(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一の照射手段及び前記第二の照射手段の少なくとも一方は、異なる方向に指向性を有する光を照射する2以上の光源を含むことを特徴とする、請求項1に記載のモールドの製造方法。
前記第一の照射手段及び前記第二の照射手段の少なくとも一方は、異なる方向に指向性を有する光を照射する2以上の光源を含むことを特徴とする、請求項5に記載のモールドの検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のモールドの検査方法およびモールドの製造方法、ならびに微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
<検査装置>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るモールドの検査装置の側面図を示し、
図2は正面図を示している。
図1および
図2に示すように、第1実施形態の検査装置は、ロール状(すなわち、円柱状)のモールド100(以下、ロール状のモールドを単にロールと示す)を回転させる回転手段(図示せず)と、ロール100にライン状に光を照射するライン状照明装置20a、20b、21(照射手段)と、照射手段から照射され、ロール100の表面で反射した光を撮像するラインCCDカメラ10(撮像手段)と、ラインCCDカメラ10からの信号を処理する画像処理装置30(画像処理手段)と、ロール100と、ラインCCDカメラ10とを、ロール100の長手方向(軸方向)に沿って相対的に移動させる移動手段(図示せず)と、を有する。なお、本発明の実施形態に係る検査装置は、後述する微細凹凸構造が形成されたロール状のモールドを検査するだけでなく、陽極酸化する前のロール状のモールド原型についても検査することができる。本発明においては、これらのロール状のモールドおよびロール状のモールド原型について、まとめて単にロール、と称する場合がある。また、本発明において、円柱状とは、外形が円柱形状であることを意味し、中空円柱状やその他類似の形状についても、円柱状に含まれるものとする。
【0024】
(照射手段)
本発明においては、照射手段は2以上の複数の光源を有する。2以上の複数の光源は、指向性の異なる光を照射する光源を含むもので構成される。好ましくは、照射手段は異なる3方向の指向性を有する光源から構成される。以下、本発明の好適な実施形態における照射手段について、図を参照にしながら説明する。ライン状照明装置(すなわち光源)20a、20b、21は、照射範囲が直線状の指向性を有する照射光を照射する装置である。
図1および
図2に示すように、ライン状照明装置20a、20b、21は、ロール100への照射光の照射範囲の長手方向がロール100の周方向に直交するように配置される。
また、照射範囲にあるロール100の表面(接平面)の法線Nに対して、ライン状照明装置20aの光軸の角度θ
2が35°、ライン状照明装置20bの光軸の角度θ
3が55°、ライン状照明装置21の光軸の角度θ
4が70°となるように配置されることが好ましい。
図1および
図2におけるライン状照明装置20a、20bは同じものであり、
図2におけるロール100の軸方向に対する照射方向の傾きが、逆になるように設置している。
【0025】
図3は、ライン状照明装置20を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
同図に示すように、ライン状照明装置20は装置に対して傾斜した方向に照射光を照射する。すなわち、ライン状照明装置20から照射される照射光は、
図3(b)に示すように、側方から見た場合は照射方向が真っ直ぐであるが、
図3(a)に示すように、正面から見た場合は照射方向が装置の軸方向(
図3(a)の上下方向)に対して角度θ
5だけ傾斜している。
照射方向の角度θ
5は45°が好ましい。
【0026】
ライン状照明装置20としては、正面から見た照射方向が装置の軸方向に対して角度θ
5だけ傾斜するように光源がライン状に配置された光ファイバ照明、LED照明等を用いることができる。また、正面から見た照射光の照射方向が角度θ
5だけ傾斜していなくても、装置全体を傾けることで照射光の照射方向を傾けてもよい。ライン状照明装置21は正面から見た照射方向が真っ直ぐに照射される照明である。
【0027】
(撮像手段)
ラインCCDカメラ10は、複数のCCD素子が1次元に(すなわち、直線状に)配置されたカメラであり、ライン状照明装置20a、20b、21から照射され、ロール100の表面で反射した光をCCD素子で受光し、画素ごとに256階調の輝度データを含んだ画像データを出力する。
【0028】
ラインCCDカメラ10は、撮像範囲の長手方向がロール100の周方向に直交するように(すなわち軸方向に一致するように)配置されている。これにより、ラインCCDカメラ10は軸方向に延びる画像を撮像する。なお、ラインCCDカメラ10により一度に撮像された画像を1ライン分の画像という。
また、ラインCCDカメラ10は、撮像範囲にあるロール100の表面(接平面)の法線Nに対して、ラインCCDカメラ10の光軸Lの角度θ
1が20°となるように配置されることが好ましい。
【0029】
撮像手段は、照射手段によりロール100に照射され、ロール100で反射された光を受光できるように配置されていればよい。なお、ロール100の照射手段から照射された照射光が入射する位置における法線Nに対して、側面視において、撮像手段の光軸と、照射手段の光軸とが、非対称となるように撮像手段及び照射手段を配置することが好ましい。これにより、撮像手段によりロール100の表面での反射光を暗視野で撮像することができる。
【0030】
本実施形態では、回転手段によりロール100を中心軸周りに回転させながら、ラインCCDカメラ10によりロール100一周分の反射光を撮像する。これにより、ラインCCDカメラ10はロール100一周分の複数ラインの画像データを撮像することとなる。
また、異なる工程でのロールの撮影においても、毎回ロールの同じ場所から撮影する必要があるため、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造に影響しない位置に設けた基点(図示せず)を基準に、同じ位置からロール100一周分を撮影するようにしている。ラインCCDカメラ10により撮像された画像データは画像処理装置30へと送られる。
【0031】
(画像処理手段)
画像処理装置30は、ラインCCDカメラ10から送信されたロール100外周を撮影した画像データや欠陥候補を検出するための閾値等を記憶する記憶部と、画像データから欠陥候補を検出する画像処理部と、CCDカメラ等と各判定部等との間を電気的に接続するインターフェイス部等を備える。
【0032】
なお、画像処理部等は、専用のハードウエアにより実現されるものであってもよく、メモリおよび中央演算装置(CPU)によって構成され、画像処理部等の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによって、その機能を実現させるものであってもよい。
また、画像処理装置には、周辺機器として、ディスプレイタッチパネル、スイッチパネル、キーボード等の入力装置や、CRT、液晶表示装置等の表示装置等が接続される。
【0033】
(移動手段)
移動手段(図示略)は、ロール100の外周全面を撮像するために、ロール100と、ラインCCDカメラ10とを、ロール100の中心軸に沿って長手方向に沿って相対的に平行移動させるものである。
【0034】
なお、移動手段はロール100を固定し、ラインCCDカメラ10をロール100の長手方向に沿って平行移動させるものであってもよいし、ラインCCDカメラ10を固定し、ロール100をラインCCDカメラ10の撮像範囲の長手方向に沿って平行移動させるものであってもよい。また、ライン状照明装置20a、20b、21の照射範囲がロール100の長手方向の全幅を照らせない場合、ライン状照明装置20a、20b、21もラインCCDカメラ10と同様に、ロール100の長手方向に沿って相対的に平行移動させるようにしてもよい。
【0035】
<モールドの検査方法>
モールドの検査は撮影した画像データに基づいて行う。具体的には、下記の工程(i)〜(vi)を順に行うことによりモールドの良否判定を行う。
【0036】
工程(i):第一の撮像工程
陽極酸化工程前に上記検査装置にて第一の照明手段から光を照射し、ロール1周分の画像データを撮影する。
【0037】
工程(ii):微細凹凸形成工程
ロールを陽極酸化することによって、微細凹凸構造を有する陽極酸化アルミナを表面に形成したモールドを製造する。必要に応じて、前記モールド表面に、離型が容易になるように離型処理を施す。
【0038】
工程(iii):第二の撮像工程
上記検査装置にて第二の照明手段から光を照射し工程(ii)で製造したモールドの1周分の画像データを撮影する。
【0039】
工程(iv):欠陥候補画像抽出工程
工程(iii)で撮影したモールドの1周分の画像から欠陥候補画像を抽出する。欠陥候補の検出は画像を人が見て目視で検出してもよいが、好ましくは、予め閾値を決めておき、閾値を越える画素値でさらにある一定の画素数分まとまっていれば欠陥候補として自動抽出する。
【0040】
工程(v):比較画像抽出工程
工程(iv)で検出した欠陥候補画像と同じ位置の画像を、工程(i)の第一の撮像工程にて撮影した画像から抽出する。
【0041】
工程(vi):モールド良否判定工程
工程(iv)の欠陥候補画像と工程(v)の比較画像を人が見て、共通して欠陥が写っていれば後工程で問題となるNG欠陥と判断し、欠陥候補画像には写っているが比較画像には写っていない場合は、後工程には影響しない埃や付着物等と判断する。
NG欠陥があらかじめ決めた個数や位置にあれば、そのモールドは不良品と判定する。
また、比較画像にも欠陥があるかの判断は上記では人が目視で実施するようにしているが、欠陥候補を自動検出する際と同様に、あらかじめ閾値を決めておき、比較画像にて、その閾値を越える画素値でさらにある一定の画素数分まとまっていれば欠陥があるという自動で判断する方法でもよい。
【0042】
また上記NG欠陥の判断方法では、工程(ii)から工程(iii)の間で新たに発生した欠陥を見逃す可能性があるが、実績として工程(ii)から工程(iii)の間で発生した欠陥は無く、工程(ii)から工程(iii)の間で欠陥が発生するとしたら、ハンドリングミス等による接触の傷があるが、そのような欠陥はサイズが大きく工程(vi)のモールド良否判定工程の際の欠陥候補画像と比較画像の確認の際に、容易に判断できるため、検出漏れが発生しにくい。
【0043】
なお、本発明のモールドの検査方法は、ロール表面に光を照射する照射手段と、照射手段から照射され、鏡面切削した部材の表面で反射した光を撮像する撮像手段と、撮像手段によって撮像された画像に基づいて、モールドの良否を判定する工程とを有するものであればよく、
図1〜
図3に示す第1の実施形態のものに限定はされない。なお、上述の工程では、第一の撮像工程で用いられる照明を第一の照明手段、第二の撮像工程で用いられる照明を第二の照明手段としているが、第一の照明手段と第二の照明手段は同じであっても良く、異なっていても良い。しかしながら、画像を比較するためには、なるべく同じ条件で撮像を行うことが好ましいことから、第一の照明手段と第二の照明手段とは同じであることが好ましい。
【0044】
図4は、第2の実施形態の検査装置を示した側面図であり、
図5は正面図である。
図4では、
図1に示す検査装置にてライン状照明装置20aと20bを
図6に示すライン状照明装置22に置き換えたものである。
ライン状照明装置22は
図1に示すように照射範囲にあるロール100の表面(接平面)の法線Nに対して、ライン状照明装置22の光軸の角度θ
6が45°となるように配置されることが好ましい。
【0045】
図6は(a)は正面図、(b)は側面図であり、同図に示すように照射方向が正面視において角度θ
7、θ
8の2方向あるような照明である。
照射方向の角度θ
7、θ
8は45°が好ましい。
上記ライン状照明装置22を用いることにより、検査装置のコンパクト化や照射手段の配置の自由度を上げることが可能となる。
【0046】
また、照射手段は、図示例のライン状照明装置20a、20b、21に限定されず、スポット状照明装置、レーザー照明等であってもよい。また、照明装置に、反射板、シリンドリカルレンズ、集光レンズ等の補助部材を組み合わせてもよい。
【0047】
また、撮像手段は、図示例のラインCCDカメラ10に限定はされず、イメージCCDカメラであってもよく、反射強度を測定する光検出器であってもよい。
【0048】
また、ロール100の長さがラインCCDカメラ10の撮像範囲内に収まっている場合は、前記移動手段を省略してもいい。
また、ライン状照明装置20a、20b、21、及びラインCCDカメラ10をロール100の長手方向に複数台並べて一度に外周全面を撮像する構成としてもよい。
【0049】
また、画像処理装置30においては、画像信号からモールドの欠陥を判別できれば特に限定されず、画像信号は256階調であってもよく、512階調であってもよく、1024階調であってもよく、アナログ信号であってもよい。
【0050】
上述の方法では、ロール100の外周全面分の画像を一度に処理しているが、画像が大きくて処理に負荷がかかる場合は、複数の小領域に分けて処理してもよい。また、外周全面分を撮像するのではなく、一部分の撮像画像にてモールドの良否を判定してもよい。
【0051】
本実施形態のモールドの検査方法によれば、モールドの欠陥を簡易に検査することができる。
【0052】
<モールドの製造方法>
次に本実施形態の微細凹凸構造を表面に有するモールドの製造方法について説明する。
本実施形態のモールドの製造方法は、アルミロール(モールド母材)の表面を鏡面化する工程(鏡面加工工程)と、鏡面加工後にアルミロール(モールド母材)を撮像する工程(第一の撮像工程)と、鏡面化したアルミロール表面を陽極酸化することによって、微細凹凸構造が形成された陽極酸化アルミナを表面に有するモールドを得る工程(陽極酸化工程)と、陽極酸化工程後にモールドを撮像する工程(第二の撮像工程)と、第一と第二の撮像工程から得られた画像からモールドを検査する工程(検査工程)と、必要に応じてモールドを修復する工程(修復工程)とを含む。
以下、モールドの製造方法の一例ついて説明する。
【0053】
(鏡面加工工程)
鏡面切削もしくは鏡面研磨等の鏡面加工により、ロール外周面を鏡面化する。
【0054】
(第一の撮像工程)
鏡面加工後のロールについて、
図1に示した検査装置によって、外周面をラインCCDカメラ10にて撮像し、外周1周分の画像データを取得する。
【0055】
(陽極酸化工程)
陽極酸化工程は、下記の工程(a)〜(f)を順に行う工程であることが好ましい。
第1の酸化皮膜形成工程(a):
鏡面化されたアルミニウム基材の表面を電解液中、定電圧下で陽極酸化して、表面に酸化皮膜を形成する(以下、工程(a)とも記す。)。
酸化皮膜除去工程(b):
酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点をアルミニウム基材の表面に形成する(以下、工程(b)とも記す。)。
第2の酸化皮膜形成工程(c):
細孔発生点が形成されたアルミニウム基材の表面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化して、細孔発生点に対応した細孔を有する酸化皮膜を表面に形成する(以下、工程(c)とも記す。)。
孔径拡大処理工程(d):
細孔の径を拡大させる(以下、工程(d)とも記す。)。
酸化皮膜成長工程(e):
細孔の径が拡大された酸化皮膜を有するアルミニウム基材の表面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化する(以下、工程(e)とも記す。)。
繰り返し工程(f):
必要に応じて、孔径拡大処理工程(d)と酸化皮膜成長工程(e)とを繰り返し行う(以下、工程(f)とも記す。)。
【0056】
工程(a)〜(f)を有する方法によれば、鏡面化されたアルミニウム基材の表面に、開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパ形状の細孔が周期的に形成され、その結果、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたモールドを得ることができる。
【0057】
工程(a)の前に、アルミニウム基材の表面の酸化皮膜を除去する前処理を行ってもよい。酸化皮膜を除去する方法としてはクロム酸/リン酸混合液に浸漬する方法等が挙げられる。
また、細孔の配列の規則性はやや低下するが、モールドの表面を転写した材料の用途によっては工程(a)を行わず、工程(c)から行ってもよい。
【0058】
(第二の撮像工程)
得られたモールドについて、
図1に示した検査装置によって、外周面をラインCCDカメラ10にて撮像し、外周1周分の画像データを取得する。
【0059】
(検査工程)
第一と第二の撮像工程から得られた画像から、画像処理装置30にて、欠陥候補画像と比較画像を抽出し、モールドの良否を判定し、良品であれば次の工程へと進める。
【0060】
(修復工程)
不良品であれば、鏡面加工工程もしくは陽極酸化工程を再度実施する。モールドの修復後、再度検査工程を実施し、モールドが良品となるまで修復工程と検査工程を繰り返し実施する。
【0061】
モールドの形状は、平板でもあってもよく、ロール状であってもよい。
モールドの微細凹凸構造が形成された表面は、離型が容易になるように、離型処理が施されていてもよい。
離型処理の方法としては、例えば、シリコーン系ポリマーやフッ素ポリマーをコーティングする方法、フッ素化合物を蒸着する方法、フッ素系またはフッ素シリコーン系のシラン化合物をコーティングする方法等が挙げられる。
【0062】
以上説明した本発明の、モールドの製造方法にあっては、本発明のモールドの検査方法によって、欠陥を検査する工程を有するため、欠陥の抑えられたモールドを安定して製造できる。
【0063】
なお、本発明のモールドの製造方法は、本発明によるモールドの検査方法を含めばよく、上記の実施形態に限定されない。
【0064】
例えば、鏡面加工工程の前に第一の撮像工程としてロール外周面の撮影を実施し、鏡面加工工程の後に第二の撮像工程としてロール外周面の撮影を実施し、その後検査工程と修復工程を実施し、鏡面加工後のロールの検査として同様の検査工程を実施してもよい。また、鏡面加工工程の後に検査工程と修復工程を実施し、さらに陽極酸化工程の後に検査工程と修復工程を実施する形態としても良い。
【0065】
<微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法>
以下、本実施形態の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法について説明する。本実施形態では、表面に微細凹凸構造を有するシートを製造する場合について説明する。
図7は、本実施形態の表面に微細凹凸構造を有するシートを製造する際に用いられる製造装置を示す図である。同図に示すように製造装置は、表面に微細凹凸構造を有するロール状モールド101と、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給するタンク50と、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をロール状モールド101に押し付ける押圧装置51と、ニップロール52と、活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射装置53と、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をロール状モールド101から剥離させる剥離ロール54と、を備える。
【0066】
ロール状モールド101は上述したモールドの製造方法により製造した微細凹凸構造を表面に有する部材である。
タンク50は、フィルム42とロール状モールド101との間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給する。
【0067】
活性エネルギー線照射装置53としては、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化が進行するエネルギー量であればよく、通常、100〜10000mJ/cm
2程度である。
【0068】
押圧装置51は、例えば、空気圧シリンダからなり、シリンダの先端にニップロール52が取り付けられている。押圧装置51が伸張することにより、ニップロール52が活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をロール状モールド101に押し付ける。
【0069】
以下、上記の製造装置により、表面に微細凹凸構造を有する部材を製造する方法について説明する。
図7に示すように、フィルム送り装置(不図示)により、無色透明のフィルム42が、ニップロール52とロール状モールド101との間に送られている。このフィルム42上面に、タンク50により活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給する。
【0070】
フィルム42上面に供給された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物50は、押圧装置51のニップロール52と、ロール状モールド101との間に送られる。押圧装置51が伸張することにより、ニップロール52によりフィルム42および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をロール状モールド101に向けて接触させ、押し付ける。これにより、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、フィルム42とロール状モールド101との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド101の微細凹凸構造の凹部内に充填される。
【0071】
次に、ロール状モールド101の下方に設置された活性エネルギー線照射装置53により、フィルム42を透過させ、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射する。これにより、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化され、ロール状モールド101の表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層44が形成される。
次に、剥離ロール54により、表面に硬化樹脂層44が形成されたフィルム42をロール状モールド101から剥離する。これにより、フィルム42の表面に微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層44が設けられたシート状の光学フィルム40を得ることができる。
【0072】
本実施形態の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法によれば、上述したモールドの検査方法により、欠陥の抑えられた微細凹凸構造を表面に有する部材をロール状モールド101として製造することができるため、欠陥の転写が抑えられた微細凹凸構造を表面に有する物品を安定して製造できる。
【0073】
なお、本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、上述した検査方法を用いて製造したモールドを用いていればよく、上記の方法に限定されるものではない。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
(鏡面加工工程)
アルミニウム基材として、純度99.996%のアルミニウムインゴットを、外径200mm、長さ320mmに切断して製造した圧延痕のない円筒状のアルミニウム部材に対して、表面を鏡面研磨により鏡面化し、ロールaを得た。
【0076】
(第一の撮像工程)
表面を鏡面化したロールaにて
図1に示す検査装置を用いて外周面の撮像し、外周1周分の画像データを取得した。ライン状照明装置20a、20bとしては、メック社製のハロゲン光源ELI-150NXとライトガイドPLT400+30D-1000-T0502を用いた。ライン状照明装置21としては、モリテックス社製LED集光バー照明MLNX-CW240-DF(電源:MLEK-A230W1LR-100V)を用いた。
ラインCCDカメラ10としては、エクセル社製のTI5150DCLにVST社製のレンズVS−L5028/Fを取り付けたものを用いた。
画像処理装置30としては、Matrox社製のMIL9を用いた。
【0077】
ラインCCDカメラ10(撮像手段)及びライン状照明装置20(照射手段)の配置は、ロール100の表面の撮像範囲の部分の法線Nに対してθ
1=20°、θ
2=35°、θ
3=55°、θ
4=70°とした。また、
図2に示すライン状照明装置20(照射手段)の照射方向の角度θ
5は45°とした。
ロール100とラインCCDカメラ10との距離は約200mm、ロール100とライン状照明装置20a、20bとの距離は約70mm、ロール100とライン状照明装置21との距離は約150mmとした。
【0078】
(陽極酸化工程)
工程(a):
ロールaについて、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流:40V、温度:16℃の条件で30分間陽極酸化を行った。
工程(b):
厚さ約3μmの酸化皮膜が形成されたロールaを、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に浸漬して、酸化皮膜を除去した。
工程(c):
ロールaについて、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流:40V、温度:16℃の条件で45秒間陽極酸化を行った。
工程(d):
酸化皮膜が形成されたロールaを、30℃の5質量%リン酸水溶液に9分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
細孔の径が拡大された酸化被膜を有するロールaを、再度0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流:40V、温度:16℃の条件で45秒間陽極酸化を行った。
工程(f):
前記工程(d)および工程(e)を合計で4回繰り返して、設計上では平均ピッチ:100nm、深さ:200nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール状のモールドaを得た。
【0079】
(第二の撮像工程)
得られたモールドaについて、
図1に示した検査装置によって、外周面をラインCCDカメラ10にて撮像し、外周1周分の画像データを取得した。
【0080】
(検査工程)
第二の撮像工程から得られた画像から、画像処理装置30にて欠陥候補画像を抽出した。ここでは閾値を48とし、画素値が48を越えるもので20画素以上まとまってあるものを欠陥候補として自動抽出した。第一の撮像工程から得られた画像から、前記欠陥候補画像と同じ位置の比較画像を抽出した。
図8は欠陥候補画像とそれと対応する比較画像を上下に並べて出力した画像の一部である。
【0081】
次に抽出された複数の欠陥候補画像と比較画像から、目視にて欠陥候補画像と比較画像に共通して欠陥があるか確認を実施し、その結果4点NG欠陥が見つかった。
図8において、欠陥候補2が欠陥候補画像と比較画像に共通して欠陥が存在するためNG欠陥である。
図8の他の3点の欠陥候補は比較画像には欠陥は存在しないため後工程で取れてなくなる問題とならない埃や付着物等と判断した。
【0082】
通常であれば、上記検査工程にてNG欠陥が存在したため不良品と判定し、修復工程を実施するが、モールドaに関しては、本発明におけるモールドの検査方法の妥当性を確認するため、修復工程は実施せずに
図7に示した製造装置にて、ロール状モールド101をモールドaとし、微細凹凸構造を表面に有する物品を製造した。
製造した微細凹凸構造を表面に有する物品を目視にて検査した結果、上記検査工程にてモールドaにてNG欠陥と判定していた位置と対応するシート上の位置に、視認される欠陥があることを確認した。
【0083】
次にモールドaに対して修復工程を実施した。具体的にはモールドaを洗浄し、その後鏡面研磨工程および陽極酸化工程を実施し、モールドbを作製した。またモールドbにて本発明のモールドの検査方法を実施し、NG欠陥が無い事を確認した上で、
図7に示した製造装置にて、ロール状モールド101をモールドbとし、微細凹凸構造を表面に有する物品を製造した。
製造した微細凹凸構造を表面に有する物品を目視にて検査した結果、モールド起因による外観欠陥が無いことを確認した。