特許第6354170号(P6354170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354170
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】対物レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/02 20060101AFI20180702BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   G02B21/02 A
   G02B13/18
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-7359(P2014-7359)
(22)【出願日】2014年1月20日
(65)【公開番号】特開2015-135440(P2015-135440A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】山口 弘太郎
【審査官】 小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−198961(JP,A)
【文献】 特開2010−134218(JP,A)
【文献】 特開2003−015047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/02
G02B 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に並んだ、正の屈折力を持つ第1レンズ群と、正の屈折力を持つ第2レンズ群と、負の屈折力を持つ第3レンズ群とからなり
前記第1レンズ群は、最も物体側に配置された物体側に平面を向けた平凸レンズと物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとの接合正レンズと、このレンズの像側に隣接して配置された像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズとを有し、
前記第2レンズ群は、複数の接合レンズを有し、そのうち最も物体側の接合レンズのいずれかのレンズ面に、異なる光学材料からなる2つの回折素子要素を接合し、当該接合面に回折格子溝が形成された回折光学面を有する回折光学素子を備え、
前記第3レンズ群は、物体側から順に並んだ、像側に凹面を向けた接合メニスカスレンズと、物体側に凹面を向けた接合メニスカスレンズとからなり、
以下の条件式(1)〜(3)を満足するとともに、
前記第2レンズ群が有する複数の接合レンズのうち、少なくとも2つの接合レンズは、以下の条件式(4)及び(5)を満足する負レンズと正レンズとから構成されている、
ことを特徴とする対物レンズ。
3.00 ≦ fL3/f ≦ 10.00 ・・・ (1)
1.65 ≦ ndL3 ・・・ (2)
45.0 ≦ νdL3 ・・・ (3)
0.30 ≦ ndn−ndp ・・・ (4)
40.0 ≦ νdp−νdn ・・・ (5)
但し、
fL3:前記像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズの焦点距離、
f:全系の焦点距離、
ndL3:前記像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdL3:前記像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズの硝材のd線を基準とするアッベ数
ndn:前記第2レンズ群の前記接合レンズを構成する負レンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdn:前記第2レンズ群の前記接合レンズを構成する負レンズの硝材のd線を基準とするアッベ数、
ndp:前記第2レンズ群の前記接合レンズを構成する正レンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdp:前記第2レンズ群の前記接合レンズを構成する正レンズの硝材のd線を基準とするアッベ数
【請求項2】
前記第1レンズ群の前記接合正レンズを構成する物体側に凹面を向けたメニスカスレンズは、以下の条件式(6)及び(7)を満足することを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ。
1.80 ≦ ndL2 ・・・ (6)
40.0 ≦ νdL2 ・・・ (7)
但し、
ndL2:前記物体側に凹面を向けたメニスカスレンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdL2:前記物体側に凹面を向けたメニスカスレンズの硝材のd線を基準とするアッベ数。
【請求項3】
前記第1レンズ群は、最も像側に接合レンズを有し、
前記接合レンズは、以下の条件式(8)〜(10)を満足する負レンズと正レンズとから構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の対物レンズ。
1.60 ≦ (ndL4+ndL5)/2 ・・・ (8)
|ndL4−ndL5| ≦ 0.10 ・・・ (9)
15.0 ≦ |νdL5−νdL4| ・・・ (10)
但し、
ndL4:前記最も像側の接合レンズを構成する負レンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdL4:前記最も像側の接合レンズを構成する負レンズの硝材のd線を基準とするアッベ数、
ndL5:前記最も像側の接合レンズを構成する正レンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdL5:前記最も像側の接合レンズを構成する正レンズの硝材のd線を基準とするアッベ数。
【請求項4】
前記第1レンズ群を構成する前記像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズは、像側面が非球面であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の対物レンズ。
【請求項5】
前記第3レンズ群を構成する2つの接合メニスカスレンズは、対向する凹面のうち、少なくとも1面が非球面であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の対物レンズ。
【請求項6】
前記第3レンズ群は、光軸方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の対物レンズ。
【請求項7】
前記回折光学素子を構成する2つの回折素子要素は、互いに異なる樹脂からなり、
以下の条件式(11)及び(12)を満足することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の対物レンズ。
0.01 ≦ nd1−nd2 ・・・ (11)
0.0015 ≦ ΔnFC2−ΔnFC1 ・・・ (12)
但し、
nd1、nF1及びnC1:前記2つの回折素子要素のうち、高屈折率低分散な方の回折素子要素の材料のd線、F線及びC線に対する屈折率、
nd2、nF2及びnC2:前記2つの回折素子要素のうち、低屈折率高分散な方の回折素子要素の材料のd線、F線及びC線に対する屈折率。
また、ΔnFC1=nF1−nC1、ΔnFC2=nF2−nC2と定義する。
【請求項8】
前記回折光学素子は、主光線が光軸と交わる位置よりも物体側に配置され、
以下の条件式(13)を満足することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の対物レンズ。
4.0° ≦ |θent| ≦ 12.0° ・・・ (13)
但し、
θent:物体中心から最大NAとなる光線が前記回折光学素子の空気側面に入射する角度。
【請求項9】
以下の条件式(14)を満足することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の対物レンズ。
100.00 ≦ |fdoe/f| ・・・ (14)
但し、
fdoe:前記回折光学素子の焦点距離。
【請求項10】
以下の条件式(15)を満足することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の対物レンズ。
4.00 ≦ fG2/f ≦ 20.00 ・・・ (15)
但し、
fG2:前記第2レンズ群の焦点距離。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
液浸系顕微鏡対物レンズでは、像面湾曲を補正するために、先端レンズに相対的に屈折率の低い平凸レンズを埋め込み、その屈折率の差により接合面に負の屈折力を与え、ペッツバール和を低減させることが公知の技術となっている。このような液浸対物レンズの設計例として、下記の特許文献1がある。
【0003】
また、紫外線励起による蛍光観察は一般的に行われているため、蛍光観察用対物レンズには紫外線を透過することが要求される。このような油浸対物レンズの設計例として、下記の特許文献2がある。
【0004】
また最近では、回折光学素子の色収差補正効果が利用されており、このような対物レンズの設計例として、下記の特許文献3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−148519号公報
【特許文献2】特開2011−75982号公報
【特許文献3】特開2009−198961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紫外線を透過する硝材は限られており、d線に対する屈折率が1.9を超えると、i線近傍からの短波長域では殆ど透過しなくなる。このため、液浸対物レンズの先端の埋め込みレンズには十分な屈折率差を与えることができず、像面湾曲が補正しきれないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、像面の平坦性を向上させ、視野周辺まで高い解像力を得ることができる、対物レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するため、本発明に係る対物レンズは、物体側から順に並んだ、正の屈折力を持つ第1レンズ群と、正の屈折力を持つ第2レンズ群と、負の屈折力を持つ第3レンズ群とからなり、前記第1レンズ群は、最も物体側に配置された物体側に平面を向けた平凸レンズと物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとの接合正レンズと、このレンズの像側に隣接して配置された像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズとを有し、前記第2レンズ群は、複数の接合レンズを有し、そのうち最も物体側の接合レンズのいずれかのレンズ面に、異なる光学材料からなる2つの回折素子要素を接合し、当該接合面に回折格子溝が形成された回折光学面を有する回折光学素子を備え、前記第3レンズ群は、物体側から順に並んだ、像側に凹面を向けた接合メニスカスレンズと、物体側に凹面を向けた接合メニスカスレンズとからなり、以下の条件式(1)〜(3)を満足するとともに、前記第2レンズ群が有する複数の接合レンズのうち、少なくとも2つの接合レンズは、以下の条件式(4)及び(5)を満足する負レンズと正レンズとから構成されている。
【0009】
3.00 ≦ fL3/f ≦ 10.00 ・・・ (1)
1.65 ≦ ndL3 ・・・ (2)
45.0 ≦ νdL3 ・・・ (3)
0.30 ≦ ndn−ndp ・・・ (4)
40.0 ≦ νdp−νdn ・・・ (5)
但し、
fL3:前記像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズの焦点距離、
f:全系の焦点距離、
ndL3:前記像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdL3:前記像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズの硝材のd線を基準とするアッベ数
ndn:前記第2レンズ群の前記接合レンズを構成する負レンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdn:前記第2レンズ群の前記接合レンズを構成する負レンズの硝材のd線を基準とするアッベ数、
ndp:前記第2レンズ群の前記接合レンズを構成する正レンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdp:前記第2レンズ群の前記接合レンズを構成する正レンズの硝材のd線を基準とするアッベ数
【0012】
本発明に係る対物レンズにおいて、前記第1レンズ群の前記接合正レンズを構成する物体側に凹面を向けたメニスカスレンズは、次の条件式(6)及び(7)を満足することが好ましい。
【0013】
1.80 ≦ ndL2 ・・・ (6)
40.0 ≦ νdL2 ・・・ (7)
但し、
ndL2:前記物体側に凹面を向けたメニスカスレンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdL2:前記物体側に凹面を向けたメニスカスレンズの硝材のd線を基準とするアッベ数。
【0014】
本発明に係る対物レンズにおいて、前記第1レンズ群は、最も像側に接合レンズを有し、前記接合レンズは、次の条件式(8)〜(10)を満足する負レンズと正レンズとから構成されていることが好ましい。
【0015】
1.60 ≦ (ndL4+ndL5)/2 ・・・ (8)
|ndL4−ndL5| ≦ 0.10 ・・・ (9)
15.0 ≦ |νdL5−νdL4| ・・・ (10)
但し、
ndL4:前記最も像側の接合レンズを構成する負レンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdL4:前記最も像側の接合レンズを構成する負レンズの硝材のd線を基準とするアッベ数、
ndL5:前記最も像側の接合レンズを構成する正レンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdL5:前記最も像側の接合レンズを構成する正レンズの硝材のd線を基準とするアッベ数。
【0016】
本発明に係る対物レンズにおいて、前記第1レンズ群を構成する前記像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズは、像側面が非球面であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る対物レンズにおいて、前記第3レンズ群を構成する2つの接合メニスカスレンズは、対向する凹面のうち、少なくとも1面が非球面であることが好ましい。
【0018】
本発明に係る対物レンズにおいて、前記第3レンズ群は、光軸方向に移動可能に構成されていることが好ましい。
【0019】
本発明に係る対物レンズにおいて、前記回折光学素子を構成する2つの回折素子要素は、互いに異なる樹脂からなり、次の条件式(11)及び(12)を満足することが好ましい。
【0020】
0.01 ≦ nd1−nd2 ・・・ (11)
0.0015 ≦ ΔnFC2−ΔnFC1 ・・・ (12)
但し、
nd1、nF1及びnC1:前記2つの回折素子要素のうち、高屈折率低分散な方の回折素子要素の材料のd線、F線及びC線に対する屈折率、
nd2、nF2及びnC2:前記2つの回折素子要素のうち、低屈折率高分散な方の回折素子要素の材料のd線、F線及びC線に対する屈折率。
また、ΔnFC1=nF1−nC1、ΔnFC2=nF2−nC2と定義する。
【0021】
本発明に係る対物レンズにおいて、前記回折光学素子は、主光線が光軸と交わる位置よりも物体側に配置され、次の条件式(13)を満足することが好ましい。
【0022】
4.0° ≦ |θent| ≦ 12.0° ・・・ (13)
但し、
θent:物体中心から最大NAとなる光線が前記回折光学素子の空気側面に入射する角度。
【0023】
本発明に係る対物レンズは、次の条件式(14)を満足することが好ましい。
【0024】
100.00 ≦ |fdoe/f| ・・・ (14)
但し、
fdoe:前記回折光学素子の焦点距離。
【0025】
本発明に係る対物レンズは、次の条件式(15)を満足することが好ましい。
【0026】
4.00 ≦ fG2/f ≦ 20.00 ・・・ (15)
但し、
fG2:前記第2レンズ群の焦点距離。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、像面の平坦性を向上させ、視野周辺まで高い解像力を得ることができる、対物レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施例に係る対物レンズのレンズ構成図である。
図2】第1実施例に係る対物レンズの諸収差図である。
図3】第2実施例に係る対物レンズのレンズ構成図である。
図4】第2実施例に係る対物レンズの諸収差図(但し、平行平面板の厚さが0mmのとき)である。
図5】第2実施例に係る対物レンズの諸収差図(但し、平行平面板の厚さが0.17mmのとき)である。
図6】第3実施例に係る対物レンズのレンズ構成図である。
図7】第3実施例に係る対物レンズの諸収差図(但し、平行平面板の厚さが0mmのとき)である。
図8】第3実施例に係る対物レンズの諸収差図(但し、平行平面板の厚さが0.17mmのとき)である。
図9】上記実施例の対物レンズと組み合わせて用いる結像レンズのレンズ構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る対物レンズOLは、図1に示すように、物体側から順に並んだ、正の屈折力を持つ第1レンズ群G1と、正の屈折力を持つ第2レンズ群G2と、負の屈折力を持つ第3レンズ群G3とを有して構成される。
【0030】
第1レンズ群G1は、最も物体側に配置された物体側に平面を向けた平凸レンズL1と物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL2との接合正レンズと、このレンズの像側に隣接して配置された像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズL3とを有する。
【0031】
最も物体側に平凸レンズL1を配置することにより、対物レンズOLの先端部を浸液に浸して物体(標本)を観察するときに、該レンズの物体側の面(第1面)内に気泡等が滞留するのを防ぐとともに、諸収差の発生を抑えることができる。また、平凸レンズL1が埋め込まれたメニスカスレンズL2の像側の凸面の曲率がきつくなると球面収差やコマ収差が発生するため、その像側に隣接して像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズL3を配置して、前記収差を補正している。
【0032】
第2レンズ群G2は、複数の接合レンズ(図1では、レンズL6,L7からなる接合レンズ、レンズL8,L9からなる接合レンズ、レンズL10,L11からなる接合レンズ)を有し、そのうち最も物体側の接合レンズのいずれかのレンズ面(図1では、第10面)に、異なる光学材料からなる2つの回折素子要素P1,P2を接合し、当該接合面(図1では、第11面)に回折格子溝が形成された回折光学面Dを有する回折光学素子PFを備える。
【0033】
本実施形態では、回折光学素子PFは、色収差を補正するために設けられている。回折光学素子PFは、1mmあたり数本から数百本の細かい溝状またはスリット状の格子構造が同心円状に形成された回折光学面Dを備え、この回折光学面Dに入射した光を格子ピッチ(回折格子溝の間隔)と入射光の波長によって定まる方向へ回折する性質を有している。また、回折光学素子PF(回折光学面D)は、負の分散値を有し、分散が大きく、また異常分散性が強いため、強力な色収差補正能力を有している。光学ガラスのアッベ数は、通常30〜80程度であるが、回折光学素子のアッベ数は負の値を持っている。換言すると、回折光学素子PFの回折光学面Dは分散特性が通常のガラス(屈折光学素子)とは逆で光の波長が短くなるに伴い屈折率が小さくなり、長い波長の光ほど大きく曲がる性質を有している。そのため、通常の屈折光学素子と組み合わせることにより、大きな色消し効果が得られる。したがって回折光学素子PFを利用することで、色収差を良好に補正することが可能になる。
【0034】
この回折光学素子PFによって、軸上色収差と倍率色収差を同時に補正するためには、屈折力の配置上、その回折光学面Dを、主光線が光軸と交わる位置より物体側に配置する必要がある。主光線が光軸と交わる位置よりも前側(物体側)で、この回折光学素子PFにより軸上色収差と倍率色収差のバランスを取って補正し、主光線が光軸と交わる位置よりも後ろ側で、接合レンズ等により、残った倍率色収差を補正することができるからである。
【0035】
なお、この回折光学素子PFのみで色収差補正を行うと、回折格子溝の最小ピッチが小さくなりすぎ、製造が困難になる。このため、色収差の補正を分担させるべく、第2レンズ群G2は、複数の接合レンズを有しており、それらは回折光学面Dよりも像側に配置されることが好ましい。
【0036】
本実施形態における回折光学素子PFは、異なる光学材料からなる2つの回折素子要素P1,P2を接合し、その接合面に回折格子溝を設けて回折光学面Dを構成した、いわゆる「密着複層型回折光学素子」である。そのため、この回折光学素子は、g線からC線までの広波長域において回折効率を高くすることができる。したがって、本実施形態に係る対物レンズOLは広波長域において利用することが可能となる。なお、回折効率は、透過型の回折光学素子において1次回折光を利用する場合、入射強度I0と一次回折光の強度I1との割合η(=I1/I0×100[%])を示す。
【0037】
また、密着複層型回折光学素子は、回折格子溝が形成された2つの回折素子要素をこの回折格子溝同士が対向するように近接配置してなるいわゆる分離複層型回折光学素子に比べて製造工程を簡素化することができるため、量産効率がよく、また入射画角に対する回折効率が良いという長所を備えている。したがって、密着複層型回折光学素子を利用した本実施形態に係る対物レンズOLでは、製造が容易となり、また回折効率が良くなる。
【0038】
第3レンズ群G3は、物体側から順に並んだ、像側に凹面を向けた接合メニスカスレンズ(図1では、レンズL12,L13からなる接合レンズ)と、物体側に凹面を向けた接合メニスカスレンズ(図1では、レンズL14,L15からなる接合レンズ)とからなる。この構成により、ペッツバール和を減少させつつ、軸上色収差と倍率色収差とをバランスよく補正することができる。
【0039】
このように、本実施形態に係る対物レンズOLでは、第1レンズ群G1内に平凸レンズL1と物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL2とを貼り合わせた接合レンズを配置するとともに、第3レンズ群G3内に互いの凹面が対向するように2つの接合メニスカスレンズを配置したいわゆるガウスタイプの構成をとることにより、ペッツバール和を抑え、像面湾曲を良好に補正することができる。また、第2レンズ群G2内に複数の接合レンズ及び回折光学素子PFを配置することにより、補正したい波長域において色収差を良好に補正することができる。
【0040】
上記構成のもと、本実施形態に係る対物レンズOLは、次の条件式(1)〜(3)を満足する。
【0041】
3.00 ≦ fL3/f ≦ 10.00 …(1)
1.65 ≦ ndL3 …(2)
45.0 ≦ νdL3 …(3)
但し、
fL3:像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズL3の焦点距離、
f:全系の焦点距離、
ndL3:像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズL3の硝材のd線に対する屈折率、
νdL3:像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズL3の硝材のd線を基準とするアッベ数。
【0042】
条件式(1)は、第1レンズ群G1を構成する像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズL3の適切な焦点距離を制限するものである。条件式(1)の下限値を下回ると、正屈折力の単レンズL3の屈折力が強くなりすぎ、球面収差や軸上色収差が増大する。条件式(1)の上限値を上回ると、後群のレンズ径が大きくなりすぎる。また、正屈折力の単レンズL3の屈折力が弱くなり、軸上色収差が補正しきれなくなる。
【0043】
より効果的に収差補正を行うためには、条件式(1)の下限値を4.00とすることが好ましい。より効果的に収差補正を行うためには、条件式(1)の上限値を8.00とすることが好ましい。
【0044】
条件式(2)及び(3)は、第1レンズ群G1を構成する像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズL3のd線に対する屈折率及びアッベ数を制限するものである。条件式(2)の下限値を下回ると、曲率半径が小さくなり、ペッツバール和の増大による像面湾曲や球面収差の補正が困難となる。条件式(3)の下限値を下回ると、軸上色収差や異なる波長による球面収差の補正が困難となる。
【0045】
より効果的に収差補正を行うためには、条件式(2)の下限値を1.70とすることが好ましい。より効果的に収差補正を行うためには、条件式(3)の下限値を50.0とすることが好ましい。
【0046】
本実施形態に係る対物レンズOLは、第2レンズ群G2が有する複数の接合レンズのうち、少なくとも2つの接合レンズは、次の条件式(4),(5)を満足する負レンズと正レンズとから構成されていることが好ましい。
【0047】
0.30 ≦ ndn−ndp …(4)
40.0 ≦ νdp−νdn …(5)
但し、
ndn:第2レンズ群G2の前記接合レンズを構成する負レンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdn:第2レンズ群G2の前記接合レンズを構成する負レンズの硝材のd線を基準とするアッベ数、
ndp:第2レンズ群G2の前記接合レンズを構成する正レンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdp:第2レンズ群G2の前記接合レンズを構成する正レンズの硝材のd線を基準とするアッベ数。
【0048】
条件式(4)及び(5)は、第2レンズ群G2内に配置された、少なくとも2つの接合レンズ(図1では、レンズL8,L9からなる接合レンズと、レンズL10,L11からなる接合レンズ)を構成する、負レンズと正レンズのd線に対する屈折率差とアッベ数差を制限するものである。条件式(4)及び条件式(5)の下限値を下回ると、軸上色収差と球面収差の補正が困難となる。
【0049】
より効果的に収差補正を行うためには、条件式(4)の下限値を0.35とすることが好ましい。より効果的に収差補正を行うためには、条件式(5)の下限値を45.00とすることが好ましい。
【0050】
本実施形態に係る対物レンズOLにおいて、第1レンズ群G1の接合正レンズを構成する、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL2は、次の条件式(6),(7)を満足することが好ましい。
【0051】
1.80 ≦ ndL2 …(6)
40.0 ≦ νdL2 …(7)
但し、
ndL2:物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL2の硝材のd線に対する屈折率、
νdL2:物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL2の硝材のd線を基準とするアッベ数。
【0052】
条件式(6)及び(7)は、第1レンズ群G1の接合正レンズを構成する、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL2のd線に対する屈折率とアッベ数を制限するものである。条件式(6)及び(7)の下限値を下回ると、ペッツバール和と色収差の補正が困難となるだけでなく、硝材の組成上、近紫外域(i線)の透過率を確保することも困難となる。
【0053】
本実施形態に係る対物レンズOLにおいて、第1レンズ群G1は、最も像側に接合レンズ(図1では、レンズL4,L5からなる接合レンズ)を有し、前記接合レンズは、次の条件式(8)〜(10)を満足する負レンズと正レンズとから構成されていることが好ましい。
【0054】
1.60 ≦ (ndL4+ndL5)/2 …(8)
|ndL4−ndL5| ≦ 0.10 …(9)
15.0 ≦ |νdL5−νdL4| …(10)
但し、
ndL4:前記最も像側の接合レンズを構成する負レンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdL4:前記最も像側の接合レンズを構成する負レンズの硝材のd線を基準とするアッベ数、
ndL5:前記最も像側の接合レンズを構成する正レンズの硝材のd線に対する屈折率、
νdL5:前記最も像側の接合レンズを構成する正レンズの硝材のd線を基準とするアッベ数。
【0055】
条件式(8),(9)及び(10)は、第1レンズ群G1の最も像側に配置された接合レンズを構成する2枚のレンズ(図1では、負レンズL4と、正レンズL5)のd線に対する平均屈折率、屈折率差及びアッベ数差を制限するものである。
【0056】
条件式(8)の下限値を下回ると、ペッツバール和が大きくなり、像面湾曲の補正が困難となる。より効果的に収差補正を行うためには、条件式(8)の下限値を1.62とすることが好ましい。
【0057】
条件式(9)の上限値及び条件式(10)の下限値を超えると、色収差の補正が困難となる。より効果的に収差補正を行うためには、条件式(9)の上限値を0.05とすることが好ましい。より効果的に収差補正を行うためには、条件式(10)の下限値を18.0とすることが好ましい。
【0058】
本実施形態に係る対物レンズOLにおいて、第1レンズ群G1を構成する、像側に凸面を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズL3は、像側面が非球面であることが好ましい。この構成により、球面収差を良好に補正することができる。
【0059】
本実施形態に係る対物レンズOLにおいて、第3レンズ群G3を構成する2つの接合メニスカスレンズ(例えば、図3における、レンズL10,L11からなる接合レンズと、レンズL12,L13からなる接合レンズ)は、対向する凹面のうち、少なくとも1面(図3では、第19面)が非球面であることが好ましい。この構成により、コマ収差の発生を良好に抑えることができる。
【0060】
本実施形態に係る対物レンズOLにおいて、第3レンズ群G3は、光軸方向に移動可能に構成されていることが好ましい。これは、カバーガラスと浸液の屈折率は同一ではないため、カバーガラスの厚みにばらつきが生じたり、顕微鏡対物レンズを使用する環境で温度変化が生じたりすると、浸液やレンズに使われる硝材の屈折率変化により収差が変動する。そこで、本実施形態においては、第3レンズ群G3を光軸方向に移動させることにより、前記のような観察環境に起因して収差が発生した場合でも、諸収差を抑え、良好な結像性能を維持することができるようにしている。
【0061】
本実施形態に係る対物レンズOLにおいて、回折光学素子を構成する2つの回折素子要素P1,P2は、互いに異なる樹脂からなり、次の条件式(11)及び(12)を満足することが好ましい。
【0062】
0.01 ≦ nd1−nd2 …(11)
0.0015 ≦ ΔnFC2−ΔnFC1 …(12)
但し、
nd1、nF1及びnC1:2つの回折素子要素P1,P2のうち、高屈折率低分散な方の前記回折素子要素の材料のd線、F線及びC線に対する屈折率、
nd2、nF2及びnC2:前記2つの回折素子要素P1,P2のうち、低屈折率高分散な方の前記回折素子要素の材料のd線、F線及びC線に対する屈折率。
また、ΔnFC1=nF1−nC1、ΔnFC2=nF2−nC2と定義する。
【0063】
条件式(11)及び(12)は、第2レンズ群G2に配置された回折光学素子PFを構成する、回折素子要素P1,P2に用いる異なる2つの材料の適切な屈折率と分散の範囲を制限するものである。条件式(11)及び(12)を満足することにより、より良い性能で異なる2つの回折素子要素P1,P2を密着接合させて回折光学面Dを形成することができ、これにより広波長域において高い回折効率を実現することができる。条件式(11)及び(12)の下限値を下回ると、2種類の材料の屈折率差が小さくなりすぎて回折格子の高さが大きくなるために回折効率が低下したり、分散の差が小さくなりすぎて広波長域に亘って高い回折効率を維持したりすることができなくなる。なお、2つの回折素子要素にP1,P2に用いる材料は、d線に対する屈折率が1.5以上で、かつ、各素子厚においてi線(波長365.015nm)を50%以上透過する樹脂であることが望ましい。
【0064】
本実施形態に係る対物レンズOLにおいて、上述したように、光束が回折光学素子PFに入射する光線の角度が大きいと、回折効率が落ちてしまい、設計次数以外の回折光の効率が大きくなってフレアとなる。このため、回折光学素子PFは、主光線と光軸とが交わる位置よりも物体側に配置されるとともに、次の条件式(13)を満足することが好ましい。
【0065】
4.0° ≦ |θent| ≦ 12.0° …(13)
但し、
θent:物体中心から最大NAとなる光線が回折光学素子PFの空気側面に入射する角度。
【0066】
条件式(13)は、第2レンズ群G2内に配置される回折光学素子PFに入射する適切な角度を制限するものである。条件式(13)を満足することにより、回折効率がよく、設計次数以外の回折光の効率が大きくなることを抑え、フレアを良好に防止することができる。条件式(13)の下限値を下回ると、空気側面での反射によるフレアが増大し、像のコントラストが低下する。条件式(13)の上限値を上回ると、回折光学素子PFの接合面に形成された回折光学面Dに入射する角度が大きくなりすぎて、回折効率の低下による結像性能の劣化を引き起こす。
【0067】
本実施形態に係る対物レンズOLは、次の条件式(14)を満足することが好ましい。
【0068】
100.00 ≦ |fdoe/f| …(14)
但し、
fdoe:前記回折光学素子の焦点距離。
【0069】
条件式(14)は、第2レンズ群G2内に配置された回折光学素子PFの回折光学面Dの適切なパワーを制限するものである。条件式(14)の下限値を下回ると、回折光学面Dのパワーが強くなりすぎて、色収差の補正が困難になるだけでなく、回折格子溝のピッチ幅が小さくなりすぎて、製造が困難となる。
【0070】
本実施形態に係る対物レンズOLは、次の条件式(15)を満足することが好ましい。
【0071】
4.00 ≦ fG2/f ≦ 20.00 …(15)
但し、
fG2:第2レンズ群G2の焦点距離。
【0072】
条件式(15)は、第2レンズ群G2の適切な焦点距離を制限するものである。条件式(15)の下限値を下回ると、第2レンズ群G2のパワーが強くなりすぎて、結果的に第3レンズ群G3のパワーも増大し、球面収差やコマ収差が補正過剰となる。条件式(15)の上限値を上回ると、逆に高次の球面収差やコマ収差が発生し、これらの補正が困難となる。
【0073】
本実施形態の効果をより確実なものとするために、条件式(15)の下限値を6.00とすることが好ましい。本実施形態の効果をより確実なものとするために、条件式(15)の上限値を15.00とすることが好ましい。
【実施例】
【0074】
これより本実施形態に係る各実施例について、図面に基づいて説明する。以下に、表1〜表3を示すが、これらは第1実施例〜第3実施例における各諸元の表である。
【0075】
なお、第1実施例に係る図1に対する各参照符号は、参照符号の桁数の増大による説明の煩雑化を避けるため、実施例ごとに独立して用いている。ゆえに、他の実施例に係る図面と共通の参照符号を付していても、それらは他の実施例とは必ずしも共通の構成ではない。
【0076】
表中の[全体諸元]において、βは倍率、NAは開口数、fは全系の焦点距離を示す。また、d0は、平行平面板(カバーガラスやガラスシャーレ等)の対物レンズ側の面から、第1レンズ群G1の最も物体側にあるレンズL1の最も物体側のレンズ面までの光軸上の距離を示す。
【0077】
表中の[レンズ諸元]において、面番号は光線の進行する方向に沿った物体側からの光学面の順序、Rは各光学面の曲率半径、dは各光学面から次の光学面(又は像面)までの光軸上の距離である面間隔、ndは光学部材の材質のd線(波長587.5620nm)に対する屈折率、νdは光学部材の材質のd線を基準とするアッベ数をそれぞれ示す。曲率半径の「∞」は平面又は開口を示す。空気の屈折率「1.00000」の記載は省略する。光学面が回折光学面である場合には、面番号に*Dを付す。また、光学面が非球面である場合には、面番号に*Aを付し、曲率半径Rの欄には近軸曲率半径を示す。
【0078】
表中の[回折光学面データ]には、[レンズ諸元]に示した回折光学面について、その位相差Φを、次式(a)の位相関数Φ(h)で示す。この式(a)において、hは光軸からの高さ、λは波長、Ciは第i次の位相差係数を示す。
【0079】
Φ(h)=2π/λ×(C2×h2+C4×h4+C6×h6+C8×h8) …(a)
【0080】
表中の[非球面データ]には、[レンズ諸元]に示した非球面について、その形状を次式(b)で示す。この非球面は、回転対称非球面であり、zはレンズ面頂点からの光軸方向のサグ量、hは光軸からの距離、cは曲率(曲率半径rの逆数)、Kはコーニック定数、Aiは第i次の非球面係数を示す。「E-n」は、「×10-n」を示す。例えば、1.234E-05=1.234×10-5である。
【0081】

…(b)
【0082】
表中の[条件式]には、上記の条件式(1)〜(15)に対応する値を示す。
【0083】
以下、全ての諸元値において、掲載されている焦点距離f、曲率半径R、面間隔d、その他の長さ等は、特記のない場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。また、単位は「mm」に限定されることなく、他の適当な単位を用いることが可能である。
【0084】
各実施例に共通する事項として、対物レンズ内に配置される回折光学素子PFは、高屈折率低分散樹脂と、低屈折率高分散樹脂とからなる2つの回折光学素子P1,P2を接合し、当該接合面に回折格子溝が形成された回折光学面Dを有する密着複層型の回折光学素子である。そして、2つの回折光学素子の構成材料には、以下の値の屈折率を有する、異なる2つの紫外線硬化樹脂を用いた。但し、樹脂屈折率は、樹脂硬化後の屈折率を示す。また、それぞれの樹脂に対して、nCはC線(波長656.273nm)に対する屈折率、ndはd線(波長587.562nm)に対する屈折率、nFはF線(波長486.133nm)に対する屈折率、ngはg線(波長435.835nm)に対する屈折率を示す。
【0085】
[樹脂屈折率]
nC nd nF ng
低屈折率樹脂 1.52330 1.52780 1.53910 1.54910
高屈折率樹脂 1.55380 1.55710 1.56500 1.57130
【0086】
これらの樹脂を用いた密着複層型回折光学素子の製造方法は、例えば、欧州特許公開第1830204号公報、および欧州特許公開第1830205号公報に記載されている。
【0087】
ここまでの説明は全ての実施例において共通であり、以下での説明を省略する。
【0088】
(第1実施例)
第1実施例について、図1図2及び表1を用いて説明する。第1実施例に係る対物レンズOL(OL1)は、倍率60倍、開口数1.4を有する、油浸用超アポクロマート級対物レンズである。
【0089】
図1に示すように、物体側から順に並んだ、正の屈折力を持つ第1レンズ群G1と、正の屈折力を持つ第2レンズ群G2と、負の屈折力を持つ第3レンズ群G3とから構成される。
【0090】
第1レンズ群G1は、物体側から順に並んだ、物体側に平面を向けた平凸レンズL1とこれに貼り合わされた物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL2とからなる接合正レンズと、像側により屈折力の大きな面(凸面)を向けたメニスカス形状で正屈折力の単レンズL3と、両凹形状の負レンズL4と両凸形状の正レンズL5とを貼り合わせた接合正レンズとから構成される。
【0091】
第2レンズ群G2は、物体側から順に並んだ、平面板PPと像側に凹面を向けた平凹レンズL6と両凸形状の正レンズL7とを貼り合わせ、平面板PPと平凹レンズL6との間に回折光学素子PFを挟み込んでいる接合正レンズと、像側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズL8と両凸形状の正レンズL9とを貼り合わせた接合正レンズと、両凸形状の正レンズL10と両凹形状の負レンズL11とを貼り合わせた物体側に凸面を向けた接合メニスカスレンズとから構成される。
【0092】
回折光学素子PFは、高屈折率低分散の光学特性を持つ紫外線硬化樹脂と、低屈折率高分散の光学特性を持つ紫外線硬化樹脂とからなる2つの回折光学素子P1,P2を接合し、当該接合面(第11面)に回折格子溝が形成された回折光学面Dを有する密着複層型の回折光学素子である。
【0093】
第3レンズ群G3は、物体側から順に並んだ、両凸形状の正レンズL12と両凹形状の負レンズL13との貼り合わせで像側に凹面を向けた接合メニスカスレンズと、両凹形状の負レンズL14と両凸形状の正レンズL15との貼り合わせで物体側に凹面を向けた接合メニスカスレンズとから構成される。
【0094】
第1実施例に係る対物レンズOL1は、浸液として、d線に対する屈折率1.51482、d線を基準とするアッベ数40.3のオイルを使用し、物体面と第1レンズ群G1との間に配置される平行平面板(カバーガラスやガラスシャーレ等)として、d線に対する屈折率1.52439、d線を基準とするアッベ数54.3、厚さt=0.17mmのものを使用することを前提として設計されている。
【0095】
下記の表1に、第1実施例における各諸元の値を示す。表1における面番号1〜26が、図1に示すm1〜m26の各光学面に対応している。
【0096】
(表1)
[全体諸元]
β =-60.0
NA= 1.4
d0= 0.15
f = 3.338

[レンズ諸元]
面番号 R d nd νd
1 ∞ 0.600 1.51823 59.0
2 -1.0906 3.450 1.88300 40.8
3 -3.4610 0.100
4 -14.9528 4.362 1.72916 54.7
5 -7.8158 0.150
6 -36.6224 1.000 1.67300 38.2
7 18.2991 8.418 1.64000 60.1
8 -16.7197 0.150
9 ∞ 1.000 1.51633 64.1
10 ∞ 0.100 1.55710 49.7
11*D ∞ 0.100 1.52780 33.4
12 ∞ 1.000 1.81600 46.6
13 20.6103 9.140 1.49782 82.6
14 -17.6460 0.150
15 39.1799 1.200 1.81600 46.6
16 14.6458 8.173 1.43875 95.0
17 -22.1484 0.150
18 13.1045 5.798 1.43875 95.0
19 -42.6110 1.000 1.81600 46.6
20 18.4512 0.150
21 8.0000 7.000 1.49782 82.6
22 -61.9605 2.910 1.81600 46.6
23 4.9817 3.894
24 -4.9199 1.201 1.60300 65.5
25 46.4100 2.985 1.73800 32.3
26 -7.9684

[回折光学面データ]
第11面
C2 = -2.4461E-04
C4 = 6.0689E-07
C6 = -7.4364E-09
C8 = 1.0320E-11

[条件式]
条件式(1)fL3/f =5.348
条件式(2)ndL3 =1.72916
条件式(3)νdL3 =54.7
条件式(4)ndn−ndp =0.377
条件式(5)νdp−νdn =48.4
条件式(6)ndL2 =1.88300
条件式(7)νdL2 =40.8
条件式(8)(ndL4+ndL5)/2 =1.6565
条件式(9)|ndL4−ndL5| =0.033
条件式(10)|νdL5−νdL4| =21.9
条件式(11)nd1−nd2 =0.0293
条件式(12)ΔnFC2−ΔnFC1 =0.0046
条件式(13)|θent| =5.0
条件式(14)|fdoe/f| =612.275
条件式(15)fG2/f =11.273
【0097】
表1から、本実施例に係る対物レンズOL1は、条件式(1)〜(15)を満たすことが分かる。
【0098】
図2は、第1実施例に係る対物レンズOL1の諸収差図(球面収差図、非点収差図、コマ収差図)である。球面収差図及びコマ収差図において、波長852.1100nm(s線)、波長768.1950nm(A´線)、波長656.2790nm、波長587.5620nm(d線)、波長486.1330nm(F線)、435.8350nm(g線)、波長404.6560nm(h線)の光線に対する収差を示す。非点収差図においては、実線Sはサジタル像面を、破線Tはタンジェンシャル像面を示す。
【0099】
図2に示す各収差図から、第1実施例に係る対物レンズOL1は、軸上色収差の補正範囲が通常のアポクロマートよりもはるかに広帯域となるh線(波長404.6560nm)からs線(波長852.1100nm)までとなっており、開口数1.4、視野数25において、良好に収差補正されていることが分かる。
【0100】
(第2実施例)
第2実施例について、図3図5及び表2を用いて説明する。第2実施例に係る対物レンズOL(OL2)は、倍率25倍、開口数1.1を有する、水浸用超アポクロマート級対物レンズである。
【0101】
図3に示すように、物体側から順に並んだ、正の屈折力を持つ第1レンズ群G1と、正の屈折力を持つ第2レンズ群G2と、負の屈折力を持つ第3レンズ群G3とから構成される。
【0102】
第1レンズ群G1は、物体側から順に並んだ、物体側に平面を向けた平凸レンズL1とこれに貼り合わされた物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL2とからなる接合正レンズと、像側により屈折力の大きな面(凸面)を向けたメニスカス形状の正屈折力の単レンズL3と、像側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズL4と両凸形状の正レンズL5とを貼り合わせた接合正レンズとから構成される。
【0103】
第2レンズ群G2は、物体側から順に並んだ、回折光学素子PFと像側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズL6と両凸形状の正レンズL7とをこの順で貼り合わせた接合正レンズと、像側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズL8と両凸形状の正レンズL9とを貼り合わせた接合正レンズとから構成される。
【0104】
回折光学素子PFは、高屈折率低分散の光学特性を持つ紫外線硬化樹脂と、低屈折率高分散の光学特性を持つ紫外線硬化樹脂とからなる2つの回折光学素子P1,P2を接合し、当該接合面(第10面)に回折格子溝が形成された回折光学面Dを有する密着複層型の回折光学素子である。
【0105】
第3レンズ群G3は、物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた平凸形状の正レンズL10と像側に凹面を向けた平凹形状の負レンズL11との貼り合わせで像側に凹面を向けた接合メニスカスレンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズL12と像側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL13との貼り合わせで物体側に凹面を向けた接合メニスカスレンズとから構成される。
【0106】
第2実施例に係る対物レンズOL2は、浸液として、d線に対する屈折率1.33255、d線を基準とするアッベ数55.9の水を使用し、物体面と第1レンズ群G1との間に配置される平行平面板(カバーガラスやガラスシャーレ等)として、d線に対する屈折率1.52439、d線を基準とするアッベ数54.3の材料を使用し、厚さt=0〜0.17mmまでの収差変化に対応できるように設計されている。
【0107】
下記の表2に、第2実施例における各諸元の値を示す。表2における面番号1〜22が、図3に示すm1〜m22の各光学面に対応している。
【0108】
(表2)
[全体諸元]
β =-25.0
NA= 1.1
d0= 2.00
f = 7.983

[レンズ諸元]
面番号 R d nd νd
1 ∞ 2.000 1.45850 67.8
2 -3.4600 4.000 1.88300 40.8
3 -6.1546 0.100
4 -24.8585 3.643 1.72916 54.7
5 -13.9338 0.150
6 100.0000 1.000 1.67300 38.2
7 23.4455 8.536 1.43875 95.0
8 -17.7502 0.200
9 150.0000 0.100 1.55710 49.7
10*D 150.0000 0.100 1.52780 33.4
11 150.0000 1.000 1.83481 42.7
12 31.6286 8.085 1.43875 95.0
13 -21.4630 0.200
14 34.5420 1.000 1.83481 42.7
15 16.4134 7.992 1.43875 95.0
16 -35.8411 d16(可変)
17 11.5969 8.820 1.43875 95.0
18 ∞ 1.000 1.83481 42.7
19 9.6538 7.487
20 -8.4923 1.000 1.69350 50.8
21 -26.6082 4.939 1.73800 32.3
22 -11.4551

[回折光学面データ]
第10面
C2 = -1.5195E-04
C4 = 2.4453E-07
C6 = 6.7127E-10
C8 = -8.1884E-12

[条件式]
条件式(1)fL3/f =4.775
条件式(2)ndL3 =1.72916
条件式(3)νdL3 =54.7
条件式(4)ndn−ndp =0.377
条件式(5)νdp−νdn =48.4
条件式(6)ndL2 =1.88300
条件式(7)νdL2 =40.8
条件式(11)nd1−nd2 =0.0293
条件式(12)ΔnFC2−ΔnFC1 =0.0046
条件式(13)|θent| =11.691
条件式(14)|fdoe/f| =412.192
条件式(15)fG2/f =8.628
【0109】
表2から、本実施例に係る対物レンズOL2は、条件式(1)〜(7)、(11)〜(15)を満たすことが分かる。
【0110】
上記諸元を有する対物レンズOL2は、第3レンズ群G3を光軸方向に移動させることにより、平行平面板(カバーガラス)の厚さに起因する収差変動を補正できるように構成されている。このため、表2の面間隔d16は、第3レンズ群G3のレンズL10〜L13の光軸方向の移動によって変化する可変値である。平行平面板を使用しない場合は、面間隔d0=2.00mm、面間隔d16=1.146mmとなり、厚さ0.17mmの平行平面板を使用する場合は、面間隔d0=1.890mm、面間隔d16=0.200mmとなる。
【0111】
図4は、平行平面板の厚さが0mmのときの、第2実施例に係る対物レンズOL2の諸収差図(球面収差図、非点収差図、コマ収差図)である。図5は、平行平面板の厚さが0.17mmのときの、第2実施例に係る対物レンズOL2の諸収差図(球面収差図、非点収差図、コマ収差図)である。球面収差図及びコマ収差図において、波長1013.9800nm(t線)、波長852.1100nm(s線)、波長768.1950nm(A´線)、波長656.2790nm、波長587.5620nm(d線)、波長486.1330nm(F線)、波長435.8350nm(g線)、波長404.6560nm(h線)の光線に対する収差を示す。非点収差図においては、実線Sは各波長に対するサジタル像面を、破線Tは各波長に対するタンジェンシャル像面を示す。
【0112】
図4及び図5に示す各収差図から、第2実施例に係る対物レンズOL2は、軸上色収差の補正範囲が通常のアポクロマートよりもはるかに広帯域となるh線(波長404.656nm)からt線(波長1013.98nm)までとなっており、開口数1.1、視野数22において、良好に収差補正されていることが分かる。
【0113】
(第3実施例)
第3実施例について、図6図8及び表3を用いて説明する。第3実施例に係る対物レンズOL(OL3)は、倍率25倍、開口数1.1を有する、水浸用超アポクロマート級対物レンズである。
【0114】
図6に示すように、物体側から順に並んだ、正の屈折力を持つ第1レンズ群G1と、正の屈折力を持つ第2レンズ群G2と、負の屈折力を持つ第3レンズ群G3とから構成される。
【0115】
第1レンズ群G1は、物体側から順に並んだ、物体側に平面を向けた平凸レンズL1とこれに貼り合わされた物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL2とからなる接合正レンズと、像側により屈折力の大きな面(凸面)を向けたメニスカス形状の正屈折力の単レンズL3と、像側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズL4と両凸形状の正レンズL5とを貼り合わせた接合正レンズとから構成される。正屈折力の単レンズL3の像側面は、回転対称非球面Aである。
【0116】
第2レンズ群G2は、物体側から順に並んだ、回折光学素子PFと像側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズL6と両凸形状の正レンズL7とをこの順で貼り合わせた接合正レンズと、像側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズL8と両凸形状の正レンズL9とを貼り合わせた接合正レンズとから構成される。
【0117】
回折光学素子PFは、高屈折率低分散の光学特性を持つ紫外線硬化樹脂と、低屈折率高分散の光学特性を持つ紫外線硬化樹脂とからなる2つの回折光学素子P1,P2を接合し、当該接合面(第10面)に回折格子溝が形成された回折光学面Dを有する密着複層型の回折光学素子である。
【0118】
第3レンズ群G3は、物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた平凸形状の正レンズL10と像側に凹面を向けた平凹形状の負レンズL11との貼り合わせで像側に凹面を向けた接合メニスカスレンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズL12と像側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL13との貼り合わせで物体側に凹面を向けた接合メニスカスレンズとから構成される。平凹形状の負レンズL11の像側面は、回転対称非球面Aである。
【0119】
第3実施例に係る対物レンズOL3は、浸液として、d線に対する屈折率1.33255、d線を基準とするアッベ数55.9の水を使用し、物体面と第1レンズ群G1との間に配置される平行平面板(カバーガラスやガラスシャーレ等)として、d線に対する屈折率1.52439、d線を基準とするアッベ数54.3の材料を使用し、厚さt=0〜0.17mmまでの収差変化に対応できるように設計されている。
【0120】
下記の表3に、第3実施例における各諸元の値を示す。表3における面番号1〜22が、図6に示すm1〜m22の各光学面に対応している。
【0121】
(表3)
[全体諸元]
β =-25.0
NA= 1.1
d0= 2.00
f = 8.015

[レンズ諸元]
面番号 R d nd νd
1 ∞ 2.000 1.45850 67.8
2 -3.4600 4.000 1.88300 40.8
3 -6.0299 0.100
4 -39.2991 3.338 1.72916 54.7
5*A -16.4741 0.150
6 326.4133 1.000 1.67300 38.2
7 39.6210 7.472 1.43875 95.0
8 -16.3626 0.200
9 546.4391 0.100 1.55710 49.7
10*D 546.4391 0.100 1.52780 33.4
11 546.4391 1.000 1.83481 42.7
12 28.6663 8.568 1.43875 95.0
13 -19.1978 0.200
14 29.5454 1.000 1.83481 42.7
15 15.4112 8.401 1.43875 95.0
16 -30.6795 d16(可変)
17 10.6917 7.671 1.43875 95.0
18 ∞ 1.000 1.83481 42.7
19*A 8.6490 8.332
20 -8.4043 1.000 1.69350 50.8
21 -20.0000 5.868 1.73800 32.3
22 -11.7029

[回折光学面データ]
第10面
C2 =-1.6669E-04
C4 = 3.3798E-07
C6 =-2.2703E-10
C8 =-3.6811E-12

[非球面データ]
第5面
K = 0
A4 = 0.179752E-04
A6 = 0.128802E-06
A8 =-0.777830E-11
A10= 0.581171E-11

第19面
K = 0
A4 =-0.302832E-05
A6 =-0.547084E-06
A8 = 0.132138E-07
A10=-0.271115E-09

[条件式]
条件式(1)fL3/f =4.571
条件式(2)ndL3 =1.72916
条件式(3)νdL3 =54.7
条件式(4)ndn−ndp =0.377
条件式(5)νdp−νdn =48.4
条件式(6)ndL2 =1.88300
条件式(7)νdL2 =40.8
条件式(11)nd1−nd2 =0.0293
条件式(12)ΔnFC2−ΔnFC1 =0.0046
条件式(13)|θent| =7.521
条件式(14)|fdoe/f| =374.232
条件式(15)fG2/f =9.970
【0122】
表3から、本実施例に係る対物レンズOL3は、条件式(1)〜(7)、(11)〜(15)を満たすことが分かる。
【0123】
上記諸元を有する対物レンズOL3は、第3レンズ群G3を光軸方向に移動させることにより、平行平面板(カバーガラス)の厚さに起因する収差変動を補正できるように構成されている。このため、表3の面間隔d16は、第3レンズ群G3のレンズL10〜L13の光軸方向の移動によって変化する可変値である。平行平面板を使用しない場合は、面間隔d0=2.00mm、面間隔d16=1.000mmとなり、厚さ0.17mmの平行平面板を使用する場合は、面間隔d0=1.895mm、面間隔d16=0.200mmとなる。
【0124】
図7は、平行平面板の厚さが0mmのときの、第3実施例に係る対物レンズOL3の諸収差図(球面収差図、非点収差図、コマ収差図)である。図8は、平行平面板の厚さが0.17mmのときの、第3実施例に係る対物レンズOL3の諸収差図(球面収差図、非点収差図、コマ収差図)である。球面収差図及びコマ収差図において、波長1013.9800nm(t線)、波長852.1100nm(s線)、波長768.1950nm(A´線)、波長656.2790nm、波長587.5620nm(d線)、波長486.1330nm(F線)、波長435.8350nm(g線)、波長404.6560nm(h線)、波長365.0150nm(i線)の収差を示す。非点収差図においては、実線Sは各波長に対するサジタル像面を、破線Tは各波長に対するタンジェンシャル像面を示す。
【0125】
図7及び図8に示す各収差図から、第3実施例に係る対物レンズOL3は、軸上色収差の補正範囲が超アポクロマートであり、第2実施例よりもさらに広帯域となるi線(波長365.015nm)からt線(波長1013.98nm)までとなっており、開口数1.1、視野数22において、良好に収差補正されていることが分かる。
【0126】
また、本実施例のように、回折光学面や回転対称非球面を適切に配置することにより、球面系のみのレンズ構成では達成できなかった全長や平坦性の仕様の対物レンズが設計可能となる。
【0127】
なお、第1〜第3実施例に係る対物レンズOL1〜OL3は、いずれも無限遠補正型であり、図9に示す構成及び表4に示す諸元を有する結像レンズILとともに使用される。結像レンズILは、図9に示すように、物体側から順に並んだ、両凸形状の正レンズL21と両凹形状の負レンズL22との接合レンズと、両凸形状の正レンズL23と両凹形状の負レンズL24との接合レンズとから構成される。
【0128】
下記の表4に、結像レンズILにおける諸元の値を示す。表4における面番号1〜6が、図9に示すm1〜m6の各光学面に対応している。
【0129】
(表4)
面番号 R d nd νd
1 75.043 5.10 1.62280 57.0
2 -75.043 2.00 1.74950 35.2
3 1600.580 7.50
4 50.256 5.10 1.66755 42.0
5 -84.541 1.80 1.61266 44.4
6 36.911
【0130】
ここまで本発明を分かりやすくするために、実施形態の構成要件を付して説明したが、本発明がこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0131】
OL(OL1〜OL3) 対物レンズ
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
PF 回折光学素子
D 回折光学面
A 非球面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9