【文献】
Food Sci. Technol. Res.,2006年11月,Vol.12 No.4,p.261-269
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、製造方法が煩雑で費用がかさむため、消費者の要望を十分に満足できるものとは言い難かった。
また、近年、発明者等は、消費者の食欲を惹起するような新たな独特の風味を鋭意追求してきた。その結果、胡麻本来の香りが液状調味料中で長期間に渡って維持させるだけでは、消費者の食欲を惹起するような新たな独特の風味が得られないことが判明してきている。
したがって、本発明の目的は、液状調味料中において胡麻本来の香りを長期間に渡って維持させるに留まらず、消費者がやみつきになりクセになるような独特の芳香を有する胡麻含有液体調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、直鎖型アルカンチオール又はジメチルピラジン類をそれぞれ単独で胡麻含有液状調味料に含有させたとしても、やみつきになりクセになる独特の芳香を付与することができなかった。しかしながら、本発明者は、驚くべきことに、胡麻含有液状調味料において直鎖型アルカンチオール及びジメチルピラジン類を特定比又は特定量で組み合わせることで、胡麻特有の芳香が増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香が感じられることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明の第1の態様によれば、
胡麻を含有する液状調味料であって、
直鎖型アルカンチオールと、2,5−ジメチルピラジン及び2,6−ジメチルピラジンの少なくとも1種であるジメチルピラジン類とを含み、
前記液状調味料の香気成分を固相マイクロ抽出−ガスクロマトグラフ質量分析法で測定した場合、前記直鎖型アルカンチオールのピーク面積の前記ジメチルピラジン類のピーク面積に対する比が、0.05以上1.0未満である、液状調味料が提供される。
【0008】
また、本発明の第2の態様によれば、
胡麻を含有する液状調味料であって、
直鎖型アルカンチオールと、2,5−ジメチルピラジン及び2,6−ジメチルピラジンの少なくとも1種であるジメチルピラジン類とを含み、
前記直鎖型アルカンチオールの含有量が、前記液状調味料の全量に対して、40ppb以上500ppb以下である、液状調味料が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様においては、前記ジメチルピラジン類の含有量が、前記液状調味料の全量に対して、10ppb以上800ppb以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の第1及び第2の態様においては、
前記液状調味料の香気成分を固相マイクロ抽出−ガスクロマトグラフ質量分析法で測定した場合、前記直鎖型アルカンチオールのピーク面積の前記ジメチルピラジン類のピーク面積に対する比が、0.06以上0.8以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の第1及び第2の態様においては、
前記直鎖型アルカンチオールの含有量が、前記液状調味料の全量に対して、50ppb以上400ppb以下であり、
前記ジメチルピラジン類の含有量が、前記液状調味料の全量に対して、50ppb以上500ppb以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の第1及び第2の態様においては、前記胡麻の含有量が、前記液状調味料の全量に対して、1〜40質量%であることが好ましい。
【0013】
本発明の第1及び第2の態様においては、上記液状調味料が水中油型乳化液状調味料であることが好ましい。
【0014】
本発明の第1及び第2の態様においては、上記液状調味料が酵母エキスをさらに含有することが好ましい。
【0015】
本発明の第1及び第2の態様においては、前記酵母エキスの含有量が、前記液状調味料の全量に対して、0.01〜2質量%であることが好ましい。
【0016】
本発明の第1及び第2の態様においては、前記酵母エキス(質量%)/直鎖型アルカンチオールとジメチルピラジン類の総含有量(ppb)が0.00005〜0.01であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の液状調味料は、直鎖型アルカンチオールと、ジメチルピラジン類とが特定比もしくは特定量で含まれていることで、胡麻の芳香との相互作用により、胡麻特有の芳香が増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香が感じられる。これにより、消費者の食欲を惹起することができ、胡麻含有液状調味料を配合した加工食品市場のさらなる拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<液状調味料>
本発明の胡麻を含有する液状調味料は、下記の特定の香気成分を含むものである。液状調味料の種類に応じて、酢酸などの酸材、醤油、砂糖、味噌などの調味料、食用油脂、乳化剤、及び他の原料等をさらに含んでもよい。本発明の液状調味料は、下記の特定の香気成分を特定比又は特定量で組み合わせて含むことで、胡麻特有の芳香が増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香が感じられる。
【0019】
(香気成分)
本発明の液状調味料は、直鎖型アルカンチオールとジメチルピラジン類とが特定比又は特定量で含まれるものである。本発明では、このような香気成分のバランスにより、胡麻含有液状調味料において、胡麻特有の芳香が増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香が感じられる。本発明の液状調味料は、直鎖型アルカンチオールとジメチルピラジン類と以外にも、通常の胡麻含有液状調味料において含まれる香気成分を含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で更なる他の香気成分を含んでもよい。
【0020】
直鎖型アルカンチオールとしては、好ましくはアルカンの炭素数が1〜6のアルカンチオール、すなわち、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオールが挙げられる。これらの中でも、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオールがより好ましく、メタンチオール、エタンチオールがさらに好ましく、メタンチオールが特に好ましい。直鎖型アルカンチオールは、これらの1種のみが含まれてもよいし、2種以上が含まれてもよい。直鎖型アルカンチオールが2種以上含まれる場合、下記のピーク面積及び含有量は、直鎖型アルカンチオール全部の合計値である。なお、メタンチオール、エタンチオールは、単独ではタマネギ等のにおいに類似した刺激臭を有する。
【0021】
本発明において、ジメチルピラジン類とは、2,5−ジメチルピラジンと2,6−ジメチルピラジンを指し、両成分は類似した香りを有する。液状調味料には、ジメチルピラジン類として、これらの1種のみが含まれてもよいし、2種が含まれてもよい。2,5−ジメチルピラジン及び2,6−ジメチルピラジンの両方が含まれる場合、下記のピーク面積及び含有量は、これらの両方の合計値である。
【0022】
本発明の液状調味料は、香気成分を下記で詳述する固相マイクロ抽出−ガスクロマトグラフ質量分析法で測定した場合に、直鎖型アルカンチオールのピーク面積のジメチルピラジン類のピーク面積に対する比(直鎖型アルカンチオールのピーク面積/ジメチルピラジン類のピーク面積)は、好ましくは0.05以上1.0未満であり、より好ましくは0.06以上0.8以下であり、さらに好ましくは0.07以上0.5以下である。直鎖型アルカンチオールのピーク面積のジメチルピラジン類のピーク面積に対する比が上記範囲内であれば、液状調味料において胡麻特有の芳香が増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香が強く感じられる。
【0023】
液状調味料中の直鎖型アルカンチオールの含有量は、好ましくは40ppb以上500ppb以下であり、より好ましくは50ppb以上400ppb以下であり、さらに好ましくは60ppb以上300ppb以下であり、さらにより好ましくは70ppb以上200ppb以下である。
液状調味料中のジメチルピラジン類の含有量は、好ましくは10ppb以上800ppb以下であり、より好ましくは50ppb以上500ppb以下であり、さらに好ましくは80ppb以上400ppb以下であり、好ましくは100ppb以上300ppb以下である。
直鎖型アルカンチオール及びジメチルピラジン類の含有量が上記範囲内であれば、液状調味料において胡麻特有の芳香が増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香が強く感じられる。なお、液状調味料中の直鎖型アルカンチオール及びジメチルピラジン類の含有量は、常法に従い、ガスクロマトグラフィーを用いて測定、算出することができ、例えば、固相マイクロ抽出−ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME−GC−MS)で測定することができる。
【0024】
液状調味料の直鎖型アルカンチオールとジメチルピラジン類の比や含有量を調節する方法は、特に限定されないが、例えば、液状調味料に、直鎖型アルカンチオールとジメチルピラジン類をそれぞれ香料として添加してもよいし、直鎖型アルカンチオールとジメチルピラジン類が含まれる食品や食品添加物を配合する方法が挙げられる。
【0025】
なお、液状調味料中の直鎖型アルカンチオールとジメチルピラジン類のそれぞれが同一量であっても、固相マイクロ抽出−ガスクロマトグラフ質量分析法の特性上、得られるピーク面積は異なる。その理由の一例として、2成分の揮発性の違いや他の試料中の成分との親和性の差などにより、気相中に揮発してくる成分量は異なることが挙げられる。その他、測定法の特性による種々の要因からピーク面積から算出する比率と定量値から算出する比率とは、数値が異なる。
【0026】
(香気成分の測定方法)
本発明の液状調味料の香気成分は、以下の条件に従って、固相マイクロ抽出−ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME−GC−MS)で測定することができる。
<分析条件>
(1)香気成分の分離濃縮方法
SPMEファイバーと揮発性成分抽出装置を用い、以下の条件に従って、固相マイクロ抽出法で香気成分の分離濃縮を行う。
<固相マイクロ抽出条件>
・SPMEファイバー:外側に膜厚50μmのジビニルベンゼン分散ポリジメチルシロキサン層、内側に膜厚30μmのCarboxen分散ポリジメチルシロキサン層を有する、2層積層コーティングされたSPMEファイバー(製品名:StableFlex 50/30μm、DVB/Carboxen/PDMS(Sigma−Aldrich社製))
・揮発性成分抽出装置:Combi PAL、CTC Analitics製
・予備加温:40℃,15min
・攪拌速度:300rpm
・揮発性成分抽出:40℃,20min
・脱着時間:10min
(2)香気成分の測定方法
ガスクロマトグラフ法及び質量分析法を用い、以下の条件に従って、液状調味料中の直鎖型アルカンチオール及びジメチルピラジン類の各ピーク面積を測定する。また、直鎖型アルカンチオールの含有量及びジメチルピラジン類の含有量は、直鎖型アルカンチオール及びジメチルピラジン類の標準品を添加したサンプルを同様に測定し、得られたガスクロマトグラムにおける直鎖型アルカンチオール及びジメチルピラジン類のピーク面積から含有量を定量する。
なお、各成分の定量イオン質量は以下の通りである。
・メタンチオール定量イオン質量m/z47
・エタンチオール定量イオン質量m/z62
・ブタンチオール定量イオン質量m/z56
・プロンパンチオール定量イオン質量m/z76
・2,5−ジメチルピラジン定量イオン質量m/z108
・2,6−ジメチルピラジン定量イオン質量m/z108
<ガスクロマトグラフ条件>
・測定機器:Agilent 6890N(Agilent Technologies社製)
・カラム:素材内壁にポリエチレングリコールからなる液相を膜厚0.25μmでコーティングしたキャピラリーカラム 長さ30m、口径0.25mm、膜厚0.25μm(製品名:SOLGEL−WAX(SGE社製) 長さ30m、口径0.25mm、膜厚0.25μm)
・温度条件:35℃(5min)保持→120℃まで5℃/min昇温→220℃まで15℃/min昇温: 6min保持
・キャリアー:Heガス、ガス流量:1.0mL/min
・インジェクション方法:パルスド・スプリットレス:
スプリットレス 1.5min保持 → パージ50mL/min
パルス圧100kPa 1.6 min保持 → 47kPa
(スタート時)
・インレット温度:250℃
・ワークステションMSD ChemStation Build 75 (Agilent Technologies, Inc.)
<質量分析条件>
・質量分析計:四重極型質量分析計(製品名:Agilent 5973N(Agilent Technologies社製))
・スキャン質量m/z 29.0〜290.0
・イオン化方式EI(イオン化電圧70eV)
なお、信号強度が低い場合等は、スキャン測定ではなく、SIM(選択イオンモニタリング)測定を行っても良い。
また、測定装置は上記に限られず、例えばAgilent 7890B、Agilent 5977Sなどを使用してもよく、使用する測定機器の仕様に合わせて条件を適宜調整し測定することができる。
【0027】
(胡麻)
本発明の液状調味料に用いる胡麻の含有量は、胡麻特有の芳香を有すれば特に限定されないが、1〜40質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましく、3〜15質量%が特に好ましい。胡麻の含有量が1質量%以上であれば、作り立ての時点から胡麻特有の芳香を強く有することができる。40質量%以下であれば、胡麻特有の芳香を増強する効果をより発揮することができる。
【0028】
本発明で用いる胡麻は、特に限定されないが、原料胡麻としては、白胡麻、金胡麻、黒胡麻、茶胡麻等が挙げられる。これらの胡麻を常法により焙煎した焙煎胡麻を用いることが好ましく、具体的には、外種皮付のゴマを、直火式、あるいは、遠赤外線式等の焙煎釜で焙煎したもの等が挙げられる。また、本発明で用いる胡麻の形態は、特に限定されず、ホール状でも、石臼、コロイドミル、フードカッター、マイルダー、ロール粉砕器等により粉砕処理されたものでもよい。
【0029】
(酵母エキス)
本発明の液状調味料は、酵母エキスをさらに配合することで、胡麻特有の芳香がより増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香がより強く感じられる。ここで、酵母エキスとは、原料となる酵母体を自己消化や酵素添加等により分解してエキス化したものをいう。原料となる酵母体としては、ビール製造時に副生する余剰酵母であるいわゆるビール酵母や、パン製造時に使用されるパン酵母あるいは食用に生産されるトルラ酵母、日本酒製造時に使用される酒酵母、ワイン製造に使用されるワイン酵母、醤油製造時に使用される醤油酵母等が挙げられる。このような酵母エキスとしては、粉末状、ペースト状、液状のものが市販されており、これら市販品を用いることができる。
【0030】
本発明の液状調味料に用いる酵母エキスの含有量は、乾燥重量として、0.01〜2質量%が好ましく、0.05質量%〜1.5質量がより好ましく、0.10質量%〜1.0質量%が特に好ましい。酵母エキスの含有量が前記範囲内であれば、胡麻特有の芳香がより増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香がより強く感じられる。
【0031】
本発明の液状調味料においては、酵母エキス(質量%)/直鎖型アルカンチオールとジメチルピラジン類の総含有量(ppb)が0.00005〜0.01であることが好ましく、0.0001〜0.008であることがより好ましく、0.0002〜0.005であることがさらに好ましい。酵母エキス(質量%)/直鎖型アルカンチオールとジメチルピラジン類の総含有量(ppb)が前記範囲内であれば、胡麻特有の芳香がより増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香がより強く感じられる。
【0032】
(酢酸)
本発明の液状調味料は、酢酸を配合することで、酸性の液状調味料にすることができる。本発明の液状調味料のpHは、pHを低下させて酸味を際立たせたとしても、胡麻の芳香の保持効果が得られることから、より低いpHで効果を発揮することができる。pHは3.0〜6.5が好ましく、3.3〜5.5がより好ましく、3.8〜4.6が特に好ましい。pHが3.0以上であれば、酸味を際立たせたとしても胡麻の芳香を保持することができる。pHが6.5以下であれば、酸味により胡麻の芳香を引き立てることができる。
【0033】
本発明の液状調味料に用いる酢酸の配合量は、0.1〜1質量%が好ましく、0.2〜0.9質量%がより好ましく、0.4〜0.8質量%がさらに好ましい。酢酸の配合量が0.1質量%以上であれば、上記特定の香気成分との相乗効果が得られ易い。1質量%以下であれば、酢酸の酸味が立ちすぎることなく胡麻の芳香を付与できる。
【0034】
(酸材)
本発明の液状調味料は、酢酸以外にも他の酸材を加えてもよい。酸材としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ソルビン酸、安息香酸、アジピン酸、フマル酸、コハク酸等の有機酸及びそれらの塩、燐酸、塩酸等の無機酸及びそれらの塩、レモン果汁、リンゴ果汁、オレンジ果汁、乳酸発酵乳等を用いることができる。酸材の含有量は、特に限定されず、適宜調節することができる。
【0035】
(粘度)
本発明の液状調味料の粘度は、0.1〜1000Pa・s、好ましくは0.1〜800Pa・s、より好ましくは0.3〜800Pa・sである。まず、液状調味料に0.1Pa・s以上1000Pa・sの粘度を付与することで、舌が胡麻含有液状調味料の粘着性をより知覚することができる。そして、舌で知覚した粘着性と、上記香気成分との相乗効果により、液状調味料を舌の上に含んだ後、胡麻特有の芳香が鼻腔を上昇する際(口腔香気)に、焙煎胡麻の甘い香り及び焙煎胡麻の擂り立ての香りをより感じさせることができる。
【0036】
(水中油型乳化液状調味料)
本発明の液状調味料は、水中油型乳化液状調味料であることが好ましい。食用油脂を乳化分散し、本発明の香気成分を油滴の中に封じ込めることで、焙煎胡麻の甘い香り及び焙煎胡麻の擂り立ての香りを増強することができる。
【0037】
水中油型乳化液状調味料とは、例えば、清水に酢酸及びクエン酸等の酸材と、澱粉、ガム類、卵黄、及びショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤とを混合した後、ミキサー等で攪拌しながら、油脂を注加して粗乳化し、次にせん断力に優れた処理機等で均質化したものである。
【0038】
(食用油脂)
本発明の液状調味料に用いる食用油脂の配合量は、本発明の香気成分を油滴の中に封じ込められる量を配合すれば良く、1〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、15〜50質量%が特に好ましい。
【0039】
本発明に用いる食用油脂は、特に限定されないが、具体的には、例えば、菜種油、大豆油、パーム油、綿実油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、魚油、牛脂、豚脂、鶏脂、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂等を用いることができる。好ましくは、菜種油、大豆油又はパーム油を含有し、より好ましくはパーム油を含有する。
【0040】
食用油脂の測定方法は、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」(平成11年4月26日衛新第13号)に開示されている、エーテル抽出法に基づいて行う。
【0041】
(乳化剤)
本発明の水中油型乳化液状調味料に用いる乳化剤としては、卵黄を用いることが好ましい。卵黄の配合量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。卵黄の配合量が0.1質量%以上であれば、水中油型乳化液状調味料が乳化状態を十分に維持することができる。卵黄の配合量が20質量%以下であれば、卵黄の風味が強くなり過ぎず、胡麻の芳香を保持することができる。なお、卵黄の配合量は、鶏卵を割卵して得られる液卵黄で換算したものであり、液卵黄中のコレステロール含有量が1.4質量%であることから、日本国厚生労働省が平成11年4月26日付けで発行した衛新第13号「4コレステロール」の「(1)ガスクロマトグラフ法」に示されているコレステロール測定方法に準じて測定することができる。
【0042】
さらに、上記卵黄は、食用油脂を水中油型乳化液状調味料中に分散させるにあたり、長期保管後の分離抑制効果が得られ易く、ひいては風味の保持効果も高いことから、ホスフォリパーゼA処理された卵黄又は乾燥卵黄を用いることがより好ましい。
【0043】
(他の原料)
本発明の液状調味料は、上述した原料以外に、本発明の効果を損なわない範囲で液状調味料に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、醤油、みりん、食塩、グルタミン酸ナトリウム、ブイヨン等の調味料、ぶどう糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、オリゴ糖、トレハロース等の糖類、からし粉、胡椒等の香辛料、レシチン、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸化澱粉等の乳化剤、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム等の増粘剤、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、静菌剤等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0045】
<液状調味料の製造例1>
[実施例1〜3及び比較例1]
下記の配合割合に準じ、本発明の胡麻含有液状調味料を製造した。すなわち、まず、攪拌タンクに醤油、食酢、砂糖、ホスフォリパーゼA処理された卵黄、グアーガム、キサンタンガム、焙煎すり胡麻、香料、及び清水を投入して均一に混合することにより水相を調製した。次に、ミキサーに得られた水相を投入し、次いで、攪拌しながら油相である大豆油を注加して乳化処理することにより、胡麻含有水中油型乳化液状調味料を製した。続いて、得られた水中油型乳化液状調味料に、下記表1の含有量になるように直鎖型アルカンチオール(メタンチオール)及びジメチルピラジン類(2,5−ジメチルピラジンと2,6−ジメチルピラジン)を含有する香料を添加して、胡麻含有液状調味料を得た。得られた胡麻含有液状調味料を蓋付きPET容器に250ml容量ずつ充填して密栓し、容器入り胡麻含有液状調味料を製した。なお、得られた胡麻含有液状調味料の粘度は、0.8Pa・s(20℃)であった。
【0046】
<胡麻含有液状調味料の配合割合>
大豆油 35質量%
醤油 7質量%
食酢(酸度4%) 15質量%
砂糖 10質量%
ホスフォリパーゼA処理された卵黄 0.2質量%
グアーガム 0.2質量%
キサンタンガム 0.2質量%
焙煎すり胡麻 5質量%
香料 適量
清水 残余
―――――――――――――――――――――――
合計 100質量%
【0047】
(直鎖型アルカンチオールのピーク面積のジメチルピラジン類のピーク面積に対する比の測定方法)
得られた胡麻含有液状調味料の香気成分を上記で詳述した固相マイクロ抽出−ガスクロマトグラフ質量分析法で測定し、得られたガスクロマトグラムにおいて直鎖型アルカンチオール及びジメチルピラジン類のピーク面積をそれぞれ測定し、直鎖型アルカンチオールのピーク面積のジメチルピラジン類のピーク面積に対する比を算出し、表1に示した。
【0048】
(直鎖型アルカンチオール及びジメチルピラジン類の含有量の測定方法)
得られた胡麻含有液状調味料に、一定量の直鎖型アルカンチオールの標準品を添加して、サンプルを調製した。サンプルの香気成分を上記で詳述した固相マイクロ抽出−ガスクロマトグラフ質量分析法で測定し、得られたガスクロマトグラムにおける直鎖型アルカンチオールのピーク面積から直鎖型アルカンチオールの含有量を定量し、表1に示した。
ジメチルピラジン類の含有量についても、直鎖型アルカンチオールと同様に定量し、表1に示した。
【0049】
<液状調味料の官能評価>
上記で製造した容器入り胡麻含有液状調味料について、下記の基準に従って十分に訓練されたパネルによる官能評価を行った。官能評価の結果は表1に示すとおりであった。
[評価基準]
5:胡麻特有の芳香が増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香が強く感じられた。
4:胡麻特有の芳香が増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香が感じられた。
3:胡麻特有の芳香が多少増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香はやや弱いが十分に感じられた。
2:胡麻特有の芳香がほとんど増強されておらず、やみつきになりクセになる独特の芳香はほとんど感じられなかった。
1:胡麻特有の芳香が弱く、やみつきになりクセになる独特の芳香は全く感じられなかった。
【0050】
【表1】
【0051】
<液状調味料の製造例2>
[実施例4〜12及び比較例2〜3]
市販のフレンチドレッシング(キユーピー(株)製フレンチドレッシング(白))10gに、焙煎擂り胡麻を0.5g及び香料を適量配合し、均一になるまで攪拌混合して胡麻含有水中油型乳化液状調味料を調製した。続いて、得られた水中油型乳化液状調味料に、直鎖型アルカンチオール(メタンチオール)及びジメチルピラジン類(2,5−ジメチルピラジンと2,6−ジメチルピラジン)を含有する香料を適宜添加して、胡麻含有液状調味料を得た。得られた胡麻含有液状調味料を、上記と同様の方法で、直鎖型アルカンチオールのピーク面積のジメチルピラジン類のピーク面積に対する比、直鎖型アルカンチオール及びジメチルピラジン類の含有量を測定した。また、上記と同様に官能評価を行った。測定結果を表2に示した。
【0052】
【表2】
【0053】
<液状調味料の製造例3>
[実施例13〜15]
直鎖型アルカンチオールの種類を変更した以外は実施例6と同様にして、胡麻含有液状調味料を得た。得られた胡麻含有液状調味料を、上記と同様の方法で、直鎖型アルカンチオールのピーク面積のジメチルピラジン類のピーク面積に対する比、直鎖型アルカンチオール及びジメチルピラジン類の含有量を測定した。また、上記と同様に官能評価を行った。測定結果を表3に示した。
【0054】
【表3】
【0055】
上記の官能評価の結果、直鎖型アルカンチオール及びジメチルピラジン類の両方を特定比又は特定量で含む胡麻含有液状調味料は、胡麻特有の芳香が増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香が感じられた。一方、香気成分中に直鎖型アルカンチオール及びジメチルピラジン類の両方が含まれる胡麻含有液状調味料であっても、香気成分中の両者の比又は含有量が特定の範囲外であると、胡麻特有の芳香が弱く、やみつきになりクセになる独特の芳香を感じられなかった。したがって、意外にも、胡麻含有液状調味料において、香気成分中に直鎖型アルカンチオール及びジメチルピラジン類が特定比又は特定量で含まれることにより、胡麻特有の芳香が増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香が感じられることが示された。
【0056】
<液状調味料の製造例4>
市販の酵母エキスを下記表4の含有量になるように配合した以外は実施例6と同様にして、胡麻含有液状調味料を得た。得られた胡麻含有液状調味料を、上記と同様の方法で、直鎖型アルカンチオールのピーク面積のジメチルピラジン類のピーク面積に対する比、直鎖型アルカンチオール及びジメチルピラジン類の含有量を測定した。測定結果を表4に示した。
【0057】
【表4】
【0058】
実施例16および17で得られた胡麻含有液状調味料の官能評価を行った結果、実施例6で得られた胡麻含有液状調味料と比べて胡麻特有の芳香がより増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香がより強く感じられた。また、実施例18および19で得られた胡麻含有液状調味料の官能評価を行った結果、実施例6で得られた胡麻含有液状調味料と比べて胡麻特有の芳香がより増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香がより強く感じられたが、実施例16および17で得られた胡麻含有液状調味料と比べて、胡麻特有の芳香及び独特の芳香が若干弱く感じられた。
[解決手段]本発明は、胡麻を含有する液状調味料であって、直鎖型アルカンチオールと、2,5−ジメチルピラジン及び2,6−ジメチルピラジンの少なくとも1種であるジメチルピラジン類とを含み、前記液状調味料の香気成分を固相マイクロ抽出−ガスクロマトグラフ質量分析法で測定した場合、前記直鎖型アルカンチオールのピーク面積の前記ジメチルピラジン類のピーク面積に対する比が、0.05以上1.0未満である。このような液状調味料は、胡麻特有の芳香が増強されるとともに、やみつきになりクセになる独特の芳香が感じられる。