(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更して実施することができる。
[電子写真感光体]
以下、本発明の電子写真感光体について詳述する。
【0021】
<導電性支持体>
感光体に用いる導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。金属材料の導電性支持体に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のために、適当な抵抗値をもつ導電性材料を塗布したものでもよい。
【0022】
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、基体からのリークによる画像黒点やカブリを防ぐために、ブロッキング層として陽極酸化被膜を施して用いることが好ましい。陽極酸化被膜を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。
【0023】
<下引き層>
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、ブロッキング層として下引き層を設けることも好ましい。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。これらは単独として用いてもよいし、またはいくつかの樹脂、金属酸化物等の粒子を同時に用いてもよい。
【0024】
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子などが挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いても良いし、複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルックカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
【0025】
また、金属酸化物粒子の粒径としては種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径として通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下のものが望ましい。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ
プロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂などの公知のバインダー樹脂が挙げられる。これらは単独で用いても良く、或いは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示すことから好ましい。
【0026】
樹脂に対する無機粒子の使用比率は任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、通常は10質量%以上、500質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
下引き層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、電子写真感光体の電気特性、強露光特性、画像特性、繰り返し特性、及び製造時の塗布性を向上させる観点から、通常は0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.25μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは0.75μm以上である。また、通常30μm以下、好ましくは20μm以下である。下引き層には、公知の酸化防止剤等を混合しても良い。また、下引き層は、画像欠陥防止などを目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させ用いてもよい。
【0027】
<感光層>
感光層は導電性支持体上、上述の下引き層等のブロッキング層を有する場合は、その上に形成される。本発明の感光層の形式としては、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層、及び電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層を含む、二層以上の層からなる積層構造の機能分離型のもの(以下適宜、「積層型感光層」という)であり、この中でも、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける「順積層型感光層」が採用される。「順積層型感光層」はバランスの取れた光導電性を発揮することができる。
【0028】
<電荷発生層>
〈バインダー樹脂〉
本発明では、電荷発生層に用いられるバインダー樹脂として、少なくともポリビニールアセタール構造を有する樹脂と、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂の双方を含有する。具体的には、ポリビニールアセタール構造を有する樹脂と、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂とを混合して使用する。
【0029】
ポリビニルアセタール構造を有する樹脂とは、ビニルアルコールとアルデヒドとの縮合構造を有する樹脂であり、ポリビニルブチラール樹脂や、ポリビニルホルマール樹脂やブチラールの一部がホルマールやアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等を含む。例えば、積水化学工業株式会社製のエスレックBシリーズのBL-1,BL-5,BX-L,BM-1,BM-5,BH-3,BX-1,BX-5など各銘柄、同社製エスレックKシリーズのKS-1,KS-5など各銘柄、株式会社クラレ製のモビタール B16H,B30T,B45M,B60T,B60H、B60HH,B75H、LP BX860など各銘柄、ピオロフォルム BL16など各銘柄、電気化学工業株式会社製デンカブチラール #3000-1、#3000-4,#4000-2、#5000-A,#6000-C,#6000-ASなど各銘柄、など市販各社の各種のポリビニルアセタール系樹脂が使用できる。そのなかでも、アセタール構造として、アセトアルデヒドとの縮合構造、あるいは、ブチルアルデヒドとの縮合構造を有するポリビニルアセタール系樹脂が好ましく、アセトアルデヒドとの縮合構造とブチルアルデヒドとの縮合構造との双方を有することがさらに好ましい。
【0030】
また、ポリビニルアセタール構造を有する樹脂として、アセタール構造、及び残存する
水酸基についても好適な量比が存在する。前記アセトアルデヒド縮合構造、ブチルアルデヒド縮合構造などのアセタール構造がポリビニルアセタール構造を有する樹脂全体に占める割合は、少なくとも60mol%以上、好ましくは63mol%以上であり、多くとも80mol%以下、好ましくは77mol%以下である。また、残存する水酸基のポリビニルアセタール構造を有する樹脂全体に占める割合は、少なくとも17mol%以上、好ましくは20mol%以上、多くとも、40mol%以下、好ましくは37mol%以下である。アセトアルデヒド縮合構造、ブチルアルデヒド縮合構造などのアセタール構造の量比が少なすぎ、水酸基の量比が多すぎると、樹脂成分自身の溶解性が悪くなり、アセトアルデヒド縮合構造、ブチルアルデヒド縮合構造などのアセタール構造の量比が多過ぎ、水酸基の量比が少なすぎると、塗布液の安定性が悪くなる。
【0031】
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体等、が挙げられる。例えば、ダウケミカル製VMCH,VMCC,VAGH,VAGFなどの各銘柄、日信化学工業株式会社製のソルバインA、ソルバインAL、ソルバインC、ソルバインTA2、ソルバインTAO、ソルバインM5など各銘柄、など市販の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体が使用できる。特に、本発明では塩化ビニル/酢酸ビニルの重合比率が、50/50以上、95/5以下の比率の共重合体が好ましく使用される。
【0032】
また、塩化ビニルおよび酢酸ビニル以外に、第3の成分が含まれても良く、例としては、ビニルアルコール、マレイン酸、無水マレイン酸などが挙げられる。第3の成分を含む塩化ビニル−酢酸ビニル系重合体の組成例としては、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル‐ビニルアルコール‐無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸‐無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル‐ビニルアルコール‐マレイン酸−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。塩化ビニルおよび酢酸ビニル以外の第3の成分は、共重合体全体の10質量%以下の比率が好ましい。使用される塩化ビニル−酢
酸ビニル共重合体の分子量は、3000以上80000以下の範囲が好ましい。
【0033】
本発明における塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂の、ポリビニルアセタール構造を有する樹脂1質量部に対する使用割合は、0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上である。この比率があまりに小さい場合は、接着性改良の効果が十分発揮できない。一方、使用割合の最大は1.8質量部以下、好ましくは1.5質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部以下である。この比率が大きすぎると電荷発生層用塗布液の安定性が悪く、実使用上問題がある。
【0034】
電荷発生層に用いられる上記の樹脂以外の結着樹脂としては、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーの中から選択し、併用することが出来る。また、これら結着樹脂は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0035】
バインダー樹脂中、本発明のポリビニルアセタール構造を有する樹脂と、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂の合計が、少なくとも70質量%以上、好ましくは100質量%含有することが、効果を発現するうえで好ましい。
【0036】
〈電荷発生物質〉
電荷発生物質は単独として用いてもよいし、またはいくつかの染顔料との混合状態で用いてもよい。
電荷発生物質としては、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム等の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられるが、有機系光導電材料の方が好ましく、中でも特に有機顔料が好ましい。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。これらの中でも、混合状態として用いる染顔料としては、光感度の面から、特にフタロシアニン顔料またはアゾ顔料が好ましい。電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、通常はこれらの有機顔料の微粒子を、上記のバインダー樹脂で結着した分散層の形で使用する。
【0037】
電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニンおよび金属含有フタロシアニンが使用される。金属含有フタロシアニンの具体的な例としては、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各種結晶型が使用される。特に、感度の高い結晶型であるA型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のオキシチタニウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型,I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体、及び無金属フタロシアニンが好適に用いられる。
【0038】
なお、これらのフタロシアニンのうち、A型(β型)、B型(α型)、D型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が好ましい。特に、オキシチタニウムフタロシアニンとしては、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる明瞭な回折ピークを有するD型(Y型)が好ましい。
【0039】
これらの結晶型は主として、アモルファス、又は低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンから結晶変換することによって製造される。これらの結晶型は準安定型の結晶型であり、製造方法の違いにより様々な結晶型、粒子形状を示し、電荷発生能力、帯電性、暗減衰などの電子写真感光体としての特性も製造方法に依存していることが知られている。
前述のD型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニンの製造法としては、フタロシアニン結晶前駆体を化学的処理、または機械的磨砕処理によりアモルファスオキシチタニウムフタロシアニン、又は低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを得、その後に有機溶媒に接触して得られる。
【0040】
前記の化学的処理とは、溶解、反応等の化学的現象を用いてアモルファス、もしくは低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを調整する処理方法のことである。 一方、電荷発生材料としてアゾ顔料を使用する場合には、光入力用光源に対して感度を有するものであれば従前公知の各種のアゾ顔料を使用することが可能であるが、各種のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。
【0041】
電荷発生物質として、無金属フタロシアニン化合物、又は金属含有フタロシアニン化合物を用いた場合は比較的長波長のレーザー光、例えば、780nm近辺の波長を有するレーザー光に対して高感度の感光体が得られる。また、モノアゾ、ジアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料を用いた場合には、白色光、又は660nm近辺の波長を有するレーザー光、もしくは比較的短波長のレーザー光(例えば、380nm〜500nmの範囲の波長を有するレーザー光)に対して十分な感度を有する感光体を得ることができる。
【0042】
電荷発生物質として、上記例示の有機顔料を用いる場合には、1種を単独で用いてもよいが、2種類以上の顔料を混合して用いてもよい。この場合、上記のように可視域と近赤域の異なるスペクトル領域で分光感度特性を有する2種類以上の電荷発生物質を組み合わせて用いることで、可視域と近赤域の異なるスペクトル領域で分光感度特性を有することが可能となり好ましい。
【0043】
〈形成方法〉
機能分離型感光体における電荷発生層は、具体的には上述のバインダー樹脂を溶媒に溶解させ、電荷発生物質、及び上述の芳香族カルボン酸の金属錯体または金属塩を分散させて塗布液を調整し、これを導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布することにより形成される。
【0044】
バインダー樹脂を溶解させ、塗布液の作製に用いられる溶媒、分散媒としては例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状、及び環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2―ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状、及び環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられ、前述の下引き層を溶解しないものが好ましく用いられる。またこれらは単独、または2種以上を併用しても用いることが可能である。
【0045】
機能分離型感光体の電荷発生層において、前記結着樹脂と電荷発生物質との配合比(質量)は、バインダー樹脂100質量部に対して10質量部以上、好ましくは30質量部以上、1000質量部以下、好ましくは500質量部以下の範囲であり、その膜厚は通常0.1μmから10μm、好ましくは0.15μmから0.6μmである。電荷発生物質の比率が高過ぎると、電荷発生物質の凝集等により塗布液の安定性が低下する虞がある。一方、電荷発生物質の比率が低過ぎると、感光体としての感度の低下を招く虞がある。
【0046】
前記電荷発生物質を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散方法を用いることが出来る。この際粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の粒子サイズに微細化することが有効である。
【0047】
<電荷輸送層>
〈バインダー樹脂〉
電荷輸送層には、膜強度確保のためバインダー樹脂が使用される。電荷輸送層は電荷輸
送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることが出来る。
【0048】
バインダー樹脂としてポリアリレート樹脂を含有する。ここで用いられるポリアリレート樹脂としては、特に下記一般式[1]で表される繰り返し構造を含むものが好ましい。ポリアリレート樹脂は公知の方法により、例えば二価ヒドロキシアリール成分とジカルボン酸成分とにより製造することができる。
【0050】
一般式[1]中、Ar
1〜Ar
4はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。前記アリーレン基としては、特に限定はされないが、炭素数6〜20のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基が挙げられる。中でも、製造コストの面から、フェニレン基とナフチレン基が特に好ましい。また、フェニレン基とナフチレン基を比較した場合、製造コストの面に加えて合成のし易さの面で、フェニレン基がより好ましい。
【0051】
前記アリーレン基にそれぞれ独立に有していても良い置換基については特に限定されないが、例えば、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、縮合多環基、ハロゲン基を好ましく挙げることができる。感光層用バインダー樹脂としての機械的特性と感光層形成用塗布液に対する溶解性を勘案すれば、アリール基としてフェニル基、ナフチル基が好ましく、ハロゲン基としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基が好ましく、アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜2のアルキル基が特に好ましく、具体的にはメチル基が最も好ましい。Ar
1〜Ar
4それぞれの置換基の数に特に制限は無いが、3個以下であることが好ましく、2個以下であることがより好ましく、1個以下であることが特に好ましい。
【0052】
さらに、一般式[1]中、Ar
1とAr
2は同じ置換基を有する同じアリーレン基であることが好ましく、無置換のフェニレン基であることが特に好ましい。また、Ar
3とAr
4も同じアリーレン基であることが好ましく、メチル基を有するフェニレン基であることが特に好ましい。
【0053】
一般式[1]中、Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子、式[2]で表される構造、又は式[3]で表される構造を有する2価の有機残基を示す。式[2]中のR
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、若しくはアリール基、又はR
1とR
2とが結合して形成されるシクロアルキリデン基を示す。式[2]中のR
1及びR
2のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。また、式[2]中のR
1とR
2とが結合して形成されるシクロアルキリデン基としては、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基などが挙げられる。さらに、式[3]中のR
3は、アルキレン基、アリーレン基、又は式[4]で表される基であって、式[4]中のR
4及びR
5は
それぞれ独立にアルキレン基を表し、Ar
5はアリーレン基を示す。式[3]中のR
3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などが挙げられ、式[3]中のR
3のアリーレン基としては、フェニレン基、テルフェニレン基などが挙げられる。式[4]で表される基としては、具体的には下記式[6]で表される基などが挙げられる。これらのなかでも、耐磨耗性の観点から、Xは、酸素原子であることが好ましい。
【0055】
一般式[1]中、kは0〜5の整数であるが、好ましくは0〜1の整数であり、耐磨耗性の観点から1であることが最も好ましい。
一般式[1]中、Yは、単結合、硫黄原子、酸素原子、又は式[5]で表される構造を有する2価の有機残基を示す。式[5]中のR
6及びR
7は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はR
6とR
7とが結合して形成されるシクロアルキリデン基を表す。感光層用バインダー樹脂としての機械的特性と感光層形成用塗布液に対する溶解性を勘案すれば、アリール基として、フェニル基、ナフチル基が好ましく、アルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基が好ましい。また、アルキル基としては、炭素数が1〜10のアルキル基が好ましく、さらに好ましくは炭素数が1〜8であり、特に好ましくは炭素数が1〜2である。ポリアリレート樹脂を製造する際に用いる二価ヒドロキシアリール成分の製造の簡便性を勘案すれば、Yとして、単結合、−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、シクロヘキシリデンが好ましく、より好ましくは、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、シクロヘキシリデンであり、特に好ましくは−CH
2−、−CH(CH
3)−である。
【0057】
本発明においては、前記ポリアリレート樹脂として、下記一般式[7]で表される繰り返し構造を含むポリアリレート樹脂であることが好ましい。下記一般式[7]中、Ar
16〜Ar
19はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、R
8は水素原子又はアルキル基を表す。
【0059】
上記一般式[7]中、Ar
16〜Ar
19は上記Ar
1〜Ar
4にそれぞれ対応するものであり、特に好ましくは、それぞれ置換基を有していてもよいフェニレン基である。また、好ましい置換基としては、水素原子又はアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。さらに、一般式[7]中、Ar
18とAr
19はメチル基を有する同じフェニレン基であり、Ar
16とAr
17は置換基を有さないフェニレン基であることが特に好ましい。また、R
8は、水素原子又はアルキル基を表すが、該アルキル基は、好ましくは炭素数が1〜10であり、さらに好ましくは炭素数が1〜8であり、特に好ましくはメチル基である。
【0060】
上記ポリアリレート樹脂の中の二価ヒドロキシアリール残基となる二価ヒドロキシアリール成分は、下記一般式[8]で表されるが、好ましくは下記一般式[9]で表される。
【0062】
一般式[8]中のAr
3、Ar
4及びYは、既述のとおりである。
【0064】
一般式[9]中のAr
18及びAr
19は、独立に置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、R
8は水素原子又はメチル基を表す。
このなかでも、一般式[9]中のR
8が水素原子の場合には、二価ヒドロキシアリール成分の製造の簡便性を考慮すれば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)メタンが好ましく、これらの二価ヒドロキシアリール成分を複数組み合わせて用いることも可能である。
【0065】
また、一般式[9]中のR
8がメチル基の場合には、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)エ
タン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エタンが好ましく、これらの二価ヒドロキシアリール成分を複数組み合わせて用いることも可能である。
【0066】
一般式[8]に一般式[9]は含まれるが、一般式[8]で表される二価ヒドロキシアリール成分としては、製造の簡便性を考慮すれば、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、あるいは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテルが好ましく、これらの二価ヒドロキシアリール成分を複数組み合わせて用いることも可能である。
【0067】
上記ポリアリレート樹脂の中のジカルボン酸残基であるジカルボン酸成分は、下記一般式[10]で表される。
【0069】
一般式[10]中のAr
1、Ar
2、X、及びkは既述の通りであり、好ましくは下記一般式[11]で表される。
【0071】
一般式[11]中のAr
16及びAr
17も既述の通りであるが、好ましくは置換基を有していてもよいフェニレン基である。
好ましいジカルボン酸残基の具体的としては、ジフェニルエーテル−2,2'−ジカル
ボン酸残基、ジフェニルエーテル−2,3'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−
2,4'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−3,3'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−3,4'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸残基等が挙げられる。これらの中でも、ジカルボン酸成分の製造の簡便性を考慮すれば、ジフェニルエーテル−2,2'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−2,4'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸残基がより好ましく、ジ
フェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸残基が特に好ましい。
【0072】
ポリアリレート樹脂の粘度平均分子量は特に限定されないが、通常、10,000以上、好ましくは15,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、但し、通常
、300,000以下、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下である。粘度平均分子量が過度に小さいと、感光層の機械的強度が低下し実用的ではない。また、粘度平均分子量が過度に大きいと、感光層を適当な膜厚に塗布形成する事が困難である。
【0073】
バインダー樹脂としては、ポリアリレート樹脂が用いられるが、それ以外の樹脂をブレンドして用いることもできる。併用し得る樹脂の例としては、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられ、特にポリカーボネート樹脂が好ましい。これら樹脂は珪素試薬などで修飾されていてもよい。なお、これらは適当な硬化剤を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。
【0074】
〈電荷輸送物質〉
電荷輸送物質としては特に限定されず、任意の物質を用いることが可能である。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、およびこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、およびこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。
【0075】
これらの電荷輸送物質は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
電荷輸送物質の好適な具体例を以下に示す。下記の化合物において、Rは同一でも、それぞれ異なっていてもよい置換基を表す。具体的には、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アリールアルキル等が好ましい。特に好ましくは、メチル基、エチル基又はベンジル基である。また、nは0以上2以下の整数である。
【0076】
なお、以下の例示化合物は使用し得る電荷輸送物質の具体例であり、それらに限定されるものではない。
【0081】
〈形成方法〉
バインダー樹脂と電荷輸送物質の割合は、通常、バインダー樹脂100質量部に対して10質量部以上、残留電位低減の観点から30質量部以上が好ましく、さらに繰り返し使用時の安定性、電荷移動度の観点から、35質量部以上がより好ましい。また、一方で感光層の熱安定性の観点から、通常は150質量部以下、さらに電荷輸送物質とバインダー樹脂の相溶性の観点からは好ましくは120質量部以下、さらに耐刷性の観点からは100質量部以下がより好ましく、耐傷性の観点からは80質量部以下がとりわけ好ましい。
【0082】
積層型感光体の場合、電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の
観点、更には高解像度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、一方、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更に好ましくは40μm以下の範囲とする。
なお、積層型を構成する各層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させる目的で、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤などを含有させてもよい。
【0083】
酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物などが挙げられる。またレベリング剤の例としては、シリコ−ンオイル、フッ素系オイルなどが挙げられる。
【0084】
<その他の機能層>
順積層型感光体では、その最表層に、感光層の損耗を防止し、帯電器等からの発生する放電物質等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けてもよい。保護層は導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることが出来る。
【0085】
保護層に用いる導電性材料としては、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物などを用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。
保護層に用いる結着樹脂としてはポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることも出来る。
【0086】
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂等、又はこれらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含有させても良い。或いは、これらの樹脂や粒子を含む層を新たに表面層として形成しても良い。
【0087】
<各層の形成方法>
上記した感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解または分散させて得られた塗布液を、導電性支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。
【0088】
塗布液の作製に用いられる溶媒または分散媒に特に制限は無いが、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。また、これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の組み合わせおよび
種類で併用してもよい。
【0089】
溶媒または分散媒の使用量は特に制限されないが、各層の目的や選択した溶媒・分散媒の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が所望の範囲となるように適宜調整するのが好ましい。
例えば電荷輸送層の場合には、塗布液の固形分濃度を通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、また、通常40質量%以下、好ましくは35質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度を使用時の温度において通常10mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、また、通常2000mPa・s以下、好ましくは1000mPa・s以下の範囲とする。
【0090】
また、電荷発生層の場合には、塗布液の固形分濃度は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度は、使用時の温度において、通常0.1mPa・s以上、好ましくは0.5mPa・s以上、また、通常20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下の範囲とする。
【0091】
これらの感光体を構成する各層は、前記方法により得られた塗布液を、支持体上に公知の塗布方法を用い、各層ごとに塗布・乾燥工程を繰り返し、順次塗布していくことにより形成される。塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。中でも浸漬コーティング法が特に好ましい。
【0092】
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行っても良い。
【0093】
[カートリッジ、画像形成装置]
次に、本発明の電子写真感光体を用いたドラムカートリッジ、画像形成装置について、装置の一例を示す
図1に基づいて説明する。
【0094】
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置(帯電手段)2、露光装置(露光手段;像露光手段)3及び現像装置(現像手段)4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置(転写手段)5、クリーニングユニット6及び定着装置(定着手段)7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、
図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニングユニット6がそれぞれ配置されている。
【0095】
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。
図1では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。
【0096】
なお、電子写真感光体1、帯電装置2、およびクリーニングユニット6は、多くの場合、カートリッジ(本発明の電子写真感光体を含むプロセスカートリッジ。以下適宜、「プロセスカートリッジ」という)として、画像形成装置の本体から取り外し、交換可能とな
るように設計されている。例えば電子写真感光体1、帯電装置2、およびクリーニングユニット6が劣化した場合に、このプロセスカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいプロセスカートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1、帯電装置2、クリーニングユニット6、トナーが全て備えられたプロセスカートリッジを用いることもある。
【0097】
露光装置3は、電子写真感光体1に対し露光(像露光)を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED(発光ダイオード)などが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。
【0098】
現像装置4は、露光した電子写真感光体1上の静電潜像を目に見える像に現像することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式(液体現像方式)などの任意の装置を用いることができる。
図1では、乾式現像方式に関わる構成を表したものである。現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
【0099】
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルなどの金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。ただし、現像ローラ44と電子写真感光体1とは当接せず、近接していてもよい。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
【0100】
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、通常、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は0.05〜5N/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
【0101】
アジテータ42は必要に応じて設けられ、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
一方、液体現像方式に関しては、使用される液体現像剤は、炭化水素系有機溶剤のように絶縁性の高い有機溶剤中に、荷電性を付与した顔料、樹脂からなるトナーを分散したものである。液中で荷電したトナーが、現像電界に応じ電気泳動していく機構であるため、粘性を有する有機溶剤中のトナーの移動度などが関係する。一例として、濃度の低い現像液で現像を行い、続いて感光体上で余剰な現像液溶剤を近接したスクイズローラで搾り取ることで、感光体上に薄く均一で密度の高いトナー像を形成することができる。
【0102】
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙、媒体、被転写体)Pに転写するものである。
【0103】
クリーニングユニット6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニングブレード、クリーニングブラシ等で掻き落として回収容器に蓄え、残留トナーを回収するものである。クリーニングブレードは、弾性ゴム部材および支持部材からなり、当該弾性ゴム部材の感光体当接部には、必要に応じてエッジ部材を更に設けても良い。また、クリーニング性向上の観点からは、クリーニングブレードは感光体に対してカウンター当接することが好ましい。
【0104】
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、
図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス、アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
【0105】
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
【0106】
以上のように構成された電子写真装置では、感光体を帯電させる帯電工程と、帯電された感光体に対し露光を行ない静電潜像を形成する露光工程と、静電潜像をトナーで現像する現像工程と、トナーを被転写体に転写する転写工程とを行ない、画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位に帯電される(帯電工程)。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
【0107】
続いて、感光体に対して露光を行ない静電潜像を形成する(露光工程)。即ち、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。
そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう(現像工程)。現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、正極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。
【0108】
そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される(転写工程)。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニングユニット6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
【0109】
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。除電に用いる光の波長は、感光体が電荷発生する波長であれば特に制限無く、400〜800nmの任意の波長が選択でき、赤色LED、青色LED等の汎用LEDを使用することもできる。
【0110】
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
【実施例】
【0111】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の例で「部」とあるのは「質量部」を意味する。
【0112】
[実施例1]
<接着性試験用感光体サンプルの作成方法>
特開2007-148387号公報の比較合成例1と同様の方法で機械的処理によりアモルファス
化した後に溶媒に接触させ得られたCuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示し、
図2に示す粉末X線回折スペクトルを有するD型オキシチタニウムフタロシアニン10質量部を1,2−ジメトキシエタン150質量部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行い、顔料分散液を作製した。こうして得られた160質量部の顔料分散液と、ポリビニルアセタール構造を有する樹脂(電気化学工業株式会社製、商品名#6000C アセタール構造比率 66mol%、ポリビニルアルコール構造比率 30mol% 、酢酸ビニル構造 4mol%からなる)が5質量%の1,2−ジメトキシエタン溶液100質量部に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂(ダウ・ケミカル社製 商品名VAGH 塩化ビニル 90質量%、酢酸ビニル 4質量%、ビニルアルコール 6質量%からなる)1質量部を混合し、さらに適量の1,2−ジメトキシエタンを加えて、最終的に固形分濃度4.0質量%の電荷発生層形成用塗布液を作製した。
【0113】
これをアルミ基板上に膜厚が0.4μmとなるように、ワイヤバーを使用して塗布することにより電荷発生層を形成した
続いて、電荷輸送物質として下記構造式で示されるCTM(1)を40質量部、酸化防止
剤として下記式で示される酸化防止剤(1)を4質量部、下記繰り返し構造からなるポリアリレートA(PAR-A、粘度平均分子量41,000)100質量部、およびレベリング
剤としてシリコーンオイル0.05質量部を、テトラヒドロフランとトルエンとの混合溶媒(テトラヒドロフラン80質量%、トルエン20質量%)640質量部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。
【0114】
この電荷輸送層形成用塗布液を、上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が18μmとなるように浸漬塗布し、125℃で20分乾燥して接着性評価用積層型感光体サンプルを作成した。
【0115】
【化15】
【0116】
〔実施例2〕
電荷発生層形成用塗布液に使用した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂の量を2.5部とした以外は実施例1と同様にして接着性評価用積層型感光体サンプルを作成した。
【0117】
〔実施例3〕
電荷発生層形成用塗布液に使用した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂の量を0.5部とした以外は実施例1と同様にして接着性評価用積層型感光体サンプルを作成した。
【0118】
〔比較例1〕
実施例1で塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂を1部添加する代わりに、ポリビニルアセタール構造を有する樹脂を1部添加し、計6部とした以外は、実施例1と同様にして接着性評価用積層型感光体サンプルを作成した。
【0119】
〔比較例2〕
実施例2で塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂を2.5部添加する代わりに、ポリビニルアセタール構造を有する樹脂を2.5部添加し、計7.5部とした以外は、実施例1と同様にして接着性評価用積層型感光体サンプルを作成した。
【0120】
〔比較例3〕
実施例1で塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして接着性評価用積層型感光体サンプルを作成した。
【0121】
〔比較例4〕
実施例1において、ポリビニルアセタール構造を有する樹脂が5質量%の1,2−ジメトキシエタン溶液50質量部に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂を5質量部を混合し、さらに適量の1,2−ジメトキシエタンを加えて、最終的に固形分濃度4.0質量%の電荷発生層形成用塗布液を作製した以外は、実施例1と同様にして接着性評価用積層型感光体サンプルを作成した。
【0122】
〔比較例5〕
実施例1でポリビニルアセタール構造を有する樹脂を使用せず、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂のみを6質量部使用して電荷発生層形成用塗布液を作製した。しかしながら、調製後まもなく、電荷発生材料が凝集、沈降したため、接着性評価用感光体サンプルをうまく作成することが出来なかった。
【0123】
〔実施例4〜6、比較例6〕
実施例1〜3、比較例1〜5で使用した電荷輸送物質CTM(1)の代わりに、下記構造のCTM(2)を使用した以外は同様にして、ポリビニルアセタール構造を有する樹脂、及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂の比率を変えて、接着性評価用積層型感光体サンプルを作成した。
各実施例、比較例でのポリビニルアセタール構造を有する樹脂および塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂の含有量、質量比を表−1に記載した。
【0124】
【化16】
【0125】
〔実施例7〜8、比較例7〜8〕
ポリアリレートAの代わりに、下記構造のポリアリレートB(PAR-B、粘度平均分子量
40,000)を使用した以外は実施例4〜6、比較例6と同様にして、ポリビニルアセタール構造を有する樹脂、及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂の比率を変えて、接着性評価用積層型感光体サンプルを作成した。
各実施例、比較例でのポリビニルアセタール構造を有する樹脂および塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂の含有量、質量比を表−1に記載した。
【0126】
【化17】
【0127】
〔実施例9〜12〕
実施例1〜3、比較例1〜5で使用した電荷輸送物質CTM(1)の代わりに、下記構造のCTM(3)を使用した以外は同様にして、ポリビニルアセタール構造を有する樹脂、及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂の比率を変えて、接着性評価用積層型感光体サンプルを作成した。
各実施例でのポリビニルアセタール構造を有する樹脂および塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂の含有量、質量比を表−1に記載した。
【0128】
【化18】
【0129】
<接着性試験>
得られた接着性評価用サンプル上に、NTカッターを用いて、2mm間隔で縦に6本、横に6本切り込みを入れ、5×5の25マスを作製した。その上からセロテープ(登録商標)(ニチバン製)を貼り付け、接着面に対し90゜に引き上げることで、感光層の接着性を試験した。この試験を4回行い、100マス中、剥がれずに残った感光層のマス数の合計を接着率として評価した。その数字が大きいほど接着性は良好である。
【0130】
<感光体の電気特性の評価>
電子写真学会測定標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404−405頁記載)を使用し、実施例1〜3、及び比較例3で作製した感光体をアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数で回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を実施例1〜3、および比較例3で行った。
【0131】
その際、初期表面電位を−700Vとし、露光は780nm、除電は660nmの単色光を用いた。780nmの光を1.0μJ/cm
2照射した時点の表面電位(VL)を測定した。VL測定に際しては、露光−電位測定に要する時間を100msとした。測定環
境は、温度25℃、相対湿度50%下で行った。VLの値の絶対値が小さいほど電気特性が良好であることを示す。
【0132】
これらの結果を表−1に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
(表中、「PVA」はポリビニルアセタール構造を有する樹脂を、「塩ビ−酢ビ共重合体」は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂を表す。)
【0135】
上記表から、電荷発生層にポリビニルアセタール構造を有する樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体構造を有する樹脂を特定の割合で含有する場合に、接着性が良好であることがわかる。さらに、電気特性においても、ポリビニルアセタール構造を有する樹脂のみ使用した場合と比べて、同等の性能を維持する。