(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
遠赤外線放射物質として沃土、黄土、珪石、麦飯石、天然玉、炭、ゲルマニウム、トルマリン及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれたいずれか一つを含む遠赤外線放射層、金属層及び直径が20nm〜250nmで長さが1μm〜10μmの金属ナノワイヤーを1重量%〜50重量%含む炭素ナノチューブ発熱層の積層構造を含む自動車用面状発熱体。
炭素ナノチューブ発熱層に電気的に連結され、電源を印加したときに前記炭素ナノチューブ発熱層の発熱を誘導する電極層をさらに含む、請求項1に記載の自動車用面状発熱体。
前記金属層は、前記炭素ナノチューブ発熱層から発生する熱を放出できるように200W/m・K以上の高い熱伝導度を有する金属シートを含む、請求項1に記載の自動車用面状発熱体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一具現例は、炭素ナノチューブ発熱層の発熱によって発生した熱が金属層に伝達され、遠赤外線放射層を通過することによって、輻射熱を放出し、被発熱体に輻射熱を伝達する自動車用面状発熱体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一具現例において、遠赤外線放射層、金属層及び金属
ナノワイヤー
(以下、単に「金属ワイヤー」という)を
1重量%〜50重量%含む炭素ナノチューブ発熱層の積層構造を含む自動車用面状発熱体を提供する。
【0007】
前記炭素ナノチューブ発熱層に電気的に連結され、電源を印加したときに前記炭素ナノチューブ発熱層の発熱を誘導する電極層をさらに含むことができる。
【0008】
前記電極層に電源を印加したとき、前記炭素ナノチューブ発熱層の発熱温度は約100℃〜約300℃であり得る。
【0009】
前記炭素ナノチューブ発熱層は、金属ワイヤーを約1重量%〜約50重量%含
む。
【0010】
前記遠赤外線放射層は、遠赤外線放射物質を含むことができる。
【0011】
前記遠赤外線放射物質は、沃土、黄土、珪石、麦飯石、天然玉、炭、ゲルマニウム、トルマリン及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれたいずれか一つを含むことができる。
【0012】
前記遠赤外線放射層は、前記炭素ナノチューブ発熱層の発熱によって輻射熱を放出することができる。
【0013】
前記金属層は、前記炭素ナノチューブ発熱層で発生する熱を放出できるように200W/m・K以上の高い熱伝導度を有する金属シートを含むことができる。
【0014】
前記金属層は、アルミニウム、銅、金、銀、白金及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれた一つ以上の金属シートを含むことができる。
【0015】
前記遠赤外線放射層の下部にプライマー層を含むことができる。
【0016】
前記プライマー層は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、オレフィン樹脂及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれた樹脂を含むことができる。
【0017】
前記金属層の下部に中間層を含むことができる。
前記中間層は、ガラス粉末またはガラス繊維をバインダーとして含むことができる。
【0018】
前記自動車用面状発熱体の発熱温度は約50℃〜約100℃であり得る。
前記自動車用面状発熱体の熱効率が約30%以上であり得る。
前記自動車用面状発熱体の周辺大気温度の変化は約10℃以内であり得る。
【0019】
前記自動車用面状発熱体は、被発熱体に直接接触しないように自動車の内部に付着させることができる。
【発明の効果】
【0020】
前記自動車用面状発熱体は、別途の暖房システムを備えていない電気自動車の冬期の室内温度を高めることができる。
【0021】
また、前記自動車用面状発熱体が適用される位置に応じて、搭乗者が安らぎを感じる自動車の室内温度を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の具現例を詳細に説明する。但し、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されることはなく、本発明は、後述する請求項の範疇によって定義されるものに過ぎない。
【0024】
本発明の一具現例では、遠赤外線放射層、金属層及び金属ワイヤーを含む炭素ナノチューブ発熱層の積層構造を含む自動車用面状発熱体を提供する。
【0025】
前記自動車用面状発熱体は、自動車の室内温度を加熱したとき、車に搭乗する人が感じる快適な大気温度を維持するためのものであって、自動車用面状発熱体の発熱温度に応じて発熱体を構成し、自動車内部の大気温度を維持させることができる。前記快適温度は、人体が処している大気温度を快適であると感じるか、それとも快適であると感じないかを称する温度であって、人によって相対的な差はり得るが、前記快適温度は、大多数の人たちが安らぎを感じる大気温度を意味する。
【0026】
通常の自動車に試みられていた発熱ハンドル、発熱座席シート、または身体下部を暖める役割をし、消費電力が大きい空気吹込式発熱体(例えば、Air Blowing PTCヒーター)とは対照的に、前記自動車用面状発熱体を使用することによって、使用エネルギーを効果的に減少させることができる。また、前記自動車用面状発熱体の熱流量を最大限高めて発熱温度を調節することによって、人体の下半身を効果的に暖め、冬期に暖房体によって消耗される自動車のエネルギーを最小化し、運行距離を高めることができる。
【0027】
具体的に、電気自動車の場合、別途の発熱体が存在しないので、自動車の室内で人体の下半身に発熱体が存在する場合、車に搭乗した試乗者は、発熱体が存在しない場合よりも安らぎを感じることができる。
【0028】
図1は、本発明の実施例である自動車用面状発熱体を図式化して示したものであって、前記自動車用面状発熱体10は、遠赤外線放射層300、金属層200及び炭素ナノチューブ発熱層100を含むことができる。
【0029】
前記炭素ナノチューブ発熱層100は金属ワイヤーを含むことができる。従来は、金属と炭素ナノチューブ自体の複合体を使用したこともあったが、球状の金属粒子が炭素ナノチューブに表面処理されることによって、曲面にコーティングが行われる場合と同様に、金属粒子の分散が均一でなく、金属粒子が連結されないので電気が一側に流れることがあった。そこで、炭素ナノチューブ発熱層が球状の金属粒子ではない線状の金属ワイヤーを一体に含むことによって、金属ワイヤーを炭素ナノチューブ上に均一に分散させることができ、その結果、炭素ナノチューブ発熱層に電圧が印加されると、電気が均一に流れ得る。
【0030】
金属ワイヤーは、一定の直径を有するワイヤー構造体を称し、概して約10nm未満の直径を有するナノワイヤーから数百nmの直径を有するナノワイヤーまで含むことができる。具体的に、金属ワイヤーの直径は約20nm〜約250nmであり得る。
【0031】
また、前記金属ワイヤーの縦横比は約4〜約50であり得る。前記縦横比は、横及び縦の比率を称し、金属ワイヤーの長さを金属ワイヤーの直径で割った値を意味する。具体的に、前記金属ワイヤーの長さは約1μm〜約10μmになり得る。
【0032】
図2は、前記自動車用面状発熱体が含む炭素ナノチューブ発熱層をSEM撮影して示したものであって、炭素ナノチューブ発熱層が約20nm〜約250nmの直径を有する金属ワイヤーを含んでいることが分かる。
【0033】
前記自動車用面状発熱体は、炭素ナノチューブ発熱層100に電気的に連結され、電源を印加したときに前記炭素ナノチューブ発熱層の発熱を誘導する電極層をさらに含むことができる。前記電極層に電源を印加したとき、すなわち、電圧が加えられて電気が流れると、前記炭素ナノチューブ発熱層に熱が発生し、前記炭素ナノチューブ発熱層の温度が上昇し得る。具体的に、前記炭素ナノチューブ発熱層によって発生した熱が遠赤外線放射層に伝導され、伝導された熱が前記遠赤外線放射層を通過することによって、輻射熱を放出することができ、放出された輻射熱を被発熱体に伝達することができる。
【0034】
より具体的に、前記電極層に電源を印加したとき、前記炭素ナノチューブ発熱層の発熱温度は約100℃〜約300℃であり得る。発熱温度は、前記電極層に電源を印加したときの前記炭素ナノチューブ発熱層の表面温度を称し、電極層に電源が加えられることによって炭素ナノチューブ発熱層に熱が発生するが、このときに発生する熱により、前記炭素ナノチューブ発熱層が一定の発熱温度を維持することができる。
【0035】
前記炭素ナノチューブ発熱層は金属ワイヤーを含んでいるので、電極層に電源が印加される場合、電気が均一に流れると共に、前記発熱温度を前記の範囲に維持することができる。前記炭素ナノチューブ発熱層の発熱温度を維持することによって、遠赤外線線放射層及び金属層に伝導される熱の損失を防止し、快適温度を維持することができる。
【0036】
前記炭素ナノチューブ発熱層の厚さは約2μm〜約10μmであり得る。前記炭素ナノチューブ発熱層の厚さを前記の範囲に均一に維持することによって、クラックの発生を防止することができ、自動車用面状発熱体の一定水準の耐久性を確保することができる。
【0037】
前記炭素ナノチューブ発熱層は、金属ワイヤーを約1重量%〜約50重量%含
む。金属ワイヤーは、上述した通りであって、前記の範囲の金属ワイヤーを含むことによって炭素ナノチューブ発熱層の温度制御が容易であり、面状発熱体の目標とする面抵抗の具現において効率に優れ、電気の流れを円滑にすることができる。具体的に、前記金属ワイヤーは、銀、銅、アルミニウム、金、白金及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれたいずれか一つを含むことができ、電気伝導度を考慮すると、銀を含むことが特に好ましい。
【0038】
前記遠赤外線放射層300は、遠赤外線放射物質を含むことができる。前記自動車用面状発熱体が前記遠赤外線放射層を含むことによって、人体にやさしい熱を発生させることができ、前記遠赤外線放射層自体の分光放射率によってエネルギー節減効果を有することができる。具体的に、前記遠赤外線放射物質は、沃土、黄土、珪石、麦飯石、天然玉、炭、ゲルマニウム、トルマリン及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれたいずれか一つを含むことができる。
【0039】
遠赤外線は、光の波長領域中の約3μm〜約1000μmの範囲で可視光線よりも強い熱作用をする赤外線を称し、前記炭素ナノチューブ発熱層によって発生した熱が前記遠赤外線放射層を通過することによって遠赤外線が発生し、前記の発生した遠赤外線を前記遠赤外線放射層が吸収することによって輻射熱を放出することができる。前記輻射熱は、物体から放出する電磁気波を直接物体が吸収すると同時に、熱に変わったときに発生する熱を称し、前記遠赤外線放射層から放出する遠赤外線を前記遠赤外線放射層が吸収すると同時に、熱に変化させることによって、輻射熱を発生させることができる。
【0040】
前記遠赤外線放射層300と前記炭素ナノチューブ発熱層100との間に金属層200を含むことができる。前記金属層は、高い熱伝導度を有する放熱金属シートを含むことによって、炭素ナノチューブ発熱層で発生する熱を遠赤外線放射層に迅速に伝達し、熱損失の最小化によって自動車用面状発熱体の熱効率を30%以上に維持させることができる。また、前記金属層は、前記炭素ナノチューブ発熱層で発生する熱を放出させるヒートシンクの役割をすることによって、前記金属層の熱変形を防止し、全体的に自動車用面状発熱板の熱変形を抑制することができる。
【0041】
具体的に、前記金属層は、前記炭素ナノチューブ発熱層で発生する熱を放出できるように200W/m・K以上の高い熱伝導度を有する放熱金属シートを含むことができる。より具体的に、前記金属層は、アルミニウム、銅、金、銀、白金及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれた一つ以上の金属シートを含むことができる。熱伝導度及び価格競争力の面で、前記金属層としてはアルミニウム金属シートを使用することができる。アルミニウム金属シートの場合、厚さ方向に特に熱拡散係数が高く、熱伝導度に優れるので、熱を累積させずに容易に放出させることができる。
【0042】
前記金属層の厚さは約0.1mm〜約2mmであり得る。金属層の厚さが過度に薄いと、炭素ナノチューブ発熱層で発生する熱を確実に放出させることができなく、金属層の厚さが過度に厚いと、自動車用面状発熱体を曲面に製造することが難しくなるという問題がある。
【0043】
図3は、前記自動車用面状発熱体が含む金属層としてアルミニウム金属シートを使用した場合、アルミニウム金属シートの熱拡散係数を測定して示したものである。
図3を参考にすると、1mm、0.5mm、0.5mm及び0.2mmの厚さのアルミニウム金属シートの熱拡散係数(厚さ方向)は、約25℃で92.99mm
2/s、60.82mm
2/s、39.88mm
2/s及び23.23mm
2/sであり、いずれも高い値を有すると測定されるので、熱拡散係数に比例して熱伝導度も高い値を有することを確認することができる。
【0044】
図4は、本発明の他の実施例である自動車用面状発熱体を図式化して示した図であって、
図4を参考にすると、前記自動車用面状発熱体10は、上から遠赤外線放射層300、プライマー層400、金属層200及び炭素ナノチューブ発熱層100を含むことができる。
【0045】
前記プライマー層400は、接着性能を帯びているものであって、遠赤外線放射層300と金属層200との間の付着力が表れない場合に備える役割をし、前記遠赤外線放射層300と金属層200との間に含ませることができる。
【0046】
そのため、前記プライマー層の厚さは約2μm〜約20μmであり得るので、前記の範囲の厚さを維持することによってクラックの発生を最小化し、前記遠赤外線放射層を均一にコーティングさせることができる。
【0047】
前記プライマー層は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、オレフィン樹脂及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれた樹脂を含むことができる。
【0048】
前記ウレタン系樹脂としては、ポリウレタンディスパージョン樹脂、ポリエチレン変性ポリウレタン樹脂などのイソプレンジイソシアネート、アジピン酸及び多価アルコールから製造されるポリウレタン樹脂;アクリル―ウレタン樹脂、ポリエチレン―アクリル変性ポリウレタン樹脂などのアクリルポリオール及びポリイソシアネートから製造されるポリウレタン樹脂;ポリカプロラクトンポリオールまたはポリカーボネートポリオール、イソシアネート及びパラフェニレンジイソシアネートから製造されたポリウレタン樹脂;4,4'―ビス(ω―ヒドロキシアルキレンオキシ)ビフェニル及びメチル―2,6―ジイソシアネートヘキサノエートから製造されるポリウレタン樹脂;及びアセタール結合を有するポリウレタン樹脂などを使用することができる。
【0049】
具体的に、前記多価アルコールとしては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィン系ポリオールなどを使用することができる。
【0050】
前記アクリル樹脂は、耐高温高湿性、耐寒性及び加工性に優れ、価格が低いので、金属層の上部に使用することによって前記遠赤外線放射層との付着力を上昇させることができる。前記アクリル樹脂としては、水溶化が可能な程度のカルボキシル基を含む通常の単量体組成で合成されたアクリル系樹脂を使用することができる。
【0051】
前記アクリル系樹脂単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2―エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0052】
また、前記エポキシ樹脂は、付着性、耐食性、上塗り塗装性などに優れ、金属層の上部に適宜使用することができる。前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂及びノボラック樹脂などを使用することができる。
【0053】
前記エステル樹脂は、硬化性、耐薬品性、耐熱性、可塑性、有機物との付着性に優れるので金属層の上部に使用することができ、前記エステル樹脂としては、無水マレイン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、ピメリン酸から製造されるポリエステル樹脂、エチレングリコール変性エステル樹脂、プロピレングリコール変性エステル樹脂、ネオペンチルグリコール変性エステル樹脂を挙げることができる。
【0054】
図5は、本発明の更に他の一つの実施例である自動車用面状発熱体を図式化して示したものであって、
図5を参照すると、前記自動車用面状発熱体10は、上から遠赤外線放射層300、金属層200、中間層500及び炭素ナノチューブ発熱層100を含むことができる。
【0055】
前記中間層500は、電気絶縁層であって電気が通らないので、炭素ナノチューブ発熱層100によって発生した熱が金属層200を介して遠赤外線放射層300に伝達されるにおいて、遠赤外線放射層を均一に金属層の上部に付着させて形成することができなく、前記金属層と前記遠赤外線放射層との間に気泡が発生し、遠赤外線放射層にしわが生じる現象を防止する役割をする。
【0056】
前記中間層は、ガラス粉末またはガラス繊維をバインダーとして含むことができる。前記ガラス粉末またはガラス繊維をバインダーとして含むことによって、電気絶縁層となって電気が通ることを防止することができ、その結果、遠赤外線放射層が熱によって不均一に金属層の上部に形成される現象を改善することができる。
【0057】
ガラス粉末は、ガラスが粉末状に存在することを意味し、ガラス粉末の粒子径は約0.4μm〜約40μmであり得る。また、ガラス繊維は、溶融したガラスを繊維状にした鉱物繊維を意味し、ガラス繊維の直径が細いほど物性に優れ、引張強度にも優れるので、前記中間層が含むガラス繊維の直径は約5μm〜約20μmであり得る。
【0058】
前記中間層は、前記ガラス粉末及びガラス繊維バインダーとし、各種添加剤及び合成樹脂材と混合して形成することができる。
【0059】
前記自動車用面状発熱体の発熱温度は、約50℃〜約100℃であり得る。自動車用面状発熱体の発熱温度は、輻射熱を発生する発熱体自体の表面温度を称し、前記電極層に電源を印加したとき、前記炭素ナノチューブ発熱層の発熱温度が約100℃〜約300℃になり得るが、前記金属層及び遠赤外線放射層によって熱が損失され、前記自動車用面状発熱体の発熱温度は約50℃〜約100℃に確保することができる。
【0060】
前記自動車用面状発熱体の熱効率(e)は約30%以上であり得る。前記熱効率(e)は、{1−(Qrad)/(Qref)}×100の式で計算することができ、このとき、Qrefは、輻射熱がない初期状態の発熱体の熱流量を意味し、Qradは、輻射熱がある後期状態の発熱体の熱流量を意味し、それぞれのQref及びQradは、ANSYS(シミュレーションモデル)を使用して得られ、各発熱体を加熱したときの表面温度と発熱体によって変化する被発熱体の温度を測定し、得られたQref及びQradを用いて代入することによって熱効率を計算することができる。
【0061】
前記熱流量は、ある断面を単位時間単位面積当たりに通過する熱量を称し、前記自動車用面状発熱体の熱流量は、前記炭素ナノチューブ発熱層、金属層及び前記遠赤外線放射層によって発生した輻射熱が単位時間単位面積当たりに通過する熱量を意味し、下記の[式]及び3D―シミュレーションモデルを通じて計算することができる。
【0062】
[式]
Q=h
c・(RST−t
a)+ε
s・ε
a・σ・[(RST+273.2)
4−(t
r+273.2)
4]
(Q:熱流量、h
c:対流熱伝逹係数、RST:表面温度、t
a:大気温度、ε
s、ε
a:放出係数、σ:ボルツマン定数、t
r:平均輻射温度)
【0063】
このとき、前記表面温度(RST)は、熱の損失が反映された熱平衡によって決定される因子であって、自動車内の大気温度及び発熱体からの輻射温度などを考慮して熱流量を測定することができる。
【0064】
前記熱流量は、自動車用面状発熱体の熱効率及び周辺大気温度に直接的な影響を及ぼし得る数値であって、前記自動車用面状発熱体が一定範囲の熱流量を維持することによって一定の大気温度を維持することができ、被発熱体が冬季に自動車の室内で安らぎを感じることができる。
【0065】
例えば、自動車搭乗者の下半身を基準にして左、右、上面部に前記自動車用面状発熱体を設置した後、前記面状発熱体の輻射熱に対して単位時間当たり単位面積を通じて移動した熱流量を比較し、上述したように熱効率を計算した結果、熱効率が約30%以上であるときに前記自動車用面状発熱体の周辺大気温度変化が約10℃以内に維持されたので、自動車用面状発熱体としての効率を有することを確認した。
【0066】
また、前記熱効率が約50%以上である場合は、前記自動車用面状発熱体の周辺大気温度変化が約5℃以内に維持されたので、車の内部で快適温度を維持することができ、前記熱効率が約60%以上である場合は、前記自動車用面状発熱体の周辺温度が常温以下に下降しないことを確認した。
【0067】
そのため、前記自動車用面状発熱体の熱効率が約30%以上である場合、搭乗した人体の温度が常温に維持され、大気温度が快適な温度に維持できるという面に長所がある。
【0068】
前記自動車用面状発熱体の周辺大気温度の変化は、約10℃以内であり得る。周辺大気温度の変化は、前記自動車用面状発熱体の作動前と作動後の周辺大気温度の変化を称し、前記面状発熱体の熱効率が良いほど周辺大気温度の変化が少なくなり、適正な自動車内の温度を維持することができる。
【0069】
例えば、前記自動車用面状発熱体の被発熱体は、人体、自動車に搭乗した試乗者になり得る。前記被発熱体は、前記自動車用面状発熱体の周辺大気温度の変化を感知し、周辺大気温度の変化が約10℃以内である場合、人体は安らぎを感じ、脚、手及び胸の体温が維持されたときに熱的な快適さを感じることができる。
【0070】
前記自動車用面状発熱体は、被発熱体に直接接触しないように自動車の内部に付着させることができる。前記自動車用面状発熱体は、遠赤外線放射層によって輻射熱を放出するので、被発熱体に直接接触しないにもかかわらず、被発熱体が前記輻射熱の放出によって加熱された周辺大気温度を通じて暖かさを感じることができる。前記被発熱体が人体、例えば、自動車に搭乗した試乗者になった場合、前記自動車用面状発熱体の輻射熱の放出によって前記自動車用面状発熱体との直接的な接触なく、被発熱体が処した前記自動車用面状発熱体の大気温度を一定に維持することができる。
【0071】
具体的に、前記自動車用面状発熱体は、人体の上半身ではない下半身に向かって位置させることができる。熱流量を5段に調節可能な自動車用面状発熱体を作動させ、各段の強さで放出された輻射熱の記録を用いて人体が安らぎを感じる快適温度を部位別に算出し、脚部位が、人体が感じる快適温度に最も大きな影響を及ぼすことが分かった。したがって、体温を維持させるにおいて、人体の下半身が最も重要な比率を占めることを確認したので、人体が快適さを感じる大気温度の維持のために人体の下半身に向かって自動車用面状発熱体を位置させ、人体の下半身が前記自動車用面状発熱体の輻射熱の影響を受けることができた。
【0072】
図6は、前記自動車用面状発熱体の多様な形状を図式化して示したものである。前記自動車用面状発熱体は、人体の下半身を加熱するために多様な形状に自動車の座席の下部分に集中的に分布させ得るので、多くの多角形状に自動車の内部に適用することができる。
【0073】
以下では、本発明の具体的な各実施例を提示する。但し、下記に記載された各実施例は、本発明を具体的に例示又は説明するためのものに過ぎなく、これによって本発明が制限されてはならない。
【0074】
<実施例及び比較例>
(実施例)
シルクスクリーンプリント及びバーコーティングの方法を用いて遠赤外線放射層、金属層及び金属ワイヤーを含む炭素ナノチューブ発熱層を印刷・コーティングし、製造されたそれぞれの層をラミネートして自動車用面状発熱体を製造した。
【0075】
(比較例)
前記炭素ナノチューブ発熱層を含まないことを除いては、前記実施例と同一の方法で自動車用面状発熱体を製造した。
【0076】
<実験例1>―自動車用面状発熱体の遠赤外線効果の立証実験
閉じた系(Closed System)ボックスに前記実施例及び比較例の自動車用面状発熱体を設置し、遠赤外線放射層自体を最初の距離(0cm)にした後、遠赤外線放射層から10cm、20cm、30cmだけ離れた距離による温度変化を観察した。このとき、閉じた系ボックスに88W、120Wの電力を加え、電力による温度変化をそれぞれ測定した。
【0077】
このとき、下記の表1は、実施例に88Wの電力が加えられた場合の遠赤外線放射層からの距離による温度変化を示し、下記の表2は、比較例に88Wの電力が加えられた場合の遠赤外線放射層からの距離による温度変化を示し、下記の表3は、実施例に120Wの電力が加えられた場合の遠赤外線放射層からの距離による温度変化を示し、下記の表4は、比較例に120Wの電力が加えられた場合の遠赤外線放射層からの距離による温度変化を示す。
【0082】
前記表1〜4を参照すると、炭素ナノチューブ発熱層が含む前記実施例に88Wの電力を加えた場合は約8.6℃、120Wの電力を加えた場合は約12.5℃の温度が増加すると測定されたが、これは、炭素ナノチューブ発熱層を含まない前記比較例に88W及び120Wの電力を加えた場合に比べて約2倍ほど温度が増加したことを示す。そのため、炭素ナノチューブ発熱層を含む実施例の輻射エネルギー効果が比較例に比べて優れることが分かった。
【0083】
<実験例2>―自動車用面状発熱体の実測の評価
図7は、<実験例2>において、自動車に設置された前記自動車用面状発熱体の位置を図式化して示したものであって、具体的に、人体下半身の右側の面状発熱体の位置を1とし、人体下半身の上側の面状発熱体の位置を2とし、人体下半身の左側の面状発熱体の位置を3とし、それぞれの位置に応じて前記実施例の自動車用面状発熱体を電気自動車の内部に付着させ、電気自動車に一定の電力を与えて前記実施例の自動車用面状発熱体を作動させた。
【0084】
1)発熱温度及び熱効率
下記の表5に記載したように面状発熱体を位置させ、自動車用面状発熱体を作動させた。DIN EN ISO 7730を用いて運転席の頭及び底部分にセンサーを設置し、自動車用面状発熱体による発熱温度を測定した。具体的に、前記発熱温度は、2段ギアで32km/h速度の走行条件で測定した。
【0085】
また、前記のような方法で前記自動車用面状発熱体の作動前、作動後の熱流量を測定し、熱効率を計算した。熱効率値が高いほど自動車用面状発熱体の効果が良いと判断する。
【0086】
2)人体が感じる最低の周辺大気温度
前記自動車用面状発熱体が備えられている自動車に100人を搭乗させた後、100人が感じた周辺大気の最低温度を測定し、前記自動車用面状発熱体の作動前と作動後の周辺大気温度の変化を測定した。
【0088】
前記表5を参照すると、実施例の場合、自動車の面状発熱体の位置及び作動の可否によって差はあるが、発熱温度は約50℃〜約100℃、熱効率は約30%〜約60%と測定された。また、周辺大気温度の変化は約10℃以内を維持したので、搭乗者たちは安らぎを感じ、脚、手及び胸の体温が維持されることによって熱的な快適さを感じたことを確認した。
【0089】
<実験例3>―自動車用面状発熱体の電力消耗の比較
電気自動車の内部にAir Blowing PTCヒーター(商品名、VW POLO BEHR 6R0.988.235)を設置した場合と、上述した
図6のように、実施例の自動車用面状発熱体1、2、3を電気自動車の内部に設置した場合において、自動車の内部温度を同一に上昇させるのに必要な消耗電力をDIN 1946―3でそれぞれ測定し、その結果を
図7に示した。
【0090】
図8を参考にすると、Air Blowing PTCヒーターを設置した場合と、実施例の自動車用面状発熱体を電気自動車の内部に設置した場合において、約30℃に到逹するのにかかる時間は約15分〜約20分間と類似していたが、Air Blowing PTCヒーターを設置した場合の自動車の消耗電力は3.6Wと測定され、実施例を設置した場合の自動車の消耗電力は2.8Wと測定された。そのため、実施例の自動車用面状発熱体を使用する場合に自動車の消耗電力がより少ないことを確認したので、自動車内の室内温度を確保するために自動車用面状発熱体の使用がより適切であることが分かった。
【0091】
また、Air Blowing PTCヒーター及び実施例の自動車用面状発熱体を電気自動車の内部に設置した場合、発生する輻射エネルギーを正確に測定するために、温度上昇反応が最も速く、飽和到達温度が最も高い銀箔紙を用いたD―Typeセンサーで測定し、その結果を
図8に示した。
【0092】
図9を参考にすると、電気自動車を約30分間稼動したとき、実施例の自動車用面状発熱体の場合において、Air Blowing PTCヒーターを設置した場合に比べて最大0.8kWの電力を減少させると測定され、電気自動車の消費電力が約21%減少することを確認した。そのため、従来のAir Blowing PTCヒーターに比べて、実施例の自動車用面状発熱体の場合において、消費電力に対比してエネルギー効率に優れることが分かった。