【文献】
Russian Journal of General Chemistry,2000年,Vol.70, No.10,pp.1555-1556
【文献】
JOURNAL OF MATERIALS SCIENCE LETTERS,1993年,Vol.12, No.10,pp.724-727
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記一般式(2)
【化2】
で示される1,1−ジフェニルエチレンと、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
1は炭素数1〜12の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。nは0〜2の整数である。)
で示されるハイドロジェンハロシラン化合物をヒドロシリル化し、得られた下記一般式(4)
【化4】
(式中、R
1は炭素数1〜12の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。nは0〜2の整数である。)
で示されるジフェニルエチルハロシラン化合物をメチルエステル化することを特徴とする請求項1記載のジフェニルエチル基及びメトキシシリル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなジフェニルエチル基を有するクロロシラン化合物は、加水分解性が高いものの水やシラノール等活性水素を有する化合物と反応する際に、腐食性の高い塩化水素が発生し、またこれを処理するために塩基性化合物と反応させると塩酸塩といった廃棄物が生成する問題があった。また、ジフェニルエチル基を有するエトキシシラン化合物は極性が低く、活性水素を有する化合物と親和性が低いために加水分解が容易に進行せず、処理する際に長時間を有するといった問題があった。
【0007】
よって、ジフェニルエチル基を有し、加水分解性が高く、かつ、使用時に腐食性のある塩化水素等を発生しない有機ケイ素化合物の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ジフェニルエチル基及びメトキシシリル基を有し、加水分解性が高く、かつ、使用時に腐食性のある塩化水素等を発生しない有機ケイ素化合物並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため、下記ジフェニルエチル基及びメトキシシリル基を有する有機ケイ素化合物並びにその製造方法を提供する。
[1]
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は炭素数1〜12の非置換又は置換の1価炭化水素基である。nは0〜2の整数である。)
で示されるジフェニルエチル基及びメトキシシリル基を有する有機ケイ素化合物。
[2]
下記一般式(2)
【化2】
で示される1,1−ジフェニルエチレンと、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
1は炭素数1〜12の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。nは0〜2の整数である。)
で示されるハイドロジェンハロシラン化合物をヒドロシリル化し、得られた下記一般式(4)
【化4】
(式中、R
1は炭素数1〜12の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。nは0〜2の整数である。)
で示されるジフェニルエチルハロシラン化合物をメチルエステル化することを特徴とする[1]記載のジフェニルエチル基及びメトキシシリル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
[3]
反応温度60〜90℃でヒドロシリル化することを特徴とする[2]記載のジフェニルエチル基及びメトキシシリル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記ジフェニルエチル基及びメトキシシリル基を有する有機ケイ素化合物は、エトキシシリル基を有する有機ケイ素化合物に比べ、非常に加水分解性が高く、かつ、使用時に塩化水素の発生がない。また、これを使用した材料に高屈折率を付与することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のジフェニルエチル基及びメトキシシリル基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)
【化5】
(式中、R
1は炭素数1〜12の非置換又は置換の1価炭化水素基である。nは0〜2の整数である。)
で示されるものである。
【0013】
上記一般式(1)中、R
1は炭素数1〜12、好ましくは1〜6の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等の直鎖状、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基等の分岐状、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。また、炭化水素基の水素原子の一部又は全部が置換されていてもよく、該置換基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基などのアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子からなる基、シアノ基、アミノ基、芳香族炭化水素基、エステル基、酸素原子が介在したアルキル基、アシル基、スルフィド基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。これらの置換基の置換位置は特に限定されず、置換基数も限定されない。好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0014】
一般式(1)で示される化合物として具体的には、(2,2−ジフェニルエチル)トリメトキシシラン、(2,2−ジフェニルエチル)メチルジメトキシシラン、(2,2−ジフェニルエチル)ジメチルメトキシシラン、(2,2−ジフェニルエチル)エチルジメトキシシラン、(2,2−ジフェニルエチル)ジエチルメトキシシラン、(2,2−ジフェニルエチル)フェニルジメトキシシラン、(2,2−ジフェニルエチル)ジフェニルメトキシシラン等が挙げられる。
【0015】
一般式(1)のジフェニルエチル基及びメトキシシリル基を有する有機ケイ素化合物の製造方法としては、下記一般式(2)
【化6】
で示される1,1−ジフェニルエチレンと、下記一般式(3)
【化7】
(式中、R
1は炭素数1〜12の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。nは0〜2の整数である。)
で示されるハイドロジェンハロシラン化合物をヒドロシリル化し、得られた下記一般式(4)
【化8】
(式中、R
1は炭素数1〜12の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。nは0〜2の整数である。)
で示されるジフェニルエチルハロシラン化合物をメチルエステル化する方法又は下記一般式(2)
【化9】
で示される1,1−ジフェニルエチレンと下記一般式(5)
【化10】
(式中、R
1は炭素数1〜12の非置換又は置換の1価炭化水素基である。nは0〜2の整数である。)
で示されるハイドロジェンオルガノキシシラン化合物をヒドロシリル化する方法が挙げられる。
【0016】
上記一般式(3)、(4)又は(5)中、R
1は上記一般式(1)中のR
1と同様である。
【0017】
一般式(3)中、Xは、具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、入手の容易さから特に塩素が好ましい。
【0018】
一般式(3)で示される化合物として具体的には、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、エチルジクロロシラン、ジエチルクロロシラン、フェニルジクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、トリフルオロシラン、メチルジフルオロシラン、ジメチルフルオロシラン、エチルジフルオロシラン、ジエチルフルオロシラン、フェニルジフルオロシラン、ジフェニルフルオロシラン等が挙げられる。
【0019】
一般式(4)で示される化合物として具体的には、(2,2−ジフェニルエチル)トリクロロシラン、(2,2−ジフェニルエチル)メチルジクロロシラン、(2,2−ジフェニルエチル)ジメチルクロロシラン、(2,2−ジフェニルエチル)エチルジクロロシラン、(2,2−ジフェニルエチル)ジエチルクロロシラン、(2,2−ジフェニルエチル)フェニルジクロロシラン、(2,2−ジフェニルエチル)ジフェニルクロロシラン、(2,2−ジフェニルエチル)トリフルオロシラン、(2,2−ジフェニルエチル)メチルジフルオロシラン、(2,2−ジフェニルエチル)ジメチルフルオロシラン、(2,2−ジフェニルエチル)エチルジフルオロシラン、(2,2−ジフェニルエチル)ジエチルフルオロシラン、(2,2−ジフェニルエチル)フェニルジフルオロシラン、(2,2−ジフェニルエチル)ジフェニルフルオロシラン等が挙げられる。
【0020】
一般式(5)で示される化合物として具体的には、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、エチルジメトキシシラン、ジエチルメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、ジフェニルメトキシシラン等が挙げられる。
【0021】
上記1,1−ジフェニルエチレンと一般式(3)又は(5)で示されるハイドロジェンシラン化合物とのヒドロシリル化反応は、一般的なヒドロシリル化触媒を用いて反応させることができる。使用される触媒としては、例えば、白金化合物、ロジウム化合物、パラジウム化合物、イリジウム化合物等が挙げられ、活性や選択性、安定性の面から白金化合物が好ましい。白金化合物としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン又はキシレン溶液、ジクロロビスアセトニトリル白金、ジクロロビスベンゾニトリル白金、ジクロロシクロオクタジエン白金等が例示される。また、白金黒等をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させて使用してもよい。
【0022】
上記触媒の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、1,1−ジフェニルエチレン1モルに対し、0.000001〜0.01モル、特に0.00001〜0.001モルの範囲が好ましい。触媒の配合比が0.000001モル未満だと触媒の十分な効果が発現しない可能性があり、0.01モルを超えると、触媒の量に見合うだけの反応促進効果が見られない可能性がある。
【0023】
上記ヒドロシリル化反応の反応温度は特に限定されないが、50〜200℃、好ましくは60〜150℃、特に60〜90℃では1,1−ジフェニルエチレンの2量化反応よりヒドロシリル化反応性が優先的に進行し、かつ、ヒドロシリル化の反応性が高い点で好ましい。反応時間は特に制限がないものの1〜100時間、特に1〜40時間が経済的観点から好ましい。
【0024】
なお、上記ヒドロシリル化反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
上記一般式(4)で示されるジフェニルエチルハロシラン化合物をメチルエステル化する方法としては、公知の方法で行うことが可能である。具体的には、例えば、メタノールを用いる方法、メタノールと共に3級アミン類や尿素等の塩酸捕捉剤を用いる方法、ナトリウムメトキシドといった金属アルコキシドを用いる方法、オルトギ酸トリメチル、オルト酢酸トリメチルといったオルトカルボン酸トリメチルを用いる方法が挙げられる。また、メチルエステル化を行う条件は特に制限がなく、公知の方法に従って行うことが可能である。
【0026】
本発明の有機ケイ素化合物は、そのまま使用しても問題ないが、溶媒に希釈して用いた方が簡便で好ましい。溶媒としては、水、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示され、特に水、アルコール溶液が好ましい。用いる濃度としては、有機ケイ素化合物が、0.001〜50質量%となるように希釈して用いるとよい。
【0027】
本発明の有機ケイ素化合物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、顔料、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、pH調節剤、フィルム形成剤、帯電防止剤、抗菌剤、界面活性剤、染料等から選択される他の添加剤の1種以上を含有するものであってもよい。
【0028】
本発明の有機ケイ素化合物の用途は特に限定されるものではないが、具体的には、無機充填剤の表面処理、液状封止剤、鋳物用鋳型、樹脂の表面改質、高分子変性剤及び塗料の添加剤等を挙げることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例、参考例、合成例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0030】
[実施例1](2,2−ジフェニルエチル)トリメトキシシランの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1,1−ジフェニルエチレン180g(1.0モル)、塩化白金酸の2−エチルヘキサノール溶液(1,1−ジフェニルエチレン1モル当たり1.0×10
-4モルの白金を含む)を仕込み、トリクロロシラン136g(1.0モル)を内温80〜90℃で8時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。
【0031】
次いで、内温60〜70℃でメタノール77g(2.4モル)を5時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。その後トリエチルアミン86g(0.85モル)を加え、内温60〜70℃でメタノール42g(1.3モル)を1時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。ろ過により塩を除去後、得られた反応液にナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加し、蒸留することで、165〜167℃/0.3kPaの無色透明な留分を256g得た。
【0032】
得られた留分の質量スペクトル、
1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルを測定した。
図1には
1H−NMRスペクトルのチャート、
図2にはIRスペクトルのチャートを示した。質量スペクトルの結果を下記に示す。
質量スペクトル
m/z 302、270、238、167、121
以上の結果より、得られた留分は(2,2−ジフェニルエチル)トリメトキシシランであることを確認した。なお、25℃での屈折率は1.528だった。
【0033】
[実施例2](2,2−ジフェニルエチル)メチルジメトキシシランの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1,1−ジフェニルエチレン90g(0.5モル)、塩化白金酸の2−エチルヘキサノール溶液(1,1−ジフェニルエチレン1モル当たり1.0×10
-4モルの白金を含む)を仕込み、メチルジクロロシラン58g(0.5モル)を内温60〜70℃で8時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。
【0034】
次いで、内温60〜70℃でメタノール19g(0.6モル)を2時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。その後トリエチルアミン56g(0.55モル)を加え、内温60〜70℃でメタノール21g(0.7モル)を1時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。ろ過により塩を除去後、得られた反応液にナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加し、蒸留することで、155〜156℃/0.3kPaの無色透明な留分を109g得た。
【0035】
得られた留分の質量スペクトル、
1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルを測定した。
図3には
1H−NMRスペクトルのチャート、
図4にはIRスペクトルのチャートを示した。質量スペクトルの結果を下記に示す。
質量スペクトル
m/z 286、254、222、167、105
以上の結果より、得られた留分は(2,2−ジフェニルエチル)メチルジメトキシシランであることを確認した。
【0036】
[実施例3](2,2−ジフェニルエチル)ジメチルメトキシシランの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1,1−ジフェニルエチレン90g(0.5モル)、塩化白金酸の2−エチルヘキサノール溶液(1,1−ジフェニルエチレン1モル当たり1.0×10
-4モルの白金を含む)を仕込み、ジメチルクロロシラン57g(0.6モル)を内温80〜90℃で12時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。
【0037】
次いで、内温60〜70℃でメタノール4g(0.1モル)を0.5時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。その後トリエチルアミン71g(0.7モル)を加え、内温60〜70℃でメタノール21g(0.7モル)を1時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。ろ過により塩を除去後、得られた反応液にナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加し、蒸留することで、135〜136℃/0.1kPaの無色透明な留分を96g得た。
【0038】
得られた留分の質量スペクトル、
1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルを測定した。
図5には
1H−NMRスペクトルのチャート、
図6にはIRスペクトルのチャートを示した。質量スペクトルの結果を下記に示す。
質量スペクトル
m/z 270、238、222、151、89
以上の結果より、得られた留分は(2,2−ジフェニルエチル)ジメチルメトキシシランであることを確認した。
【0039】
[参考例1](2,2−ジフェニルエチル)トリクロロシランの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1,1−ジフェニルエチレン36g(0.2モル)、塩化白金酸の2−エチルヘキサノール溶液(1,1−ジフェニルエチレン1モル当たり1.0×10
-4モルの白金を含む)を仕込み、トリクロロシラン27g(0.2モル)を内温50〜60℃で8時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。1,1−ジフェニルエチレンの2量体(1,1,3,3−テトラフェニルシクロブタン)が1,1−ジフェニルエチレンに対し30%以上生成した。
【0040】
[合成例1](2,2−ジフェニルエチル)トリエトキシシランの合成
実施例1において、メタノールの代わりにエタノールを使用し、ナトリウムメトキシドの代わりにナトリウムエトキシドを使用することで、沸点158〜160℃/0.1kPaで(2,2−ジフェニルエチル)トリエトキシシランを得た。
【0041】
[実施例4、比較例1]加水分解性試験
実施例1及び合成例1にて合成した(2,2−ジフェニルエチル)トリメトキシシラン及び(2,2−ジフェニルエチル)トリエトキシシランの加水分解性試験を行った結果を表1に示す。実施例4は(2,2−ジフェニルエチル)トリメトキシシラン、比較例1は(2,2−ジフェニルエチル)トリエトキシシランを用いた結果である。なお、試験条件は1%酢酸水:メタノール=70:30の溶液中にシラン1wt%を添加して室温で撹拌し、所定時間後の状態を確認した。
【表1】
【0042】
実施例4では、4時間後に加水分解が完了し、均一な溶液が得られ、12時間経過後も溶液は均一を保った。比較例1では、12時間後でも加水分解は未達であり、(2,2−ジフェニルエチル)トリエトキシシランは分液していた。