特許第6354057号(P6354057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354057
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】構造を作製するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20180702BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   H01L27/12 B
   H01L21/02 B
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-547155(P2015-547155)
(86)(22)【出願日】2013年12月2日
(65)【公表番号】特表2016-506619(P2016-506619A)
(43)【公表日】2016年3月3日
(86)【国際出願番号】IB2013002692
(87)【国際公開番号】WO2014091285
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年10月12日
(31)【優先権主張番号】12/03428
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】シブコ, アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン, イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ペルー, シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン, ソーサシェット
(72)【発明者】
【氏名】レイノー, パトリック
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/067394(WO,A1)
【文献】 特開平04−234112(JP,A)
【文献】 特表2013−513234(JP,A)
【文献】 特表2007−507093(JP,A)
【文献】 特開平11−191557(JP,A)
【文献】 特開平04−196340(JP,A)
【文献】 特開2006−216807(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0032040(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板(2)、誘電体層(10)、半導体材料中に生成された活性層(11)、前記支持基板(2)と前記誘電体層(10)との間に挿入された多結晶シリコンのセパレータ層(20)を連続して備える構造(3)を作製するための方法であって、a)前記半導体材料中に生成されたドナー基板(1)を用意するステップと、b)前記ドナー基板(1)中に脆化領域(13)を形成して、前記脆化領域(13)の両側に前記ドナー基板(1)の第1の部分(11)及び第2の部分(12)を画成するステップであり、前記第1の部分(11)が前記活性層を形成するように意図されている、ステップと、c)所定値よりも大きな抵抗率を有する前記支持基板(2)を用意するステップと、d)前記支持基板(2)上に前記セパレータ層(20)を形成するステップと、e)前記ドナー基板(1)の前記第1の部分(11)上及び/又は前記セパレータ層(20)上に前記誘電体層(10)を形成するステップと、f)前記誘電体層(10)及び前記セパレータ層(20)を介して前記ドナー基板(1)及び前記支持基板(2)を組み立てるステップと、g)前記脆化領域(13)に沿って前記ドナー基板(1)を破砕して前記構造(3)を得るステップと、h)前記ステップg)の後に前記構造(3)を少なくとも10分の強化アニールにかけるステップとを含む方法において、前記ステップd)が、前記セパレータ層(20)の前記多結晶シリコンが実質的に前記支持基板(2)に面する前記セパレータ層(20)の厚さのすべてにわたって等軸粒子を有するように実施されること、及び前記強化アニールが950℃よりも高い且つ1200℃よりも低い温度で前記ステップh)中に実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップd)が大気圧での、及び800℃〜1050℃の堆積温度での前記セパレータ層(20)の気相化学堆積のステップd1)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記強化アニールが1000℃よりも高い温度で少なくとも1時間、前記ステップh)中に実施されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記支持基板(2)の前記抵抗率の前記所定値が3000Ω.cm以上であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップf)の前に前記セパレータ層(20)の前記多結晶シリコンを熱酸化するステップを含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記支持基板(2)が前記支持基板(2)と前記セパレータ層(20)との間の結晶ネットワークを分断するのに適した分断層(21)を備え、前記セパレータ層(20)が前記ステップd)中に前記分断層(21)上に形成されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記分断層(21)が前記支持基板(2)から生じた自然酸化物であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
所定値よりも大きな抵抗率を有する支持基板(2)、誘電体層(10)、半導体材料中に生成された活性層(11)、前記支持基板(2)と前記誘電体層(10)との間に挿入された多結晶シリコンのセパレータ層(20)を連続して備える構造(3)において、前記セパレータ層(20)の前記多結晶シリコンが実質的に前記支持基板(2)に面する前記セパレータ層(20)の厚さのすべてにわたって等軸粒子を有すること、及び、前記セパレータ層(20)の前記多結晶シリコンが180nm〜250nmの平均粒子サイズを示すことを特徴とする構造(3)。
【請求項9】
前記支持基板(2)の前記抵抗率の所定値が3000Ω.cm以上であることを特徴とする、請求項に記載の構造(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持基板、誘電体層、半導体材料中に生成された活性層、支持基板と誘電体層との間に挿入された多結晶シリコンのいわゆるセパレータ層を連続して備える構造を作製するための方法に関する。また、本発明は、所定値よりも大きな抵抗率を有する支持基板、誘電体層、半導体中に生成された活性層、支持体基板と誘電体層との間に挿入された多結晶シリコンのいわゆるセパレータ層を連続して備える構造に関する。
【背景技術】
【0002】
そうした構造は、特に高周波(HF)用途、すなわち、100MHzを超える用途、例えば、支持基板の抵抗が高い、すなわち、所定の抵抗率の値が500Ω.cmよりも大きい、数GHzのオーダーを有する動作周波数を用いた集積回路用の無線周波数(RF)用途に適する。
【0003】
従来技術により、とりわけ文書FR2 953 640(以降D1)により知られている一作製方法は、a)前記半導体中に生成されたドナー基板を用意するステップと、b)ドナー基板中に脆化領域を形成して、脆化領域の両側にドナー基板の第1の部分及び第2の部分を画成するステップであって、第1の部分が活性層を形成するように意図されている、ステップと、c)所定値よりも大きな抵抗率を有する支持基板を用意するステップと、d)支持基板上にセパレータ層を形成するステップと、e)ドナー基板の第1の部分上及び/又はセパレータ層上に誘電体層を形成するステップと、f)誘電体層及びセパレータ層を介してドナー基板及び支持基板を組み立てるステップと、g)脆化領域に沿ってドナー基板を破砕して本構造を得るステップと、h)ステップg)の後に本構造を少なくとも10分の強化アニールにかけるステップと、を含む。
【0004】
D1に明示されているように、強化アニールは、加えられる熱収支がセパレータ層の多結晶シリコンを単結晶シリコンに変換するのに十分ではないように950℃未満の温度でステップh)中に実行される。RF用途にとって申し分のない、構造の抵抗率を保持するためにはセパレータ層が単結晶シリコンに変換されないことが必須である。
【0005】
D1は、強化アニールの持続時間及び/又は温度を制限することが、組立ステップf)中に界面において脆化の発生を引き起こすことを強調する。D1は、構造の密着力を強化することが可能な、プラズマ処理など中間処理によってこの欠点を改善する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、これらの中間処理を省くために代替形態を提供することを目的とする。
【0007】
この目的のために、本発明は、支持基板、誘電体層、半導体中に生成された活性層、支持基板と誘電体層との間に挿入された多結晶シリコンのいわゆるセパレータ層を連続して備える構造を作製するための方法に関し、本作製方法は、a)前記半導体中に生成されたドナー基板を用意するステップと、b)ドナー基板中に脆化領域を形成して、脆化領域の両側にドナー基板の第1の部分及び第2の部分を画成するステップであって、第1の部分が活性層を形成するように意図されている、ステップと、c)所定値よりも大きな抵抗率を有する支持基板を用意するステップと、d)支持基板上にセパレータ層を形成するステップと、e)ドナー基板の第1の部分上及び/又はセパレータ層上に誘電体層を形成するステップと、f)誘電体層及びセパレータ層を介してドナー基板及び支持基板を組み立てるステップと、g)脆化領域に沿ってドナー基板を破砕して本構造を得るステップと、h)ステップg)の後に本構造を少なくとも10分の強化アニールにかけるステップと、を含み、本作製方法は、セパレータ層の多結晶シリコンが支持基板に面するセパレータ層の厚さの少なくとも一部にわたって完全にランダムな粒子配向を示すようにステップd)が実行されること、及び強化アニールが厳密に950℃よりも高い且つ1200℃よりも低い温度で、ステップh)中に実行されることを特徴とする。
【0008】
多結晶シリコンに対して3つのタイプのモフォロジ、すなわち、
ランダムなタイプの、すなわち方向がどうであれ、ランダムな結晶学的な粒子配向を有するモフォロジと、
柱状タイプの、[111]で示される、全体的に実質的に垂直方向に偏った結晶学的な粒子配向を有するモフォロジと、
ランダムなモフォロジと柱状モフォロジとの混合モフォロジと、
がある。
【0009】
したがって、ステップd)は、支持基板に面するセパレータ層の厚さの少なくとも一部にわたって、完全にランダムな粒子配向、すなわち等軸粒子を示すセパレータ層の多結晶シリコンに適した条件で実行される。
【0010】
一実施形態によれば、ステップd)は、セパレータ層の厚さの少なくとも10%にわたって、好ましくはセパレータ層の厚さの少なくとも25%にわたって完全にランダムな粒子配向を示すセパレータ層の多結晶シリコンに適した条件で実行される。
【0011】
本出願人は、驚くことに、支持基板に面するセパレータ層の一部にわたる多結晶シリコンに対するそうしたモフォロジによって、セパレータ層の多結晶シリコンを単結晶シリコンに変換することなく、従来技術と比較して、熱収支を増加させてステップh)中に構造を強化アニールにかけることが可能であることを見出した。したがって、セパレータ層の多結晶シリコンに対するそうしたモフォロジによって、950℃よりも厳密に高い温度で強化アニールを実行すること、及びそれによって従来技術によるプラズマ処理などの中間処理を省くことが可能である。
【0012】
一実施態様によれば、セパレータ層の多結晶シリコンは、実質的にセパレータ層の厚さすべてにわたって完全にランダムな粒子配向を示す。
【0013】
したがって、セパレータ層の多結晶シリコンを単結晶シリコンに変換することなく、従来技術と比較して、最大の熱収支によってステップh)中に構造を強化アニールにかけることが可能である。
【0014】
一実施形態によれば、ステップd)は、大気圧での、及び800℃〜1050℃の、好ましくは850℃の堆積温度での、セパレータ層の気相化学堆積のステップd1)を含む。
【0015】
したがって、ステップd)に対するそうした条件によって、完全にランダムな粒子配向を示す多結晶シリコンを有するセパレータ層を形成することが可能となる。
【0016】
ステップd1)は、反応性ガスを枯渇させた飽和状態での成長速度で実行されるのが有利であり、反応性ガスは好ましくは1:6の好ましい比率を有する三塩化シラン及び水素である。
【0017】
したがって、そうした条件は、完全にランダムな粒子配向を示す多結晶シリコンを有するセパレータ層の形成に特に好都合である。
【0018】
一実施形態によれば、強化アニールは、1000℃よりも高い温度で少なくとも1時間、好ましくは1100℃よりも高い温度で少なくとも2時間、ステップh)中に実行される。
【0019】
したがって、そうした熱収支を、セパレータ層の多結晶シリコンを単結晶シリコンに変換することなく、構造に適用することができ、組立ステップf)中に生成される界面を強化することが可能となる。
【0020】
一実施態様では、セパレータ層は、eで示すいわゆる臨界厚さ以上のeで示す厚さを有し、この臨界厚さを下回ると、構造は、所定値未満の、二次高調波発生に基づく無線周波数電力を示し、この臨界厚さを上回ると、構造は、所定値以上の、二次高調波発生に基づく無線周波数電力を示し、この所定値が好ましくは絶対値として85〜105dBmであり、さらに好ましくは絶対値として90dBmに等しい。
【0021】
したがって、本出願人は、二次高調波発生に基づく無線周波数の性能レベルがセパレータ層の最小の厚さによって主に支配されていることを見出した。
【0022】
一実施形態によれば、セパレータ層の厚さは、以下の関係、すなわち、e≦e≦10e、好ましくはe≦e≦5e、さらに好ましくはe≦e≦2eを満たす。
【0023】
支持基板の抵抗率の所定値は、3000Ω.cm以上であるのが有利である。
【0024】
したがって、本出願人は、支持基板のこの抵抗率値から、減衰及びクロストークに基づく無線周波数の性能レベルは、セパレータ層には無関係なのに対して、二次高調波発生に基づく性能レベルは、支持基板に対する抵抗率を固定した状態で、セパレータ層の厚さによって依然として主に支配されることを見出した。
【0025】
一特徴によれば、本方法は、ステップf)の前にセパレータ層の多結晶シリコンを熱酸化するステップを含む。
【0026】
したがって、とりわけこの組立体が分子付着によって実施される場合、形成されるそうした酸化物の層によって組立ステップf)を容易にすることができる。
【0027】
一実施態様によれば、支持基板は、支持基板とセパレータ層との間の結晶ネットワークを分断するのに適した分断層を備え、セパレータ層がステップd)中に分断層上に形成される。
【0028】
したがって、この分断層によって、セパレータ層の多結晶シリコンが単結晶シリコンに変換されるのが回避される。
【0029】
分断層は、支持基板から生じた自然酸化物であるのが好ましい。
【0030】
したがって、本出願人は、そうした分断層が完全にランダムな粒子配向を示す多結晶シリコンのセパレータ層の形成に特に好都合であることを見出した。
【0031】
また、本発明は、所定値よりも大きな抵抗率を有する支持基板、誘電体層、半導体中に生成された活性層、支持基板と誘電体層との間に挿入された多結晶シリコンのいわゆるセパレータ層を連続して備える構造に関し、本構造は、セパレータ層の多結晶シリコンが、少なくとも支持基板に面するセパレータ層の厚さの一部にわたって完全にランダムな粒子配向を示すこと、及び、セパレータ層の多結晶シリコンが180nm〜250nm、好ましくは180nm〜200nmの平均粒子サイズを示すことを特徴とする。「平均サイズ」は、セパレータ層の厚さすべてにわたって平均化されたサイズを意味すると理解されたい。
【0032】
したがって、本発明によるそうした構造は、最小の粒子サイズを有するセパレータ層の多結晶シリコンに対してランダムなタイプのモフォロジが組み合わさることによって優れた機械的耐性強度を示す。
【0033】
本発明によるそうした構造を構造強化熱処理によって得ることができ、強化熱処理を厳密に950℃よりも高い且つ1200℃よりも低い温度で少なくとも10分実施することができ、強化アニールを1000℃よりも高い温度で少なくとも1時間、さらには1100℃よりも高い温度で少なくとも2時間実施することができる。
【0034】
セパレータ層の多結晶シリコンは、実質的にセパレータ層の厚さすべてにわたって完全にランダムな粒子配向を示すのが有利である。
【0035】
一実施形態では、セパレータ層は、eで示すいわゆる臨界厚さ以上のeで示す厚さを有し、この臨界厚さを下回ると、構造は、所定値未満の、二次高調波発生に基づく無線周波数電力を示し、この臨界厚さを上回ると、構造は所定値以上の、二次高調波発生に基づく無線周波数電力を示し、この所定値が好ましくは絶対値として85〜105dBmであり、さらに好ましくは絶対値として90dBmに等しい。
【0036】
したがって、本出願人は、二次高調波発生に基づく無線周波数の性能レベルがセパレータ層の最小の厚さによって主に支配されていることを見出した。
【0037】
一実施形態によれば、セパレータ層の厚さは、以下の関係、すなわち、e≦e≦10e、好ましくはe≦e≦5e、さらに好ましくはe≦e≦2eを満たす。
【0038】
支持基板の抵抗率の所定値は、3000Ω.cm以上であるのが有利である。
【0039】
したがって、本出願人は、支持基板のこの抵抗率値から、減衰及びクロストークに基づく無線周波数の性能レベルは、セパレータ層には無関係なのに対して、二次高調波発生に基づく性能レベルは、支持基板に対する抵抗率を固定した状態で、セパレータ層の厚さによって依然として主に支配されることを見出した。
【0040】
他の特徴及び利点は、添付図面を参照して、非限定的な例として与えられる、本発明による方法の一実施形態の以下の説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1A】本発明による構造を作製するための方法のステップを示す図である。
図1B】本発明による構造を作製するための方法のステップを示す図である。
図1C】本発明による構造を作製するための方法のステップを示す図である。
図1D】本発明による構造を作製するための方法のステップを示す図である。
図1E】本発明による構造を作製するための方法のステップを示す図である。
図1F】本発明による構造を作製するための方法のステップを示す図である。
図1G】本発明による構造を作製するための方法を示す図である。
図2】分断層が存在する構造の部分図である。
図3】追加の分断層を有する図2の実施形態の変形形態である。
図4】抵抗率試験の実装態様を示す本発明による構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1A〜1Gに示す作製方法は、支持基板2、誘電体層10、半導体中に生成された活性層11、支持基板2と誘電体層10との間に挿入された多結晶シリコンのいわゆるセパレータ層20を連続して備える構造3を作製するための方法である。
【0043】
本作製方法は、前記半導体中に生成されたドナー基板1を用意するステップからなる、図1Aに示すステップa)を含む。ドナー基板1の半導体材料は、シリコンであってもよい。
【0044】
本作製方法は、ドナー基板1上に誘電体層10を形成するステップからなる、図1Bに示すステップe)を含む。誘電体層10は、二酸化シリコンであってもよい。この誘電体層10は、ドナー基板1の熱酸化によってもたらされてもよく、又は(「化学気相堆積」及び「低圧化学気相堆積」を意味する)略語CVD及びLPCVDによって当業者によく知られている気相化学堆積技法の1つによって、従来通り堆積によって形成されてもよい。
【0045】
本作製方法は、ドナー基板1中に脆化領域13を形成して、脆化領域13の両側にドナー基板1の第1の部分11及び第2の部分12を画成するステップからなる、図1Cに示すステップb)を含み、第1の部分11が活性層を形成するように意図されている。脆化領域13は、好ましくは水素及び/又はヘリウムなどの種を注入することによって、ステップb)中に形成される。注入は、水素などの単一の種によってだけでなく、水素及びヘリウムなどの、連続して注入される複数の種によって行なわれてもよい。注入のパラメータである、基本的なドーズ量及びエネルギーは、種及びドナー基板1の性質によって決定される。
【0046】
本作製方法は、所定値よりも大きな抵抗率を有する支持基板2を用意するステップからなる、図1Dに示すステップc)を含む。抵抗率の最小の所定値は、従来通り500Ω.cmである。支持基板2は、シリコン中に生成されてもよい。この支持基板2は、500Ω.cmよりも大きい、さらに1000Ω.cmよりも大きい、さらに好ましくは2000Ω.cmよりも大きい、さらに好ましくは3000Ω.cmよりも大きい抵抗率を支持基板2に付与することができる熱処理を受けたという特徴を有する。この熱処理は、本作製方法の文脈において、支持基板2を作製するときに、又はその後に実施されてもよい。一代替形態によれば、支持基板2は、500Ω.cmを超える抵抗率を支持基板2に付与するために、低い酸素含有量を有する材料中に生成されてもよい。
【0047】
本作製方法は、支持基板2上にセパレータ層20を形成するステップからなる、図1Eに示すステップd)を含む。ステップd)は、大気圧での、及び800℃〜1050℃、好ましくは850℃の堆積温度によるセパレータ層の気相化学堆積(すなわち、PECVDタイプの堆積)のステップd1)を含む。ステップd1)は、反応性ガスを枯渇させた飽和状態での成長速度で実施される。したがって、ステップd)は、セパレータ層20の多結晶シリコンがセパレータ層20の厚さのすべて又は一部にわたって完全にランダムな粒子配向を示すように、又は言いかえれば、セパレータ層20の多結晶シリコンがセパレータ層20の厚さのすべて又は一部にわたって等軸粒子を有するように実施される。
【0048】
本作製方法は、誘電体層10及びセパレータ層20を介してドナー基板1及び支持基板2を組み立てるステップからなる、図1Fに示すステップf)を含む。ステップf)は、分子付着タイプの接合によって実施されてもよい。
【0049】
組立ステップf)の前に、及びセパレータ層20の自由表面を研磨する任意選択のステップ(図示せず)の後に、セパレータ層20は、eで示すいわゆる臨界厚さ以上のeで示す厚さを有し、この臨界厚さを下回ると、構造3は、所定値未満の、二次高調波発生に基づく無線周波数電力を示し、この臨界厚さを上回ると、構造3は、所定値以上の、二次高調波発生に基づく無線周波数電力を示し、所定値が好ましくは絶対値として85〜105dBmであり、さらに好ましくは絶対値として90dBmに等しい。セパレータ層20の厚さは、以下の関係、すなわち、e≦e≦10e、好ましくはe≦e≦5e、さらに好ましくはe≦e≦2eを満たす。例として、セパレータ層20の臨界厚さは、約1μmである。本作製方法がステップf)の前にセパレータ層20の多結晶シリコンを熱酸化するステップを含む場合、セパレータ層の臨界厚さは、約3.5μmである。セパレータ層20の多結晶シリコンの熱酸化がない状態で、本出願人は、二次高調波発生に基づく無線周波数電力に対するレベルを明らかにした。言いかえれば、臨界厚さを上回ると、二次高調波発生に基づく無線周波数電力は、所定値と実質的に等しい。セパレータ層20の多結晶シリコンの熱酸化が存在する状態では、このレベルが観察されなかったことに留意されたい。
【0050】
本作製方法は、脆化領域13に沿ってドナー基板1を破砕して、図1Gに示す構造3を得るステップからなるステップg)を含む。
【0051】
本作製方法は、ステップg)の後に構造3を少なくとも10分の強化アニールにかけるステップからなるステップh)を含み、強化アニールが厳密に950℃よりも高い且つ1200℃よりも低い温度でステップh)中に実施される。強化アニールは、1000℃よりも高い温度で少なくとも1時間、さらに1100℃よりも高い温度で少なくとも2時間、ステップh)中に実施されてもよい。
【0052】
図1Gに示す構造3では、セパレータ層20の多結晶シリコンは、ステップh)の後に、用いた熱収支に応じて、180nm〜250nm、好ましくは180nm〜200nmの平均粒子サイズを示す。
【0053】
図2に示すように、支持基板2は、支持基板2とセパレータ層20との間の結晶ネットワークを分断するのに適した分断層21を備えてもよく、セパレータ層20がステップd)中に分断層21上に形成される。支持基板2がシリコン中に生成される場合、分断層21は、シリコンとは異なるメッシュパラメータを示す濃度勾配を有する層であってもよい。このメッシュパラメータの差は、例えば5%よりも大きい。この分断層21は、いかなる状況下でも純粋な単結晶シリコンを含有すべきではない。また、分断層21は、SiC又はSiGeなどのIV−IV材料中に生成されてもよい。
【0054】
さらに、セパレータ層20は、そのキャビティ及び粒子接合部によって、
抵抗率を低下させる汚染物質(B、P、Ca、Naなど)をトラップすること、
誘電体層10の下に含まれる電荷に対するバリアを形成すること、が可能である。
【0055】
図3に示すように、セパレータ層20が2つの分断層21間にはさまれるように、追加の分断層21を形成することも可能である。追加の分断層21によって、活性層11が単結晶シリコン中に生成されるときに、活性層11がもとでセパレータ層20の多結晶シリコンが単結晶シリコンに変換されるのを回避することが可能となる。
【0056】
図4では、本発明により得られた構造の抵抗率をテストすることが目的である。
【0057】
このキャラクタリゼーションは、一方ではよく知られたいわゆる(「4点プローブ」を意味する)「4pp」法を使用して、すなわち構造のすべてを通る4つの電極を使用することによって達成される。
【0058】
図4によって示すように、やはりよく知られた「SRP」と呼ばれる第2の方法によって、ベベルによって、深さの関数としての抵抗率の傾向をプロットすることが可能である。
【0059】
上記の本発明の実施態様は、全く限定的でないのは明らかである。いかなる仕方であれ本発明の枠組みから逸脱することなしに実施形態の他の変形形態において本発明に対して細部及び改善点を追加することができる。
図1A-1G】
図2
図3
図4