(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程(b)において、前記第1主面及び第2主面に、一方向に伸びる前記開口を有する前記マスクパターンを、前記第1主面側の前記開口の直下に前記第2主面側の前記開口が位置するように、それぞれ形成する請求項1に記載の光学部材の製造方法。
前記工程(b)において、前記第1主面側の前記開口の前記<100>方向に沿った中心線と、前記第2主面側の前記開口の前記<100>方向に沿った中心線とを一致して形成する請求項3に記載の光学部材の製造方法。
請求項1〜5のいずれか1つで得られた前記光学部材と、半導体レーザ素子とを、前記半導体レーザ素子から出射するレーザ光が前記光学部材の前記反射膜に照射されるように、実装基板に固定することを含む半導体レーザ装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する発光装置は、本開示の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。
各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0009】
実施形態1:光学部材の製造方法
この実施形態の光学部材の製造方法は、
(a){110}面からなり、互いに平行な第1主面及び第2主面を有するシリコン基板を準備し、
(b)前記第1主面及び第2主面に、一方向に伸びる開口を有するマスクパターンを、前記第1主面側の前記開口と前記第2主面側の前記開口が交互に位置するように、又は、前記第1主面側の前記開口の直下に前記第2主面側の前記開口が位置するように、それぞれ形成し、
(c)前記シリコン基板を、前記マスクパターンをマスクとして用いてウェットエッチングして、前記第1主面側及び第2主面側に傾斜面を有する凹部を形成し、
(d)前記第1主面又は前記第2主面に反射膜を形成し、
(e)前記シリコン基板を、前記凹部において分割することを含む。
【0010】
(a:シリコン基板の準備)
{110}面からなり、互いに平行な第1主面及び第2主面を有するシリコン基板を準備する。シリコン基板の第2主面は、第1主面と反対側の主面を指す。ここで、{110}面とは、シリコンの常温及び常圧で安定な結晶構造であるダイヤモンド構造における結晶格子面のうちのひとつ(110)面とその等価結晶面との全ての面を指す。等価結晶面とは、ミラー指数によって定義される等価結晶面又はファセットのファミリを意味する。シリコン基板の第1主面は、{110}面に対して±2度程度のオフ角は許容される。オフ角は、好ましくは±1度の範囲内、より好ましくは±0.2度の範囲内である。
【0011】
シリコン基板の大きさ及び厚みは、例えば、得ようとする光学部材の用途等により適宜調整することができる。1つのシリコン基板から複数の光学部材を得ることが好ましく、このために、シリコン基板は、数センチ〜数十センチの長さ及び/又は幅を有するものであればよい。
シリコン基板の厚みは、均一であることが好ましいが、部分的に異なる部分が存在してもよい。シリコン基板の厚みは、例えば、100〜数千μmとすることができ、例えば、500〜2000μmとすることができる。
【0012】
(b:マスクパターンの形成)
シリコン基板の第1主面及び第2主面に、それぞれマスクパターンを形成する。開口は各主面に対して1つでもよいし、複数でもよい。いずれにしても、第1主面及び第2主面の開口は、互いに平行であることが好ましい。
第1主面側の開口と第2主面側の開口が交互に位置するように、又は、第1主面側の開口の直下に第2主面側の開口が位置するように、マスクパターンを形成することが好ましい。ここでの開口は、一方向に伸びる開口を意味する。
【0013】
開口の伸びる方向、形状、大きさは任意に設定することができる。
開口の伸びる方向は、例えば、<100>方向、<111>方向、<112>方向が挙げられ、なかでも、
図1に示すように、<100>方向であることが好ましい。開口の伸びる方向を<100>方向とすることにより、容易に45度傾斜面を得ることができる。また、開口は、第1主面及び/又は第2主面に平行な方向に伸びる開口とすることができる。
ここで、<100>方向とは、シリコンの常温及び常圧で安定な結晶構造であるダイヤモンド構造における結晶格子面のうちのひとつである(100)面に対する垂直方向と、その等価結晶面に対する垂直方向の全ての方向とを指す。
【0014】
開口の形状は、ストライプ状であることが好ましい。また、一方向に伸びる限り、その開口に交わる方向に伸びる開口と連結した形状であってもよい。例えば、<110>方向に伸びる開口と連結した格子状、<110>方向とそれに交差する交差状であってもよい。また、<100>方向に伸びる開口は、その外縁(両端)が<100>方向と略平行であることが好ましく、<110>方向に伸びる開口は、その外縁(両端)が<110>方向と略平行であることが好ましい。
【0015】
一方向に伸びる開口の長さは、用いるシリコン基板の大きさに従って適宜設定することができる。一方向に伸びる開口の幅は、後の工程において得ようとする傾斜面の高さ等によって適宜設定することができる。開口の幅として例えば、200〜1000μm程度が挙げられる。開口の幅は、第1主面側の開口と第2主面側の開口とで同じでもよいし、異なっていてもよい。開口の幅が小さいほどエッチング後に残る主面の面積は大きくなる。このため、開口の幅を第1主面側と第2主面側とで異ならせることにより、開口の幅が小さい方の主面の面積を大きく維持することができる。その大きな主面を光学部材の実装面とすれば安定して実装することができる。その一方、大きな主面を反射膜形成面とすることにより、光学部材としての反射有効面積を増大させることができる。
【0016】
上述のとおり、マスクパターンは、一方向(例えば<100>方向)に伸びる開口以外に、これと異なる方向(例えば<110>方向)に伸びる開口を有してよい。このように一方向以外に伸びる開口を有する場合、その幅は、一方向に伸びる開口の幅と同等でもよいし、異なっていてもよい。一方向以外に伸びる開口により形成される傾斜面は光学部材としての機能に関係しない。よって、一方向以外に伸びる開口の幅は、一方向に伸びる開口の幅よりも小さいことが好ましい。これにより、シリコン基板の面積を有効に使用することができる。また、一方向以外に伸びる開口は、分割用の溝として使用することができる。この場合には開口の幅はある程度大きいことが好ましく、例えば、50〜500μm程度とすることができる。
開口の深さは、マスクパターンの厚みに相当し、例えば、0.1〜1μm程度が挙げられる。
【0017】
隣接する開口の間隔は、意図する光学部材の大きさによって任意に設定することができる。第1主面側の開口の直下に第2主面側の開口が位置するようにマスクパターンを形成する場合には、隣接する開口の間隔は、例えば、200〜1000μm程度が挙げられる。また、この場合、第1主面側から見たとき、第1主面側の開口内に、第2主面側の開口の伸びる方向に沿った中心線が位置するように、マスクパターンを形成することが好ましい。第1主面側の開口の伸びる方向に沿った中心線と、第2主面側の開口の伸びる方向に沿った中心線とが一致するように、マスクパターンを形成することがより好ましい。例えば、第1主面側の開口の<100>方向に沿った中心線と、第2主面側の開口の<100>方向に沿った中心線とを一致させることが好ましい。このような配置とすることにより、後述するエッチングにより形成される傾斜面を有する凹部の下端が一致しやすい。これにより、凹部の下端を起点として分割する場合に、第1主面に対して垂直な方向に分割することができ、容易に分割することができる。
第1主面側の開口と第2主面側の開口が交互に位置するようにマスクパターンを形成する場合には、第1主面側の開口に隣接する第2主面側の開口の間隔は、例えば、200〜1000μm程度が挙げられる。
【0018】
マスクパターンは、通常、レジスト膜又は絶縁膜(Si、Hf、Zr、Al、Ti、La等の酸化膜又は窒化膜あるいはそれらの複合膜等)等の形成、フォトリソグラフィ及びエッチング工程によって形成するなど、当該分野で公知の材料、公知の方法を利用して形成することができる。特に、マスクパターンの材料は、後述するウェットエッチングのエッチャントの種類によって適宜選択することが好ましい。
【0019】
なお、一方向以外に伸びる開口は、シリコン基板の第1主面及び第2主面の双方に形成してもよいが、シリコン基板の第1主面及び/又は第2主面の一方にのみ形成してもよい。
【0020】
(c:傾斜面を有する凹部の形成)
シリコン基板を、マスクパターンをマスクとして用いてウェットエッチングする。このウェットエッチングは、第1主面及び第2主面を一主面ずつ順に行ってもよいが、第1主面及び第2主面側の双方から同時にウェットエッチングすることが好ましい。これによって、第1主面及び第2主面側の双方に傾斜面を有する凹部を形成することができる。両面側からエッチングすることにより、後述するシリコン基板の分割が容易となる。
【0021】
傾斜面はどのような結晶面であってもよい。凹部の形状は、段面視において、U字状、V字状、角部が丸みを帯びたこれらの形状等のいずれでもよい。
なかでも、{100}面を有する傾斜面を形成することが好ましい。傾斜面は、<100>方向に伸び、シリコン基板の第1主面及び第2主面(つまり、{110}面)に対して45度の傾斜角度を有する面とすることが好ましい。言い換えると、傾斜面は、シリコン基板の第1主面と成す角度が135度であることが好ましい。ただし、ここでの{100}面は、{100}面に対して±2度程度のオフ角は許容され、よって、第2主面に対して45±2度程度の傾斜角度を有する面であってもよい。オフ角は、好ましくは±1度の範囲内、より好ましくは±0.2度の範囲内である。
【0022】
エッチングは、ウェットエッチングを行うことが好ましいが、その他の異方性エッチングを行うことができるエッチング方法を採用してもよい。
ウェットエッチングは、上述したマスクパターンをマスクとして、異方性エッチングが可能なエッチャントを用いる限り、どのような条件で行ってもよい。エッチャントとしては、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、エチレンジアミンピロカテコール(EDP)、ヒドラジン等又はこれらにイソプロパノール等を添加した混合液、又はこれらの混合液が挙げられる。その濃度は、シリコン基板のエッチング速度等を考慮して、適宜設定することができる。なかでも、TMAHを用いることが好ましい。TMAHは、他の異方性エッチャントに比較して、{110}面シリコン基板のエッチングにおいて異方性が高く、{110}面シリコン基板に対して、主面から約45度傾斜した傾斜面を高精度で形成できるからである。また、TMAHは取り扱いが容易であることからも好ましい。
エッチング条件としては、例えばエッチャントがTMAHである場合は、エッチャントの温度を摂氏80〜110度に設定し、2〜10時間程度の浸漬を行うことが挙げられる。浸漬時間は所望のエッチング量が得られる程度に調整すればよい。
【0023】
ここで用いたマスクパターンに<110>方向に伸びる開口が形成されている場合には、形成される傾斜面は{111}面であり、35度程度の傾斜角度を有する面(
図8A〜8C中、11d参照)である。ここでの角度も、{110}面に対して±2度程度のオフ角は許容される。
【0024】
上述した傾斜面が形成された後、引き続きエッチングを継続すると、それぞれ対向する辺からの斜面によって、断面形状が、台形状、さらに進むとV字状の溝が形成される。台形状、好ましくはV字状の溝が形成される場合には、V字の底において、後述する分割が容易になるため、V字状の溝が形成されるまでエッチングすることが好ましい。例えば上述した<100>方向及び<110>方向の開口を有するマスクパターンを用いる場合は、シリコン基板は、<100>方向及び<110>方向ともに劈開性がないため、V字状の溝を起点として割断することが好ましい。特に、第1主面側の開口の直下に第2主面側の開口が位置するようにマスクパターンを形成した場合には、第1主面側及び第2主面側からエッチングされた各傾斜面によるV字状の溝の下端同士が近接することになるが、下端同士が繋がらない程度にエッチングすることが好ましい。後工程で反射膜を形成する際、シリコン基板をウェハ単位で取り扱うことができ、一括して反射膜を形成することにより、工程の簡略化を図ることができる。
【0025】
あるいは、第1主面側の開口の直下に第2主面側の開口が位置するようにマスクパターンを形成した場合、第1主面側及び第2主面側からエッチングされた各傾斜面が繋がるまでエッチングしてもよい。これによって、後述するシリコン基板の凹部における分割を省略することができる。特に、後述するように、第1主面又は第2主面への反射膜の形成を、工程(b)のマスクパターンの形成及び工程(c)傾斜面を有する凹部の形成の前に行う場合には有利である。
【0026】
傾斜面は、シリコン基板の第1主面から、例えば、数百〜千数百μm程度、さらに200〜1000μm程度の深さにおいて形成することが好ましい。
【0027】
{110}面からなり、互いに平行な第1主面及び第2主面を有するシリコン基板を用いることにより、マスクパターンの開口がどのような方向に伸びるものであっても、最終的には、断面形状が線対称となる2つの傾斜面を有する凹部を形成することができる。これによって、後述するように、分割されたシリコン基板及び光学部材を吸引装置等で簡便にピックアップすることができる平坦かつ水平な面を形成することができる。
【0028】
(d:反射膜の形成)
シリコン基板の第1主面又は第2主面に反射膜を形成する。傾斜面に反射膜を形成する場合には、傾斜した角度で成膜することになるため、膜厚の制御が困難になるという懸念があるが、第1主面又は第2主面に反射膜を形成することによりこのような懸念を解消することができる。
【0029】
反射膜は、例えば半導体レーザ素子からの光を50%以上反射し得る材料によって形成することができる。言い換えると、反射膜は、半導体レーザ素子の発振波長における反射率を50%以上とすることができる。高出力の半導体レーザ素子(例えば光出力1W以上)と組み合わせる場合は、80%以上反射し得る材料によって形成することが好ましく、さらには90%以上又は95%以上反射し得る材料によって形成することが好ましい。例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、チタン、タンタル、タングステン、コバルト、ルテニウム、錫、亜鉛、鉛等の金属又はこれらの合金(例えば、Al合金としては、Alと、Cu、Ag、Pt等の白金族系の金属との合金)の単層又は多層構造膜が挙げられる。反射膜を金属で構成する場合は、なかでも、Al、Au、Ag、Crの金属の単層膜等が好ましい。
【0030】
反射膜は、2種以上の誘電体を複数積層させた誘電体多層膜等であってもよい。誘電体多層膜としては、DBR(distributed Bragg reflector:分布ブラッグ反射)膜が好ましい。DBR膜を構成する誘電体としては、例えば、Si、Ti、Zr、Nb、Ta、Alからなる群より選択された少なくとも一種の元素を含む酸化物又は窒化物が挙げられる。なかでも、Si、Zr、Nb、Ta、Al等の酸化物の積層構造が好ましい。また、反射膜の1層目は、シリコンとの密着性が良いものが好ましく、例えばSiO
2等のSi含有層が適していると考えられる。誘電体多層膜の各層の材料及び膜厚を調整することによって所望の反射率を得ることができる。
【0031】
反射膜は、特に、誘電体多層膜によって形成されるものが好ましい。誘電体多層膜は、金属からなる反射膜と比較して、レーザの発振波長に対する反射率を高くできる。つまり、反射率を100%に近づけることができる。これによって、光吸収が小さい、つまり発熱が小さい光学部材を実現することができる。その結果、高出力の半導体レーザ装置を実現することができる。誘電体多層膜は各層の膜厚が変化すると反射率が変化するため、設計値どおりの膜厚で形成できるように、ウェハ状態で被形成面に対して垂直方向に成膜することが好ましい。従って、誘電体多層膜は、シリコン基板の第1主面又は第2主面({110}面)に形成されるものがより好ましい。
【0032】
反射膜の厚みは、例えば、0.数〜数十μm程度が挙げられ、0.1〜10μm程度が好ましく、0.3〜7μm程度がより好ましい。
【0033】
反射膜は、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオン・ベーパー・デポジション(IVD)法、スパッタリング法、ECRスパッタリング法、プラズマ蒸着法、化学的気相成長(CVD)法、ECR−CVD法、ECR−プラズマCVD法、電子ビーム蒸着(EB)法、原子層堆積(ALD)法等の公知の方法によって形成することができる。なお、いずれの成膜方法においても、被形成面に対して垂直方向に成膜することが好ましい。
【0034】
このように、{110}面からなる第1主面及び第2主面に反射膜を形成することにより、角度精度及び平滑度等に優れ、膜質の良い反射機能を有する反射膜を形成することができる。その結果、光学部材の反射効率及び耐久性を高めることができる。また、光学部材を、簡易、簡便かつ高精度に効率よく製造することができる。さらに、光学部材自体の製造コストを低減することができる。
【0035】
第1主面又は第2主面への反射膜の形成は、反射膜の品質を損なわない限り、工程(b)のマスクパターンの形成及び工程(c)傾斜面を有する凹部の形成の前に行ってもよい。ウェットエッチングを行う際に、反射膜がマスクパターンによって保護された状態であれば、ウェットエッチングによる反射膜の品質劣化を防止可能である。なお、マスクパターンはウェットエッチング後に除去する。
【0036】
(e:シリコン基板の分割)
シリコン基板を、凹部において分割することが好ましい。分割は、上述した凹部を形成した後であれば、反射膜を形成する前後のいずれに行ってもよい。工程の簡略化のためには、反射膜をウェハ単位で一括して形成し、その後、分割を行うことが好ましい。
シリコン基板の分割は、傾斜面に沿った方向(つまり、一方向に沿った方向)に行うことが好ましい。例えば、45度傾斜面に沿った方向、例えば、<100>方向に行うことが好ましい。上述したように、シリコン基板に傾斜面を形成した場合、2つの傾斜面を含んで又は1つの傾斜面によって、凹部、例えば、断面形状が台形状又はV字状の溝が形成される。このため、凹部内で、例えば、台形又はV字状の溝内において、この凹部又は溝に沿って分割することが好ましい。特に、V字溝の下端に沿って分割することが好ましい。マスクパターンにおける開口が第1主面及び第2主面において複数存在するため、このように分割することによって、2つの傾斜面を有する光学部材を形成することができる。
【0037】
特に、上述した工程により、第1主面側の開口の直下に第2主面側の開口が位置するようにマスクパターンを形成した場合においては、両主面からの凹部の下端がほぼ一致するために、分割をより精度よく、まっすぐに行うことができる。
【0038】
上述した2方向に伸びる開口を有するマスクパターンを形成してエッチングを行った場合には、このエッチングによる凹部を利用して分割することにより、簡便にかつ精度よく2方向への分割を行うことができる。2方向とは、例えば<100>方向と<110>方向である。
なお、上述した<110>方向に伸びる方向のエッチングの有無にかかわらず、傾斜面に沿った方向に対して直交する方向、例えば、<110>方向にも分割することが好ましい。ここでの分割は、<110>方向に伸びる方向のエッチングによる傾斜による溝を利用してもよいし、後述するような分割の補助溝又はクラックを利用してもよい。
【0039】
シリコン基板の分割の際には、分割の補助溝及び/又はクラックを形成して、分割することが好ましい。このような補助溝及び/又はクラックは、例えば、ブレードダイシング、レーザダイシング等の公知の方法によって行うことができる。なかでも、内部加工可能なレーザダイシングを用いることが好ましい。これにより、どのような厚みであってもほぼ全面にクラックを形成でき、分割の際にデブリの発生を抑制することができる。内部加工可能なレーザダイシングを用いる場合は、例えば、レーザダイシング装置によって内部加工レーザを照射し、それぞれのV字溝の直下にクラックを形成し、その後、V字溝の下端から、それを起点にブレイク装置でシリコン基板を分割する。
分割後のシリコン基板の大きさは、任意に設定することができる。例えば、一辺が2.0mm、他辺が1.0mmとすることができる。また、<110>方向の辺が2.0mm、<100>方向の辺が1.0mmとするものが好ましい。
【0040】
実施形態2:半導体レーザ装置
この実施形態の半導レーザ装置は、例えば、
図4A及び
図4Bに示すように、
実装基板1と、
実装基板1上に設けられた半導体レーザ素子4と、
第1の{110}面11aと、第1の{110}面11aに隣接する第1の{100}面11bと、第2の{110}面11cと、第2の{110}面11cに隣接する第
2の{100}面11bとを有するSiからなり、第2の{100}面11cが実装基板上に固定され、第1の{110}面11aが反射膜で被覆され、半導体レーザ素子4から出射されるレーザ光を反射可能な位置に配置された光学部材15とを備える。
【0041】
(光学部材15)
光学部材15は、半導体レーザ素子4から出射されたレーザ光を、意図する方向に反射させる部材である。光学部材15は、Si(シリコン)からなるものが好ましい。Siは、従来の石英からなる光学部材、いわゆるプリズムよりも熱伝導率が高いため、例えば、半導体レーザ素子の出力が1W以上の高出力レーザに対して特に有利である。
【0042】
光学部材は、Siの{110}面及び{100}面を有するものが好ましい。これら{110}面及び{100}面は、それぞれ2つ以上有することが好ましい。つまり、光学部材15のレーザの反射面を、{110}面とするものが好ましい。また、これら以外の面を有していてもよい。ここでの{110}面及び{100}面は、±2度程度のオフ角による傾斜が許容されることを意図する。さらに、{100}面が実装基板上に固定され、{110}面が反射膜で被覆されたものが好ましい。このように、{110}面に反射膜を形成することにより、膜厚の制御を容易かつ高精度に行うことができ、品質の良好な反射膜を形成することができる。ここでの{100}面は、{110}面に対する角度が45度である面とすることができる。
【0043】
{110}面は、例えば、上述した光学部材の製造方法におけるシリコン基板の第1主面及び第2主面に相当するものであり、{100}面は、<100>方向に伸びる開口を有するマスクパターンを用いたエッチングによって形成された傾斜面である。
光学部材15は、反射面となる{110}面が、上述したように、反射膜で被覆されているものが通常使用される。
【0044】
光学部材15は、半導体レーザ素子4に対向して配置される。この場合の対向配置とは、光学部材15の反射面、つまり反射膜で被覆された面に、半導体レーザ素子4から出射したレーザ光が照射され、これを反射させることができる位置に、光学部材15と対面して、光学部材15を配置することを意味する。具体的には、光学部材15の反射面が、半導体レーザ素子4の光出射面側であって光導波路領域の延長線上に位置するように光学部材15を配置する。例えば、光学部材の反射面を、半導体レーザ素子の光学部材側の端部に対して傾斜するように配置する。このような反射面によって、レーザ光が反射され、半導体レーザ素子4から出射されたレーザ光の光軸を方向転換することができる。半導体レーザ素子からレーザ光が実装基板の主面に対して平行に出射される場合は、実装基板の主面と傾斜面とのなす角度を45度±2度、好ましくは45度±1度、より好ましくは45度±0.2度とする。これにより、半導体レーザ素子からの光を実装基板1に対して垂直な方向に進行させることができる。
【0045】
光学部材15は、上述したように、第1主面又は第2主面を反射面とすることにより、その反射面に隣接する面、例えば、{100}面を、実装基板1の表面に対して平行、つまり、水平な面とすることができる。このため、その面を利用することによりハンドリング性を向上させることができる。例えば、一般に当該分野で用いられている吸引装置等で簡便にピックアップすることができる。
【0046】
光学部材15は、上述した反射面を備える限り、好ましくは、実装面とこれに平行なハンドリング性の向上に寄与する面とを備える限り、種々の形状とすることができる。例えば、多角形柱、多角形錐台及びこれらが組み合わせられた形状等が挙げられる。光学部材15は、さらに、{110}面に対して傾斜した傾斜面を有してもよい(
図8A〜8C中の11d参照)。該傾斜面の{110}面に対する傾斜角度は、{100}面の{110}面に対する傾斜角度よりも小さく、例えば35度程度である。
【0047】
光学部材15は、反射面が、例えば、半導体レーザ素子から、10〜150μm程度以内で配置されていることが好ましく、20〜100μm程度以内であることがより好ましい。
【0048】
光学部材15は、実装基板上に1つのみ配置されていてもよいし、複数配置されていてもよい。後者の場合、例えば、行列状に配置されていることが好ましい。また、光学部材15は、1つの半導体レーザ素子に対して1つずつ配置されていてもよいし、複数の半導体レーザ素子に対して1つのみ配置されていてもよい。
【0049】
光学部材15は、通常、実装基板1上に、金属層及び/又は接着部材を介して配置されている。金属層は、光学部材15の固定面及び/又は平面積よりも小さな面積で配置されていてもよいし、同等の面積で配置されていてもよい。また、光学部材15の固定面の縁からはみ出して配置されていてもよい。これによって、光学部材15の放熱経路を確保することができる。
【0050】
金属層は、Au、Ag、Al等による金属の単層又はそれらを含む積層体のいずれによって形成されていてもよい。具体的には、Ti/Pt/Au、Ni/Au、Ni/Pd/Au、Ni/Pd/Au/Pd等の積層体が挙げられる。金属層の最表面をAuとすると、Auの一部又は全部が後述する接着部材、例えば、Au系の半田に拡散することがある。この場合は、拡散したAuは接着部材として機能する。金属層は、蒸着法、スパッタ法、めっき等、当該分野で公知の方法によって形成することができる。なかでも、スパッタによって形成されていることが好ましい。
【0051】
接着部材としては、Au系半田材(AuSn系半田、AuGe系半田、AuSi系半田、AuNi系半田、AuPdNi系半田等)、Ag系半田材(AgSn系半田)等の金属材料からなるものが挙げられる。接着部材を用いる場合は、実装基板又は金属層と光学部材との接着面を、接着部材を介して合わせた後、所定の温度及び圧力下で保持することによって行うことができる。例えば、熱圧着法が利用される。放熱性の観点から、接着部材は、実装基板又は金属層と、光学部材との間の全面に配置されていることが好ましい。また、UV硬化接着剤、熱硬化接着剤等の接着剤を用いてもよい。
【0052】
(実装基板1)
実装基板1は、半導体レーザ装置を構成する半導体レーザ素子4及び光学部材15等を載置するためのものである。実装基板1は、半導体レーザ素子4で発生する熱を効率的に外部に放出するためにも利用される。実装基板1は、典型的には絶縁性のセラミックからなる。絶縁性のセラミックとしては、AlN、SiC、アルミナ等が挙げられる。絶縁性のセラミックの下面には、放熱性を考慮して、さらに金属部材(Cu、Al等)、異種材料の絶縁性セラミック等が配置されていてもよい。
【0053】
実装基板1の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.2〜5mm程度が挙げられる。
実装基板1の形状、大きさは特に限定されるものではなく、意図する半導体レーザ装置の形状及び大きさ等によって適宜調整することができる。平面形状としては、矩形等の多角形、円形、楕円形又はこれらに近似する形状が挙げられる。実装基板1は、その表面に凹凸等を有するものであってもよいが、表面が平坦な平板状のものが好ましい。例えば、実装基板1として、一辺が2〜30mm程度の平板状の矩形形状の実装基板1が挙げられる。
【0054】
実装基板1は、その表面に、配線パターンを有していてもよい。また、外部電源と接続するための端子が設けられていてもよい。実装基板1内部に配線パターン等が埋設されていてもよい。実装基板1の表面に外部電源と接続するための端子を設けることにより、実装基板1の裏面全面を放熱面とすることができる。
【0055】
(サブマウント3)
実装基板1上にサブマウント3が設けられていてもよい。このとき、半導体レーザ素子4は、サブマウント3上に設けられる。サブマウント3は、半導体レーザ素子4の放熱のために熱伝導性の高い材料によって形成されており、シリコンよりも熱伝導性が高い材料によって形成されているものが好ましい。具体的には、AlN、CuW、ダイヤモンド、SiC等が挙げられる。なかでも、サブマウントは、単結晶のAlN又はSiCからなるものが好ましい。
サブマウント3の厚みは、特に限定されないが、例えば、100〜500μm程度が挙げられ、120〜400μm程度が好ましく、150〜300μm程度がより好ましい。サブマウント3を一定以上の厚みとすることにより、半導体レーザ素子からの光を効率的に反射部材で反射させて取り出すことができる。サブマウント3の厚みは、例えば、半導体レーザ素子の発光点が反射膜の下端よりも上に位置する程度の厚みとする。半導体レーザ素子の高さは、半導体レーザ素子から放射される光のうち所望の部分(反射したい光強度の部分)が反射膜に収まるように配置することが好ましい。
【0056】
サブマウント3の平面形状は特に限定されず、例えば、矩形等の多角形、円形、楕円形又はこれらに近似する形状等が挙げられる。サブマウント3の大きさは、放熱性や最終的に得ようとする半導体レーザ装置の特性に合わせて適宜調整することができる。例えば、サブマウント3は、平面視において、半導体レーザ素子4の平面積よりも大きな平面積を有している。つまり、サブマウント3は、平面視において、半導体レーザ素子4の長さ及び幅よりも大きな長さ及び幅を有する。これにより、半導体レーザ素子4の全体又は略全体をサブマウント3上に配置することができ、放熱経路を確保することができる。
【0057】
サブマウント3は、実装基板1上に1つのみ配置されていてもよいし、複数配置されていてもよい。後者の場合、例えば、行列状に配置されていることが好ましい。
【0058】
サブマウント3は、通常、実装基板1上に、上述したような金属層及び/又は接着部材を介して配置されている。金属層は、サブマウント3の平面積よりも小さな面積で配置されていてもよいし、同等の面積で配置されていてもよい。また、サブマウント3の縁からはみ出して配置されていてもよい。
【0059】
(半導体レーザ素子4)
半導体レーザ素子4は、電圧が印加され、しきい値以上の電流が流れると、活性層で生成され共振器内の光導波路領域で増幅された光が、レーザ光として外部に放射される、即ちレーザ発振を生じる機能を有する。このような半導体レーザ素子4としては、半導体が複数層積層されて構成される公知のレーザ素子のいずれをも使用することができる。例えば、導電性の基板の上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層が順に積層され、半導体層の表面に絶縁膜及び電極等が形成された構造の素子が挙げられる。半導体層の材料は、III−V族の化合物が挙げられ、なかでも窒化物半導体が好ましい。
【0060】
半導体レーザ素子4は、サブマウント3上に設けられている。これにより、半導体レーザ素子4から発生する熱を、サブマウント3等を介して実装基板1に効率的に逃がすことができる。半導体レーザ素子4は、基板側が実装面となるジャンクションアップ(フェイスアップ)実装されていてもよいが、ジャンクションダウン(フェイスダウン)実装されていることが好ましい。ジャンクションダウン実装とすることにより、半導体レーザ素子4におけるレーザ光の発振部位を下方のサブマウント3及び実装基板1に近づけることができる。このようにレーザ光の発振部位という発熱しやすい部分をサブマウント3及び実装基板1の近くに配置することにより、効果的に放熱することができる。ジャンクションダウン実装する場合は、半導体レーザ素子4を、その一部が、サブマウント3の端部よりも光学部材15側に突き出るように配置することが好ましい。突き出る長さは、例えば10〜20μm程度とすることができる。これにより、レーザ光がサブマウントに反射されることを抑制でき、また、実装基板の表面に平行な方向における半導体レーザ素子4と光学部材15との距離を短くすることができる。つまり、半導体レーザ素子4を後述する光学部材15により近接させることができる。これにより、半導体レーザ装置のサイズをより小さくすることができる。
【0061】
半導体レーザ素子4は、1つのサブマウント3の上に1つのみ配置されていてもよいし、1つのサブマウント3の上に複数配置されていてもよい。複数の半導体レーザ素子4は、同じ波長帯、異なる波長帯のいずれでもよい。また、複数の半導体レーザ素子4は、行列状に載置されていてもよい。
【0062】
(キャップ)
半導体レーザ素子4及び光学部材15を被覆するようにキャップ8が実装基板1に取り付けられてよい。キャップ8により半導体レーザ素子4が気密封止されていることが好ましい。特に、発振波長が300〜600nm程度の半導体材料(例えば、窒化物半導体)を用いた半導体レーザ素子4を用いる場合には、有機物及び水分等を集塵しやすいため、キャップ8を設けることによって、レーザ装置内の気密性を高め、防水性、防塵性を高めることができる。また、この場合は、キャップ8により気密封止された内部に配置する部材は、樹脂等の有機物を含まない部材であることが好ましい。
【0063】
キャップ8の形状は、有底の筒型(円柱又は多角形柱等)、錐台型(円錐台又は多角形錐台等)、ドーム型及びこれらの変形形状等が挙げられる。キャップ8は、例えば、Ni、Co、Fe、Ni−Fe合金、コバール、真鍮等の材料を用いて形成することができる。実装基板1に設けられたキャップ8は、その一面に開口部が設けられていることが好ましい。開口部には透光性部材7が設けられている。透光性部材7からレーザ光を取り出すことができる。キャップ8は、溶接又は半田付け等の公知の方法により、実装基板1に固定することができる。
【0064】
(レンズ)
レンズは、レーザ光を平行光化する、集光させるなどの役割を果たす。レンズは、光学部材ミラーによって反射されたレーザ光の進行方向に配置されていてもよいし、半導体レーザ素子と光学部材との間であって、半導体レーザ素子からのレーザ光が照射される位置に配置されていてもよい。
【0065】
レンズは、レーザ光を透過することのできる材料が用いられ、石英、サファイア、プラスチック等、一般に用いられている材料によって形成することができる。種々のアプリケーションへの適用のため、半導体レーザ装置から取り出す光を平行光とすることが好ましい。そのため、レーザ光を半導体レーザ装置から平行光として出射させるために、コリメートレンズを用いることが好ましい。なお、レンズの形状は特に限定されず、円形又は楕円形であることが好ましい。レンズの大きさとしては、照射されるレーザ光の大きさ等に応じて任意に決定することができる。
【0066】
実施形態3:半導体レーザ装置の製造方法
この実施形態の半導体レーザ装置の製造方法は、上述した光学部材と、半導体レーザ素子とを、半導体レーザ素子から出射するレーザ光が光学部材の反射膜に照射されるように、実装基板に固定することを含む。
実装基板に、まず半導体レーザ素子を固定し、次いで半導体レーザ素子から出射するレーザ光が光学部材の反射膜に当たるように光学部材を固定してもよいし、まず光学部材を固定し、光学部材の反射膜にレーザ光が当たるように、半導体レーザ素子を固定してもよいし、同時でもよい。
このように、半導体レーザ素子と光学部材とを固定することにより、半導体レーザ素子から出射されたレーザ光を出射方向と異なる方向に反射させることができる。
【0067】
光学部材を実装基板に固定する場合、半導体レーザ素子に対面させる光学部材の面を、実装基板表面に対して45度となるように固定することが好ましい。そのために、実装基板に対面させる光学部材の面を、例えば、上述したシリコン基板の{100}面とするものが好ましい。これにより、上述のエッチング処理を施していない{110}面を反射面とすることができる。このような{110}面は、エッチングによる面荒れや欠陥の発生が無いため、反射面としてより適している。この場合には、実装基板表面に対して{110}面が45度の角度で傾斜した反射面とすることができる。
【0068】
光学部材を実装基板に固定する場合、上述したように、金属層及び/又は接着部材を介して固定することが好ましい。
【0069】
半導体レーザ素子を実装基板に固定する場合、半導体レーザ素子をサブマウントに固定し、さらに、サブマウントを実装基板に、金属層及び/又は接着部材を介して固定するか、実装基板にサブマウントを固定し、半導体レーザ素子をサブマウントに固定することが好ましい。この場合、半導体レーザ素子をジャンクションダウン実装するのであれば、上述のとおり、半導体レーザ素子を、その一部が、サブマウントの端部よりも光学部材側に配置することが好ましい。半導体レーザ素子、サブマウント及び実装基板は、上述した金属層及び/又は接着部材を介して固定することができる。
【0070】
光学部材を実装基板に固定し、その後に半導体レーザを実装基板に固定することにより、光学部材の位置をカメラ等で画像認識させ、光学部材の位置を基準として半導体レーザ素子の実装位置を決定することができる。これにより、簡便な方法で正確な位置に半導体レーザ素子及び光学部材を実装することができる。
【0071】
半導体レーザ素子のp電極及びn電極は、実装基板を含むパッケージのアノード端子及びカソード端子とそれぞれ電気的に接続されるように配置する。例えば、半導体レーザ素子とサブマウントと光学部材を実装基板に固定した後、半導体レーザ素子の電極及びサブマウントの配線パターンを、実装基板の配線パターンとワイヤーボンディングにより電気的に接続する。
【0072】
レンズを実装する場合には、任意に、レンズの位置合わせ及び接着を行ってもよい。レンズの実装の位置を決定した後、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等のUV硬化接着剤、熱硬化接着剤等を用いて、レンズを任意の位置に固定する。
【0073】
半導体レーザ装置をキャップにより封止する場合は、任意に、抵抗溶接、半田付け等で実装基板にキャップを接着すればよい。封止する際は、露点摂氏−10度以下の乾燥した大気中、窒素雰囲気中等で封止することができる。また、各部材をアッシング又は熱処理等の方法を用いて前処理し、各部材に付着した水分、有機物の除去を行うことが好ましい。
以下に、実施形態の光学部材の製造方法、半導体レーザ装置の製造方法及び半導体レーザ装置の実施例を、図面を用いて具体的に説明する。
【0074】
実施例1:光学部材の製造方法
(a:シリコン基板の準備)
まず、
図1A及び
図1Bに示すように、シリコン基板11を準備する。このシリコン基板11は、第1主面11a及び第2主面11cにおいて{110}面を有している。シリコン基板11の厚みは、例えば、500μmである。
【0075】
(b:マスクパターンの形成)
シリコン基板11の第1主面11a及び第2主面11cのほぼ全面に、CVD装置によりSiO
2膜を成膜する。そして、フォトリソグラフィにより、<100>方向と<110>方向にそれぞれ沿った開口を有するマスク形成用のパターンを形成し、バッファードフッ酸によってSiO
2膜をウェットエッチングする。これによって、<100>方向と<110>方向にそれぞれ沿った開口12a、12bを有するマスクパターン12を形成した。マスクパターン12は、第1主面及び第2主面の開口12aの幅Qを300μmとし、開口12bの幅Zを150μmとする。第1主面側の開口12aの直下に第2主面側の開口12aが位置する。双方の開口12aの伸びる方向、つまり<100>方向に沿った中心線は、一致している。また、マスクパターンの<100>方向の辺長Xを500μm、<110>方向の辺長Yを700μmとする。
【0076】
(c:傾斜面の形成)
次に、
図2Aに示すように、マスクパターン12をマスクとして、シリコン基板11の第1主面11a及び第2主面11cである{110}面を摂氏約90度のTMAHで240分間ウェットエッチングする。これによって、<100>方向に沿って、第1主面11a及び第2主面11cから深さ約200μmの45度の傾斜面を露出させる。ここでの45度の傾斜面に対向する面も45度の傾斜面であり、断面形状を略V字状の溝とする。ここでの45度の傾斜面11bは{100}面となる。なお、ウェットエッチングはマスクパターン12の下にも回り込んで行われる。
また、同時に、<110>方向に沿って、第1主面11aから深さ約150μmの35度の傾斜面を露出させる。ここでの35度の傾斜面に対向する面も35度の傾斜面であり、断面形状を略V字状の溝とする。
その後、
図2Bに示すように、マスクパターン12をバッファードフッ酸によって除去する。
【0077】
(d:反射膜の形成)
図2Cに示すように、得られたシリコン基板11の第1主面11aである{110}面に、ECR装置を用いてSiO
2膜/ZrO
2膜(75nm/50nm)を8ペアの積層構造(合計膜厚1000nm)で成膜して反射膜13を形成する。この反射膜13の入射角度45度の波長430〜460nmの光に対する反射率は99%以上である。
【0078】
(e:シリコン基板の分割)
次に、
図2Dに示すように、シリコン基板11を、シリコン基板11の<100>方向のエッチングされたV字状溝の中央(V字頂点部分)から分割し、分割面11fを備えるバー状のシリコン基板11を得る。
【0079】
任意に、シリコン基板11の<110>方向に沿って、エッチングされたV字状溝の中央(V字頂点部分)から分割し、小片状のシリコン基板11による、光学部材15を形成する。
【0080】
これによって、平面形状が略矩形のシリコン基板11による光学部材15を形成することができる。この光学部材15は、
図3に示すように、例えば、第1主面11a側において、45度の2つの傾斜面、つまり11b{100}面と、35度の2つの傾斜面、つまり11dとの2種類の傾斜面を備える。そして、11b{100}面と、35度の傾斜面11dとは、例えば、徐々に傾斜角度が変化した複数の面方位の面又は丸みをおびた曲面11eによって連結されている。第2主面側においても同様である。
【0081】
実施例2:半導体レーザ装置
この実施例の半導体レーザ装置10は、
図4A及び4Bに示すように、主として、実装基板1と、実装基板1上に設けられたサブマウント3と、サブマウント3上に設けられた半導体レーザ素子4と、光学部材15とを備える。また、半導体レーザ素子4及び光学部材15は、キャップ8によって気密封止されている。
【0082】
実装基板1は、長方形のAlNからなる絶縁性のセラミック板1aと、その下面に配置されたCuからなる金属部材1bによって構成されている。
実装基板1の上面には、金属層2A、2Bが、半導体レーザ素子4及び光学部材15が載置される部位にそれぞれ互いに離間して配置されている。
金属層2Aは、実装基板1側からTi(0.06μm)/Pt(0.2μm)が積層されており、さらに、その上にAu−Sn系共晶半田(3μm)が配置されている。金属層2Bは、実装基板1側からTi(0.06μm)/Pt(0.2μm)/Au(1μm)/Pd(0.3μm)が積層されており、さらに、その上にAu−Sn系共晶半田(3μm)が配置されている。
【0083】
光学部材15は、実施例1で得られる光学部材15であり、シリコンからなる。光学部材15は、第1主面11a及び第2主面11cに対して45度傾斜した傾斜面11bである{100}面を4つ備える。第1主面11aには、SiO
2膜/ZrO
2膜(75nm/50nm)の積層構造からなる反射膜13を有する。
光学部材15の傾斜面11bは、金属層2Bを介して、実装基板1に固定されている。光学部材15の最下端から最上端までの高さ、つまり互いに平行に対向する傾斜面11b間の長さは1000μmである。
【0084】
サブマウント3は、裏面に、Ti(0.06μm)/Pt(0.2μm)が積層されたAlNから構成されている。サブマウント3は、例えば、450μm×1900μm×200μm(厚み)の直方体形状を有する。
サブマウント3の実装基板1上への実装時には、実装基板1側からTi(0.06μm)/Pt(0.2μm)と、Au−Sn系共晶半田(3μm)と、Pt(0.2μm)/Ti(0.06μm)がこの順に積層され、加熱によって実装される。
【0085】
半導体レーザ素子4は、サブマウント3上に、例えば、Au−Sn系共晶半田を介して配置されている。半導体レーザ素子4は、窒化物半導体から形成された発振波長445nmの略矩形の素子(150×1200μm)である。
半導体レーザ素子4の光学部材15側の端面は、サブマウント3の光学部材15側の端面よりも、光学部材15側に配置されている。その端面間の距離は、例えば、15μmである。
半導体レーザ素子4の光出射面は、光学部材15の反射面と対面しており、100μm程度離間して配置されている。
【0086】
キャップ8は、半導体レーザ素子4及び光学部材15を気密封止するように実装基板1上に固定されている。キャップ8は上面に開口部を有しており、開口部にはガラスからなる透光性部材7が設けられている。
【0087】
このような半導体レーザ装置10では、光学部材15において、第1主面又は第2主面のいずれかの平滑度に非常に優れた面に膜質の良好な反射膜が配置していることにより、反射効率及び耐久性に優れた半導体レーザ装置を安価に得ることができる。
さらに、第1主面及び第2主面に対して傾斜し、互いに平行な一対の面が、高精度に、第1主面及び第2主面に対して45度に制御されているために、この傾斜面の一方によって安定して光学部材15を固定することができる。そして他方の傾斜面は、実装基板及び半導体レーザ装置に対して平行、つまり水平面とすることができるために、吸引装置等による光学部材15のハンドリング性を向上させることができ、ピックアップ等の作業効率を向上させることができる。
【0088】
また、半導体レーザ素子4の大部分をサブマウント3上に配置させることができるために、サブマウント3による放熱性を確保することができる。さらに、半導体レーザ素子4と光学部材15とを近接させることができるため、レーザ光のビーム径を小さく維持することができ、高輝度の光を得ることができる。
【0089】
実施例3:半導体レーザ装置
この実施例の半導体レーザ装置10Aは、
図5に示すように、光学部材15と半導体レーザ素子4との間にレンズ6が配置されている以外、実質的に半導体レーザ装置10と同様の構成を有する。
レンズ6は、半導体レーザ素子4から出射された光をコヒーレント光にするためのコリメートレンズ機能を有する。
【0090】
実施例4:光学部材の製造方法
この実施例の光学部材の製造方法では、傾斜面をエッチングにより形成する際に、断面形状を略V字状の溝とし(
図2C参照)、その後さらにエッチングを進行させて、
図6に示すように、第1主面側及び第2主面側の双方の溝を連結させる以外、実質的に実施例1と同様の方法によって光学部材25を形成する。
【0091】
よって、シリコン基板の分割をする場合に、シリコン基板11の<100>方向での分割を省略することができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
また、この光学部材25では、上述した光学部材の効果に加え、光学部材15に比較して、傾斜面11bの面積を若干大きく採ることができる。よって、半導体レーザ装置の実装基板へのより安定した固定を図ることができ、吸引装置等による光学部材15のハンドリング性をより一層向上させ、ピックアップ等の作業効率を向上させることができる。
【0092】
実施例5:光学部材の製造方法
この実施例の光学部材の製造方法では、実施例1と同様のシリコン基板11を準備し、
図7A及び7Bに示すように、シリコン基板11の第1主面11a及び第2主面11cに、それぞれ、<100>方向と<110>方向にそれぞれ沿った開口を有するマスクパターン32X、32Yを形成する。
このマスクパターン32X及び32Yは、<100>方向に伸びる開口32Xa及び32Yaの幅が異なっている。開口32Xaの幅Qは、250μmであり、開口32Yaの幅Q2は、500μmである。開口32Xa、32Yaの<100>方向に沿った中心線は、互いに一致した位置に存在する。
このマスクを用いて、実施例1と同様にエッチングし、反射膜13を形成し、シリコン基板11を分割することにより、
図7Cに示すような光学部材35を得ることができる。
【0093】
この光学部材35では、上述した光学部材の効果に加え、光学部材15に比較して、傾斜面11b2の面積を傾斜面11b1の面積よりも若干大きく採ることができる。よって、傾斜面11b2を半導体レーザ装置の実装基板への固定に用いる場合には、より安定した固定を図ることができる。
あるいは、傾斜面11b1を半導体レーザ装置の実装基板への固定に用いる場合には、傾斜面11b2に対して吸引装置等を適用することができ、光学部材15のハンドリング性をより一層向上させ、ピックアップ等の作業効率を向上させることができる。
【0094】
実施例6:光学部材の製造方法
この実施例の光学部材の製造方法では、実施例1と同様のシリコン基板11を準備し、
図8A及び8Bに示すように、シリコン基板11の第1主面11a及び第2主面11cに、それぞれ、<100>方向と<110>方向にそれぞれ沿った開口を有するマスクパターン42X、42Yを形成する。
このマスクパターン42X及び42Yは、<100>方向に伸びる開口42Xa及び32Yaの幅は同じであるが、透視平面において、開口42Xa、42Yaの<100>方向に沿った中心線は、等間隔で交互に存在する。第1主面11a及び第2主面11cそれぞれにおける開口のピッチは、実施例1の2倍である。
このマスクを用いて、実施例1と同様にエッチングし、反射膜13を形成し、シリコン基板11を分割することにより、分割面11fをも備える、
図8Cに示すような光学部材45を得ることができる。
【0095】
この光学部材45では、上述した光学部材の効果に加え、第1主面及び第2主面のそれぞれにおいて、傾斜面を構成する面積を低減、つまり半減させることができるために、反射面となる第1主面又は第2主面の面積を大きく採ることができる。よって、半導体レーザ装置へ適用する場合に、実装マージンに余裕を与えることができるために、半導体レーザ装置への実装をより簡便に行うことができる。
【0096】
実施例6:半導体レーザ装置
この実施例の半導体レーザ装置40は、
図9に示すように、光学部材15に代えて、光学部材45を用いた以外、実質的に半導体レーザ装置10と同様の構成である。