(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記剥離刃の刃先の欠けを検出する検出手段を備え、前記制御手段は、前記検出手段によって刃先の欠けが検出された際に、前記刃先の刺入位置を前回の刺入位置から変更するように、前記刺入位置変更手段を制御する請求項1に記載の積層体の剥離装置。
第1の基板とガラス製の第2の基板とが剥離可能に貼り付けられてなる矩形状の積層体に対し、前記第1の基板の露出面に機能層を形成する機能層形成工程と、前記機能層が形成された前記第1の基板から前記第2の基板を分離する分離工程と、を有する電子デバイスの製造方法において、
前記分離工程は、
その縁部に沿って刃先が備えられた平板状の剥離刃の前記刃先を、前記積層体の隅部から前記第1の基板と前記第2の基板との界面に所定量刺入して、前記界面に剥離開始部を作成する剥離開始部作成工程と、
前記剥離開始部を起点として前記界面を剥離する剥離工程と、
を備え、
前記剥離開始部作成工程は、前記界面に刺入される前記剥離刃の刃先の刺入位置を変更する刺入位置変更工程を含み、
前記剥離刃の刃先が刺入される前記積層体の隅部を頂角とする一方の辺部と他方の辺部において、
前記刺入位置変更工程は、前記一方の辺部と前記刃先とのなす角度、及び前記他方の辺部と前記刃先とのなす角度のうち、角度の大きい側の刃先が刺入位置に変更されるように行われる電子デバイスの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2の剥離装置では、剥離刃によって界面に剥離開始部を作成する際に、積層体の一方の隅部に付着した微細なガラスカレットに刃先が接触した場合には、刃先に欠けが発生する場合があった。欠けのある刃先では、次の界面にその刃先を確実に刺入することはできないため、界面の剥離に寄与する剥離開始部を次の界面に確実に作成することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、剥離刃の刃先によって剥離開始部を積層体の界面に確実に作成することができる積層体の剥離装置及び剥離方法並びに電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の積層体の剥離装置の一態様は、前記目的を達成するために、第1の基板と第2の基板とが剥離可能に貼り付けられてなる矩形状の積層体に対し、前記第1の基板と前記第2の基板との界面を剥離する積層体の剥離装置において、前記積層体の隅部から前記界面にその刃先が所定量刺入されて、前記界面に剥離開始部を作成する平板状の剥離刃であって、その縁部に沿って前記刃先が備えられた剥離刃と、前記剥離開始部を起点として前記界面を剥離する剥離手段と、前記剥離刃と前記積層体との平面上での相対位置を変更する刺入位置変更手段と、前記界面に刺入される前記剥離刃の刃先の刺入位置を変更するように前記刺入位置変更手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の積層体の剥離方法の一態様は、前記目的を達成するために、第1の基板と第2の基板とが剥離可能に貼り付けられてなる矩形状の積層体に対し、前記第1の基板と前記第2の基板との界面を剥離する積層体の剥離方法において、その縁部に沿って刃先が備えられた平板状の剥離刃の前記刃先を、前記積層体の隅部から前記界面に所定量刺入して、前記界面に剥離開始部を作成する剥離開始部作成工程と、前記剥離開始部を起点として前記界面を剥離する剥離工程と、を備え、前記剥離開始部作成工程は、前記界面に刺入される前記剥離刃の刃先の刺入位置を変更する刺入位置変更工程を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の電子デバイスの製造方法の一態様は、前記目的を達成するために、第1の基板とガラス製の第2の基板とが剥離可能に貼り付けられてなる矩形状の積層体に対し、前記第1の基板の露出面に機能層を形成する機能層形成工程と、前記機能層が形成された前記第1の基板から前記第2の基板を分離する分離工程と、を有する電子デバイスの製造方法において、前記分離工程は、その縁部に沿って刃先が備えられた平板状の剥離刃の前記刃先を、前記積層体の隅部から前記第1の基板と前記第2の基板との界面に所定量刺入して、前記界面に剥離開始部を作成する剥離開始部作成工程と、前記剥離開始部を起点として前記界面を剥離する剥離工程と、を備え、前記剥離開始部作成工程は、前記界面に刺入される前記剥離刃の刃先の刺入位置を変更する刺入位置変更工程を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様によれば、刺入位置変更工程において、制御手段が刺入位置変更手段を制御して、界面に刺入される剥離刃の刃先の刺入位置を変更する。よって、本発明の一態様によれば、刃先の刺入位置を変更すると、次回の刺入時には、欠けのない正常な刃先が用いられるので、剥離開始部を積層体の界面に確実に作成することができる。
【0014】
本発明の一態様の剥離刃は、平板状の形状をなし、その縁部に沿って刃先が備えられた平刃形状のものである。
【0015】
一方、剥離開始部の作成に実際に使用される刃先は、刃先の全長(有効長ともいう)に対して極一部である。従来の剥離装置では、その極一部に欠けが発生すると、剥離開始部を確実に作成することができないため、欠けが発生した剥離刃を、欠けのない新たな剥離刃と交換する必要があった。
【0016】
これに対して、本発明の一態様は、縁部に沿って備えられた刃先の略全長を、剥離開始部を作成する刃先として有効利用することができるので、剥離刃の交換頻度を低減でき、かつ剥離刃の使用寿命を延ばすことができる。
【0017】
本発明の前記刺入位置変更手段は、剥離刃と積層体との平面上での相対位置を変更する手段なので、剥離刃及び積層体の双方の相対位置を変更するように、各々に駆動機構部を備えてもよく、少なくとも一方に駆動機構部を設けて相対位置を変更してもよい。すなわち、本発明の剥離装置は、剥離刃の刃先を界面に刺入するための1軸の駆動機構部と、前記相対位置を変更する1軸の駆動機構部とが備えられる。これらの2つ(2軸)の駆動機構部を分離して一方の駆動機構部を剥離刃側に、他方の駆動機構部を積層体側に設けてもよく、2軸の駆動機構部をどちらかに設けてもよい。
【0018】
前記刺入位置変更手段による刃先の刺入位置の変更量は、刃先の刺入量、刃先が挿入される一方の隅部を頂角とする一方の辺部と他方の辺部とに対する刃先とのなす角度(刺入角度ともいう)によって設定されることが好ましい。すなわち、前記刃先の刺入量及び刺入角度によって、刃先の欠け量(長さ)を推測することができるため、欠けた刃先が次回の刺入に使用されないピッチで、前記相対位置を変更していくこと、つまり、刃先の長手方向に沿って刃先をずらしていくことが好ましい。これにより、刃先の全長を有効利用することができる。
【0019】
本発明の一態様は、前記制御手段は、1つの前記剥離開始部を作成するごとに、前記刃先の刺入位置を前回の刺入位置から変更するように、前記刺入位置変更手段を制御することが好ましい。
【0020】
本発明の一態様は、前記刺入位置変更工程は、少なくとも1つの前記剥離開始部を作成するごとに、前記刃先の刺入位置を前回の刺入位置から変更するように行われることが好ましい。
【0021】
本発明の一態様によれば、刺入位置変更工程では、少なくとも1つの剥離開始部を作成するごとに、刃先の刺入位置が前回の刺入位置から変更される。よって、1つの剥離開始部を作成することに、刃先の刺入位置を変更した場合には、次回の刺入時には、欠けのない正常な刃先を用いることができる。したがって、剥離開始部を積層体に確実に作成することができる。また、2つ以上の剥離開始部を作成するごとに、刃先の刺入位置を変更してもよい。本発明の一態様は、前回の刺入時において、刃先に欠けが発生しない場合であっても、次回の刺入時には、前回の刺入に用いた刃先は使用されず、その刃先に隣接した正常な刃先が用いられる。前記制御手段は、前回刺入した刃先の位置を記憶しており、刃先の位置を変更する場合には、前回の位置に基づき変更する。
【0022】
本発明の一態様は、前記剥離刃の刃先の欠けを検出する検出手段を備え、前記制御手段は、前記検出手段によって刃先の欠けが検出された際に、前記刺入位置変更手段を制御することが好ましい。
【0023】
本発明の一態様は、前記刺入位置変更工程は、前記剥離刃の刃先の欠けが検出された際に、前記刃先の刺入位置を前回の刺入位置から変更するように、行われることが好ましい。
【0024】
本発明の一態様によれば、刺入位置変更工程では、検出手段によって刃先の欠けが検出された際に、刃先の刺入位置が前回の刺入位置から変更されるので、次回の刺入時には、欠けのない正常な刃先を用いることができる。したがって、剥離開始部を積層体に確実に作成することができる。本発明の一態様は、刃先の欠けが検出された際に、その刃先に隣接した正常な刃先が次回の刺入に用いられるので、剥離刃の使用寿命を更に延ばすことができる。前記制御手段は、前回刺入した刃先の位置を記憶しており、刃先の位置を変更する場合には、前回の位置に基づき変更する。
【0025】
本発明の一態様は、前記剥離刃の刃先が刺入される前記積層体の隅部を頂角とする一方の辺部と他方の辺部において、前記一方の辺部と前記刃先とのなす角度、及び前記他方の辺部と前記刃先とのなす角度のうち、角度の大きい側の刃先が刺入位置に変更されるように、前記制御手段が前記刺入位置変更手段を制御することが好ましい。
【0026】
本発明の一態様は、前記剥離刃の刃先が刺入される前記積層体の隅部を頂角とする一方の辺部と他方の辺部において、前記刺入位置変更工程は、前記一方の辺部と前記刃先とのなす角度、及び前記他方の辺部と前記刃先とのなす角度のうち、角度の大きい側の刃先が刺入位置に変更されるように行われることが好ましい。
【0027】
本発明の一態様によれば、角度の大きい側の新たな刃先が刺入位置に変更されるので、角度の小さい側の新たな刃先が刺入位置に変更されるものと比較して、相対位置の変更量、つまり刃先のずらし量を少なくすることができる。よって、刃先の全長をより一層有効利用することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る積層体の剥離装置及び剥離方法並びに電子デバイスの製造方法によれば、剥離刃の刃先によって剥離開始部を積層体に確実に作成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面に従って、本発明の実施形態について説明する。
【0031】
以下においては、本発明に係る積層体の剥離装置及び剥離方法を、電子デバイスの製造工程で使用する場合について説明する。
【0032】
電子デバイスとは、表示パネル、太陽電池、薄膜二次電池等の電子部品をいう。表示パネルとしては、液晶ディスプレイパネル(LCD:Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)、及び有機ELディスプレイパネル(OELD:Organic Electro Luminescence Display)を例示できる。
【0033】
〔電子デバイスの製造工程〕
電子デバイスは、ガラス製、樹脂製、金属製等の基板の表面に電子デバイス用の機能層(LCDであれば、薄膜トランジスタ(TFT)、カラーフィルタ(CF))を形成することにより製造される。
【0034】
前記基板は、機能層の形成前に、その裏面が補強板に貼り付けられて積層体に構成される。その後、積層体の状態で基板の表面に機能層が形成される。そして、機能層の形成後、補強板が基板から剥離される。
【0035】
すなわち、電子デバイスの製造工程には、積層体の状態で基板の表面に機能層を形成する機能層形成工程、及び機能層が形成された基板から補強板を分離する分離工程が備えられる。この分離工程に、本発明に係る積層体の剥離装置及び剥離方法が適用される。
【0036】
〔積層体1〕
図1は、積層体1の一例を示した要部拡大側面図である。
【0037】
積層体1は、機能層が形成される基板(第1の基板)2と、その基板2を補強する補強板(第2の基板)3とを備える。また、補強板3は、表面3aに吸着層としての樹脂層4が備えられ、樹脂層4に基板2の裏面2bが貼り付けられる。すなわち、基板2は、樹脂層4との間に作用するファンデルワールス力、又は樹脂層4の粘着力によって、補強板3に樹脂層4を介して剥離可能に貼り付けられる。
【0038】
[基板2]
基板2は、その表面2aに機能層が形成される。基板2としては、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂基板、金属基板、半導体基板を例示できる。これらの基板のなかでも、ガラス基板は、耐薬品性、耐透湿性に優れ、かつ、線膨張係数が小さいので、電子デバイス用の基板2として好適である。また、線膨張係数が小さくなるに従い、高温下で形成される機能層のパターンが冷却時に、ずれ難くなる利点もある。
【0039】
ガラス基板のガラスとしては、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスを例示できる。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40〜90質量%のガラスが好ましい。
【0040】
ガラス基板のガラスは、製造する電子デバイスの種類に適したガラス、その製造工程に適したガラスを選択して採用することが好ましい。たとえば、液晶パネル用のガラス基板には、アルカリ金属成分を実質的に含まないガラス(無アルカリガラス)を採用することが好ましい。
【0041】
基板2の厚さは、基板2の種類に応じて設定される。たとえば、基板2にガラス基板を採用する場合、その厚さは、電子デバイスの軽量化、薄板化のため、好ましくは0.7mm以下、より好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下に設定される。厚さが0.3mm以下の場合、ガラス基板に良好なフレキシブル性を与えることができる。更に、厚さが0.1mm以下の場合、ガラス基板をロール状に巻き取ることができるが、ガラス基板の製造の観点、及びガラス基板の取り扱いの観点から、その厚さは0.03mm以上であることが好ましい。
【0042】
なお、
図1では基板2が1枚の基板で構成されているが、基板2は、複数枚の基板で構成されたものでもよい。すなわち、基板2は、複数枚の基板を積層した積層体で構成することもできる。
【0043】
[補強板3]
補強板3としては、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂基板、金属基板、半導体基板を例示できる。
【0044】
補強板3の厚さは、0.7mm以下に設定され、補強する基板2の種類、厚さ等に応じて設定される。なお、補強板3の厚さは、基板2よりも厚くてもよいし、薄くてもよいが、基板2を補強するため、0.4mm以上であることが好ましい。
【0045】
なお、本例では補強板3が1枚の基板で構成されているが、補強板3は、複数枚の基板を積層した積層体で構成することもできる。
【0046】
[樹脂層4]
樹脂層4は、樹脂層4と補強板3との間で剥離するのを防止するため、補強板3との間の結合力が、基板2との間の結合力よりも高く設定される。これにより、剥離工程では、樹脂層4と基板2との界面が剥離される。
【0047】
樹脂層4を構成する樹脂は、特に限定されないが、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂を例示できる。いくつかの種類の樹脂を混合して用いることもできる。そのなかでも、耐熱性や剥離性の観点から、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂が好ましい。
【0048】
樹脂層4の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1〜50μmに設定され、より好ましくは4〜20μmに設定される。樹脂層4の厚さを1μm以上とすることにより、樹脂層4と基板2との間に気泡や異物が混入した際、樹脂層4の変形によって、気泡や異物の厚さを吸収できる。一方、樹脂層4の厚さを50μm以下とすることにより、樹脂層4の形成時間を短縮でき、更に樹脂層4の樹脂を必要以上に使用しないため経済的である。
【0049】
なお、樹脂層4の外形は、補強板3が樹脂層4の全体を支持できるように、補強板3の外形と同一であるか、補強板3の外形よりも小さいことが好ましい。また、樹脂層4の外形は、樹脂層4が基板2の全体を密着できるように、基板2の外形と同一であるか、基板2の外形よりも大きいことが好ましい。
【0050】
また、
図1では樹脂層4が1層で構成されているが、樹脂層4は2層以上で構成することもできる。この場合、樹脂層4を構成する全ての層の合計の厚さが、樹脂層の厚さとなる。また、この場合、各層を構成する樹脂の種類は異なっていてもよい。
【0051】
更に、実施形態では、吸着層として有機膜である樹脂層4を用いたが、樹脂層4に代えて無機層を用いてもよい。無機層を構成する無機膜は、例えばメタルシリサイド、窒化物、炭化物、及び炭窒化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0052】
更にまた、
図1の積層体1は、吸着層として樹脂層4を備えているが、樹脂層4を無くして基板2と補強板3とからなる構成としてもよい。この場合には、基板2と補強板3との間に作用するファンデルワールス力等によって基板2と補強板3とが剥離可能に貼り付けられる。また、この場合には、ガラス基板である基板2とガラス板である補強板3とが高温で接着しないように、補強板3の表面3aに無機薄膜を形成することが好ましい。
【0053】
〔機能層が形成された実施形態の積層体6〕
機能層形成工程を経ることにより積層体1の基板2の表面2aには、機能層が形成される。機能層の形成方法としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、PVD(Physical Vapor Deposition)法等の蒸着法、スパッタ法が用いられる。機能層は、フォトリソグラフィ法、エッチング法によって所定のパターンに形成される。
【0054】
図2は、LCDの製造工程の途中で作製される矩形状の積層体6の一例を示した要部拡大側面図である。
【0055】
積層体6は、補強板3A、樹脂層4A、基板2A、機能層7、基板2B、樹脂層4B、及び補強板3Bが、この順で積層されて構成される。すなわち、
図2の積層体6は、
図1に示した積層体1が、機能層7を挟んで対称に配置された積層体に相当する。以下、基板2A、樹脂層4A、及び補強板3Aからなる積層体を第1の積層体1Aと称し、基板2B、樹脂層4B、及び補強板3Bからなる積層体を第2の積層体1Bと称する。
【0056】
第1の積層体1Aの基板2Aの表面2Aaには、機能層7としての薄膜トランジスタ(TFT)が形成され、第2の積層体1Bの基板2Bの表面2Baには、機能層7としてのカラーフィルタ(CF)が形成される。
【0057】
第1の積層体1Aと第2の積層体1Bとは、互いに基板2A、2Bの表面2Aa、2Baが重ね合わされて一体化される。これにより、機能層7を挟んで、第1の積層体1Aと第2の積層体1Bとが、対称に配置された構造の積層体6が製造される。
【0058】
積層体6は、分離工程の剥離開始部工程にてナイフの刃先により剥離開始部がその界面形成された後、分離工程の剥離工程にて補強板3A、3Bが順次剥離され、その後、偏光板、バックライト等が取り付けられて、製品であるLCDが製造される。
【0059】
〔剥離開始部作成装置10〕
図3は、剥離開始部作成工程にて使用される剥離開始部作成装置10の要部構成を示した説明図であり、
図3(A)は、積層体6とナイフ(剥離刃)Nとの位置関係を示した説明図、
図3(B)は、ナイフNによって界面24に剥離開始部26を作成する説明図、
図3(C)は、界面28に剥離開始部30を作成する直前状態を示した説明図、
図3(D)は、ナイフNによって界面28に剥離開始部30を作成する説明図、
図3(E)は、剥離開始部26、30が作成された積層体6の説明図である。
【0060】
また、
図4は、剥離開始部26、30が作成された積層体6の平面図である。
【0061】
更に、
図5は、剥離開始部作成装置10の全体構成を示した側面図、
図6は、
図5に示した剥離開始部作成装置10の平面図である。
【0062】
図4において積層体6の各隅部には、コーナーカット部6A、6B、6C、6Dが備えられる。コーナーカット部6A〜6Dは、砥石によってテーパ状に研削加工された部分であり、積層体6の型番を示すものであって、そのカット量、カット角度が型番ごとに異なる。
図4の積層体6では、全ての隅部にコーナーカット部6A〜6Dが備えられているが、選択された少なくとも1つの隅部にコーナーカット部が備えられている積層体もある。また、
図4、
図5ではコーナーカット部6A〜6Dを、積層体6の大きさに対して誇張して示しているが、実際には微小な大きさである。なお、
図2には積層体1Aと積層体1Bが貼り合わされた状態が示されているが,図中の積層体1Aのコーナーカット部の形状と、積層体1Bのコーナーカット部の形状は同一の場合もあれば、異なる場合もある。
【0063】
図3に戻り、剥離開始部26、30の作成時において、積層体6は
図3(A)の如く、補強板3Bの裏面3Bbがテーブル12に吸着保持されて水平方向(図中X軸方向)に支持される。
【0064】
ナイフNは、積層体6のコーナーカット部6Aの隅部6Aaに刃先Naが対向するように、ホルダ14によって水平方向に支持される。また、ナイフNは、高さ調整装置16によって、高さ方向(図中Z軸方向)の位置が調整される。更に、ナイフNと積層体6とは、ボールねじ装置等の送り装置(移動機構部)18によって、水平方向(図中X方向)に相対的に移動される。送り装置18は、ナイフNとテーブル12のうち、少なくとも一方を水平方向に移動すればよく、実施形態ではナイフNが移動される。更にまた、刺入前又は刺入中のナイフNの刃先Naの上面に、液体20を供給する液体供給装置22が、ナイフNの上方に配置される。
【0065】
[剥離開始部作成方法]
剥離開始部作成装置10による剥離開始部作成方法によれば、ナイフNの刺入位置を、積層体6の隅部6Aaであって、積層体6の厚さ方向において重なる位置に設定し、かつナイフNの刺入量を、界面24、28ごとに異なるように設定している。
【0067】
初期状態において、ナイフNの刃先Naは、第1の刺入位置である基板2Bと樹脂層4Bとの界面24に対し、高さ方向(Z軸方向)にずれた位置に存在する。そこで、まず、
図3(A)に示すように、ナイフNを高さ方向に移動させて、ナイフNの刃先Naの高さを界面24の高さに設定する。
【0068】
この後、
図3(B)の如く、ナイフNを積層体6の隅部6Aaに向けて水平方向(
図6の矢印A方向)に移動させ、界面24にナイフNの刃先Naを所定量刺入する。また、ナイフNの刺入時又は刺入前において、液体供給装置22から刃先Naの上面に液体20を供給する。これにより、隅部6Aaの基板2Bが樹脂層4Bから剥離するので、
図4の如く平面視で三角形状の剥離開始部26が界面24に作成される。なお、液体20の供給は必須ではないが、液体20を使用すれば、ナイフNを抜去した後にも液体20が剥離開始部26に残留するので、再付着不能な剥離開始部26を作成できる。
【0069】
次に、ナイフNを隅部6Aaから水平方向(
図6の矢印B方向)に抜去し、
図3(C)の如く、ナイフNの刃先Naを、第2の刺入位置である基板2Aと樹脂層4Aとの界面28の高さに設定する。
【0070】
この後、
図3(D)の如く、ナイフNを積層体6に向けて水平方向(
図6の矢印A方向)に移動させ、界面28にナイフNの刃先Naを所定量刺入する。同様に液体供給装置22から刃先Naの上面に液体20を供給する。これによって、
図3(D)の如く、界面28に剥離開始部30が作成される。ここで、界面28に対するナイフNの刺入量は、界面24に対する刺入量よりも少量とする。以上が剥離開始部作成方法である。なお、界面24に対するナイフNの刺入量を、界面28に対する刺入量よりも少量としてもよい。
【0071】
剥離開始部26、30が作成された積層体6は、剥離開始部作成装置10から取り出され、剥離工程に移行する。剥離工程において積層体6は、後述する剥離装置によって界面24、28が順次剥離される。
【0072】
界面24、28の剥離方法の詳細は後述するが、
図4の矢印Cの如く、積層体6をコーナーカット部6Aからコーナーカット部6Aに対向するコーナーカット部6Cに向けて撓ませることにより、剥離開始部26の面積が大きい界面24が剥離開始部26を起点として最初に剥離される。これにより、補強板3Bが剥離される。その後、積層体6をコーナーカット部6Aからコーナーカット部6Cに向けて再び撓ませることにより、剥離開始部30の面積が小さい界面28が剥離開始部30を起点として剥離される。これにより、補強板3Aが剥離される。ナイフNの刺入量は、積層体6のサイズに応じて、好ましくは7mm以上、より好ましくは15〜20mm程度に設定される。
【0073】
なお、本発明に係る剥離装置及び剥離方法の特徴は、ナイフNによる剥離開始部作成方法にあり、その点については後述する。
【0074】
〔剥離装置40〕
図7は、実施形態の剥離装置(剥離手段)40の構成を示した縦断面図であり、
図8は、剥離装置40の剥離ユニット42に対する複数の可動体44の配置位置を模式的に示した剥離ユニット42の平面図である。なお、
図7は
図8のD−D線に沿う断面図に相当し、また、
図8においては積層体6を実線で示している。
【0075】
図7の如く剥離装置40は、積層体6を挟んで上下に配置された一対の可動装置46、46を備える。可動装置46、46は同一構成のため、ここでは
図7の下側に配置された可動装置46について説明し、上側に配置された可動装置46については同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0076】
可動装置46は、複数の可動体44、可動体44ごとに可動体44を昇降移動させる複数の駆動装置(駆動部)48、及び駆動装置48ごとに駆動装置48を制御するコントローラ50(駆動部)等によって構成される。
【0077】
剥離ユニット42は、補強板3Bを撓み変形させるため、補強板3Bを真空吸着保持する。なお、真空吸着に代えて、静電吸着又は磁気吸着してもよい。
【0078】
[剥離ユニット42]
図9(A)は、剥離ユニット42の平面図であり、
図9(B)は、
図9(A)のE−E線に沿う剥離ユニット42の拡大縦断面図である。また、
図9(C)は、剥離ユニット42を構成する矩形の板状の可撓性板52に対して、剥離ユニット42を構成する吸着部54が両面接着テープ56を介して着脱自在に備えられたことを示す剥離ユニット42の拡大縦断面図である。
【0079】
剥離ユニット42は、前述の如く可撓性板52に吸着部54が両面接着テープ56を介して着脱自在に装着されて構成される。
【0080】
吸着部54は、可撓性板52よりも厚さの薄い可撓性板58を備える。この可撓性板58の下面が両面接着テープ56を介して可撓性板52の上面に着脱自在に装着される。
【0081】
また、吸着部54は、積層体6の補強板3Bの内面を吸着保持する矩形の通気性シート60が備えられる。通気性シート60の厚さは、剥離時に補強板3Bに発生する引張応力を低減させる目的で2mm以下、好ましくは1mm以下であり、実施形態では0.5mmのものが使用されている。
【0082】
更に、吸着部54は、通気性シート60を包囲し、かつ補強板3Bの外周面が当接されるシール枠部材62が備えられる。シール枠部材62及び通気性シート60は、両面接着シート64を介して可撓性板58の上面に接着される。また、シール枠部材62は、ショアE硬度が20度以上50度以下の独立気泡のスポンジであり、その厚さは、通気性シート60の厚さに対して0.3mm〜0.5mm厚く構成されている。
【0083】
通気性シート60とシール枠部材62との間には、枠状の溝66が備えられる。また、可撓性板52には、複数の貫通孔68が開口されており、これらの貫通孔68の一端は溝66に連通され、他端は、不図示の吸引管路を介して吸気源(例えば真空ポンプ)に接続されている。
【0084】
したがって、前記吸気源が駆動されると、前記吸引管路、貫通孔68、及び溝66の空気が吸引されることにより、積層体6の補強板3Bの内面が通気性シート60に真空吸着保持され、また、補強板3Bの外周面がシール枠部材62に押圧当接されるので、シール枠部材62によって囲まれる吸着空間の密閉性が高められる。
【0085】
可撓性板52は、可撓性板58、通気性シート60、及びシール枠部材62よりも曲げ剛性が高く、可撓性板52の曲げ剛性が剥離ユニット42の曲げ剛性を支配する。剥離ユニット42の単位幅(1mm)あたりの曲げ剛性は、1000〜40000N・mm
2/mmであることが好ましい。例えば、剥離ユニット42の幅が100mmの部分では、曲げ剛性は、100000〜4000000N・mm
2となる。剥離ユニット42の曲げ剛性を1000N・mm
2/mm以上とすることで、剥離ユニット42に吸着保持される補強板3Bの折れ曲がりを防止することができる。また、剥離ユニット42の曲げ剛性を40000N・mm
2/mm以下とすることで、剥離ユニット42に吸着保持される補強板3Bを適度に撓み変形させることができる。
【0086】
可撓性板52、58は
、樹脂製部材であり、例えばポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂等の樹脂製部材である。
【0087】
[可動装置46]
可撓性板52の下面には、
図7に示した円盤状の複数の可動体44が、
図8の如く碁盤目状に固定される。これらの可動体44は、可撓性板52にボルト等の締結部材によって固定されるが、ボルトに代えて接着固定されてもよい。これらの可動体44は、コントローラ50によって駆動制御された駆動装置48によって、独立して昇降移動される。
【0088】
すなわち、コントローラ50は、駆動装置48を制御して、
図8における積層体6のコーナーカット部6A側に位置する可動体44から矢印Cで示す剥離進行方向のコーナーカット部6C側に位置する可動体44を、順次下降移動させる。この動作によって、
図10の縦断面図の如く積層体6の界面24が剥離開始部26(
図4参照)を起点として剥離していく。なお、
図7、
図10に示した積層体6は、
図3にて説明した剥離開始部作成方法により剥離開始部26、30が作成された積層体6である。
【0089】
駆動装置48は、例えば回転式のサーボモータ及びボールねじ機構等で構成される。サーボモータの回転運動は、ボールねじ機構において直線運動に変換され、ボールねじ機構のロッド70に伝達される。ロッド70の先端部には、ボールジョイント72を介して可動体44が設けられている。これにより、
図10の如く剥離ユニット42の撓み変形に追従して可動体44を傾動させることができる。よって、剥離ユニット42に無理な力を加えることなく、剥離ユニット42をコーナーカット部6Aからコーナーカット部6Cに向けて撓み変形させることができる。なお、駆動装置48としては、回転式のサーボモータ及びボールねじ機構に限定されず、リニア式のサーボモータ、又は流体圧シリンダ(例えば空気圧シリンダ)であってもよい。
【0090】
複数の駆動装置48は、昇降可能なフレーム74にクッション部材76を介して取り付けられることが好ましい。クッション部材76は、剥離ユニット42の撓み変形に追従するように弾性変形する。これによって、ロッド70がフレーム74に対して傾動する。
【0091】
フレーム74は、剥離した補強板3Bを剥離ユニット42から取り外す際に、不図示の駆動部によって下降移動される。
【0092】
コントローラ50は、CPU、ROM、及びRAM等の記録媒体等を含むコンピュータとして構成される。コントローラ50は、記録媒体に記録されたプログラムをCPUに実行させることにより、複数の駆動装置48を駆動装置48ごとに制御して、複数の可動体44の昇降移動を制御する。
【0093】
〔剥離装置40による補強板3A、3Bの剥離方法〕
図11(A)〜(C)〜
図12(A)〜(C)は、
図3にて説明した剥離開始部作成方法によって隅部6Aaに剥離開始部26、30が作成された積層体6の剥離方法が示されている。すなわち、同図には、積層体6の補強板3A、3Bを剥離する剥離方法が時系列的に示されている。
【0094】
また、剥離装置40への積層体6の搬入作業、剥離した補強板3A、3B、及びパネルPの搬出作業は、
図11(A)に示す吸着パッド78を備えた搬送装置80によって行われる。なお、
図11、
図12では、図面の煩雑さを避けるため、可動装置46の図示は省略している。また、パネルPとは、補強板3A、3Bを除く基板2Aと基板2Bとが機能層7を介して貼り付けられた製品パネルである。
【0095】
図11(A)は、搬送装置80の矢印F、Gに示す動作によって積層体6が、下側の剥離ユニット42に載置された剥離装置40の側面図である。この場合、下側の剥離ユニットと上側の剥離ユニット42との間に搬送装置80が挿入されるように、下側の剥離ユニット42と上側の剥離ユニット42とが相対的に十分に退避した位置に予め移動される。そして、積層体6が下側の剥離ユニット42に載置されると、下側の剥離ユニット42によって積層体6の補強板3Bが真空吸着保持される。すなわち、
図11(A)には、補強板3Bが下側の剥離ユニット42によって吸着保持される吸着工程が示されている。
【0096】
図11(B)は、下側の剥離ユニット42と上側の剥離ユニット42とが相対的に近づく方向に移動されて、積層体6の補強板3Aが上側の剥離ユニット42によって真空吸着保持された状態の剥離装置40の側面図である。すなわち、
図11(B)には、補強板3Aが上側の剥離ユニット42によって吸着保持される吸着工程が示されている。
【0097】
なお、剥離装置40によって、
図1に示した積層体1の基板2を補強板3から剥離させる場合には、第1の基板である基板2を上側の剥離ユニット42によって支持し、第2の基板である補強板3を下側の剥離ユニット42によって吸着保持する。この場合、基板2を支持する支持部は、剥離ユニット42に限定されるものではなく、基板2を着脱自在に支持可能なものであればよい。しかしながら、支持部として剥離ユニット42を用いることにより、基板2と補強板3とを同時に湾曲させて剥離することができるので、基板2又は補強板3のみを湾曲させる形態と比較して剥離力を小さくできる利点がある。
【0098】
図11に戻り、
図11(C)は、積層体6のコーナーカット部6Aからコーナーカット部6Cに向けて下側の剥離ユニット42を下方に撓み変形させながら、積層体6の界面24を、剥離開始部26(
図4参照)を起点として剥離していく状態を示した側面図である。すなわち、
図10に示した下側の剥離ユニット42の複数の可動体44において、積層体6のコーナーカット部6A側に位置する可動体44からコーナーカット部6C側に位置する可動体44を順次下降移動させて界面24を剥離する。なお、この動作に連動して、上側の剥離ユニット42の複数の可動体44において、積層体6のコーナーカット部6A側に位置する可動体44からコーナーカット部6C側に位置する可動体44を順次上昇移動させて界面24を剥離してもよい。これにより、補強板3Bのみを湾曲させる形態と比較して剥離力を小さくできる。
【0099】
図12(A)は、界面24が完全に剥離された状態の剥離装置40の側面図である。同図によれば、剥離した補強板3Bが下側の剥離ユニット42に真空吸着保持され、補強板3Bを除く積層体6(補強板3A及びパネルPからなる積層体)が上側の剥離ユニット42に真空吸着保持されている。
【0100】
また、上下の剥離ユニット42の間に、
図11(A)で示した搬送装置80が挿入されるように、下側の剥離ユニット42と上側の剥離ユニット42とが相対的に十分に退避した位置に移動される。
【0101】
この後、まず、下側の剥離ユニット42の真空吸着が解除される。次に、搬送装置80の吸着パッド78によって補強板3Bが樹脂層4Bを介して吸着保持される。次いで、
図12(A)の矢印H、Iで示す搬送装置80の動作によって、補強板3Bが剥離装置40から搬出される。
【0102】
図12(B)は、補強板3Bを除く積層体6が下側の剥離ユニット42と上側の剥離ユニット42とによって真空吸着保持された側面図である。すなわち、下側の剥離ユニット42と上側の剥離ユニット42とが相対的に近づく方向に移動されて、下側の剥離ユニット42に、基板2Bが真空吸着保持される。
【0103】
図12(C)は、積層体6のコーナーカット部6Aからコーナーカット部6Cに向けて上側の剥離ユニット42を上方に撓み変形させながら、積層体6の界面28を、剥離開始部30(
図4参照)を起点として剥離していく状態を示した側面図である。すなわち、
図10に示した上側の剥離ユニット42の複数の可動体44において、積層体6のコーナーカット部6A側に位置する可動体44からコーナーカット部6C側に位置する可動体44を順次上昇移動させて界面28を剥離する。なお、この動作に連動して、下側の剥離ユニット42の複数の可動体44において、積層体6のコーナーカット部6A側に位置する可動体44からコーナーカット部6C側に位置する可動体44を順次下降移動させて界面28を剥離してもよい。これにより、補強板3Aのみを湾曲させる形態と比較して剥離力を小さくできる。
【0104】
この後、パネルPから完全に剥離された補強板3Aを、上側の剥離ユニット42から取り出し、パネルPを下側の剥離ユニット42から取り出す。以上が、隅部6Aaに剥離開始部26、30が作成された積層体6の剥離方法である。
【0105】
〔剥離開始部作成装置10の特徴〕
図13は、積層体6のコーナーカット部6Aの隅部6Aaに、ナイフNの刃先Naの一部Na−1が接触した状態を示した平面図である。また、ナイフNは平板状に構成され、その縁部に沿って直線状の刃先Naが備えられている。
【0106】
図5に示したように、積層体6及びナイフNは水平面上に配置される。ナイフNが水平面上において、
図13の矢印A方向に移動されることにより、刃先Naの一部Na−1が隅部6Aaに接触され、その後、刃先Naの一部Na−1が界面24(
図3(B)参照)に刺入される。
【0107】
図5に戻りナイフNは、送りねじ82及びモータ84からなる送り装置18によって
図6の矢印A方向、及び矢印B方向に往復移動される。矢印Aで示す刺入方向の移動量、及び矢印Bで示す退避方向の移動量が、モータ84を制御する
図5の制御部(制御手段)86によって制御されている。
【0108】
一方、積層体6を吸着保持するテーブル12は、送りねじ88及びモータ90からなる送り装置(移動機構部)92により、水平面上において
図6の矢印J方向、及び矢印K方向に往復移動される。矢印J、K方向は、
図13の如く、ナイフNの直線状の刃先Naと平行な方向に設定される。また、テーブル12の矢印J、K方向の移動量についても、モータ90を制御する制御部86によって制御されている。
【0109】
すなわち、剥離開始部作成装置10によれば、モータ84によるナイフNの矢印A、B方向の移動、及びモータ90による積層体6の矢印J、K方向の移動によって、ナイフNと積層体6の平面上での相対位置を変更することができる(刺入位置変更手段)。また、積層体6を矢印J、K方向に移動させることによって、積層体6の界面24、28に刺入されるナイフNの刃先Naの刺入位置を変更することができる。
【0110】
つまり、剥離開始部作成装置10は、送り装置92によって、ナイフNに対する積層体6の平面上での位置を変更することができる。また、制御部86によって送り装置92の矢印J、K方向の移動量を制御することにより、積層体6の界面24、28に刺入されるナイフNの刃先Naの刺入位置を、前回の刺入位置から変更することができる。すなわち、制御部86には、前回刺入した刃先Naの位置を記憶する記憶部が内蔵されており、刃先Naの位置を変更する場合には、前回の位置に基づき変更する。
【0111】
[剥離開始部作成装置10の作用]
図14(A)〜(F)は、剥離開始部作成装置10による、剥離開始部作成方法(剥離開始部作成工程)の一例を時系列的に示した平面図である。
【0112】
図14(A)に示すように、ナイフNの刺入開始位置において、刃先Naの一部Na−1が隅部6Aaに対向配置される。この後、ナイフNが
図14(B)の如く、矢印A方向に移動される。これにより、積層体6の界面24に刃先Naの一部Na−1が刺入されて、界面24に剥離開始部26(
図3(C)参照)が作成される。
【0113】
図14(C)は、ナイフNを矢印B方向に移動させて刺入開始位置に復帰させた平面図である。なお、
図14の説明図では、本発明の特徴を分かり易く説明するために、ナイフNの1回の刺入動作によって刃先Naに欠けが発生することを想定して説明する。
【0114】
図14(C)の如く、ナイフNの刃先Naのうち、界面24に刺入された一部Na−1には、刺入時にガラスカレット(不図示)に接触して欠けが発生する。
【0115】
[ナイフNの刃先Naの欠け形状の特徴]
図15(A)は、刃先Naの欠け形状を説明するための平面図である。
【0116】
積層体6には、隅部6Aaを頂角とする一方の辺部6Eとコーナーカット部6A(他方の辺部)とが存在する。ここで、一方の辺部6Eと刃先Naとのなす角度をθ1、コーナーカット部6Aと刃先Naとのなす角度をθ2とした場合、隅部6Aaを基準として、角度の小さいθ2の側では、角度の大きいθ1の側より、刺入される部分の長さが長くなる。このため、刺入長が長くなる分だけ、θ2側の刃先Naには、θ1側の刃先Naよりも長い欠け(a<b:
図14(C)参照)が発生する。ここで、aはθ1側で発生する欠けの長さであり、bはθ2側で発生する欠けの長さである。a、bはともに、刃先Naの長手方向に対する長さである。
【0117】
そこで、欠けが発生した刃先Naの一部Na−1を、次回の刺入時に使用しないように、積層体6を
図14(D)の如く矢印J方向に所定量移動させる。すなわち、角度の大きいθ1側の欠けのない正常な刃先Na−2を、次回の刺入に使用するように、刃先Naの刺入位置を変更する。これにより、界面28(次回)への刺入時には、欠けのない正常な刃先Naの一部Na−2を使用することができるので、剥離開始部30を確実に作成することができる。
【0118】
また、
図14(E)の如く、矢印J方向への積層体6の変更量cは、a<c<bに設定することが好ましい。これにより、角度の小さいθ2側に向けて刃先Naの位置を変更するよりも、刃先Naのずらし量を少なくすることができるので、刃先Naの全長をより有効利用することができる。
【0119】
上記した剥離開始部作成方法は、1つの剥離開始部を作成するごとに、制御部86が送り装置92を制御して刃先Naの刺入位置を変更する方法であるが、この方法に限定されるものではない。
【0120】
例えば、ナイフNの1回の刺入動作によっては、刃先Naに欠けが発生しないと想定した場合には、刃先Naの一部Na−1を界面28に刺入し、次の積層体6の界面24、28への刺入時に新たな刃先Na−2を刺入させてもよい。すなわち、複数回(例えば2回以上)の刺入動作のごとに新たな刃先Naを使用するように、刃先Naの刺入位置を変更してもよい。
【0121】
更にまた、
図5に示すように、ナイフNの刃先Naの欠けを検出する検出装置(検出手段)94を備え、検出装置94によって刃先Naの欠けが検出された際に、制御部86が送り装置92を制御して積層体6を
図14の矢印J方向に所定のずらし量分だけ移動させればよい。
【0122】
この刺入位置変更方法においても、次回の刺入時には、欠けのない正常な刃先Naが用いられるので、次の剥離開始部を積層体6に確実に作成することができる。また、刃先Naの一部Na−1の欠けが検出された際に、一部Na−1に隣接する正常な一部Na−2を次回の刺入に使用するので、ナイフNの使用寿命を更に延ばすことができる。なお、検出装置94としては、欠けを撮像する撮像装置、刃先を挟んで設けられた投光部及び受光部を有する光学装置等、欠けを検出可能なものであれば適用可能である。
【0123】
更に、前述の如く、刺入位置を変更する場合には、角度の大きいθ1側に向けて刃先Naの刺入位置を変更するので、角度の小さいθ2側に向けて刃先Naの位置を変更するよりも、刃先Naのずらし量を少なくすることができる。よって、刃先Naの全長をより一層有効利用することができる。
【0124】
図15(B)は、刺入位置の変更方法の特例を示した説明図である。
【0125】
同一のナイフNによって、形状の異なる
図15(A)のコーナーカット部6Aと、
図15(B)に示すコーナーカット部6Fとに対応しなければならない場合がある。
【0126】
図15(B)に示すθ3は、隅部6Faを頂角とする一方の辺部6Gと刃先Naとのなす角度であり、θ4は、隅部6Faを頂角とする他方の辺部、つまりコーナーカット部6Fと刃先Naとのなす角度である。通常であれば、
図15(B)の形態では、θ3<θ4であるので、積層体6のずらし(移動)方向は矢印K方向であり、
図15(A)の矢印J方向と逆方向となる。
【0127】
しかしながら、
図15(A)に示すθ2と
図15(B)に示すθ3とを比較すると、θ2<θ3であり、
図15(B)の形態の方が欠ける範囲が狭いので、この場合には、
図15(A)の形態を優先し、ずらす方向を矢印J方向に設定すればよい。