(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記使用判別手段は、装置運転ログ、および、プロセスログに基づいて、装置コンディションが変化しているか否かを判別する、ことを特徴とする請求項1に記載の処理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような処理システムでは、精度向上のため、学習機能を搭載したものがある。しかし、学習機能を搭載した処理システムを使用する際には、使用者が、学習機能を使用することを選択し、さらに過去の処理条件、処理結果に関する情報が蓄積された学習履歴ファイルを選択する作業が必要であり、使いづらい(手間がかかる)という問題がある。また、使用者が、学習履歴ファイルの選択を誤ると、計算結果が誤ったものとなり、処理結果の精度が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、精度良く、使いやすい処理システム、処理方法、及び、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる処理システムは、
処理室内に収容された被処理体の処理内容に応じた処理条件を記憶する処理条件記憶手段と、
前記処理条件記憶手段により記憶された処理条件に関する学習履歴ファイルを記憶する学習履歴ファイル記憶手段と、
前記処理条件の変化と、処理結果の変化との関係を示す処理変化モデルを記憶する処理変化モデル記憶手段と、
前記被処理体の目標とする処理結果に関する情報を受信する処理情報受信手段と、
前記処理情報受信手段により受信された目標とする処理結果に関する情報と、前記処理条件記憶手段により記憶された処理条件とに基づいて、必要な処理条件を特定する処理条件特定手段と、
前記処理条件特定手段により特定された処理条件で処理した処理結果が、前記処理情報受信手段により受信された目標とする処理結果に関する情報の許容範囲内か否かを判別する処理結果判別手段と、
前記処理結果判別手段により許容範囲内でないと判別されると、前記学習履歴ファイル記憶手段により記憶された学習履歴ファイルから、少なくとも一部が同一の処理条件が記憶された学習履歴ファイルを特定し、該特定した学習履歴ファイルが作成された時から、装置コンディションの少なくとも一部が変化しているか否かにより、当該学習履歴ファイルを使用するか否かを判別する使用判別手段と、
前記使用判別手段により学習履歴ファイルを使用すると判別されると、前記学習履歴ファイル記憶手段により記憶された学習履歴ファイルから特定した学習履歴ファイルを決定する学習履歴ファイル決定手段と、
前記処理条件特定手段により特定された処理条件と、前記学習履歴ファイル決定手段により決定された学習履歴ファイルと、前記処理変化モデル記憶手段に記憶された処理変化モデルとに基づいて、前記目標とする処理結果に近い処理条件を算出する処理条件算出手段と、
前記処理条件算出手段により算出された処理条件を前記処理条件特定手段により特定された処理条件に更新する処理条件更新手段と、
を備える、ことを特徴とする処理システム。
【0008】
前記使用判別手段は、例えば、装置運転ログ、および、プロセスログに基づいて、装置コンディションが変化しているか否かを判別する。
【0009】
例えば、前記処理内容は成膜処理であり、
前記処理結果は前記被処理体に形成された薄膜の膜厚または膜中不純物濃度である。
【0010】
本発明の第2の観点にかかる処理方法は、
処理室内に収容された被処理体の処理内容に応じた処理条件を記憶する処理条件記憶工程と、
前記処理条件記憶工程で記憶された処理条件に関する学習履歴ファイルを記憶する学習履歴ファイル記憶工程と、
前記処理条件の変化と、処理結果の変化との関係を示す処理変化モデルを記憶する処理変化モデル記憶工程と、
前記被処理体の目標とする処理結果に関する情報を受信する処理情報受信工程と、
前記処理情報受信工程で受信された目標とする処理結果に関する情報と、前記処理条件記憶工程で記憶された処理条件とに基づいて、必要な処理条件を特定する処理条件特定工程と、
前記処理条件特定工程で特定された処理条件で処理した処理結果が、前記処理情報受信工程で受信された目標とする処理結果に関する情報の許容範囲内か否かを判別する処理結果判別工程と、
前記処理結果判別工程で許容範囲内でないと判別されると、前記学習履歴ファイル記憶工程で記憶された学習履歴ファイルから、少なくとも一部が同一の処理条件が記憶された学習履歴ファイルを特定し、該特定した学習履歴ファイルが作成された時から、装置コンディションの少なくとも一部が変化しているか否かにより、当該学習履歴ファイルを使用するか否かを判別する使用判別工程と、
前記使用判別工程で学習履歴ファイルを使用すると判別されると、前記学習履歴ファイル記憶工程で記憶された学習履歴ファイルから特定した学習履歴ファイルを決定する学習履歴ファイル決定工程と、
前記処理条件特定工程で特定された処理条件と、前記学習履歴ファイル決定工程で決定された学習履歴ファイルと、前記処理変化モデル記憶工程で記憶された処理変化モデルとに基づいて、前記目標とする処理結果に近い処理条件を算出する処理条件算出工程と、
前記処理条件算出工程で算出された処理条件を前記処理条件特定工程で特定された処理条件に更新する処理条件更新工程と、
を備える、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の観点にかかるプログラムは、
コンピュータを、
処理室内に収容された被処理体の処理内容に応じた処理条件を記憶する処理条件記憶手段、
前記処理条件記憶手段により記憶された処理条件に関する学習履歴ファイルを記憶する学習履歴ファイル記憶手段、
前記処理条件の変化と、処理結果の変化との関係を示す処理変化モデルを記憶する処理変化モデル記憶手段、
前記被処理体の目標とする処理結果に関する情報を受信する処理情報受信手段、
前記処理情報受信手段により受信された目標とする処理結果に関する情報と、前記処理条件記憶手段により記憶された処理条件とに基づいて、必要な処理条件を特定する処理条件特定手段、
前記処理条件特定手段により特定された処理条件で処理した処理結果が、前記処理情報受信手段により受信された目標とする処理結果に関する情報の許容範囲内か否かを判別する処理結果判別手段、
前記処理結果判別手段により許容範囲内でないと判別されると、前記学習履歴ファイル記憶手段により記憶された学習履歴ファイルから、少なくとも一部が同一の処理条件が記憶された学習履歴ファイルを特定し、該特定した学習履歴ファイルが作成された時から、装置コンディションの少なくとも一部が変化しているか否かにより、当該学習履歴ファイルを使用するか否かを判別する使用判別手段、
前記使用判別手段により学習履歴ファイルを使用すると判別されると、前記学習履歴ファイル記憶手段により記憶された学習履歴ファイルから特定した学習履歴ファイルを決定する学習履歴ファイル決定手段、
前記処理条件特定手段により特定された処理条件と、前記学習履歴ファイル決定手段により決定された学習履歴ファイルと、前記処理変化モデル記憶手段に記憶された処理変化モデルとに基づいて、前記目標とする処理結果に近い処理条件を算出する処理条件算出手段、
前記処理条件算出手段により算出された処理条件を前記処理条件特定手段により特定された処理条件に更新する処理条件更新手段、
として機能させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、精度良く、使いやすい処理システム、処理方法、及び、プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の処理システム、処理方法、及び、プログラムを、
図1に示すバッチ式の縦型の熱処理装置に適用した場合を例に本実施の形態を説明する。また、本実施の形態では、成膜用ガスとして、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)と一酸化二窒素(N
2O)とを用いて、半導体ウエハにSiO
2膜を形成する場合を例に本発明を説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態の熱処理装置1は、略円筒状で有天井の反応管2を備えている。反応管2は、その長手方向が垂直方向に向くように配置されている。反応管2は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0016】
反応管2の下側には、略円筒状のマニホールド3が設けられている。マニホールド3は、その上端が反応管2の下端と気密に接合されている。マニホールド3には、反応管2内のガスを排気するための排気管4が気密に接続されている。排気管4には、バルブ、真空ポンプなどからなる圧力調整部5が設けられており、反応管2内を所望の圧力(真空度)に調整する。
【0017】
マニホールド3(反応管2)の下方には、蓋体6が配置されている。蓋体6は、ボートエレベータ7により上下動可能に構成され、ボートエレベータ7により蓋体6が上昇するとマニホールド3(反応管2)の下方側(炉口部分)が閉鎖され、ボートエレベータ7により蓋体6が下降すると反応管2の下方側(炉口部分)が開口されるように配置されている。
【0018】
蓋体6の上部には、保温筒(断熱体)8を介して、ウエハボート9が設けられている。ウエハボート9は、被処理体、例えば、半導体ウエハWを収容(保持)するウエハ保持具であり、本実施の形態では、半導体ウエハWが垂直方向に所定の間隔をおいて複数枚、例えば、150枚収容可能に構成されている。そして、ウエハボート9に半導体ウエハWを収容し、ボートエレベータ7により蓋体6を上昇させることにより、半導体ウエハWが反応管2内にロードされる。
【0019】
反応管2の周囲には、反応管2を取り囲むように、例えば、抵抗発熱体からなるヒータ部10が設けられている。このヒータ部10により反応管2の内部が所定の温度に加熱され、この結果、半導体ウエハWが所定の温度に加熱される。ヒータ部10は、例えば、5段に配置されたヒータ11〜15から構成され、ヒータ11〜15には、それぞれ電力コントローラ16〜20が接続されている。このため、この電力コントローラ16〜20にそれぞれ独立して電力を供給することにより、ヒータ11〜15をそれぞれ独立に所望の温度に加熱することができる。このように、反応管2内は、このヒータ11〜15により、
図2に示すような5つのゾーンに区分されている。例えば、反応管2内のTOP(ZONE1)を加熱する場合には、電力コントローラ16を制御してヒータ11を所望の温度に加熱する。反応管2内のCENTER(CTR(ZONE3))を加熱する場合には、電力コントローラ18を制御してヒータ13を所望の温度に加熱する。反応管2内のBOTTOM(BTM(ZONE5))を加熱する場合には、電力コントローラ20を制御してヒータ15を所望の温度に加熱する。
【0020】
また、マニホールド3には、反応管2内に処理ガスを供給する複数の処理ガス供給管が設けられている。なお、
図1では、マニホールド3に処理ガスを供給する3つの処理ガス供給管21〜23を図示している。処理ガス供給管21は、マニホールド3の側方からウエハボート9の上部付近(ZONE1)まで延びるように形成されている。処理ガス供給管22は、マニホールド3の側方からウエハボート9の中央付近(ZONE3)まで延びるように形成されている。処理ガス供給管23は、マニホールド3の側方からウエハボート9の下部付近(ZONE5)まで延びるように形成されている。
【0021】
各処理ガス供給管21〜23には、それぞれ、流量調整部24〜26が設けられている。流量調整部24〜26は、処理ガス供給管21〜23内を流れる処理ガスの流量を調整するためのマスフローコントローラ(MFC)などから構成されている。このため、処理ガス供給管21〜23から供給される処理ガスは、流量調整部24〜26により所望の流量に調整されて、それぞれ反応管2内に供給される。
【0022】
また、熱処理装置1は、反応管2内のガス流量、圧力、処理雰囲気の温度といった処理パラメータを制御するための制御部(コントローラ)50を備えている。制御部50は、流量調整部24〜26、圧力調整部5、ヒータ11〜15の電力コントローラ16〜20等に制御信号を出力する。
図3に制御部50の構成を示す。
【0023】
図3に示すように、制御部50は、モデル記憶部51と、レシピ記憶部52と、学習履歴ファイル記憶部53と、ROM(Read Only Memory)54と、RAM(Random Access Memory)55と、I/O(Input/Output Port)ポート56と、CPU(Central Processing Unit) 57と、これらを相互に接続するバス58と、ログ記憶部60と、から構成されている。
【0024】
モデル記憶部51には、ヒータの温度の変化と形成されるSiO
2膜の膜厚変化との関係を示す膜厚変化モデルが記憶されている。
図4に膜厚変化モデルの一例を示す。
図4に示すように、膜厚変化モデルは、所定ZONEの温度を1℃上げたとき、各ZONEに形成されるSiO
2膜の膜厚がどれだけ変化するかを示している。例えば、
図4に示すように、電力コントローラ16を制御してヒータ11を加熱することによりZONE1の温度設定値を1℃上げると、ZONE1に形成されるSiO
2膜の膜厚が2nm増加し、ZONE2に形成されるSiO
2膜の膜厚が0.7nm減少し、ZONE3に形成されるSiO
2膜の膜厚が0.8nm増加し、ZONE4に形成されるSiO
2膜の膜厚が0.05nm減少する。
【0025】
レシピ記憶部52には、この熱処理装置1で実行される成膜処理の種類に応じて、制御手順を定めるプロセス用レシピが記憶されている。プロセス用レシピは、ユーザが実際に行う処理(プロセス)毎に用意されるレシピであり、反応管2への半導体ウエハWのロードから、処理済みの半導体ウエハWをアンロードするまでの温度、時間、ガス流量等を規定する。具体的には、各部の温度の変化、反応管2内の圧力変化、ガスの供給の開始及び停止のタイミング、供給量などを規定する。
【0026】
学習履歴ファイル記憶部53には、作成された学習履歴ファイルが記憶されている。学習履歴ファイルには、例えば、調整処理により作成・登録された日時、プロセス条件(温度、時間、ガス流量等)、必要なプロセスログの情報などが記憶されている。必要なプロセスログの情報としては、例えば、ウエハボート9上のトータル移載枚数、製品の枚数と位置を示す製品移載レイアウト、ダミーウエハの枚数と位置を示すダミーウエハレイアウト、モニターウエハの枚数と位置を示すモニターウエハレイアウト、反応管2(プロセスチューブ)の累積膜厚などが記憶されている。後述する処理において学習履歴ファイルを使用することにより、処理の精度が向上する。
【0027】
ROM54は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクなどから構成され、CPU57の動作プログラムなどを記憶する記録媒体である。
RAM55は、CPU57のワークエリアなどとして機能する。
【0028】
I/Oポート56は、温度、圧力、ガスの流量に関する測定信号をCPU57に供給すると共に、CPU57が出力する制御信号を各部(圧力調整部5、ヒータ11〜15の電力コントローラ16〜20、流量調整部24〜26等)へ出力する。また、I/Oポート56には、操作者が熱処理装置1を操作する操作パネル59が接続されている。
【0029】
CPU57は、制御部50の中枢を構成し、ROM54に記憶された動作プログラムを実行し、操作パネル59からの指示に従って、レシピ記憶部52に記憶されているプロセス用レシピに沿って、熱処理装置1の動作を制御する。
【0030】
CPU57は、モデル記憶部51に記憶されている膜厚変化モデルと、形成されたSiO
2膜の膜厚とに基づいて、目標膜厚が形成される反応管2内の各ZONE(ZONE1〜5)に配置されたヒータ11〜15の設定温度を算出する。
【0031】
また、CPU57は、学習履歴ファイル記憶部53に記憶された学習履歴ファイルの中から、処理に使用する学習履歴ファイルを特定する。本例では、プロセス条件(温度、時間、ガス流量等)が記憶されたプロセスログと一致するプロセス条件が記憶され、大規模なメンテナンスが行われず、必要なプロセスログが一致する場合に、学習履歴ファイルを特定する。
【0032】
なお、処理に使用する学習履歴ファイルの特定は、例えば、レシピ記憶部52に記憶されたプロセス用レシピの中から操作者がプロセス用レシピを指定することにより、CPU57が、指定されたプロセス用レシピのプロセス条件と一致するプロセス条件が記憶された学習履歴ファイルを学習履歴ファイル記憶部53から特定してもよい。
【0033】
バス58は、各部の間で情報を伝達する。
【0034】
ログ記憶部60には、実施した処理に関する各種のログ、例えば、プロセスログ、アラームログが記憶されている。例えば、大規模なメンテナンスが行われ、T/Cが取り外されるとT/C断線アラームが発生するとともに、その内容、日時を示すアラームログがログ記憶部60に記憶される。また、炉内の温度が室温まで低下すると、T/Cショートアラームが発生するとともに、その内容、日時を示すアラームログがログ記憶部60に記憶される。さらに、クリーニングレシピが実行されると、その内容、日時を示すプロセスログがログ記憶部60に記憶される。このように、プロセスログ、および、アラームログの有無により、その装置のコンディションが変化したか否かを判別することができる。CPU57は、後述するように、ログ記憶部60に記憶されたこれらのログを用いて、熱処理装置1に大規模なメンテナンスを行ったか否かを判別する。
【0035】
次に、以上のように構成された熱処理装置1を用いて反応管2内(ZONE1〜5)のプロセス条件を調整する調整方法を含む熱処理方法(熱処理)について説明する。なお、調整処理は、膜厚が最も目標膜厚に近づくプロセス条件(本例では温度)を算出するものである。
図5は、本例の熱処理を説明するためのフローチャートである。
【0036】
まず、操作者は、操作パネル59を操作して、調整処理で実行するプロセス種別等の必要な情報を入力する。具体的には、操作者は、調整処理で実施する処理装置と、プロセス種類、本例では、ジクロロシランと一酸化二窒素(N
2O)とのSiO
2膜の成膜(DCS−HTO)とを選択するとともに、ターゲットとなるSiO
2膜の膜厚(目標膜厚)を、例えば、ゾーンごとに入力する。
【0037】
制御部50(CPU57)は、プロセス種別等の必要な情報が入力されたか否かを判別する(ステップS1)。CPU57は、必要な情報が入力されていると判別すると(ステップS1;Yes)、入力されたプロセス種別に対応するプロセス用レシピをレシピ記憶部52から読み出す(ステップS2)。プロセス用レシピには、反応管2内の圧力、温度などのプロセス条件が記憶されている。例えば、プロセス用レシピには、反応管2内のZONE1〜5の温度が記憶されている。
【0038】
次に、CPU57は、読み出したプロセス用レシピのプロセス条件で成膜処理を実行する(ステップS3)。具体的には、CPU57は、ボートエレベータ7(蓋体6)を降下させ、少なくとも各ZONEに半導体ウエハW(モニターウエハ)を搭載したウエハボート9を蓋体6上に配置する。次に、CPU57は、ボートエレベータ7(蓋体6)を上昇して、ウエハボート9(半導体ウエハW)を反応管2内にロードする。そして、CPU57は、更新したプロセス条件が記載されたレシピに従って、圧力調整部5、ヒータ11〜15の電力コントローラ16〜20、流量調整部24〜26等を制御して、半導体ウエハWにSiO
2膜を成膜する。
【0039】
CPU57は、成膜処理が終了すると、成膜されたSiO
2膜の膜厚を測定する(ステップS4)。例えば、CPU57は、ボートエレベータ7(蓋体6)を降下させ、SiO
2膜が成膜された半導体ウエハWをアンロードし、半導体ウエハWを、例えば、図示しない測定装置に搬送し、半導体ウエハWに成膜されたSiO
2膜の膜厚を測定させる。測定装置では、半導体ウエハWに成膜されたSiO
2膜の膜厚を測定すると、例えば、測定したSiO
2膜の膜厚データを熱処理装置1(CPU57)に送信する。CPU57は、測定されたSiO
2膜の膜厚データを受信することにより、成膜されたSiO
2膜の膜厚を特定する。なお、操作者が操作パネル59を操作して、測定結果を入力してもよい。
【0040】
CPU57は、成膜されたSiO
2膜の膜厚が測定されると、測定された膜厚が許容範囲内か否かを判別する(ステップS5)。許容範囲内とは、入力された目標膜厚から許容可能な所定の範囲内に含まれていることをいい、例えば、入力された目標膜厚から±1%以内の場合をいう。
【0041】
CPU57は、測定した膜厚が許容範囲内でないと判別すると(ステップS5;No)、学習履歴ファイル特定処理を実行する(ステップS6)。
図6は、学習履歴ファイル特定処理を説明するためのフローチャートである。なお、本例では、後述するように、プロセス条件が一致し、装置コンディションが変化していない場合に、学習履歴ファイルを特定する。装置コンディションの変化については、大規模なメンテナンスが行われず、必要なプロセスログが一致する場合に、装置コンディションが変化していないものと判別した。
【0042】
まず、CPU57は、膜厚測定結果に該当するプロセスログを読み出す(ステップS21)。次に、CPU57は、読み出したプロセスログに記憶されたプロセス条件と一致するプロセス条件が記憶された学習履歴ファイルが学習履歴ファイル記憶部53に記憶されているか否かを判別する(ステップS22)。CPU57は、一致するプロセス条件が記憶された学習履歴ファイルが学習履歴ファイル記憶部53に記憶されていないと判別すると(ステップS22;No)、学習履歴ファイルを特定することなく、この処理を終了する。
【0043】
CPU57は、一致するプロセス条件が記憶された学習履歴ファイルが学習履歴ファイル記憶部53に記憶されていると判別すると(ステップS22;Yes)、判別した学習履歴ファイルが作成・登録された日時を特定する(ステップS23)。次に、CPU57は、ログ記憶部60に記憶されたログの中から、特定した日時以降に大規模なメンテナンスが行われたことを示すログが存在するか否かを判別する(ステップS24)。例えば、CPU57は、ログ記憶部60に、特定した日時以降における、T/Cが取り外され、T/C断線アラームが発生したことを示すアラームログ、炉内の温度が室温まで低下し、T/Cショートアラームが発生したことを示すアラームログ、または、クリーニングレシピの実行されたことを示すプロセスログが存在するか否かを判別する。CPU57は、このようなプロセスログおよびアラームログが存在すると判別すると(ステップS24;Yes)、学習履歴ファイルを特定することなく、この処理を終了する。
【0044】
CPU57は、このようなプロセスログおよびアラームログが存在しないと判別すると(ステップS24;No)、ステップS22で判別した学習履歴ファイルに記憶されているプロセスログの情報(前回計算時に選ばれたプロセスログの情報)と、今回のプロセスログの情報(今回計算時に選ばれたプロセスログの情報)との、必要なプロセスログの情報を比較する(ステップS25)。そして、CPU57は、両者のプロセスログの情報において、差があってはいけない部分に差があるか否かを判別する(ステップS26)。例えば、CPU57は、ウエハボート9上のトータル移載枚数、製品の枚数と位置を示す製品移載レイアウト、ダミーウエハの枚数と位置を示すダミーウエハレイアウト、モニターウエハの枚数と位置を示すモニターウエハレイアウト、反応管2(プロセスチューブ)の累積膜厚が前回より大きい場合、差があってはいけない部分に差はないと判別する。CPU57は、差があってはいけない部分に差があると判別すると(ステップS26;Yes)、学習履歴ファイルを特定することなく、この処理を終了する。
【0045】
CPU57は、差があってはいけない部分に差がないと判別すると(ステップS26;No)、装置コンディションが変化していないものとして、この学習履歴ファイルを特定し(ステップS27)、この処理を終了する。このように、プロセス条件が一致し、装置コンディションが変化していない(大規模なメンテナンスが行われず、必要なプロセスログが一致する)場合に、学習履歴ファイルを特定する。
【0046】
ここで、操作者が学習履歴ファイルを使用するか否かを考えて指定する作業が不要になり、手間がかかるという問題がなくなる。また、操作者が学習履歴ファイルの選択を誤るという人為的ミスをなくすことができ、処理結果の精度が低下してしまうという問題がなくなる。このため、精度良く、使いやすい処理を行うことができる。
【0047】
続いて、CPU57は、読み出したプロセス用レシピと、特定した学習履歴ファイルと、モデル記憶部51に記憶された膜厚変化モデルとに基づいて、入力した目標膜厚に最も近づく温度等のプロセス条件を算出する(ステップS7)。なお、ステップS6において、学習履歴ファイルを特定しなかった場合には、CPU57は、読み出したプロセス用レシピと、モデル記憶部51に記憶された膜厚変化モデルとに基づいて、入力した目標膜厚に最も近づく温度等のプロセス条件を算出する。
【0048】
このプロセス条件の算出方法としては、種々の方法を用いることができ、例えば、米国特許第5 ,991,525号公報などに開示されているカルマンフィルターによる学習機能による手法を利用することができる。
【0049】
次に、CPU57は、算出した新しいプロセス条件を記憶する新たな学習履歴ファイルを作成し、学習履歴ファイル記憶部53に登録する(ステップS8)。また、CPU57は、算出したプロセス条件(温度)でプロセス用レシピを更新する(ステップS9)。そして、CPU57は、登録したプロセス条件(温度)で成膜処理を実行する(ステップS3)。
【0050】
CPU57は、測定した膜厚が許容範囲内であると判別すると(ステップS5;Yes)、プロセス用レシピが終了したか否かを判別する(ステップS10)。CPU57は、プロセス用レシピが終了していないと判別すると(ステップS10;No)、引き続き、成膜処理を実行する(ステップS3)。CPU57は、プロセス用レシピが終了したと判別すると(ステップS10;Yes)、この処理を終了する。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態によれば、プロセス条件が一致し、大規模なメンテナンスが行われず、必要なプロセスログが一致することにより、学習履歴ファイルを特定しているので、操作者が学習履歴ファイルを使用するか否かを考えて指定する作業が不要になり、手間がかかるという問題がなくなる。さらに、操作者が学習履歴ファイルの選択を誤るという人為的ミスをなくすことができ、処理結果の精度が低下してしまうという問題がなくなる。このため、精度良く、使いやすい処理を行うことができる。
【0052】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な他の実施の形態について説明する。
【0053】
上記実施の形態では、プロセス条件が一致し、装置コンディションが変化していない場合に、学習履歴ファイルを特定した場合を例に本発明を説明したが、例えば、プロセス条件が一致し、装置コンディションの一部が変化していない場合や、プロセス条件の一部が一致し、装置コンディションが変化していない場合にも学習履歴ファイルを特定してもよい。これらの場合にも、操作者の学習履歴ファイルの特定に手間がかかるという問題がなくなる。例えば、プロセス条件のうち、温度等の一部が同一の学習履歴ファイルを列挙し、操作者が列挙された学習履歴ファイルの中から選択するようにしてもよい。また、必要なプロセスログの一部が一致する学習履歴ファイルを列挙し、操作者が列挙された学習履歴ファイルの中から選択するようにしてもよい。さらに、プロセス条件等に優先順位を設け、優先順位の高い条件が一致する学習履歴ファイルを特定するようにしてもよい。また、大規模なメンテナンスが行われていても、学習履歴ファイルを特定してもよい。
【0054】
また、上記実施の形態では、学習履歴ファイル記憶部53に記憶された学習履歴ファイルの中から特定する場合を例に本発明を説明したが、例えば、ネットワークで接続された別のサーバやコンピュータの中から学習履歴ファイルを特定できるようにしてもよい。
【0055】
上記実施の形態では、ジクロロシランと一酸化二窒素とを用いてSiO
2膜を形成する場合を例に本発明を説明したが、例えば、ジクロロシランとアンモニア(NH
3)とを用いたSiN膜の成膜にも本発明を適用可能である。
【0056】
上記実施の形態では、SiO
2膜を形成する場合を例に本発明を説明したが、処理の種類は任意であり、他種類の膜を形成するCVD(Chemical Vapor Deposition)装置、酸化装置などの様々な熱処理装置に適用可能である。
【0057】
上記実施の形態では、目標とする処理結果について、SiO
2膜の膜厚を例に本発明を説明したが、例えば、Si膜中に含まれる不純物濃度(膜中不純物濃度)であってもよい。この場合、モデル記憶部51には、ヒータ11〜15の温度の変化と形成されるSi膜の膜中不純物濃度の変化との関係を示す変化モデルが記憶されている。
【0058】
上記実施の形態では、ヒータの段数(ゾーンの数)が5段の場合を例に本発明を説明したが、4段以下であっても、6段以上であってもよい。また。各ゾーンから抽出する半導体ウエハWの数などは任意に設定可能である。
【0059】
上記実施の形態では、単管構造のバッチ式熱処理装置の場合を例に本発明を説明したが、例えば、反応管2が内管と外管とから構成された二重管構造のバッチ式縦型熱処理装置に本発明を適用することも可能である。また、枚葉式の処理装置に本発明を適用することも可能である。本発明は、半導体ウエハの処理に限定されるものではなく、例えば、FPD(Flat Panel Display)基板、ガラス基板、PDP(Plasma Display Panel)基板などの処理にも適用可能である。
【0060】
本発明の実施の形態にかかる制御部50は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、汎用コンピュータに、上述の処理を実行するためのプログラムを格納した記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)など)から当該プログラムをインストールすることにより、上述の処理を実行する制御部50を構成することができる。
【0061】
そして、これらのプログラムを供給するための手段は任意である。上述のように所定の記録媒体を介して供給できる他、例えば、通信回線、通信ネットワーク、通信システムなどを介して供給してもよい。この場合、例えば、通信ネットワークの掲示板(BBS:Bulletin Board System)に当該プログラムを掲示し、これをネットワークを介して搬送波に重畳して提供してもよい。そして、このように提供されたプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行することができる。