサ42やコイル43を有する。
【0086】
このプラズマ処理装置40では、プラズマPが着火する前の高周波電流の第2の経路L
2(
図12中の破線で示す矢印)は、マッチャー15、シースS
1、プラズマP、シースS
2、ウエハW及びサセプタ12を経由して接地し、プラズマPが着火した後の高周波電流の第1の経路L
1(
図12中の実線で示す矢印)は、マッチャー15及び側壁電極28を経由して接地する。すなわち、第1の経路L
1と第2の経路L
2は異なり、第1の経路L
1及び第2の経路L
2はそれぞれ異なる固有のパス容量を有する。
【0087】
そこで、本実施の形態においても、プラズマPが着火する前に補助回路41のパス容量を調整して反射最小周波数F
1と反射最小周波数F
2との差を減少させる。具体的には、補助回路41の可変コンデンサ42の容量を変更して第2の経路L
2の固有のパス容量を変更し、第2の経路L
2の反射特性を第1の経路L
1の反射特性へ近づける。これにより、VF電源16が反射最小周波数F
1の高周波電流と、反射最小周波数F
2の高周波電流とのいずれも発することができるようになる。
【0088】
プラズマ処理装置40では、プラズマPが着火する前に、VF電源16から反射最小周波数F
2の高周波電流を発して第2の経路L
2へ効率よく高周波電流を流し、処理空間においてプラズマPを効率よく着火する。
【0089】
プラズマPが着火した後は、VF電源16から反射最小周波数F
1の高周波電流を発して第1の経路L
1へ効率よく高周波電流を流し、処理空間におけるプラズマPの過剰生成やウエハWの電位の上昇を抑制し、過剰なプラズマPによるエッチングによってウエハWがダメージを受けるのを抑制する。
【0090】
また、プラズマPが着火した後に、補助回路41の可変コンデンサ42の容量を変更して第2の経路L
2の固有のパス容量を第1の経路L
1の固有のパス容量に近づけて反射最小周波数F
2を反射最小周波数F
1へ近づけてもよい。
【0091】
例えば、プラズマPが着火する前には第2の経路L
2へ効率よく高周波電流を流し、プラズマPが着火した後に、補助回路41の可変コンデンサ42の容量を変更して反射最小周波数F
2を反射最小周波数F
1へ近づけることにより、第1の経路L
1だけでなく第2の経路L
2へも高周波電流を流してもよい。これにより、処理空間においてプラズマPの生成を確実に維持することができる。また、プラズマPによるウエハWのプラズマ処理中に、補助回路41の可変コンデンサ42の容量を変更して反射最小周波数F
2を反射最小周波数F
1へ近づけてもよい。これにより、処理空間におけるパワー(高周波電流)の経路を変化させてプラズマPの密度や分布を変更することができるので、ウエハWのプラズマ処理中にプラズマ処理の不均一やエッチングにおけるビアやトレンチの傾きを解消することができる。
【0092】
さらに、第4の実施の形態と同様に、プラズマPが着火する前に、VF電源16から反射最小周波数F
1の高周波電流を発して第1の経路L
1へ効率よく高周波電流を流し、プラズマPが着火した後は、VF電源16から反射最小周波数F
2の高周波電流を発して第2の経路L
2へ効率よく高周波電流を流してもよい。これにより、プラズマPが着火する際に大きな高周波電流が第2の経路L
2を流れて当該第2の経路L
2に存在する構成部品等が電気的に破壊されるのを防止するとともに、プラズマPが着火した後に処理空間においてプラズマPが失火するのを防止することができる。
【0093】
また、プラズマPによるウエハWのプラズマ処理中に、VF電源16から発せられる高周波電流の周波数を反射最小周波数F
1と反射最小周波数F
2の間で変化させてもよい。これによっても、処理空間におけるパワー(高周波電流)の経路が変化し、プラズマPの密度や分布を変更することができるので、ウエハWのプラズマ処理中にプラズマ処理の不均一やエッチングにおけるビアやトレンチの傾きを解消することができる。
【0094】
なお、第1の経路L
1や第2の経路L
2の選択順序については、チャンバ11の特性や要求されるウエハ処理特性に応じて変更してもよい。
【0095】
以上、本発明について、上述した各実施の形態を用いて説明したが、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではない。
【0096】
また、本発明の目的は、上述した各実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体をコンピュータ(図示しない)等に供給し、コンピュータのCPUが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。
【0097】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した各実施の形態の機能を実現することになり、プログラムコード及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0098】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、RAM、NV−RAM、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD(DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW)等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、他のROM等の上記プログラムコードを記憶できるものであればよい。或いは、上記プログラムコードは、インターネット、商用ネットワーク、若しくはローカルエリアネットワーク等に接続される不図示の他のコンピュータやデータベース等からダウンロードすることによりコンピュータに供給されてもよい。
【0099】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、CPU上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0100】
更に、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0101】
上記プログラムコードの形態は、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコード、OSに供給されるスクリプトデータ等の形態から成ってもよい。
【実施例】
【0102】
次に、補助回路の容量が高周波電流の経路の反射特性に与える影響について説明する。
【0103】
図10は、補助回路の容量が高周波電流の経路の反射特性に与える影響について説明するための図であり、
図10(A)は本発明者が上記影響の確認実験に用いたプラズマ処理装置の回路を概略的に示す配線図であり、
図10(B)は処理空間の内圧が800mTorrであって、処理ガスがアルゴンガス及び酸素ガスの混合ガスからなる場合の反射特性を示すグラフであり、
図10(C)は処理空間の内圧が800mTorrであって、処理ガスが窒素ガスの単ガスからなる場合の反射特性を示すグラフである。
図10(B)及び
図10(C)のグラフにおける縦軸はプラズマの着火に必要な高周波電力であるが、高周波電流の反射係数はプラズマの着火に必要な高周波電力に比例するため、
図10(B)及び
図10(C)のグラフにおける縦軸は高周波電流の反射係数に対応する。
【0104】
まず、本発明者は、チャンバ内に配置された上部電極32及び下部電極33からなる一対の平行電極34と、上部電極32へマッチャー35を介して接続されるVF電源36と、VF電源36及び上部電極32の間で分岐して接地する補助回路37とを備えるプラズマ処理装置38を準備した。なお、プラズマ処理装置38では、上部電極32及び下部電極33の間の処理空間が減圧されるとともに、上部電極32及び下部電極33の間の処理空間に処理ガスが導入され、補助回路37は可変コンデンサ39を有し、プラズマが着火する前の高周波電流の経路(以下、「着火前経路」という。)はマッチャー35及び補助回路37を介して接地し、プラズマが着火した後の高周波電流の経路(以下、「着火後経路」という。)はマッチャー35及び平行電極34を介して接地した。
【0105】
次いで、上部電極32及び下部電極33の間の処理空間を800mTorrまで減圧し、当該処理空間へ流量比が400/40sccmのアルゴンガス/酸素ガスの混合ガスからなる処理ガスを導入し、VF電源36から高周波電力を平行電極34へ供給した。このとき、補助回路37の可変コンデンサ39の容量を変化させるとともに、VF電源36から供給される高周波電力の周波数も変化させ、上記処理空間においてプラズマが着火する際に必要な高周波電力を測定し、その結果を、
図10(B)のグラフに示した。すなわち、プラズマが着火する前の反射特性を
図10(B)のグラフに示した。また、図示はしないが、着火前経路の反射最小周波数と、着火後経路の反射最小周波数とを測定し、これらの差分(以下、「着火前後における反射最小周波数の差分」という。)も記録した。
【0106】
ここで、可変コンデンサ39の容量が109pFの場合を実施例1とし、同容量が148pFの場合を実施例2とし、同容量が226pFの場合を実施例3とし、同容量が304pFの場合を実施例4とした。
【0107】
着火前後における反射最小周波数の差分は、実施例1において2.4MHzであり、実施例2において1.6MHzであり、実施例3において0.7MHzであり、実施例4において0.2MHzであった。これにより、補助回路37の容量が増えると着火前後における反射最小周波数の差分が小さくなることが分かった。すなわち、補助回路37の容量が増えるとプラズマが着火する前の高周波電流の経路の反射特性はプラズマが着火した後の高周波電流の経路の反射特性に近づき、着火前経路の反射最小周波数及び着火後経路の反射最小周波数のいずれもがVF電源36の周波数可変範囲に含まれる可能性が高まることが分かった。
【0108】
また、
図10(B)のグラフより、補助回路37の容量が減少すると着火可能な高周波電力の周波数の範囲が増加するが、着火前経路の反射最小周波数は高くなることが分かった。換言すれば、補助回路37の容量が減少するとプラズマは着火しやすくなるものの、比較的高い周波数の高周波電力を必要とすることが分かった。
【0109】
次いで、上部電極32及び下部電極33の間の処理空間を800mTorrまで減圧し、当該処理空間に流量400sccmの窒素ガスの単ガスからなる処理ガスを導入し、VF電源36から高周波電力を平行電極34へ供給した。このときも、補助回路37の可変コンデンサ39の容量を変化させるとともに、VF電源36から供給される高周波電力の周波数も変化させ、上記処理空間においてプラズマが着火する際に必要な高周波電力を測定し、その結果を、
図10(C)のグラフに示した。また、図示はしないが、着火前経路の反射最小周波数と、着火後経路の反射最小周波数とを測定し、着火前後における反射最小周波数の差分も記録した。
【0110】
ここで、可変コンデンサ39の容量が109pFの場合を実施例5とし、同容量が148pFの場合を実施例6とし、同容量が226pFの場合を実施例7とし、同容量が304pFの場合を実施例8とした。
【0111】
着火前後における反射最小周波数の差分は、実施例5において1.5MHzであり、実施例6において0.9MHzであり、実施例7において0.3MHzであり、実施例8において0.1MHzであった。ここからも、補助回路37の容量が増えるとプラズマが着火する前の高周波電流の経路の反射特性はプラズマが着火した後の高周波電流の経路の反射特性に近づき、着火前経路の反射最小周波数及び着火後経路の反射最小周波数のいずれもがVF電源36の周波数可変範囲に含まれる可能性が高まることが分かった。
【0112】
また、
図10(C)のグラフからも、補助回路37の容量が減少すると着火可能な高周波電力の周波数の範囲が増加するが、着火前経路の反射最小周波数は高くなることが分かった。