特許第6353814号(P6353814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6353814-貼り合わせSOIウェーハの製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353814
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】貼り合わせSOIウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20180625BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   H01L27/12 B
   H01L21/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-116675(P2015-116675)
(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-5078(P2017-5078A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591037498
【氏名又は名称】長野電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 徳弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 修
(72)【発明者】
【氏名】目黒 賢二
(72)【発明者】
【氏名】若林 大士
(72)【発明者】
【氏名】大西 裕之
【審査官】 綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−164906(JP,A)
【文献】 特表2007−507100(JP,A)
【文献】 特表2013−513234(JP,A)
【文献】 特開平03−132055(JP,A)
【文献】 特開平05−226464(JP,A)
【文献】 特許第5942948(JP,B1)
【文献】 特許第6070487(JP,B1)
【文献】 特許第6118757(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/76
H01L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いずれもシリコン単結晶からなるボンドウェーハとベースウェーハとを絶縁膜を介して貼り合わせて貼り合わせSOIウェーハを製造する方法であって、
少なくとも、
前記ベースウェーハの貼り合わせ面側に多結晶シリコン層を堆積する工程と、
該多結晶シリコン層の表面を研磨する工程と、
前記ボンドウェーハの貼り合わせ面に前記絶縁膜を形成する工程と、
該絶縁膜を介して前記ベースウェーハの前記多結晶シリコン層の研磨面と前記ボンドウェーハを貼り合わせる工程と、
貼り合わせられた前記ボンドウェーハを薄膜化してSOI層を形成する工程と
を有し、
前記ベースウェーハとして抵抗率が100Ω・cm以上のシリコン単結晶ウェーハを用い、
前記多結晶シリコン層を堆積する工程は、前記ベースウェーハの前記多結晶シリコン層を堆積する表面に予め酸化膜を10nm以上、30nm以下の厚さで形成する段階をさらに含み、
前記多結晶シリコン層の堆積を1050℃以上、1200℃以下の温度で行うことを特徴とする貼り合わせSOIウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記酸化膜を形成後、前記多結晶シリコン層の堆積を行う前に、水素含有雰囲気下、1050℃以上、1200℃以下の温度で、1秒以上、60秒以下の熱処理を行うことを特徴とする請求項1に記載された貼り合わせSOIウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記水素含有雰囲気下での熱処理と、前記多結晶シリコン層の堆積とを、同一の装置で連続的に行うことを特徴とする請求項2に記載された貼り合わせSOIウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼り合わせSOIウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RF(Radio Frequency:高周波)デバイス対応のSOIウェーハとして、ベースウェーハの抵抗率を高抵抗化することで対処してきた。しかしながら、更なる高速化に対応するためにより高い周波数に対応することが必要になってきており、従来の高抵抗ウェーハの使用のみでは対処できなくなってきている。
【0003】
そこで、対応策としてSOIウェーハの埋め込み酸化膜層(BOX層)直下に、発生したキャリアを消滅させる効果を持つ層(キャリアトラップ層)を加えることが提案されており、高抵抗ウェーハ中に発生したキャリアを再結合させるための高抵抗の多結晶シリコン層をベースウェーハ上に形成することが必要となってきている。
【0004】
特許文献1には、BOX層とベースウェーハの界面に、キャリアトラップ層としての多結晶シリコン層や非晶質シリコン層を形成することが記載されている。
一方、特許文献2にも、BOX層とベースウェーハの界面に、キャリアトラップ層としての多結晶層を形成することが記載されており、更に、多結晶シリコン層の再結晶化を防止するため、多結晶シリコン層形成後の熱処理温度を制限している。
また、特許文献3には、キャリアトラップ層としての多結晶シリコン層や非晶質シリコン層を形成することは記載されていないが、ボンドウェーハと貼り合わせる側のベースウェーハ表面の表面粗さを大きくすることによって、キャリアトラップ層と同様の効果を得ることが記載されている。
【0005】
特許文献4には、RFデバイス対応のSOIウェーハを作製するためのベースウェーハを製造する方法に関し、500Ωcmより大きい高抵抗率のシリコン基板上に誘電体層を形成し、該誘電体層上に多結晶シリコン層を形成する際、900℃以下の温度で堆積することが記載されている。
【0006】
特許文献5には、RFデバイス対応のSOIウェーハを作製するため、500Ωcmより大きい高抵抗率のシリコン基板上に、自然酸化物層とは異なる誘電材料層を0.5〜10nmの厚さで形成した後、多結晶シリコン層を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007−507093号公報
【特許文献2】特表2013−513234号公報
【特許文献3】特開2010−278160号公報
【特許文献4】特開2012−199550号公報
【特許文献5】特表2014−509087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、より高い周波数に対応するデバイスを作製するため、SOIウェーハのBOX層下にキャリアトラップ層を形成することが必要になってきている。
しかしながら、通常の多結晶シリコン層を堆積させキャリアトラップ層を形成すると、SOIウェーハ製造工程中またはデバイス製造工程中の熱履歴によっては多結晶シリコン層がアニールされ単結晶化しキャリアトラップ層としての効果が減少してしまうという問題があった。
従って、多結晶シリコン層堆積後に熱処理を行っても単結晶化が進まないようにする必要がある。言い換えれば、SOIウェーハ製造工程の熱処理工程やデバイス製造工程の熱処理工程を通っても単結晶化が進まないようなコストが安く、効果が持続する多結晶シリコン層を堆積する必要がある。
しかしながら、上記の特許文献1−3のいずれにも、多結晶シリコン層堆積後に熱処理を行っても単結晶化が進まないようにする技術については、開示も示唆もされていない。
【0009】
一方、多結晶シリコン層堆積後の熱処理による単結晶化を抑制するため、多結晶シリコン層とベースウェーハとの間に誘電体層を形成することが、特許文献4、5に記載されている。しかしながら、多結晶シリコン層の堆積温度に関しては、特許文献4に900℃以下との記載があるだけである。このような低温で多結晶シリコン層を形成する理由は、高温での多結晶シリコン堆積時に誘電体層が消失することを防ぎ、多結晶シリコン層の単結晶化の抑制を確実なものにするためである。
その一方で、多結晶シリコン層の堆積温度を低温化すると、十分な堆積速度が得られずに多結晶シリコン層堆積工程のスループットが低下し、製造コストが増大してしまうという問題があることがわかった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、SOIウェーハ製造工程の熱処理工程やデバイス製造工程の熱処理工程を通っても単結晶化が進まないように多結晶シリコン層を堆積することができるとともに、多結晶シリコン層堆積工程のスループットを向上させることができるSOIウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、いずれもシリコン単結晶からなるボンドウェーハとベースウェーハとを絶縁膜を介して貼り合わせて貼り合わせSOIウェーハを製造する方法であって、少なくとも、前記ベースウェーハの貼り合わせ面側に多結晶シリコン層を堆積する工程と、該多結晶シリコン層の表面を研磨する工程と、前記ボンドウェーハの貼り合わせ面に前記絶縁膜を形成する工程と、該絶縁膜を介して前記ベースウェーハの前記多結晶シリコン層の研磨面と前記ボンドウェーハを貼り合わせる工程と、貼り合わせられた前記ボンドウェーハを薄膜化してSOI層を形成する工程とを有し、前記ベースウェーハとして抵抗率が100Ω・cm以上のシリコン単結晶ウェーハを用い、前記多結晶シリコン層を堆積する工程は、前記ベースウェーハの前記多結晶シリコン層を堆積する表面に予め酸化膜を10nm以上、30nm以下の厚さで形成する段階をさらに含み、前記多結晶シリコン層の堆積を1050℃以上、1200℃以下の温度で行うことを特徴とする貼り合わせSOIウェーハの製造方法を提供する。
【0012】
このように、ベースウェーハのシリコン単結晶の表面と堆積する多結晶シリコン層との間に、予め酸化膜を10nm以上形成しておくことによって、多結晶シリコン層の形成を1050℃以上、1200℃以下の高温で行っても、多結晶シリコン層の堆積中に酸化膜が消失したり、球状となって点在したりすることなく層状態を維持できるので、多結晶シリコン層の堆積中や、堆積後にSOIウェーハ製造工程の熱処理工程やデバイス製造工程の熱処理による単結晶化を抑制することができる。また、酸化膜を30nm以下の厚さとすることで、ベースウェーハの表面側に反転層が形成され易くなることによる高周波特性の劣化を防止することができる。
さらに、多結晶シリコン層の堆積温度を1050℃以上の温度にすることで、多結晶シリコン層の堆積速度を十分に速くすることができるので、例えば、枚葉式の常圧エピタキシャル成長装置を用いて多結晶シリコン層を堆積する場合でも、スループットを向上させることができ、製造コストを低減させることができる。また、堆積温度を1200℃以下の温度とすることで、スリップ転位の発生を防止することができる。
【0013】
このとき、前記酸化膜を形成後、前記多結晶シリコン層の堆積を行う前に、水素含有雰囲気下、1050℃以上、1200℃以下の温度で、1秒以上、60秒以下の熱処理を行うことが好ましい。
酸化膜が形成されたベースウェーハの酸化膜表面には、酸化膜形成時や酸化膜形成後にドーパントとなる不純物が微量に付着して存在しており、この微量の不純物が、酸化膜を経由してベースウェーハへ拡散することによって、高周波特性を劣化させる場合がある。このため、多結晶シリコン層の堆積を行う前に、水素含有雰囲気下、1050℃以上、1200℃以下の温度で、1秒以上、60秒以下の熱処理を行い、これらの不純物を除去することで、ドーパントとなる不純物のベースウェーハへの拡散を防止することができ、これにより、高周波特性の劣化を確実に防止することができる。
【0014】
このとき、前記水素含有雰囲気下での熱処理と、前記多結晶シリコン層の堆積とを、同一の装置で連続的に行うことが好ましい。
このように水素含有雰囲気下での熱処理と、多結晶シリコン層の堆積とを同一の装置で連続的に行うことで、スループットをより効果的に向上させることができ、製造コストをより効果的に低減できる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の貼り合わせSOIウェーハの製造方法であれば、SOIウェーハ製造工程の熱処理工程やデバイス製造工程の熱処理工程を通っても単結晶化が進まないように多結晶シリコン層を堆積することができるとともに、多結晶シリコン層堆積工程のスループットを向上させることができ、製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の貼り合わせSOIウェーハの製造方法の実施態様の一例を示す製造フローである。
図2】本発明の貼り合わせSOIウェーハの製造方法の実施態様の一例を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前述のように、より高い周波数に対応するデバイスを作製するため、SOIウェーハのBOX層下にキャリアトラップ層を形成することが必要になってきているが、通常の多結晶シリコン層を堆積させキャリアトラップ層を形成すると、SOIウェーハ製造工程中またはデバイス製造工程中の熱履歴によっては多結晶シリコン層がアニールされ単結晶化しキャリアトラップ層としての効果が減少してしまうという問題があった。
【0018】
一方、多結晶シリコン層堆積後の熱処理による単結晶化を抑制するため、多結晶シリコン層とベースウェーハとの間に誘電体層を形成することが、特許文献4、5に記載されているが、これらの方法には、上記のように、多結晶シリコン層の堆積温度を低温化すると、十分な堆積速度が得られずに多結晶シリコン層堆積工程のスループットが低下し、製造コストが増大してしまうという問題があることがわかった。
【0019】
そこで、本発明者らは、SOIウェーハ製造工程の熱処理工程やデバイス製造工程の熱処理工程を通っても単結晶化が進まないように多結晶シリコン層を堆積することができるとともに、多結晶シリコン層堆積工程のスループットを向上させることができるSOIウェーハの製造方法について鋭意検討を重ねた。
その結果、ベースウェーハの多結晶シリコン層を堆積する表面に予め酸化膜を10nm以上、30nm以下の厚さで形成しておき、多結晶シリコン層の堆積を1050℃以上、1200℃以下の温度で行うことで、SOIウェーハ製造工程の熱処理工程やデバイス製造工程の熱処理工程を通っても単結晶化が進まないように多結晶シリコン層を堆積することができるとともに、多結晶シリコン層堆積工程のスループットを向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
以下、図1、2を参照しながら、本発明の貼り合わせSOIウェーハの製造方法の実施態様の一例を説明する。
【0022】
まず、シリコン単結晶からなるボンドウェーハ10を準備する(図1のステップS11、図2(a)参照)。
【0023】
次に、例えば熱酸化やCVD等によって、ボンドウェーハ10に、埋め込み絶縁膜層(埋め込み酸化膜層の場合、BOX層とも呼ばれる)(後述の図2(i)の埋め込み絶縁膜層16)となる絶縁膜(例えば、酸化膜)13を成長させる(図1のステップS12、図2(b)参照)。
【0024】
次に、その絶縁膜13の上からイオン注入機により、水素イオンと希ガスイオンのうちの少なくとも一種類のガスイオンを注入して、ボンドウェーハ10内にイオン注入層17を形成する(図1のステップS13、図2(c)参照)。この際、目標とするSOI層(後述の図2(i)のSOI層15)の厚さを得ることができるように、イオン注入加速電圧を選択する。
【0025】
次に、ボンドウェーハ10の貼り合わせ面のパーティクルを除去するために、貼り合わせ前洗浄を行う(図1のステップS14参照)。
【0026】
一方、上記とは別に、シリコン単結晶からなるベースウェーハ11を準備する(図1のステップS21、図2(d)参照)。
【0027】
次に、ベースウェーハ11上に、酸化膜(ベース酸化膜)20を形成する(図1のステップS22、図2(e)参照)。形成する酸化膜20の厚さは10nm以上、30nm以下とする。多結晶シリコン層の堆積中に酸化膜が消失したり、球状となって点在したりすることを、より確実に防ぐためには10nmより厚く、例えば15nm以上とすることが好ましい。
このような厚さの酸化膜を形成する方法としては特に限定されないが、一般的なバッチ式の熱処理炉を用いて、酸化性雰囲気中で、低温・短時間の熱酸化を行う方法や、急速加熱・急速冷却装置(RTA装置)を用いた酸化熱処理(RTO)を行う方法などを用いることによって、均一な酸化膜を形成することができる。
【0028】
次に、酸化膜(ベース酸化膜)20上に多結晶シリコン層12を堆積させる(図1のステップS23、図2(f)参照)。ここで、堆積温度は1050℃以上、1200℃以下とする。その際、堆積温度までの昇温中の雰囲気ガスは、通常は100%Hが用いられる。
堆積温度が1050℃以上、1200℃以下であるので、SOIウェーハ製造工程の熱処理工程やデバイス製造工程の熱処理が比較的高温(例えば、1000〜1200℃程度)であっても、多結晶シリコン層の粒界成長が抑制され、キャリアトラップ層としての効果を維持することができる。また、昇温中の水素含有雰囲気により、酸化膜20の表面に付着している不純物を除去する効果も得られる。
【0029】
また、堆積温度が1050℃以上、1200℃以下であるので、一般的なエピタキシャル成長用のCVD装置を用いて、原料ガスとしてトリクロロシランを使用し、常圧で高速に多結晶シリコン層12を堆積することができる。より高速で堆積するためには、堆積温度を1100℃以上とすることが好ましい。
【0030】
なお、昇温を経て多結晶シリコン層の堆積を行う直前に、水素含有雰囲気下、1050℃以上、1200℃以下の温度範囲から選択した所定温度で、1秒以上、60秒以下の所定時間の熱処理を行うことにより、酸化膜表面をわずかにエッチングし、表面に付着している不純物を十分に除去することが好ましい。これにより、ドーパントとなる不純物のベースウェーハへの拡散を防止することができ、高周波特性の劣化を確実に防止することができる。
【0031】
また、この水素含有雰囲気下での熱処理は、多結晶シリコン層を堆積するCVD装置を用いて、水素含有雰囲気下の熱処理と、多結晶シリコン層の堆積とを同一装置で連続的に行えば、生産性が向上するので好ましい。しかしながら、熱処理及び堆積を別々の装置を用いて別工程として行うことも可能である。
【0032】
次に、ベースウェーハ11に堆積された多結晶シリコン層12の表面を研磨により平坦化する(図1のステップS24、図2(g)参照)。1050℃以上、1200℃以下の温度で堆積した多結晶シリコン層12の表面粗さは大きく、そのままボンドウェーハと貼り合わせることが困難であるため、多結晶シリコン層12の表面を研磨により平坦化する必要がある。
【0033】
次に、研磨された多結晶シリコン層12の表面のパーティクルを除去するために、貼り合わせ前洗浄を行う(図1のステップS25参照)。
なお、図1のステップS11〜S14と、図1のステップS21〜S25とは並行してすすめることができる。
【0034】
次に、酸化膜20及び多結晶シリコン層12が形成されたベースウェーハ11を、ベースウェーハ11の多結晶シリコン層12が形成された面とボンドウェーハ10のイオン注入面とが接するように、絶縁膜13を形成したボンドウェーハ10と密着させて貼り合わせる(図1のステップS31、図2(h)参照)。
【0035】
次に、イオン注入層17に微小気泡層を発生させる熱処理(剥離熱処理)を貼り合わせたウェーハに施し、発生した微小気泡層にて剥離して、ベースウェーハ11上に埋め込み絶縁膜層16とSOI層15が形成された貼り合わせウェーハ14を作製する(図1のステップS32、図2(i)参照)。なお、このときに、剥離面19を有する剥離ウェーハ18が派生する。
【0036】
次に、貼り合わせ界面の結合強度を増加させるために貼り合わせウェーハ14に結合熱処理を施す(図1のステップS33参照)。
上記のようにして貼り合わせSOIウェーハを製造することができる。
ボンドウェーハ10の薄膜化を、イオン注入層17の形成と、イオン注入層17での剥離により行うことを例示したが、これに限らない。ボンドウェーハ10の薄膜化は、例えば、研削、研磨、エッチング等を組み合わせて行うこともできる。
【0037】
本発明の貼り合わせSOIウェーハの製造方法においては、ベースウェーハのシリコン単結晶の表面と堆積する多結晶シリコン層との間に、予め10nm以上、30nm以下の厚さの酸化膜を形成しておくことによって、堆積後にSOIウェーハ製造工程の熱処理工程やデバイス製造工程の熱処理による単結晶化を抑制することができる。さらに、多結晶シリコン層の堆積温度を1050℃以上、1200℃以下の温度にするので、SOIウェーハ製造工程の熱処理工程やデバイス製造工程の熱処理が比較的高温(例えば、1000〜1200℃程度)であっても、多結晶シリコン層の粒界成長が抑制され、キャリアトラップ層としての効果を維持することができるのと同時に、多結晶シリコン層の堆積速度を十分に速くすることができるので、例えば、枚葉式の常圧エピタキシャル成長装置を用いて多結晶シリコン層を堆積する場合でも、スループットを向上させて、製造コストを低減させることができる。
【0038】
なお、ベースウェーハ11の抵抗率は、100Ω・cm以上であれば高周波デバイス製造用に好適に用いることができ、1000Ω・cm以上であることがより好ましく、3000Ω・cm以上であることが特に好ましい。抵抗率の上限は特に限定されないが、例えば、50000Ω・cmとすることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
図1、2で説明した製造方法を用いて貼り合わせSOIウェーハを作製した。ただし、ベースウェーハとして、直径300mm、結晶方位<100>、抵抗率1300Ω・cm、p型の単結晶シリコンを用い、ベースウェーハにおけるベース酸化膜形成及び多結晶シリコン層堆積(トリクロロシランを原料ガスとして使用)、ボンドウェーハにおけるBOX酸化及び水素イオン注入、並びに、貼り合わせ後の剥離熱処理及び結合熱処理は、以下の条件で行った。
ベース酸化膜形成 :RTO(RTA装置を用いた酸化熱処理)、
酸化膜厚30nm
多結晶シリコン層堆積前水素熱処理:なし(ただし、堆積温度までの昇温時の雰囲気
は100%H
多結晶シリコン層堆積:1100℃ 常圧 膜厚3.0μm(研磨後2.5μm)
BOX酸化 :1050℃ 酸化膜厚400nm
水素イオン注入 :105keV 7.5×1016/cm
剥離熱処理 :500℃ 30分 100%Ar雰囲気
結合熱処理 :900℃パイロジェニック酸化 + 1100℃120分の
Arアニール
【0041】
結合熱処理後の多結晶シリコン層の単結晶化の状況を断面SEM観察により確認した。また、結合熱処理後のベースウェーハ表面(ベース酸化膜とベースウェーハとの界面近傍)の抵抗率をSR(Spreading Resistance)法(広がり抵抗測定法)により確認した。これらの結果を表1に示す。
【0042】
(実施例2)
実施例1と同様にして貼り合わせSOIウェーハを作製した。ただし、多結晶シリコン層堆積は1130℃で行い、堆積の直前に、同一の装置内で水素含有雰囲気下の熱処理(1130℃、20秒)を行った。
実施例1と同様にして多結晶シリコン層の単結晶化の状況とベースウェーハ表面の抵抗率を確認した。これらの結果を表1に示す。
【0043】
(実施例3)
実施例1と同様にして貼り合わせSOIウェーハを作製した。ただし、RTOの処理時間を調整してベース酸化膜の厚さを15nmとし、多結晶シリコン層堆積は1150℃で行い、堆積の直前に、同一の装置内で水素熱処理(1130℃、20秒)を行った。
実施例1と同様にして多結晶シリコン層の単結晶化の状況とベースウェーハ表面の抵抗率を確認した。これらの結果を表1に示す。
【0044】
(実施例4)
実施例1と同様にして貼り合わせSOIウェーハを作製した。ただし、RTOの処理時間を調整してベース酸化膜の厚さを10nmとし、多結晶シリコン層堆積は1200℃で行い、堆積の直前に、同一の装置内で水素熱処理(1130℃、20秒)を行った。
実施例1と同様にして多結晶シリコン層の単結晶化の状況とベースウェーハ表面の抵抗率を確認した。これらの結果を表1に示す。
【0045】
(実施例5)
実施例1と同様にして貼り合わせSOIウェーハを作製した。ただし、RTOの処理時間を調整してベース酸化膜の厚さを15nmとし、多結晶シリコン層堆積は1050℃で行った。
実施例1と同様にして多結晶シリコン層の単結晶化の状況とベースウェーハ表面の抵抗率を確認した。これらの結果を表1に示す。
【0046】
(比較例1)
実施例1と同様にして貼り合わせSOIウェーハを作製した。ただし、多結晶シリコン層の堆積は900℃で行った。
実施例1と同様にして多結晶シリコン層の単結晶化の状況とベースウェーハ表面の抵抗率を確認した。これらの結果を表1に示す。
【0047】
(比較例2)
実施例4と同様にして貼り合わせSOIウェーハを作製した。ただし、RTOの処理時間を調整してベース酸化膜の厚さを8nmとし、多結晶シリコン層堆積前の水素熱処理は行わなかった。
実施例4と同様にして多結晶シリコン層の単結晶化の状況とベースウェーハ表面の抵抗率を確認した。これらの結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1からわかるように、ベース酸化膜を10nm以上、30nm以下の範囲とし、多結晶シリコン層の堆温度を1050以上、1200℃以下とした実施例1〜5は、多結晶シリコン層の堆積速度が2.9μm/min以上の十分に高速な堆積が可能であり、また、多結晶シリコン層の単結晶化やベースウェーハ表面の抵抗率低下の問題も発生しなかった。
一方、多結晶シリコン層の堆積温度を900℃とした比較例1では、堆積速度が0.5μm/minであり、実施例1〜5の1/6程度以下の低速となり、スループットが大幅に低下した。
また、ベース酸化膜を8nmとした比較例2では、多結晶シリコン堆積工程でベース酸化膜が消失し、多結晶シリコン層の単結晶化が発生した。また、多結晶シリコン層堆積前の水素熱処理を行わなかったことと、ベース酸化膜が消失したことの影響により、ベースウェーハ表面に抵抗率の低下が観察された。これは、ベースウェーハ中にドーパントとなる不純物が拡散したことに起因するものと推定される。
【0050】
(比較例3)
実施例1と同様にして貼り合わせSOIウェーハを作製した。ただし、RTOの処理時間を調整してベース酸化膜を40nmとした。
実施例1及び比較例3で作製した貼り合わせSOIウェーハのSOI層に高周波集積回路デバイスを製造した。製造したデバイスのそれぞれについて二次高調波特性を測定し、比較した結果、実施例1に比べ比較例3は二次高調波特性が劣化していることがわかった。これは、ベース酸化膜が40nmと厚くなったことにより反転層が形成されたことに起因した高周波特性の劣化であると推定される。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
10…ボンドウェーハ、 11…ベースウェーハ、 12…多結晶シリコン層、
13…絶縁膜(酸化膜)、 14…貼り合わせウェーハ、 15…SOI層、
16…埋め込み絶縁膜層(BOX層)、 17…イオン注入層、
18…剥離ウェーハ、 19…剥離面、 20…酸化膜(ベース酸化膜)。
図1
図2