(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリ乳酸系樹脂(A)が、D‐乳酸とL‐乳酸との共重合体からなり、D‐乳酸とL‐乳酸のD/L比が、D/L=1/99〜10/90、または、90/10〜99/1であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリ乳酸系熱収縮性フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のポリ乳酸系熱収縮性フィルム(以下「本発明のフィルム」と称する)、該フィルムを用いた成形品(以下「本発明の成形品」と称する)、該フィルムを用いたラベル(以下「本発明のラベル」と称する)、及び、該成形品を用いたまたは該ラベルを装着した容器(以下「本発明の容器」と称する)について詳細に説明する。
なお、本明細書において、「主成分とする」とは、主成分として含有される樹脂が有する作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であって、100質量%以下の範囲を占める成分である。
【0013】
<本発明のフィルム>
本発明のフィルムは、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ポリアミド系エラストマー(B)との混合樹脂組成物を主成分としてなるフィルムである。
【0014】
<ポリ乳酸系樹脂(A)>
本発明で使用されるポリ乳酸系樹脂(A)は、D−乳酸もしくはL−乳酸の単独重合体、またはこれらの共重合体であり、具体的には構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、さらにはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリ(DL−乳酸)があり、また、D−乳酸とL−乳酸との共重合比の異なる複数の上記共重合体の混合樹脂も含まれる。
【0015】
上記L−乳酸とD−乳酸との共重合体は、D−乳酸とL−乳酸との共重合比(以下「D/L比」と略する。)が、好ましくは「1/99」〜「10/90」または「90/10」〜「99/1」であり、より好ましくは「1/99」〜「9.5/90.5」または「90.5/9.5」〜「99/1」であり、さらに好ましくは「1/99」〜「9/91」または「91/9」〜「99/1」である。
【0016】
D−乳酸の共重合比が99より高く、または1未満の場合には、高い結晶性を示し、融点も高く、耐熱性および機械的物性に優れる傾向がある。しかしながら、熱収縮性フィルムとして使用する場合は、通常、印刷および溶剤を用いた製袋工程が伴うため、印刷適性および溶剤シール性を向上させるために構成材料自体の結晶性を適度に下げることが必要となる。また、結晶性が過度に高い場合、延伸時に配向結晶化が進行し、加熱時のフィルム収縮特性が低下する傾向がある。さらに、延伸条件を調整することによって結晶化を抑えたフィルムとしても、熱収縮時に加熱により結晶化が収縮より先に進行してしまい、その結果、収縮ムラや収縮不足を生じ易くなる傾向があるため、D/L比は上記範囲に調整することが好ましい。
【0017】
一方、D−乳酸の共重合比が90未満、10より高い場合は、結晶性がほぼ完全になくなってしまうため、その結果、加熱収縮後にラベル同士がぶつかった場合に熱にて融着してしまうなどのトラブルが発生することがある。また、延伸過程において、幅方向に厚みが揃いにくい傾向や、表面の平滑性を付与しにくく、透明性を阻害する傾向があるため、D/L比は上記範囲とすることが好ましい。
【0018】
前記範囲にポリ乳酸系樹脂(A)のD−乳酸とL−乳酸との構成比を調整することにより、前記のような問題を生じにくく、収縮特性の優れた熱収縮性フィルムを得ることが可能となる。本発明のフィルムでは、D/L比が異なるポリ乳酸系樹脂を2種以上ブレンドすることも可能である。D/L比が異なるポリ乳酸系樹脂をブレンドすることによりポリ乳酸系樹脂のD/L比を比較的容易に調整できるため好ましい。この場合、複数の乳酸系重合体のD/L比を平均した値が上記範囲内に入るようにすればよい。使用用途に合わせて、D/L比の異なるポリ乳酸系樹脂を2種以上ブレンドし、結晶性を調整することにより、耐熱性と熱収縮特性のバランスをとることができる。
【0019】
また、上記ポリ乳酸系樹脂(A)は、その本質的な性質を損なわない範囲内であれば、少量の共重合成分として、乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸、テレフタル酸等の非脂肪族ジカルボン酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の非脂肪族ジオール、及びエチレングリコール等の脂肪族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。また、分子量増大を目的として、少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を使用することもできる。
【0020】
乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
また、前記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられ、前記ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール,1,4−シクロへキサンジメタノール等が挙げられる。
【0021】
乳酸と、乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸、ジオール、またはジカルボン酸との共重合体の共重合比[乳酸/(乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸、ジオール、またはジカルボン酸)]は、特に限定されないが、質量比で、好ましくは「100/0」〜「50/50」、より好ましくは「100/0」〜「60/40」、さらに好ましくは「100/0」〜「70/30」である。共重合比が上記範囲内であれば、剛性、透明性、耐衝撃性などの物性バランスの良好なフィルムを得ることができる。また、これらの共重合体の構造としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられ、いずれの構造でもよい。但し、フィルムの耐衝撃性および透明性の観点から、ブロック共重合体またはグラフト共重合体が好ましい。
【0022】
上記ポリ乳酸系樹脂(A)の重量平均分子量は、20,000以上が好ましく、より好ましくは40,000以上、さらに好ましくは60,000以上であり、上限値を考慮して、400,000以下が好ましく、より好ましくは350,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。重量平均分子量が20,000以上であれば、適度な樹脂凝集力が得られ、フィルムの強伸度が不足したり、脆化したりすることを抑えることができ、好ましい。一方、重量平均分子量が400,000以下であれば、溶融粘度を下げることができ、製造、生産性向上の観点から好ましい。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と称する)により測定することができる。
【0023】
上記ポリ乳酸系樹脂(A)の重合法としては、縮合重合法、開環重合法など、公知の方法を採用することも可能である。例えば縮合重合法であれば、D−乳酸、L−乳酸、または、これらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤などを用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合することにより任意の組成を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。上記ラクチドには、L−乳酸の二量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。
【0024】
本発明のフィルムに好ましく使用されるポリ乳酸系樹脂(A)の代表的なものとしては、Nature Works LLC社製の「Nature Works」等が商業的に入手されるものとして挙げられる。また、ポリ乳酸系樹脂とジオールとジカルボン酸とのランダム共重合体の具体例としては、例えば「GS−Pla」(三菱化学社製)が挙げられる。
【0025】
<ポリアミド系エラストマー(B)>
本発明のフィルムは、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ポリアミド系エラストマー(B)との混合樹脂組成物を主成分としてなるフィルムであって、前記ポリアミド系エラストマー(B)のハードセグメントとソフトセグメントの比率が、ハードセグメント/ソフトセグメント=10質量%/90質量%〜45質量%/55質量%であることが重要である。
【0026】
本発明のフィルムで使用されるポリアミド系エラストマー(B)は、ポリアミドを主成分とするハードセグメントと、ポリオールを主成分とするソフトセグメントとの繰り返し単位とする共重合体である。
【0027】
一般的に、ポリアミド系エラストマー(B)のハードセグメントを構成するポリアミドとしては、例えば、ジアミン成分とジカルボン酸成分から導かれるポリアミド、ラクタム類の開環重合によるポリアミド、アミノカルボン酸から導かれるポリアミド、これらの共重合ポリアミド、これらの混合ポリアミドの何れでもよい。前記ジアミン成分としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,3,4もしくは2,4,4−トリメチレンヘキサメチレンジアミン、1,3−もしくは1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノヘキシル)メタン、フェニルジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン等の脂肪族、脂環族または芳香族のジアミンが挙げられ、ジカルボン酸成分としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの脂肪族、脂環族または芳香族のジカルボン酸が挙げられる。また、前記ラクタム類としては、カプロラクタム、ラウリルラクタム等が挙げられる。また、前記アミノカルボン酸としては、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナン酸、アミノウンデカン酸、1,2−アミノドデカン酸などが挙げられる。
【0028】
本発明のフィルムで使用されるポリアミド系エラストマー(B)のハードセグメントを構成するポリアミドの主成分は、脂肪族ポリアミドおよび脂環族ポリアミドから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。前記ポリアミド系エラストマー(B)のハードセグメントを構成するポリアミドの主成分が、芳香族ポリアミドである場合、ポリアミド系エラストマーの平均屈折率が大きくなり、ポリ乳酸系樹脂(A)との屈折率差が大きくなるため、透明性の低下をもたらす恐れがある。一方、前記ポリアミド系エラストマー(B)のハードセグメントを構成するポリアミドの主成分が、脂肪族ポリアミド、及び/または、脂環族ポリアミドである場合、得られるポリアミド系エラストマーの平均屈折率をポリ乳酸系樹脂(A)に近づけることができ、透明性の観点から好ましい。
【0029】
本発明のフィルムで使用されるポリアミド系エラストマー(B)を構成するハードセグメントは、主成分である上記ポリアミド以外にも、ポリエステル、ポリオレフィン、及び、ポリウレタンなどからなる、ポリアミド以外のハードセグメントを2種以上を組み合わせてもよい。そのため、ハードセグメントと後述のポリオールを主成分とするソフトセグメントとの結合は、アミド結合の他にも、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合などから選ばれた少なくとも1種である。このため、ハードセグメントの分子末端は、ソフトセグメントの分子末端官能基と反応性を有する官能基で変性されている必要がある。これらの官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基、エポキシ基、イソシアネート基、ウレア基などがある。
【0030】
また、ポリアミド系エラストマー(B)のソフトセグメントを構成するポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び、これらの変性物が挙げられる。これらには、ポリエーテルポリオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド; ポリエーテルポリオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミドイミド; ポリエーテルポリオールのセグメントを有するポリエーテルエステル; ポリエーテルポリオールのセグメントを有するポリエーテルアミド、ポリエーテルウレタン、ポリエーテルウレア等が含まれるが、好ましくは、ポリエーテルポリオールである。
【0031】
上記ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、または、これらの共重合ポリエーテル等が挙げられる。
【0032】
上記ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環族ジカルボン酸が挙げられる。また、ジカルボン酸のエステル化合物、または、酸無水物と、ジオールとの縮合反応で得られるポリエステルポリオール、ε−カプロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンジオール等が挙げられる。なお、上記のジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジメチロールヘプタン等が挙げられ、これらは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
また、ポリエステルエーテルポリオールとして、前記脂肪族ジカルボン酸、前記芳香族ジカルボン酸、前記脂肪族ジカルボン酸、及び、そのエステル化合物、または、酸無水物と、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド付加物などのグリコール等、または、これらの混合物との縮合反応物などが挙げられる。
【0034】
また、ポリカーボネートポリオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール等の多価アルコールの1種または2種以上と、炭酸エチレン、炭酸ジエチル等を反応させて得られるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。また、ポリカプロラクトンポリオールとポリヘキサメチレンカーボネートとの共重合体であってもよい。
【0035】
本発明で使用されるポリアミド系エラストマー(B)の上記ハードセグメントと上記ソフトセグメントの比率は、ハードセグメント/ソフトセグメント=10質量%/90質量%〜45質量%/55質量%の範囲であることが重要である。上記ハードセグメントの比率の下限は、好ましくは13質量%以上、より好ましくは16質量%以上であり、上限は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。また、ソフトセグメントの比率の下限は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上であり、上限は、好ましくは87質量%以下、より好ましくは84量%以下である。前記ハードセグメントの比率を10質量%以上にすることにより、ポリアミド系エラストマーの形状保持、及び、熱可塑性エラストマーとしての疑似架橋点効果を保つことができる。また前記ソフトセグメント比率を55質量%以上にすることにより、耐破断性効果を期待することができる。また、さらに重要な点は、ソフトセグメント比率の増加に伴い、ポリアミド系エラストマー(B)の平均屈折率を低下させることが可能となり、ポリ乳酸系樹脂(A)との屈折率差が小さくなり、得られる熱収縮性フィルムにおいて、優れた透明性を示すことができる。
【0036】
本発明で使用されるポリアミド系エラストマー(B)の硬度は、シェアDで40以下、シェアAで60〜90の範囲のものが好ましく使用できる。
【0037】
本発明で使用されるポリアミド系エラストマー(B)の製造方法は、従来から使用されている公知のものがいずれも使用できる。
【0038】
本発明で使用されるポリアミド系エラストマー(B)の重量平均分子量の下限値、及び、上限値は特に限定されるものではないが、下限値としては、30,000以上が好ましく、40,000以上がより好ましく、50,000以上がさらに好ましい。また、上限値としては、1,000,000以下が好ましく、900,000以下がより好ましく、800,000以下がさらに好ましい。
【0039】
本発明で使用されるポリアミド系エラストマー(B)の溶融粘度の下限値、及び、上限値は特に限定されるものではないが、下限値として、測定温度200℃における、せん断速度100sec
−1におけるせん断の溶融粘度は、80Pa・s以上であることが好ましく、90Pa・s以上であることがより好ましく、100Pa・s以上であることがさらに好ましい。また、上限値として、300,000Pa・s以下が好ましく、200,000Pa・s以下がより好ましく、100,000Pa・s以下がさらに好ましい。
【0040】
本発明に好ましく使用されるポリアミド系エラストマー(B)の代表的なものとしては、アルケマ社製の「ペバックス」、宇部興産社製の「ウベスタXPA」、三洋化成工業社製の「ペレスタット」等が商業的に入手されるものとして挙げられる。これらのポリアミド系エラストマーは、各々単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
<混合比>
本発明のフィルムは、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ポリアミド系エラストマー(B)との混合樹脂組成物を主成分とする層における、前記ポリ乳酸系樹脂(A)と前記ポリアミド系エラストマー(B)との混合比が、(A)/(B)=98質量%/2質量%〜65質量%/35質量%であることが重要である。
ポリアミド系エラストマー(B)の混合比の下限は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、上限は、好ましくは33質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。また、ポリ乳酸系樹脂(A)の混合比の下限は、好ましくは67質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、上限は、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95量%以下である。
【0042】
前記ポリ乳酸系樹脂(A)とポリアミド系エラストマー(B)との混合樹脂組成物中のポリアミド系エラストマー(B)の混合重量比を2質量%以上にすることにより、耐破断性効果を期待することができる。また、該樹脂組成物中における前記ポリアミド系エラストマー(B)の混合重量比を35質量%以下にすることにより、フィルムの延伸性や、フィルムの腰を維持することができるため好ましい。
【0043】
<その他の成分>
本発明のフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲において、前記ポリ乳酸系樹脂(A)と、前記ポリアミド系エラストマー(B)との混合樹脂組成物以外の他の樹脂を含有することを許容することができる。他の樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂以外のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、硬質ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂を主成分とした共重合体や、コアシェル型多層構造重合体、及びこれらの変性体でも構わない。
【0044】
特に、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂やエチレン酢酸ビニル共重合体、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂は、ポリ乳酸系樹脂との相溶性に優れるため、ポリ乳酸系樹脂とブレンドすることによって収縮特性に影響を及ぼすガラス転移温度の調整や、ポリ乳酸系樹脂中に微分散されることによる更なる耐破断性の付与などに有効な樹脂となる。
上記樹脂の中でも、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とは、アクリル酸エステル単独重合体、または、メタクリル酸エステル単独重合体、または、アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体、または、メタクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体、アクリル酸エステルと他のモノマーとのコアシェル型多層構造重合体、メタクリル酸エステルと他のモノマーとのコアシェル型多層構造重合体、または、これらの変性物をいう。
【0045】
上記(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸イソブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0046】
上記その他の樹脂の含有量は、本発明のフィルム構成する樹脂組成物全体を基準(100質量%)として、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、かつ好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0047】
上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の市販品としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体の例として、「スミペックス」(住友化学社製)、「アクリペット」(三菱レイヨン社製)、「パラペット」(クラレ社製)、「アルテュグラス」(アトフィナ・ジャパン社製)、「デルペット」(旭化成ケミカルズ社製)などが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の例として、「クラリティ」(クラレ社製)、「ナノストレングス」(アルケマ社製)、「ナブスター」(カネカ社製)などが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステルのコアシェル型多層構造重合体の例として、「カネエース」(カネカ社製)、「メタブレン」(三菱レイヨン社製)などが挙げられる。
【0048】
また、本発明のフィルムには、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および多孔性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤などの添加剤が挙げられる。
【0049】
本発明のフィルムにおいて、耐衝撃性、透明性、成形加工性および熱収縮性フィルムの諸特性を向上させる目的で、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、可塑剤をさらに添加してもよい。この可塑剤としては、脂肪酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤などが挙げられる。
上記脂肪酸エステル系可塑剤の具体例としては、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(n−オクチル)アジペート、ジ(n−デシル)アジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ(n−ヘキシル)アゼレート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジ(2−エチルヘキシル)ドデカンジオネート等が挙げられる。
また、上記フタル酸エステル系可塑剤の具体例としては、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート等が挙げられる。さらに、上記トリメリット酸エステル系可塑剤の具体例としては、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート等が挙げられる。
【0050】
本発明のフィルムにおいては、フィルムの滑り性付与やブロッキング防止のため、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、非相溶性の樹脂をブレンドする手法を採ってもよく、アンチブロッキング剤をさらに添加してもよい。
前記アンチブロッキング剤を例示すると、シリカ、タルク、炭酸カルシウムなどの無機粒子、無機酸化物、炭酸塩、または、架橋アクリル系、架橋ポリエステル系、架橋ポリスチレン系、シリコーン系等の有機粒子などが挙げられる。また、多段階で重合せしめた多層構造を形成した有機粒子も用いることができる。中でも、シリカや有機粒子が好ましく用いられる。
【0051】
前記アンチブロッキング剤はフィルム表面を荒らすことにより、滑り性や耐ブロッキング性を発現させるため、適切な添加量、及び種類を選択しなければ、透明性や、フィルムの光沢を阻害してしまう。従って、上記アンチブロッキング剤の添加量は、本発明のフィルムを構成する樹脂組成物全体の質量を基準(100質量%)として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.015質量%以上、さらに好ましくは0.02質量%以上であり、かつ、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さら好ましくは1質量%以下とする。前記アンチブロッキング剤の添加量が少なすぎる(0.01質量%未満)と、フィルム表面へアンチブロッキング剤が析出しづらく、フィルム表面に凹凸を形成しづらいため、十分な滑り性や耐ブロッキング性を発現しづらい。また、逆にアンチブロッキング剤が多すぎる(2質量%超)と、フィルム表面の過剰な凹凸が生じやすく、表面荒れによる透明性の阻害や、過剰な滑り性の付与によるフィルムロールの巻きづれなどが生じやすい。
【0052】
前記アンチブロッキング剤の形状は、特に限定されるものではないが、フィルム内での凝集抑制、均一分散の観点、透過する光の乱反射抑制、及びフィルム表面に形成される凹凸の観点から球状のものが好ましく用いられる。前記アンチブロッキング剤の平均粒径は、0.5μm以上、好ましくは1μm以上であり、かつ、10μm以下、好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下であることが望ましい。前記アンチブロッキング剤の平均粒径が小さすぎる(0.5μm未満)と、表面へ析出しづらく、また、表面に析出したアンチブロッキング剤においても、滑り性や耐ブロッキング性を発現するに十分な凹凸を付与しづらい。一方、前記アンチブロッキング剤の平均粒径が大きすぎる(10μm超)と、本発明のフィルムに印刷を施し、意匠性を高める場合において、インキ抜けなどが生じやすく、印刷図柄の外観を損ねるため好ましくない。前記アンチブロッキング剤の粒径の分布は、特に制限されるものではないが、前記粒径の大小による弊害の関係より、粒径分布が狭いものの方が好ましい。粒径分布が広くなりすぎると、前述した好ましく用いられる粒径の範囲より逸脱するものが含まれる可能性があり、好ましくない。上記平均粒径及び粒径分布は、粒子径・粒度分布測定装置により測定することができる。
【0053】
<本発明のフィルムの製造方法>
本発明のフィルムは、公知の方法によって製造することができる。フィルムの形態としては平面状、チューブ状のいずれであってもよいが、生産性(原反フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能)や印刷が容易という観点から平面状が好ましい。
【0054】
本発明のフィルムの製造方法としては、例えば、押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイから押出し、冷却ロールで冷却固化し、縦方向(フィルムの流れ方向)へのロール延伸や、横方向(フィルムの流れ方向に対して垂直方向)へのテンター延伸等により、少なくとも一方向に延伸される。また、同時二軸延伸機により縦方向、横方向に同時に延伸されてもよい。さらに、チューブラー法により内圧によってチューブ状のフィルムを放射状に延伸されてもよく、チューブラー法により延伸されたチューブ状物を切り開いて平面状にする方法も挙げられる。
【0055】
上記延伸における延伸倍率は、オーバーラップ用等、二方向に収縮させる用途では、縦方向が2倍以上10倍以下、横方向が2倍以上10倍以下、好ましくは縦方向が3倍以上6倍以下、横方向が3倍以上6倍以下程度である。一方、熱収縮性ラベル用等、主として一方向に収縮させる用途では、主収縮方向に相当する方向が2倍以上10倍以下、好ましくは3倍以上8倍以下、より好ましくは3倍以上7倍以下であり、主収縮方向と直行する方向が1倍以上2倍以下(1倍とは延伸していない場合を指す。)、好ましくは、1.01倍以上1.50倍以下の、実質的には一軸延伸の範疇にある倍率比を選定することが望ましい。上記範囲内の延伸倍率で延伸したフィルムは、主収縮方向と直行する方向の熱収縮率が大きくなりすぎることなく、例えば、収縮ラベルとして容器に装着する場合にあたり、容器の高さ方向にもフィルムが熱収縮する、いわゆる縦引け現象を抑えることができるため好ましい。
【0056】
延伸温度は、用いる樹脂のガラス転移温度や熱収縮性フィルムに要求される特性によって変える必要があるが、概ね60℃以上、好ましくは70℃以上であり、上限が100℃以下、好ましくは90℃以下の範囲で制御される。
【0057】
次いで、延伸したフィルムは、必要に応じて、自然収縮率の低減や熱収縮特性の改良等を目的として、50℃以上100℃以下程度の温度で熱処理や弛緩処理を行った後、分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却され、熱収縮性フィルムとなる。
【0058】
また、本発明のフィルムは、必要に応じて、コロナ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工、さらには、各種溶剤やヒートシールによる製袋加工やミシン目加工を施すことができる。
【0059】
<熱収縮率>
本発明のフィルムは、80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が20%以上70%以下であることが重要である。
【0060】
本発明における「熱収縮率」とは、後述するように、縦方向あるいは横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表したものである。また、「主収縮方向」とは、縦方向と横方向のうち延伸方向の大きい方を意味し、例えば、ボトルに装着する場合にはその外周方向に相当する方向である。
【0061】
上記主収縮方向の熱収縮率は、ペットボトルの収縮ラベル用途等の比較的短時間(数秒〜十数秒程度)での収縮加工工程への適応性を判断する指標となる。現在、ペットボトルのラベル装着用途に工業的に最も多く用いられている収縮加工機としては、収縮加工を行う加熱媒体として水蒸気を用いる蒸気シュリンカーと一般に呼ばれているものである。さらに熱収縮性フィルムは被覆対象物への熱の影響などの点からできるだけ低い温度で十分熱収縮することが必要である。しかしながら、温度依存性が高く、温度によって極端に収縮率が異なるフィルムの場合、蒸気シュリンカー内の温度斑に対して収縮挙動の異なる部位が発生し易いため、収縮斑、皺、アバタなどが発生し収縮仕上がり外観が悪くなる傾向にある。これら工業生産性も含めた観点から、80℃温水中に10秒間浸漬させた際のフィルム主収縮方向の熱収縮率が20%以上であれば、収縮加工時間内に十分に被覆対象物に密着でき、かつ斑、皺、アバタが発生せず良好な収縮仕上がり外観を得ることができるため重要であり、80℃温水中に10秒間浸漬させた際のフィルムの主収縮方向の熱収縮率の上限は、急激なフィルムの収縮を抑制する上で、70%以下であることが重要である。
【0062】
本発明のフィルムにおいて、主収縮方向の熱収縮率を20%以上70%以下とするには、前述した本発明のフィルムの製造方法における延伸工程において、延伸速度、延伸温度、延伸倍率、さらには、熱処理や弛緩処理における、温度、時間、弛緩率等の延伸条件により調整することができる。
【0063】
また、本発明のフィルムが熱収縮性ラベルとして用いられる場合、80℃の温水中に10秒間浸漬させた際の主収縮方向と直交する方向の熱収縮率は、−10%以上10%以下(マイナスの収縮率とは、温水浸漬後においてフィルムが膨張していることを示し、一軸延伸フィルムの場合、主収縮方向と直行する方向の熱収縮率測定において観察されることがある。)であることが好ましく、−8%以上8%以下であることがより好ましく、−6%以上6%以下であることがさらに好ましい。主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が−10%以上10%以下のフィルムであれば、収縮後の主収縮方向と直交する方向の寸法変化が小さく、収縮後の印刷柄や文字の歪みや、容器に装着した場合における縦引け現象が生じにくいため好ましい。
【0064】
(透明性)
本発明のフィルムは、JIS K7136に準拠して測定したヘイズ値が10%以下であることが重要である。また、ヘイズ値は、9%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、7%以下であることがさらに好ましい。ヘイズ値が10%以下である場合、フィルムを装着した被覆体や裏面印刷の視認性を高めることができる。
なお、ヘイズ値は、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリアミド系エラストマー(B)の種類、組成、配合量として上述のものを採用すること等により調整することができる。
【0065】
(温水浸漬後の透明性)
また、本発明のフィルムは、例えば、
図1に示すような縦130mm、横170mm、幅5mmの矩形の金属枠2枚で主収縮方向のフィルムの両端部を挟持させた状態で、80℃の温水中に20分浸漬させた後のフィルムをJIS K7136にて測定した場合、ヘイズ値が18%以下であることが好ましい。また、ヘイズ値は、15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。前記温水浸漬後のフィルムのヘイズ値が18%以下であれば、フィルムを蒸気シュリンカー等により被覆体へ装着した際の印刷図柄のくすみを抑えることができる。
なお、温水浸漬後のヘイズ値は、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリアミド系エラストマー(B)の種類、組成、配合量として上述のものを採用すること等により調整することができる。
【0066】
(引張破断伸度)
本発明のフィルムにおける耐破断性は、引張破断伸度により評価できる。この引張破断伸度は、雰囲気温度23℃の引張試験において、特にラベル用途ではフィルムの引き取り(流れ)方向(MD)で伸び率が、好ましくは50%以上、より好ましくは100%以上、さらに好ましくは150%以上である。雰囲気温度23℃での引張破断伸度が50%以上あれば印刷・製袋などの工程時にフィルムが破断するなどの不具合を生じにくくなり、好ましい。また、印刷・製袋などの工程の高速化にともなってフィルムに対してかかる張力が増加するような際にも、引張破断伸度が50%以上あれば破断しづらく、好ましい。上限については特に限定されないが、現在の工程の速度を考えた場合、500%ほどあれば十分だと考えられ、伸びを付与しすぎようとするとその反面フィルムの剛性が低下してしまう傾向となる。
【0067】
(自然収縮率)
本発明のフィルムの自然収縮率はできるだけ小さい方が望ましいが、一般的に熱収縮性フィルムの自然収縮率は、例えば、30℃50%RHで30日保存後の自然収縮率は、好ましくは3.0%未満、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。上記条件下における自然収縮率が3.0%未満であれば作製したフィルムを長期保存する場合であっても容器等に安定して装着することができ、実用上問題を生じにくい。上記フィルムの自然収縮率を調整する手段としては、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリアミド系エラストマー(B)の種類、組成、配合量として上述のものを採用すること等により調整することができる。また、フィルムの熱収縮率を上述のものを採用すること等により調整することができ、延伸後における熱処理や弛緩処理等の処理条件等によっても調整可能である。
【0068】
(摩擦係数)
本発明のフィルムは、JIS K7125に準拠した静摩擦係数が0.10以上0.55以下であることが好ましく、より好ましくは0.15以上0.50以下であり、さらに好ましくは0.20以上0.45以下である。摩擦係数は印刷工程や被覆体への装着工程への適応性を判断する指標となる。一般的な印刷手法であるグラビア印刷では、多くのロールを経由し印刷される。また、被覆体への装着工程では、袋状になったロールフィルムを裁断し、袋状熱収縮性フィルムを開口し被覆体への装着が行われる。そのため、フィルムの静摩擦係数が0.55より大きい場合、印刷工程でフィルムがロールを経由する際、フィルムとロールとの摩擦により印刷の色ずれやフィルム自身の折れなどが生じやすくなる。また、装着工程における袋状フィルムの開口時においても、フィルム同士の摩擦により首尾よく開口できず、被覆体への装着に不具合が生じる場合がある。一方、フィルムの静摩擦係数が、0.10未満の場合、フィルムをロール状に巻き取った時や巻き取ったロールからフィルムを繰り出す時にロール上でフィルムが滑り、フィルムが巻きずれやすく、各工程での不具合が生じやすい。
【0069】
<本発明のフィルムの層構成>
本発明のフィルムは、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ポリアミド系エラストマー(B)との混合樹脂組成物を主成分としてなる層(以下、該層を(I)層という)を少なくとも1層有していればよく、単層構成であってもよく、積層構成であってもよい。またさらに、滑り性、耐熱性、耐溶剤性、易接着性、ガスバリア、水蒸気バリア性等の機能特性を付与する目的や更なる耐破断性の向上や更なる収縮仕上がり性の付与、低コスト化等の目的で、他の層をさらに積層してもよい。例えば、前記(I)層とは組成や添加剤の異なる層(II)層や(III)層を積層した、(I)/(II)構成、(I)/(II)/(I)構成、(II)/(I)/(II)構成、(I)/(II)/(III)構成、(II)/(I)/(III)構成などの層構成を備えた積層フィルムの例が挙げられる。この場合、各層の積層比は用途、目的に応じて適宜調整することができる。また、上記積層体を形成する方法としては、共押出法、ラミネート法等により他の層を積層させてもよく、表面処理、印刷、コーティング、蒸着等により他の層を積層させてもよい。
【0070】
本発明のフィルムの総厚みは、単層であっても積層であっても、特に限定されるものではないが、透明性、収縮加工性、原料コスト等の観点からは薄い方が好ましい。具体的には、延伸後のフィルムの総厚みは100μm以下が好ましく、より好ましくは80μm以下であり、さらに好ましくは60μm以下である。また、フィルムの総厚みの下限は特に限定されないが、フィルムのハンドリング性を考慮すると、10μm程度であることが好ましい。
【0071】
<本発明の成形品、本発明のラベル、及び本発明の容器>
本発明のフィルムは、被包装物によって平面状から円筒状等に加工し包装に供することができる。ペットボトル等の円筒状の容器で印刷を要するものの場合、まずロールに巻き取られた広幅のフラットフィルムの一面に必要な画像を印刷し、そしてこれを必要な幅にカットしつつ印刷面が内側になるように折り畳んでセンターシール(シール部の形状はいわゆる封筒貼り)して円筒状とすれば良い。センターシール方法としては、有機溶剤による接着方法、ヒートシールによる方法、接着剤による方法、インパルスシーラーによる方法が考えられる。この中でも、生産性、見栄えの観点から有機溶剤による接着方法が好適に使用される。
【0072】
本発明の成形品は、前記本発明のフィルムを基材として用いた成形品に関し、また、本発明のラベルは、前記本発明のフィルムを基材として用いた熱収縮性ラベルに関する。また、本発明の容器は、前記成形品を用いた、または熱収縮性ラベルを装着した容器に関する。
すなわち、本発明のフィルムは、フィルムの耐破断性、熱収縮特性、収縮仕上がり性、透明性等に優れているため、その用途が特に制限されるものではないが、これを基材として、必要に応じて印刷層、蒸着層、その他機能層を積層して形成することにより、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品として用いることができる。
【0073】
特に発明のフィルムを食品容器(例えば、清涼飲料水用または食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用熱収縮性ラベルとして用いる場合、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗なラベルが装着された容器が得られる。この発明の成形品および容器は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
【0074】
また、本発明のフィルムは、優れた低温収縮性、収縮仕上り性を有するため、高温に加熱すると変形を生じるようなプラスチック成形品の熱収縮性ラベル素材のほか、熱膨張率や吸水性等がこの発明の熱収縮性フィルムとは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を構成素材として用いたプラスチック包装体(容器)の熱収縮性ラベル素材として好適に利用できる。
【0075】
上記プラスチック包装体を構成する材質としては、上記の樹脂の他、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、(メタ)アクリル酸−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらのプラスチック包装体は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
【実施例】
【0076】
以下に本発明のフィルムについて、実施例を用いて説明する。
なお、実施例に示す測定値および評価は次のように行った。実施例では、フィルムの引き取り(流れ)方向を「縦」方向(または「MD」)、その直角方向を「横」方向(または「TD」)と記載する。
【0077】
(1)熱収縮率
得られた熱収縮性フィルムを縦100mm、横100mmの大きさに切り取り、80℃の温水バスに10秒間それぞれ浸漬し、収縮量を測定した。熱収縮率は、横方向(TD)について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
【0078】
(2)引張破断伸度
得られた熱収縮性フィルムを主収縮方向と直交する方向(縦方向、MD)に110mm、主収縮方向に15mmの大きさに切り出し、JIS K7127に準拠し、引張速度200mm/minで、雰囲気温度23℃におけるフィルムの主収縮方向と直交する方向(縦方向、MD)での引張破断伸度を測定し、10回の測定値の平均値を測定し、下記基準にて判断した。
○:引張破断伸度が50%以上である場合
×:引張破断伸度が50%未満である場合
【0079】
(3)ヘイズ値
得られたフィルムの透明性を評価するため、JIS K7136にてヘイズ値を測定し、下記基準にて判断した。
○:ヘイズ値が10%以下の場合
×:ヘイズ値が10%を超える場合
【0080】
(4)温水浸漬後のヘイズ値
得られたフィルムを被覆体へ装着したときの視認性を評価するため、
図1に示すような、縦130mm、横170mm、幅5mmの矩形の金属枠2枚で主収縮方向のフィルムの両端部を挟持させた状態で80℃の温水中に20分間浸漬させた後、JIS K7136にてヘイズ値を測定し、下記基準にて判断した。
◎:温水浸漬後のヘイズ値が10%以下の場合
○:温水浸漬後のヘイズ値が18%以下の場合
×:温水浸漬後のヘイズ値が18%を超える場合
【0081】
また、各実施例、比較例で使用した原材料は、下記の通りである。
(ポリ乳酸系樹脂(A))
・Nature WorksLLC社製、商品名:NatureWorks4060D、D体/L体量=12/88、「A−1」と略する。
・Nature WorksLLC社製、商品名:NatureWorks4043D、D体/L体量=4.25/93.75、「A−2」と略する。
・Nature WorksLLC社製、商品名:NatureWorks4032D、D体/L体量=1.2/98.8、「A−3」と略する。
【0082】
(ポリアミド系エラストマー(B))
・ポリアミド系エラストマー「B−1」;ハードセグメント:12ナイロン、ソフトセグメント:ポリテトラメチレングリコール、融点(ASTM D3418):134℃、融解熱(ASTM D3417):1.2Cal/g、MFR(測定温度235℃、測定荷重1kg):10g/10分、ハードセグメント/ソフトセグメント比率=20質量%/80質量%
・ポリアミド系エラストマー「B−2」;ハードセグメント:12ナイロン、ソフトセグメント:ポリテトラメチレングリコール、融点(ASTM D3418):144℃、融解熱(ASTM D3417):2.6Cal/g、MFR(測定温度235℃、測定荷重1kg):8g/10分、ハードセグメント/ソフトセグメント比率=27質量%/73質量%
・ポリアミド系エラストマー「B−3」;ハードセグメント:12ナイロン、ソフトセグメント:ポリテトラメチレングリコール、融点(ASTM D3418):160℃、融解熱(ASTM D3417):5.7Cal/g、MFR(測定温度235℃、測定荷重1kg):5g/10分、ハードセグメント/ソフトセグメント比率=50質量%/50質量%
【0083】
(コアシェル型ゴム(C))
・カネカ社製、商品名:カネエースFM40、「C−1」と略する。
【0084】
(実施例1)
ポリ乳酸系樹脂(A−1)を47.5質量%、ポリ乳酸系樹脂(A−2)を47.5質量%、ポリアミド系エラストマー(B−1)を5質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、50℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み200μmの未延伸シートを得た。次いで、この未延伸シートを、予熱温度82℃、延伸温度82℃、熱処理温度84℃に設定したフィルムテンター(京都機械社製)を用いて、未延伸シートの幅方向に5倍延伸した。テンターの各ゾーンの通過時間は、予熱ゾーン6秒、延伸12秒、熱処理18秒であった。得られた延伸フィルムの評価結果を表1にまとめた。
【0085】
(実施例2)
ポリ乳酸系樹脂(A−1)を45質量%、ポリ乳酸系樹脂(A−2)を45質量%、ポリアミド系エラストマー(B−1)を10質量%の割合で配合した以外は実施例1と同様の手法により、延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの評価結果を表1にまとめた。
【0086】
(実施例3)
ポリ乳酸系樹脂(A−2)を75質量%、ポリアミド系エラストマー(B−1)を25質量%の割合で配合した以外は実施例1と同様の手法により、延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの評価結果を表1にまとめた。
【0087】
(実施例4)
ポリ乳酸系樹脂(A−3)を75質量%、ポリアミド系エラストマー(B−1)を25質量%の割合で配合した以外は、実施例1と同様の手法により、延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの評価結果を表1にまとめた。
【0088】
(実施例5)
ポリ乳酸系樹脂(A−1)を45質量%、ポリ乳酸系樹脂(A−2)を45質量%、ポリアミド系エラストマー(B−2)を10質量%の割合で配合した以外は、実施例1と同様の手法により、延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの評価結果を表1にまとめた。
【0089】
(比較例1)
ポリ乳酸系樹脂(A−1)を50質量%、ポリ乳酸系樹脂(A−2)を50質量%の割合で配合し、ポリアミド系エラストマーを用いなかった以外は、実施例1と同様の手法により、延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの評価結果を表1にまとめた。
【0090】
(比較例2)
ポリ乳酸系樹脂(A−1)を30質量%、ポリ乳酸系樹脂(A−2)を30質量%、ポリアミド系エラストマー(B−1)を40質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、50℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み200μmの未延伸シートを得た。次いで、この未延伸シートを、予熱温度82℃、延伸温度82℃、熱処理温度84℃に設定したフィルムテンター(京都機械社製)を用いて、未延伸シートの幅方向に5倍延伸しようとしたところ、延伸ゾーンにて千切れるように破断した。そのため、評価は行わなかった。
【0091】
(比較例3)
ポリ乳酸系樹脂(A−1)を20質量%、ポリ乳酸系樹脂(A−2)を20質量%、ポリアミド系エラストマー(B−1)を60質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、50℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み200μmの未延伸シートを得た。次いで、この未延伸シートを、予熱温度82℃、延伸温度82℃、熱処理温度84℃に設定したフィルムテンター(京都機械社製)を用いて、未延伸シートの幅方向に5倍延伸しようとしたところ、延伸ゾーンにて千切れるように破断した。そのため、評価は行わなかった。
【0092】
(比較例4)
ポリ乳酸系樹脂(A−1)を45質量%、ポリ乳酸系樹脂(A−2)を45質量%、ポリアミド系エラストマー(B−3)を10質量%の割合で配合した以外は、実施例1と同様の手法により、延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの評価結果を表1にまとめた。
【0093】
(参考例1)
ポリ乳酸系樹脂(A−1)を45質量%、ポリ乳酸系樹脂(A−2)を45質量%、コアシェル型ゴム(C−1)を10質量%の割合で配合した以外は、実施例1と同様の手法により、延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの評価結果を表1にまとめた。
【0094】
(表1)
【0095】
実施例1〜5で得られたフィルムは、フィルムの外観も良好で、ヘイズ値から見られる透明性も良好であった。また、フィルムのMDの引張破断伸度も熱収縮性フィルムとしての要求品質を満たす良好な値を示した。また、熱収縮性フィルムとして十分な収縮率を有するフィルムであることが分かる。さらに、驚くべきことに、温水浸漬後のヘイズ値が非常に小さく、熱収縮性ラベルとして、非常に良好な特性を示すことが明らかとなった。一方、比較例1では、本発明の規定するポリアミド系エラストマーが含まれていないため、フィルムのMDの引張破断伸度が非常に低く、求められる耐破断性を得るのに十分ではない。また、比較例2、3では、ポリ乳酸系樹脂とポリアミド系エラストマーの混合比が本発明の規定する範囲から逸脱しているため、未延伸シートの弾性率が低下し、延伸性を担保することができなかった。さらに比較例4では、用いるポリアミド系エラストマーを構成するハードセグメントとソフトセグメントの比率が、本発明の規定する規定の範囲より外れるため、透明性を著しく悪化しており、求められるフィルムの透明性を得るのに十分ではない。
【0096】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う熱収縮性フィルム、該フィルムを用いた成形品および熱収縮性ラベル、並びに、該成形品およびラベルを装着してなる容器もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。