特許第6354119号(P6354119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6354119表面修飾金属酸化物粒子材料、分散液、シリコーン樹脂組成物、シリコーン樹脂複合体、光半導体発光装置、照明器具及び液晶画像装置
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  • 特許6354119-表面修飾金属酸化物粒子材料、分散液、シリコーン樹脂組成物、シリコーン樹脂複合体、光半導体発光装置、照明器具及び液晶画像装置 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354119
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】表面修飾金属酸化物粒子材料、分散液、シリコーン樹脂組成物、シリコーン樹脂複合体、光半導体発光装置、照明器具及び液晶画像装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/14 20060101AFI20180702BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20180702BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20180702BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20180702BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   C01B13/14 B
   C08L83/07
   C08K9/06
   H01L33/56
   G02F1/13357
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-105433(P2013-105433)
(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公開番号】特開2014-227425(P2014-227425A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【弁理士】
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 健司
(72)【発明者】
【氏名】栗野 恭行
(72)【発明者】
【氏名】大塚 剛史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】山口 健児
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−195646(JP,A)
【文献】 特開2010−090008(JP,A)
【文献】 特開2010−100784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/00 − 13/36
C08K 9/06
C08L 83/07
G02F 1/13357
H01L 33/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒子径が3nm以上10nm以下である金属酸化物粒子が、少なくともフェニル基を有する表面修飾材料及びハイドロジェン基を有する表面修飾材料によってそれぞれ表面修飾されており、
前記表面修飾材料の表面修飾量(表面修飾材料/金属酸化物粒子)が5〜40質量%であり、
前記フェニル基を含有する表面修飾材料が、下記式(1)で示される構造の材料、下記式(2)で示される構造の材料、及びフェニル基とアルコキシ基を含有するレジン構造(三次元網状構造)のシリコーン材料から選択される1種以上であり、
前記ハイドロジェン基を含有する表面修飾材料が、トリエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメチルクロロシラン、及びエチルジクロロシランから選択される1種以上である、表面修飾金属酸化物粒子材料。

(式(1)中、nは1〜3の整数である。Xはメトキシ基、エトキシ基、水酸基、ハロゲン原子、及びカルボキシ基から選択され、4−nが2以上の場合、全てのXが同一でもよく、又は異なっていてもよい。)

(式(2)中、aは1〜100の整数であり、bは0〜100の整数であり、cは1〜3の整数である。A、B、C、Dはフェニル基または炭素数1〜6のアルキル基から選択される1ないし2種以上であり、少なくともA、Bの内いずれかはフェニル基である。A、B、C、D全てがフェニル基であってもよい。また、Si・A・B・Oにより構成される部位と、Si・C・D・Oにより構成される部位の位置及び配列は任意であり、ランダムポリマー型である。Xはメトキシ基、エトキシ基、水酸基、ハロゲン原子、及びカルボキシ基から選択され、cが2以上の場合、全てのXが同一でもよく、又は異なっていてもよい。)
【請求項2】
請求項1に記載の表面修飾金属酸化物粒子材料を含む分散液。
【請求項3】
請求項1に記載の表面修飾金属酸化物粒子材料と、フェニルシリコーン樹脂形成成分及びメチルフェニルシリコーン樹脂形成成分から選択される1種以上を含有するシリコーン樹脂形成成分と、ヒドロシリル化触媒とを少なくとも含み、該シリコーン樹脂形成成分がアルケニル基及びアルキニル基から選択される1種以上を有するシリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させてなるシリコーン樹脂複合体。
【請求項5】
半導体発光素子が封止材により封止されてなる光半導体発光装置であって、
前記封止材が請求項4に記載のシリコーン樹脂複合体からなり、当該封止材からなる封止層の厚さが50μm以上である光半導体発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光半導体発光装置を備えてなる照明器具。
【請求項7】
請求項5に記載の光半導体発光装置を備えてなる液晶画像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面修飾金属酸化物粒子材料、分散液、シリコーン樹脂組成物、シリコーン樹脂複合体、これを封止材として用いた光半導体発光装置、該光半導体発光装置を具備する照明器具及び液晶画像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂は、透明性、耐熱性、耐光性等の特性が優れ、また硬さやゴム弾性に優れるため、光半導体素子の封止材や光導波路材料等に用いられる。
特に、光半導体発光素子の一種である発光ダイオード(LED)の封止材料としては、有機変性シリコーン樹脂、フェニル(又はメチルフェニル)シリコーン樹脂(例えば、特許文献1参照)、ジメチルシリコーン樹脂(例えば、特許文献2参照)等がある。
【0003】
これまでにシリコーン樹脂は耐久性に優れるものの、ガスバリア性が低いという課題があり、これに対して金属酸化物粒子を含有させることにより解決を試みてきた。シリコーン樹脂と金属酸化物粒子とを透明複合化するためには、粒子表面を有機シラン剤で処理しなければならない。例えば、エポキシ基含有シラン剤やビニル基含有シラン剤を用いて表面処理を施すことで、樹脂の硬化時に粒子の凝集を防ぎ、透明複合体を作製が可能となる(例えば、特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−270004号公報
【特許文献2】特開2011−096793号公報
【特許文献3】特開2005−200657号公報
【特許文献4】特開2006−70266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、表面処理剤中にエポキシ基を有していたり、複合体中に未反応のビニル基が過剰に残存すると、複合体に熱負荷をかけたときに黄変するという課題があった。また、表面処理剤とシリコーン樹脂との整合性が不十分な場合には、ガスバリア性の向上が図れなかったり、熱負荷時に粒子凝集が発生(粒子分散性が低下)して透過率が低下したりするという問題もあった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、具体的には、光半導体発光装置用の封止材等に用いられた場合に、高い耐熱性(すなわち、熱負荷時の着色や、熱負荷時の粒子凝集による透過率低下が抑制されていること)を有し、高いガスバリア性を発揮し得る表面修飾金属酸化物粒子材料、該表面修飾金属酸化物粒子材料を含有する分散液、シリコーン樹脂組成物及びシリコーン樹脂複合体、並びに該シリコーン樹脂複合体を封止材に用いた光半導体発光装置、該光半導体発光装置を具備する照明器具及び液晶画像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、平均一次粒子径が所定の範囲の金属酸化物粒子に対し、少なくともフェニル基とハイドロジェン基とを有する表面修飾材料によって表面修飾を行うことにより得られる表面修飾金属酸化物粒子材料を用いることにより、当該課題を解決できることを見出した。具体的には、この表面修飾金属酸化物粒子材料を特定のシリコーン樹脂に含有させたシリコーン樹脂複合体を、光半導体発光装置における発光素子の封止材に用いることで、発光素子からの透光性を損なうことなく、さらに封止層の耐熱性及びガスバリア性をも向上させることができることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明は下記の通りである。
【0007】
[1] 平均一次粒子径が3nm以上10nm以下である金属酸化物粒子に対し、少なくともフェニル基とハイドロジェン基とを有する表面修飾材料によって表面修飾を行った表面修飾金属酸化物粒子材料。
[2] 上記[1]に記載の表面修飾金属酸化物粒子材料を含む分散液。
[3] 上記[1]に記載の表面修飾金属酸化物粒子材料と、フェニルシリコーン樹脂形成成分及びメチルフェニルシリコーン樹脂形成成分から選択される1種以上を含有するシリコーン樹脂形成成分と、ヒドロシリル化触媒とを少なくとも含み、該シリコーン樹脂形成成分がアルケニル基及びアルキニル基から選択される1種以上を有するシリコーン樹脂組成物。
[4] 上記[3]に記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させてなるシリコーン樹脂複合体。
[5] 半導体発光素子が封止材により封止されてなる光半導体発光装置であって、
前記封止材が[4]に記載のシリコーン樹脂複合体からなり、当該封止材からなる封止層の厚さが50μm以上である光半導体発光装置。
[6] 上記[5]に記載の光半導体発光装置を備えてなる照明器具。
[7] 上記[5]に記載の光半導体発光装置を備えてなる液晶画像装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光半導体発光装置用の封止材等に用いられた場合に、高い耐熱性を有し、高いガスバリア性を発揮し得る表面修飾金属酸化物粒子材料、該表面修飾金属酸化物粒子材料を含有する分散液、シリコーン樹脂組成物及びシリコーン樹脂複合体、並びに該シリコーン樹脂複合体を封止材に用いた光半導体発光装置、該光半導体発光装置を具備する照明器具及び液晶画像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の光半導体発光装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の光半導体発光装置の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
[1.表面修飾金属酸化物粒子材料]
本発明における表面修飾金属酸化物粒子材料は、特定粒子径の金属酸化物粒子に対し、少なくともフェニル基及びハイドロジェン基を有する表面修飾材料によって表面修飾されてなる。なお、本発明における「ハイドロジェン基」とは、有機ケイ素化合物中のケイ素原子に直接結合する水素(Si−H結合におけるH)を意味する。また、ハイドロジェン基を「Si−H基」と表記する場合がある。
(金属酸化物粒子)
金属酸化物粒子の種類は特に限定はないが、封止材等の透明性を保持する観点からナノメートルサイズの粒子径を得ることができる種類が好ましく、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム等が挙げられる。中でも、酸化ケイ素はシリコーン樹脂との屈折率差が少なく、粒子径が大きい場合でも透明性を低下させることなく分散させることができることで好ましい。
また、シリコーン樹脂に比べ屈折率が高い金属酸化物粒子を用いることにより、シリコーン樹脂複合体の屈折率を高められ、当該シリコーン樹脂複合体を光半導体発光装置の封止材に用いた場合、光の取り出し効率を向上させることができるので好ましい。この金属酸化物粒子の屈折率は1.5以上であることが好ましく、1.7以上であることがより好ましく、1.9以上であることがさらに好ましい。このような金属酸化物粒子としては、酸化チタンや酸化ジルコニウム(ジルコニア)が好ましく、特にジルコニアが好ましい。
なお、本明細書において、「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と表現する場合は、特にことわらない限り「X以上Y以下」を意味する。
【0011】
金属酸化物粒子の平均一次粒子径は3〜10nmである。平均一次粒子径が3nm未満だと結晶性が悪くなるのに加え、表面活性が強く、粒子間相互作用を生じてシリコーン樹脂組成物(後述)の粘度が高くなる。一方、平均一次粒子径が10nmより大きくなると、金属酸化物と、表面修飾材料を含むシリコーン樹脂との屈折率差が大きいため散乱による透過率の低下が顕著となる。
平均一次粒子径は、4nm〜8nmであることが好ましく、4nm〜6nmであることがより好ましい。
【0012】
(表面修飾材料)
金属酸化物粒子の表面修飾に用いられる表面修飾材料は、少なくともフェニル基とハイドロジェン基(Si−H結合)とを含有している。当該表面修飾材料は、1つの材料中にフェニル基とハイドロジェン基との両方を含有するものでもよく、フェニル基を含有する修飾材料とハイドロジェン基を含有する修飾材料との両方を併用したものでもよい。
また、シリコーン樹脂複合体や組成物中で表面修飾金属酸化物粒子材料を均一に分散安定化させる目的で、その他の構造を有する修飾材料を併用してもよい。
【0013】
表面修飾材料にフェニル基を含有させる理由は、シリコーン樹脂複合体においてマトリックスとなるフェニルシリコーン樹脂及びメチルフェニルシリコーン樹脂から選択される1種以上の樹脂(以下、これらをまとめて「(メチル)フェニルシリコーン樹脂」ということがある)との界面親和性を確保するためと、表面修飾材料のフェニル基と(メチル)フェニルシリコーン樹脂のフェニル基とのπ−πスタッキングにより表面修飾金属酸化物粒子と(メチル)フェニルシリコーン樹脂とが近接することでシリコーン樹脂複合体中の隙間を少なくすることができ、ガスの透過性を抑えることができるためである。
【0014】
表面修飾材料にハイドロジェン基を含有させる理由は、シリコーン樹脂組成物が重合硬化する際に、表面修飾材料のハイドロジェン基とマトリックスとなるシリコーン樹脂形成成分中のアルケニル基やアルキニル基とが架橋反応(ヒドロシリル化反応)により結合することができ、重合硬化過程で表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂とが相分離することを防ぐことができるためである。また、表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂とが架橋反応することによって表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂とが近接しシリコーン樹脂複合体中の隙間を少なくすることができ、ガスの透過性を抑えることができるためである。なお、「樹脂形成成分」については後述する。
【0015】
このように、表面修飾材料にフェニル基とハイドロジェン基とを含有させることにより、表面修飾材料と、(メチル)フェニルシリコーン樹脂を含むマトリックスシリコーン樹脂との整合性を向上させて一体化することで、熱負荷時の粒子凝集による透過率低下を抑制することができる。また、エポキシ基やビニル基を存在させる必要がないので、熱負荷時の着色原因自体を取り除くことができる。さらには、フェニル基自体が耐熱性が高い。以上のように、本発明における表面修飾材料は、それ自体の耐熱性が高い。
そして、表面修飾材料とマトリックスシリコーン樹脂との整合性が向上し一体化しているから、ガスバリア性も高い。
このように、耐熱性に優れる表面修飾材料を用いることによって、マトリックスシリコーン樹脂の耐熱性を損なうことなく、ガスの透過性を抑えることができる。なおここで、上記耐熱性に優れるとは、熱負荷試験(150℃、1000時間)後において表面修飾構造や表面修飾材料に変化のないこと(すなわち樹脂組成物中での表面修飾金属酸化物粒子材料が熱負荷により凝集を起こして分散性が変化することや、樹脂組成物や樹脂複合体中での表面修飾材料が熱負荷により着色を起こすことがないこと)を意味する。
【0016】
フェニル基を含有する表面修飾材料としては、構造中にフェニル基を含有していれば特に限定はないが、以下の式(1)、式(2)で示される構造の材料やフェニル基とアルコキシ基を含有するレジン構造(三次元網状構造)のシリコーン材料等が挙げられる。
【0017】
【化1】
(式(1)中、nは1〜3の整数である。Xはメトキシ基、エトキシ基、水酸基、ハロゲン原子、及びカルボキシ基から選択され、4−nが2以上の場合、全てのXが同一でもよく、又は異なっていてもよい。)
【0018】
【化2】
(式(2)中、aは1〜100の整数であり、bは0〜100の整数であり、cは1〜3の整数である。A、B、C、Dはフェニル基または炭素数1〜6のアルキル基から選択される1ないし2種以上であり、少なくともA、Bの内いずれかはフェニル基である。A、B、C、D全てがフェニル基であってもよい。また、Si・A・B・Oにより構成される部位と、Si・C・D・Oにより構成される部位の位置及び配列は任意であり、ランダムポリマー型である。Xはメトキシ基、エトキシ基、水酸基、ハロゲン原子、及びカルボキシ基から選択され、cが2以上の場合、全てのXが同一でもよく、又は異なっていてもよい。)
【0019】
具体的には、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、アルコキシ基含有フェニルシリコーン樹脂、アルコキシ基含有メチルフェニルシリコーン樹脂等が挙げられ、その他にフェニル基を含有する表面修飾材料として安息香酸、安息香酸メチル、トルイル酸、フタル酸などフェニル基含有有機酸化合物が挙げられる。
これらの中で、耐熱性にも優れるという観点からは、アルコキシ基含有フェニルシリコーン樹脂、アルコキシ基含有メチルフェニルシリコーン樹脂が好ましい。
【0020】
ハイドロジェン基を含有する表面修飾材料としては、構造中にハイドロジェン基(Si−H結合)を含有していれば特に限定はないが、例えば、トリエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメチルクロロシラン、エチルジクロロシラン等が挙げられる。
これらの中で、耐熱性にも優れるという観点からは、トリエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジエトキシメチルシランが好ましい。
【0021】
フェニル基とハイドロジェン基の両方を含有する表面修飾材料としては、構造中にフェニル基とハイドロジェン基(Si−H結合)を含有していれば特に限定はないが、以下の式(3)、式(4)で示される構造の材料や、フェニル基とアルコキシ基を含有しさらにケイ素に直接結合する水素を含むレジン構造(三次元網状構造)のシリコーン材料等が挙げられる。
【0022】
【化3】
(式(3)中、n及びmは1または2であり、かつnとmの合計は3以下である。Xはメトキシ基、エトキシ基、水酸基、ハロゲン原子、及びカルボキシ基から選択され、4−n−mが2の場合(n=m=1の場合)、2個のXは同一でもよく、又は異なっていてもよい。)
【0023】
【化4】
(式(4)中、aは1〜100の整数であり、bは0〜100の整数である。A、B、C、Dはフェニル基、炭素数1〜6のアルキル基またはハイドロジェン基から選択される1ないし2種以上であり、少なくともA、Bの内いずれかはフェニル基である。A、B、C、D全てがフェニル基であってもよい。また、Si・A・B・Oにより構成される部位と、Si・C・D・Oにより構成される部位の位置及び配列は任意であり、ランダムポリマー型である。Xはメトキシ基、エトキシ基、水酸基、ハロゲン原子、及びカルボキシ基から選択され、cが2以上の場合、全てのXが同一でもよく、又は異なっていてもよい。A、B、C、Dのうち少なくとも一つがハイドロジェン基の場合には、cは1〜3の整数、dは0〜2の整数、かつcとdとの合計は3以下であり、A、B、C、Dのいずれにもハイドロジェン基を含まない場合には、c及びdは1または2で、かつcとdとの合計は3以下である。)
【0024】
具体的には、フェニルジクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、フェニルクロロシラン、フェニルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0025】
また、後述するシリコーン樹脂組成物やシリコーン樹脂複合体中において、金属酸化物粒子を均一に分散安定化させる目的で併用されるその他の構造の表面修飾材料としては、アルコキシ片末端フェニルシリコーン、アルコキシ片末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ片末端ジメチルシリコーン、アルキルシラン化合物等が挙げられる。
【0026】
さらに本発明においては、少なくともフェニル基とハイドロジェン基とを有する表面修飾材料による表面修飾を行った後、あるいは該表面修飾と同時に、アルケニル基やアルキニル基を有する表面修飾材料により表面修飾を行ってもよい。これにより金属酸化物粒子表面にハイドロジェン基と、アルケニル基やアルキニル基との双方を修飾担持させることができる。
上記アルケニル基を有する表面修飾材料としては、例えばビニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、アルコキシ片末端ビニル片末端ジメチルシリコーン、アルコキシ片末端ビニル片末端フェニルシリコーン、アルコキシ片末端ビニル片末端メチルフェニルシリコーン等が挙げられる。
【0027】
前述の通り、表面修飾材料中のハイドロジェン基は、シリコーン樹脂組成物が重合硬化する際に、マトリックスシリコーン樹脂形成成分中のアルケニル基やアルキニル基と架橋反応(ヒドロシリル化反応)により結合し一体化することができる。そして、この結合作用により、重合硬化過程における表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂との相分離を防ぐとともに、表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂とを近接させてシリコーン樹脂複合体中の隙間を少なくし、ガスの透過性を抑えることができる。
ところで、マトリックスシリコーン樹脂形成成分の硬化は、後述のように、付加硬化型が選択されることが好ましい。この付加硬化とは、シリコーン樹脂形成成分中のシロキサンポリマーに配されたアルケニル基ないしはアルキニル基と、同じくシロキサンポリマー中のハイドロジェン基とが、白金族金属系触媒による付加反応(ヒドロシリル化反応)により重合することで硬化するものである。従って、マトリックスシリコーン樹脂形成成分は、少なくともアルケニル基またはアルキニル基を含有するシリコーン樹脂形成成分と、ハイドロジェン基を含有するシリコーン樹脂形成成分とを含有している。
そこで、金属酸化物粒子表面にハイドロジェン基だけでなくアルケニル基やアルキニル基も修飾担持させることにより、金属酸化物粒子表面のハイドロジェン基とマトリックスシリコーン樹脂形成成分中のアルケニル基やアルキニル基が架橋反応できるだけでなく、金属酸化物粒子表面のアルケニル基やアルキニル基とマトリックスシリコーン樹脂形成成分中のハイドロジェン基も架橋反応できるので、金属酸化物粒子とマトリックスシリコーン樹脂との一体化をより図ることができる。
【0028】
なお、シリコーン樹脂複合体中に過剰のアルケニル基やアルキニル基が残存していると、熱負荷時に着色が発生するおそれがある。従って、シリコーン樹脂組成物中に含まれるアルケニル基とアルキニル基は、できるだけハイドロジェン基とのヒドロシリル化反応等により消費されてしまうことが好ましい。このため、シリコーン樹脂組成物中に含まれるハイドロジェン基の全量は、アルケニル基とアルキニル基の全量とヒドロシリル化反応できる量以上であることが好ましく、その1.2倍以上(すなわちハイドロジェン基が過剰な状態)であればより好ましい。なおここで、全量とは表面修飾材料中の量とマトリックスシリコーン樹脂形成成分中の量との合計量を意味する。
【0029】
表面修飾材料による金属酸化物粒子への表面修飾方法としては、湿式法や乾式法等が挙げられる。湿式法は溶媒に金属酸化物粒子と表面修飾材料、必要に応じて表面修飾材料を加水分解させるための触媒を投入し、加熱撹拌やビーズメディア等外部からエネルギーを加えて金属酸化物粒子に溶媒中で表面修飾させながら分散させる方法が挙げられる。また、乾式法は金属酸化物粒子と表面修飾材料を混練機等により混合しながら表面修飾金属酸化物粒子を得るといった方法が挙げられる。
【0030】
金属酸化物粒子に対する上記表面修飾材料の表面修飾量(表面修飾材料/金属酸化物粒子)は5〜40質量%であることが好ましい。表面修飾量がこの範囲にあれば、後述するシリコーン樹脂中での表面修飾金属酸化物粒子材料の分散性を高く維持することができ、透明性の低下やガス透過性を抑えることができる。
上記表面修飾量は、10〜30質量%であることがより好ましい。
なお、上記表面修飾量は、150℃乾燥後の表面修飾金属酸化物粒子を750℃で熱処理し、熱処理後の質量減少量を表面修飾材料の質量として算出したものである。
【0031】
[2.分散液]
本発明の分散液は、前記本発明の表面修飾金属酸化物粒子材料を分散媒に分散させたものである。本発明の分散液によれば、本発明の表面修飾金属酸化物粒子材料を分散媒中に分散してなることとしたので、これとマトリックスシリコーン樹脂形成成分とを組み合わせる際に、表面修飾金属酸化物粒子材料をマトリックスシリコーン樹脂形成成分中に均一かつ良好な分散状態で分散させることができ、よって成形性、加工性に優れ、また透明性に優れたシリコーン樹脂組成物、さらにこれを硬化させたシリコーン樹脂複合体を得ることができる。
【0032】
本発明の分散液における粒子材料の含有率は、5質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。粒子材料の含有率をこの範囲とすることにより、粒子材料が良好な分散状態を取りうることができる。粒子材料の含有率は、より好ましくは10質量%以上30質量%である。
【0033】
分散媒としては、粒子材料を分散させることができる溶媒であればよく、例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ‐ブチルラクトンなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルアミド、などの芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0034】
また、本発明の分散液は、粒子材料の分散性向上や分散液の安定性のために、その特性を損なわない範囲において分散剤、表面処理剤、水溶性バインダー等(分散剤等)を含んでいてもよい。
分散剤や表面処理剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、オルガノアルコキシシランやオルガノクロロシランなどのシランカップリング剤、ポリエチレンイミン系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤、ポリアリルアミン系高分子分散剤等の高分子分散剤が好適に用いられ、これらの分散剤や表面処理剤は複合微粒子の粒子径や目的とする分散媒の種類により適宜選択すればよく、上記分散剤の1種又は2種以上を混合して用いても良い。水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシセルロース、ポリアクリル酸等を用いることができる。
分散液中の配合量としては、分散剤等(固形分量)の総量が、粒子材料に対して1〜15質量%の範囲であることが好ましく、2〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0035】
分散処理を施すための方法としては、公知の分散装置を単独又は組み合わせて使用することができ、例えば、ビーズミル、ナノマイザー、ジェットミル、ホモジナイザー、遊星ミル、超音波分散器などを単独で又は組み合わせて用いることができる。この中でも、ビーズ径の選択により分散粒径の制御が容易なビーズミルが好適に用いられる。分散処理に要する時間としては、粒子材料が分散媒中に均一に分散されるのに十分な時間であれば良い。
【0036】
[3.シリコーン樹脂組成物]
本発明のシリコーン樹脂組成物は、少なくとも前述の本発明の表面修飾金属酸化物粒子材料と、フェニルシリコーン樹脂形成成分及びメチルフェニルシリコーン樹脂形成成分から選択される1種以上を含有するシリコーン樹脂形成成分と、ヒドロシリル化触媒とを含んでなり、該シリコーン樹脂形成成分がアルケニル基及びアルキニル基から選択される1種以上を有する組成物である。
なおここで「樹脂組成物」とは、流動性を有することで特定の形状を有さず、一度変形すると元の形状には戻らない不可逆的な変形性を有するものであって、後述の透明な樹脂複合体の原料となるものである。この樹脂組成物の状態としては、例えば、液状やチクソトロピー性を有するゲル状の状態にあるものを示すことができる。また、「樹脂形成成分」とは、後述の樹脂複合体における樹脂成分を形成するための成分であり、通常は樹脂成分のモノマー、オリゴマーやプレポリマーであって液状のものが含まれる。
【0037】
シリコーン樹脂組成物中、表面修飾金属酸化物粒子及びシリコーン樹脂形成成分の合計量に対する金属酸化物粒子の含有量は5質量%以上であることが好ましい。含有量が5質量%未満であると、当該樹脂組成物を硬化させたシリコーン樹脂複合体におけるガス透過性低減効果が少なくなるために、金属酸化物粒子を含有させることによる実質的な効果が得られなくなってしまう。当該含有量は、20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。なおここで、金属酸化物粒子の含有量には表面修飾材料を含まない。
【0038】
(シリコーン樹脂形成成分)
シリコーン樹脂形成成分は、フェニルシリコーン樹脂形成性成分及びメチルフェニルシリコーン樹脂形成成分から選択される1種以上を含有する。
フェニルシリコーン樹脂形成成分としては、シロキサンポリマーにフェニル基を配したものが挙げられる。メチルフェニルシリコーン樹脂形成成分としては、シロキサンポリマーにフェニル基とメチル基(アルキル基)を配したものが挙げられる。また、その他にフェニル基を配したシロキサン構造とエポキシ基や他の炭化水素を組み合わせた変性シリコーン樹脂がある。構造としては直鎖状のほかに、二次元構造の鎖状のものや三次元網状構造のレジン、かご型構造などがある。
フェニルシリコーン樹脂形成成分及びメチルフェニルシリコーン樹脂形成成分は単独で用いてもよく、両成分を組み合わせて用いてもよい(以下、フェニルシリコーン樹脂形成成分、メチルフェニルシリコーン樹脂形成成分、及び両成分を組み合わせたものをまとめて「(メチル)フェニルシリコーン樹脂形成成分」ということがある)。また、上記のような各種構造を有するものを組み合わせてもよく、さらに上記のような変性シリコーン樹脂を加えてもよい。
【0039】
本発明のシリコーン樹脂組成物におけるシリコーン樹脂形成成分は、上記フェニルシリコーン樹脂形成成分及びメチルフェニルシリコーン樹脂形成成分から選択される1種以上を含有し、さらにアルケニル基及びアルキニル基から選択される1種以上の基を有するものである。
ここで、上記シリコーン樹脂形成成分には、(メチル)フェニルシリコーン樹脂形成成分以外に他のシリコーン樹脂形成成分が含まれていてもよい。すなわち、本発明におけるシリコーン樹脂形成成分がアルケニル基及びアルキニル基から選択される1種以上の基を有するとは、(メチル)フェニルシリコーン樹脂形成成分中にアルケニル基及びアルキニル基から選択される1種以上の基が含まれていてもよいこと、その他のシリコーン樹脂形成成分中にアルケニル基及びアルキニル基から選択される1種以上の基が含まれていてもよいこと(このシリコーン樹脂形成成分を「アルケニル/アルキニル基含有シリコーン樹脂形成成分」ということがある)、さらにはこれらの両者にアルケニル基及びアルキニル基から選択される1種以上の基が含まれていてもよいことを意味する。
【0040】
本発明のシリコーン樹脂組成物によれば、このシリコーン樹脂形成成分のアルケニル基やアルキニル基と、表面修飾材料のハイドロジェン基とが架橋反応(ヒドロシリル化反応)により結合し一体化することにより、重合硬化過程における表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂との相分離を防ぎ、さらには表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂とが近接することでシリコーン樹脂複合体中の隙間を少なくし、ガスの透過性を抑えることができる。
【0041】
前記(メチル)フェニルシリコーン樹脂形成成分中にアルケニル基及びアルキニル基から選択される1種以上の基を有するものとしては、例えば一つのシロキサンポリマー中に、少なくともフェニル基並びにアルケニル基及びアルキニル基から選択される1種以上の基とが配されているものが挙げられる。そして、この条件を満たすものであれば、一つのシロキサンポリマー中に、フェニル基と、アルケニル基及びアルキニル基から選択される1種以上の基とが任意に配されたものであってよい。アルケニル基やアルキニル基は、重合反応性の点から、一つのシロキサンポリマー中に2個以上配されていることが好ましい。
【0042】
このアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が挙げられ、特にビニル基であることが好ましい。またアルキニル基としては、エチニル基、プロパギル基(プロピニル基)が挙げられる。そして、これらのアルケニル基やアルキニル基は任意に組み合わせることができる。例えば、一つのシロキサンポリマー中にフェニル基及びビニル基を配したものが一般的であるが、それに限定されるものではなく、一つのシロキサンポリマー中にフェニル基、ビニル基(アルケニル基)及びエチニル基(アルキニル基)を配したものでもよい。また、一つのシロキサンポリマー中にフェニル基及びビニル基(アルケニル基)が配され、他のシロキサンポリマー中にフェニル基及びエチニル基(アルキニル基)が配されたものを組み合わせて用いる等でもよい。
【0043】
また、前記アルケニル/アルキニル基含有シリコーン樹脂形成成分としては、シロキサンポリマーにアルケニル基及びアルキニル基から選択される1種以上の基を配したものが挙げられる。シロキサンポリマー中のアルケニル基やアルキニル基の位置には特段の限定は無く任意の位置に配することができ、さらに、重合反応性の点から、一つのシロキサンポリマー中にアルケニル基やアルキニル基が2個以上配されていることが好ましい。また、エポキシ基や他の炭化水素が組み合わされた変性シリコーンであってもよい。その分子構造は、直鎖状、一部分岐鎖を有する直鎖状、分岐鎖状のもの、環状のもの、樹脂状のものが例示され、特に、直鎖状もしくは一部分岐鎖を有する直鎖状のものであることが好ましい。
なお、アルケニル基やアルキニル基の組み合わせは、前記(メチル)フェニルシリコーン樹脂形成成分中にアルケニル基及びアルキニル基から選択される1種以上の基を有するものと同様に任意であり、特段の限定はない。さらに、例えばアルケニル基を有するフェニルシリコーン樹脂形成成分と、アルキニル基を有するアルケニル基等含有シリコーン樹脂形成成分とを組み合わせてもよい。
【0044】
シリコーン樹脂は、原料である液状(未硬化)のシリコーン樹脂形成成分(本発明においてはマトリックスシリコーン樹脂形成成分)を重合硬化することで得られる。ここで、硬化の方法としては、付加硬化型及び縮合硬化型を挙げることができる。
付加硬化型とは、シリコーン樹脂形成成分中のシロキサンポリマーに配されたアルケニル基ないしはアルキニル基と、同じくシロキサンポリマー中のハイドロジェン基(Si−H結合)とが、白金族金属系触媒による付加反応(ヒドロシリル化反応)により結合してシロキサンポリマー同士が重合することで硬化するものである。従って、シリコーン樹脂形成成分としては、少なくともアルケニル基またはアルキニル基を含有するシリコーン樹脂形成成分と、ハイドロジェン基を含有するシリコーン樹脂形成成分と、白金族金属系触媒とを含有してなる組成物である。
縮合硬化型とは、シロキサンポリマー末端に配された水酸基又は加水分解性基と、シラン化合物中のケイ素原子に結合した加水分解可能基とが、アミノキシ基、アミノ基、ケトオキシム基等を含有する縮合触媒により脱水等の縮合反応を起こして重合することにより硬化するものである。従って、シリコーン樹脂形成成分としては、少なくとも分子鎖末端が水酸基又は加水分解性基で封鎖されたシリコーン樹脂形成成分と、ケイ素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に3個以上含有するシラン化合物と、アミノキシ基、アミノ基、ケトオキシム基等を含有する縮合触媒とを含有してなる組成物であり、上記水酸基又は加水分解性基と加水分解可能な基とが脱水等の縮合反応を起こし、シロキサンポリマーとシラン化合物とが結合することでシリコーン樹脂形成成分とシラン化合物とが重合して硬化するものである。従って、シリコーン樹脂形成成分としては、少なくとも分子鎖末端が水酸基又は加水分解性基で封鎖されたシリコーン樹脂形成成分と、ケイ素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に3個以上含有するシラン化合物と、アミノキシ基、アミノ基、ケトオキシム基等を含有する縮合触媒とを含有してなる組成物である。なお、前述の通り、本発明においてはこれらのシリコーン樹脂形成成分中にフェニル基やメチル基(アルキル基)が配されている。
【0045】
本発明におけるマトリックスシリコーン樹脂形成成分としては、付加硬化型と縮合硬化型のいずれも選択できる。
一方、本発明においては、シリコーン樹脂形成成分のアルケニル基やアルキニル基と表面修飾材料のハイドロジェン基とを架橋反応(ヒドロシリル化反応)により結合することで一体化させて、表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂との相分離を防ぎ、表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂とを近接させてガスの透過性を抑えることを可能としている。ここで、この架橋反応と、前記付加硬化型の付加反応とは、その反応基、反応状態や触媒から理解できるように同一の反応である。従って、マトリックスシリコーン樹脂形成成分として付加硬化型のものを選択すれば、表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂との架橋による一体化と、マトリックスシリコーン樹脂自体の硬化とを、同時にかつ単一の反応方法で行えるので好ましい。また、付加硬化型であれば重合時に水等の副生成物が発生しないため、副生成物が混在するための影響や副生成物の除去が不要となることも好ましい。
さらに、前述のように、ハイドロジェン基と、アルケニル基やアルキニル基との双方を修飾担持させた金属酸化物粒子を用いれば、金属酸化物粒子表面のハイドロジェン基とマトリックスシリコーン樹脂形成成分中のアルケニル基やアルキニル基との架橋反応だけでなく、金属酸化物粒子表面のアルケニル基やアルキニル基とマトリックスシリコーン樹脂形成成分中のハイドロジェン基も架橋反応できるので、金属酸化物粒子とマトリックスシリコーン樹脂との一体化をより図ることができる。
【0046】
なお、マトリックスシリコーン樹脂形成成分として縮合硬化型を選択すれば、表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂との結合と、マトリックスシリコーン樹脂の硬化とを、個別に制御できるという利点がある。ただし、この場合には始めに表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂とを架橋反応(付加硬化型の場合と同一)で結合させた上で、マトリックスシリコーン樹脂を縮合硬化させる必要がある。その理由は、表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂とが結合していない状態でマトリックスシリコーン樹脂を硬化させた場合、表面修飾金属酸化物粒子材料の凝集や相分離が発生して、良好なシリコーン樹脂複合体が得られないおそれがあるためである。
【0047】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、樹脂成分として、少なくとも(メチル)フェニルシリコーン樹脂形成成分を含有し、アルケニル基及びアルキニル基から選択される1種以上を有するシリコーン樹脂形成成分を含んでおり、さらにアルケニル/アルキニル基含有シリコーン樹脂形成成分やマトリックスシリコーン樹脂を形成するために必要なシリコーン樹脂形成成分を含む場合がある。各成分の組み合わせは、該各成分が相溶性を有していれば特段の限定はない。
未硬化の(メチル)フェニルシリコーン樹脂形成成分やアルケニル/アルキニル基含有シリコーン樹脂形成成分の屈折率や粘度は、シロキサンポリマーの構造や鎖長、シロキサンポリマー中のフェニル基やメチル基やその他のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基の量や炭素鎖長等に応じて変化し、これらの特性値は硬化後のシリコーン樹脂にも反映する。従って、未硬化の状態で複数の樹脂を混合・調整することにより、硬化後のマトリックスシリコーン樹脂として必要な屈折率を有し、かつ成形性や作業性のよいシリコーン樹脂組成物を得ることができる。さらに、上記のフェニルシリコーン樹脂とメチルフェニルシリコーン樹脂の組み合わせや、アルケニル基を含有するシリコーン樹脂形成成分とアルキニル基を含有するシリコーン樹脂形成成分の組み合わせのほかに、加える変性シリコーン樹脂の種類や量等を調整することにより、得られるシリコーン樹脂複合体の硬さ、タック性、基材との密着性等の特性を制御することができる。
なお、成形性や作業性の点等からシリコーン樹脂組成物を低粘度化したい場合には、(メチル)フェニルシリコーン樹脂形成成分やアルケニル/アルキニル基含有シリコーン樹脂形成成分と相溶性を有し、かつ表面修飾金属酸化物粒子の分散性を阻害しないような有機溶媒を加えてもよい。このような有機溶媒としては、例えば前記分散液に用いられる分散媒を挙げることができる。
【0048】
(ヒドロシリル化触媒)
本発明では、シリコーン樹脂形成成分のアルケニル基やアルキニル基と表面修飾材料のハイドロジェン基とを架橋反応(ヒドロシリル化反応)により一体化する。従って、本発明のシリコーン樹脂組成物は、ヒドロシリル化触媒を含有することが必要である。
本発明におけるヒドロシリル化反応用触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、特にヒドロシリル化反応がスムーズに進行することから、白金系触媒であることが好ましい。この白金系触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体が例示される。
【0049】
このヒドロシリル化反応用触媒の配合量は、上記のアルケニル基やアルキニル基含有シリコーン樹脂形成成分とハイドロジェン基含有表面修飾材料とを架橋反応させるのに十分な量であればよい。具体的には、このヒドロシリル化反応用触媒として、白金系触媒を用いる場合には、上記のアルケニル基やアルキニル基を含有するシリコーン樹脂形成成分とハイドロジェン基を含有する表面修飾材料との合計量に対する白金金属の質量が0.1〜100ppmとなるような量であることが好ましく、特にヒドロシリル化反応がスムーズに進行し、なおかつ、反応により得られるシリコーン樹脂複合体に着色を生じにくいことから、1〜50ppmの範囲内の量であることがより好ましい。
また、マトリックスシリコーン樹脂形成成分として付加硬化型を選択した場合には、マトリックスシリコーン樹脂の硬化もヒドロシリル化反応によるため、触媒量を前記条件に合致するように増加させることが好ましい。すなわち、白金金属の質量が、アルケニル基やアルキニル基を含有するシリコーン樹脂形成成分と、ハイドロジェン基を含有するシリコーン樹脂形成成分と、ハイドロジェン基を含有する表面修飾材料との合計量に対して0.1〜100ppmであることが好ましく、1〜50ppmであればより好ましい。
さらに、前述のように、ハイドロジェン基と、アルケニル基やアルキニル基との双方を修飾担持させた金属酸化物粒子を用いた場合には、金属酸化物粒子表面のアルケニル基やアルキニル基とマトリックスシリコーン樹脂形成成分中のハイドロジェン基も架橋反応するので、同様に触媒量を増加させることが好ましい。すなわち、白金金属の質量が、アルケニル基やアルキニル基を含有するシリコーン樹脂形成成分と、ハイドロジェン基を含有するシリコーン樹脂形成成分と、ハイドロジェン基を含有する表面修飾材料と、アルケニル基やアルキニル基を含有する表面修飾材料との合計量に対して0.1〜100ppmであることが好ましく、1〜50ppmであればより好ましい。
【0050】
表面修飾金属酸化物粒子材料とマトリックスシリコーン樹脂原料とを混合するには、表面修飾金属酸化物粒子材料を直接マトリックスシリコーン樹脂原料に導入して混錬機などで機械的に混合する方法や、前記分散液の場合のように、表面修飾金属酸化物粒子材料を有機溶剤などの分散媒に分散させ表面修飾金属酸化物粒子材料分散液とし、この分散液とマトリックスシリコーン樹脂原料とを撹拌機などで混合し、次いで有機溶剤を除去するといった方法が挙げられる。
上記いずれかの方法により両者を混合することで、本発明のシリコーン樹脂組成物が得られる。なお、本発明のシリコーン樹脂組成物は、上記混合過程で用いる有機溶剤等を含むものであってもよい。
【0051】
[4.シリコーン樹脂複合体]
本発明のシリコーン樹脂複合体は、上記本発明のシリコーン樹脂組成物中のマトリックスシリコーン樹脂形成成分を付加反応や縮合反応等により重合硬化させるとともに、金属酸化物粒子の表面修飾材料とマトリックスシリコーン樹脂形成成分とを架橋反応により結合して表面修飾金属酸化物粒子とマトリックスシリコーン樹脂とを一体化させることにより得られる。
なおここで、「樹脂複合体」とは特定の形状を有するものを意味するが、この「所定の形状を有する」とは、樹脂複合体が液状、ゲル状等の不可逆的な変形性を有しておらず、使用の目的や方法に合わせた一定の形状を維持することができることを示すものである。すなわち、通常のほとんど変形しない固体状の他、ゴム状等の弾性変形性(形状復元性)を有するものを含むものであり、形状自体が特定の形状であることを示すものではない。
【0052】
当該シリコーン樹脂複合体の形状は特に限定されるものではなく、その形状は用途に合わせて選択すれば良い。ここで、本発明に用いられるシリコーン樹脂は、付加反応や重合反応により硬化した後では、一般的な樹脂が示すような熱可塑性や溶媒溶解性を示さない。このため、シリコーン樹脂複合体の成形は、前記シリコーン樹脂組成物を硬化してシリコーン樹脂複合体する際に行うか、硬化後のシリコーン樹脂複合体を切削等の機械加工により行うことが好ましい。ここでは、シリコーン樹脂組成物を硬化してシリコーン樹脂複合体する際に成形を行う場合について説明する。
【0053】
まず、本発明のシリコーン樹脂組成物を、金型や型枠を用いて成形したり、金型や型枠状の容器に充填したりすることにより、目的の形状に成形された成形体または充填物を得る。この時点では、成形体や充填物は流動性を有する状態である。
この際、使用するシリコーン樹脂組成物の粘度が高く成形性が悪い場合には、予め、有機溶媒等を添加し撹拌・混合して粘度を低下させ、成形や充填に適した粘度となるように調整しておいてもよい。
一方、使用するシリコーン樹脂組成物の粘度が低い場合には、予め、マトリックスシリコーン樹脂形成成分の一部や、マトリックスシリコーン樹脂形成成分と表面修飾材料の一部とを重合や架橋させておくことで粘度を高め、成形や充填に適した粘度となるように調整しておくことができる。また、シリコーン樹脂組成物が有機溶媒を含む場合には、この有機溶媒の一部あるいは全部を揮発させる等で除去することで、粘度を高めることもできる。さらに、上記シリコーン樹脂組成物をマスターバッチとして他の樹脂に混合して用いてもよい。
【0054】
次いで、この成形体または充填物を、室温(25℃程度)のままや、所定の温度(室温〜150℃、好ましくは80℃〜150℃)に加温して所定時間静置したり、あるいは、この成形体または充填物に、電子線や紫外線領域から赤外線領域の任意の波長を有する光線(活性エネルギー線)を照射することによって、このシリコーン樹脂組成物中のマトリックスシリコーン樹脂形成成分を付加反応や重合反応等により硬化させるとともに、金属酸化物粒子の表面修飾材料とマトリックスシリコーン樹脂形成成分とを架橋反応により結合して表面修飾金属酸化物粒子とマトリックスシリコーン樹脂とを一体化させる。
なお、この成形体または充填物に有機溶媒が残留する場合には、予めこの有機溶媒を揮発除去しておくことが好ましい。
これにより、この成形体または充填物は、金型や容器から外した後、外力を加えても、一定の形状を維持できる状態、すなわちシリコーン樹脂複合体が得られる。
なお、シリコーン樹脂複合体は、用途において問題が無ければ、必ずしも金型や容器から外す必要はない。例えば、後述の光半導体発光装置では、装置自体が容器を形成した形である。
【0055】
また、本発明のシリコーン樹脂複合体を光半導体発光装置等の封止材に用いる場合には、その屈折率が1.54より高いことが好ましく、1.56以上であることがより好ましく、1.58以上であればさらに好ましく、1.6以上であれば最も好ましい。封止材の屈折率を高めることにより、光半導体発光装置からの光取出効率を向上させ高輝度化することができる。
また、光路長0.5mmとした場合の波長450nmにおける透過率は、40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。透過率がこの範囲であれば、例えばシリコーン樹脂複合体を光学部品として用いた場合に、構成部材として光透過損失の低下を抑制することができる。
【0056】
シリコーン樹脂複合体の屈折率や透過率は、金属酸化物粒子の種類や粒子径、マトリックスシリコーン樹脂の組成、シリコーン樹脂複合体中の金属酸化物粒子の量等を適宜調整することにより、所望の範囲とすることができる。本発明のシリコーン樹脂複合体においては、金属酸化物粒子の表面修飾材料がフェニル基を有することからそれ自体が高屈折率化されており、表面修飾材料がシリコーン樹脂複合体の高屈折率化の妨げとなることがない。
なお、上記シリコーン樹脂複合体の屈折率は公知の方法を用いて測定すればよいが、例えば、アルミニウム基板上に形成した複合体(1mm厚)を用い、プリズムカプラーによって室温で波長594nmの値を測定することによって求められる。透過率の測定方法については後述する。
【0057】
本発明のシリコーン樹脂複合体の用途は、特に制限されない。特に、該シリコーン樹脂複合体の前記優れた特性を利用した光学部品等として好適に利用することができる。かかる光学部品を備えた光学機能装置としては、例えば、各種ディスプレイ装置(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等)、各種プロジェクタ装置(OHP、液晶プロジェクタ等)、光ファイバー通信装置(光導波路、光増幅器等)、カメラやビデオなどの撮影装置等、LED照明装置などの照明器具等が例示される。
【0058】
[5.光半導体発光装置]
本発明の光半導体発光装置は、半導体発光素子が封止材により封止されてなり、該封止材が本発明のシリコーン樹脂複合体からなり、その封止材からなる封止層の厚さが50μm以上となっている。封止層の厚さが50μm未満だとガスバリア性を高めることができない。封止層の厚さは、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましい。
【0059】
本発明に係る封止層の構成は、光半導体発光装置の封止層全体が本発明のシリコーン樹脂複合体の層でもよく(第1の態様)、光半導体発光装置の封止層の一部が本発明のシリコーン樹脂複合体の層であってその他の封止層が積層されていてもよい(第2の態様)。また、これらの封止層に蛍光体を含有してもよい。
本発明の光半導体発光装置は、上記のように封止層のガスバリア性に優れるため、例えば発光ダイオード(LED)パッケージ内に設けられる銀メッキ反射板の劣化を抑制でき、発光ダイオードパッケージからの放射光の輝度を高く保ちつつその低下を少なくすることができるので、これを備えた照明器具や液晶画像装置として有効に利用することができる。
【0060】
当該光半導体発光装置について具体的に説明する。なお、本発明は以下の例に特に限定されるものではない。
本発明に係る第1の態様(発光装置10)は、図1に示すように、反射カップ12の凹部12Aに発光素子14が配置され、発光素子14に接して凹部を埋め込むように、本発明のシリコーン樹脂複合体からなる封止材により構成された第1の封止層16が形成されてなる。
かかる装置によれば、発光素子14から出射された光は封止材との境界面を通過した後、封止材内を通り、直接に、あるいは反射カップ12の壁面で反射されて外部に取り出される。
【0061】
発光装置を構成する発光素子としては、例えば、発光ダイオード(LED)及び半導体レーザを挙げることができる。ここで、発光ダイオードとしては、赤色光(例えば、波長640nmの光)を発光する赤色発光ダイオード、緑色光(例えば、波長530nmの光)を発光する緑色発光ダイオード、青色光(例えば、波長450nmの光)を発光する青色発光ダイオードを例示することができる。発光ダイオードは、いわゆるフェイスアップ構造を有していてもよいし、フリップチップ構造を有していてもよい。すなわち、発光ダイオードは、基板、及び、基板上に形成された発光層から構成されており、発光層から光が外部に出射される構造としてもよいし、発光層からの光が基板を通過して外部に出射される構造としてもよい。
【0062】
より具体的には、発光ダイオードは、例えば、基板上に形成された第1導電型(例えばn型)を有する化合物半導体層からなる第1クラッド層、第1クラッド層上に形成された活性層、活性層上に形成された第2導電型(例えばp型)を有する化合物半導体層からなる第2クラッド層が積層された構造を有し、第1クラッド層に電気的に接続された第1電極、及び、第2クラッド層に電気的に接続された第2電極を備えている。発光ダイオードを構成する層は、発光波長に依存して、周知の化合物半導体材料から構成すればよい。
【0063】
ここで、発光ダイオードの発光層の屈折率は、例えばGaAs系で3.5程度、GaP系で3.2程度、GaN系で2.5程度であり、また通常用いられるサファイア基板の屈折率は1.75程度であって、いずれの場合もかなり高い。しかしながら、従来用いられているシリコーン樹脂系やエポキシ樹脂系等の封止材の屈折率は高々1.4〜1.5程度であり、発光層と封止材間、あるいはサファイア基板と封止材間での屈折率差が大きいために、発光層からの光の大半がこれらの界面で全反射されて発光層内やサファイア基板内に閉じ込められてしまい、光の取り出し効率を高くすることができなかった。
本発明の光半導体発光装置においては、封止材の屈折率を高めることにより、発光層と封止材間、あるいはサファイア基板と封止材間において全反射する発光光量を低減させ、光の取り出し効率を高めることができる。この点からは、封止材の屈折率は1.54より高いことが好ましく、1.56以上であることがより好ましく、1.58以上であればさらに好ましく、1.6以上であれば最も好ましい。また、光路長0.5mmとした場合の波長450nmにおける透過率は40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
【0064】
本発明に係る第2の態様(発光装置20)は、図2に示すように、第1の封止層16が発光素子14の表面を覆うように形成されてなり、その外側を本発明の光半導体素子封止組成物とは組成の異なる第2の封止層18が形成されてなる以外は、第1の態様と同様である。
組成の異なる第2封止層18の材料としては、メチルシリコーン、変性シリコーン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂又は樹脂複合体が挙げられる。第2の封止層18の屈折率は、第1の封止層16と第2の封止層18との界面反射をより少なくするとともに、第2の封止層18と外部の界面反射をもより少なくするために、第1の封止層16の屈折率以下かつ1(大気の屈折率)以上であることが好ましい。また、第2の封止層18の屈折率を調整する目的で、第2の封止層中に本発明に係る表面修飾金属酸化物粒子を含有してもよい。
【0065】
また、本発明の光半導体発光装置は、発光素子と蛍光体とを組み合わせた光半導体発光装置とすることもできる。本発明の光半導体発光装置によれば、光半導体素子に接する第1封止層が既述の本発明のシリコーン樹脂複合体であるが、この第1の封止層に、例えば、青色InGaN用のYAG蛍光体や紫外光用のRGB蛍光体等の蛍光体を含有させればよい。この蛍光体は、本発明の封止材であるシリコーン樹脂複合体を形成するためのシリコーン樹脂組成物中に予め含有させればよく、その方法としては、シリコーン樹脂組成物中に蛍光体を直接混合する方法、フェニルシリコーン樹脂形成成分やメチルフェニルシリコーン樹脂形成成分中に蛍光体を混合する方法、蛍光体を有機溶剤等に分散させた分散液をシリコーン樹脂組成物に混合した後有機溶剤等を除去する方法、等を挙げることができる。
特に、コスト面で蛍光体の使用量を削減する場合や発光素子近傍に蛍光体を集中的に配置して光変換効率を高める場合を考慮すると、第2の態様における第1の封止層に蛍光体を含有させることが好ましい。蛍光体は、第1の封止層の質量に対して5〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。なお、第2の封止層にも蛍光体を含有させることができる。
このような、発光素子と蛍光体とを組み合わせた光半導体発光装置としては、白色発光ダイオード(例えば、紫外または青色発光ダイオードと蛍光体粒子とを組み合わせて白色光を出射する発光ダイオード)を例示することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0067】
本実施例について、各種測定及び評価は下記のようにして行った。
(金属酸化物粒子の平均一次粒子径)
金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、X線回折ピークの半値幅から計算によって得られるシェラー径とした。これは、一次粒子径がナノメートルサイズであれば、1粒子が複数個の結晶子で構成される可能性が低くなることで、平均一次粒子径とシェラー径とが実質的に同一となるからである。
【0068】
(シリコーン樹脂複合体の透過率)
シリコーン樹脂複合体の透過率は、ガラス基材上に形成した実施例の複合体(0.5mm厚)を用い、分光光度計(積分球)を用いて測定し、波長450nmにおける透過率を求めた。
【0069】
(シリコーン樹脂複合体の耐熱性評価)
シリコーン樹脂複合体の耐熱性評価は、ガラス基材上に形成した実施例の複合体(0.5mm厚)を用い、分光光度計(積分球)を用いて透過率を測定することより行った。具体的には、120℃の乾燥器の中にシリコーン樹脂複合体を投入し、1000時間後の450nmにおける透過率と初期の透過率と比較して、初期に対する透過率の低下率が5%未満を「○」、5%以上25%未満を「△」、25%以上を「×」とした。
【0070】
(シリコーン樹脂複合体の硬度評価)
シリコーン樹脂複合体の硬度評価は、シリコーン樹脂複合体を作製した際にクラックがない場合を「○」、クラックが発生した場合は「×」とした。
【0071】
(シリコーン樹脂複合体のガスバリア性)
シリコーン樹脂複合体のガス透過性は、下記のようにして評価した。
まず、銀メッキ反射板を有するLEDパッケージにシリコーン樹脂組成物を封止し、シリコーン樹脂組成物を150℃で3時間加熱処理して硬化させ、実施例の複合体を得た。該パッケージを500mlの耐圧ガラス容器に0.3gの硫黄粉末とともに密封し、80℃に保持した。そして、銀メッキ反射板の外観の黒色化(硫黄ガスによる銀メッキの腐食(黒化変色))を目視観察し、別途作製した基準板(銀メッキ反射板を直接硫黄ガスで黒色化させたもの)と同程度になるまでの時間で評価した。なお、ガスバリア性が低い複合体ほど、黒色化までの時間は短い。
【0072】
(シリコーン樹脂複合体からなる封止層の厚さ)
シリコーン樹脂複合体からなる封止層の厚さは、上記パッケージの断面をSEMで観察して測定した。
【0073】
[実施例1]
(ジルコニア粒子の作製)
オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40L(リットル)に溶解させたジルコニウム塩溶液に、28%アンモニア水344gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体スラリーを調製した。
次いで、このスラリーに、硫酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加えた。このときの硫酸ナトリウムの添加量は、ジルコニウム塩溶液中のジルコニウムイオンのジルコニア換算値に対して30質量%であった。
【0074】
次いで、この混合物を、乾燥器を用いて、大気中、130℃にて24時間乾燥させ、固形物を得た。
次いで、この固形物を自動乳鉢で粉砕した後、電気炉を用いて、大気中、500℃にて1時間焼成した。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去した後、乾燥器にて乾燥させ、平均一次粒子径4nmのジルコニア粒子を得た。
【0075】
(ジルコニア粒子への表面修飾:表面修飾ジルコニア粒子の作製)
次いで、ジルコニア粒子10gに、トルエン82g、メトキシ基含有フェニルシリコーンレジン(信越化学工業社製:KR217)5gを加えて、混合し、ビーズミルで6時間、表面修飾処理を行った後、ビーズを除去した。次いで、ジメチルエトキシシラン(信越化学工業社製:LS490)を3g添加し、130℃にて6時間環流下で表面修飾及び分散処理を行い、フェニル基を有する表面修飾材料及びハイドロジェン基を有する表面修飾材料により表面処理されたジルコニア粒子透明分散液を作製した。
【0076】
(シリコーン樹脂組成物の作製)
上記ジルコニア粒子透明分散液50gに、フェニルシリコーン樹脂として商品名:OE−6520(東レ・ダウコーニング社製 屈折率1.54 A液/B液配合比=1/1)7.6g(A液3.8g、B液3.8g)を加え、撹拌した後、減圧乾燥によりトルエンを除去し、表面修飾ジルコニア粒子とフェニルシリコーン樹脂と反応触媒とを含有したシリコーン樹脂組成物(ジルコニア粒子含有量:30質量%)を得た。
なお、OE−6520については、NMR分析によりアルケニル基であるC=C二重結合(ビニル基)とSi−H結合(ハイドロジェン基)の存在を確認しており、また、発光分析により白金の存在を確認している。すなわち、OE−6520はヒドロシリル化反応により重合硬化する、付加硬化型のシリコーン樹脂である。したがって、ジルコニア粒子表面修飾材料中のハイドロジェン基とOE−6520中のビニル基とはヒドロシリル化反応により結合することができ、また、OE−6520中に含まれるヒドロシリル化触媒である白金触媒は、当該OE−6520中のシリコーン樹脂形成成分がヒドロシリル化重合硬化するのに十分な量が添加されているから、これに(シリコーン樹脂に対しては少量の)表面修飾材料が加わっても、触媒としての量や効果は十分に有していると判断できる。
【0077】
(シリコーン樹脂複合体の作製)
上記シリコーン樹脂組成物を150℃で3時間加熱処理して硬化することで、シリコーン樹脂複合体を得た。
このシリコーン樹脂複合体を用いて既述の各種評価を行った。なお、ガスバリア性の評価では、封止層の厚みを500μmとした。
【0078】
[実施例2]
(チタニア粒子の作製)
四塩化チタン242.1gと、塩化スズ(IV)5水和物111.9gとを、5℃の純水1.5L(リットル)に投入し、撹拌して混合溶液を作製した。
次いで、この混合溶液を加温して温度を25℃に調整し、この混合溶液に濃度が10質量%の炭酸アンモニウム水溶液を加えてpHを1.5に調整し、その後、25℃にて24時間熟成した後、限外濾過法により過剰の塩化物イオンを取り除いた。
次いで、エバポレータを用いてこの混合溶液から水分を除去し、その後乾燥させ、酸化チタン粒子を作製した。得られた酸化チタン(チタニア)粒子の平均一次粒子径は4nmであった。
【0079】
上記チタニア粒子を用い、金属酸化物粒子含有量を20質量%にした以外は実施例1と同様にして表面修飾し、フェニル基を有する表面修飾材料及びハイドロジェン基を有する表面修飾材料により表面処理されたチタニア粒子透明分散液を作製し、次いで、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物、さらにシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
【0080】
[実施例3]
ジルコニア粒子の平均一次粒子径を4nmから5nmに変更し、表面修飾材料として、ジメチルエトキシシランからジエトキシメチルシラン(信越化学工業社製:LS880)に変更し、さらにビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM−1003)をモル比でハイドロジェン基/ビニル基=4になるように加えて表面修飾及び分散処理を行った以外は、実施例1と同様にして、フェニル基を有する表面修飾材料、ハイドロジェン基を有する表面修飾材料及びビニル基を有する表面修飾材料により表面処理されたジルコニア粒子透明分散液を作製し、次いで、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物及びシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
【0081】
[実施例4]
表面修飾材料としてのジメチルエトキシシランに、さらにビニルトリメトキシシランをモル比でハイドロジェン基/ビニル基=6になるように加えて表面修飾及び分散処理を行った以外は、実施例1と同様にして、フェニル基を有する表面修飾材料、ハイドロジェン基を有する表面修飾材料及びビニル基を有する表面修飾材料により表面処理されたジルコニア粒子透明分散液を作製し、次いで、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物及びシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
【0082】
[実施例5]
金属酸化物粒子として、平均一次粒子径6nmのシリカ粒子(スノーテックスXS、日産化学工業社製)を使用した。
このシリカ粒子10gに、トルエン82g、メトキシ基含有フェニルシリコーンレジン5gを加えて、混合し、ビーズミルで6時間、表面修飾処理を行った後、ビーズを除去した。次いでエチルジクロロシラン(信越化学工業社製:LS140)を3g添加し、130℃にて6時間環流下で表面修飾及び分散処理を行った。得られた分散液をアルミナゲルが充填されたカラムに通すことで、塩化物イオンを1質量ppm以下となるまで除去した。なお、塩素量は塩素イオンメータ測定による。その後、表面修飾シリカ粒子を再度トルエンに分散させることによって、フェニル基を有する表面修飾材料及びハイドロジェン基を有する表面修飾材料により表面処理されたシリカ粒子の透明分散液を作製した。
次いで、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物及びシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
【0083】
[比較例1]
実施例1で用いたシリコーン樹脂(但し、金属酸化物粒子無添加)について、150℃で3時間加熱処理して硬化させ、この硬化体について実施例1と同様な各種評価を行った。
【0084】
[比較例2]
実施例1の金属酸化物粒子の表面修飾において、ジメチルエトキシシランをビニルトリメトキシシランにした以外は、実施例1と同様にして、フェニル基を有する表面修飾材料及びビニル基を有する表面修飾材料により表面処理されたジルコニア粒子分散液を作製し、次いで、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物、さらにシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
【0085】
[比較例3]
実施例1におけるジルコニア粒子の平均一次粒子径を4nmから20nmに変更した以外は、実施例1と同様にして、フェニル基を有する表面修飾材料及びハイドロジェン基を有する表面修飾材料により表面処理されたジルコニア粒子分散液を作製し、次いで、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物、さらにシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
【0086】
[比較例4]
実施例3の金属酸化物粒子の表面修飾において、ジエトキシメチルシラン及びビニルトリメトキシシランの配合比をモル比でハイドロジェン基/ビニル基=0.1となるようにした以外は、実施例3と同様にして、フェニル基を有する表面修飾材料、ハイドロジェン基を有する表面修飾材料及びビニル基を有する表面修飾材料により表面処理されたジルコニア粒子分散液を作製し、次いで、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物、さらにシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
【0087】
[比較例5]
実施例1の金属酸化物粒子の表面修飾において、ジメチルエトキシシランをドデシルトリメトキシシランにした以外は、実施例1と同様にして、フェニル基を有する表面修飾材料及び炭素鎖を有する表面修飾材料により表面処理されたジルコニア粒子分散液を作製し、次いで、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物、さらにシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
【0088】
[比較例6]
実施例1におけるジルコニア粒子の平均一次粒子径を4nmから2nmにした以外は、実施例1と同様にして、フェニル基を有する表面修飾材料及びハイドロジェン基を有する表面修飾材料により表面処理されたジルコニア粒子分散液を作製し、次いで、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂組成物、さらにシリコーン樹脂複合体を作製し、各種評価を行った。
以上の各実施例、比較例におけるシリコーン樹脂複合体の詳細及び評価結果をまとめて第1表、第2表に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
実施例1〜5では、平均一次粒子径が3nm以上10nm以下の金属酸化物粒子を用い、この粒子をフェニル基及びハイドロジェン基を有する表面修飾材料により表面修飾したので、当該表面修飾金属酸化物粒子材料を用いて作製したシリコーン樹脂複合体における光透過率、耐熱性、ガスバリア性を良好な状態で維持することができた。
特にガスバリア性については、基準とするシリコーン樹脂単体である比較例1に対して明確に向上していることが示されており、これは、表面修飾材料として使用したジメチルエトキシシラン、ジエトキシメチルシラン及びエチルジクロロシランに基づく表面修飾材料中のハイドロジェン基と、マトリックスシリコーン樹脂原料であるOE−6520中のビニル基とが、樹脂組成物の硬化時にヒドロシリル反応により架橋反応して結合し、金属酸化物粒子とマトリックスシリコーン樹脂とが一体化した効果と考えられる。
またこれら実施例の内でも、特に実施例3、4はガスバリア性が高かった。これは表面修飾材料中のハイドロジェン基と、マトリックスシリコーン樹脂原料であるOE−6520中のビニル基とのヒドロシリル反応による架橋反応による結合だけではなく、表面修飾材料として使用したビニルトリメトキシシランに基づく表面修飾材料中のビニル基と、マトリックスシリコーン樹脂原料であるOE−6520中のハイドロジェン基とが架橋反応して結合することにより、金属酸化物粒子とマトリックスシリコーン樹脂とがより強固に一体化した効果と考えられる。
【0092】
一方比較例2については、耐熱性評価試験後に黄変していた。これは、表面修飾材料として、ジメチルエトキシシランではなくビニルトリメトキシシランを用いているため、シリコーン樹脂複合体中に未反応のビニル基が過剰に残存していたためと考えられる。なお、ガスバリア性はシリコーン樹脂単体に比べて向上していたが、これは表面修飾材料中のビニル基と、マトリックスシリコーン樹脂原料であるOE−6520中のハイドロジェン基とが、樹脂組成物の硬化時にヒドロシリル反応により架橋反応した効果と考えられる。
また比較例3については、光の透過率が低下していた。これは、金属酸化物の粒子径が大きいために光の散乱が生じているためと考えられる。
また比較例4については、耐熱性評価試験後に黄変していた。これは、表面修飾材料として、ジエトシキメチルシランとともに多量のビニルトリメトキシシランを用いているため、シリコーン樹脂複合体中に未反応のビニル基が過剰に残存していたためと考えられる。なお、ガスバリア性はシリコーン樹脂単体に比べて向上していたが、これはジエトシキメチルシランに基づく表面修飾材料中のハイドロジェン基と、マトリックスシリコーン樹脂原料であるOE−6520中のビニル基とが、樹脂組成物の硬化時にヒドロシリル反応により架橋重合した効果と、表面修飾材料中のビニル基と、マトリックスシリコーン樹脂原料であるOE−6520中のハイドロジェン基とが、樹脂組成物の硬化時にヒドロシリル反応により架橋反応した効果との併用と考えられる。
また比較例5については、耐熱性評価試験後に黄変していた。これは、表面修飾材料として、ジメチルエトキシシランではなくドデシルトリメトキシシランを用いているため、ドデシルトリメトキシシランの炭素鎖部分が熱変質ためと考えられる。
また比較例6については、ガス透過性が高く十分なガスバリア性が得られなかった。これは、金属酸化物の粒子径が小さくシリコーン樹脂組成物の粘度が高いために作業性が悪く、封止自体を十分に行えなかったためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、半導体発光素子(LED等)の封止材はもちろんのこと、これ以外の様々な工業分野において、材料や部材等として利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
10、20:発光装置
12:反射カップ
12A:凹部
14:発光素子
16:第1の封止層
18:第2の封止層
図1
図2