特許第6353306号(P6353306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6353306高分子エポキシ樹脂を含む光学シート状接着剤用樹脂組成物、該組成物よりなる光学シート用接着剤、及びその硬化物、並びに、前記組成物に使用する高分子エポキシ樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353306
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】高分子エポキシ樹脂を含む光学シート状接着剤用樹脂組成物、該組成物よりなる光学シート用接着剤、及びその硬化物、並びに、前記組成物に使用する高分子エポキシ樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/02 20060101AFI20180625BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180625BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20180625BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20180625BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20180625BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C09J163/02
   C09J11/06
   C09J7/10
   C09J7/35
   C08G59/24
   C08G59/68
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-147867(P2014-147867)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2016-23225(P2016-23225A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089406
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 宏
(72)【発明者】
【氏名】青柳 栄次郎
(72)【発明者】
【氏名】和佐野 次俊
(72)【発明者】
【氏名】野沢 英則
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−168158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
C08G 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2官能エポキシ樹脂(a)と2価フェノール化合物(b)とを反応して得られる高分子エポキシ樹脂と硬化性樹脂成分とを含む透明なシート状接着剤用樹脂組成物であって、
該2官能エポキシ樹脂(a)はエポキシ当量が170〜200g/eq.のビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はエポキシ当量が150〜180g/eq.のビスフェノールF型エポキシ樹脂であり、
該2価フェノール化合物(b)はビスフェノールA及び/又はビスフェノールFであり、
該高分子エポキシ樹脂は下記一般式(1)で表され、
【化1】
(式中(E)は原料エポキシ樹脂由来の骨格残基であり、(P)は原料フェノール化合物由来の骨格残基であり、nは繰り返し数を表す。)
高分子エポキシ樹脂中の(E)及び(P)の合計モルに対して、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の骨格残基及びビスフェノールFの骨格残基の合計モルが35〜55モル%の範囲であり、メチルエチルケトンの50質量%ワニスのハーゼン単位色相が50以下であることを特徴とする透明なシート状接着剤用樹脂組成物。
【請求項2】
前記高分子エポキシ樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量が、20000〜200000である請求項1記載の透明なシート状接着剤用樹脂組成物。
【請求項3】
前記2官能エポキシ樹脂(a)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるn=0成分が96面積%以上あるビスフェノールA型エポキシ樹脂を50〜100質量%含有している2官能エポキシ樹脂である請求項1又は2に記載の透明なシート状接着剤用樹脂組成物。
【請求項4】
前記高分子エポキシ樹脂の含有量は、前記高分子エポキシ樹脂と前記硬化性樹脂成分の合計量に対して、10〜90質量%である請求項1〜3の何れかの項に記載の透明なシート状接着剤用樹脂組成物。
【請求項5】
前記2価フェノール化合物(b)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる二核体純度が96面積%以上のビスフェノールFを50〜100質量%含有している2価フェノール化合物である請求項1〜4の何れかの項に記載の透明なシート状接着剤用樹脂組成物。
【請求項6】
前記2官能エポキシ樹脂(a)と前記2価フェノール化合物(b)とを、(a)/(b)=1.001/1〜1.1/1のモル比で反させて得たものである請求項1〜5の何れかの項に記載の透明なシート状接着剤用樹脂組成物。
【請求項7】
前記硬化性樹脂成分は、エポキシ樹脂と硬化剤、エポキシ樹脂とイミダゾール触媒、又はアクリル酸エステル樹脂とラジカル重合開始剤の何れかである請求項1〜6の何れかの項に記載の透明なシート状接着剤用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかの項に記載の透明なシート状接着剤用樹脂組成物から得られる硬化物。
【請求項9】
厚み1mmの硬化物の波長400nmにおける透過率が80%以上であり、黄色度(YI)が5以下である請求項8に記載の硬化物。
【請求項10】
請求項1〜7の何れかの項に記載の透明なシート状接着剤用樹脂組成物から得られる光学シート用接着剤。
【請求項11】
2官能エポキシ樹脂(a)と2価フェノール化合物(b)を反応して得られる高分子エポキシ樹脂の製造方法であって、前記2官能エポキシ樹脂(a)はエポキシ当量170〜200g/eq.のビスフェノールA型エキシ樹脂及び/又はエポキシ当量150〜180g/eq.のビスフェノールF型エポキシ樹脂であり、前記2価フェノール化合物(b)はビスフェノールA及び/又はビスフェノールFであって、2官能エポキシ樹脂(a)と2価フェノール化合物(b)とを、(a)/(b)=1.001/1〜1.1/1のモル比で用い、反応触媒として4級ホスホニウム塩類化合物及び/又はホスフィン類化合物を用い、反応溶媒として沸点が100℃以上であり、かつ20℃での蒸気圧が0.6kPa以上である有機溶剤を総仕込み量に対して3〜70質量%用いて、120〜165℃の反応温度で反応させて得られ、かつ、高分子エポキシ樹脂中のビスフェノールFの骨格が全骨格に対して35〜55モル%であり、メチルエチルケトンの50質量%ワニスのハーゼン単位色相が50以下であることを特徴とする高分子エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項12】
上記2官能エポキシ樹脂(a)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるn=0成分が96面積%以上あるビスフェノールA型エポキシ樹脂を50〜100質量%含有している2官能エポキシ樹脂である請求項11に記載の高分子エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項13】
上記2価フェノール化合物(b)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる二核体純度が96面積%以上のビスフェノールFを50〜100質量%含有している2価フェノール化合物である請求項11又は12に記載の高分子エポキシ樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルの貼り合せに等に使用する、光学シート状接着剤用高分子エポキシ樹脂組成物、該組成物よりなる光学シート用接着剤、及びその硬化物、並びに、前記組成物に使用する高分子エポキシ樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルの貼り合せに使用する接着剤には、従来、液状硬化性樹脂(特許文献1)や光学用両面テープ(OCA)(特許文献2)が使用されている。しかし、液状硬化性樹脂では気泡の混入や接着剤のはみ出しが起こり、その問題を解決するためにダム材を形成する方法も試されているが工程が増えてしまうため、生産性が落ちてしまい、好ましくない(特許文献3)。またOCAは作業が容易で生産性は高いものの、貼り合せ面の段差に追従できない、接着力が弱く信頼性が得られないといった問題があった。そこで、これらの問題を解決するため、液状硬化性樹脂や光学用両面テープの特性を併せ持つ、硬化性シート状接着剤が近年考えられている。
【0003】
硬化性シート状接着剤は、硬化性の接着剤であるが、常温では固体シート状であり、加熱溶融することで流動し、硬化に至る接着剤である。この硬化性シート状接着剤はエポキシ樹脂やアクリル酸エステル樹脂等の硬化性樹脂成分と自己造膜性のあるポリマー成分から構成されている。
【0004】
一方、高分子エポキシ樹脂は自己造膜性、他樹脂との相溶性の点からシート状樹脂組成物に多く使用されている。また高分子エポキシ樹脂は、分子鎖中に極性基の水酸基を含有しており基板との密着性に優れることから、種々の接着剤に使用されている。しかし、これまでは、高分子エポキシ樹脂は、その高い絶縁性等から層間絶縁膜等の電子材料分野(特許文献4)や塗料(特許文献5)に使用されるのみであり、これまで透明性は重視されていなかった。
【0005】
高分子エポキシ樹脂を光学シート状接着剤に使用する場合、一般的にビスフェノールA型高分子エポキシ樹脂は、透明性が高く光学材料に適しているが、樹脂粘度が高く、エポキシ樹脂組成物を得る際に、ハンドリング性が悪いという問題があった。また粘度を下げるために、ビスフェノールF型高分子エポキシ樹脂を使用することもできるが、ビスフェノールF型高分子エポキシ樹脂は着色しており、透過率が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5302615
【特許文献2】特許第4788937
【特許文献3】特許第5244262
【特許文献4】特許第4992396
【特許文献5】特許第5252794
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
配合割合を増しても成形時のハンドリング性が良好で、かつフィルム性やシート成形能が良い、光学特性に優れた光学シート状接着剤に好適な高分子エポキシ樹脂を含む比較的粘度の低い樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の条件下、特定の触媒を用いて合成したビスフェノールA骨格とビスフェノールF骨格とを特定の割合で含む高分子エポキシ樹脂を含む樹脂組成物が前記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は2官能エポキシ樹脂(a)と2価フェノール化合物(b)とを反応して得られる高分子エポキシ樹脂と硬化性樹脂成分とを含む透明なシート状接着剤用樹脂組成物であって、
該2官能エポキシ樹脂(a)はエポキシ当量が170〜200g/eq.のビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はエポキシ当量が150〜180g/eq.のビスフェノールF型エポキシ樹脂であり、
該2価フェノール化合物(b)はビスフェノールA及び/又はビスフェノールFであり、
該高分子エポキシ樹脂は下記一般式(1)で表され、
【0009】
【化1】
(式中(E)は原料エポキシ樹脂由来の骨格残基であり、(P)は原料フェノール化合物由来の骨格残基であり、nは繰り返し数を表す。)
高分子エポキシ樹脂中の(E)及び(P)の合計モルに対して、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の骨格残基及びビスフェノールFの骨格残基の合計モルが35〜55モル%の範囲であり、メチルエチルケトンの50質量%ワニスのハーゼン単位色相が50以下であることを特徴とする透明なシート状接着剤用樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る高分子エポキシ樹脂を含む光学シート状接着剤用樹脂組成物は比較的粘度の低い樹脂組成物なので、成形時のハンドリング性が良好でフィルムやシートの成形能が良好で、光学特性に優れた光学シート状接着剤に好適な高分子エポキシ樹脂を含有する透明なシート状接着剤用樹脂組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳述する。
【0012】
すなわち、本発明は、
2官能エポキシ樹脂(a)と2価フェノール化合物(b)とを反応して得られる高分子エポキシ樹脂を含む透明なシート状接着剤用樹脂組成物であって、その高分子エポキシ樹脂が
エポキシ当量170〜200g/eq.のビスフェノールA型エキシ樹脂及び/又はエポキシ当量150〜180g/eq.のビスフェノールF型エポキシ樹脂である2官能エポキシ樹脂(a)と
ビスフェノールA及び/又はビスフェノールFである2価フェノール化合物(b)とを、(a)/(b)=1.001/1〜1.1/1のモル比で用い、
反応触媒として4級ホスホニウム塩類化合物、及び/又はホスフィン類化合物を用い、
反応溶媒として沸点が100℃以上であり、かつ20℃での蒸気圧が0.6kPa以上である有機溶剤を
総仕込み量に対して3〜70質量%用いて、
120〜165℃の反応温度で反応させて得られ、
かつ、高分子エポキシ樹脂中のビスフェノールFの骨格が全骨格に対して35〜55モル%であり、
メチルエチルケトンの50質量%ワニスのハーゼン単位色相が50以下
であることを特徴とする透明なシート状接着剤用樹脂組成物である。
【0013】
前記2官能エポキシ樹脂(a)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるn=0成分が96面積%以上あるビスフェノールA型エポキシ樹脂を50〜100質量%含有している2官能エポキシ樹脂が好ましい。
前記2価フェノール化合物(b)が、GPCによる二核体純度が96面積%以上のビスフェノールFを50〜100質量%含有している2価フェノール化合物が好ましい。
【0014】
また本発明は、前記透明なシート状接着剤用樹脂組成物から得られる硬化物である。
前記硬化物は、厚み1mmの硬化物の波長400nmにおける透過率が80%以上であり、黄色度(YI)が5以下であることは好ましい。
【0015】
また本発明は、前記の透明なシート状接着剤用樹脂組成物から得られるシート状硬化性樹脂組成物であり、シート状接着剤である。
【0016】
また本発明は、前記透明なシート状接着剤用樹脂組成物に適する高分子エポキシ樹脂の製造方法である。
【0017】
本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物に適する前記高分子量エポキシ樹脂は、前記2官能エポキシ樹脂(a)と前記2価フェノール化合物(b)とで反応を行う場合のモル比は、(a)/(b)=1.001/1〜1.1/1であり、好ましくは1.005〜1.08であり、さらに好ましくは1.01〜1.06である。前記2官能エポキシ樹脂(a)と前記2価フェノール化合物(b)のモル比を1.001/1より小さく、又は1.1/1より大きくすると、フェノール基又はエポキシ基が過剰となり高分子量エポキシ樹脂が得られない。
【0018】
前記2官能エポキシ樹脂(a)として、エポキシ当量が170〜200g/eq.のビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はエポキシ当量が150〜180g/eq.のビスフェノールF型エポキシ樹脂を使用することができる。ここでエポキシ当量とは1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq.)であり、JIS K 7236に規定された方法に従って測定されるものである。これらのエポキシ当量は、前記のエポキシ当量範囲以下では不純物を多く含むため好ましくなく、この範囲以上では前記高分子量エポキシ樹脂が得られないため好ましくない。
【0019】
また前記2官能エポキシ樹脂(a)は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンを反応させることで得られ、GPCによるn=0成分が96面積%以上であり、エポキシ当量170〜200g/eq.であるビスフェノールA型エポキシ樹脂を50〜100質量%含んでいることが好ましい。n=0成分を96面積%以下含むビスフェノールAを50質量%以上含むと、前記高分子エポキシ樹脂中のビスフェノールA骨格の占める割合が増え、樹脂粘度が大きくなりすぎる恐れがある。り、またn=0成分を96面積%以下含むビスフェノールAを50質量%未満、即ちビスフェノールF型エポキシ樹脂を50質量%以上含むと、着色が激しくなる恐れがある。
【0020】
前記2価フェノール化合物(b)として、ビスフェノールA又はビスフェノールFを使用することもできるが、得られた前記高分子エポキシ樹脂のビスフェノールFの骨格が全骨格に対して35〜55モル%である必要がある。これは、35モル%より小さいと、フィルム性を持つ分子量まで高分子量化した際、ビスフェノールA骨格の増加により粘度が高くなってしまい、工業生産が可能な範囲にワニス化した場合、ろ過に時間がかかる、シートを得る際には膜厚の制御が難しい、溶剤の除去が難しい等、生産性や利便性に欠けるものになる。具体的には、不揮発分が50質量%の25℃でのワニス粘度は、15000mPa・s以下が好ましく、10000mPa・s以下がより好ましい。また55モル%以上までビスフェノールF骨格を増やしてしまうと、ビスフェノールF骨格由来の着色が起こる恐れがある。
【0021】
本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物に含まれる前記高分子エポキシ樹脂は、典型的には下記一般式(1)で表わされる。この時、(E)は原料エポキシ樹脂由来の骨格残基であり、(P)は原料フェノール化合物由来の骨格残基である。前記高分子エポキシ樹脂中の(E)及び(P)の合計モルに対し、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の骨格残基及びビスフェノールFの骨格残基の合計モルが35〜55モル%の範囲である必要がある。
【0022】
【化2】
(式中、(E)はエポキシ樹脂由来の骨格残基であり、(P)はフェノール化合物由来の骨格残基であり、nは繰り返し数を示す。)
【0023】
また前記2価フェノール化合物(b)は、GPCによる二核体純度が96面積%以上のビスフェノールFを50〜100質量%含有している。二核体純度が96面積%以下のビスフェノールFを50質量%以上含有した場合、ゲル化を引き起こし、前記高分子量エポキシ樹脂が得られない恐れがある。
【0024】
本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物に適した前記高分子エポキシ樹脂の製造時の反応温度は、120〜165℃であり、好ましくは130〜160℃であり、より好ましくは135〜155℃である。高分子エポキシ樹脂の製造に使用可能な反応溶媒は、反応温度を維持できる必要がある。
【0025】
そのため、前記反応溶媒の沸点は、100℃以上であり、好ましくは100〜165℃であり、より好ましくは110〜160℃であり、さらに好ましくは120〜155℃であり、反応時の還流温度を135℃以上で維持できる有機溶剤が特に好ましい。沸点が100℃未満の反応溶媒は、反応系中を撹拌可能な粘度まで下げるために十分な量を加えた場合に、還流が低温で起こり、有用な触媒の活性温度まで反応系中の温度を上げる事ができない恐れがあり好ましくない。なお、反応温度を維持できればよいので沸点の上限は特に決める必要はない。
【0026】
また前記反応溶媒の20℃での蒸気圧は0.6kPa以上であり、好ましくは0.6〜5kPaであり、より好ましくは1〜4kPaであり、さらに好ましくは1.5〜3kPaである。20℃での蒸気圧が0.6kPa未満の反応溶媒は、シート状の樹脂組成物を得る際に反応溶媒が残ってしまいボイドの発生や異臭の原因になる恐れがあり好ましくない。なお、20℃での蒸気圧が大きくなると沸点で下がり、沸点の下限値よって自動的に値が定まるため20℃での蒸気圧の上限値は特に決める必要はない。
【0027】
前記反応溶媒を具体的に例示すれば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロペンタノン、ジブチルエーテル、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、トルエン等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。またこれらの反応溶媒を単独又は混合して用いることができる。
【0028】
また前記反応溶媒の使用量は、総仕込み量に対して3〜70質量%、好ましくは4〜60質量%、さらに好ましくは5〜50質量%である。前記反応溶媒が3質量%以下では反応時の粘度が高くなり、均一な撹拌ができなくなる恐れや反応発熱の制御ができなくなる恐れがある。また前記反応溶媒が70質量%以上ではモノマー濃度が薄くなり、反応速度が極端に低下し反応時間が増大する恐れや目的の分子量まで反応が進まず前記高分子量エポキシ樹脂が得られない恐れがある。
【0029】
また前記高分子エポキシ樹脂の製造で使用可能な反応触媒は前記4級ホスホニウム塩類化合物、又は前記ホスフィン類化合物である。一般的に高分子エポキシ樹脂を得るための反応触媒としては、前記4級アンモニウム塩類化合物、前記4級ホスホニウム塩類化合物、又は前記ホスフィン類化合物以外にも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物類;トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−1(DBU)等の第3級アミン類化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類化合物等も知られている。しかしながら、アルカリ金属水酸化物類や第3級アミン類化合物を使用した場合、着色が起こりやすく、イミダゾール類化合物を使用した場合は反応が速く制御が難しいため好ましくない。光学特性に優れる高分子エポキシ樹脂を得るためには、着色が起こり難く、触媒活性も高い4級アンモニウム塩類化合物、4級ホスホニウム塩類化合物又はホスフィン類化合物が好ましく、4級ホスホニウム塩類化合物又はホスフィン類化合物がさらに好ましい。
【0030】
前記反応触媒を具体的に例示すれば、前記4級ホスホニウム塩類化合物としては、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等が、前記ホスフィン類化合物としてはトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。またこれらの触媒を単独又は組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物に含まれる前記高分子エポキシ樹脂はメチルエチルケトン50質量%の樹脂ワニスを作成した際に、ハーゼン単位色相が50以下が好ましい。ハーゼン単位色相が50より大きいと、シート状接着剤を得る際に着色が起こり、視認性を低下させる恐れがある。
【0032】
本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物に含まれる前記高分子量エポキシ樹脂の分子量は、特に規定していないが、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量が、20000〜200000が好ましく、25000〜180000がより好ましく、30000〜160000がさらに好ましく、35000〜100000が特に好ましい。重量平均分子量が20000以下ではフィルム性能が発現しない恐れがあり、200000以上では高粘度になりやすく、ハンドリング性に欠ける恐れがある。
【0033】
本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物において、前記製造方法で得られる前記高分子エポキシ樹脂以外の成分には、硬化性樹脂成分を含む必要がある。また光学用途に使用するため、樹脂組成物をワニス化した際に、無色透明である必要がある。具体的には、ワニス化した際にハーゼン単位色相が50以下である。ハーゼン単位色相が50より大きいと、シートにした際に着色が起こり、タッチパネルの接着に使用した際に視認性を低下させる原因となる恐れがある。硬化性樹脂成分は、例えば、エポキシ樹脂を硬化剤で硬化させる樹脂組成、エポキシ樹脂をイミダゾール触媒で硬化させる樹脂組成、アクリル酸エステル樹脂をラジカル重合開始剤で硬化させる樹脂組成等が挙げられる。
【0034】
透明なシート状接着剤用樹脂組成物中の前記高分子エポキシ樹脂の含有量は、前記高分子エポキシ樹脂と硬化性樹脂成分の合計量に対して、10〜90質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜50質量%がさらに好ましい。10質量%未満ではフィルム性能が発現しない恐れがある。また本発明の樹脂組成物を接着剤シートにする場合は、被着体の接着力を保つためには、硬化反応が起こらない温度(60℃以下)で段差に追従するような流動性が必要だが、90質量%以上では、十分な流動性が得られない恐れがある。
【0035】
前記硬化性樹脂成分としてのエポキシ樹脂を硬化剤で硬化させる組成物としては、エポキシ樹脂とアミン類化合物、エポキシ樹脂とフェノール類化合物、エポキシ樹脂と酸無水物、エポキシ樹脂とイミダゾール類化合物、又はこれらをさらに組み合わせた組成物が挙げられる。ここで使用されるエポキシ樹脂は低分子量品が好ましく、具体的にはエポキシ当量で2000g/eq.以下が好ましい。エポキシ当量が2000g/eq.より大きいと、十分な架橋密度が得られず、耐熱性に劣る恐れがある。また高粘度になりやすく樹脂ワニスにした際に十分な流動性を得る事ができず、ハンドリング性に劣る恐れがある。
【0036】
前記エポキシ樹脂を具体的に例示すれば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂や、ノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂や、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シクロアルキレングリコールエポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等を挙げることが可能であるが、これらに制限されるものではない。また本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物は、1種類のエポキシ樹脂又は2種類以上のエポキシ樹脂を含有してもよい。
【0037】
エポキシ樹脂の硬化剤としての前記アミン類化合物を具体的に例示すれば、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5ジエチリデントリアミン(DETA)、トリエチリデンテトラアミン(TETA)、テトラエチリデンペンタアミン(TEPA)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、メチレンジアミン、N−アミノエチルアミン(AEP)、m−キシリレンジアミン(MXDA)とメチレンジ(アミノシクロヘキサン)、m−フェニルジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルメタン(MDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DADPS)、ジアミノジフェニルエーテル、トルエンジアミン、ビフェニルアミンとメチレンジ(クロロアニリン)等のアミン類化合物が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0038】
エポキシ樹脂の硬化剤としての前記フェノール類化合物を具体的に例示すれば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノール、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等のフェノール系ノボラック樹脂が挙げられ、好ましくはフェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂であり、さらに好ましくはフェノール、クレゾール類、オクチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノール類を原料とするノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂であり、特に好ましくはキシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等が挙げられるがこれらに制限されるわけではない。
【0039】
エポキシ樹脂の硬化剤としての前記酸無水物を具体的に例示すれば、脂肪族構造又は脂環構造を持つ酸無水物が好ましく、芳香族酸無水物は着色が起こるので好ましくない。例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、脂肪族二塩基酸ポリ無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0040】
また、エポキシ樹脂の硬化剤としての前記イミダゾール類化合物を具体的に例示すれば、2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニルー4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノー6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール等がある。これらのイミダゾール類化合物を単独又は組み合わせて用いることができる。
【0041】
本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物に用いるこれらの硬化剤は、アミン類化合物、フェノール類化合物、酸無水物、イミダゾール類化合物等の硬化剤を単独又は組み合わせて使用することができる。
【0042】
前記硬化性樹脂組成分としてのアクリル酸エステル樹脂をラジカル重合開始剤で硬化させる樹脂組成には、(メタ)アクリレート系化合物の熱硬化性樹脂組成物や光硬化性樹脂組成物が挙げられる。(メタ)アクリレート系化合物は、粘度調整や硬化成分として用いられる分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートである。この場合の樹脂組成物は、(メタ)アクリレート系化合物と、熱重合開始剤、光重合開始剤、又はその両方を必須成分とする。本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物も同様に(メタ)アクリレート系化合物の熱硬化性樹脂組成物や光硬化性樹脂組成物にすることができる。
【0043】
これらの使用できる(メタ)アクリレート系化合物を具体的に例示すれば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロへキサン−1,4−ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフロフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエトキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリル酸エステル、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフエノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフエノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2ーヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、ポリオール化合物にポリイソシアネート化合物を反応させ、(メタ)アクリレートと反応することで得られるウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ化合物と(メタ)アクリレートの反応で得られるエポキシアクリレート等が挙げられるが、これらに制限されるわけではない。これらの(メタ)アクリレート系化合物を単独又は組み合わせて用いることができる。
【0044】
また、(メタ)アクリレート系化合物の重合開始剤として使用できる化合物としては、加熱や活性エネルギー線光の照射等の手段により、ラジカルを発生させるものであれば特に限定せずに使用することができる。重合開始剤として使用できるこれらの化合物を具体的に例示すれば、加熱により硬化させる場合には、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等のアゾ系、過酸化物系開始剤等の通常のラジカル熱重合に使用できるものはいずれも使用することができる。またラジカル重合を光ラジカル重合によって行う場合、ベンゾイン類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキサイド類等の通常の光ラジカル重合に使用できるものはいずれも使用することができる。これらの重合光開始剤は、単独又は2種以上の混合物として使用でき、さらには、光ラジカル重合開始剤に対しては、第3級アミン類化合物、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等の促進剤等と組み合わせて使用することができる。
【0045】
本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物には必要に応じてフィラーを用いることができる。具体的には水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、焼成タルク、マイカ、クレー、カオリン、水酸化チタン、酸化チタンシリカ粉、ガラス粉末、シリカバルーン、雲母等の無機フィラーが挙げられるが、有機系又は無機系の耐湿顔料、鱗片状顔料等顔料等を配合してもよい。一般的無機充填剤を用いる理由として、耐衝撃性の向上が挙げられる。またガラス繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維等の繊維質充填剤や、微粒子ゴム、熱可塑性エラストマー等の有機充填剤等を配合することができる。
【0046】
また本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物中には、必要に応じて、難燃剤、揺変性付与材、流動性向上剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、分散剤、表面調整剤、カップリング剤等の添加剤を配合してもよい。揺変性付与材としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系等を挙げ類ことができる。さらに必要に応じて、本発明の光学素子用硬化性樹脂組成物には、カルナバワックス、OPワックス等の離型剤、カーボンブラック等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、シリコンオイル等の低応力化剤、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤を配合できる。カップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物は、公知のエポキシ樹脂組成物と同様な方法により成型、硬化して硬化物とすることができる。成型方法、硬化方法は公知のエポキシ樹脂組成物と同様の方法をとることができ、本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物固有の方法は不要である。例えば、樹脂ワニスを作成した後、離形フィルムの上にキャストすることで、シート状樹脂組成物を作成することができる。これを熱又は光で硬化させることで、硬化物とすることができる。
【0048】
また本発明の硬化物は、厚み1mmの硬化物を作成した場合、波長400nmにおける透過率が80%以上であり、黄色度(YI)が5以下である必要がある。波長400nmにおける透過率が80%以下、又はYIが5以上である場合、タッチパネルを液晶ディスプレイに貼り合せた場合に、視認性を低下させるので好ましくない。高分子エポキシ樹脂中のビスフェノールFの骨格が全骨格に対して35〜55モル%の範囲内であり、かつ、その高分子エポキシ樹脂のメチルエチルケトンの50質量%ワニスのハーゼン単位色相が50以下である高分子エポキシ樹脂を本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物に用いれば、厚み1mmの硬化物を作成した場合、波長400nmにおける透過率が80%以上であり、黄色度(YI)が5以下の硬化物が得られる。
【0049】
本発明の透明なシート状接着剤用樹脂組成物は光学特性、粘度特性に優れ、光学シート状接着剤に好適であることが判った。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を具体的に説明するが本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。以下の合成例、実施例、及び比較例に於いて、「部」は質量部を、「%」は質量%をそれぞれ示す。また本発明では以下の試験方法を使用した。
【0051】
(1)重量平均分子量
東ソー株式会社製 TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXLを直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また溶離液にはテトラヒドロフランを用い、1mL/minの流速とし、検出器はRI(示差屈折計)検出器を用いた。試料濃度は1%テトラヒドロフラン溶液で、100μL注入した。標準ポリスチレンによる検量線により重量平均分子量を求めた。
【0052】
(2)粘度
JIS K 7233規格、単一円筒回転粘度計法に準拠して測定した。すなわち、500mLの円筒缶に樹脂400gをはかりとり、25±0.2℃の恒温水槽で5時間放置して恒温にする。回転粘度計のローターを樹脂に浸漬して測定を行う。
【0053】
(3)色数
JIS K 0071規格、ハーゼン単位色数に準拠して測定した。
【0054】
(4)固形分濃度
JIS K 7235規格に準拠して、200℃、1時間の加熱条件で測定した。
【0055】
(5)フィルム性
試験フィルムを目視及び指触にて確認した。フィルム状に形成されたものを○、フィルム状に形成されなかったものを×とした。
【0056】
(6)流動性
樹脂組成物をガラス上に塗布し、60℃、10分間に加熱した後、目視及び指触にて流動するかを確認した。流動したものを○、流動しなかったものを×とした。
【0057】
(7)透過率
分光光度計(日本分光株式会社製、V−650)を使用し、波長400nmでの透過率を測定した。
【0058】
(8)YI値
測色色差計(有限会社東京電色製、TC−1500MC−88)を使用して測定した。
【0059】
合成例、実施例、及び比較例で使用した略号は以下の通りである。
【0060】
(エポキシ樹脂)
YD−128:新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量:187g/eq.
YD−8125:新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量:172g/eq.
YDF−170:新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量:167g/eq.
YDF−8170:新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量:158g/eq.
YD−014:新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量:948g/eq.、軟化点98℃
【0061】
(フェノール化合物)
BPA:新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールA
BPFD:群栄化学工業株式会社製、ビスフェノールF、蒸留タイプ、純度98%以上
【0062】
(反応溶媒)
PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、沸点=145℃、蒸気圧(20℃)=3.8kPa
CPA:シクロペンタノン、沸点=130℃、蒸気圧(20℃)=1.6kPa
NBA:1−ブタノール、沸点=117℃、蒸気圧(20℃)=0.7kPa
TOL:トルエン、沸点=110℃、蒸気圧(20℃)=2.9kPa
CHA:シクロヘキサノン、沸点=155℃、蒸気圧(20℃)=0.45kPa
MEK:メチルエチルケトン、沸点=80℃、蒸気圧(20℃)=9.5kPa
【0063】
(触媒)
TPP−BB:北興化学株式会社製、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド
ETPPI:日本化学工業株式会社製、エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド
DMPP:ケイ・アイ化成株式会社製、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン
【0064】
(酸無水物)
MH−700:新日本理化株式会社製、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物
【0065】
(硬化促進剤)
2PZCNS−PW:四国化成工業株式会社製、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト
2E4MZ:四国化成工業株式会社製、2−エチル−4−メチルイミダゾール
【0066】
(アクリレート系化合物)
DCPA:共栄社化学株式会社製、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート
TMPA:共栄社化学株式会社製、ジトリメチロールプロパントリアクリレート
DPHA:共栄社化学株式会社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
【0067】
(ラジカル重合開始剤)
HCPK:1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン
BPEH:日油株式会社製、t−ブチルパーオキシ−2−エチル−ヘキサノエート(製品名:パーブチルO)
【0068】
合成例1
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、及び冷却管を備えた反応装置にエポキシ樹脂としてYD−128を500部とYDF−170を40部、フェノール化合物としてBPFDを340部、及び反応溶媒としてPMAを145部(固形分濃度85%)仕込み、130℃で溶融混合させた。このときのフェノール性水酸基とエポキシ基のモル比は1:1.069であった。その後、触媒としてTPP−BBを0.34部添加し、160℃まで昇温し、反応を開始した。反応開始後5時間目に反応溶媒としてPMAを129部追加し固形分濃度を75%にして、さらに触媒としてTPP−BBを0.34部追加して、さらに7時間撹拌を続けて反応を行った。反応終了後、反応溶媒としてMEKを547部加えて高分子量エポキシ樹脂のPMA/MEK混合ワニスを得た。得られた混合ワニスを130℃に保持されている真空オーブン中に入れ、オーブンの内部圧力が0.4kPaに到達してから30分間保持して溶剤を除去した後、直ちにMEKで不揮発分を50%希釈して樹脂ワニス1を得た。
【0069】
合成例2
実施例1で使用した装置を用い、エポキシ樹脂としてYD−128を500部、フェノール化合物としてBPFDを192部とBPAを80部、及び反応溶媒としてCPAを86部(固形分濃度90%)仕込み、130℃で溶融混合させた。このときのフェノール性水酸基とエポキシ基のモル比は1:1.020であった。その後、触媒としてTPP−BBを0.27部添加し、155℃まで昇温し、反応を開始した。反応開始後4時間目に反応溶媒としてCPAを107部追加し固形分濃度を80%にして、さらに触媒としてTPP−BBを0.27部追加して、さらに5時間撹拌を続けて反応を行った後、反応溶媒としてCPAを224部追加し固形分濃度を70%にして、さらに5時間撹拌を続けて反応を行った。反応終了後、反応溶媒としてCPAを355部加えて高分子量エポキシ樹脂のCPAワニスを得た。得られたCPAワニスを実施例1と同様の操作を行い樹脂ワニス2を得た。
【0070】
合成例3
実施例1で使用した装置を用い、エポキシ樹脂としてYD−128を500部、フェノール化合物としてBPFDを262部、及び反応溶媒としてPMAを40部(固形分濃度95%)仕込み、130℃で溶融混合させた。このときのフェノール性水酸基とエポキシ基のモル比は1:1.021であった。その後、触媒としてTPP−BBを0.26部添加し、155℃まで昇温し、反応を開始した。反応開始後5時間目に反応溶媒としてPMAを94部追加し固形分濃度を85%にして、さらに触媒としてTPP−BBを0.26部追加して、さらに7時間撹拌を続けて反応を行った。反応終了後、反応溶媒としてMEKを628部加えて高分子量エポキシ樹脂のPMA/MEK混合ワニスを得た。得られた混合ワニスを実施例1と同様の操作を行い樹脂ワニス3を得た。
【0071】
合成例4
実施例1で使用した装置を用い、エポキシ樹脂としてYD−8125を500部、フェノール化合物としてBPFDを290部、及び反応溶媒としてCPAを88部(固形分濃度90%)仕込み、130℃で溶融混合させた。このときのフェノール性水酸基とエポキシ基のモル比は1:1.002であった。その後、触媒としてDMPPを0.29部添加し、155℃まで昇温し、反応を開始した。反応開始後3時間目に反応溶媒としてCPAを110部追加し固形分濃度を80%にして、さらに4時間撹拌を続けて反応を行った後、さらに反応溶媒としてCPAを229部追加し固形分濃度を70%にして、触媒としてDMPPを0.29部追加して、さらに7時間撹拌を続けて反応を行った。反応終了後、反応溶媒としてMEKを355部加えて高分子量エポキシ樹脂のCPA/MEK混合ワニスを得た。得られた混合ワニスを実施例1と同様の操作を行い樹脂ワニス4を得た。
【0072】
合成例5
実施例1で使用した装置を用い、エポキシ樹脂としてYD−128を80部とYD−8125を500部、フェノール化合物としてBPAを370部、及び反応溶媒としてCPAを106部(固形分濃度90%)仕込み、130℃で溶融混合させた。このときのフェノール性水酸基とエポキシ基のモル比は1:1.054であった。その後、触媒としてTPP−BBを0.37部添加し、155℃まで昇温し、反応を開始した。反応開始後5時間目に反応溶媒としてCPAを132部追加し固形分濃度を80%にして、さらに触媒としてTPP−BBを0.37部追加して、さらに5時間撹拌を続けて反応を行った後、反応溶媒としてCPAを275部追加し固形分濃度を70%にして、さらに5時間撹拌を続けて反応を行った。反応終了後、反応溶媒としてMEKを437部加えて高分子量エポキシ樹脂のCPA/MEK混合ワニスを得た。得られた混合ワニスを実施例1と同様の操作を行い樹脂ワニス5を得た。
【0073】
合成例6
実施例1で使用した装置を用い、エポキシ樹脂としてYDF−8170を500部、フェノール化合物としてBPAを350部、及び反応溶媒としてTOLを45部(固形分濃度95%)仕込み、110℃で溶融混合させた。このときのフェノール性水酸基とエポキシ基のモル比は1:1.031であった。その後、触媒としてETPPIを0.35部添加し、140℃まで昇温し、反応を開始した。反応開始後5時間目に反応溶媒としてTOLを105部追加し固形分濃度を85%にして、さらに触媒としてETPPIを0.35部追加して、さらに7時間撹拌を続けて反応を行った。反応終了後、反応溶媒としてMEKを700部加えて高分子量エポキシ樹脂のTOL/MEK混合ワニスを得た。得られた混合ワニスを実施例1と同様の操作を行い樹脂ワニス6を得た。
【0074】
合成例7
実施例1で使用した装置を用い、エポキシ樹脂としてYDF−8170を500部、フェノール化合物としてBPFDを310部、及び反応溶媒としてCPAを90部(固形分濃度90%)仕込み、130℃で溶融混合させた。このときのフェノール性水酸基とエポキシ基のモル比は1:1.021であった。その後、触媒としてDMPPを0.31部添加し、155℃まで昇温し、反応を開始した。反応開始後10時間撹拌を続けて反応を行った。反応終了後、反応溶媒としてMEKを720部加えて高分子量エポキシ樹脂のCPA/MEK混合ワニスを得た。得られた混合ワニスを実施例1と同様の操作を行い樹脂ワニス7を得た。
【0075】
合成例8
実施例1で使用した装置を用い、エポキシ樹脂としてYD−128を500部、フェノール化合物としてBPAを300部、及び反応溶媒としてPMAを343部(固形分濃度70%)仕込み、130℃で溶融混合させた。このときのフェノール性水酸基とエポキシ基のモル比は1:1.016であった。その後、触媒としてDMPPを0.30部添加し、160℃まで昇温し、反応を開始した。反応開始後5時間目に反応溶媒としてPMAを190部追加し固形分濃度を60%にして、触媒としてTPP−BBを0.30部追加して、さらに5時間撹拌を続けて反応を行った後、反応溶媒としてPMAを267部追加し固形分濃度を50%にして、さらに5時間撹拌を続けて反応を行い、高分子量エポキシ樹脂のPMAワニスを得た。得られたPMAワニスを実施例1と同様の操作を行い樹脂ワニス8を得た。
【0076】
合成例9
実施例1で使用した装置を用い、YD−128を500部、BPFを265部、及び反応溶媒としてTOLとNBAとの混合反応溶媒(TOL/NBA=65/35(質量比))を191部を仕込み、80℃で溶融混合させた。このときのフェノール性水酸基とエポキシ基のモル比は1:1.021であった。その後、触媒として48.7%NaOH水溶液を3.8部添加して反応を開始した。粘度の上昇に合わせて順次、前記TOL/NBA混合反応溶媒で希釈して最終的には固形分濃度を50%にして合計12時間反応を行った。その後、前記TOL/NBA混合反応溶媒で希釈して固形分濃度を40%にした後、純水200部、シュウ酸2.9部を加えて中和・分液を行い、さらに2000部の純水を加え、水洗・分液を行い、脱水、濾過して高分子量エポキシ樹脂のTOL/NBA混合ワニスを得た。得られた混合ワニスを実施例1と同様の操作を行い樹脂ワニス9を得た。
【0077】
合成例10
合成例6の条件で、反応溶媒のみTOLからMEKに変更し、それ以外は同じ条件で合成を行った。すなわち、実施例1で使用した装置を用い、エポキシ樹脂としてYDF−8170を500部、フェノール化合物としてBPAを350部、及び反応溶媒としてTOLを45部(固形分濃度95%)仕込み、110℃で溶融混合させた。このときのフェノール性水酸基とエポキシ基のモル比は1:1.031であった。その後、触媒としてETPPIを0.35部添加し、還流温度まで昇温し、反応を開始した。しかし、系中の温度が110℃までしか上がらず、還流温度で20時間撹拌を続けたが、高分子量エポキシ樹脂を得る事ができなかった。最終重量平均分子量は5500だった。
【0078】
合成例11
合成例6の条件で、反応時の固形分濃度のみを95%から25%に変更し、それ以外は同じ条件で合成を行った。すなわち、実施例1で使用した装置を用い、エポキシ樹脂としてYD−128を500部、フェノール化合物としてBPFDを262部、及び反応溶媒としてPMAを2286部(固形分濃度25%)仕込み、130℃で溶融混合させた。このときのフェノール性水酸基とエポキシ基のモル比は1:1.021であった。その後、触媒としてTPP−BBを0.26部添加し、還流温度の145℃まで昇温し、反応を開始した。そのまま還流温度で20時間撹拌を続けたが、高分子量エポキシ樹脂を得る事ができなかった。最終重量平均分子量は15800だった。
【0079】
合成例12
合成例2の条件で、反応溶媒のみCPAからCHAに変更し、それ以外は同じ条件で合成を行った。すなわち、実施例1で使用した装置を用い、エポキシ樹脂としてYD−128を500部、フェノール化合物としてBPFDを192部とBPAを80部、及び反応溶媒としてCHAを86部(固形分濃度90%)仕込み、130℃で溶融混合させた。このときのフェノール性水酸基とエポキシ基のモル比は1:1.020であった。その後、触媒としてTPP−BBを0.27部添加し、155℃まで昇温し、反応を開始した。反応液の粘度は上がったため、反応開始後2時間目に反応溶媒としてCHAを107部追加し固形分濃度を80%にした。さらに5時間撹拌を続けて反応を行った後、反応溶媒としてCHAを224部追加し固形分濃度を70%にして、さらに触媒としてTPP−BBを0.27部追加して、さらに5時間撹拌を続けて反応を行った。反応終了後、反応溶媒としてCHAを355部加えて高分子量エポキシ樹脂のCHAワニスを得た。得られたCHAワニスを実施例1と同様の操作を行い樹脂ワニス12を得た。
【0080】
合成例1〜9及び12で得られた樹脂ワニス1〜9及び12の性状を表1に示す。項目「BPF骨格含有量(モル%)」は、原料エポキシ樹脂及びフェノール化合物の総モル量に対するビスフェノールF骨格を有するエポキシ樹脂及びフェノール化合物の合計モル量よりその含有量を計算した。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例1〜8、比較例1〜4
表2に示す配合で高分子エポキシ樹脂を含む樹脂組成物を得た。なお、表中の値は全て質量部である。同樹脂組成物を離型フィルム(PET製)へ溶剤乾燥後の樹脂厚みが60μmになるようにバーコーターにて塗布し、オーブン内で50℃で60分間乾燥させて、シート状接着剤を得た。得られたシート状接着剤でフィルム性を確認した。また得られたシート状接着剤を複数枚重ね合わせ、1mm厚のフッ素樹脂のスペーサーを介して鉄板に挟み、真空プレス装置にて成形を行い、厚み1mmの平板試験片を得た。得られた平板試験片で、透過率とYI値を測定した。なお、比較例4で得たシート状接着剤には溶剤臭が残り、べたつきもあって、フィルム性がなかったため、透過率とYI値測定用の厚み1mmの平板試験片が得られなかった。得られた樹脂組成物、及び硬化物の性状を表3に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
実施例9〜16
表4に示す配合で高分子エポキシ樹脂を含む樹脂組成物を得た。なお、表中の値は全て質量部である。実施例1と同様の操作でシート状接着剤を得た。また得られたシート状接着剤を複数枚重ね合わせ、1mm厚のフッ素樹脂製のスペーサーを介して鉄板に挟み、真空プレス装置にて成形を行い、1mmに厚みを調整した後、積算光量30kJ/mとなるように紫外線を照射して、厚み1mmの平板試験片を得た。実施例1と同様の評価を行った。得られた樹脂組成物、及び硬化物の性状を表5に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
表3、表5から明らかなように、本発明の樹脂組成物は透明なシート状接着剤に好適である。