(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明においては、中間層およびシェル粒子を有する前の状態のものをコア粒子と称し、コア粒子の上に中間層を有する粒子を中間層形成粒子と称し、中間層形成粒子の上にシェル粒子を有するコアシェル構造のものをトナー母粒子と称し、トナー母粒子の表面に外添剤を有するものをトナーと称する。
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤を含有し、その他必要に応じて、ワックス、帯電制御剤などを含有していても良い。
【0013】
<コア粒子>
コア粒子は、少なくとも結着樹脂、着色剤を含有し、その他必要に応じてワックス、帯電制御剤などを含有していても良い。
また、コア粒子は公知の方法によってコア−シェル構造とすることがより好ましい。
コア粒子をコア−シェル構造にすることにより、低温定着性と耐ブロッキング性のバランスが更に向上する。
【0014】
結着樹脂としては、一般にトナーを製造する際に結着樹脂として用いられるものであればよく、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂、これらの樹脂の混合物等が挙げられる。
結着樹脂を製造するために用いる単量体成分としては、一般的にトナーの結着樹脂を製造する際に用いられている単量体を適宜用いることができる。
例えば、酸性基を有する重合性単量体(以下、単に酸性単量体と称すことがある)、塩基性基を有する重合性単量体(以下、単に塩基性単量体と称することがある)、酸性基も塩基性基も有さない重合性単量体(以下、その他の単量体と称することがある)のいずれの重合性単量体も使用することができる。
但し、コア粒子のζ電位は、負極性を示し、pH3に於けるζ電位が−20mV〜−70mVであることが必要である。その為、塩基性単量体の使用は樹脂全体に対して10wt%以下であることが必要である。
【0015】
ポリスチレン系樹脂およびポリ(メタ)アクリル酸系樹脂を使用する場合、以下の単量体が例として挙げられる。
酸性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有する重合性単量体、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有する重合性単量体、ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有する重合性単量体等が挙げられる。
塩基性単量体としては、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の窒素含有複素環含有重合性単量体、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
これら酸性単量体および塩基性単量体は、懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶融懸濁法等でコア粒子を製造する場合にはコア粒子の水中での安定化に寄与する。単独で用いても複数種類を混合して用いてもよく、また、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。
【0016】
その他の単量体としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等が挙げられる。その他の単量体は、単独で用いてもよく、また複数を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
結着樹脂を架橋樹脂とする場合、上述の重合性単量体と共に多官能性単量体が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメ
タクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレート、ノナエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。 中でも二官能性重合性単量体が好ましく、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが特に好ましい。これら多官能性重合性単量体は、単独で用いても複数種類を混合して用いてもよい。
また、反応性基をペンダントグループに有する重合性単量体、例えばグリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、アクロレイン等を用いることも可能である。
【0018】
必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤の具体的な例としては、t−ドデシルメルカプタン、ドデカンチオール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン、等があげられる。連鎖移動剤は単独または2種類以上の併用でもよく、重合性単量体に対して0〜5重量%用いられる。
【0019】
必要に応じて公知の重合開始剤を1種又は2種以上組み合わせて使用する事ができる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、等の過硫酸塩、および、これら過硫酸塩を一成分として酸性亜硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス開始剤、過酸化水素、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、等の水溶性重合開始剤、および、これら水溶性重合開始剤を一成分として第一鉄塩等の還元剤と組み合わせたレドックス開始剤、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル、等が用いられる。これら重合開始剤はモノマー添加前、添加と同時、添加後のいずれの時期に重合系に添加しても良く、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせても良い。
【0020】
必要に応じて公知の懸濁安定剤を使用することができる。懸濁安定剤の具体的な例としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは、一種或いは二種以上を組み合わせて用いてもよく、重合性単量体100質量部に対して1質量部以上、10質量部以下の量で用いてもよい。
【0021】
重合開始剤および懸濁安定剤は、何れも、重合性単量体添加前、添加と同時、添加後のいずれの時期に重合系に添加してもよく、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせてもよい。
その他、反応系には、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤等を適宜添加することができる。
【0022】
結着樹脂を乳化重合で重合する場合、乳化剤としては公知のものが使用できるが、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の中から選ばれる一種又は二種以上の乳化剤を併用して用いることができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
【0023】
乳化剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対して0.1質量部以上、10質量部以下で用いられることが好ましい。また、これらの乳化剤に、例えば、部分或いは完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等の一種或いは二種以上を保護コロイドとして併用することができる。
【0024】
結着樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと記載する)における数平均分子量が、好ましくは2000以上、より好ましくは2500以上、さらに好ましくは3000以上であり、好ましくは5万以下、より好ましくは4万以下、さらに好ましくは3.5万以下であることが望ましい。また、同様にして求めた重量平均分子量が、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上、さらに好ましくは4万以上であり、好ましくは70万以下、より好ましくは60万以下、さらに好ましくは50万以下であることが望ましい。結着樹脂の数平均分子量および重量平均分子量が前記範囲にある場合、トナーの耐久性、保存性、定着性が良好となるため望ましい。
【0025】
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは30℃以上であり、より好ましくは35℃以上であり、好ましくは80℃以下であり、より好ましくは60℃以下であり、更に好ましくは55℃以下である。
【0026】
オフセット防止剤としてワックスを使用することができる。低温定着性と耐ブロッキング性、耐高温オフセット性は二律背反の関係にあり、それらの両立を達成するためには、トナーをコアシェル構造とするのと同時に、オフセット防止剤としてワックスを使用することが好ましい。
【0027】
本発明のトナーに用いられるワックスは、公知のワックスを任意に使用することができるが、具体的には低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、パラフィン系ワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス、水添ひまし油カルナバワックス等の植物系ワックス、ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン、アルキル基を有するシリコーン、ステアリン酸等の高級脂肪酸、長鎖脂肪酸アルコール、ペンタエリスリトール等の長鎖脂肪酸多価アルコール、およびその部分エステル体、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、等が例示され、好ましくは、パラフィン系ワックスまたはフィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系、エステル系ワックス、シリコーン系ワックスが挙げられる。
特に好ましくはエステル系ワックスが挙げられる。
更に好ましくは下記一般式で表されるネオペンチルポリオールエステルである。
【0029】
[式中、R
8は2〜8価のネオペンチルポリオール残基、R
9は炭素数13〜25の直鎖アルキル基、mは2〜8の整数である。]
本発明において、ワックスは単独で用いても混合して用いても良い。また、定着性を改善するため、融点は120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましく、40℃以上が好ましく、50℃以上がさらに好ましい。融点が高すぎ
ると、定着温度低減の効果が乏しくなる場合があり、融点が低すぎると、耐ブロッキング性、保存性に問題が生じる場合がある。
【0030】
本発明においてワックスの量は、トナー100質量部中に1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上である。また、40質量部以下であることが好ましく、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。トナー中のワックス含有量が少なすぎると、高温オフセット性等の性能が十分でない場合があり、多すぎると、耐ブロッキング性が十分でなかったり、ワックスがトナーから漏出することにより装置を汚染したりする場合がある。
【0031】
重合法におけるワックスの配合方法としては、予め水中に体積平均粒径0.01μm以上、2.0μm以下にワックスを分散させておくことが好ましい。1.0μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましい。
【0032】
着色剤としては公知の着色剤を任意に用いることができる。着色剤の具体的な例としては、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染顔料など、公知の任意の染顔料を単独あるいは混合して用いることができる。フルカラートナーの場合にはイエローはベンジジンイエロー、モノアゾ系、縮合アゾ系染顔料、マゼンタはキナクリドン、モノアゾ系染顔料、シアンはフタロシアニンブルーをそれぞれ用いるのが好ましい。着色剤は、トナー100質量部に対して3質量部以上、20質量部以下となるように用いることが好ましい。
【0033】
本発明のコア粒子はいずれの方法で製造してもよく、特に限定されない。粉砕法の場合は、各成分を混練・粉砕・分級した後、必要に応じ乳化剤を用いて水系媒体中に分散した分散液を用いればよい。懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法など重合法の場合は、コア粒子製造時のスラリー液をそのまま利用することができる。
【0034】
懸濁重合法にて製造する場合は、上述の結着樹脂の単量体中に着色剤、重合開始剤、そして必要に応じてワックス、極性樹脂、帯電制御剤や架橋剤などの添加剤を加え、均一に溶解又は分散させた単量体組成物を調製する。この単量体組成物を、分散安定剤等を含有する水系媒体中に分散させる。好ましくは単量体組成物の液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように撹拌速度・時間を調整し、造粒する。その後、分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行い、重合を行うことによりコア粒子を得ることができる。次いで、後述するように、コア粒子の表面に中間層を形成する工程、中間層の表面にシェル粒子を被覆させる工程を経て、コアシェル構造を有するトナー母粒子を得ることができる。
【0035】
乳化重合凝集法にて製造する場合は、着色剤分散液、ワックス分散液等を用意した上、乳化重合により得られた結着樹脂単量体の重合体一次粒子あるいはワックス存在下で乳化重合により得られたワックス内包結着樹脂単量体の重合体一次粒子を着色剤分散液、ワックス分散液等と混合して加熱等を行うことにより凝集する工程を経た後、さらに熟成工程を経る方法と、着色剤存在下で乳化重合により得られた結着樹脂単量体の重合体一次粒子と、ワックス分散液等と混合して加熱等を行うことにより凝集する工程を経た後、さらに熟成工程を経る方法と、着色剤とワックス存在下で乳化重合により得られた結着樹脂単量体の重合体一次粒子と、ワックス分散液等と混合して、加熱等を行うことにより凝集する工程を経た後、さらに熟成工程を経る方法とが挙げられる。これら方法によりコア粒子を得ることができる。次いで、後述するように、コア粒子の表面に中間層を形成する工程、中間層の表面にシェル粒子を被覆させる工程を経て、コアシェル構造を有するトナー母粒
子を得ることができる。上記の乳化重合凝集法の製造方法の中でも、着色剤存在下で結着樹脂単量体を重合すると、着色剤中の金属がラジカル重合に影響し、樹脂の分子量やレオロジー制御が困難となり、所望の重合体一次粒子が得られないおそれがあるため、着色剤を乳化重合時には添加せず、凝集工程で着色剤分散液を添加する方法が好ましい。
【0036】
重合体一次粒子の体積平均粒径は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上であり、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。粒径が前記範囲よりも小さいときは、凝集工程において凝集速度の制御が困難となる場合があり、前記範囲よりも大きいときは、凝集して得られるトナー母粒子の粒径が大きくなり易く、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。
【0037】
トナー中に好適な分散粒径でワックスを分散させるためには、乳化重合時にワックスをシードとして添加する、いわゆるシード重合とすることが好ましい。シードとして添加することにより、ワックスがトナー中に微細かつ均一に分散するため、トナーの帯電性や耐熱性の悪化を抑制することができる。
また、ワックスをステアリルアクリレートなどの長鎖重合性単量体と予め水系分散媒体中で分散し得られるワックス・長鎖重合性単量体分散液を調製し、ワックス・長鎖重合性単量体の存在下において重合性単量体を重合することもできる。
【0038】
着色剤は、乳化剤の存在下で水中に分散した状態で用いるのが好ましく、着色剤粒子の体積平均粒径が0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、3μm以下、より好ましくは1μmである。
【0039】
乳化重合凝集法における凝集工程は、前記の、重合体一次粒子、着色剤粒子、必要に応じて帯電制御剤、ワックスなどの配合成分は、同時にあるいは逐次に混合するが、予めそれぞれの成分の分散液、即ち、重合体一次粒子分散液、着色剤粒子分散液、必要に応じ帯電制御剤分散液、ワックス微粒子分散液を作製しておき、これらを混合して混合分散液を得ることが、組成の均一性および粒径の均一性の観点で好ましい。
【0040】
乳化重合凝集法において、凝集は通常、攪拌装置を備えた槽内で行われるが、加熱する方法、電解質を加える方法と、これらを組み合わせる方法とがある。重合体一次粒子を攪拌下に凝集して目的とする大きさの粒子凝集体を得ようとする場合、粒子同士の凝集力と攪拌による剪断力とのバランスから粒子凝集体の粒径が制御されるが、加熱するか、或いは電解質を加えることによって凝集力を大きくすることができる。
【0041】
電解質を添加して凝集を行う場合の電解質としては、酸、アルカリ、塩のいずれでも、有機系、無機系のいずれでも良いが、具体的には、酸として、塩酸、硝酸、硫酸、クエン酸等、アルカリとして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等、塩として、NaCl、KCl、LiCl、Na
2SO
4、K
2SO
4、Li
2SO
4、MgCl
2、Ca
Cl
2、MgSO
4、CaSO
4、ZnSO
4、Al
2(SO
4)
3、Fe
2(SO
4)
3、CH
3
COONa、C
6H
5SO
3Na等が挙げられる。これらのうち、2価以上の多価の金属カ
チオンを有する無機塩が好ましい。
【0042】
電解質の添加量は、電解質の種類、目的とする粒径等によって異なるが、混合分散液の固形成分100質量部に対して、0.02質量部以上が好ましく、0.05質量部以上が更に好ましい。また、25質量部以下が好ましく、更には15質量部以下、特に10質量部以下が好ましい。添加量が少なすぎると、凝集の進行が遅くなり凝集後も1μm以下の微粉が残ったり、得られた粒子凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しないなどの問題を生じたりする場合があり、多すぎると、急速な凝集になりやすく粒径の制御が困難となり、
得られた凝集粒子中に粗粉や不定形のものが含まれるなどの問題を生じる場合がある。電解質を加えて凝集を行う場合の凝集温度は、20℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
【0043】
凝集に要する時間は装置形状や処理スケールにより最適化されるが、トナーの粒径が目的とする粒径に到達するためには、前記した所定の温度で通常、少なくとも30分以上保持することが望ましい。所定の温度へ到達するまでの昇温は、一定速度で昇温しても良いし、段階的に昇温することもできる。
【0044】
凝集工程で得られた粒子凝集体の安定性を増すために、凝集工程の後の熟成工程において凝集粒子内の融着を行うことが好ましい。熟成工程の温度は、好ましくは重合体一次粒子のTg以上、より好ましくはTgより5℃高い温度以上であり、また、好ましくはTgより80℃高い温度以下、より好ましくはTgより60℃高い温度以下である。また、熟成工程に要する時間は、目的とするトナーの形状により異なるが、重合体一次粒子のTg以上に到達した後、通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜5時間保持することが望ましい。
【0045】
凝集工程以降、好ましくは熟成工程以前又は熟成工程中の段階で、界面活性剤を添加するか、pHを調整するか、両者を併用することが好ましい。ここで用いられる界面活性剤としては、重合体一次粒子を製造する際に用いることのできる乳化剤から一種以上を選択して用いることができるが、特に重合体一次粒子を製造した際に用いた乳化剤と同じものを用いることが好ましい。界面活性剤を添加する場合の添加量は限定されないが、混合分散液の固形成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。凝集工程以降、熟成工程の完了前の間に界面活性剤を添加するか、pHを調整することにより、凝集工程で凝集した粒子凝集体同士の凝集等を抑制することができ、熟成工程後の粗大粒子生成を抑制できる場合がある。
【0046】
熟成工程前の粒子凝集体は、重合体一次粒子の静電的あるいは物理的凝集による集合体であると考えられるが、熟成工程後は、粒子凝集体を構成する重合体一次粒子は互いに融着している。この熟成工程の温度や時間等を制御することにより、重合体一次粒子が凝集した形状の葡萄型、融着が進んだジャガイモ型、更に融着が進んだ球状等、目的に応じて様々な形状のトナーを製造することができる。
【0047】
コア粒子の分散液は、コア粒子同士の凝集体が発生しない範囲で、コア粒子分散液中に存在する分散剤・乳化剤等を洗浄によって除去することが好ましい。例えば、重合法で得られたコア粒子の場合は、コア粒子製造時のスラリー液を脱水・洗浄することで水中に含まれる乳化剤および可溶性不純物を除去した後、水に再分散する方法を用いることができる。
【0048】
<中間層>
本発明のトナーは、コア粒子表面に中間層が形成されている。この中間層は最表面のシェル粒子を均一に被覆するための土台となるものであり、中間層とシェル粒子の帯電性を逆に設計することで、シェル粒子が中間層表面のあらゆる部分に付着して薄く密なシェル層を形成し、その結果低温定着性を損なわずに良好な耐ブロッキング性を得ることができる。
【0049】
本発明においては、中間層の形態は特に限定されないが、中間層を水溶性樹脂からなる樹脂被覆層とすることが好ましい。水溶性樹脂からなる樹脂被覆層(以下、水溶性樹脂被覆層と称することがある)とは、コア粒子表面の凹凸に由来する凹凸は有するものの、実
質的に平滑な表面を有する膜の層を意味する。この水溶性樹脂被覆層は、本発明の効果を著しく損なわない限り、複数の水溶性樹脂を含んでいてもよい。ここで、水溶性とは、25℃における水への溶解度が1g/100ml以上であることを指す。
【0050】
中間層として、水溶性樹脂被覆層を採用する場合には、水溶性樹脂被覆層を構成する樹脂としては、本発明では、コア粒子が負帯電性であるため、薄く均一な水溶性樹脂被覆層が形成しやすくする観点から、正帯電性の樹脂を用いる。正帯電性の樹脂は特に指定しないが、−NH
2、−NHCH
3、−N(CH
3)
2、−NHC
2H
5、−N(C
2H
5)
2、−NHC
2H
4OH等のアミノ基を含有する樹脂;それらがアンモニウム塩化された4級アンモニウム塩を含有する樹脂が挙げられる。これらの中でも、4級アンモニウム塩を含有する樹脂が好ましい。4級アンモニウム塩を含有する樹脂は、アミノ基を含有する重合体をアンモニウム塩化することによって得ることができる。また、アンモニウム塩を含有するモノビニル単量体を重合することによっても得ることができる。また、結着樹脂に一般的に用いられる単量体と共重合させてもよい。ただし、正帯電性樹脂の製造方法は、これらの方法に限定されない。
【0051】
4級アンモニウム塩を含有する樹脂の中でも、下記の構造式(1)〜(4)のいずれかで示される構造単位を有する樹脂が好ましく、下記の構造式(3)または(4)に示す4級アンモニウム塩構造単位を有する樹脂がより好ましい。
【0053】
上記の構造式(1)〜(4)において、R
1は、水素原子またはメチル基であり、R
2は、アルキレン基であり、R
3〜R
7は、それぞれ独立に水素原子、あるいは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基であり、X
−は、ハロゲンイオンまたはベ
ンゼンスルホン酸イオン若しくはアルキルベンゼンスルホン酸イオンである。
【0054】
上記の構造式(1)〜(4)に示す4級アンモニウム塩において、X
−は、塩化物イオンまたはトルエンスルホン酸イオンであることが好ましく、R
1は、水素原子またはメチル基であることが好ましく、R
2は、CH
2、C
2H
4、C
3H
6などの炭素数1〜3のアルキレン基およびその誘導体であることが好ましく、R
3〜R
7は、それぞれ独立にCH
3、C
2H
5、C
3H
7などのアルキル基であることが好ましい。
【0055】
アミノ基をアンモニウム塩化するために用いられる4級化剤としては、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、臭化メチル、および臭化エチル等のハロゲン化アルキル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、およびパラトルエンスルホン酸プロピル等のパラトルエンスルホン酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0056】
中間層に用いられる樹脂の分子量は特に限定されないが、GPCにおける重量平均分子量が3000以上であり、100万以下であることが望ましい。重量平均分子量が3000以下であると、コア粒子表面への吸着力が弱くなる可能性があり、100万を超えると、ポリマー鎖が長くなるため、複数のコア粒子に橋掛け状に吸着する可能性がある。
【0057】
中間層の含有率は、本発明の効果を損なわない限り特に限定はないが、通常、コア粒子100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、また、好ましくは3質量部以下である。0.01質量部よりも少ないと目的とする中間層が均一層として得られ難くなり、また3質量部を超えて使用するとトナーの定着性が悪化する傾向がある。
【0058】
<コア粒子の上に中間層を形成する方法>
コア粒子表面に中間層を形成する際には、中間層成分として水溶性樹脂を水溶液に調製して使用することが、操作性の観点から好ましい。また、PAS−H、PAS−J(ニットーボーメディカル(株)製)、ジュリマーAC−103(東亞合成(株)製)等、種々の市販の樹脂水溶液を用いることもできる。
コア粒子分散液に中間層樹脂水溶液を添加し、混合することで、中間層を形成することができる。
【0059】
中間層形成時のコア粒子と樹脂水溶液の混合温度は特に限定しないが、コア粒子のTgより10℃以上低い温度で混合すると、コア粒子の凝集体の発生を防ぎ、コア粒子と樹脂水溶液を均一混合することができることから、好ましい。
【0060】
中間層に用いる正帯電性樹脂は、特に、塩基性単量体を樹脂構成成分として含有する場合、酸性領域で高い正極性のζ電位を有する。一方で、コア粒子は、特に、酸性単量体を樹脂構成成分として含有する場合、アルカリ性領域で高い負極性のζ電位を有する。コア粒子上に中間層を均一に形成する為には、両者のζ電位差が大きいことが好ましいがそれぞれのζ電位が高いpH領域が異なる為、両者のζ電位差が一定以上になるpHに調整する必要がある。
それに対し、中間層に水溶性樹脂を水溶液に調整して使用する場合はζ電位や電荷量差が大きくなくても吸着し易い。これは、水溶性高分子の吸着サイト数が多いことと、水中で比較的自由な形態をとれる為であると考えられる。
【0061】
中間層形成後、水系媒体中に残留しているコア粒子表面に付着しない過剰の水溶性樹脂を、洗浄によって除去することができる。具体的な方法は、コア粒子の洗浄と同様の方法を用いることができる。
または、コア粒子と水溶性樹脂の比率を厳密に調整して、コア粒子表面に付着しない過
剰の樹脂が水系媒体中に残留しないようにすることもできる。この場合は洗浄を省略することができる。
【0062】
中間層が形成されたことの確認方法としては、中間層形成前後の分散液のζ電位の符号が逆になること、あるいは、中間層形成前後の分散液を洗浄・乾燥した粉体の帯電量の符号が逆になることで確認できる。
【0063】
中間層成分を水溶液ではなく微粒子分散液として用意し、コア粒子表面に微粒子を被覆することで中間層を形成する方法も可能ではあるが、水溶液を用いる方法に比べ厚い層が形成されるため、低温定着性が悪化する傾向がある。硬い材質の微粒子の場合には低温定着性の悪化がさらに顕著である。
また、次の工程で中間層表面にシェル粒子を薄く均一に被覆することが難しく、シェル粒子が凝集した箇所や、シェル粒子が被覆しない箇所が発生したりすることがある。この理由は明らかではないが、微粒子によって形成された中間層は表面に凹凸があって状態が均一でないので、シェル粒子の付着にばらつきが生じるためと推測される。なお、不均一な被覆を補うためシェル粒子の添加量を増やして中間層表面全体を被覆しようとすると、シェル層が厚くなるために低温定着性が損なわれる。
【0064】
<シェル粒子>
中間層表面に被覆させるシェル粒子としては、無機粒子でも樹脂微粒子でもよく特に限定されないが、粒子製造および粒子性能の制御性、低温定着性の観点から、シェル粒子は樹脂微粒子が好ましい。
シェル粒子が樹脂微粒子の場合は、樹脂成分は特に指定しないが、例えばスチレン系、アクリル系、エステル系など一般的に結着樹脂として用いられる樹脂、或いはそれらの共重合系、ブレンド系でも良い。
【0065】
樹脂シェル粒子の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜1,000,000、より好ましくは10,000〜500,000、特に好ましくは10,000〜300,000である。樹脂シェル粒子の重量平均分子量が低すぎると、トナーの耐ブロッキング性が悪くなったり、カートリッジ内での耐久性が悪くなる場合があり、一方、高すぎると低温定着性が悪化する場合がある。
樹脂シェル粒子のTgは、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは45℃以上であり、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは75℃以下である。また、コア粒子のTgより高いことが好ましく、(コア粒子のTg+2)℃以上がより好ましく、(コア粒子のTg+5)℃以上が更に好ましく、(コア粒子のTg+50)℃以下が好ましく、(コア粒子のTg+40)℃以下がより好ましい。樹脂シェル粒子のTgが低すぎると、トナーの耐ブロッキング性が悪くなる場合があり、一方、高すぎると低温定着性が低下する場合がある。
【0066】
シェル粒子の含有率は、本発明の効果を損なわない限り特に限定はないが、通常、コア粒子100質量部に対して、好ましく0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、また、好ましくは8質量部以下である。0.5質量部より少ないと目的とするシェル層が均一層として得られ難く保存安定性が悪化し、また8質量部を超えて使用するとトナーの定着性が悪化する傾向がある。
【0067】
シェル粒子に負帯電性の樹脂を用いると、薄く均一なシェル層が形成しやすいため好ましい。負帯電性樹脂は特に指定しないが、カルボキシル基;スルホン酸基;スルホンアミド基を有する単量体と、結着樹脂に一般的に用いられる単量体とを共重合させた樹脂が好ましい。これらの単量体は、シェル粒子に負帯電性を付与するのと同時に、高い負極性の
ζ電位を示し、シェル粒子の乳化安定性も付与するので、シェル層形成時にシェル粒子同士の凝集が生じにくくなる。これらの中でも、スルホン酸基あるいはスルホンアミド基またはそれらの両方を有する樹脂が好ましい。
【0068】
帯電性を与える官能基を有する単量体単位の量は、樹脂中、好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは1〜12重量%、特に好ましくは2〜10重量%である。該単量体の量が少なすぎると、シェル層を形成した後のトナーの帯電性が不十分になる場合があり、多すぎると、高温高湿下におけるトナーの帯電量の低下が大きくなり、かぶりが発生する場合がある。
【0069】
樹脂シェル粒子は、樹脂を水系媒体中で分散あるいは乳化して作成してもよく、乳化重合、懸濁重合など重合法によって作成してもよい。粒子径制御および微粒子化のしやすさの観点から、重合法が望ましく、微粒子の粒径、粒度分布制御の観点から、乳化重合法が更に好ましい。
乳化重合法より樹脂シェル粒子を作成する場合は、前述の乳化重合凝集法で使った結着樹脂単量体の重合体一次粒子と同じ乳化重合法で作成することができる。
【0070】
シェル粒子の体積平均粒径は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、20nm以上が好ましく、40nm以上が更に好ましい。また、500nm以下、さらに150nm以下が好ましい。
【0071】
シェル粒子は、種々の市販品を用いることもできる。例えば、藤倉化成社製FCA−1001−NS(:商品名、スチレン/アクリル樹脂)等を公知の方法で水中に乳化分散した樹脂粒子が挙げられる。
【0072】
<中間層の上にシェル粒子を被覆する方法(カプセル工程)>
以降、中間層の上にシェル粒子を被覆する工程をカプセル工程と称することがある。
コアシェル構造を有するトナーの製造法は、コア粒子形成工程の後半にシェル粒子を混合することによりコアシェル構造を形成する方法と、完成したコア粒子の表面にシェル粒子を被覆する方法がある。
【0073】
従来からの態様である前者の場合は、製造過程でシェル粒子がコア粒子に埋まり込むため、コア粒子成分がトナー母粒子表面に露出する。コア粒子を完全に被覆しようとすると多量のシェル粒子を被覆する必要があり、結果として低温定着性が損なわれる。
【0074】
一方、本発明を実現する態様である後者の場合は、完成したコア粒子の表面に中間層とシェル粒子を被覆するので、製造過程でシェル粒子のコア粒子への埋まり込みが起こらず、少ないシェル粒子でコア粒子を完全に被覆することができる。また、中間層とシェル粒子の帯電性が逆であり、双方の樹脂の濡れ性が高くないことも、シェル粒子の埋まり込みを起こりにくくする効果がある。
また、中間層とシェル粒子の帯電性は逆なので中間層表面にはシェル粒子が付着しやすいが、シェル粒子同士は帯電性が同じなのでシェル粒子層が形成した後はさらにその上へのシェル粒子の付着は起こりにくくなる。そのため、薄く均一なシェル層が容易に形成できる。
以上より、シェル層が薄くても耐ブロッキング性を保つことが可能となり、結果として低温定着性に優れたトナーとなる。
【0075】
中間層の上にシェル粒子を被覆する工程(カプセル工程)は、中間層形成粒子分散液にシェル粒子を添加し混合することにより行われる。
【0076】
中間層形成粒子とシェル粒子との混合温度は特に限定しないが、コア粒子、中間層、シェル粒子のTgの中で最も低いTgより10℃以上低い温度が、粒子の凝集体の発生を防ぎながら均一混合することができることから好ましい
【0077】
シェル層が形成されたことの確認方法としては、シェル層形成前後の分散液のζ電位を測定すると符号が逆転すること、あるいは、シェル層形成前後の分散液を洗浄・乾燥した後帯電量を測定すると符号が逆転することで確認できる。
【0078】
<トナー母粒子の洗浄乾燥>
シェル粒子で被覆されたトナー母粒子は、水系溶媒から分離され洗浄、乾燥され、必要に応じて外添処理などが施されて静電荷像現像用負帯電トナーに供される。
洗浄に用いる液体としては水が用いられるが、酸またはアルカリの水溶液で洗浄することもできる。また、温水や熱水で洗浄することもでき、これらの方法を併用することもできる。このような洗浄工程を経ることによって、懸濁安定剤や乳化剤、未反応モノマー等を低減、除去することができる。洗浄工程は、例えば濾過、デカンテーション等することによってトナー母粒子を濃厚スラリー或いはウエットケーキ状とし、これに新たに洗浄するための液体を加えてトナー母粒子を分散する操作を繰り返すことが好ましい。洗浄後のトナー母粒子は、ウエットケーキ状で回収することが、引き続き行われる乾燥工程における取り扱いの面で好ましい。
【0079】
乾燥工程では、振動型流動乾燥法や循環型流動乾燥法など流動乾燥法、気流乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法、スプレードライ法、フラッシュジェット法などが用いられる。乾燥工程における温度、風量、減圧度等の操作条件は、着色粒子のTg、使用する装置の形状、機構、大きさ等をもとに、適宜最適化される。
【0080】
本発明のトナーの体積平均粒径は、3μm以上が好ましく、さらに5μm以上がより好ましい。また、15μm以下が好ましく、さらに10μm以下がより好ましい。また、形状は、フロー式粒子像分析装置FPIA−3000を用いて測定した平均円形度が、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.92以上、更に好ましくは0.94以上であり、好ましくは0.99以下である。平均円形度が小さすぎると、トナー母粒子への外添剤の付着不良による帯電悪化から画像濃度の低下を引き起こす場合があり、大きすぎると、形状に起因するクリーニング不良となる場合がある。
【0081】
<ζ電位の調整>
本発明に於いては、コア粒子とシェル粒子は同極性、中間層はコア粒子およびシェル粒子と逆極性のζ電位を有し、且つ、pH3に於けるζ電位が下記(I)乃至(V)の関係を満足することが必要である。
(I)コア粒子のζ電位:−20mV〜−70mV
(II)中間層形成粒子のζ電位:+40mV〜+120mV
(III)シェル粒子のζ電位:−40mV〜−100mV
(IV)トナー母粒子のζ電位:−30mV〜−90mV
(V)1.0≦トナー母粒子のζ電位/コア粒子のζ電位≦5.0
【0082】
本発明の目的は、負帯電性のコア粒子および出来るだけ少量のシェル粒子と正帯電性の中間層を用い、コア粒子を均一にカプセル化することにある。この為には、コア粒子、中間層形成粒子、シェル粒子、トナー母粒子のζ電位が上記範囲にある必要がある。
【0083】
コア粒子のζ電位(I)は、−20mV〜−70mVであることが必須であり、好ましくは−20mV〜−50mVである。
【0084】
コア粒子のζ電位が−20mV未満であると逆極性の中間層が付着あるいは吸着しにくくなる、および/または中間層の付着あるいは吸着量が少なくなったり、付着が不均一になり、次工程であるシェル粒子の付着が不十分になる弊害を生じるおそれがある。
一方で、コア粒子のζ電位が−70mVより大きくなると中間層が付着あるいは吸着し易くなるものの中間層形成粒子のζ電位を上記適正範囲にする為には多量の中間層を付着あるいは吸着させる必要がある。中間層の付着量あるいは吸着量が多過ぎるとトナーの帯電特性や環境特性、低温定着性能が悪化する傾向がある。
【0085】
コア粒子のζ電位が上記条件(I)を満たす為には、手段は特に限定されないが、塩基性単量体の含有量が樹脂全体に対して10wt%以下とすることが好ましい。10wt%より多くの塩基性単量体を用いた場合、ζ電位を上記範囲に調整する為には多量の酸性単量体を用いる必要があり、結果として環境特性が悪化するおそれがある。本発明に於いては、コア粒子を構成する樹脂全体に対する酸性単量体と塩基性単量体の総含有量は、樹脂全体の20wt%以下であることが好ましく、さらに好ましくは10wt%以下、特に好ましくは5wt%以下である。
【0086】
次に中間層形成粒子のζ電位(II)であるが、中間層が正帯電性である為、中間層が適量付着すると上記ζ電位範囲(条件(II))となる。中間層は、特に中間層を構成する樹脂が構成成分として塩基性単量体を含有する場合、ζ電位がpHに依存し、アルカリ性領域では十分な正帯電性示さず、従ってζ電位も低くなる。一方で酸性領域では十分な正帯電性を示し、ζ電位も高くなる。
【0087】
本発明では、コア粒子に中間層を付着あるいは吸着させる際には必ずしもpHをコントロールする必要はないが、コア粒子に中間層を付着させた後、シェルを付着させる工程迄はpHを適正に調整する必要がある。特に中間層形成粒子にシェルを付着させる工程では酸性条件下で中間層形成粒子を正帯電化し、そこに負帯電性のシェルを付着させる必要がある。
【0088】
上記最適なζ電位(条件(I)乃至(V))をpH3で規定しているのはこの為である。中間層形成粒子のζ電位は、+40mV〜+120mVであり、更に好ましくは+50〜+90mVである。中間層形成粒子のζ電位が+40mVよりも小さいとシェル粒子の付着が十分でなく均一なカプセル化が出来ない。一方で+120mVよりも大きいと多量のシェルが付着して定着性が悪化するか、適量のシェルを付着させた場合に帯電性や環境特性が悪くなるおそれがある。
【0089】
中間層形成粒子のζ電位を適正な範囲に調整する為には、手段は特に限定されないが、コア粒子を前述の方法でζ電位を上記適正範囲に調整した上で、中間層を構成する樹脂が構成成分である塩基性単量体の含有量を中間層樹脂全体の20wt%〜100wt%に調整することが好ましい。中間層を構成する樹脂中の塩基性単量体含有量は、コア粒子のζ電位が適正範囲にある限り、厳しい制限はない。
【0090】
但し、中間層は水溶性樹脂であることが好ましく、中間層を構成する樹脂に対して、塩基性単量体の含有量は70wt%以上であることが好ましい。更に好ましくは80wt%以上である。塩基性単量体の含有量の多い水溶性樹脂を少量添加することが好ましい。
【0091】
シェル粒子のζ電位(条件(III))は、−40mV〜−100mVである。好ましくは、−40mV〜−80mVである。
シェル粒子は、シェルを添加した際にシェル同士の凝集は進行せずに選択的に中間層形成粒子表面に付着させ均一にカプセル化させる観点から、シェル粒子のζ電位が高いことが望ましい。しかしながら、シェル粒子のζ電位が高すぎるとシェル粒子の付着量が不十
分であったり、不均一になったりする為、望ましくない。
【0092】
シェル粒子の付着量を十分に確保する為には中間層の付着量を増やし、中間層形成粒子のζ電位を上記範囲よりも高くする方法もあるが、中間層を必要以上に用いることが帯電特性や環境特性の悪化を招くおそれがあることは、前述の通りである。また、中間層形成粒子のζ電位を高くする為には、塩基性単量体を多量に用いる必要が生じ、同様に環境特性の悪化を招くおそれがある。
シェル粒子の付着を均一且つ適正な量にする為には、シェルのζ電位と中間層形成粒子のζ電位を本発明の範囲にする必要がある。シェルのζ電位の調整は、特に限定はされないが酸性単量体の含有量で調整可能であり、含有量は樹脂全体の0.5wt%以上20wt%以下であることが好ましい。
【0093】
酸性単量体に含有量が0.5wt%より少ないとシェル粒子のζ電位が低くなりシェル粒子を添加した際にシェル粒子が中間層形成粒子に付着するのと同時にシェル粒子同士の凝集が生じる恐れがある。また、酸性単量体の含有量が20wt%より多いとζ電位が高くなり過ぎシェルの付着量が十分でなかったり、環境特性を悪化させたりする恐れがある。酸性単量体としては特に限定はされないが、特に好ましくはスルホン酸基やスルホン酸塩基を含有するものが好ましい。
【0094】
コア粒子に中間層を付着した後には、中間層形成粒子の分散液のpHを一旦アルカリ性領域にすることが望ましい。これにより中間層形成粒子のζ電位が負極性になることが重要である。中間層自体がアルカリ性下で十分に正帯電性を示さなくなることとコア粒子がアルカリ性下で高い負帯電性を示す為にアルカリ性領域では負極性になる。
【0095】
この現象は、コア粒子に酸性単量体、中間層に塩基性単量体を用いた場合はそれぞれのpKa、pKbで説明出来る。アルカリ性下で中間層形成粒子が強い負帯電性、すなわち高い負極性のζ電位を示す様に設計し、アルカリ性下で中間層形成粒子にシェル粒子を添加し、その後pHを酸性領域とすることがより好ましい製造方法である。
【0096】
中間層形成粒子に酸性領域下でシェル粒子を添加するとシェル粒子の拡散よりも中間層の付着したシェル粒子への付着が速く、トナー母粒子(負帯電性)、部分的にシェルが付着したトナー母粒子(正帯電性)、中間層形成粒子(正帯電性)が混在する状態が生じる。この為、負帯電のトナー母粒子と部分的にシェルが付着した正帯電のトナー母粒子や正帯電の中間層形成粒子が凝集して粒度分布を悪化させることがある。
【0097】
一方で、アルカリ性下でシェル粒子を添加し、シェル粒子が十分拡散均一化した後に酸性にするとこの様な問題が防止出来る。製造中のpH調整は、酸あるいは塩基の添加により行うが、酸は添加後、シェル粒子よりもはるかに早く拡散均一化するので上記問題が生じないと推測される。
【0098】
また、中間層のコア粒子への付着あるいは吸着が十分でない等が原因で、アルカリ性領域で中間層形成粒子が十分な負極性を示さなくなることがある。この場合、シェル粒子を添加したと同時に凝集が発生する傾向があり好ましくない。
【0099】
この為、中間層形成粒子のζ電位は、pH11に於いて、−20mV〜−100mVであることが必要である。
中間層形成粒子のζ電位が、pH11に於いて、−20mVよりも低いと前述の様に、アルカリ性下でシェル粒子を添加した際に凝集が発生する傾向がある。一方で、上述したようにコア母粒子と中間層の設計および付着量が適正であると−100mVを超えることはない。
【0100】
本発明におけるトナー母粒子のζ電位は−30mV〜―90mVであり(条件(IV))、また、1.0≦トナー母粒子のζ電位/コア粒子のζ電位≦5.0である(条件(V))。
コア粒子のζ電位、中間層形成粒子のζ電位およびシェル粒子のζ電位を前述の方法により適正に調整し、均一なカプセル化が出来るとトナー母粒子のζ電位は上記範囲になる。トナー母粒子のζ電位がー30mVよりも小さい場合および/またはトナー母粒子のζ電位/コア粒子のζ電位が1.0より小さい場合は、シェル粒子の付着量が十分でない、或いは不均一である等の不具合が生じている恐れがある。また、−90mVよりも大きいおよび/またはトナー母粒子のζ電位/コア粒子のζ電位が5.0よりも大きい場合は、シェル粒子の付着量が過剰であったあり、シェル同士が凝集している等の不具合が発生しているおそれがある。
【0101】
<外添剤>
本発明においては、トナーの流動性向上や帯電制御性向上のために、必要に応じ外添剤を添加することができる。外添剤としては、各種無機または有機微粒子の中から適宜選択して使用することができる。また、2種類以上の外添剤を併用してもよい。
無機微粒子としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム等の各種炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム等の各種窒化物、ホウ化ジルコニウム等の各種ホウ化物、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化セリウム、シリカ、コロイダルシリカ等の各種酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の各種チタン酸化合物、リン酸カルシウム等のリン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸、滑石、ベントナイト、各種カーボンブラックや導電性カーボンブラック、マグネタイト、フェライト等を用いることができる。有機微粒子としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂等の微粒子を用いることができる。また、フッ素原子を含有する微粒子を用いて帯電安定性を向上させることができる。
【0102】
これら外添剤の中では、特にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、各種カーボンブラックや導電性カーボンブラック等が好適に使用される。また、外添剤は、前記の無機または有機微粒子の表面を、ヘキサメチルジシラザン(H MDS) 、ジメチルジクロロシラン(DMDS) 等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコ
ーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル処理剤、シリコーンワニス、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤等の処理剤によって疎水化などの表面処理が施されているものを使用することもできる。該処理剤は二種以上を併用することもできる。
外添剤の含有量は、トナー母粒子100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0103】
本発明のトナーにおいては、帯電制御の観点から、外添剤として導電性微粒子を使用してもよい。導電性微粒子の抵抗は、上限が、通常、400Ω・cm以下であり、好ましくは200Ω・cm以下であり、より好ましくは100Ω・cm以下であり、さらに好ましくは60Ω・cm以下である。一方、下限は、通常、0.1Ω・cm以上であり、好ましくは1Ω・cm以上であり、より好ましくは5Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1
5Ω・cmである。導電性微粒子としては、例えば、導電性酸化チタン、シリカ、マグネタイト、等の金属酸化物またはそれらに導電性物質をドープしたもの、ポリアセチレンやポリフェニルアセチレン、ポリ- p -フェニレン等の共役2重結合を有するポリマーに金
属等の導電性物質をドープした有機微粒子、カーボンブラックやグラファイトに代表される炭素等が挙げられるが、トナーの流動性を損なわず導電性を付与できるという観点から、導電性酸化チタンまたはその導電性物質をドープしたものがより好ましい。導電性微粒子の含有量は、トナー母粒子100質量部に対して、下限は、通常、0.0質量5部以上であり、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましい。一方、導電性微粒子の含有量の上限は、通常、3質量部以下であり、好ましくは、2質量部以下であり、より好ましくは1質量部以下である。
【0104】
<外添剤の外添方法>
外添剤の添加方法としては、ヘンシェルミキサー等の高速攪拌機を用いる方法や、圧縮剪断応力を加えることのできる装置による方法等が挙げられる。
外添トナーはトナー母粒子に全ての外添剤を同時添加して外添する一段外添法より作成できるが、外添剤毎に外添する分段外添法より作成することもできる。
外添中の温度上昇を防止するため、容器に冷却装置を設置するか、分段外添することが好ましい。
【0105】
<その他>
本発明の静電荷像現像用負帯電トナーは、トナーをキャリアとともに用いる二成分系現像剤、又は、キャリアを使用しない磁性もしくは非磁性一成分系現像剤のいずれの形態で用いてもよい。二成分系現像剤として用いる場合、キャリアとしては、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉等の磁性物質またはそれらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性キャリア等公知のものを用いることができる。樹脂コーティングキャリアの被覆樹脂としては一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル共重合系樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、またはこれらの混合物等が利用できる。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の例で「部」とあるのは「質量部」を意味する。また、実写試験は以下の方法により行った。
各粒子径およびζ電位、円形度、電気伝導度、熱特性等は次のように測定した。
【0107】
<ζ電位測定>
ζ電位の測定は、ゼータサイザー ナノ(マルバーン社製)を用い、純粋で実施例中で得られる各分散液を1/1000に希釈して測定した。
各分散液の希釈液のpHの調整は、0.1N 塩酸水溶液および0.1N 水酸化ナトリウム水溶液を用いて行う。
【0108】
<中位径測定(D50>
1ミクロン未満の中位径(D50)を有す粒子の中位径(D50)は、日機装株式会社製型式MicrotracNanotrac150(以下ナノトラックと略す)および同社解析ソフトMicrotrac Particle Analyzer Ver10.1.2-019EEを用い、電気伝導度が0.5μS/cmのイオン交換水
を溶媒とし、溶媒屈折率:1.333、測定時間:600秒、測定回数:1回の測定条件で取り扱い説明書に記載された方法で測定した。その他の設定条件は、粒子屈折率:1.59、透過性:透過、形状:真球形、密度:1.04とした。
【0109】
<体積中位粒径測定(Dv50>
1ミクロン以上の体積中位粒径(Dv50)を有す粒子の体積中位粒径(Dv50)は、ベックマン・コールター社製マルチサイザーIII(アパーチャー径100μm:以下、マルチサ
イザーと略す)を用い、同社アイソトンIIを分散媒として、分散質濃度0.03%になるように分散させて測定した。
【0110】
<平均円形度測定>
平均円形度は、分散質を分散媒(セルシース:シスメックス社製)に5720〜7140個/μlとなるように分散させ、フロー式粒子分析装置(FPIA3000:シスメックス社製)を用いて、HPF分析量0.35μl、HPF検出量2000〜2500個の条件下でHPFモードにより測定した。
【0111】
<電気伝導度測定>
電気伝導度の測定は、導電率計(アズワン株式会社製のCyberScanCON100)を用いて行なった。
<重量平均分子量(Mw)>
重合体一次粒子分散液、シェル粒子分散液のTHF可溶成分を、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
装置:東ソー社製GPC装置 HLC−8020、カラム:ポリマーラボラトリー社製
PL−gel Mixed−B 10μ、溶媒:THF、試料濃度:0.1重量%、検量線:標準ポリスチレン
中間層水溶液を、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
装置:東ソー社製GPC装置 HLC−8010、カラム:東ソー社製TSKgel GMPWx1、溶媒:0.5M酢酸+0.5M酢酸ナトリウム水溶液、試料濃度:0.2重量%、検量線:ポリエチレングリコール
【0112】
<ガラス転移温度(Tg)測定>
セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析装置(DSC200)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した。Tgは、DSC曲線のベースラインの延長線と吸熱カーブで最大傾斜を示す接線との交点から求めた。
【0113】
<着色剤分散液1の調製>
プロペラ翼を備えた攪拌機の容器に、トルエン抽出液の紫外線吸光度が0.02であり、真密度が1.8g/cm3のファーネス法で製造されたカーボンブラック(三菱化学社
製、三菱カーボンブラックMA100S)20部、20%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(以下20%DBS水溶液と略す)1部、非イオン界面活性剤(花王社製、エマルゲン120)4部、導電率が2μS/cmのイオン交換水75部を加えて予備分散して顔料プレミックス液を得た。プレミックス後の分散液中カーボンブラックの体積累積50%径Dv50は約90μmであった。上記プレミックス液を原料スラリーとして湿式ビーズミルに供給し、ワンパス分散を行った。なお、ステータの内径は120mmφ、セパレータの径が60mmφ、分散用のメディアとして直径が50μmのジルコニアビーズ(真密度6.0g/cm3)を用いた。ステータの有効内容積は約2リットルであり、メ
デイアの充填容積は1.4リットルとしたので、メディア充填率は70%である。ロータの回転速度を一定(ロータ先端の周速が約11m/sec)として、供給口より前記プレミックススラリを無脈動定量ポンプにより供給速度約40リットル/hrで供給し、所定粒度に達した時点で排出口より製品を取得した。なお、運転時にはジャケットから約10℃の冷却水を循環させながら行い、着色剤分散液を得た。
【0114】
<ワックス分散液A1の調製>
パラフィン系ワックス(融点82℃)27.2部、ステアリルアクリレート2.8部、
20%DBS水溶液1.9部、脱塩水68.1部を90℃に加熱して、ホモミキサー(特殊機化工業社製 マークIIfモデル)を用い10分間攪拌した。次いで、90℃加熱下で、高圧乳化機を用いて20MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで粒子径を測定し中位径(D50)が250nm以下になるまで分散してワックス分散液A1を作製
した。最終粒径(D50)は、244nmであった。
【0115】
<ワックス分散液A2の調製>
エステル系ワックス(融点69℃)30.0部、20%DBS水溶液2.75部、脱塩水67.25部を90℃に加熱して、いで、90℃加熱下で、高圧乳化機を用いて20MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで粒子径を測定し中位径(D50)が25
0nm以下になるまで分散してワックス分散液A2を作製した。最終粒径(D50)は、2
34nmであった。
【0116】
<重合体一次粒子分散液B1の調製>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、および各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器にワックス分散液A1 36.3部、脱塩水260部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、攪拌を続けたまま下記のモノマー類・乳化剤溶液の混合物を300分かけて添加した。このモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を添加開始した時間を重合開始とし、下記の開始剤水溶液1を重合開始30分後から270分かけて添加した。その後開始剤水溶液2を120分かけて添加した。その後、攪拌下で内温90℃のまま60分保持した。
【0117】
[モノマー類]
スチレン 67.8部
アクリル酸ブチル 32.2部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 1.0部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.7部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.5部
[開始剤水溶液1]
8%過酸化水素水溶液 15.5部
8%L−(+)アスコルビン酸水溶液 15.5部
[開始剤水溶液2]
8%L−(+)アスコルビン酸水溶液 14.2部
【0118】
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液B1を得た。ナノトラックを用いて測定した中位径(D50)は300nmだった。重量平均分子量(Mw)は21000
0だった。Tgは38℃だった。
【0119】
<重合体一次粒子分散液B2の調製>
スチレン 72.3部、アクリル酸ブチル 37.7部に変更する以外は重合体一次粒子分散液B1と同様にして重合体一次粒子分散液B2を得た。ナノトラックを用いて測定した中位径(D50)は341nmだった。重量平均分子量(Mw)は110000だった
。Tgは43℃だった。
【0120】
<重合体一次粒子分散液B3の調製>
スチレン 68.2部、アクリル酸ブチル 31.8部、ヘキサンジオールジアクリレート 0.8部、ワックス分散液A2 41.7部に変更する以外は重合体一次粒子分散
液B1と同様にして重合体一次粒子分散液B3を得た。
ナノトラックを用いて測定した中位径(D50)は330nmだった。重量平均分子量(
Mw)は460000だった。Tgは43℃だった。
【0121】
<コア粒子分散液C1の調製>
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、および各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器に重合体一次粒子分散液B1 100部(固形分)を仕込み、更に着色剤分散液EP−700(大日精化(株)製)4.4部(固形分)を10分かけて添加して均一に混合した後、0.5%硫酸アルミニウム水溶液0.31部(固形分)を15分かけて添加した。更に150分かけて内温42℃まで昇温した。ここでマルチサイザーを用いて体積中位粒径(Dv50)を測定したところ、6.7μmであった。その後、20%DBS水溶液4.1部(固形分)を添加してから、50分かけて96℃まで昇温し、50分保持し、その後30℃まで冷却した。
【0122】
得られた分散液を抜き出し、5種C(東洋濾紙株式会社製 No.5C)の濾紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過した。濾紙上に残ったケーキを攪拌機(プロペラ翼)を備えたステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水を加え攪拌する事により均一に分散させ、その後30分間攪拌した。この工程をろ液の電気伝導度が10μS/cmになるまで繰り返した後、濾紙上に残ったケーキに電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水を分散液濃度20%になるように加え攪拌する事によりコア粒子分散液C1を得た。
【0123】
<コア粒子分散液C2の調製>
コア粒子分散液C1の調整と同様にして、重合体一次粒子分散液B1 90部(固形分)を仕込み、更に着色剤分散液EP−700(大日精化(株)製)4.4部(固形分)を10分かけて添加して均一に混合した後、0.5%硫酸アルミニウム水溶液0.31部(固形分)を15分かけて添加した。更に120分かけて内温40℃まで昇温した。ここでマルチサイザーを用いて体積中位粒径(Dv50)を測定したところ、6.5μmであった。その後、重合体一次粒子分散液C2 10部(固形分)を添加し、コア−シェル構造とした。この時の体積中位粒径(Dv50)は、6.7μmであった。更に、20%DBS水溶液4.1部(固形分)を添加してから、50分かけて96℃まで昇温し、50分保持し、その後30℃まで冷却した。以降、コア粒子分散液C1と同様にしてコア粒子分散液C2を得た。
【0124】
<コア粒子分散液C3の調製>
着色剤分散液1を用いる以外はコア粒子分散液C1の調整と同様にしてコア粒子分散液C4を得た。体積中位粒径(Dv50)は、6.8μmであった。
【0125】
<コア粒子分散液C4の調製>
ワックス分散液A2を用いる以外はコア粒子分散液C1の調整と同様にしてコア粒子分散液C4を得た。体積中位粒径(Dv50)は、6.8μmであった。
【0126】
<中間層水溶液D1の調製>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、および各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に脱塩水480部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で70℃に昇温した。
その後、開始剤水溶液1を添加し、更にその5分後、攪拌を続けたまま下記のモノマー類と開始剤水溶液2を60分かけて添加した。その後開始剤水溶液3を60分かけて添加し、添加開始と同時に90℃まで昇温した。開始剤水溶液3を添加後、攪拌下で内温90℃のまま90分保持した。
【0127】
[モノマー類]
ブレンマーQA(日油製、(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、50%水溶液) 10.0部
[開始剤水溶液1]
8.0% 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ニ塩酸塩水溶液
3.0部
[開始剤水溶液2]
8.0% 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ニ塩酸塩水溶液
3.0部
[開始剤水溶液3]
8.0% 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ニ塩酸塩水溶液
3.0部
【0128】
重合反応終了後冷却し、中間層水溶液D1を得た。重量平均分子量(Mw)は7600であった。
【0129】
<シェル粒子分散液E1の調製>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、および各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に20%DBS水溶液2.0部、脱塩水323部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で80℃に昇温した。
その後、攪拌を続けたまま開始剤水溶液を添加し、更にその5分後、下記のモノマー類1・乳化剤溶液の混合乳化液とモノマー類2を210分かけて添加した。その後攪拌下で内温80℃のまま90分保持した。
【0130】
[モノマー類1]
スチレン 83.5部
アクリル酸ブチル 16.5部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 71.4部
[モノマー類2]
20%パラスチレンスルホン酸ナトリウム水溶液 12.5部
[開始剤水溶液]
4.0%過硫酸カリウム水溶液 6.4部
【0131】
重合反応終了後冷却し、乳白色のシェル粒子分散液E1を得た。ナノトラックを用いて測定した中位径(D50)は63nmであった。重量平均分子量(Mw)は242,000
であった。Tgは72℃だった。
【0132】
<シェル粒子分散液E2の調製>
スチレン88.0部、アクリル酸ブチル12.0部、1−ドデカンチオール0.5部を用いた以外は、シェル粒子分散液E1と同様にしてシェル粒子分散液E2を得た。乳白色のシェル粒子分散液E1を得た。ナノトラックを用いて測定した中位径(D50)は60n
mであった。重量平均分子量(Mw)は57,000であった。Tgは75℃だった。
【0133】
<シェル粒子分散液E3の調製>
スチレン79.0部、アクリル酸ブチル21.0部を用いた以外は、シェル粒子分散液E1と同様にしてシェル粒子分散液E3を得た。ナノトラックを用いて測定した中位径(D50)は58nmであった。重量平均分子量(Mw)は213,000であった。Tgは
65℃だった。
【0134】
<シェル粒子分散液E4の調製>
スチレン83.5部、アクリル酸ブチル16.5部を用いた以外は、シェル粒子分散液E2と同様にしてシェル粒子分散液E4を得た。ナノトラックを用いて測定した中位径(D50)は57nmであった。重量平均分子量(Mw)は58,000であった。Tgは6
7℃だった。
【0135】
[実施例1]
<トナー母粒子F1の製造>
攪拌装置、加熱冷却装置を備えた反応器にコア粒子分散液C1 100部(固形分)を仕込み、室温で攪拌しながら中間層水溶液D1 0.15部(固形分)を添加し、室温で30分撹拌した。その後、1N−NaOH水溶液7.5g/1L分散液体積の添加量で添加した後、シェル粒子分散液E1 3部(固形分)を滴下し、室温で撹拌した。その後、1N−HCl水溶液10g/1L分散液体積の添加量で滴下した後、分散を内温45℃まで昇温し、60分保持した後、20℃まで冷却した。マルチサイザーIIIを用いて測定し
た体積中位粒径(Dv50)は7.2μmであり、フロー式粒子分析装置で測定した平均円形度は0.970であった。
【0136】
得られた分散液を抜き出し、5種Cの濾紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をした。濾紙上に残ったケーキを攪拌機(プロペラ翼)を備えたステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水を加え50rpmで攪拌する事により均一に分散させ、その後30分間攪拌した。
【0137】
この工程を濾液の電気伝導度が2μS/cmになるまで繰り返した後、得られたケーキを40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥する事により、トナー母粒子F1を得た。
【0138】
<現像用トナーG1の製造>
アズワン株式会社製サンプルミルLSMK内に、トナー母粒子F1 100部を投入し、続いて体積平均一次粒径0.03μmのシリカ微粒子0.5部を添加し計2分間撹拌、混合した。その後、体積平均一次粒径0.01μmのシリカ微粒子1.0部を添加し計2分間撹拌、混合し、篩別する事により現像用トナーG1を得た。
【0139】
[実施例2]
<トナー母粒子F2の製造>
シェル粒子分散液E1の代わりにシェル粒子分散液E2を用いた以外はF1と同様の方法でトナー母粒子F2を得た。洗浄前にマルチサイザーIIIを用いて測定した体積中位粒
径(Dv50)は7.3μmであり、フロー式粒子分析装置で測定した平均円形度は0.966であった。
【0140】
<現像用トナーG2の製造>
トナー母粒子F1の代わりにF2を用いた以外はG1と同様の方法で現像用トナーG2を得た。
【0141】
[実施例3]
<トナー母粒子F3の製造>
シェル粒子分散液E1の代わりにシェル粒子分散液E3を用いた以外はF1と同様の方法でトナー母粒子F3を得た。洗浄前にマルチサイザーIIIを用いて測定した体積中位粒
径(Dv50)は7.5μmであり、フロー式粒子分析装置で測定した平均円形度は0.968であった。
【0142】
<現像用トナーG3の製造>
トナー母粒子F1の代わりにF2を用いた以外はG1と同様の方法で現像用トナーG3を得た。
【0143】
[実施例4]
<トナー母粒子F4の製造>
シェル粒子分散液E1の代わりにシェル粒子分散液E4を用いた以外はF1と同様の方法でトナー母粒子F4を得た。洗浄前にマルチサイザーIIIを用いて測定した体積中位粒
径(Dv50)は7.7μmであり、フロー式粒子分析装置で測定した平均円形度は0.959であった。
【0144】
<現像用トナーG4の製造>
トナー母粒子F1の代わりにF4を用いた以外はG1と同様の方法で現像用トナーG4を得た。
【0145】
[実施例5]
<トナー母粒子F5の製造>
コア粒子分散液C1の代わりにコア粒子分散液C2を用いた以外はF1と同様の方法でトナー母粒子F5を得た。洗浄前にマルチサイザーIIIを用いて測定した体積中位粒径(Dv50)は7.5μmであり、フロー式粒子分析装置で測定した平均円形度は0.969であ
った。
【0146】
<現像用トナーG5の製造>
トナー母粒子F1の代わりにF5を用いた以外はG1と同様の方法で現像用トナーG5を得た。
【0147】
[実施例6]
<トナー母粒子F6の製造>
中間層水溶液D1の代わりにPAS−J−81(ニットーボーメディカル製、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体25%水溶液、重量平均分子量(Mw)180,000)0.07部(固形分)を用いた以外はF1と同様の方法トナー母粒子F6を得た。洗浄前にマルチサイザーIIIを用いて測定した体積中位粒径(Dv50)
は7.6μmであり、フロー式粒子分析装置で測定した平均円形度は0.962であった。
【0148】
<現像用トナーG6の製造>
トナー母粒子F1の代わりにF6を用いた以外はG1と同様の方法で現像用トナーG6を得た。
【0149】
[実施例7]
<トナー母粒子F7の製造>
中間層水溶液D1の代わりにPAS−H−10L(ニットーボーメディカル製、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体28%水溶液、重量平均分子量(Mw)200,000)0.07部(固形分)を用いた以外はF1と同様の方法トナー母粒子F7を得た。洗浄前にマルチサイザーIIIを用いて測定した体積中位粒径(Dv50)は7.4μmであ
り、フロー式粒子分析装置で測定した平均円形度は0.967であった。
【0150】
<現像用トナーG7の製造>
トナー母粒子F1の代わりにF7を用いた以外はG1と同様の方法で現像用トナーG7
を得た。
【0153】
[実施例9]
<トナー母粒子F9の製造>
コア粒子分散液C1の代わりにコア粒子分散液C4を用い
、シェル粒子分散液E1の代
わりにスチレン・アクリル酸2エチルヘキシル・2−アクリルアミド−2−メチルプロパ
ンスルホン酸共重合体水分散液(2−アクリルアミド−2メチルプロパンスルホン酸2.
7重量%含有、重合平均分量(Mw):14,200、Tg:70℃、ナノトラックを用
いて測定した中位径(D50):50nm、固形分濃度:20重量% (FCA-E-014))を用い
た以外はF6と同様の方法でトナー母粒子F9を得た。洗浄前にマルチサイザーIIIを用
いて測定した体積中位粒(Dv50)は7.μmであり、フロー式粒子分析装置で測定した平
均円形度は0.951であった。
【0154】
<現像用トナーG9の製造>
トナー母粒子F1の代わりにF9を用いた以外はG1と同様の方法で現像用トナーG9を得た。
【0155】
[実施例10]
<トナー母粒子F10の製造>
コア粒子分散液C
4の代わりにコア粒子分散液C3を用いた以外は、F
9と同様の方法
でトナー母粒子F10を得た。洗浄前にマルチサイザーIIIを用いて測定した体積中位粒
径(Dv50)は7.3μmであり、フロー式粒子分析装置で測定した平均円形度は0.96
5であった。
【0156】
<現像用トナーG10の製造>
トナー母粒子F1の代わりにF10を用いた以外はG1と同様の方法で現像用トナーG10を得た。
【0157】
[比較例1]
<トナー母粒子F11の製造>
中間層水溶液D1を0.30部(固形分)用いた以外はF1と同様の方法でトナー母粒子F11を得た。洗浄前にマルチサイザーIIIを用いて測定した体積中位粒径(Dv50)は
7.6μmであり、フロー式粒子分析装置で測定した平均円形度は0.961であった。
【0158】
<現像用トナーG11の製造>
トナー母粒子F1の代わりにF11を用いた以外はG1と同様の方法で現像用トナーG11を得た。
【0159】
[比較例2]
<トナー母粒子F12の製造>
中間層水溶液PAS−H−10L(ニットーボーメディカル製、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体28%水溶液、重量平均分子量(Mw)200,000)を0.30部(固形分)用いた以外はF7と同様の方法でトナー母粒子F12を得た。洗浄前にマルチサイザーIIIを用いて測定した体積中位粒径(Dv50)は8.0μmであり、フロー
式粒子分析装置で測定した平均円形度は0.959であった。
【0160】
<現像用トナーG12の製造>
トナー母粒子F1の代わりにF12を用いた以外はG1と同様の方法で現像用トナーG12を得た。
【0161】
[比較例3]
<トナー母粒子F13の製造>
中間層水溶液PAS−J−81(ニットーボーメディカル製、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体25%水溶液、重量平均分子量(Mw)180,000)0.003部(固形分)用いた以外はF6と同様の方法でトナー母粒子F13を得た。洗浄前にマルチサイザーIIIを用いて測定した体積中位粒径(Dv50)は7.4μ
mであり、フロー式粒子分析装置で測定した平均円形度は0.961であった。
【0162】
<現像用トナーG13の製造>
トナー母粒子F1の代わりにF13を用いた以外はG1と同様の方法で現像用トナーG13を得た。
【0163】
[比較例4]
<トナー母粒子F14の製造>
中間層水溶液PAS−H−5L(ニットーボーメディカル製、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体28%水溶液、重量平均分子量(Mw)30,000)を用いた以外はF1と同様の方法でトナー母粒子F14を得た。洗浄前にマルチサイザーIIIを用い
て測定した体積中位粒径(Dv50)は7.4μmであり、フロー式粒子分析装置で測定した平均円形度は0.917であった。
【0164】
<現像用トナーG14の製造>
トナー母粒子F1の代わりにF14を用いた以外はG1と同様の方法で現像用トナーG14を得た。
【0165】
実施例および比較例におけるコア粒子、中間層形成粒子、シェル粒子、トナー母粒子のζ電位とトナー母粒子のζ電位/コア粒子のζ電位の値は、表−1に示す通りであった。
【0166】
実施例および比較例で得られた現像用トナーを用いて、以下の方法で評価した。結果は、表−2に示す。
【0167】
<耐ブロッキング性>
現像用トナー10gを内径3cm、高さ6cmの円筒形の容器に入れ、20gの荷重をのせ、温度50℃、湿度55%の環境下に48時間放置した後、トナーを容器から取り出し、上から荷重をかけることで凝集の程度を確認した。
〇(良好):100g未満の荷重で崩れる。
△(実用可):300g未満の荷重で崩れる。
×(使用不可):凝集しており、300g以上の荷重をかけないと崩れない。
【0168】
<定着温度幅試験>
定着機は熱ロール定着方式であり、定着機の加熱ローラは、離型層がPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)でできており、シリコーンオイルの塗布なしで評価した。付着量約0.7mg/cm2)の未定着のトナー像を担持した記録紙(紀州製紙製FCドリーム)を用意し、加熱ローラの表面温度を100℃から210℃まで5℃刻みで変化させ、定着ニップ部に搬送し、195mm/secの速度で排出されたときの定着状態を観察した。定着時に加熱ローラにトナーのオフセットあるいは用紙巻き付きが生じず、定着後の記録紙上のトナーが十分に記録紙に接着している温度領域を定着温度範囲△Tとして、以下のように判定した。
【0169】
〇 50℃ ≦ ΔT
△ 40℃ ≦ ΔT < 50℃
× ΔT < 40℃
【0170】
<低温定着性の測定方法と定義>
また、上記測定方法において、ローラ温度を130℃に設定して実写テストを実施し、得られた定着画像を一定の荷重をかけて擦り、擦り前後の濃度低下を目視で比較し、以下の基準で「低温定着性」の判定をした。
◎(良好) :濃度低下なし
○(実用可) :僅かに濃度低下がみられる
△(不十分) :濃度低下が目立つ
×(使用不可):ほとんど剥がれる
【0171】
<帯電性評価>
キャリアとしてパウダーテック(株)製F−150を使用し、キャリアとの重量比1:
24の混合物10gを容量30mlのガラス製サンプル瓶に入れ、三田村理研工業製ミキサーミルにて600rpmの振動数にて1分間振動した後、そのうち0.1gを用いて東芝ケミカル(株)製ブローオフ帯電量測定装置を用い、吸引ブローオフ法にて帯電量(Q/M)を測定した。
ブロー条件:0.05kgf×3秒
吸引圧力 :350〜400mmH
2O
スクリーン:400メッシュ
○(良好) :−10μC/g ≦ Q/M < −30μC/g
△(実用可) : −5μC/g ≦ Q/M < −10μC/g
×(使用不可) :−5μC/gよりも小さい、或いは正帯電
【0172】
【表1】
【0173】
【表2】