(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
テトラフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンの少なくとも一方に基づく構成単位(a)と、水酸基を有するモノマーに基づく構成単位(b)と、他のモノマーに基づく構成単位(c)とを含有し、
前記構成単位(a)と、前記構成単位(b)と、前記構成単位(c)との合計モル量に対して、前記構成単位(a)が45〜70モル%で、前記構成単位(b)が0.05〜1.5モル%で、前記構成単位(c)が28.5〜54.95モル%であり、
前記構成単位(b)が、CH2=CH−(CH2)n−O−R1(ただし、nは0〜6の整数であり、R1は、水酸基を1〜3個有し、炭素原子間にエーテル結合性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基である。)に基づく構成単位(b1)を含み、
融点が200〜270℃であり、
297℃、荷重68.6Nの条件下での容量流速が、0.1〜500mm3/秒であることを特徴とする、含フッ素共重合体。
前記構成単位(a)と前記構成単位(c1)との合計モル量に対して、前記構成単位(a)が50〜80モル%で、前記構成単位(c1)が20〜50モル%である、請求項2に記載の含フッ素共重合体。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書における「構成単位」とは、モノマーが重合することによって形成された該モノマーに基づく単位を意味する。構成単位は、重合反応によって直接形成された単位であっても、重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
「モノマー」とは、重合性不飽和結合、すなわち重合反応性の炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。「含フッ素モノマー」とは、分子内にフッ素原子を有するモノマーを意味する。
本明細書における「成形物」には、立体的な成形物のみならず、塗膜、フィルム等の平面的な成形物も含まれる。
【0009】
<含フッ素共重合体>
本発明の含フッ素共重合体は、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」ともいう。)およびクロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」ともいう。)の少なくとも一方に基づく構成単位(a)と、水酸基を有するモノマーに基づく構成単位(b)と、他のモノマー(上記TFE、CTFEおよび水酸基を有するモノマーのいずれにも該当しないモノマー。)に基づく構成単位(c)とを含有する。
【0010】
(構成単位(a))
構成単位(a)は、TFEおよびCTFEの少なくとも一方に基づく。
構成単位(a)を含有する含フッ素共重合体は、耐熱性、耐薬品性等に優れる。TFEおよびCTFEは、いずれか一方を単独で用いても、両方を併用してもよい。構成単位(a)は、TFEに基づく単位を有することが好ましい。TFEは、含フッ素共重合体を重合する際の共重合性に優れる。
【0011】
(構成単位(b))
構成単位(b)は、水酸基を有するモノマー(以下、「モノマー(b)」ともいう。)に基づく。
構成単位(b)を有する含フッ素共重合体は、構成単位(b)が水酸基を有することに起因して、基材等の他材料との接着性に優れるとともに、発泡、着色等の外観不良の抑制された外観に優れる塗膜等の成形物を製造できる。
モノマー(b)は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0012】
本発明の含フッ素共重合体は、水酸基を有するモノマーに基づく構成単位(b)を有するために、他材料との接着性に優れる。従来、接着性を付与する構成単位を形成するモノマーとしては、酸無水物残基を有するモノマーやカルボキシ基を有するモノマーが知られている。しかしながら、これらのモノマーに基づく構成単位を有する含フッ素共重合体を用いて成形物を製造した場合、該成形物には外観不良が生じやすい傾向にあった。これに対して、水酸基を有するモノマーに基づく構成単位(b)を有する本発明の含フッ素共重合体によれば、外観に優れる成形物を製造できる。その理由は以下のように考えられる。
構成単位(b)を形成するモノマー(b)は、酸無水物残基を有するモノマーやカルボキシ基を有するモノマーと比較して、フッ素原子を有するTFEおよびCTFEとの共重合性に優れる。そのため、本発明の含フッ素共重合体の製造時には、モノマー(b)はTFEおよびCTFEの少なくとも一方と共重合しやすく、モノマー(b)同士が重合したオリゴマーは副生しにくい。オリゴマーは、含フッ素共重合体を用いて塗膜等の成形物を製造する過程の熱により、発泡したり着色したりして、外観に悪影響を及ぼす。構成単位(b)を有する含フッ素共重合体は、モノマー(b)同士が重合して副生したオリゴマーの含有量が少ないため、発泡、着色等が抑制され、外観に優れる成形物を製造できるものと考えられる。
【0013】
構成単位(b)は、他材料への接着性の点から、水酸基を1〜3個有し、重合性不飽和結合を1個有するモノマーに基づく単位であることが好ましい。該モノマーは、含フッ素共重合体を重合する際の共重合性、後述する含フッ素系の重合媒体への溶解性にも優れる。
構成単位(b)は、フッ素原子等のハロゲン原子を有していてもよいが、他材料への接着性の点から、水酸基を有し、ハロゲン原子を有しないモノマーに基づく単位であることが好ましい。
また、構成単位(b)は、本発明の含フッ素共重合体から製造された成形物の外観がより優れる点から、水酸基を有し、酸無水物残基およびカルボキシ基のいずれも有しないモノマーに基づく単位であることが好ましい。
【0014】
構成単位(b)は、CH
2=CH−(CH
2)
n−O−R
1に基づく構成単位(b1)を含むことが好ましく、該構成単位(b1)からなることが特に好ましい。
ただし、上記式中、nは0〜6の整数であり、R
1は、水酸基を1〜3個有し、炭素原子間にエーテル結合性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基である。R
1は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
上記式中、nは、共重合性の点から、0または1が好ましい。R
1の炭素数は、共重合性の点から2〜6が好ましく、3〜5がより好ましい。R
1の水酸基の数は、他材料への接着性の点から、1個または2個が好ましく、1個がより好ましい。
【0015】
構成単位(b1)を形成するモノマーとしては、下記のモノマーが挙げられる。
CH
2=CH−O−CH
2CH
2−OH、
CH
2=CH−O−CH
2CH
2CH
2−OH、
CH
2=CH−O−CH
2CH(CH
3)−OH、
CH
2=CH−O−CH
2C(CH
3)(OH)CH
3、
CH
2=CH−O−CH
2CH
2CH
2CH
2−OH、
CH
2=CH−O−CH
2CH(CH
3)CH
2−OH、
CH
2=CH−O−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−OH、
CH
2=CH−O−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−OH、
CH
2=CH−O−CH
2CH
2−O−CH
2CH
2−OH、
CH
2=CH−CH
2−O−CH
2CH
2−OH、
CH
2=CH−CH
2−O−CH
2CH
2CH
2CH
2−OH、
CH
2=CH−CH
2−O−CH
2CH(OH)−CH
2−OH、
CH
2=CH−CH
2−O−CH
2CH(OH)−CH
3、
CH
2=CH−CH
2−O−CH
2CH(OH)−CH
2CH
3。
【0016】
なかでも構成単位(b1)を形成するモノマーとしては、CH
2=CH−O−CH
2CH
2CH
2CH
2−OH(4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(以下、「HBVE」ともいう。)。)が好ましい。
【0017】
(構成単位(c))
構成単位(c)は、他のモノマー(以下、「モノマー(c)」ともいう。)に基づく。モノマー(c)は、上述の構成単位(a)を形成するモノマー(TFEおよびCTFE)および構成単位(b)を形成するモノマー(b)のいずれにも該当しないモノマーである。
モノマー(c)は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0018】
構成単位(c)は、酸無水物残基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有するモノマーに基づく構成単位を含んでいてもよい。しかしながら、本発明の含フッ素共重合体から製造された成形物の外観がより優れる点から、酸無水物残基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有するモノマーに基づく構成単位の割合は、構成単位(a)と、構成単位(b)と、構成単位(c)との合計モル量(100モル%)に対して、3モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましく、0モル%であること(すなわち、構成単位(c)が、酸無水物残基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有するモノマーに基づく構成単位を含まないこと。)が特に好ましい。
また、酸無水物残基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有するモノマーは、固体であることが多く、その場合、溶媒に溶解させてから使用する必要等が生じ、含フッ素共重合体の生産プロセスの工程が増加する。
【0019】
構成単位(c)としては、フッ素原子を有しないオレフィンに基づく構成単位、含フッ素モノマーに基づく構成単位が好ましい。
【0020】
構成単位(c)がフッ素原子を有しないオレフィンに基づく構成単位を含む場合、含フッ素共重合体の耐熱性や耐薬品性を維持する点から、該構成単位は、炭素数が5以下のオレフィンに基づく構成単位であることが好ましい。
フッ素原子を有しない炭素数が5以下のオレフィンとしては、CH
2=CH
2、CH
2=CH(CH
3)、CH
2=CH−CH
2CH
3、CH(CH
3)=CH(CH
3)、CH
2=CHCl、CH
2=CCl
2等が挙げられる。
他材料との接着性により優れる含フッ素共重合体が得られる点、塗膜等の成形物の形成に適した融点の含フッ素共重合体が得られやすい点で、構成単位(c)としては、CH
2=CH
2(エチレン)に基づく構成単位(c1)を少なくとも含むことが好ましい。
【0021】
構成単位(c)が含フッ素モノマーに基づく構成単位を含む場合、含フッ素モノマーとしては、CH
2=CHF、CH
2=CF
2、CF
2=CCl
2、CF
2=CF(CF
3)、CH
2=CZ
1(CF
2)
mZ
2(ただし、Z
1は水素原子またはフッ素原子、Z
2は水素原子、フッ素原子または塩素原子、mは1〜10の整数である。)、CF
2=CF−ORf
1(ただし、Rf
1は炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である。)、CF
2=CF−O−CH
2−Rf
2(ただし、Rf
2は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)等が挙げられる。
【0022】
構成単位(c)は、エチレンに基づく構成単位(c1)と、上記含フッ素モノマーに基づく構成単位とからなることが好ましい。含フッ素モノマーに基づく構成単位は、塗膜等の成形物の形成に適した融点の含フッ素共重合体が得られやすい点で、CH
2=CZ
1(CF
2)
mZ
2に基づく構成単位(c2)であることが好ましい。Z
2は、水素原子またはフッ素原子が好ましい。mは、工業的生産性の点で、2〜10の整数が好ましく、2〜6の整数がより好ましい。
【0023】
構成単位(c2)を形成するモノマーとしては、下記のモノマーが挙げられる。
CH
2=CF(CF
2)
2F、CH
2=CF(CF
2)
3F、CH
2=CF(CF
2)
4F、CH
2=CF(CF
2)
5F、CH
2=CF(CF
2)
6F、CH
2=CF(CF
2)
7F、CH
2=CF(CF
2)
8F、CH
2=CF(CF
2)
9F、CH
2=CF(CF
2)
10F。
【0024】
CH
2=CF(CF
2)
2H、CH
2=CF(CF
2)
3H、CH
2=CF(CF
2)
4H、CH
2=CF(CF
2)
5H、CH
2=CF(CF
2)
6H、CH
2=CF(CF
2)
7H、CH
2=CF(CF
2)
8H、CH
2=CF(CF
2)
9H、CH
2=CF(CF
2)
10H。
【0025】
CH
2=CH(CF
2)
2F、CH
2=CH(CF
2)
3F、CH
2=CH(CF
2)
4F、CH
2=CH(CF
2)
5F、CH
2=CH(CF
2)
6F、CH
2=CH(CF
2)
7F、CH
2=CH(CF
2)
8F、CH
2=CH(CF
2)
9F、CH
2=CH(CF
2)
10F。
【0026】
CH
2=CH(CF
2)
2H、CH
2=CH(CF
2)
3H、CH
2=CH(CF
2)
4H、CH
2=CH(CF
2)
5H、CH
2=CH(CF
2)
6H、CH
2=CH(CF
2)
7H、CH
2=CH(CF
2)
8H、CH
2=CH(CF
2)
9H、CH
2=CH(CF
2)
10H。
【0027】
構成単位(c2)を形成するモノマーとしては、エチレンに基づく構成単位(c1)と併用することにより、機械特性に優れる含フッ素共重合体が得られる点で、CH
2=CH(CF
2)
4Fが特に好ましい。
【0028】
(各構成単位の割合)
本発明の含フッ素共重合体における各構成単位の割合は、構成単位(a)と、構成単位(b)と、構成単位(c)との合計モル量(100モル%)に対して、構成単位(a)は30〜97モル%で、構成単位(b)は0.05〜2モル%で、構成単位(c)は1〜69.95モル%である。構成単位(a)と、構成単位(b)と、構成単位(c)との合計モル量に対して、構成単位(a)は40〜80モル%で、構成単位(b)は0.05〜1.8モル%で、構成単位(c)は18.2〜59.95モル%であることが好ましく、構成単位(a)は45〜70モル%で、構成単位(b)は0.05〜1.5モル%で、構成単位(c)は28.5〜54.95モル%であることが特に好ましい。
【0029】
各構成単位の割合が上記範囲内であれば、含フッ素共重合体の耐熱性、耐薬品性、他材料との接着性が優れるとともに、含フッ素共重合体を用いて製造される塗膜等の成形物は、発泡、着色等が抑制され外観に優れる。
構成単位(a)の割合が上記範囲の下限値未満であれば、含フッ素共重合体の耐熱性、耐薬品性等が低下する。構成単位(a)の割合が上記範囲の上限値を超えると、他材料との接着性、成形性が低下する。構成単位(b)の割合が上記範囲の下限値未満であれば、含フッ素共重合体の他材料に対する接着性が不充分となる。構成単位(b)の割合が上記範囲の上限値を超えると、含フッ素共重合体を用いて製造される塗膜等の成形物に、発泡、着色等の外観不良が生じる傾向にある。
【0030】
構成単位(c)がエチレンに基づく構成単位(c1)を含む場合、構成単位(a)と構成単位(c1)との合計モル量(100モル%)に対して、構成単位(a)が20〜80モル%で、構成単位(c1)が20〜80モル%であることが好ましく、構成単位(a)が40〜70モル%で、構成単位(c1)が30〜60モル%であることがより好ましく、構成単位(a)が50〜60モル%で、構成単位(c1)が40〜50モル%であることが特に好ましい。構成単位(a)と構成単位(c1)との割合が上記範囲内であれば、含フッ素共重合体は、他材料との接着性、成形性、耐薬品性、耐熱性等の特性がバランスよく優れる。
【0031】
構成単位(c)が、CH
2=CZ
1(CF
2)
mZ
2に基づく構成単位(c2)を含む場合、構成単位(a)と、構成単位(b)と、構成単位(c)との合計モル量(100モル%)に対して、構成単位(c2)は0.1〜10モル%であることが好ましく、0.5〜5モル%であることがより好ましく、0.7〜3.5モル%であることが特に好ましい。構成単位(c2)の割合が上記範囲の下限値以上であれば、含フッ素共重合体は、柔軟性に優れ、たとえば塗膜を形成した場合に、塗膜のクラックを抑制できる。上記範囲の上限値以下であれば、含フッ素共重合体の耐薬品性、強度等が優れる。
【0032】
含フッ素共重合体における各構成単位の割合は、赤外吸収スペクトル法により求められる。
【0033】
(含フッ素共重合体の容量流速および融点)
本発明の含フッ素共重合体は、容量流速(以下、「Q値」ともいう。)が0.1〜500mm
3/秒であり、溶融成形が可能である。含フッ素共重合体のQ値は1〜200mm
3/秒がより好ましく、5〜100mm
3/秒が特に好ましい。
Q値が上記範囲の下限値未満であると、含フッ素共重合体を用いて製造された塗膜等の成形物の表面の平滑性が低下する。Q値が上記範囲の上限値を超えると、含フッ素共重合体の機械的強度が低下する。
【0034】
なお、Q値は、含フッ素共重合体の溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。Q値が大きいほど分子量が低く、小さいほど分子量が高いことを示す。
本明細書において、Q値は、島津製作所製「フローテスタ(商品名)」を用いて、温度297℃、荷重68.6N(=7kgf)の条件で、直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に含フッ素共重合体を押し出すときの押出し速度(mm
3/秒)である。
【0035】
本発明の含フッ素共重合体は、融点が150℃以上である。融点の上限は280℃が好ましい。含フッ素共重合体の融点は、200〜270℃がより好ましく、240〜265℃が特に好ましい。
含フッ素共重合体の融点が上記範囲の下限値未満であると、含フッ素共重合体の耐熱性が劣り、上記範囲の上限値以下であると、含フッ素共重合体の成形性に優れる。
【0036】
本明細書において、融点は、日立ハイテクサイエンス社製の走査型示差熱分析器「DSC7020(商品名)」を用いて、空気雰囲気下、10℃/分で昇温し、含フッ素共重合体を加熱した際の吸熱ピークに対応する温度である。
【0037】
含フッ素共重合体の容量流速(分子量)は、含フッ素共重合体を製造する際の連鎖移動剤の量を調整する方法等で制御できる。
含フッ素共重合体の融点は、含フッ素共重合体の分子量の影響を受けるため、容量流速と同様に、含フッ素共重合体を製造する際の連鎖移動剤の量を調整する方法、使用するモノマーの種類、割合を調整する方法等で制御できる。
【0038】
(含フッ素共重合体の製造方法)
本発明の含フッ素共重合体は、ラジカル重合開始剤を用い、TFEおよびCTFEの少なくとも一方と、モノマー(b)と、モノマー(c)とを重合する方法で製造することが好ましい。
重合形態としては、塊状重合、溶液重合が挙げられ、溶液重合が好ましい。
重合は、通常、ラジカル重合開始剤と、連鎖移動剤と、重合媒体の存在下で行う。
【0039】
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である分解温度が0〜100℃のラジカル重合開始剤が好ましく、20〜90℃のラジカル重合開始剤がより好ましい。
具体的には、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル等。)、非フッ素系ジアシルペルオキシド(イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等。)、ペルオキシジカーボネート(ジイソプロピルペルオキシジカ−ボネート等。)、ペルオキシエステル(tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等。)、含フッ素ジアシルペルオキシド((Z
3(CF
2)
pCOO)
2(ただし、Z
3は水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、pは1〜10の整数である。)で表される化合物等。)、無機過酸化物(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等。)等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤は、1種単独で用いても2種以上を用いてもよい。
【0040】
連鎖移動剤は、分子量を制御するために用いる。
具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボンが挙げられる。
また、連鎖移動剤として、エステル基、カルボニル基、水酸基、カルボキシル基、カルボニルフルオリド基等の官能基を有する特定の連鎖移動剤を用い、含フッ素共重合体の末端に、ポリアミド等との接着性に優れる高分子末端基を導入してもよい。このような連鎖移動剤としては、酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
連鎖移動剤は、1種単独で用いても2種以上を用いてもよい。
【0041】
連鎖移動剤の使用量は、含フッ素共重合体の製造に用いる後述の重合媒体(100質量%)に対して、0.50〜5.5質量%が好ましく、0.54〜3質量%がより好ましく、0.55〜2質量%が特に好ましい。連鎖移動剤の使用量が上記範囲の上限値以下であると、分子量が低下しすぎず、分子量が適度で、含フッ素共重合体の機械的強度が優れる。上記範囲の下限値以上であると、含フッ素共重合体を用いて製造された塗膜等の成形物の表面の平滑性が優れる。
【0042】
重合媒体としては、ペルフルオロカーボン類(以下、「PFC」ともいう。)、ヒドロフルオカーボン類(以下、「HFC」ともいう。)およびヒドロフルオロアルキルエーテル類(以下、「HFE」ともいう。)からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。これらの重合媒体は、塩素原子を有しておらず、環境保全の側面で優れる。溶液重合の場合、重合媒体は、連鎖移動係数の小さな化合物が好ましい。
重合媒体は、1種単独で用いても2種以上を用いてもよい。
【0043】
PFCとしては、n−ペルフルオロヘキサン、n−ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロベンゼン等が挙げられる。
HFCとしては、CF
3CFHCF
2CF
2CF
3、CF
3(CF
2)
4H、CF
3CF
2CFHCF
2CF
3、CF
3CFHCFHCF
2CF
3、CF
2HCFHCF
2CF
2CF
3、CF
3(CF
2)
5H、CF
3CH(CF
3)CF
2CF
2CF
3、CF
3CF(CF
3)CFHCF
2CF
3、CF
3CF(CF
3)CFHCFHCF
3、CF
3CH(CF
3)CFHCF
2CF
3、CF
3CF
2CH
2CH
3、CF
3(CF
2)
3CH
2CH
3等が挙げられる。
HFEとしては、CF
3CH
2OCF
2CF
2H、CF
3(CF
3)
2CFCF
2OCH
3、CF
3(CF
2)
3OCH
3等が挙げられる。
【0044】
重合媒体としては、HFC、HFEが好ましく、CF
3(CF
2)
5H、CF
3CH
2OCF
2CF
2H、CF
3(CF
2)
3CH
2CH
3がより好ましく、CF
3(CF
2)
5H、CF
3CH
2OCF
2CF
2Hが特に好ましい。
【0045】
重合媒体の沸点は、30〜150℃が好ましく、30〜120℃がより好ましい。重合媒体の沸点が上記上限値以下であると、未反応のモノマー混合ガスと重合媒体とを分離できる。上記下限値以上であると、重合媒体の回収を短時間で行うことができ、生産性に優れる。重合媒体は、室温で液体であることが好ましい。
【0046】
各モノマーは、重合槽に一括で仕込んでもよく、連続的または断続的に仕込んでもよい。反応系内のモノマーの濃度を一定にして、生成する含フッ素共重合体の組成を均一化させる点からは、モノマーを連続的に添加して連続的に反応させることが好ましい。
重合温度は、0℃〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。
重合圧力は、0.1〜10MPaG(ゲージ圧)が好ましく、0.5〜3MPaG(ゲージ圧)がより好ましい。
重合時間は、1〜30時間が好ましい。
【0047】
<含フッ素共重合体からなる粉体および含フッ素共重合体組成物>
上述のようにして製造された含フッ素共重合体を必要に応じて造粒、乾燥した後、ハンマーミル、ターボミル、ジェットミル等の粉砕機で粉砕することにより、含フッ素共重合体からなる粉体が得られる。溶液重合により含フッ素共重合体を得た場合は、得られたスラリーを噴霧する噴霧乾燥法により、重合媒体を蒸発除去させてもよい。
粉体は、必要に応じて篩等を用いた分級を経たものであってもよい。
【0048】
本発明の粉体は単独で、または、後述のように熱安定剤等と混合した含フッ素共重合体組成物の形態で、粉体塗料として好適に使用でき、たとえば静電塗装法、回転成形法等により、他材料からなる基材(被塗装物)上に塗膜を形成できる。静電塗装法、回転成形法等の粉体塗装によれば、押出成形、射出成形等の方法では製造しにくい異型形状の容器、タンク、配管、継ぎ手等の物品(塗装物品)を容易に製造できる。
また、本発明の粉体は単独で、または、上述した含フッ素共重合体組成物の形態で、押出成形法、射出成形法等に用い、成形物を製造してもよい。なお、押出成形、射出成形等の成形法においては、使用する含フッ素共重合体は粉体である必要はなく、たとえばペレット状等であってもよい。
【0049】
基材としては、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、錫、チタン、クロム、ニッケル、亜鉛等の金属、ガラス、セラミックス等の無機物等が挙げられる。なかでも、本発明の粉体または含フッ素共重合体組成物は、金属への接着性に優れ、特に鉄、ステンレス鋼、アルミニウムへの接着性に特に優れる。
【0050】
含フッ素共重合体からなる粉体の平均粒子径は、該粉体の用途に応じて調整される。含フッ素共重合体からなる粉体を粉体塗料に用いる場合には、塗装対象である基材の大きさ、塗装方法等により適宜選定されるが、0.01〜1000μmが好ましく、0.1〜800μmがより好ましく、1〜500μmが特に好ましい。
静電塗装法を採用する場合には、含フッ素共重合体からなる粉体の平均粒子径は0.5〜300μmが好ましく、1〜200μmがより好ましい。回転成形法を採用する場合には、含フッ素共重合体からなる粉体の平均粒子径は1〜500μmが好ましく、5〜300μmがより好ましい。
【0051】
本明細書において、粉体の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される50%体積平均粒子径を意味する。
【0052】
本発明の含フッ素共重合体組成物は、本発明の含フッ素共重合体からなる粉体を少なくとも含有し、さらに熱安定剤を含有することが好ましい。熱安定剤を含有する含フッ素共重合体組成物を粉体塗料として用い、静電塗装法、回転成形法等により他材料からなる基材上に塗膜を形成したり、押出成形法、射出成形法等により、成形物を基材上に設けたりした場合、基材と成形物の接着性がより優れる。
【0053】
本発明の含フッ素共重合体組成物が熱安定剤を含有することにより、基材と塗膜等の成形物との接着性がより優れる理由については必ずしも明確ではないが、以下のように推定される。
すなわち、熱安定剤を含むことによって含フッ素共重合体の熱安定性がより良好になり、それにより、塗装工程や溶融成形工程の熱による含フッ素共重合体の劣化および収縮が防止され、基材と塗膜等の成形物との接着性が高まると考えられる。
また、高温での含フッ素共重合体の安定性が向上することから、塗装工程や溶融成形工程の温度をより高温に設定でき、それにより、基材と成形物とが充分に接着するものと考えられる。
【0054】
熱安定剤としては、たとえば、銅化合物、錫化合物、鉄化合物、鉛化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物およびバリウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
熱安定剤の具体例としては、酸化銅、ヨウ化銅、アルミナ、硫酸錫、硫酸ゲルマニウム、塩基性硫酸鉛、亜硫酸錫、燐酸バリウム、ピロリン酸錫等が挙げられる。なかでも、酸化銅、ヨウ化銅、アルミナ、硫酸錫、塩基性硫酸鉛、亜硫酸錫、ピロリン酸錫が好ましく、酸化銅、ヨウ化銅が特に好ましい。
熱安定剤は、1種単独で用いても2種以上を用いてもよい。
【0055】
本発明の含フッ素共重合体組成物は、本発明の含フッ素共重合体からなる粉体および熱安定剤に加えて、用途、目的に応じて、各種の添加剤、フィラー、合成樹脂(本発明の含フッ素共重合体を除く。)の粉体等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0056】
本発明の含フッ素共重合体組成物における本発明の含フッ素共重合体からなる粉体の含有量は、含フッ素共重合体組成物の全量に対して、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
本発明の含フッ素共重合体組成物における熱安定剤の含有量は、含フッ素共重合体組成物の全量に対して、1×10
−8〜5質量%が好ましく、1×10
−7〜2質量%がより好ましく、5×10
−7〜1質量%が特に好ましい。
本発明の含フッ素共重合体組成物が、その他の成分を含有する場合、含フッ素共重合体組成物におけるその他の成分の含有量は、含フッ素共重合体組成物の全量に対して、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
【0057】
本発明の含フッ素共重合体組成物は、本発明の含フッ素共重合体からなる粉体と、該粉体以外の成分とをミキサーで混合する方法;本発明の含フッ素共重合体からなる粉体の一部と、該粉体以外の成分とをミキサーで混合してマスターバッチ粉体を製造し、該マスターバッチ粉体に残りの本発明の含フッ素共重合体からなる粉体とを混合する方法:で製造することが好ましい。
【0058】
<塗装物品>
本発明の塗装物品は、本発明の粉体または含フッ素共重合体組成物から製造された塗膜を基材上に有する。
基材の材質としては、先に記載したもの等が挙げられる。
本発明の粉体または含フッ素共重合体組成物から製造された塗膜は、金属への接着性に優れる。特に鉄、ステンレス鋼、アルミニウムへの接着性に優れ、ライニング、コーティング、表面処理等に使用される。
【0059】
本発明の塗装物品は、本発明の粉体または含フッ素共重合体組成物からなる塗膜を基材上に有していればよく、該塗膜上にさらに他の塗膜を有していてもよい。たとえば、本発明の粉体または含フッ素共重合体組成物からなる塗膜をプライマー塗膜として基材上に有し、その上に他の塗膜を有していてもよい。他の塗膜としては、本発明の含フッ素共重合体以外の含フッ素共重合体を含む粉体塗料から形成された塗膜が挙げられる。本発明の含フッ素共重合体以外の含フッ素共重合体としては、エチレン/TFE共重合体、TFE/ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体、TFE/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
本発明の粉体または含フッ素共重合体組成物からプライマー塗膜を形成すると、基材と、プライマー塗膜と、プライマー塗膜上に形成された塗膜とが良好に接着する。
【0060】
本発明の塗装物品の形状には特に制限はなく、たとえばパイプ、チューブ、フィルム、板、タンク、ロール、ベッセル、バルブ、エルボー等が挙げられる。
【0061】
塗膜の厚さは、1μm〜10mmが好ましく、5μm〜5mmがより好ましく、10μm〜3mmが特に好ましい。塗膜の厚さが上記範囲内であれば、基材と塗膜との接着性がより優れる。
プライマー塗膜として塗膜を形成する場合には、該塗膜の厚さは1〜500μmが好ましく、5〜500μmがより好ましく、10〜500μmが特に好ましい。
【0062】
本発明の粉体または含フッ素共重合体組成物の粉体塗装は、公知の装置を用いた公知の方法で行うことができる。よって、粉体塗装に際して特別な装置および方法を採用する必要がなく、生産性、経済性に優れる。
粉体塗装は、たとえば、酸素を含む雰囲気下で、基材の表面を200〜600℃に加熱処理した後、ブラスト処理等により粗面化し、該ブラスト処理した表面に本発明の粉体または含フッ素共重合体組成物を粉体塗装する方法が挙げられる。
粉体塗装法としては、静電塗装、回転成形等が挙げられる。
プライマー塗膜を形成するためのプライマー塗装も、同じ方法で行える。
【0063】
以上説明したように、本発明の含フッ素共重合体は、金属等の他材料との接着性に優れ、かつ、発泡、着色等が抑制され外観に優れる塗膜等の成形物を製造できる。
よって、含フッ素共重合体からなる粉体、該粉体を含む含フッ素共重合体組成物をたとえば粉体塗料として使用することにより、外観に優れる塗膜と基材とが充分に接着した塗装物品を製造できる。
また、含フッ素共重合体、その粉体、該粉体を含む含フッ素共重合体組成物を押出成形法、射出成形法等に供することにより、外観に優れる成形物と基材とが充分に接着した物品を製造できる。
なお、本発明の物品は、耐薬品性、耐蝕性、耐油性、耐熱性、耐候性、非粘着性、撥水性等の特性に優れ、これらの特性の耐久性にも優れる。
【実施例】
【0064】
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
各種評価方法、測定方法を以下に示す。
【0065】
[融点(℃)]
含フッ素共重合体の融点は、走査型示差熱分析器(日立ハイテクサイエンス社製「DSC7020(商品名)」)を用いて、空気雰囲気下、10℃/分で300℃まで昇温し、含フッ素共重合体を加熱した際の吸熱ピークに対応する温度である。
【0066】
[Q値]
島津製作所社製のフローテスタを用いて、温度297℃、荷重68.6N(=7kgf)の条件で、直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押し出すときの含フッ素共重合体の押出し速度(mm
3/秒)を求め、これをQ値とした。
【0067】
[共重合組成(モル%)]
含フッ素共重合体の共重合組成(各構成単位の含有量)は、フーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)測定の結果から算出した。
【0068】
[平均粒子径]
含フッ素共重合体からなる粉体の平均粒子径(50%体積平均粒子径)は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した。
【0069】
[接着性評価]
後述の方法で製造した各塗装物品(縦50mm、横150mm)を試験片として、以下の方法で、基材と塗膜との接着性を評価した。
試験片の横方向の一端から塗膜を剥離した。剥離した部分の塗膜の横方向の長さは10mmとした。塗膜を剥離する際には、剥離しやすいように、カッターナイフで塗膜に切り込みを入れた。
基材から剥離した部分の塗膜を引張り試験機のチャックに固定し、引張速度50mm/分の条件で引張り、90度剥離試験を行った。剥離は、試験片の上記一端から、横方向に50mmの位置まで、実施した。
上記測定を3回行い、各測定における90度剥離時の最大荷重を求め、その平均値を剥離強度(単位:N/10mm)とした。剥離強度が大きいほど、接着性に優れる。
【0070】
[外観評価]
後述の方法で製造した各塗装物品の塗膜表面の外観を目視により評価した。
A:塗膜に発泡および着色がなく、外観が良好である。
B:塗膜に発泡、着色の少なくとも一方が認められ、外観が不良である。
【0071】
[実施例1]
内容積が1.2リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、重合媒体であるCF
3(CF
2)
5H(以下、「HFC−1」ともいう。)の1202.6g、連鎖移動剤であるメタノールの11.3g、構成単位(c2)を形成するモノマーとしてCH
2=CH(CF
2)
4Fの8.7gを仕込み、構成単位(a)を形成するモノマーとしてTFEの146.0gと、構成単位(c1)を形成するモノマーとしてエチレンの7.8gを圧入し、重合槽内を66℃に昇温した。重合槽内の圧力は1.50MPaG(ゲージ圧)を示した。重合開始剤であるtert−ブチルペルオキシピバレートの濃度を1質量%としたHFC−1溶液の11.4mLを仕込み、重合を開始させた。重合中、前記圧力を保持するように、組成TFE/エチレン=54/46(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、前記モノマー混合ガスを100モル%としたときに2.1モル%となる量のCH
2=CH(CF
2)
4Fと、0.5モル%となる量のHBVEとを連続的に仕込んだ。なお、CH
2=CH(CF
2)
4Fは、HFC−1で8.8質量%に希釈して仕込み、HBVEは、HFC−1で0.7質量%に希釈して仕込んだ。重合開始から3時間後、モノマー混合ガスの90.0gを仕込んだ時点で、重合槽内の温度を30℃まで降下させるとともに、0MPaGまでパージし、含フッ素共重合体を含むスラリー(1)を得た。該スラリー(1)をガラスフィルターで吸引ろ過し、150℃で15時間乾燥することにより、91gの含フッ素共重合体(1)を得た。
含フッ素共重合体(1)の融点は253.2℃、Q値は35mm
3/秒であった。
含フッ素共重合体(1)の共重合組成は、TFEに基づく構成単位/HBVEに基づく構成単位/エチレンに基づく構成単位/CH
2=CH(CF
2)
4Fに基づく構成単位=52.4/0.3/45.2/2.1(モル%)であった。
含フッ素共重合体(1)をターボミルにより粉砕し、平均粒子径96μmの粉体(1)を得た。
【0072】
縦50mm、横150mm、厚さ2mmのSUS304ステンレス鋼板を400℃で1時間焼成後、その表面をアルミナ粒子(太平洋ランダム株式会社製「白色電融アルミナ50A(商品名)」)を用いてサンドブラスト処理し、エアーガンでブラスト粉を除去し、基材(1)を得た。
基材(1)の表面に粉体(1)を載せ、オーブンにて300℃で30分焼成し、粉体(1)からなる厚さ0.40mmの塗膜が基材(1)上に形成された塗装物品(1)を得た。
該塗装物品(1)について、上述のようにして接着性評価および外観評価を実施した。結果を表1に示す。
【0073】
[実施例2]
縦50mm、横150mm、厚さ2mmのSS400鋼板を400℃で1時間焼成後、その表面を上記アルミナ粒子を用いてサンドブラスト処理し、エアーガンでブラスト粉を除去し、基材(2)を得た。
基材(2)の表面に粉体(1)を載せ、オーブンにて300℃で30分焼成し、粉体(1)からなる厚さ0.50mmの塗膜が基材(2)上に形成された塗装物品(2)を得た。
該塗装物品(2)について、上述のようにして接着性評価および外観評価を実施した。結果を表1に示す。
【0074】
[実施例3]
内容積が1.2リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、重合媒体であるCF
3CH
2OCF
2CF
2H(以下、「HFE−1」ともいう。)の1020.8g、連鎖移動剤であるメタノールの12.6g、構成単位(b)を形成するモノマーとしてHBVEの0.3g、構成単位(c2)を形成するモノマーとしてCH
2=CH(CF
2)
4Fの7.6gを仕込み、構成単位(a)を形成するモノマーとしてTFEの155.6gと、構成単位(c1)を形成するモノマーとしてエチレンの7.1gを圧入し、重合槽内を66℃に昇温した。重合槽内の圧力は1.50MPaG(ゲージ圧)を示した。重合開始剤であるtert−ブチルペルオキシピバレートの濃度を1質量%としたHFE−1溶液の11.4mLを仕込み、重合を開始させた。重合中、前記圧力を保持するように、組成TFE/エチレン=54/46(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、前記モノマー混合ガスを100モル%としたときに2.1モル%となる量のCH
2=CH(CF
2)
4Fと、0.3モル%となる量のHBVEとを連続的に仕込んだ。なお、CH
2=CH(CF
2)
4Fは、HFE−1で30.1質量%に希釈して仕込み、HBVEは、HFE−1で2.8質量%に希釈して仕込んだ。重合開始から3時間後、モノマー混合ガスの90.0gを仕込んだ時点で、重合槽内の温度を30℃まで降下させるとともに、0MPaGまでパージし、含フッ素共重合体を含むスラリー(2)を得た。該スラリー(2)をガラスフィルターで吸引ろ過し、150℃で15時間乾燥することにより、94.5gの含フッ素共重合体(2)を得た。
含フッ素共重合体(2)の融点は252.3℃、Q値は22mm
3/秒であった。
含フッ素共重合体(2)の共重合組成は、TFEに基づく構成単位/HBVEに基づく構成単位/エチレンに基づく構成単位/CH
2=CH(CF
2)
4Fに基づく構成単位=53.1/0.2/44.7/2.0(モル%)であった。
含フッ素共重合体(2)をターボミルにより粉砕し、平均粒子径95μmの粉体(2)を得た。
実施例1と同様の方法で基材(1)を得て、該基材(1)の表面に粉体(2)を載せ、オーブンにて300℃で30分焼成し、粉体(2)からなる厚さ0.50mmの塗膜が基材(1)上に形成された塗装物品(3)を得た。
該塗装物品(3)について、上述のようにして接着性評価および外観評価を実施した。結果を表1に示す。
【0075】
[実施例4]
実施例2と同様の方法で基材(2)を得て、該基材(2)の表面に粉体(2)を載せ、オーブンにて300℃で30分焼成し、粉体(2)からなる厚さ0.50mmの塗膜が基材(2)上に形成された塗装物品(4)を得た。
該塗装物品(4)について、上述のようにして接着性評価および外観評価を実施した。結果を表1に示す。
【0076】
[比較例1]
内容積が1.2リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、重合媒体であるHFC−1の1207.1g、連鎖移動剤であるメタノールの9.0g、およびモノマーであるCH
2=CH(CF
2)
4Fの9.1gを仕込み、モノマーであるTFEの146.0gと、モノマーであるエチレンの7.8gを圧入し、重合槽内を66℃に昇温した。重合槽内の圧力は1.48MPaG(ゲージ圧)を示した。重合開始剤であるtert−ブチルペルオキシピバレートの濃度を1質量%としたHFC−1溶液の11.4mLを仕込み、重合を開始させた。重合中、前記圧力を保持するように組成TFE/エチレン=54/46(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、前記モノマー混合ガスを100モル%としたときに2.1モル%となる量のCH
2=CH(CF
2)
4Fを連続的に仕込んだ。重合開始から3時間後、モノマー混合ガスの90gを仕込んだ時点で、重合槽内の温度を30℃まで降下させるとともに、0MPaGまでパージし、含フッ素共重合体を含むスラリー(3)を得た。該スラリー(3)をガラスフィルターで吸引ろ過し、150℃で15時間乾燥することにより、90gの含フッ素共重合体(3)を得た。
含フッ素共重合体(3)の融点は255.7℃、Q値は30mm
3/秒であった。
含フッ素共重合体(3)の共重合組成は、TFEに基づく構成単位/エチレンに基づく構成単位/CH
2=CH(CF
2)
4Fに基づく構成単位=52.8/45.1/2.1(モル%)であった。
含フッ素共重合体(3)をターボミルにより粉砕し、平均粒子径98μmの粉体(3)を得た。
【0077】
実施例1と同様の方法で基材(1)を得て、該基材(1)の表面に粉体(3)を載せ、オーブンにて300℃で30分焼成し、粉体(3)からなる厚さ0.35mmの塗膜が基材(1)上に形成された塗装物品(5)を得た。
該塗装物品(5)について、上述のようにして接着性評価および外観評価を実施した。結果を表1に示す。
【0078】
[比較例2]
実施例2と同様の方法で基材(2)を得た。該基材(2)の表面に比較例1で製造した粉体(3)を載せ、オーブンにて300℃で30分焼成し、粉体(3)からなる厚さ0.50mmの塗膜が基材(2)上に形成された塗装物品(6)を得た。
該塗装物品(6)について、上述のようにして接着性評価および外観評価を実施した。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、各実施例の粉体から形成した塗膜は、金属製の基材との接着性に優れ、外観も良好であった。
これに対して、比較例1および2は、含フッ素共重合体が水酸基を有するモノマーに基づく構成単位を有しないため、塗膜の接着性が劣った。