(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂(A)が、水酸基を複数有する水酸基含有有機化合物に含まれる水酸基のうち一部を、シアノアルキル化することにより得られたものである請求項1に記載の樹脂組成物。
フェノール性の水酸基を分子内に有し、水酸基価が150mgKOH/g未満であるフェノール化合物(E)をさらに含有する請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
前記樹脂(A)中に含有される水酸基と、シアノアルキル基との割合が、「水酸基:シアノアルキル基」のモル比で、50:50〜2:98である請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、水酸基及びシアノアルキル基を含有する樹脂(A)と、分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)と、水酸基を分子内に2以上有し、水酸基価が150〜300mgKOH/gである硬化剤(C)と、後述する一般式(1)で表される構造を有する架橋剤(D)と、を含有する。
【0013】
(水酸基及びシアノアルキル基を含有する樹脂(A))
水酸基及びシアノアルキル基を含有する樹脂(A)(以下、「水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)」とする。)としては、水酸基とシアノアルキル基とを含有する樹脂であればよく、特に限定されないが、例えば、水酸基を複数有する水酸基含有有機化合物を出発原料として用い、これをアクリロニトリルと反応させることにより、水酸基含有有機化合物に含まれる水酸基のうち一部を、シアノアルキル化することにより得られたものなどが挙げられる。
【0014】
水酸基含有有機化合物としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ガラクトース等の単糖類;麦芽糖、ショ糖、乳糖等の二糖類;ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール、セルロース、でんぷん、プルラン等の多糖類;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ジヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース;ジヒドロキシプロピルプルラン等の多糖類誘導体;ポリビニルアルコール等;ポリビニルフェノール;ノボラック樹脂;ポリビニルフェノール;等が挙げられる。
【0015】
これらのなかでも、ゲート絶縁膜とした場合における、誘電率の向上効果が高いという点より、プルラン、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0016】
また、水酸基含有有機化合物を置換するためのシアノアルキル基としては、特に限定されないが、一般式:−R−CN(Rは、炭素数2〜6のアルキレン基)で表される基が挙げられ、例えば、シアノエチル基、1−シアノプロピル基、1−シアノブチル基、1−シアノヘキシル基などが挙げられる。これらのなかでも、水酸基含有有機化合物への導入が比較的容易であり、汎用性が高いという点より、シアノエチル基が好ましい。また、本発明で用いる水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)は、2種以上のシアノアルキル基を有するものであってもよい。なお、このようなシアノアルキル基は、対応するシアノ基含有化合物を用い、これを水酸基含有有機化合物と反応することにより導入することができる。シアノアルキル化率はNMRや元素分析による窒素含有率から算出できる。
【0017】
本発明で用いる水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)中における、水酸基と、シアノアルキル基との割合は、「水酸基:シアノアルキル基」のモル比で、好ましくは50:50〜2:98であり、より好ましくは30:70〜2:98、さらに好ましくは15:85〜2:98である。水酸基の割合が低すぎると(シアノアルキル化率が高すぎると)、得られるゲート絶縁膜の耐薬品性が低下する傾向にある。一方、水酸基の割合が高すぎすると(シアノアルキル化率が低すぎると)、得られるゲート絶縁膜の誘電率が低下する傾向にある。
【0018】
(分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B))
分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)(以下、単に「エポキシ化合物(B)」とする。)としては、エポキシ基を2以上有する化合物であればよく、特に限定されない。また、エポキシ基としては、末端エポキシ基、脂環式エポキシ基のいずれでもよい。
【0019】
このようなエポキシ化合物(B)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ポリフェノール型エポキシ化合物、環状脂肪族エポキシ化合物、グリシジルエーテル化合物、エポキシ基含有アクリレート重合体等が挙げられる。これらのなかでも、得られるゲート絶縁膜の耐ドライエッチング性をより向上させることができるという点より、芳香族炭化水素構造を有するエポキシ化合物が好ましく、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−([2,3−エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、ナフタレン構造又はフルオレン構造を有するエポキシ化合物がより好ましい。なお、これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0020】
エポキシ化合物(B)の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物(商品名「jER827、jER828、jER828EL、jER828XA、jER834、jER1001、jER1002、jER1003、jER1007、jER1009、jER1010、jERYL980U」(以上、三菱化学社製))、ビスフェノールF型エポキシ化合物(商品名「jER806、jER806H、jER807、jER4004P、jER4005P、jER4007P、jER4010P、jERYL983U」(以上、三菱化学社製))、ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物(商品名「エピクロンHP4032、HP4032D、HP4700、HP4710、HP4770、HP5000」(以上、DIC社製))、ビフェニルジメチレン型のエポキシ化合物(商品名「NC−3000」、日本化薬社製)、芳香族アミン型エポキシ化合物(商品名「H−434」、東都化成工業社製)、クレゾールノボラック型エポキシ化合物(商品名「EOCN−1020」、日本化薬社製)、フェノールノボラック型エポキシ化合物(商品名「エピコート152、154」(以上、三菱化学社製))、フェノールアラルキル型エポキシ化合物(商品名「NC−2000」、日本化薬社製)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物(商品名「jER157S」、三菱化学社製)、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−([2,3−エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパン(商品名「NC−6000」、日本化薬社製)、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン(商品名「jER1031S」、三菱化学社製、「TEP‐G」旭有機材工業社製)ジヒドロアントラセン型エポキシ化合物(商品名「XY8800」、三菱化学社製)等の芳香族炭化水素構造を有するエポキシ化合物;
【0021】
ジシクロペンタジエンを骨格とする3官能性のエポキシ化合物(商品名「XD−1000」、日本化薬社製)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(シクロヘキサン骨格及び末端エポキシ基を有する15官能性の脂環式エポキシ樹脂、商品名「EHPE3150」、ダイセル化学工業社製)、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(脂肪族環状3官能性のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT301」、ダイセル化学工業社製)、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(脂環式エポキシ基を有する脂肪族環状4官能性のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT401」、ダイセル化学工業社製)、鎖状アルキル多官能エポキシ化合物(商品名「SR−TMP」、阪本薬品工業株式会社製)、(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」、ダイセル化学工業社製)等の芳香族炭化水素構造を有しないエポキシ化合物;等が挙げられる。
【0022】
本発明の樹脂組成物中におけるエポキシ化合物(B)の含有量は、水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜80重量部であり、より好ましくは10〜50重量部である。エポキシ化合物(B)の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゲート絶縁膜の耐薬品性及び耐ドライエッチング性を適切に高めることができる。
【0023】
(水酸基を分子内に2以上有し、水酸基価が150〜300mgKOH/gである硬化剤(C))
本発明で用いる、水酸基を分子内に2以上有し、水酸基価が150〜300mgKOH/gである硬化剤(C)(以下、単に「硬化剤(C)」とする。)としては、水酸基を2つ以上有する化合物であればよく、特に限定されないが、水酸基としてフェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。硬化剤(C)として、エポキシ基と反応する水酸基がフェノール性水酸基である化合物を用いることで、得られるゲート絶縁膜の耐ドライエッチング性を向上させることができる。硬化剤(C)は、その水酸基により、上述したエポキシ化合物(B)に含有されるエポキシ基と反応することで、エポキシ化合物(B)に対する硬化剤として作用するとともに、後述する架橋剤(D)に含有されるアルコキシメチル基と反応することで、架橋剤(D)に対する硬化剤としても作用する。
【0024】
硬化剤(C)としては、水酸基を分子内に2以上有し、水酸基価が150〜300mgKOH/gの範囲にある化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ビフェニレン型フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂等のジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
また、硬化剤(C)としては、水酸基価が150〜300mgKOH/gの範囲にある化合物であればよいが、その水酸基価は、好ましくは160〜250mgKOH/g、より好ましくは175〜220mgKOH/gである。
【0026】
本発明の樹脂組成物中における硬化剤(C)の含有量は、水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは3〜80重量部であり、さらに好ましくは5〜50重量部である。硬化剤(C)の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゲート絶縁膜の強度をより適切なものとすることができる。
【0027】
(一般式(1)で表される構造を有する架橋剤(D))
本発明の樹脂組成物は、上述した水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)、エポキシ化合物(B)、及び硬化剤(C)に加えて、下記一般式(1)で表される構造を有する架橋剤(D)(以下、「架橋剤(D)」とする。)を含有する。
【化3】
【0028】
上記一般式(1)中、R
1、R
2は、炭素数1〜20のアルキル基であり、上述した水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)に対する溶解性の観点より、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。なお、R
1とR
2とは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0029】
本発明で用いる架橋剤(D)としては、上記一般式(1)で表される構造を有するものであればよく、特に限定されないが、たとえば、下記一般式(2)〜(4)で表される化合物が好ましい。
【化4】
(上記一般式(2)〜(4)中、R
1、R
2は、上記一般式(1)と同様であり、上記一般式(3)中、R
3、R
4は、炭素数1〜20のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。また、上記一般式(3)中、R
1、R
2、R
3、R
4は、全てあるいはいずれかが互いに同じであってもよいし、全て異なっていてもよい。)
【0030】
また、本発明で用いる架橋剤(D)の具体例としては、下記式(5)〜(10)で表される化合物が挙げられ、これらの中でも、本発明の作用効果がより一層顕著になるという点より、下記式(7)、(9)で表される化合物が好ましく、下記式(9)で表される化合物がより好ましい。
【化5】
【0031】
本発明の樹脂組成物中における架橋剤(D)の含有量は、水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜100重量部、より好ましくは1〜50重量部であり、さらに好ましくは5〜20重量部である。架橋剤(D)の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゲート絶縁膜の耐薬品性、及び密着性、さらには膜形成後に高温処理を行った際の密着性をより高めることができる。
【0032】
(フェノール化合物(E))
また、本発明の樹脂組成物は、上述した各成分に加えて、フェノール性の水酸基を分子内に有し、水酸基価が150mgKOH/g未満であるフェノール化合物(E)(以下、単に「フェノール化合物(E))」とする。)を含有していてもよい。水酸基価が150mgKOH/g未満であるフェノール化合物(E)をさらに含有することで、膜形成後の焼成による密着性の低下を抑制しつつ耐薬品性をより高めることができる。
【0033】
本発明で用いるフェノール化合物(E)としては、水酸基価が150mgKOH/g未満であり、かつ、フェノール性の水酸基を有するものであればよく、特に限定されないが、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ビフェニレン型フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂等のジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
また、フェノール化合物(E)としては、水酸基価が150mgKOH/g未満である化合物であればよいが、その水酸基価は、好ましくは50〜140mgKOH/g、より好ましくは80〜120mgKOH/gである。
【0035】
本発明の樹脂組成物中におけるフェノール化合物(E)の含有量は、水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜100重量部、より好ましくは1〜50重量部であり、さらに好ましくは5〜20重量部である。フェノール化合物(E)の含有量を上記範囲とすることにより、その添加効果をより高めることができる。また、フェノール化合物(E)の含有量は、上述した硬化剤(C)との合計量(すなわち、フェノール化合物(E)と硬化剤(C)との合計量)で、水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)100重量部に対して、1〜100重量部の範囲となるような量とすることが好ましく、より好ましくは5〜50重量部であり、さらに好ましくは10〜40重量部である。フェノール化合物(E)と硬化剤(C)との合計量を上記範囲とすることにより、得られるゲート絶縁膜の耐薬品性、及び密着性、さらには膜形成後に高温処理を行った際の密着性をより高めることができる。フェノール化合物(E)は、硬化剤(C)と同様に、その水酸基により、上述したエポキシ化合物(B)に含有されるエポキシ基と反応することで、エポキシ化合物(B)に対する硬化剤として作用するとともに、後述する架橋剤(D)に含有されるアルコキシメチル基と反応することで、架橋剤(D)に対する硬化剤としても作用する。
【0036】
(硬化触媒(F))
また、本発明の樹脂組成物は、上記各成分に加えて、硬化触媒(F)を含有していてもよい。硬化触媒(F)としては、たとえば、酸性基又は潜在性酸性基を有する化合物、及び塩基性基又は潜在性塩基性基を有する化合物などが挙げられる。酸性基又は潜在性酸性基を有する化合物は、酸性基又は加熱や光により酸を生じる潜在性酸性基を有するものであればよく、特に限定されないが、好ましくは脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環化合物であり、さらに好ましくは芳香族化合物、複素環化合物である。塩基性基又は潜在性塩基性基を有する化合物は、塩基性基又は加熱により塩基性基を生じる潜在性塩基性基を有するものであればよく、特に限定されないが、好ましくは脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環化合物であり、さらに好ましくは芳香族化合物、複素環化合物である。硬化触媒(F)を配合することで、本発明の樹脂組成物を硬化させる際における硬化に要する加熱エネルギー(加熱時間及び加熱温度)を低減することができる。
【0037】
酸性基を有する化合物の酸性基の数は、特に限定されないが、合計で2つ以上の酸性基を有するものが好ましい。酸性基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
酸性基としては、酸性の官能基であればよく、その具体例としては、スルホン酸基、リン酸基等の強酸性基;カルボキシ基、チオール基及びカルボキシメチレンチオ基等の弱酸性基;が挙げられる。これらの中でも、カルボキシ基、チオール基又はカルボキシメチレンチオ基が好ましく、カルボキシ基が特に好ましい。また、これらの酸性基の中でも、酸解離定数pKaが3.5以上5.0以下の範囲にあるものが好ましい。なお、酸性基が2つ以上ある場合は第一解離定数pKa1を酸解離定数とし、第一解離定数pKa1が上記範囲にあるものが好ましい。また、pKaは、希薄水溶液条件下で、酸解離定数Ka=[H
3O
+][B
−]/[BH]を測定し、pKa=−logKaにしたがって、求められる。ここでBHは、有機酸を表し、B
−は有機酸の共役塩基を表す。
なお、pKaの測定方法は、例えばpHメータを用いて水素イオン濃度を測定し、該当物質の濃度と水素イオン濃度から算出することができる。
【0038】
さらに、酸性基又は潜在性酸性基を有する化合物は、酸性基及び潜在性酸性基以外の置換基を有していてもよい。
このような置換基としては、アルキル基、アリール基等の炭化水素基のほか、ハロゲン原子;アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヘテロ環オキシ基;アルキル基又はアリール基又は複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基;アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基;等のプロトンを有しない極性基、これらのプロトンを有しない極性基で置換された炭化水素基、等を挙げることができる。
【0039】
このような酸性基又は潜在性酸性基を有する化合物のうち、酸性基有する化合物の具体例としては、メタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、グリコール酸、グリセリン酸、エタン二酸(「シュウ酸」ともいう。)、プロパン二酸(「マロン酸」ともいう。)、ブタン二酸(「コハク酸」ともいう。)、ペンタン二酸、ヘキサン二酸(「アジピン酸」ともいう。)、1、2―シクロヘキサンジカルボン酸、2−オキソプロパン酸、2−ヒドロキシブタン二酸、2−ヒドロキシプロパントリカルボン酸、メルカプトこはく酸、ジメルカプトこはく酸、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2,3−トリメルカプトプロパン、2,3,4−トリメルカプト−1−ブタノール、2,4−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、1,3,4−トリメルカプト−2−ブタノール、3,4−ジメルカプト−1,2−ブタンジオール、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン等の脂肪族化合物;
【0040】
安息香酸、p−ヒドロキシベンゼンカルボン酸、o−ヒドロキシベンゼンカルボン酸、2−ナフタレンカルボン酸、メチル安息香酸、ジメチル安息香酸、トリメチル安息香酸、3−フェニルプロパン酸、ジヒドロキシ安息香酸、ジメトキシ安息香酸、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸(「フタル酸」ともいう。)、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸(「イソフタル酸」ともいう。)、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸(「テレフタル酸」ともいう。)、ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、2−(カルボキシメチル)安息香酸、3−(カルボキシメチル)安息香酸、4−(カルボキシメチル)安息香酸、2−(カルボキシカルボニル)安息香酸、3−(カルボキシカルボニル)安息香酸、4−(カルボキシカルボニル)安息香酸、2−メルカプト安息香酸、4−メルカプト安息香酸、ジフェノール酸、2−メルカプト−6−ナフタレンカルボン酸、2−メルカプト−7−ナフタレンカルボン酸、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン等の芳香族化合物;
【0041】
ニコチン酸、イソニコチン酸、2−フロ酸、ピロール−2,3−ジカルボン酸、ピロール−2,4−ジカルボン酸、ピロール−2,5−ジカルボン酸、ピロール−3,4−ジカルボン酸、イミダゾール−2,4−ジカルボン酸、イミダゾール−2,5−ジカルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、ピラゾール−3,4−ジカルボン酸、ピラゾール−3,5−ジカルボン酸等の窒素原子を含む五員複素環化合物;チオフェン−2,3−ジカルボン酸、チオフェン−2,4−ジカルボン酸、チオフェン−2,5−ジカルボン酸、チオフェン−3,4−ジカルボン酸、チアゾール−2,4−ジカルボン酸、チアゾール−2,5−ジカルボン酸、チアゾール−4,5−ジカルボン酸、イソチアゾール−3,4−ジカルボン酸、イソチアゾール−3,5−ジカルボン酸、1,2,4−チアジアゾール−2,5−ジカルボン酸、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジカルボン酸、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3,5−ジメルカプト−1,2,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−(5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−3−イルスルファニル)こはく酸、2−(5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イルスルファニル)こはく酸、(5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−3−イルチオ)酢酸、(5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオ)酢酸、3−(5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−3−イルチオ)プロピオン酸、2−(5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオ)プロピオン酸、3−(5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−3−イルチオ)コハク酸、2−(5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオ)コハク酸、4−(3−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−5−イル)チオブタンスルホン酸、4−(2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオブタンスルホン酸等の窒素原子と硫黄原子を含む五員複素環化合物;
【0042】
ピリジン−2,3−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−3,4−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリダジン−3,4−ジカルボン酸、ピリダジン−3,5−ジカルボン酸、ピリダジン−3,6−ジカルボン酸、ピリダジン−4,5−ジカルボン酸、ピリミジン−2,4−ジカルボン酸、ピリミジン−2,5−ジカルボン酸、ピリミジン−4,5−ジカルボン酸、ピリミジン−4,6−ジカルボン酸、ピラジン−2,3−ジカルボン酸、ピラジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、トリアジン−2,4−ジカルボン酸、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジプロピルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン等の窒素原子を含む六員複素環化合物;が挙げられる。
【0043】
潜在性酸性基は、光や加熱により酸性の官能基を生じる基であればよく、その具体例としては、スルホニウム塩基、ベンゾチアゾリウム塩基、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、ヨードニウム塩、ブロックカルボン酸基等が挙げられ、これらの中でも、スルホニウム塩基が好ましく、例えば、六フッ化リン系や六フッ化アンチモン系のスルホニウム塩基を用いることができる。このようなスルホニウム塩基を有する化合物としては、例えば、サンエイドSIシリーズ(100L,110L,150、180L、三新化学工業社製)等を用いることができる。
塩基性基としては、塩基性の官能基であればよく、その具体例としては、アミノ基、窒素含有複素環が挙げられる。アミノ基含有化合物としては、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン類;4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族ポリアミン類が挙げられる。窒素含有複素環化合物としては、2−メチルイミダゾール(品名;2MZ)、4−メチル−2−エチルイミダゾール(品名;2E4MZ)、2−フェニルイミダゾール(品名;2PZ)、4−メチル−2−フェニルイミダゾール(品名;2P4MZ)、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(品名;1B2MZ)、2−エチルイミダゾール(品名;2EZ)、2−イソプロピルイミダゾール(品名;2IZ)、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(品名;2MZ−CN)、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール(品名;2E4MZ−CN)、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(品名;C11Z−CN)などがある。
潜在性塩基性基を有する化合物としては、光や加熱により塩基性の官能基を生じる化合物であればよい。その具体例として、WPBG−018、WPBG−027、WPBG−082、WPBG−140(以上、和光純薬工業社製)などが挙げられる。
【0044】
本発明の樹脂組成物中における硬化触媒(F)の含有量は、水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜50重量部、より好ましくは0.1〜20重量部であり、より好ましくは1〜10重量部である。硬化触媒(F)の含有量を上記範囲とすることにより、樹脂組成物を硬化する際に硬化に要する熱エネルギーを効果的に低減することができ、これにより、製造コストを低減することができる。
【0045】
(その他の配合剤)
本発明の樹脂組成物には、さらに、溶剤が含有されていてもよい。溶剤としては、特に限定されず、樹脂組成物の溶剤として公知のもの、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、4−オクタノンなどの直鎖のケトン類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルコールエーテル類;ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類;セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブエステル類;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのプロピレングリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどのジエチレングリコール類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトンなどの飽和γ−ラクトン類;トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミドなどの極性溶媒などが挙げられる。これらの溶剤は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶剤の含有量は、水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは10〜10000重量部、より好ましくは50〜5000重量部、さらに好ましくは100〜1000重量部の範囲である。なお、樹脂組成物に溶剤を含有させる場合には、溶剤は、通常、ゲート絶縁膜形成後に除去されることとなる。
【0046】
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、所望により、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤又はその誘導体、増感剤、光安定剤、消泡剤、顔料、染料、フィラー等のその他の配合剤;等を含有していてもよい。これらのうち、例えば、カップリング剤又はその誘導体、増感剤、光安定剤は、特開2011−75609号公報に記載されたものなどを用いることができる。
【0047】
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、通常の重合体に使用されている、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤等が使用できる。酸化防止剤を含有させることにより、得られるゲート絶縁膜の耐光性、耐熱性を向上させることができる。
【0048】
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されているアクリレート系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン− ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t −ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス〔2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ペンタエリズリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、トリエチレングリコール ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、トコフェロールなどのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などを用いることができる。
【0049】
リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用されているものであれば格別な制限はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10 −(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン− ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス[フェニル−ジ−アルキル(C12 〜C15)ホスファイト]、4,4’−イソプロピリデン−ビス[ジフェニルモノアルキル(C12 〜C15)ホスファイト]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(イソデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジメチルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)などのジホスファイト系化合物などを用いることができる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
【0050】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル 3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル 3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル 3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル 3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどを用いることができる。
【0051】
これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
本発明の樹脂組成物中における酸化防止剤の含有量は、水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部であり、より好ましくは1〜5重量部である。酸化防止剤の含有量が上記範囲にあると、得られるゲート絶縁膜の耐光性及び耐熱性を良好なものとすることができる。
【0053】
界面活性剤は、ストリエーション(塗布筋あと)の防止等の目的で使用される。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ポリオキシアルキレン系界面活性剤、メタクリル酸共重合体系界面活性剤、アクリル酸共重合体系界面活性剤などを挙げることができる。
【0054】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、商品名「SH28PA、SH29PA、SH30PA、ST80PA、ST83PA、ST86PA、SF8416、SH203、SH230、SF8419、SF8422、FS1265、SH510、SH550、SH710、SH8400、SF8410、SH8700、SF8427」(以上、東レ・ダウコーニング社製)、商品名「KP−321、KP−323、KP−324、KP−340、KP−341」(以上、信越化学社製)、商品名「TSF400、TSF401、TSF410、TSF4440、TSF4445、TSF4450、TSF4446、TSF4452、TSF4460」(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、商品名「BYK300、BYK301、BYK302、BYK306、BYK307、BYK310、BYK315、BYK320、BYK322、BYK323、BYK331、BYK333、BYK370、BYK375、BYK377、BYK378」(以上、ビックケミー・ジャパン社製)などを挙げることができる。
【0055】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、フロリナート「FC−430、FC−431」(以上、住友スリーエム社製)、サーフロン「S−141、S−145、S−381、S−393」(以上、旭硝子社製)、エフトップ「EF301、EF303、EF351、EF352」(以上、ジェムコ社製)、メガファック「F171、F172、F173、R−30」(以上、DIC社製)などを挙げることができる。
ポリオキシアルキレン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレートポリオキシエチレンジアルキルエステル類などを挙げることができる。
これらの界面活性剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
本発明の樹脂組成物中における界面活性剤の含有量は、水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜0.5重量部であり、より好ましくは0.02〜0.2重量部である。界面活性剤の含有量が上記範囲にあると、ストリエーション(塗布筋あと)の防止効果をより高めることができる。
【0057】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されず、樹脂組成物を構成する各成分を公知の方法により混合すればよい。
混合の方法は特に限定されないが、樹脂組成物を構成する各成分を溶剤に溶解又は分散して得られる溶液又は分散液を混合するのが好ましい。これにより、樹脂組成物は、溶液又は分散液の形態で得られる。
【0058】
樹脂組成物を構成する各成分を溶剤に溶解又は分散する方法は、常法に従えばよい。具体的には、攪拌子とマグネティックスターラーを使用した攪拌、高速ホモジナイザー、ディスパー、遊星攪拌機、二軸攪拌機、ボールミル、三本ロール等を使用して行なうことができる。また、各成分を溶剤に溶解又は分散した後に、例えば、孔径が0.1μm程度のフィルター等を用いて濾過してもよい。
【0059】
(ゲート絶縁膜)
次いで、本発明のゲート絶縁膜について、説明する。本発明のゲート絶縁膜は、上述した本発明の樹脂組成物からなり、通常、薄膜トランジスタに用いられる。
【0060】
以下においては、本発明のゲート絶縁膜を、ボトムゲート型の薄膜トランジスタに適用した場合を例示して説明する。ここで、
図1は、本発明のゲート絶縁膜が適用される薄膜トランジスタの一例としてのボトムゲート型の薄膜トランジスタ1の断面図を示す。本発明のゲート絶縁膜が適用される薄膜トランジスタとしては、
図1に示す構造を有する薄膜トランジスタに何ら限定されるものではない。
【0061】
図1に示すように、本発明のゲート絶縁膜が適用される薄膜トランジスタの一例としてのボトムゲート型の薄膜トランジスタ1は、基板2上に、ゲート電極3、上述した本発明の樹脂組成物からなるゲート絶縁膜4、半導体層5、ソース電極6及びドレイン電極7、保護層8を有する。なお、
図1においては、単一の薄膜トランジスタ1を示したが、基板2上に複数の薄膜トランジスタ1が形成されているような構成(例えば、アクティブマトリックス基板など)であってもよい。
【0062】
基板2としては、特に限定されず、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、脂環式オレフィンポリマーなどの柔軟性のあるプラスチックからなるフレキシブル基板、石英、ソーダガラス、無機アルカリガラスなどのガラス基板、シリコンウェハなどのシリコン基板などを挙げることができる。
【0063】
ゲート電極3は、導電性材料で形成されている。導電性材料としては、例えば、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が挙げられる。またドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン(ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体など)が挙げられる。
【0064】
ゲート絶縁膜4は、上述した本発明の樹脂組成物から構成されるものであり、所定パターンでゲート電極3を形成した基板2上に、上述した本発明の樹脂組成物を塗布し、必要に応じて溶剤を除去した後に、硬化することにより形成される。
【0065】
半導体層5は、アモルファスシリコン半導体、有機半導体、またはアモルファス酸化物半導体からなる層であり、これらのなかでも、本発明の作用効果をより高めることができるという点より、アモルファス酸化物半導体からなる層であることが特に好ましい。半導体層5を有機半導体からなる層とする場合には、たとえば、ペンタセンやポリチオフェン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリアリルアミン誘導体、ポリアセチレン誘導体、アセン誘導体、オリゴチオフェンなどに代表される有機半導体材料を用いることができる。また、半導体層5をアモルファス酸化物半導体からなる層とする場合には、In、Ga、及びZnのうち少なくとも1種の元素を含むアモルファス酸化物半導体からなるスパッタ膜とすることができる。アモルファス酸化物半導体としては、In、Ga、及びZnのうち少なくとも1種の元素を含むものであればよいが、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、亜鉛スズ酸化物(ZTO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)などが挙げられる。
【0066】
ソース電極6及びドレイン電極7は、導電性材料で形成されている。導電性材料としては、上述のゲート電極3と同様のものを用いることができる。
保護層8は、基板2、ゲート電極3、ゲート絶縁膜4、半導体層5、ソース電極6及びドレイン電極7を含む各構成要素の露出表面を被覆して保護する層である。保護層8を構成する材料としては、SiO
2、SiON
x、SiN
x、及びAl
2O
3などの無機膜、およびアクリル、ポリイミド、シクロオレフィン、エポキシ、ノボラックなどの各種樹脂から成る有機膜が挙げられる。なお、この保護層8は単層でもよいし、多層としてもよい。なお、本実施形態に係る薄膜トランジスタ1は、保護層8を備えて構成したが、備えていなくてもよい。
【0067】
次いで、半導体層5としてアモルファス酸化物半導体を用いる場合における、
図1に示す薄膜トランジスタ1の製造方法について説明する。
図2は、薄膜トランジスタ1の製造工程を示す図である。
【0068】
まず、基板2上に、ゲート電極3を形成するための導電性材料からなる層を、スパッタリング法などにより基板2上に形成する。次いで、フォトリソグラフィ法によりレジストパターン(不図示)を形成し、レジストパターンをマスクにして、導電性材料からなる層について、ウェットエッチング法によりエッチングを行い、次いで、レジストパターンを剥離することで、
図2(A)に示すように、基板2上に、ゲート電極3を形成する。
【0069】
次いで、
図2(B)に示すように、ゲート電極3を形成した基板2に、本発明の樹脂組成物を塗布し、必要に応じて溶剤を除去した後に、硬化することにより、ゲート絶縁膜4を形成する。本発明の樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ドクターブレード法、回転塗布法、バー塗布法、スクリーン印刷法等の各種の方法を採用することができる。また、硬化温度(架橋温度)は、通常、100〜300℃、好ましくは100〜250℃、より好ましくは100〜230℃、硬化時間は、通常、0.5〜300分間、好ましくは1〜150分間、より好ましくは1〜60分間である。ゲート絶縁膜4の厚さは、特に限定されないが、好ましくは100〜2000nm、より好ましくは100〜1000nm、さらに好ましくは100〜500nmである。
【0070】
次いで、
図2(C)に示すように、ゲート電極3及びゲート絶縁膜4を形成した基板2のゲート絶縁膜4上に半導体層5を形成する。具体的には、まず、ゲート絶縁膜4上にスパッタリング法を用いて、In、Ga、及びZnのうち少なくとも1種の元素を含むアモルファス酸化物半導体からなる層(以下、「アモルファス酸化物半導体層」とする。)を、ゲート絶縁膜4の表面全体に形成する。アモルファス酸化物半導体層は、例えば、半導体層5をインジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)により形成する場合には、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)、及び酸化亜鉛(ZnO)をそれぞれ等モルずつ混合して焼結したターゲットを用い、DC(Direct Current)スパッタリング法により成膜する。なお、スパッタリングは、チャンバ内に、流量100〜300sccmのアルゴン(Ar)ガスと、流量5〜20sccmの酸素(O
2)ガスを導入して行うことができる。また、このときの基板温度を150〜400℃とする。なお、アモルファス酸化物半導体層を形成した後、200〜500℃の大気雰囲気中で、1〜2時間程度のアニールを行なってもよい。次いで、形成したアモルファス酸化物半導体層の表面に所定のレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとしてアモルファス酸化物半導体層をドライエッチング法によりエッチングし、その後、レジストパターンを剥離することで、
図2(C)に示すように、ゲート絶縁膜4上に半導体層5を形成する。
【0071】
次いで、
図2(D)に示すように、ゲート絶縁膜4及び半導体層5上に、ソース電極6及びドレイン電極7を形成する。具体的には、まず、スパッタリング法を用いて、基板2、ゲート絶縁膜4及び半導体層5の上面の全面に渡り、ソース電極6及びドレイン電極7を形成する異なる導電性材料からなる層を形成する。次いで、形成した導電性材料からなる層の上に、フォトリソグラフィ法を用いて、ソース電極6及びドレイン電極7の形状に対応するレジストパターンを形成する。そして、形成したレジストパターンをマスクにして、ドライエッチング法により、導電性材料からなる層をエッチングし、その後、レジストパターンを剥離することで、
図2(D)に示すように、ソース電極6及びドレイン電極7を形成する。
【0072】
次いで、ゲート絶縁膜4、半導体層5、ソース電極6、及びドレイン電極7の上面(露出面)の全体を覆うように保護層(パッシベーション膜)8を形成して、
図1に示すようなボトムゲート型(チャネルエッチ型)の薄膜トランジスタ1を製造する。保護層8は、前述の材料等を用いて、たとえば、プラズマCVD法などにより形成することができる。以上のようにして、
図1に示すボトムゲート型の薄膜トランジスタ1は製造される。
【0073】
本発明においては、このようなボトムゲート型の薄膜トランジスタ1などの電子部品などに用いられるゲート絶縁膜を、上述した本発明の樹脂組成物で形成するものであり、該樹脂組成物は、水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)、エポキシ化合物(B)、硬化剤(C)、及び架橋剤(D)を含有し、誘電率が高く、耐薬品性及び密着性に優れ、しかも、膜形成後に高温処理を行った際の密着性の低下が適切に防止された樹脂膜を与えるものである。そのため、本発明によれば、
図1に示す薄膜トランジスタ1のゲート絶縁膜4を、本発明の樹脂組成物で形成することにより、ゲート絶縁膜4上に、半導体層5やソース電極6、ドレイン電極7を形成する際に、現像液やエッチング液に晒された場合でも、その優れた耐薬品性により、劣化による膜厚変動を有効に防止することができる。加えて、本発明によれば、半導体層5やソース電極6、ドレイン電極7を形成する際に、比較的高温で焼成が行われた場合でも、本発明の樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜からなるゲート絶縁膜4は、膜形成後に高温処理を行った際の密着性の低下が適切に防止されたものであるため、このような焼成による密着性の低下も有効に防止することができる。特に、本発明の樹脂組成物を用いて得られるゲート絶縁膜4は、このように、劣化による膜厚変動や膜形成後に高温処理を行った際の密着性の低下を有効に防止しながら、高誘電率を達成することができるため、これにより、得られる薄膜トランジスタ1などの電子部品の高性能化が可能となる。
【0074】
なお、上記においては、
図1に示すボトムゲート型の薄膜トランジスタ1を例示して説明を行ったが、本発明のゲート絶縁膜は、このようなボトムゲート型の薄膜トランジスタ1に限定されず、
図3に示すようなトップゲート型の薄膜トランジスタ1aをはじめ、各種電子部品のゲート絶縁膜として好適に用いることができる。ここで、
図3は、本発明に係る樹脂組成物からなるゲート絶縁膜を備えるトップゲート型の薄膜トランジスタ1aを示す断面図であり、上述した薄膜トランジスタ1と同じ構成部材には同じ番号を付し、その説明を省略する。なお、
図3に示すトップゲート型の薄膜トランジスタ1aは、基板2上に、ソース電極6、ドレイン電極7、半導体層5、上述した本発明の樹脂組成物からなるゲート絶縁膜4、及びゲート電極3を有する。
【0075】
あるいは、本発明に係る樹脂組成物からなるゲート絶縁膜は、
図4に示すようなエッチストップレイヤー型の薄膜トランジスタ1bのゲート絶縁膜としても好適に用いることができる。ここで、
図4は、本発明に係る樹脂組成物からなるゲート絶縁膜を備えるエッチストップレイヤー型の薄膜トランジスタ1bを示す断面図であり、上述した薄膜トランジスタ1と同じ構成部材には同じ番号を付し、その説明を省略する。
図4に示す薄膜トランジスタ1bは、チャンネル部10を覆うようにエッチストッパー9が形成されている点を除き、上述した
図1に示す薄膜トランジスタ1と同様の構成を有するものである。
図4に示すように、この薄膜トランジスタ1bにおいては、半導体層5の端部付近及びエッチストッパー9の端部付近を覆うようにしてソース電極6及びドレイン電極7がそれぞれ設けられた構成となっている。なお、
図4中においては、保護膜8を形成していない態様を示したが、
図1に示す薄膜トランジスタ1と同様に、ソース電極6、ドレイン電極7及びエッチストッパー9上に、保護層8を形成してもよい。
【実施例】
【0076】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。
なお、各特性の定義及び評価方法は、以下のとおりである。
【0077】
<誘電率>
各実施例及び各比較例において作製した樹脂組成物を用いて、樹脂組成物をシリコンウェハ上にスピンコートした後、ホットプレートを用いて110℃で2分間プリベークして、樹脂膜を形成した。次いで、窒素中において180℃で1時間加熱することにより、500nm厚の樹脂膜が形成されたシリコンウェハからなる樹脂膜試料を得た。そして、得られた樹脂膜試料を用いて、JIS C6481に準じて、10kHz(室温)で、樹脂膜の誘電率を測定した。
【0078】
<成膜後の密着性>
各実施例及び各比較例において作製した樹脂組成物を、ガラス基板上にスピンコートした後、ホットプレートを用いて110℃で2分間プリベークして、樹脂膜を形成した。次いで、窒素中において180℃で1時間加熱することにより、2μm厚の樹脂膜が形成された樹脂膜付き基板を得た。
【0079】
密着性試験は、以下に説明する表面−界面切削法(SAICAS法)により行った。すなわち、上記にて得られた樹脂膜付き基板の樹脂膜部分にカッターで1mm幅の切込みを入れ、切込みを入れた樹脂膜付き基板について、密着性測定装置として、ダイプラ・ウィンテス社のサイカスDN−20型にて、切刃として、1.0mm幅、すくい角20°、逃げ角10°の単結晶ダイヤモンド製の切刃を用いて、水平速度0.2μm/秒、垂直速度0.02μm/秒で試料を切削し、切刃が樹脂膜とガラス基板表面との界面まで切削したところで、垂直速度を0μm/秒として切刃を基板に平行に動かして平行力FH[N]を測定した。そして、得られた平行力FH[N]と、切刃の幅w[m]から、剥離強度Pを式「P[N/m]=FH[N]/w[m]」に従って算出し、得られた剥離強度Pを、樹脂膜の密着性の値として、以下の基準にて評価した。
A:剥離強度Pが100N/m以上
B:剥離強度Pが80N/m以上、100N/m未満
C:剥離強度Pが80N/m未満
【0080】
<追加焼成後の密着性>
上述した「成膜後の密着性」の評価と同様に、2μm厚の樹脂膜が形成された樹脂膜付き基板を得て、さらに、この得られた樹脂膜付き基板について、220℃、1時間加熱することにより、追加焼成樹脂膜付き基板を得た。そして、得られた追加焼成樹脂膜付き基板を用いた以外は、上述した「成膜後の密着性」の評価と同様に、剥離強度Pを求め、同様の基準にて、追加焼成後の密着性の評価を行った。
【0081】
<耐薬品性>
上述した「成膜後の密着性」の評価と同様に樹脂膜試料を得て、得られた樹脂膜試料を、アセトン中に、25℃で15分間浸漬し、浸漬前後の樹脂膜の厚みの変化率を測定することで、耐薬品性の評価を行った。なお、浸漬前後の樹脂膜の厚みの変化率は、「浸漬前後の樹脂膜の厚みの変化率(%)=(|浸漬後の樹脂膜の厚み−浸漬前の樹脂膜の厚み|/浸漬前の樹脂膜の厚み)×100」に従って算出した。また、耐薬品性は、以下の基準で評価した。
A:浸漬前後の樹脂膜の厚みの変化率が10%未満
B:浸漬前後の樹脂膜の厚みの変化率が10%以上、20%未満
C:浸漬前後の樹脂膜の厚みの変化率が20%以上
【0082】
《実施例1》
水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)として、シアノエチル化プルラン(商品名「シアノレジンCR−S」、信越化学工業社製、水酸基:シアノエチル基=10:90(モル比))100部、エポキシ化合物(B)として、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン(商品名「jER1031S」、三菱化学社製)20部、硬化剤(C)として、フェノール−アラルキル型樹脂(商品名「KAYAHARD GPH−65」、日本化薬社製、水酸基価:175mgKOH/g)10部、架橋剤(D)として、上記式(9)で示される化合物(商品名「ニカラックMX−270」、三和ケミカル社製)5部、フェノール化合物(E)として、ノボラック型フェノール樹脂(商品名「PAPS−PN4」、旭有機材工業社製、水酸基価:104mgKOH/g)10部、硬化触媒(F)として、PF
6−系スルホニウム塩(商品名「サンエイドSI−110L」、三新化学工業社製)部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「Z6040」、東レ・ダウコーニング株式会社製、シランカップリング剤)1部、及び溶剤として、γ‐ブチロラクトン60部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40部を混合し、溶解させた後、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して樹脂組成物を調製した。
【0083】
そして、上記にて得られた樹脂組成物を用いて、上記した方法にしたがい、誘電率、成膜後の密着性、追加焼成後の密着性及び耐薬品性の各試験・評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
《実施例2〜9》
樹脂組成物を調製する際に、表1に示す各化合物を、表1に示す配合量にて用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、同様に試験・評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
《比較例1〜4》
樹脂組成物を調製する際に、表1に示す各化合物を、表1に示す配合量にて用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、同様に試験・評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
なお、表1中、各化合物は以下の通りである。
・「シアノエチル化ポリビニルアルコール」は、シアノエチル化ポリビニルアルコール(商品名「シアノレジンCR−V」、信越化学工業社製、水酸基:シアノエチル基=15:85(モル比)、水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A))
・「ポリビニルフェノール」は、ポリビニルフェノール(商品名「マルカリンカーMS4P」、丸善石油化学社製、水酸基を含有するが、シアノアルキル基を含有しない樹脂)
・「エポキシ化合物(エピクロンHP4700)」は、ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物(商品名「エピクロンHP4700」、DIC社製、エポキシ化合物(B))
・「エポキシ化合物(NC−6000)」は、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−([2,3−エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパン(商品名「NC−6000」、日本化薬社製、エポキシ化合物(B))
・「エポキシ化合物(jERYX8800)」は、アントラセン ジヒドリド型エポキシ樹脂(商品名「jERYX8800」、三菱化学社製、エポキシ化合物(B))
・「硬化剤(MEH−7800)」は、フェノール−アラルキル型樹脂(商品名「MEH−7800」、明和化成社製、硬化剤(C)、水酸基価:175mgKOH/g)
・「硬化剤(MEH−7851)」は、フェノール−ビフェニレン型樹脂(商品名「MEH−7851」、明和化成社製、硬化剤(C)、水酸基価:220mgKOH/g)
・「式(7)で示される架橋剤(ニカラックMX280)」は、上記式(7)で示される化合物(商品名「ニカラックMX280」、三和ケミカル社製、架橋剤(D))
・「メラミン系架橋剤(サイリンク2000)」は、メラミン系架橋剤(商品名「サイリンク2000」、サイテックインダストリーズ社製、メラミン系架橋剤)
・「メラミン系架橋剤(サイメル350)」は、メラミン系架橋剤(商品名「サイメル350」、サイテックインダストリーズ社製、メラミン系架橋剤)
【0087】
【表1】
【0088】
表1に示すように、水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)、エポキシ化合物(B)、硬化剤(C)、及び上記一般式(1)で表される構造を有する架橋剤(D)を含有する本発明の樹脂組成物からなる樹脂膜は、いずれも誘電率が高く、耐薬品性、成膜後の密着性、及び追加焼成後の密着性に優れており、各種電子部品のゲート絶縁膜用途、特に、ボトムゲート型の薄膜トランジスタのゲート絶縁膜用途に好適なものであった(実施例1〜11)。
【0089】
一方、上記一般式(1)で表される構造を有する架橋剤(D)の代わりに、メラミン系架橋剤を用いた場合には、得られる樹脂膜は、追加焼成後の密着性に劣る結果となった(比較例1,2)。
また、硬化剤(C)を配合しなかった場合にも、得られる樹脂膜は、追加焼成後の密着性に劣る結果となった(比較例3)。
さらに、水酸基−シアノアルキル基含有樹脂(A)の代わりに、ポリビニルフェノール(水酸基を含有する一方で、シアノアルキル基を含有しない樹脂)を用いた場合には、得られる樹脂膜は、誘電率が低くなるとともに、追加焼成後の密着性に劣る結果となった(比較例4)。