特許第6354808号(P6354808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6354808-ガラス基板 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6354808
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】ガラス基板
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/085 20060101AFI20180702BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   C03C3/085
   G02F1/1333 500
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-157902(P2016-157902)
(22)【出願日】2016年8月10日
(62)【分割の表示】特願2013-541696(P2013-541696)の分割
【原出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2016-193831(P2016-193831A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2016年8月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-238869(P2011-238869)
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】西沢 学
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04156755(US,A)
【文献】 国際公開第2011/049100(WO,A1)
【文献】 特開2010−254549(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/086664(WO,A1)
【文献】 特開2012−214356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 − 14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO、Al、NaO、KO、MgO、及びZrOを含み、
下記酸化物基準のモル百分率表示で、
SiOを60〜74%、
Alを6〜13%、
MgOを6〜10%、
ZrOを0超〜1%、
Oを0超〜2%含有し、
CaO、B、BaO、SrO、LiOを実質的に含有せず、
NaO/(NaO+KO)が0.77〜1
MgO−0.5Alが2〜6であり、
MgO+0.5Alが7〜15であり、
ガラス転移点温度が580〜720℃である、ガラス基板。
【請求項2】
ガラス表面失透温度(T)が900〜1300℃、ガラス内部失透温度(T)が900〜1300℃である、請求項1に記載のガラス基板。
【請求項3】
粘度が10dPa・sとなる温度(T)が1100〜1350℃、粘度が10dPa・sとなる温度(T)とガラス表面失透温度(T)との関係(T−T)が−50〜350℃である、請求項2に記載のガラス基板。
【請求項4】
前記粘度が10dPa・sとなる温度(T)と前記ガラス内部失透温度(T)との関係(T−T)が−50〜350℃である、請求項3に記載のガラス基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板に関する。特に、液晶ディスプレイ(LCD)パネル(特にTFTパネル)、プラズマディスプレイパネル(PDP)等、各種ディスプレイパネルに用いるディスプレイパネル用ガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からLCDパネル用のガラス基板には、アルカリ金属酸化物を含有しない無アルカリガラスが用いられている。この理由は、ガラス基板中にアルカリ金属酸化物が含まれていると、LCDパネルの製造工程で実施される熱処理中に、ガラス基板中のアルカリイオンがLCDパネルの駆動に用いる薄膜トランジスタ(TFT)の半導体膜に拡散して、TFT特性の劣化を招くおそれがあるからである。
また、無アルカリガラスは、熱膨張係数が低く、ガラス転移点(Tg)が高いため、LCDパネルの製造工程での寸法変化が少なく、LCDパネル使用時の熱応力による表示品質への影響が少ないことからも、LCDパネル用のガラス基板として好ましい。
【0003】
しかしながら、無アルカリガラスは、製造面において以下に述べるような課題を有している。
無アルカリガラスは粘性が非常に高く、溶融が困難といった性質を有し、製造に技術的な困難性を伴う。
また、一般的に、無アルカリガラスは清澄剤の効果が乏しい。例えば、清澄剤としてSO3を使用した場合、SO3が(分解して)発泡する温度がガラスの溶融温度よりも低いため、清澄がなされる前に、添加したSO3の大部分が分解して溶融ガラスから揮散してしまい、清澄効果を十分発揮することができない。
【0004】
TFTパネル用(「a−Si TFTパネル用」)のガラス基板として、アルカリ金属酸化物を含有するアルカリガラス基板を使用することも提案されている(特許文献1参照)。これはTFTパネル製造工程における熱処理を、従来350〜450℃で行ってきたものを比較的低温(250〜300℃程度)で行うことが可能になりつつあるためである。
アルカリ金属酸化物を含有するガラスは、一般的に熱膨張係数が高いため、TFTパネル用のガラス基板として好ましい熱膨張係数とする目的で、熱膨張係数を低減させる効果を有するB23が通常含有される(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、Bを含有するガラス組成とした場合、ガラスを溶解した際に、特に溶解工程、清澄工程およびフロート成形工程において、Bが揮散するため、ガラス組成が不均質になりやすい。ガラス組成が不均質になると、板状に成形する際の平坦性に影響を与える。TFTパネル用のガラス基板は、表示品質確保のため、液晶を挟む2枚のガラス基板間隔、すなわちセルギャップを一定に保つために高度の平坦度が要求される。このため所定の平坦度を確保するために、フロート法で板ガラスに成形された後、板ガラスの表面の研磨を行うが、成形後の板ガラスで所定の平坦性が得られていないと、研磨工程に要する時間が長くなり生産性が低下する。また、前記Bの揮散による環境負荷を考慮すると、溶融ガラス中のBの含有率はより低いことが好ましい。
だが、B含有率が低いと、TFTパネル用のガラス基板として好ましい熱膨張係数まで下げること、および粘性の上昇を抑えつつ所定のTg等を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2006−137631号公報
【特許文献2】日本国特開2006−169028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、TFTパネル製造工程の前述の低温での熱処理において、低温でのガラスのコンパクション(熱収縮率)がガラス基板上の成膜品質(成膜パターン精度)に大きく影響し得ることを見出した。本発明は、アルカリ金属酸化物を含有し、Bが少なく、TFTパネル製造工程における低温(150〜300℃)での熱処理においてコンパクション(C)が小さく、ガラス基板上の成膜パターニング時の位置ずれが生じ難いTFTパネルに適したガラス基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、
SiO、Al、MgO、NaO、及びZrOを含み、
下記酸化物基準のモル百分率表示で、
SiOを60〜74mol%、
Alを6〜18%、
MgOを7%以上、
NaOを7〜13%、
Oを0〜3%含有し、
NaO+KOが7〜14.0%であり、
MgO+0.5Alが1〜20%であり、
CaO、B、BaO、SrOを実質的に含有せず、
ガラス転移点温度が580℃以上、コンパクション(C)が15ppm以下である、ガラス基板を提供する。
また、本発明の他の側面は、
SiO、Al、NaO、KO、MgO、及びZrOを含み、
下記酸化物基準のモル百分率表示で、
SiOを60〜74%、
Alを6〜13%、
MgOを6〜10.5%、
ZrOを0超〜1%、
Oを0超〜2%含有し、
CaO、B、BaO、SrO、LiOを実質的に含有せず、
NaO/(NaO+KO)が0.77〜1、
MgO+CaO+SrO+BaOが1〜10%、
MgO−0.5Alが2〜6であり、
MgO+0.5Alが7〜15であり、
ガラス転移点温度が580〜720℃である、ガラス基板を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガラス基板は、TFTパネル製造工程における低温(150〜300℃)での熱処理においてコンパクション(C)が小さく(15ppm以下)、ガラス基板上の成膜パターニング時の位置ずれが生じ難い。したがって、近年の熱処理の低温化に対応した、特に大型のTFTパネル用のガラス基板、例えば、マザーガラスとして一辺が2m以上のガラス基板として好適に用いることができる。
また、B含有率が低いので、ガラス製造時におけるBの揮散が少ないことから、ガラス基板の均質性に優れ、平坦性および生産性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明のガラス基板におけるMgOとAlとの関係を示すグ ラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明のガラス基板>
本発明のガラス基板は、下記酸化物基準のモル百分率表示で、
SiOを60〜79%、
Alを2.5〜18%、
を0〜3%、
MgOを1〜15%、
CaOを0〜1%、
SrOを0〜1%、
BaOを0〜1%、
ZrOを0〜1%、
NaOを7〜15.5%、
Oを0〜3%、
LiOを0〜2%含有し、
NaO+KOが7〜15.5%、
NaO/(NaO+KO)が0.77〜1、
MgO+CaO+SrO+BaOが1〜18%、
MgO−0.5Alが0〜10であり、
MgO+0.5Alが1〜20であり、
ガラス転移点温度が580〜720℃、
50〜350℃における平均熱膨張係数が65×10−7〜85×10−7/℃であり、コンパクション(C)が15ppm以下であり、
ガラス表面失透温度(T)が900〜1300℃であり、
ガラス内部失透温度(T)が900〜1300℃であり、
粘度が10dPa・sとなる温度(T)が1100〜1350℃であり、
粘度が10dPa・sとなる温度(T)とガラス表面失透温度(T)との関係(T−T)が、−50〜350℃であり、
粘度が10dPa・sとなる温度(T)とガラス内部失透温度(T)との関係(T−T)が、−50〜350℃であるガラス基板である。
【0012】
なお、本発明のガラス基板のガラス転移点温度(Tg)は580℃以上、720℃以下である。本発明のガラス基板のガラス転移点温度(Tg)は、上記範囲であることで、TFTパネル製造工程における低温熱処理(150℃〜300℃)においてガラスの粘性が高くなるため、ガラス中のアルカリ成分のTFT素子への移動度が低くなり、TFTの性能劣化を抑えられる。コンパクション(C)を小さくする点から、600℃以上であるのが好ましく、640℃以上であるのがより好ましく、680℃以上であるのがさらに好ましい。
【0013】
また、本発明のガラス基板の50〜350℃における平均線膨張係数は85×10−7/℃以下である。上記範囲であることで、パネルの製造工程での寸法変化が少なく、カラーフィルタを有する対向ガラス基板とTFTを有するアレイガラス基板の合せ時のパターン合せが容易となる。さらに、パネル使用時の熱応力による品質への影響が少ないことから、特に表示品質面で好ましい。
なお、好ましくは80×10−7/℃以下、より好ましくは78×10−7/℃以下、さらに好ましくは76×10−7/℃以下である。また対向ガラス基板に一般的なソーダライムガラスを用い、アレイガラス基板に本発明のガラス基板を用いる場合の両者の熱膨張差の点から、65×10−7/℃以上である。
【0014】
本発明のガラス基板はコンパクション(C)が15ppm以下である。13ppm以下が好ましく、11ppm以下がより好ましく、9ppm以下がさらに好ましい。15ppm以下であると、TFTパネル製造工程における低温(150〜300℃)での熱処理において、アレイガラス基板上へのTFT成膜パターニング時の位置ずれが生じ難い。
【0015】
本発明においてコンパクション(C)とは、次に説明する方法で測定した値を意味するものとする。
初めに、対象となるガラスを1600℃で溶解した後、溶融ガラスを流し出し、板状に成形後冷却する。得られたガラス板を研磨加工して100mm×20mm×2mmの試料を得る。
次に、得られたガラス板を転移点温度Tg+50℃まで加熱し、この温度で1分間保持した後、降温速度50℃/分で室温まで冷却する。その後、ガラス板の表面に圧痕を長辺方向に2箇所、間隔A(A=90mm)で打つ。
次にガラス板を300℃まで昇温速度100℃/時(=1.6℃/分)で加熱し、300℃で1時間保持した後、降温速度100℃/時で室温まで冷却する。そして、再度、圧痕間距離を測定し、その距離をBとする。このようにして得たA、Bから下記式を用いてコンパクション(C)を算出する。なお、A、Bは光学顕微鏡を用いて測定する。
【0016】
C[ppm]=(A−B)/A×10
【0017】
本発明のガラス基板は、ガラス表面失透温度(T)が1300℃以下である。好ましくは1275℃以下であり、より好ましくは1250℃以下であり、特に好ましくは1225℃以下である。なお、他の物性確保の容易性を考慮すると、ガラス表面失透温度(T)は900℃以上である。
ガラス表面失透温度(T)とは、白金製の皿に粉砕されたガラス粒子を入れ、一定温度に制御された電気炉中で17時間熱処理を行い、熱処理後の光学顕微鏡観察によって、ガラスの表面に結晶が析出する最高温度と結晶が析出しない最低温度との平均値である。
【0018】
また、本発明のガラス基板は、ガラス内部失透温度(T)が1300℃以下である。好ましくは1275℃以下であり、より好ましくは1250℃以下であり、さらに好ましくは1225℃である。なお、他の物性確保の容易性を考慮すると、ガラス内部失透温度(T)は900℃以上である。
ガラス内部失透温度(T)とは、白金製の皿に粉砕されたガラス粒子を入れ、一定温度に制御された電気炉中で17時間熱処理を行い、熱処理後の光学顕微鏡観察によって、ガラスの内部に結晶が析出する最高温度と結晶が析出しない最低温度との平均値である。
【0019】
また、本発明のガラス基板は、粘度が10dPa・sとなる温度(T)が、1350℃以下である。1300℃以下であることが好ましく、より好ましくは1275℃以下であり、さらに好ましくは1250℃以下である。なお、他の物性確保の容易性を考慮すると、粘度が10dPa・sとなる温度(T)は1100℃以上である。
【0020】
本願発明のガラス基板の成形方法として、フロート法およびフュージョン法(ダウンドロー法)が適用できるが、フュージョン法のときはTにおけるガラス粘度は、103.8dPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは104.3dPa・s以上、さらに好ましくは104.7dPa・s以上、特に好ましくは105.3dPa・s以上である。なお、他の物性確保の容易性を考慮すると、フュージョン法のときはTは107.0dPa・s以下である。
また、フロート法のときはTにおけるガラス粘度は、103.8dPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは103.9dPa・s以上、さらに好ましくは104.0dPa・s以上である。なお、他の物性確保の容易性を考慮すると、フロート法のときはTは107.0dPa・s以下である。
【0021】
本発明のガラス基板は、粘度が10dPa・sとなる温度(T)が、1850℃以下であることが好ましく、より好ましくは1750℃以下であり、さらに好ましくは1650℃以下である。
【0022】
本発明のガラス基板は、密度が2.50g/cm以下であることが好ましく、より好ましくは2.45g/cm以下であり、さらに好ましくは2.43g/cm以下であり、特に好ましくは2.41g/cm以下である。なお、本発明のガラス基板は、他の物性確保の容易性を考慮すると、密度は2.35g/cm以上である。
【0023】
本発明のガラス基板は、光弾性定数が33nm/MPa/cm以下であることが好ましく、より好ましくは31nm/MPa/cm以下であり、さらに好ましくは30nm/MPa/cm以下であり、特に好ましくは29nm/MPa/cm以下である。
LCDパネル製造工程やLCD装置使用時に発生した応力によってガラス基板が複屈折性を有することにより、黒の表示がグレーとなりLCDのコントラストが低下する現象が認められることがある。光弾性定数を33nm/MPa/cm以下とすることにより、この現象を小さく抑えることができる。
また、本発明のガラス基板は、他の物性確保の容易性を考慮すると、光弾性定数が27nm/MPa/cm以上であることが好ましい。
なお、光弾性定数は、円盤圧縮法により測定できる。
【0024】
本発明のガラス基板は、ヤング率が66GPa以上であることが好ましく、より好ましくは70GPa以上であり、さらに好ましくは74GPa以上である。本発明のガラス基板は、ヤング率が80GPa以下であることが好ましい。この範囲とすることにより、液晶パネル製造工程において、ガラス基板を搬送する際、二端を保持した時の中央部のたわみ量が小さく、ガラス基板間で接触するなどのトラブルを抑止したり、ガラス基板間のスペースを小さくしたりすることができるなどのメリットがある。
また、一般的に、ヤング率が高いとガラス基板の機械特性の向上、割れに対する耐久性の向上に寄与する。
【0025】
本発明のガラス基板において上記組成に限定する理由は以下のとおりである。
SiO:ガラスの骨格を形成する成分で、60モル%(以下、単に「%」と記載する)未満ではガラスの耐熱性および化学的耐久性が低下し、また、密度、50〜350℃における平均熱膨張係数およびコンパクション(C)が増大するおそれがある。好ましくは62%以上であり、より好ましくは63%以上である。
しかし、79%超では光弾性定数が増大し、またガラスの高温粘度が上昇し溶解性が悪化する問題が生じるおそれがある。好ましくは77%以下であり、より好ましくは75%以下であり、さらに好ましくは74%以下である。
【0026】
Al:ガラス転移点温度を上げ、耐候性(ソラリゼーション)、耐熱性および化学的耐久性を向上し、ヤング率を高める。その含有量が2.5%未満だとガラス転移点温度が低下するおそれがある。また50〜350℃における平均熱膨張係数およびコンパクション(c)が増大するおそれがある。好ましくは4%以上であり、より好ましくは6%以上であり、さらに好ましくは7%以上である。
しかし、18%超では、ガラスの高温粘度が上昇し、溶解性が悪くなるおそれがある。また、失透温度(ガラス表面における表面失透温度(T)およびガラス内部における内部失透温度(T))が上昇し、成形性が悪くなるおそれがある。好ましくは16%以下であり、より好ましくは15%以下である。
【0027】
は、溶解性を向上させる等のために3%まで含有してもよい。含有量が3%を超えるとガラス転移点温度が下がる、または50〜350℃における平均熱膨張係数が小さくなり、光弾性定数が大きくなる傾向があるため、好ましくは含有量が1.5%以下である。含有量が0.5%以下であるとより好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
なお、「実質的に含有しない」とは、原料等から混入する不可避的不純物以外には含有しないこと、すなわち、意図的に含有させないことを意味する。
TFTパネル用ガラス基板として用いる場合、B含有率が低いと、ガラス基板製造時にガラスを溶解する際の、溶解工程、清澄工程および成形工程での、Bの揮散量が少なく、製造されるガラス基板が均質性および平坦性に優れる。その結果、高度の平坦性が要求されるTFTパネル用ガラス基板として使用する場合に、従来のTFTパネル用ガラス基板に比べて、表示品質に優れる。
また、Bの揮散による環境負荷を考慮しても、Bの含有率はより低いことが好ましい。
【0028】
MgO:ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進し、ガラス基板の耐候性を向上する効果があるので含有させるが、1%未満だとガラスの高温粘度が上昇し溶解性が悪化するおそれがある。好ましくは3%以上であり、より好ましくは5%以上であり、さらに好ましくは7%以上である。
しかし、15%超では、50〜350℃における平均熱膨張係数およびコンパクション(C)が増大するおそれがある。また失透温度(T)が上昇するおそれがある。好ましくは13%以下であり、より好ましくは11%未満であり、さらに好ましくは10%以下である。
【0029】
CaO:ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進する効果があるので含有させることができる。しかし、1%超ではガラスの50〜350℃における平均熱膨張係数およびコンパクション(C)が増大するおそれがある。好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは実質的に含有しない。
【0030】
SrO:ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進する効果があるので含有させることができる。しかし、1%超含有すると、ガラス基板の50〜350℃における平均熱膨張係数およびコンパクション(C)が増大するおそれがある。好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは実質的に含有しない。
【0031】
BaO:ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進する効果があるので含有させることができる。しかし、1%超含有すると、ガラス基板の50〜350℃における平均熱膨張係数およびコンパクション(C)が大きくなるおそれがある。好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは実質的に含有しない。
【0032】
ZrO2:ガラスの溶解時の粘性を下げ、溶解を促進する効果があるので含有させることができる。しかし、1%超含有すると、ガラス基板の密度、50〜350℃における平均熱膨張係数およびコンパクション(C)が増大するおそれがある。0.5%以下が好ましく、実質的に含有しないことがより好ましい。
【0033】
MgO、CaO、SrOおよびBaOは、ガラス基板の耐候性を向上させるため、また、光弾性定数を小さくするため、合量で1%以上とする。3%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、7%以上がさらに好ましい。しかし、合量で18%超ではガラスの50〜350℃における平均熱膨張係数およびコンパクション(C)が増大するおそれがある。16%以下が好ましく、12.5%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0034】
NaO:NaOはガラス溶解温度での粘性を下げ、溶解しやすくする効果があるので7〜15.5%含有させる。含有量が9%以上であると好ましく、11%以上であるとより好ましい。12%以上であるとさらに好ましい。
NaO含有量が15.5%を超えると50〜350℃における平均熱膨張係数およびコンパクション(C)が大きくなり、または化学的耐久性が劣化する。含有量が14.5%以下であると好ましく、13.5%以下であるとより好ましい。13%以下であるとさらに好ましい。
【0035】
O:NaOと同様の効果があるため、0〜3%含有させる。しかし、3%超では、50〜350℃における平均熱膨張係数およびコンパクション(C)が大きくなるおそれがある。含有する場合は、コンパクション(C)低減を考慮すると、1.5%以下が好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
【0036】
LiO:ガラス溶解温度での粘性を下げ、溶解しやすくするため0〜2%含有させることができる。しかし、2%超含有するとガラス転移点の低下をもたらすおそれがある。
また、50〜350℃の平均熱膨張係数が85×10-7/℃以下とするためにも2%以下が好ましい。
LiOの含有量は1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
【0037】
NaOおよびKO:ガラス溶解温度での粘性を十分に下げ、また光弾性定数を小さくするために、NaOおよびKOの合量の含有量は、7〜15.5%とする。光弾性定数を小さくするために、好ましくは9%以上であり、より好ましくは11%以上であり、さらに好ましくは12%以上である。
しかし、15.5%超ではTgが下がりすぎ、50〜350℃における平均熱膨張係数が上がりすぎ、コンパクション(C)が増大し、ヤング率が低くなるおそれがある。好ましくは15%以下であり、より好ましくは13%以下である。
【0038】
また、NaOおよびKOは、コンパクション(C)を小さくするために、下記式(1)が0.77〜1を満たすように含有する。
NaO/(NaO+KO) (1)
上記式は、低温(150〜300℃)での熱処理におけるコンパクション(C)を小さくする指標となる。本発明者等は、実験および試行錯誤の結果から、上記各成分が本願の範囲を満たし、且つ、上記式(1)で得られる値が0.77〜1となる場合に、Tgが580〜720℃であり、および50〜350℃における平均熱膨張係数が65×10−7〜85×10−7を満足させつつ、コンパクション(C)が15ppm以下を満たすことを見出した。好ましくは、0.9以上であり、より好ましくは0.95以上であり、さらに好ましくは1である。
【0039】
MgOおよびAl:MgOおよびAlは、下記式(2)が0〜10を満たすように含有する。なお、下記式(2)の「MgO」、「Al」には、ガラス基板の組成に含まれるMgOおよびAlのそれぞれの「モル%」を代入する。
MgO−0.5Al (式2)
上記式(2)は、光弾性定数を低くし、且つ低温(150〜300℃)での熱処理におけるコンパクション(C)を小さくする指標となる。本発明者等は、実験および試行錯誤の結果から、上記の各成分が本願の範囲を満たし、且つ、上記式(2)で得られる値が0〜10の中間になるほど、つまり5に近づくほど、コンパクション(C)を小さくできることを見出した。好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは3以上であり、特に好ましくは4以上である。好ましくは9以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは7以下であり、特に好ましくは6以下である。また、低い光弾性定数を得るために、2以上であると好ましい。
【0040】
なお、MgOを縦軸、Alを横軸とした場合、上記式(2)が0〜10且つMgOおよびAlが上記組成範囲のときに、本願の範囲は、図1において実線ラインで囲まれた部分となる。コンパクション(C)を小さくできる範囲は、図1において本願の範囲内においてMgO−0.5Al=0とMgO−0.5Al=10の二本の直線の上下のY切片が5となる直線に近い部分、即ち、図1において本願の範囲内で且つMgO−0.5Al=5の直線に近い部分である。
【0041】
また、MgOおよびAlは、下記式(3)が1〜20を満たすように含有する。なお、下記式(3)の「MgO」、「Al」には、ガラス基板の組成に含まれるMgOおよびAlのそれぞれの「モル%」を代入する。
MgO+0.5Al (式3)
上記式(3)は、ガラス製造工程における失透特性、具体的には、後述するT−Tが−50〜350℃、またはT−Tが−50〜350℃を満たすための指標となる。
本発明者等は、実験および試行錯誤の結果から、上記の各成分が本願の範囲を満たし、且つ、上記式(3)で得られる値が1〜20となる場合に、Tgが580〜720℃および50〜350℃における平均熱膨張係数65×10−7〜85×10−7/℃を満足させつつ、T−TまたはT−Tが上記範囲を満たすことを見出した。
【0042】
本願発明のガラス基板の成形方法として、フロート法およびフュージョン法(ダウンドロー法)が適用できるが、フュージョン法のときは上記式(3)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは13以下であり、さらに好ましくは11以下である。またフロート法のときは上記式(3)は、好ましくは18以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは13以下である。また、低い光弾性定数を得るために、好ましくは3以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは7以上である。
【0043】
なお、MgOを縦軸、Alを横軸とした場合、上記式(3)が1〜20且つMgOおよびAlが上記組成範囲のときに、本願の範囲は、図1において実線で囲まれた部分となる。
【0044】
本発明のガラス基板は、好ましくは本質的に上記母組成からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有しても良い。その他の成分は、合計で2%以下含有してもよく、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下で含有する。たとえば、耐候性、溶解性、失透性、紫外線遮蔽等の改善を目的に、ZnO、LiO、WO、Nb、V、Bi、MoO、P等を含有してもよい場合がある。
【0045】
また、ガラスの溶解性、清澄性を改善するため、ガラス中にSO、F、Cl、SnOを合量で2%以下含有するように、これらの原料を母組成原料に添加してもよい。TFTパネル用ガラス基板として用いる場合は、これらの添加はより好ましい。
また、ガラスの化学的耐久性向上のため、ガラス中にZrO、Y、La、TiO2、SnO2を合量で2%以下含有させてもよく、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下で含有させる。これらのうちY23、La23およびTiOは、ガラスのヤング率向上にも寄与する。
【0046】
ガラスの色調を調整するため、ガラス中にFe、CeO等の着色剤を含有してもよい。このような着色剤の含有量は、合量で1%以下が好ましい。
本発明のガラス基板は、環境負荷を考慮すると、As、Sbを実質的に含有しないことが好ましい。また、安定してフロート成形することを考慮すると、ZnOを実質的に含有しないことが好ましい。しかし、本発明のガラス基板は、フロート法による成形に限らず、フュージョン法による成形により製造してもよい。
【0047】
<本発明のガラス基板の製造方法および用途>
本発明のガラス基板は、TFTパネル用ガラス基板として好適に用いることができる。
以下、詳しく説明する。
【0048】
(1)ガラス基板の製造方法
本発明におけるガラス基板を製造する場合、従来のTFTパネル用ガラス基板を製造する際と同様に、溶解・清澄工程および成形工程を実施する。なお、本発明におけるガラス基板は、アルカリ金属酸化物(NaO、KO)を含有するアルカリガラス基板であるため、清澄剤としてSOを効果的に用いることができ、成形方法としてフロート法およびフュージョン法(ダウンドロー法)に適している。
TFTパネル用ガラス基板の製造工程において、TFTパネルの大型化に伴い、大面積のガラス基板を容易に、安定して成形できるフロート法を用いることが特に好ましい。
【0049】
なお、本発明のガラス基板の成形方法として、フロート法およびフュージョン法(ダウンドロー法)が適用できるが、板ガラス成形時の失透防止を考慮すると、ガラス基板の物性としてフュージョン法のときはT−Tが−50〜350℃であり、T−T≧50℃を満たすことが好ましく、T−T≧100℃を満たすことがより好ましく、T−T≧200℃を満たすことがさらに好ましい。
また、フロート法のときはT−Tが−50〜350℃でありT−T≧−20℃を満たすことが好ましく、T−T≧−10℃を満たすことがより好ましく、T−T≧0℃を満たすことがさらに好ましい。
【0050】
本発明におけるガラス基板の製造方法の好ましい態様について説明する。
初めに、原料を溶解して得た溶融ガラスを板状に成形する。例えば、得られるガラス基板の組成となるように原料を調製し、前記原料を溶解炉に連続的に投入し、1450〜1650℃程度に加熱して溶融ガラスを得る。そしてこの溶融ガラスを例えばフロート法を適用してリボン状のガラス板に成形する。
次に、リボン状のガラス板を成形炉から引出した後に、冷却手段によって室温状態まで冷却し、切断後、ガラス基板を得る。
【0051】
ここで冷却手段は、前記成形炉から引出されたリボン状のガラス板の表面温度をT(℃)、室温をT(℃)とし、さらに前記リボン状ガラス基板の表面温度がTからTに冷却されるまでの時間をt(分)とした場合に、(T−T)/tで示される平均冷却速度を10〜300℃/分とする冷却手段である。具体的な冷却手段は特に限定されず、従来公知の冷却方法であってよい。例えば温度勾配を持った加熱炉を用いる方法が挙げられる。
は、ガラス転移点温度Tg+20℃、具体的には600〜740℃が好ましい。
前記平均冷却速度は15〜150℃/分であることが好ましく、20〜80℃/分であることがより好ましく、40〜60℃/分であることがさらに好ましい。上記のガラス基板製造方法により、コンパクション(C)が15ppm以下、好ましくは13ppm以下のガラス基板が容易に得られる。
【0052】
(2)TFTパネル
本発明のガラス基板は、TFTパネル用ガラス基板に好適に用いることができる。
本発明のガラス基板の表面に、アレイ基板におけるゲート絶縁膜を成膜する成膜工程を具備するTFTパネルの製造方法について説明する。
本発明のガラス基板を用いたTFTパネルの製造方法は、本発明のガラス基板の表面の成膜領域を150〜300℃の範囲内の温度(以下、成膜温度という)まで昇温した後、前記成膜温度で5〜60分間保持して、前記成膜領域に前記アレイ基板ゲート絶縁膜を成膜する成膜工程を具備するものであれば特に限定されない。ここで成膜温度は150〜250℃であることが好ましく、150〜230℃であることがより好ましく、150〜200℃であることがさらに好ましい。また、この成膜温度に保持する時間は5〜30分間であることが好ましく、5〜20分間であることがより好ましく、5〜15分間であることがさらに好ましい。
ゲート絶縁膜の成膜は上記のような成膜温度および保持時間の範囲内で行われるので、この間にガラス基板が熱収縮する。なお、一度ガラス基板が熱収縮した後は、その後の冷却条件(冷却速度等)によっては、上記の熱収縮の結果に大きな影響を及ぼさない。本発明におけるTFTパネル用ガラス基板はコンパクション(C)が小さいので、ガラス基板の前記熱収縮が小さく、成膜パターンのずれが生じ難い。
成膜工程における成膜は、例えば従来公知のCVD法によって達成することができる。
【0053】
本発明に係るTFTパネルの製造方法では、公知の方法によってアレイ基板を得ることができる。そして、該アレイ基板を用いて以下のような公知の工程によりTFTパネルを製造することができる。
すなわち、前記アレイ基板、カラーフィルタ基板各々に配向膜を形成し、ラビングを行う配向処理工程、TFTアレイ基板とカラーフィルタ基板を所定のギャップを保持して高精度で貼り合せる貼り合せ工程、基板よりセルを所定サイズに分断する分断工程、分断されたセルに液晶を注入する注入工程、セルに偏光板を貼り付ける偏光板貼り付け工程からなる一連の工程によりTFTパネルを製造することができる。
【0054】
また、本発明のガラス基板は、周知の方法で化学強化して用いることができるが、TFTパネルの表示品質向上のために、ガラス基板の平坦性を考慮すると化学強化しないことが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例および製造例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例および製造例に限定されない。
本発明のガラス基板の実施例(例1〜13、18〜22)および比較例(例14〜17)を示す。なお表中のかっこは、計算値である。
表1〜4で表示した組成になるように、ガラス基板用の各成分の原料を調合し、該ガラス基板用成分の原料100質量部に対し、硫酸塩をSO換算で0.1質量部原料に添加し、白金坩堝を用いて1600℃の温度で3時間加熱し溶解した。溶解にあたっては、白金スターラーを挿入し1時間攪拌しガラスの均質化を行った。次いで溶融ガラスを流し出し、冷却後、板状に研削、研磨加工した。
【0056】
こうして得られたガラスの50〜350℃における平均熱膨張係数(単位:×10-7/℃)、ガラス転移点温度(Tg)(単位:℃)、密度、粘度、コンパクション(C)、光弾性定数、ヤング率、失透温度(ガラス表面失透温度(T)、ガラス内部失透温度(T))、T、Tにおけるガラス粘度(単位:dPa・s)を測定し、また、T−TとT−Tを算出し、表1〜3に示した。以下に各物性の測定方法を示す。
【0057】
(1)Tg:TgはTMAを用いて測定した値であり、JIS R3103−3(2001年度)により求めた。
(2)密度:泡を含まない約20gのガラス板をアルキメデス法によって測定した。
【0058】
(3)粘度:回転粘度計を用いて粘度を測定し、10dPa・sとなるときの温度T(℃)を測定した。
また、溶融ガラスの高温(1000〜1600℃)におけるガラス粘度の測定結果から、フルチャーの式の係数を求め、該係数を用いたフルチャーの式により、ガラス内部失透温度(T)におけるガラス粘度を求めた。
(4)コンパクション(C):前述のコンパクション(C)の測定方法により測定した。
【0059】
(5)50〜350℃の平均熱膨張係数:示差熱膨張計(TMA)を用いて測定し、JIS R3102(1995年度)より求めた。
【0060】
(6)失透温度(ガラス表面失透温度(T)及びガラス内部失透温度(T)):白金製皿に粉砕されたガラス粒子を入れ、一定温度に制御された電気炉中で17時間熱処理を行い、熱処理後の光学顕微鏡観察によって、ガラスの表面に結晶が析出する最高温度と結晶が析出しない最低温度との平均値をガラス表面失透温度T(℃)、またガラスの内部に結晶が析出する最高温度と結晶が析出しない最低温度との平均値をガラス内部失透温度T(℃)とする。
【0061】
(7)光弾性定数:光源として546nmの光を使用して、円盤圧縮法により測定した。
【0062】
(8)ヤング率:厚み7〜10mmのガラスについて、超音波パルス法により測定した。
【0063】
ガラス中のSO残存量は100〜500ppmであった。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【表4】
【0067】
表1〜表4より明らかなように、実施例(例1〜13、18〜22)のガラスは、ガラス転移点温度Tgが高い。また、実施例のガラスは50〜350℃における平均熱膨張係数が65×10−7〜85×10−7/℃であるので、TFTパネル用ガラス基板として用いる場合、パネルの製造工程での寸法変化が少なく、カラーフィルタとアレイ板の合せ時のパターン合せが容易となる。さらに、パネル使用時の熱応力による品質への影響が少ないことから、特に表示品質面で好ましい。
【0068】
また、コンパクション(C)が15ppm以下であるため、ガラス基板上の成膜パターニング時の位置ずれが生じにくい。したがって、近年の熱処理の低温化に対応した、特に大型のTFTパネル用ガラス基板、例えば、マザーガラスとして一辺が2m以上のガラス基板として好適に用いることができる。
また、例2〜13、19〜22は、T−Tが−50〜350℃、またはT−Tが−50〜350℃を満たしており、板ガラス成形時の失透が抑えられる。
なお、例1、18についても、各物性値(T、T、T、T−T、T−T、光弾性定数、ヤング率)は本願範囲を満たすものである。また例11〜13のT、Tも本願範囲を満たすものである。
【0069】
例14、15は、コンパクション(C)が15ppmより大きく、50〜350℃における平均熱膨張係数が85×10−7/℃より大きいため、TFTパネルの製造工程での寸法変化が大きく、カラーフィルタとアレイ板の合せ時のパターン合せが困難となり、ガラス基板上の成膜パターニング時の位置ずれが生じ易い。
例16、17は、コンパクション(C)が15ppm以下であるものの、ガラス転移点温度が580℃未満であり、また50〜350℃における平均熱膨張係数が85×10−7/℃より大きいため、TFTパネルの製造工程での寸法変化が大きく、カラーフィルタとアレイ板の合せ時のパターン合せが困難となり、ガラス基板上の成膜パターニング時の位置ずれが生じ易い。
【0070】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
本出願は、2011年10月31日出願の日本特許出願2011−238869に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のガラス基板は、TFTパネル用ガラス基板として好適であるが、他のディスプレイ用基板、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)、無機エレクトロ・ルミネッセンス・ディスプレイ等に使用することができる。
図1