特許第6354218号(P6354218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6354218シート状電子写真感光体、及びシート状電子写真感光体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354218
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】シート状電子写真感光体、及びシート状電子写真感光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/10 20060101AFI20180702BHJP
   G03G 5/14 20060101ALI20180702BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20180702BHJP
   G03G 5/047 20060101ALI20180702BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   G03G5/10 A
   G03G5/14 102
   G03G5/14 101D
   G03G5/05 101
   G03G5/047
   G03G5/147
   G03G5/05 102
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-45513(P2014-45513)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-169831(P2015-169831A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】田口 将
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−002317(JP,A)
【文献】 特表平10−505434(JP,A)
【文献】 特表2000−512026(JP,A)
【文献】 特開昭59−184359(JP,A)
【文献】 特開2013−250426(JP,A)
【文献】 特開2000−039728(JP,A)
【文献】 特開2010−096811(JP,A)
【文献】 特開2001−312183(JP,A)
【文献】 特開2013−047792(JP,A)
【文献】 特開平11−212400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/05−5/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の電子写真感光体であって、
樹脂により形成されたシート状の基体と、
前記基体の一方の面に積層された導電性の層である導電層と、
前記導電層のうち前記基体とは反対側の面に積層される感光層と、を有し、
一方の端部には、前記導電層のうち前記基体とは反対側の面が露出した部位である電極側端部が形成されており、
前記電極側端部とは反対側の端部には、前記導電層の端面が前記感光層により覆われた部位である非電極側端部が形成されており
前記感光層は、
前記導電層側から下引層、電荷発生層、及び電荷輸送層の順で積層され、
前記非電極側端部では、前記導電層の端面よりも前記電荷輸送層の端面が突出しているとともに、前記電荷輸送層の端面よりも前記下引層、前記電荷発生層の端面が突出している、シート状電子写真感光体。
【請求項2】
前記非電極側端部では、前記導電層の端面よりも前記感光層の端面の全部が突出している請求項1に記載のシート状電子写真感光体。
【請求項3】
記非電極側端部において前記導電層の端面が前記下引層により覆われている請求項1又は2に記載のシート状電子写真感光体。
【請求項4】
前記感光層では、前記電荷輸送層に保護層が積層されている請求項乃至のいずれか1項に記載のシート状電子写真感光体。
【請求項5】
前記電極側端部において前記下引層、前記電荷発生層及び前記電荷輸送層のうち、前記電荷輸送層の端面よりも前記下引層、前記電荷発生層の端面が突出している、請求項乃至のいずれか1項に記載のシート状電子写真感光体。
【請求項6】
前記下引層がポリアミド樹脂を含有し、前記電荷輸送層がポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂を含有する、請求項乃至のいずれか1項に記載のシート状電子写真感光体。
【請求項7】
前記非電極側端部では、前記基体のうち前記感光層が積層された側の面において、前記基体の一部が露出した部位を有する、請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート状電子写真感光体。
【請求項8】
シート状の電子写真感光体を製造する方法であって、
樹脂により形成されたシート状の基体の一方の面に導電層を積層する工程と、
前記導電層のうち前記基体とは反対側の面に感光層を積層する工程と、を含み、
前記感光層を積層する工程では、
前記導電層側から下引層、電荷発生層、及び電荷輸送層の順で塗布して積層し、
一方の端部では前記導電層上に前記感光層積層されていない部分を設けるように塗布し、
他方の端部では前記導電層の端面を前記下引層で覆うように前記下引層を塗布して積層するとともに前記電荷輸送層の端面よりも前記下引層、前記電荷発生層の端面が突出するように塗布して積層する、シート状電子写真感光体の製造方法。
【請求項9】
前記一方の端部において前記下引層、前記電荷発生層及び前記電荷輸送層のうち、前記電荷輸送層の端面よりも前記下引層、前記電荷発生層の端面が突出するように積層する、請求項に記載のシート状電子写真感光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンタや複写機等の画像形成装置に装着されるシート状電子写真感光体、及びシート状電子写真感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタや複写機等に代表される画像形成装置には、文字や図形等、表されるべき画像の元となる像が形成される電子写真感光体が備えられている。このような像を形成するため、電子写真感光体には感光層が設けられており、ここに静電潜像が形成される。
【0003】
電子写真感光体にはいくつかの形態があるが、そのうちの1つとして特許文献1に開示されているようにシート状のものがある(以下、「シート状電子写真感光体」と記載することがある。)。図6に、従来のシート状電子写真感光体100を説明する図を示した。図6(a)はシート状電子写真感光体100の平面図、図6(b)は、図6(a)にVIb−VIbで示した線に沿ったシート状電子写真感光体100の厚さ方向断面で層構成を模式的に表した図である。図6(a)、図6(b)からわかるように、シート状電子写真感光体100は、シート状の基体101の表面に導電層102、下引層103、電荷発生層104、及び電荷輸送層105がこの順に積層されている。
【0004】
ここで、電子写真感光体は画像形成装置の本体と電気的に導通を取る必要がある。そこで、シート状電子写真感光体100には上記導電層102が設けられ、該導電層102が画像形成装置の本体と接触し易いように一方の端部(電極側端部100a)において下引層103、電荷発生層104、及び電荷輸送層105が切り欠かれて導電層102の一方の面が露出されている。また、他方側の端部は導電層102による不要な通電(以下「リーク」と記載することがある。)を防ぐため、導電層102、下引層103、電荷発生層104、及び電荷輸送層105を切り欠いて基体101の表面を露出させて非電極側端部100bを形成している。
【0005】
このようなシート状電子写真感光体は例えば特許文献2、3に表れているように、画像形成装置に配置される際には円筒状の回転ドラムの外周に巻きつけられて連続した面を形成する。図7に説明のための概念図を示した。
【0006】
図7からわかるように、導電性の材料により形成された円筒状の回転ドラム106に設けられたスリット(不図示)に、シート状電子写真感光体100のうち電極側端部100aが差し込まれて固定される。これにより図7にVIIで表した部分で導電層102と回転ドラム106とが電気的に接触するので導通がとれる。そしてシート状電子写真感光体100がドラム106の外周に巻きつけられ、非電極側端部100bは自由端とされる。
図7では見易さのために概念的に回転ドラム106とシート状電子写真感光体100とを離して表しているが両者は密着している。また、シート状電子写真感光体100には現像液が供給されて濡れることから、非電極側端部100bを自由端としてもシート状電子写真感光体100は回転ドラム106の表面に貼りついた状態を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−14160号公報
【特許文献2】特表平10−508119号公報
【特許文献3】特許第3228418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シート状電子写真感光体では、リークを防ぐために上記のように導電層、下引層、電荷発生層、及び電荷輸送層を除去して非電極側端部を形成する必要があった。除去する場合には、溶剤や酸・アルカリ等の薬液を用いて剥離除去する方法があるが、溶解できる感光層と溶剤の組み合わせに限りがあったり、除去しきれず残存した導電層からリークしたり、あるいは除去された端部から感光層が剥がれやすくなったりするという問題があった。さらにこのように非電極側端部を形成しても必ずしも十分な耐リーク性を得られるとは限らず、より確実なリーク防止の手段が必要であった。
【0009】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、耐リーク性の高い構造を有するシート状電子写真感光体を提供することを目的とする。また、このようなシート電子写真感光体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明について説明する。ここではわかりやすさのため括弧書きにて図面の参照符号の一部を例示して付すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
請求項1に記載の発明は、シート状の電子写真感光体(10)であって、樹脂により形成されたシート状の基体(11)と、基体の一方の面に積層された導電性の層である導電層(12)と、導電層のうち基体とは反対側の面に積層される感光層(13)と、を有し、一方の端部には、導電層のうち基体とは反対側の面が露出した部位である電極側端部(10a)が形成されており、電極側端部とは反対側の端部には、導電層の端面が感光層により覆われた部位である非電極側端部(10b)が形成されており感光層は、導電層側から下引層(14)、電荷発生層(15)、及び電荷輸送層(16)の順で積層され、非電極側端部では、導電層の端面よりも電荷輸送層の端面が突出しているとともに、電荷輸送層の端面よりも下引層、電荷発生層の端面が突出している、シート状電子写真感光体である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシート状電子写真感光体(10)において、非電極側端部(10b)では、導電層(12)の端面よりも感光層(13)の端面の全部が突出している。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載のシート状電子写真感光体(10)の非電極側端部(10b)において導電層の端面が下引層により覆われている。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項乃至のいずれか1項に記載のシート状電子写真感光体(10)において、感光層(13)では、電荷輸送層(16)に保護層(17)が積層されている。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項乃至のいずれか1項に記載のシート状電子写真感光体(10)において、電極側端部(10a)において下引層(14)、電荷発生層(15)及び電荷輸送層(16)のうち、電荷輸送層の端面よりも下引層、電荷発生層の端面が突出している。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項乃至のいずれか1項に記載のシート状電子写真感光体(10)において、下引層(14)がポリアミド樹脂を含有し、電荷輸送層(16)がポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂を含有する。
【0019】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート状電子写真感光体(10)の非電極側端部(10b)では、基体(11)のうち感光層(13)が積層された側の面において、基体の一部が露出した部位を有する。
【0020】
請求項に記載の発明は、シート状の電子写真感光体(10)を製造する方法であって、樹脂により形成されたシート状の基体(11)の一方の面に導電層(12)を積層する工程と、導電層のうち基体とは反対側の面に感光層(13)を積層する工程と、を含み、感光層を積層する工程では、導電層側から下引層、電荷発生層、及び電荷輸送層の順で塗布して積層し、一方の端部では導電層上に感光層積層されていない部分を設けるように塗布し、他方の端部では導電層の端面を下引層で覆うように下引層を塗布して積層するとともに電荷輸送層の端面よりも下引層、電荷発生層の端面が突出するように塗布して積層する、シート状電子写真感光体の製造方法である。
【0023】
請求項に記載の発明は、請求項に記載のシート状電子写真感光体の製造方法の一方の端部において下引層(14)、電荷発生層(15)及び電荷輸送層(16)のうち、電荷輸送層の端面よりも下引層、電荷輸送層の端面が突出するように積層する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、非電極側端部における不要な通電(リーク)をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1(a)はシート状電子写真感光体10の平面図、図1(b)は図1(a)にIb−Ibで示した線に沿ったシート状電子写真感光体10の断面図である。
図2】非電極側端部10bの断面を拡大した図である。
図3図3(a)は非電極側端部20bを説明する図、図3(b)は非電極側端部30bを説明する図、図3(c)は非電極側端部40bを説明する図、図3(d)は非電極側端部50bを説明する図である。
図4図4(a)〜図4(e)はシート状電子写真感光体10を製造する工程を説明する図である。
図5】画像形成装置20の構造を概念的に表した図である。
図6図6(a)は従来におけるシート状電子写真感光体100の平面図、図6(b)は図6にVIb−VIbで示した線に沿ったシート状電子写真感光体100の断面図である。
図7】シート状電子写真感光体100が回転ドラム106に巻かれる状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す形態に基づき説明する。ただし本発明はこれら形態に限定されるものではない。
【0027】
図1は1つの形態のシート状電子写真感光体10を説明する図である。図1(a)はシート状電子写真感光体10の平面図、図1(b)は図1(a)にIb−Ibで示した線に沿ったシート状電子写真感光体10の長手方向断面の概要を表した図である。
【0028】
図1(a)、図1(b)からわかるように、シート状電子写真感光体10は、基体11、導電層12及び感光層13を有して構成されている。そして本形態では感光層13は、下引層14、電荷発生層15、電荷輸送層16、及び保護層17を備えている。
【0029】
基体11は、導電層12及び感光層13を形成する際の基礎となるシート状の部材である。基体11は特に光学的な特徴を備えている必要はないが、可撓性、絶縁性、及びシート状電子写真感光体10がシート状を維持することができる程度に強度とコシを備えている二軸延伸フィルムが好ましい。従って基体11はこのような性質を有していれば特にその材質は限定されることはないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フェノール樹脂、ポリカーボネート、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン、アクリル系、トリアセチルセルロース等の各樹脂を挙げることができる。本形態は、入手性や取り扱い容易性、成形性、及び価格等の観点からポリエチレンテレフタレート(PET)を用いている。なお、基体11の厚みは通常30μm以上150μm以下であり、好ましくは50μm以上120μm以下、更に好ましくは70μm以上100μm以下である。
【0030】
導電層12は、シート状電子写真感光体10の感光層13と、シート状電子写真感光体10が巻かれるドラムとを電気的に導通させる層である。従って導電性を有する材料により形成されている。このような観点から例えばアルミニウム、ニッケル、黄銅、ステンレス鋼、ITO(インジウム−スズ酸化物)等の金属による層を用いることができる。本形態では導電層12はアルミニウムの蒸着層により形成されている。導電層の厚みは、通常、40nm以上100nm以下程度であり、上記基体11への蒸着は、層を構成する金属を用いて電熱加熱溶融蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法等により公知の蒸着法でなされる。
また、導電層としては、アルミニウム箔、ニッケル箔等の金属箔や、これら金属を積層したラミネートフィルムを用いることもできる。この場合の金属箔は、5μm以下が好ましい。また、金属箔の上にさらに適切な抵抗値を有する導電性材料を積層することもできる。
導電層表面は、平滑であっても良いし、樹脂製膜時に粒径の大きな粒子を混合すること等によって、粗面化されていても良い。
【0031】
感光層13は、転写するべき像が形成される層であり、また次の新たな像を形成するために既に形成された像を消去する必要もある。従って像の形成および消去が繰り返し行われ、その際に電荷の発生や移動が行われる。感光層としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された単層構造、及び電荷発生物質がバインダー中に分散された電荷発生層と電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層とに機能が分離された積層構造があり、いずれであってもよい。
本形態では感光層13は下引層14、電荷発生層15、電荷輸送層16、及び保護層17を備えている。
【0032】
下引層14は、導電層12と感光層13との密着性・ブロッキング性の向上、導電層12による光反射の防止、及び感光層13から導電層12への不要な電荷の移動を防止するための層であり、従来から下引層として用いられる材料を適用できる。バインダー樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。金属酸化物粒子としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。電気特性の観点から、酸化チタンおよび酸化アルミニウムが好ましい。バインダー樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できる。分散性、塗布性の観点から、共重合ポリアミドが好ましい。そして、下引層14の厚さは通常0.05μm以上2μm以下、好ましくは0.1μm以上1μm以下の範囲とされる。
【0033】
電荷発生層15は公知のものと同様、受光時に電荷を発生する機能を有する層であり、その材料は公知の通りである。従ってここに含まれる電荷発生物質としては、スーダンレッド、ダイアンブルー、ジエナスグリーンB等のアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アルゴールイエロー、ピレンキノン等のキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、インドフアーストオレンジトナー等のビスベンゾイミダゾール顔料、銅フタロシアニン等のフタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ピリリウム塩、アズレニウム塩等を挙げることができる。この中でも、感度の高いX型、τ型無金属フタロシアニン、A型、B型、D型等のチタニルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が好ましい。バインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等を挙げることができる。そして電荷発生層15の厚さは、通常0.1μm以上1μm以下の範囲とされる。
【0034】
電荷輸送層16は公知のものと同様、電荷発生層で発生した電荷を輸送する機能を有する層であり、その材料は公知の通りである。従ってここに含まれる電荷輸送物質としては、主鎖または側鎖にアントラセン、ピレン、フエナントレン、コロネン等の多芳香族化合物またはインドール、カルバゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール、トリアゾール等の含窒素環式化合物の骨格を有する化合物、その他、ヒドラゾン化合物など正孔輸送物質を挙げることができる。バインダー樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、およびその共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等が挙げられ、またこれらの部分的架橋硬化物も使用できる。この中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が特に好ましい。バインダー樹脂と電荷輸送物質の割合は、電気特性の観点から、通常、バインダー樹脂100質量部に対して20質量部以上、好ましくは35質量部以上、摩耗性の観点から、通常、150質量部以下、好ましくは100質量部以下の範囲で使用される。そして電荷輸送層16の厚さは通常10μm以上30μm以下の範囲、好ましくは15μm以上25μm以下程度である。
【0035】
保護層17は公知のものと同様、感光体の最表面層に配置され、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電物質等による感光層の劣化を防止、軽減等したりする機能を有する層である。保護層は、例えば導電性材料を適当なバインダー樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることができる。導電性材料としては、TPD(N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物等を用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
保護層に用いるバインダ樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報に記載のような、トリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂との共重合体を用いることもできる。なお、保護層に用いるバインダ樹脂も、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0036】
シート状電子写真感光体10は以上のような各層が積層されて構成されている。詳しくは図1(b)からわかるように、両端部以外の部位において、基体11の一方の面に導電層12が積層され、導電層12のうち基材層11とは反対側に感光層13が積層されている。感光層13では導電層12側から下引層14、電荷発生層15、電荷輸送層16、及び保護層17がこの順で積層されている。
また、例えば、感光体表面の摩擦抵抗、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、保護層17にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等を含んでいてもよい。また、これらの樹脂からなる粒子、無機化合物の粒子等を保護層17に含んでいてもよい。
【0037】
またシート状電子写真感光体10の四周のうちの1つで、シート状電子写真感光体10の一端には電極側端部10aが形成されている。電極側端部10aでは図1(b)からよくわかるように、導電層12上に感光層13が配置されていない。これにより導電層12のうち基体11に接していない側の面の一部が露出する。
このとき、感光層13では、その端面が一直線に揃っていてもよいし、図1(b)に表れているように、階段状になるように揃っていなくてもよい。当該端面が階段状になるように揃わない場合には、導電層12側に配置される層が最も突出し、導電層12から離隔するに層ほど後退する形態であることが好ましい。これにより生産性を向上させることができ、接着性も高めることができる。
【0038】
一方、シート状電子写真感光体10の四周のうちの1つで、上記電極側端部10aとは反対側となる端部には非電極側端部10bが形成されている。図2には、図1(b)のうち非電極側端部10bの部分を拡大した図を示した。
非電極側端部10bでは図1(b)、図2からよくわかるように、基体11上にいずれの層も配置されておらず基体11の面の一部が露出する部位を備えている。また、非電極側端部10bにおいて導電層12及び感光層13の端面は次のように形成されている。すなわち、非電極側端部10bにおける導電層12の端面が感光層13により覆われており、この部分については基体11に感光層13が直接積層されている。本形態では導電層12の端面が下引層14により覆われており、この部位については下引層14が基体11に直接積層されている。これにより、非電極側端部10bにおいて導電層12が感光層13により隠蔽されて露出されないのでリークを防止することができる。
【0039】
ここで、非電極側端部10bでは、感光層13の端面のうち、少なくとも電荷輸送層16が導電層12の端面よりも突出するように配置されていることが好ましい。これによりリーク防止を向上することができる。ただし、各層の剥離の防止の観点から、下引層14、電荷発生層15、及び電荷輸送層16のいずれの端面も導電層12の端面よりも突出した位置とすることが好ましい。そして、電荷輸送層16の端面が下引層14の端面及び電荷発生層15の端面よりも後退していることがさらに好ましい。なお、図2にLで示した、導電層12の端面と電荷輸送層16の端面との距離は1.0mm以上10.0mm以下が好ましく、さらに好ましくは1.5mm以上7.0mm以下である。
また非電極側端部10bでは、基材11のうち感光層等の各層が積層さている側の面において、少なくともその一部に何れの層も積層されておらず、基材11が露出した部位を有していることが好ましい。
【0040】
非電極側端部10bでは、導電層12からのリークを防止することが可能なように、導電層12の端面が他の層により覆われていればよく、上記の他、例えば次のような構造でもよい。図3(a)〜図3(d)に例を示した。この図に用いられる符号はシート状電子写真感光体10と同じである。
【0041】
図3(a)の例では非電極側端部20bにおいて、保護層17の端面が最も突出し、下引き層14、電荷発生層15、電荷輸送層16、及び導電層12の順に端面が後退して配置されている。導電層12の端面は下引き層14により覆われている。
これによれば、保護層17により他の層の端面が保護され、露出するエッジも少ないので端部の削れを低下させることができる。
【0042】
図3(b)の例では、非電極側端部30bにおいて、電荷発生層15の端面が最も突出し、下引き層14、電荷輸送層16、及び導電層12の順に端面が後退して配置されている。導電層12の端面は下引き層14により覆われている。
また、図3(c)の例では、非電極側端部40bにおいて、電荷発生層15の端面が最も突出し、電荷輸送層16、導電層12、及び下引き層14の順に端面が後退して配置されている。導電層12の端面は電荷発生層15により覆われている。
【0043】
図3(d)の例では、非電極側端部50bにおいて、下引き層14の端面が最も突出し、電荷輸送層16、電荷発生層15及び導電層12の順に端面が後退して配置されている。導電層12の端面は下引き層14で覆われている。この例では電荷発生層15が電荷輸送層16により覆われているので電荷発生層15の削れが防止できる。
【0044】
シート状電子写真感光体10によれば、一方の端部である電極側端部10aで回転ドラムとの電気的導通を確保するとともに、これとは反対側の他方の端部である非電極側端部10b、20b、30b、40b、50bで導電層12が感光層13を形成するいずれかの層により覆われており、リークを減じることができる。
【0045】
以上のようなシート状電子写真感光体10(非電極側端部が10bの例)は、例えば次のように生産することができる。図4に説明のための図を示した。図4は、図4(a)〜図4(e)によりシート状電子写真感光体10の製造における主要な場面を説明する図である。なお、図4(a)〜図4(e)では、各図に表れる各積層体が進行する方向に対して直交する断面が表れており、従って図4(a)〜図4(e)では、図の左右方向が帯状である積層体の幅方向である。
以下に順を追って説明する。
【0046】
初めに、長い帯状が巻かれてロール状とされた基材11を巻き戻しながら、図4(a)に示したようにその一方の面にアルミニウムを蒸着して導電層12を形成し、再度巻き取ってロールとする。当該蒸着は公知の方法を用いることができる。このとき、基体11の幅方向両端には必要な大きさのマスキングを行い、導電層12が形成されない領域を形成する。
【0047】
上記のようにして得られた基体11と導電層12との帯状の積層体が巻かれたロールを巻き戻しながら、図4(b)に示したように導電層12の上から下引層14を塗布して乾燥させる。このとき、図4(b)の左部のように電極側端部となる側では下引層14が導電層12に積層されていない部分を設け、一方で図4(b)の右部のように非電極側端部となる側では下引層14が導電層12の端面を覆うように塗布されるように調整する。塗布のための手段は公知のものを用いることができる。例えば2つのロール間に積層体及び組成物を同時に通し、ロール間の間隔により層厚を調整しながら塗布をおこなうスリットリバース塗布装置や、スロットから組成物を流出させ直接積層体に塗布して層厚も調整するダイ直接塗布装置等を挙げることができる。以下の工程においても塗布手段については同様である。
【0048】
次に上記に連続して、図4(c)に示したように、下引層14上に電荷発生層15を塗布して乾燥させる。このとき、図4(c)の左部のように電極側端部となる側では電荷発生層15が下引層14に積層されていない部分を設け、一方で図4(c)の右部のように非電極側端部となる側では電荷発生層15の端面と下引層14の端面とが揃うように塗布される。
【0049】
さらに連続して、図4(d)に示したように、電荷発生層15上に電荷輸送層16を塗布して乾燥させる。このとき、図4(d)の左部のように電極側端部となる側では電荷輸送層16が電荷発生層15に積層されていない部分を設け、図4(d)の右部のように非電極側端部となる側でも電荷輸送層16が電荷発生層15に積層されていない部分を設けるように塗布される。そして電荷輸送層16の上に保護層17を形成する。
【0050】
その後連続して、図4(e)にIVで示したように、基体11を所定の大きさに切断する。
【0051】
以上のような製造方法によれば、シート状電子写真感光体10の電極側端部10a及び非電極側端部10bを形成するに際して感光層13を除去する工程を必要としないので、効率よく製造することができる。またこれら一連の工程の多くを連続して行うことができかかる観点からも効率よい製造が可能である。
【0052】
シート状電子写真感光体10は、例えば次のように画像形成装置に配置されて機能する。図5に画像形成装置20の構造を概念的に表した。
シート状電子写真感光体10は、回転ドラム21の外周に巻かれ、回転ドラム21の外周にシート状電子写真感光体10による連続面を形成するように配置される。このとき、図7により従来技術を説明した例と同様に、電極側端部10aが回転ドラム21に設けられたスリット等に差し込まれて導電層12が回転ドラム21に接触して電気的に導通される。一方、非電極側端部10bは自由端とされている。
【0053】
このようにシート状電子写真感光体10が回転ドラム21に装着され、回転ドラム21等が回動可能となった姿勢で、画像形成装置20を作動させる。記録媒体に所望の文字や図形を表す場合、装置本体から回転駆動力が付加され、回転ドラム21が回転し、ここに巻かれたシート状電子写真感光体10が帯電装置22により帯電される。
回転ドラム21が回転している状態で、光照射装置23により画像情報に対応したレーザー光をシート状電子写真感光体10に照射し、当該画像情報に基づいた静電潜像を得る。この潜像は液体現像用現像装置27により現像される。
一方、紙等の記録媒体は、画像形成装置20の他の部位にセットされ、画像形成装置20に設けられた送り出しローラ、搬送ローラ等により転写位置に搬送され、図5の線Vに沿って移動する。転写位置には中間ローラ24、及び転写ローラ25が配置されており記録媒体はこの間を通過する。その際にシート状電子写真感光体10に形成された像が転写された中間ローラ24から記録媒体に像がさらに転写される。その後、記録媒体に熱及び圧力が加えられることにより当該像が記録媒体に定着する。そして排出ロール等により画像形成装置から像が形成された記録媒体が排出される。
【0054】
シート状電子写真感光体10によれば、特に非電極側端部10bにおいて上記した構造を具備しているので、リークを防止することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 シート状電子写真感光体
10a 電極側端部
10b 非電極側端部
11 基体
12 導電層
13 感光層
14 下引層
15 電荷発生層
16 電荷輸送層
17 保護層
20 画像形成装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7