特許第6354237号(P6354237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354237
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】脆弱フィルムの製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 20/12 20060101AFI20180702BHJP
   B65H 23/24 20060101ALI20180702BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20180702BHJP
   B26D 7/32 20060101ALI20180702BHJP
   B26D 1/24 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   B65H20/12
   B65H23/24
   B26D7/18 A
   B26D7/32 B
   B26D1/24 C
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-59559(P2014-59559)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-182844(P2015-182844A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年9月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】平野 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】眞島 啓
【審査官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−044861(JP,U)
【文献】 特開2004−202593(JP,A)
【文献】 特開平04−244398(JP,A)
【文献】 実開平2−88957(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 20/00−20/40
B65H 23/24
B26D 1/24
B26D 7/18
B26D 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の脆弱フィルム基材から、切断手段によりその側縁部を分離して、製品部となる脆弱フィルムを得る分離工程と、
前記製品部および前記側縁部を少なくとも一つの搬送ロールで搬送する搬送工程と、
前記搬送工程後の前記製品部と前記側縁部とを別々に巻取ロールで巻き取る巻取工程と、
を有し、
前記搬送ロールのうち最上流の搬送ロールが単一ロールからなるサクションロールであり、
前記単一ロールからなるサクションロールにおいて前記製品部の前記サクションロール
に対するラップ角θ1をθ1≧30°、前記側縁部の前記サクションロールに対するラップ角θ2をθ2≧45°でそれぞれ抱かせることを特徴とする脆弱フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記製品部を巻き取る製品部巻取ロールの単位幅当たりの張力T1と、前記側縁部を巻き取る側縁部巻取ロールの単位幅当たりの張力T2との差の絶対値ΔTが、5N/m以下であることを特徴とする請求項1記載の脆弱フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記製品部を巻き取る製品部巻取ロールの単位幅当たりの張力T1と、前記側縁部を巻き取る側縁部巻取ロールの単位幅当たりの張力T2との差の絶対値ΔTが、0.2N/m以上であることを特徴とする請求項1または2記載の脆弱フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の脆弱フィルムの製造方法を用いて製造される脆弱フィルムであって、その長さが180μm以上の糸状欠陥が前記製品部の端面に存在しないことを特徴とする脆弱フィルム。
【請求項5】
長尺の脆弱フィルム基材を当該フィルム進行方向に沿って切断して、前記脆弱フィルム基材から、その側縁部を分離して、製品部となる脆弱フィルムを得る切断手段と、
前記切断手段により切断された前記製品部と前記側縁部を搬送する少なくとも一つの搬送ロールと、
前記搬送ロールを経た前記製品部を巻き取る製品部巻取ロールと、
前記搬送ロールを経た前記側縁部を巻き取る側縁部巻取ロールと、を備え、
前記搬送ロールのうち最上流の搬送ロールが単一ロールからなるサクションロールであり、
前記単一ロールからなるサクションロールにおいて前記製品部の前記サクションロールに対するラップ角θ1をθ1≧30°、前記側縁部の前記サクションロールに対するラップ角θ2をθ2≧45°でそれぞれ抱かせることを特徴とする脆弱フィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の脆弱フィルムの製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の表示装置においては、輝度、視野角、コントラスト等の光学特性を向上するために、各種の光学フィルムが用いられている。このような光学フィルムは、例えば溶融押出法等を用いて製造される。溶融押出法は、押出機が備えるダイスから溶融状態の樹脂を押し出した後、冷却ロールを通して冷却して長尺の光学フィルムを成膜するものである。
【0003】
成膜された光学フィルムは、その両側縁部の厚さや端面の形状が不均一であるため、例えば円形の上刃と下刃を有する切断装置の間に供給して、当該両側縁部を搬送方向に切り落として(トリミングして)、後の加工工程(例えば、フィルムの積層工程、フィルムの延伸工程等)に供される。加工後の光学フィルムは、同様に両側縁部の形状が不均一であるため、同様に切断装置を用いてトリミングが行われる。
【0004】
切断装置により切断された後のフィルムは、搬送ロール(フリーロール)を経て、または駆動ロールおよび従動ロールを互いに圧接して構成されるニップロールを経て、製品部と側縁部とでそれぞれ別々に巻取ロールにより巻き取られる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−289601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、側縁部の切断後に搬送ロール(フリーロール)を経て製品部と側縁部とで別々に巻取ロールで巻き取るようにした従来技術では、製品部の巻取張力と側縁部の巻取張力との間に差が発生した場合に、その張力差が切断部(切断装置よる切断位置)に伝搬し、フィルムが破断し、あるいは端面(切断面)に糸状欠陥が発生する場合があり、製品品質の劣化や製造効率の低下を招来する場合があるという問題があった。
【0007】
また、側縁部の切断後にニップロールを経て製品部と側縁部とで別々に巻取ロールで巻き取るようにした従来技術では、製品部の巻取張力と側縁部の巻取張力に差が生じた場合でも、切断部(切断装置による切断位置)への張力差の伝搬はニップロールにより止めることができるため、フィルムに破断は生じないものの、ニップロールで挟むことによって、フィルム表面に打痕、異物、スリキズ等が発生する場合があり、製品品質の劣化を招く恐れがあるという問題があった。特に、延伸加工等の加工を行った後のフィルムでは延伸工程で側縁部をクリップで把持された際に、その跡が凹凸形状になって残り、ニップロールで挟むと、その凹凸部分が割れてしまい、巻き取りが困難となって製造効率を低下させ、あるいはその破片が製品部を汚染して、製品品質の劣化を招く恐れがあった。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、製品品質および製造効率を向上できる脆弱フィルムの製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点によると、
長尺の脆弱フィルム基材から、切断手段によりその側縁部を分離して、製品部となる脆弱フィルムを得る分離工程と、
前記製品部および前記側縁部を少なくとも一つの搬送ロールで搬送する搬送工程と、
前記搬送工程後の前記製品部と前記側縁部とを別々に巻取ロールで巻き取る巻取工程と、
を有し、
前記搬送ロールの少なくとも一つがサクションロールであり、
前記サクションロールのうち最上流のサクションロールが単一ロールであり、
前記単一ロールからなるサクションロールにおいて前記製品部と前記側縁部の両方をラップ角>0°で抱かせることを特徴とする脆弱フィルムの製造方法が提供される。
【0010】
本発明の第1の観点に係る脆弱フィルムの製造方法において、前記製品部を巻き取る製品部巻取ロールの単位幅当たりの張力T1と、前記側縁部を巻き取る側縁部巻取ロールの単位幅当たりの張力T2との差の絶対値ΔTが、5N/m以下であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の第2の観点によると、上述した本発明の第1の観点に係る脆弱フィルムの製造方法を用いて製造される脆弱フィルムであって、その長さが180μm以上の糸状欠陥が前記製品部の端面(切断面)に存在しない脆弱フィルムが提供される。
【0012】
本発明の第3の観点によると、
長尺の脆弱フィルム基材を当該フィルム進行方向に沿って切断して、前記脆弱フィルム基材から、その側縁部を分離して、製品部となる脆弱フィルムを得る切断手段と、
前記切断手段により切断された前記製品部と前記側縁部を搬送する少なくとも一つの搬送ロールと、
前記搬送ロールを経た前記製品部を巻き取る製品部巻取ロールと、
前記搬送ロールを経た前記側縁部を巻き取る側縁部巻取ロールと、
を備え、
前記搬送ロールの少なくとも一つがサクションロールであり、
前記サクションロールのうち最上流のサクションロールが単一ロールであり、
前記単一ロールからなるサクションロールにおいて前記製品部と前記側縁部の両方をラップ角>0°で抱かせることを特徴とする脆弱フィルムの製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の観点に係る脆弱フィルムの製造方法または本発明の第3の観点に係る脆弱フィルムの製造装置によれば、側縁部の切断後に単一ロールに係るサクションロールを経て製品部と側縁部とを別々に巻取ロールで巻き取るようにしたので、製品部の巻取張力と側縁部の巻取張力との間に差が発生した場合であっても、切断部(切断装置による切断位置)への張力差の伝搬は当該サクションロールにより止めることができるので、フィルムの破断を少なくすることができるとともに、ニップロールを用いた場合のように、フィルムの品質を低下させることも少ない。従って、製品品質および製造効率を向上することができる。
【0014】
本発明の第2の観点に係る脆弱フィルムは、本発明の第1の観点に係る脆弱フィルムの製造方法を用いて製造されており、その長さが180μm以上の糸状欠陥が製品部の端面に存在しないため、製品品質が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の脆弱フィルムの製造装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態の脆弱フィルムの製造装置の要部を拡大した図である。
図3】本発明の実施形態のサクションロールの構成を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態のサクションロールの構成を示す平面図である。
図5】比較例の製造装置であって、切断後にフリーロールを経て製品部と側縁部とで別々に巻取ロールで巻き取るようにした従来技術の構成を示す図である。
図6】比較例の製造装置であって、切断後にニップロールを経て製品部と側縁部とで別々に巻取ロールで巻き取るようにした従来技術の構成を示す図である。
図7】比較例の製造装置であって、切断後に製品部と側縁部とで別々のサクションロールで搬送して、それぞれ巻取ロールで巻き取るようにした構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の実施形態に係る長尺の脆弱フィルムの製造装置の概略構成を示す図である。
【0017】
本発明において、長尺とは、フィルムの幅に対して、少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
【0018】
また、脆弱フィルムとは、引き裂き試験(トラウザー引き裂き法 JIS K7128−1)で3.0N/mm以下で破断するフィルムであり、一般に光学フィルムとしては脆弱フィルムが用いられ、本発明は光学フィルムの製造に適したものである。但し、本発明は必ずしも光学フィルムの製造に限定されず、光学フィルム以外の脆弱フィルムの製造にも適用することが可能である。
【0019】
本実施形態の脆弱フィルムの製造装置は、ホッパ1、押出機2、ギヤポンプ3、濾過装置(ポリマーフィルタ)4、ダイス5、第1冷却ロール6、第2冷却ロール7、第3冷却ロール8、静電ピニング装置9、テンションロール10,11,12、駆動ロール13、切断装置(シェアカッター)14、サクションロール15、搬送ロール16、製品部巻取ロール17、搬送ロール18、および側縁部巻取ロール19を概略備えて構成されている。
【0020】
ホッパ1には、フィルムの成形に用いる素材として、乾燥された非晶性の熱可塑性樹脂のペレットが供給される。非晶性の熱可塑性樹脂としては、例えば、脂環式オレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂等を用いることができる。これらの中で、脂環式オレフィン樹脂を好適に用いることができる。脂環式オレフィン樹脂は、流動性が良好なので、膜厚むらの小さい厚さ精度の良好なフィルムを製膜することができ、吸湿性が極めて低いので、寸法安定性に優れたフィルムを得ることができる。
【0021】
脂環式オレフィン樹脂は、主鎖および/または側鎖に脂環構造を有する非晶性の樹脂である。脂環式オレフィン樹脂中の脂環構造としては、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。脂環式オレフィン樹脂としては、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン樹脂、環状共役ジエン樹脂、ビニル脂環式炭化水素樹脂、および、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系樹脂は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
【0022】
ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、またはそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、またはそれらの水素化物等を挙げることができる。
【0023】
押出機2は、ホッパ1に供給されたペレットを加熱し、溶融混練してギヤポンプ3に導く。ギヤポンプ3は、押出機2で溶融混練された樹脂を濾過装置4に定量供給する。濾過装置4はギヤポンプ3から供給された溶融樹脂から不溶融の異物等を除去してダイス5に導く。
【0024】
ダイス5は、濾過装置4で異物等が除去された熔融樹脂をフィルム状に押し出す装置である。ダイス5としては、リップ部を炭化タングステン等の硬質の材料で構成し、クロムメッキ等を施して平滑に仕上げ、フィルムにダイラインが発生することを防止するようにしたものを用いることが好ましい。ダイス5の形状に特に制限はなく、ストレートマニホールド形、フィッシュテール形、コートハンガー形等を例示することができる。これらの中で、コートハンガー形のダイスは、膜厚むらの少ないフィルムを製膜することができるので、好適に用いることができる。
【0025】
キャスティングドラムとしての第1冷却ロール6、第2冷却ロール7、および第3冷却ロール8は、ダイス5からフィルム状に押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂を順次冷却してフィルム基材(脆弱フィルム基材)を成膜する。第1冷却ロール6、第2冷却ロール7および第3冷却ロール8の引取速度は、均一な膜厚を得るため、製膜されるフィルムの熱収縮等に応じて適宜選択される。
【0026】
静電ピニング装置9は、ダイス5の開口部の近傍に設けられており、ダイス5から押し出されたフィルムの両端に静電気を印加して、フィルムの両端を第1冷却ロール6に静電吸着させる。テンションロール10,11,12は、冷却ロール8と駆動ロール13との間の部分でフィルム基材に適宜なテンション(張力)を付与する。駆動ロール13は、不図示のモータにより回転駆動されるロール13aおよびこれに圧接されるロール13bを備える。
【0027】
切断装置14は、駆動ロール13の下流側に配置されており、駆動ロール13を経たフィルム基材Fを該フィルム基材Fの搬送方向に沿う方向に切断する装置である。切断装置14としては、ここでは、例えば、フィルムFの幅方向の寸法を1600mmとして、その両側縁近傍の形状が不安定な部分(側縁から125mm程度の部分)をトリミング(切除)するため、フィルムFの幅方向に沿って両側にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0028】
切断装置14は、図2にも示されているように、フィルム基材Fの上側に配置される上刃14aおよび下側に配置される下刃14bを概略備えて構成されている。上刃14aおよび下刃14bは、回転可能に軸支された円形刃である。ここでは、上刃14aはフィルム基材Fの搬送に従って受動的に回転するように回転自在に軸支されており、下刃14bは不図示の駆動モータによってフィルムFの搬送速度と概略一致するように、図中で時計方向に回転駆動される。但し、これらは逆、すなわち、下刃14bをフィルムFの搬送に従って受動的に回転するように回転自在に軸支し、上刃14aを不図示の駆動モータによってフィルム2の搬送速度と概略一致するように、図中で反時計方向に回転駆動するようにしてもよい。
【0029】
上刃14aおよび下刃14bとしては、いわゆる皿型刃や椀型刃、その他の形状の円形刃のいずれでもよいが、ここでは、上刃14aは皿形刃、下刃14bは椀型刃であるものとする。上刃14aおよび下刃14bの素材としては、金属製でもセラミック製でもよいが、超硬合金やハイス鋼を用いることが好ましい。切粉の発生量および切断面の滑らかさの観点からは、超硬合金からなる超硬刃を用いることが好ましい。上刃14aの直径は90mm〜150mm程度、厚さは1mm〜5mm程度である。また、下刃14bの直径は90mm〜150mm程度、厚さは1mm〜10mm程度である。なお、切断装置14としては、上述したようなシェアカッターに限定されず、他の構成の刃を用いたカッター、あるいはレーザカッター等であってもよい。
【0030】
サクションロール15は、切断装置14の下流側に配置されており、切断装置14によって切断・分離された製品部(脆弱フィルム)F1および側縁部F2は、図2に拡大して示されているように、共に単一ロールとしてのサクションロール15に導かれる。サクションロール15は、図3および図4に示されているように、内外に貫通する多数の貫通孔151aを有する略円筒状の回転ロール151および該回転ロール151の内側に配置された吸引ダクト152を備えている。吸引ダクト152は回転ロール151の内面に僅かに離間して近接するように略矩形状の開口152aを有している。この開口152aは、その長手方向の両辺は回転ロール151の長手方向に渡っているとともに(図4参照)、短手方向の両辺は回転ロール151の中心軸に直交する面内において、所定の角度θ3の範囲となるように略円弧状に形成されている(図3参照)。
【0031】
サクションロール15の外径は例えば300mm程度とすることができる。また、サクションロール15による製品部F1および側縁部F2の吸着の角度範囲を規定する角度θ3は、製品部F1および側縁部F2のサクションロール15に対するそれぞれのラップ角(詳細後述)のうち小さい方のラップ角(図2ではθ1)との関係で設定され、該小さい方のラップ角よりもさらに小さい角度に設定されている。
【0032】
吸引ダクト152は、負圧を発生させる不図示の吸引装置(バキューム装置)に連通されており、回転ロール151の開口152aに対応する部分に存在する貫通孔151aを介して、製品部F1および側縁部F2をそれぞれ吸引するようになっている。製品部F1および側縁部F2は、角度θ3の範囲でサクションロール15に吸引され、搬送される。
【0033】
サクションロール15に吸引されつつ搬送された製品部F1は搬送ロール(フリーロール)16に至る。搬送ロール16は、サクションロール15に対して、製品部F1がサクションロール15にラップ角θ1で抱かれるように配置されている。サクションロール15に吸引されつつ搬送された側縁部F2は搬送ロール(フリーロール)18に至る。搬送ロール18は、サクションロール15に対して、側縁部F2がサクションロール15にラップ角θ2で抱かれるように配置されている。ここで、ラップ角(抱き角)とは、サクションロール15の上流側における製品部F1および側縁部F2の進行方向Aに対して、サクションロール15の下流側における製品部F1の進行方向、側縁部F2の進行方向のなす角度である。
【0034】
製品部F1のサクションロール15に対するラップ角θ1、および側縁部F2のサクションロール15に対するラップ角θ2は、θ1>0°、θ2>0°となっている。即ち、製品部F1および側縁部F2の進行方向は、サクションロール15の上流側における進行方向Aと異なっている(斜交している)。また、ここでは、製品部F1のサクションロール15に対するラップ角θ1は、側縁部F2のサクションロール15に対するラップ角θ2に対して、θ1<θ2となるように設定されている。
【0035】
搬送ロール16,18は、サクションロール15の下流側に配置されたフリーロールであり、搬送ロール16は製品部F1を搬送(案内)して製品部巻取ロール17に導き、搬送ロール18は側縁部F2を搬送(案内)して側縁部巻取ロール19に導く。製品部巻取ロール17は、製品部F1を所定の張力で巻き取り、側縁部巻取ロール19は、側縁部F2を所定の張力で巻き取る。製品部F1を巻き取る製品部巻取ロール17の張力(単位幅当たりの張力)である製品部張力T1と、側縁部F2を巻き取る側縁部巻取ロール19の張力(単位幅当たりの張力)である側縁部張力T2との差の絶対値ΔT(=|T1−T2|)は、5N/m以下であることが好ましいことが、本願発明者による実験により判明している。
【0036】
なお、上述した説明では、フィルム基材Fの両側縁部のうち一方の側縁部F2についてのみの説明となっているが、他方の側縁部についても、切断装置14、搬送ロール(フリーロール)18および側縁部巻取ロール19と同様の装置が配置されている。また、切断装置14とサクションロール15との間の搬送路には、搬送ロールとして単一又は複数のフリーロールを設けてもよい。サクションロール15と搬送ロール16,18との間のそれぞれの搬送路には、搬送ロールとして単一又は複数のフリーロール若しくはサクションロールを設けてもよい。
【0037】
フィルム(製品部F1)を巻き取ったフィルムロールは、フィルムを1軸延伸、2軸延伸、または斜め延伸等する延伸装置、他のフィルムと積層する積層装置、その他の加工装置によって加工することにより、液晶表示装置等の表示装置に用いられる光学部品、例えば、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、透明導電フィルム等に加工される。
【0038】
また、図1に示した脆弱フィルムの製造装置は、単層のフィルムを製造するものであるが、2層以上の多層のフィルムを製造するものであってもよい。多層のフィルムの製造装置としては、例えば、ホッパ1、押出機2、ギアポンプ3、および濾過装置4を含む溶融樹脂供給系を複数設け、ダイス5として、これらの複数の溶融樹脂供給系からの溶融樹脂を合流させる多層ダイスを用いて共押出するものを用いることができる。
【0039】
上述した実施形態によれば、製品部F1の巻取張力T1と側縁部F2の巻取張力T2に差が生じた場合であっても、切断部(切断装置14による切断位置)への張力差の伝搬はサクションロール15により止めることができ、当該張力差が切断部に伝搬することにより生じるフィルムの破断や切断面における糸状欠陥の発生を減少することができる。
【0040】
また、サクションロール15により当該張力差の切断部への伝搬を抑制するようにしたため、従来のようにニップロールで挟む技術と比較して、フィルム表面に打痕、異物、スリキズ等が発生することがなくなり、製品品質を劣化させることも少ない。特に、延伸加工等の加工を行った後のフィルムでは延伸工程で側縁部がクリップで把持されるため、その跡が凹凸形状になって残り、ニップロールで挟むと、その凹凸部分が割れてしまい、巻き取りが困難となって製造効率を低下させ、あるいはその破片が製品部を汚染して、製品品質の劣化を招く恐れがあったが、そのような問題もなくすことができる。
【0041】
従って、フィルムの破断による製造ラインの停止等が少なくなるので、製造効率を向上することができるとともに、欠陥の少ない高品質のフィルムを製造することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例について説明する。図1及び図2に示した製造装置を用い、脆弱フィルムとなり得る各種の樹脂材料を用いてフィルムを成膜し、シェアカッター(切断装置14)により切断して、製品部F1と側縁部F2のラップ角(抱き角)θ1,θ2及び張力差(ΔT=|T1−T2|)を適宜に変更しつつ、それぞれを巻取ロール17,19に巻き取り、破断の発生の有無、及び製品部の端面(切断面)の状態(糸状欠陥の発生の状態)を調査した。実験の条件及び評価の結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
破断の有無は、製品部3000mを破断すること無く巻き取ることができた場合に「○」、部分的に破断が発生したが、巻き取ることができた場合に「△」、完全に破断して巻き取ることができなかった場合に「×」として評価した。
【0045】
製品部端面の状態(糸状欠陥の発生の状態)については、キーエンス社製2次元高速寸法測定装置 TM−006を用い、シェアカッターにて切断後の製品部分のフィルム端面をフィルムに対して垂直方向からカメラにより撮像し、画像解析して、製品部3000m中にフィルム端部より180μm以上の長さがある糸状欠陥が発生した場合に端面の状態が「×」、180μm以下の糸状欠陥が発生した場合に端面の状態が「△」、糸状欠陥が全く発生しなかった場合に端面の状態が「○」として評価した。なお、製品として巻いた際に端面を目視等により観察することによって、これらの発生状況の確認を行うようにしてもよい。
【0046】
(実施例1)
<フィルムの成形>
脂環式オレフィンポリマーの一種である熱可塑性ノルボルネン樹脂のペレット(日本ゼオン社製、商品名「ZEONOR1420R」、ガラス転移温度137℃)を100℃で5時間乾燥させた後、押出機に供給して溶融させ、T型ダイスからキャスティングドラム上にシート状に押出して厚み23μm、幅1600mmのフィルムを得た。
【0047】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)45°、ラップ角(θ2)90°で単一のサクションロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、0.5N/mであった。
【0048】
<評価>
表1に示す通り、製品部3000mを破断すること無く巻取ることができた。また、製品部3000mの左右切断面には、180μm以上の長さを持つ糸状欠陥は見つからなかった。
【0049】
(実施例2)
<フィルムの成形>
2種3層の多層共押出装置を使用して、両表面層を構成するポリメチルメタクリレート樹脂(住友化学社製、商品名「スミペックスHT55Z」、ガラス転移温度105℃)、中間層を構成するポリメチルメタクリレート樹脂(住友化学社製、商品名「スミペックスMH」)をそれぞれ押出機で溶融させ、T型ダイスからキャスティングドラム上にシート状に押出して3層構成のフィルムを得た。フィルムを構成する各層の厚みは、両表面層の厚みが15μm、中間層が15μmであり、フィルムの総厚は45μmであった。
【0050】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)45°、ラップ角(θ2)90°で単一のサクションロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、0.2N/mであった。
【0051】
<評価>
表1に示す通り、製品部3000mを破断すること無くを巻取ることができた。また、製品部3000mの左右切断面には、180μm以上の長さを持つ糸状欠陥は見つからなかった。
【0052】
(実施例3)
<フィルムの成形>
2種3層の多層共押出装置を使用して、両表面層を構成するポリメチルメタクリレート樹脂(住友化学社製、商品名「スミペックスHT55Z」、ガラス転移温度105℃)、中間層を構成するスチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂(ノヴァケミカルジャパン社製、商品名「ダイラークD332」、ガラス転移温度130℃)をそれぞれ押出機で溶融させ、T型ダイスからキャスティングドラム上にシート状に押出して3層構成のフィルムを得た。透明フィルムを構成する各層の厚みは、両表面層の厚みが15μm、中間層が15μmであり、フィルムの総厚は45μmであった。
【0053】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)45°、ラップ角(θ2)90°で単一のサクションロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、0.2N/mであった。
【0054】
<評価>
表1に示す通り、製品部3000mを破断すること無くを巻取ることができた。また、製品部3000mの左右切断面には、180μm以上の長さを持つ糸状欠陥は見つからなかった。
【0055】
(実施例4)
<フィルムの成形>
実施例3と同様にしてフィルムを得た。
【0056】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)45°、ラップ角(θ2)90°で単一のサクションロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、5.0N/mであった。
【0057】
<評価>
表1に示す通り、製品部3000mを破断すること無くを巻取ることができた。また、製品部3000mの左右切断面には、180μm以上の長さを持つ糸状欠陥は見つからなかった。
【0058】
(実施例5)
<フィルムの成形>
実施例3と同様にしてフィルムを得た。
【0059】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)30°、ラップ角(θ2)90°で単一のサクションロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、1.0N/mであった。
【0060】
<評価>
表1に示す通り、製品部3000mを破断すること無くを巻取ることができた。また、製品部3000mの左右切断面には、180μm以上の長さを持つ糸状欠陥は見つからなかった。
【0061】
(実施例6)
<フィルムの成形>
実施例3と同様にしてフィルムを得た。
【0062】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)45°、ラップ角(θ2)45°で単一のサクションロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、1.0N/mであった。
【0063】
<評価>
表1に示す通り、製品部3000mを破断すること無くを巻取ることができた。また、製品部3000mの左右切断面には、180μm以上の長さを持つ糸状欠陥は見つからなかった。
【0064】
(実施例7)
<フィルムの成形>
実施例3と同様にしてフィルムを得た。
【0065】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)45°、ラップ角(θ2)90°で単一のサクションロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、5.5N/mであった。
【0066】
<評価>
表1に示す通り、製品部3000mを、部分的に破断を生じたが巻き取ることはできた。また、製品部3000mの左右切断面には、180μm以下の長さを持つ糸状欠陥が見つかった。
【0067】
参考例8)
<フィルムの成形>
実施例3と同様にしてフィルムを得た。
【0068】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)25°、ラップ角(θ2)90°で単一のサクションロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、1.0N/mであった。
【0069】
<評価>
表1に示す通り、製品部3000mを、部分的に破断を生じたが巻き取ることはできた。また、製品部3000mの左右切断面には、180μm以下の長さを持つ糸状欠陥が見つかった。
【0070】
参考例9)
<フィルムの成形>
実施例3と同様にしてフィルムを得た。
【0071】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)45°、ラップ角(θ2)30°で単一のサクションロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、1.0N/mであった。
【0072】
<評価>
表1に示す通り、製品部3000mを、部分的に破断を生じたが巻き取ることはできた。また、製品部3000mの左右切断面には、180μm以下の長さを持つ糸状欠陥が見つかった。
【0073】
(比較例1)
<フィルム製造装置>
図1の製造装置におけるサクションロール15をフリーロール21に代えた図5に示す構成の製造装置を用いた。
【0074】
<フィルムの成形>
実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0075】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)0°、ラップ角(θ2)45°で単一のフリーロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、0.5N/mであった。
【0076】
<評価>
表1に示す通り、切断部(カッターによる切断位置)において破断を生じ巻き取ることができなかった。また、製品部の左右切断面には、180μm以上の長さを持つ糸状欠陥が見つかった。
【0077】
(比較例2)
<フィルム製造装置>
比較例1と同様に、図1の製造装置におけるサクションロール15をフリーロール21に代えた図5に示す構成の製造装置を用いた。
【0078】
<フィルムの成形>
実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0079】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)45°、ラップ角(θ2)90°で単一のフリーロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、0.5N/mであった。
【0080】
<評価>
表1に示す通り、切断部(カッターによる切断位置)において破断を生じ巻き取ることができなかった。また、製品部の左右切断面には、180μm以上の長さを持つ糸状欠陥が見つかった。
【0081】
(比較例3)
<フィルム製造装置>
比較例1と同様に、図1の製造装置におけるサクションロール15をフリーロール21に代えた図5に示す構成の製造装置を用いた。
【0082】
<フィルムの成形>
実施例2と同様にしてフィルムを得た。
【0083】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)45°、ラップ角(θ2)90°で単一のフリーロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、0.2N/mであった。
【0084】
<評価>
表1に示す通り、切断部(カッターによる切断位置)において破断を生じ巻き取ることができなかった。また、製品部の左右切断面には、180μm以上の長さを持つ糸状欠陥が見つかった。
【0085】
(比較例4)
<フィルム製造装置>
比較例1と同様に、図1の製造装置におけるサクションロール15をフリーロール21に代えた図5に示す構成の製造装置を用いた。
【0086】
<フィルムの成形>
実施例3と同様にしてフィルムを得た。
【0087】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)45°、ラップ角(θ2)90°で単一のフリーロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、0.2N/mであった。
【0088】
<評価>
表1に示す通り、切断部(カッターによる切断位置)において破断を生じ巻き取ることができなかった。また、製品部の左右切断面には、180μm以上の長さを持つ糸状欠陥が見つかった。
【0089】
(比較例5)
<フィルム製造装置>
図1の製造装置におけるサクションロール15をニップロール22(駆動ロール22a,従動ロール22b)に代えた図6に示す構成の製造装置を用いた。
【0090】
<フィルムの成形>
2種3層の多層共押出装置を使用して、両表面層を構成するポリメチルメタクリレート樹脂(住友化学社製、商品名「スミペックスHT55Z」、ガラス転移温度105℃)、中間層を構成するスチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂(ノヴァケミカルジャパン社製、商品名「ダイラークD332」、ガラス転移温度130℃)をそれぞれ押出機で溶融させ、T型ダイスからキャスティングドラム上にシート状に押出して3層構成のフィルムを得た。フィルムを構成する各層の厚みは、両表面層の厚みが45μm、中間層が45μmであり、透明フィルムの総厚は135μmであった。
【0091】
予熱区間と、4つのゾーンからなる延伸区間と、熱固定区間とを有する同時2軸延伸機を用意した。フィルムの両端を延伸クリップで把持し、予熱温度130℃、延伸温度130℃、熱固定温度120℃、フィルム搬送速度10m/分、長手方向への延伸倍率(縦延伸倍率)2.0倍、幅方向への延伸倍率(横延伸倍率)1.4倍で同時二軸延伸して、長手方向に分子が配向した厚み50μmの延伸フィルムを得た。
【0092】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)0°、ラップ角(θ2)45°でニップロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、0.2N/mであった。
【0093】
<評価>
表1に示す通り、ニップロール部において側縁部が割れて破断を生じ巻き取ることができなかった。また、製品部の左右切断面には、180μm以上の長さを持つ糸状欠陥が見つかった。
【0094】
(比較例6)
<フィルム製造装置>
比較例5と同様に、図1の製造装置におけるサクションロール15をニップロール22(駆動ロール22a,従動ロール22b)に代えた図6に示す構成の製造装置を用いた。
【0095】
<フィルムの成形>
比較例5と同様にして延伸フィルムを得た。
【0096】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)45°、ラップ角(θ2)90°でニップロールにそれぞれ抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、0.2N/mであった。
【0097】
<評価>
表1に示す通り、ニップロール部において側縁部が割れて破断を生じ巻き取ることができなかった。また、製品部の左右切断面には、180μm以上の長さを持つ糸状欠陥が見つかった。
【0098】
(比較例7)
<フィルム製造装置>
実施例1と同様に、切断装置14の下流にサクションロール15を有する図1又は図2に示す構成の製造装置を用いた。
【0099】
<フィルムの成形>
実施例3と同様にしてフィルムを得た。
【0100】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)0°、ラップ角(θ2)0°で単一のサクションロールを経て、それぞれをロール状に巻き取った。この時、製品部の巻取張力T1と、側縁部の巻取張力T2の差、ΔT=|T1−T2|は、0.2N/mであった。
【0101】
<評価>
表1に示す通り、切断部(カッターによる切断位置)において破断を生じ巻き取ることができなかった。また、製品部の左右切断面には、180μm以上の長さを持つ糸状欠陥が見つかった。
【0102】
(比較例8)
<フィルム製造装置>
図7に示すように、切断装置14の下流に側縁部を搬送する側縁部サクションロール23を設けるとともに、製品部を搬送する製品部サクションロール24を設けて、製品部と側縁部とを別々の(2本の)サクションロール23,24でそれぞれ搬送するようにした製造装置を用いた。その他の構成は図1と同様である。
【0103】
<フィルムの成形>
実施例3と同様にしてフィルムを得た。
【0104】
<フィルムの切断条件>
このフィルムをキャスティングドラムから剥離した後、フィルムの両端から125mmの位置をそれぞれシェアカッターにて切断し、製品部と側縁部に分離した。続いて製品部と側縁部を、それぞれラップ角(θ1)45°で製品部サクションロールに抱くとともに、ラップ角(θ2)45°で側縁部サクションロールに抱いて進行方向を変化させ、それぞれをロール状に巻き取った。
【0105】
<評価>
表1に示す通り、切断部(カッターによる切断位置)において破断を生じ巻き取ることができなかった。また、製品部の左右切断面には、180μm以上の長さを持つ糸状欠陥が見つかった。
【0106】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0107】
1…ホッパ、
2…押出機、
5…ダイス、
6,7,8…冷却ロール、
10,11,12…テンションロール、
13…駆動ロール、
14…切断装置、
15…サクションロール、
151…回転ロール、
151a…貫通孔、
152…吸引装置、
152a…開口、
16,18…搬送ロール、
17,19…巻取ロール、
F…フィルム基材(脆弱フィルム基材)、
F1…製品部(脆弱フィルム)、
F2…側縁部、
θ1,θ2…ラップ角、
T1,T2…巻取張力。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7