(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誘電体導波線路本体と、前記誘電体導波線路本体よりも誘電率が低い誘電体導波線路端部とを有しており、前記誘電体導波線路本体と前記誘電体導波線路端部とは同一の材料で継ぎ目なく一体に形成されており、
前記誘電体導波線路本体の誘電率が1.95以上2.30以下であり、
前記誘電体導波線路端部の誘電率が2.20以下である
ことを特徴とする誘電体導波線路。
誘電体導波線路本体と、前記誘電体導波線路本体よりも密度が低い誘電体導波線路端部とを有しており、前記誘電体導波線路本体と前記誘電体導波線路端部とは同一の材料で継ぎ目なく一体に形成されており、
前記誘電体導波線路本体の誘電率が1.95以上2.30以下であり、
前記誘電体導波線路端部の誘電率が2.20以下である
ことを特徴とする誘電体導波線路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び2に記載の特殊な形状を採用する方法では、誘電体導波線路等の線路径が小さい場合、特殊な形状に加工することが容易ではないため、ミリ波やサブミリ波を伝送させる方法として採用が困難である。また、伝送効率の更なる向上も求められる。また、特許文献1に記載のように、先細り構造を有する誘電体導波管を挿入して変換部に固定させる方法では、誘電体導波管部分を曲げることで応力が加わり、先細り構造の先端の位置が変動するため、変換部において高周波信号の反射特性が変化を引き起こし、性能が安定しない。
【0010】
また、特許文献3に記載の方法では、誘電率の高い材質の誘電体線路(線路1)を使用する場合に、直接、誘電率の高い材質の誘電体線路(線路1)に電磁波を入出力させるのではなく、誘電率の低い材質の誘電体線路(線路2)を介在させて電磁波を入出力させることにより、線路1に対する、電磁波の反射を抑制することができ、電磁波の入出力も容易になるとされている。しかし、材質の異なる2種類の誘電体線路を接合させる必要がある上、反射の小さい接合面を形成することも容易でない。
【0011】
また、非特許文献1の方法では、ホーン型の治具を誘電体導波線路に取り付ける必要がある。
【0012】
そこで、本発明は、線路径が小さい場合であっても、加工及び接続が容易であり、高周波信号の伝送損失及び反射損失が小さい接続構造を形成し得る誘電体導波線路を提供することを目的とする。
本発明はまた、誘電体導波線路と導波管とを接続するための接続構造であって、線路径が小さい場合であっても、加工及び接続が容易であり、高周波信号の伝送損失及び反射損失が小さい接続構造を提供することを目的とする。
本発明はまた、誘電体導波線路本体よりも誘電率又は密度が低い誘電体導波線路端部を有する誘電体導波線路を容易に製造でき、線路径が小さい場合であっても、加工及び接続が容易であり、高周波信号の伝送損失及び反射損失が小さい接続構造を形成し得る誘電体導波線路を製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明が提供する第1の誘電体導波線路は、誘電体導波線路本体と、上記誘電体導波線路本体よりも誘電率が低い誘電体導波線路端部とを有しており、上記誘電体導波線路本体と上記誘電体導波線路端部とは同一の材料で継ぎ目なく一体に形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明が提供する第2の誘電体導波線路は、誘電体導波線路本体と、上記誘電体導波線路本体よりも密度が低い誘電体導波線路端部とを有しており、上記誘電体導波線路本体と上記誘電体導波線路端部とは同一の材料で継ぎ目なく一体に形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第1及び第2の誘電体導波線路において、上記誘電体導波線路は、樹脂線の末端を長手方向に延伸して得られたものであることが好ましい。
【0016】
本発明の第1及び第2の誘電体導波線路において、上記誘電体導波線路本体の誘電率が2.05以上2.30以下であり、上記誘電体導波線路端部の誘電率が2.20以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の第1及び第2の誘電体導波線路において、上記誘電体導波線路本体は、硬度が95以上であることが好ましい。
【0018】
本発明の第1及び第2の誘電体導波線路において、上記誘電体導波線路本体は、2.45GHzにおける誘電正接が1.20×10
−4以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の第1及び第2の誘電体導波線路において、上記誘電体導波線路本体の密度が1.90g/cm
3以上2.40g/cm
3以下であり、上記誘電体導波線路端部の密度が上記誘電体導波線路本体の密度に対して90%以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の第1及び第2の誘電体導波線路は、ポリテトラフルオロエチレンにより形成されていることが好ましい。
【0021】
本発明はまた、中空金属管と上述の誘電体導波線路とを備えており、上記中空金属管に上記誘電体導波線路端部が挿入されることによって、上記中空金属管と上記誘電体導波線路とが接続されていることを特徴とする接続構造でもある。
【0022】
本発明の接続構造において、上記中空金属管の空洞に気体が充満しており、上記気体の誘電率が、上記誘電体導波線路端部の誘電率よりも低いことが好ましい。
【0023】
本発明はまた、ポリテトラフルオロエチレンからなる樹脂線を得る工程(2)、上記樹脂線の端部を加熱する工程(4)、及び、加熱した上記端部を長手方向に延伸して誘電体導波線路を得る工程(5)を含むことを特徴とする誘電体導波線路の製造方法でもある。
【0024】
工程(4)において、加熱温度は100℃以上450℃以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1の誘電体導波線路は、中空金属管と接続して使用することができる。また、誘電体導波線路は、中空金属管に挿入することにより両者を接続できるので、中空金属管と誘電体導波線路との接続が容易である。また、誘電体導波線路が、誘電体導波線路本体と、該誘電体導波線路本体よりも誘電率が低い誘電体導波線路端部とを有しているので、誘電体導波線路と中空金属管とのインピーダンスの急激な変化を抑制することができ、伝送損失及び反射損失が小さい接続構造を実現することが可能となる。また、上記誘電体導波線路本体と上記誘電体導波線路端部とは同一の材料で継ぎ目なく一体に形成されているので、接合面を形成するための加工が不要であり、伝送効率にも優れる。誘電体導波線路を曲げてもその応力により接合面でのインピーダンスの変動を生じないため、誘電体導波線路を曲げても安定した特性を示すことができる。
【0026】
本発明の第2の誘電体導波線路は、中空金属管と接続して使用することができる。また、誘電体導波線路は、中空金属管に挿入することにより両者を接続できるので、中空金属管と誘電体導波線路との接続が容易である。また、誘電体導波線路が、誘電体導波線路本体と、該誘電体導波線路本体よりも密度が低い誘電体導波線路端部とを有しているので、誘電体導波線路と中空金属管とのインピーダンスの急激な変化を抑制することができ、伝送損失及び反射損失が小さい接続構造を実現することが可能となる。また、上記誘電体導波線路本体と上記誘電体導波線路端部とは同一の材料で継ぎ目なく一体に形成されているので、接合面を形成するための加工が不要であり、伝送効率にも優れる。誘電体導波線路を曲げてもその応力により接合面でのインピーダンスの変動を生じないため、誘電体導波線路を曲げても安定した特性を示すことができる。
【0027】
本発明の接続構造では、中空金属管に誘電体導波線路を挿入することにより両者を接続できるので、中空金属管と誘電体導波線路との接続が容易である。また、誘電体導波線路が、誘電体導波線路本体と、該誘電体導波線路本体よりも誘電率又は密度が低い誘電体導波線路端部とを有しているので、誘電体導波線路と中空金属管とのインピーダンスの急激な変化を抑制することができ、小さい伝送損失及び反射損失を実現することが可能となる。また、上記誘電体導波線路本体と上記誘電体導波線路端部とは同一の材料で継ぎ目なく一体に形成されているので、接合面を形成するための加工が不要であり、伝送効率にも優れる。
【0028】
本発明の製造方法は、上記構成により、誘電体導波線路本体よりも誘電率又は密度が低い誘電体導波線路端部を有する誘電体導波線路を容易に製造でき、線路径が小さい場合であっても、加工及び接続が容易であり、高周波信号の伝送損失及び反射損失が小さい接続構造を形成し得る誘電体導波線路を容易に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の第1及び第2の誘電体導波線路の一例を示す断面図である。
図1の誘電体導波線路1は、誘電体導波線路本体3と誘電体導波線路端部2とから構成されており、誘電体導波線路端部2の誘電率又は密度は誘電体導波線路本体3よりも低い。誘電体導波線路本体3と誘電体導波線路端部2とは、誘電率又は密度が異なるが、両者は異なる材料を接合して形成されておらず、従って誘電体導波線路1に接合面は存在しない。
【0031】
誘電体導波線路本体3とは、誘電体導波線路を任意で10mm間隔で切断し、切断した誘電体導波線路の密度が最大となる部分、又は最大密度からの密度変化が5%以内である部分であることが好ましい。
誘電体導波線路端部2の長さをL(mm)、誘電体導波線路本体3の直径をD(mm)とした場合、L及びDは、次の条件を満たすことが好ましい。
・Dが0.5mm未満のとき、L/D=20
・Dが0.5mm以上、1mm未満の範囲にあるとき、L/D=10
・Dが1mm以上、10mm未満の範囲にあるとき、L/D=5かつLの最大値をL=10mmとする。
・Dが10mm以上のとき、L=10mmとする。
【0032】
本発明の誘電体導波線路は、誘電体導波線路本体3の誘電率が1.80以上2.30以下であり、誘電体導波線路端部2の誘電率が2.20以下であることが好ましい。本発明の誘電体導波線路は、誘電体導波線路本体3の誘電率が2.05以上2.30以下であり、誘電体導波線路端部2の誘電率が2.20以下であることがより好ましい。
【0033】
誘電体導波線路本体3の誘電率は、1.80以上2.30以下であることが好ましい。上記誘電率は、1.90以上であることがより好ましく、2.05以上であることがさらに好ましい。
【0034】
誘電体導波線路端部2の誘電率は、高い伝送効率が得られることから、2.20以下であることが好ましく、2.10以下であることがより好ましく、さらには2.00以下であることが好ましい。
【0035】
誘電体導波線路端部2は、先端に向かって誘電率が徐々に又は段階的に低くなっていくことも、誘電率の急激な変化を抑制することができることから好ましい。誘電体導波線路端部2の誘電率が先端に向かって低くなっている場合は、誘電体導波線路端部2の先端部の誘電率が上記範囲であることが好ましい。誘電体導波線路端部2の誘電率の低下率は、先端に向かって1mm当り0.005%以上であることが好ましく、0.01%以上がより好ましく、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0036】
誘電体導波線路端部2の密度が誘電体導波線路本体3の密度よりも低いことも好ましい。このような密度の差を設けることにより、誘電率の急激な変化を容易に抑制することができ、反射損失を抑制でき、高い伝送効率が得られる。
本発明の誘電体導波線路は、誘電体導波線路本体3の密度が1.90g/cm
3以上2.40g/cm
3以下であり、誘電体導波線路端部2の密度が誘電体導波線路本体3の密度に対して90%以下であることが好ましい。
誘電体導波線路本体3の密度は、1.90g/cm
3以上2.40g/cm
3以下であることが好ましい。上記密度は、1.95g/cm
3以上がより好ましい。誘電体導波線路本体3の密度は、2.25g/cm
3以下であることがより好ましい。
一般的に、樹脂線において、密度が小さいほど誘電率が小さくなることが知られている。上記密度は、JIS Z 8807に準拠した液中秤量法にて測定する値である。
【0037】
誘電体導波線路端部2の密度は、高い伝送効率が得られることから、できるだけ低いことが好ましく、誘電体導波線路本体3の密度に対して90%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、さらには40%以下が好ましい。誘電体導波線路端部2の強度の観点から、誘電体導波線路本体3の密度に対して10%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。
【0038】
誘電体導波線路端部2は、誘電率の急激な変化を抑制するため、先端に向かって密度が徐々に又は段階的に低くなっていくことが好ましい。誘電体導波線路端部2の密度が先端に向かって低くなっている場合は、誘電体導波線路端部2の先端部の密度が上記範囲であることが好ましい。誘電体導波線路端部2の密度の低下率は、先端に向かって1mm当り0.05%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましく、さらには0.5%以上が好ましい。また、誘電体導波線路端部2の密度の低下率は、誘電体導波線路端部2の強度の観点から、先端に向かって1mm当り30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、さらには10%以下が好ましい。
【0039】
誘電体導波線路本体3は、硬度が95以上であることが好ましい。上記硬度は、97以上であることがより好ましく、98以上であることが特に好ましい。上限は、特に限定されないが、99.9であってよい。上記誘電体導波線路本体3の上記硬度が上記範囲内であると、高い誘電率を有すると同時に、低い誘電正接を有する誘電体導波線路を容易に実現することができる。また、上記誘電体導波線路は破損しにくく、閉塞や折れを生じにくい。
上記硬度は、JIS K6253−3に規定されていたスプリング式硬さにより測定する。
上記硬度は誘電体導波線路の強度、及び、屈曲安定性への寄与が大きく、より硬度が高い方が、強度が高く、かつ屈曲時の誘電率変動、誘電正接の増加が抑制できる。
【0040】
誘電体導波線路本体3は、2.45GHzにおける誘電正接(tanδ)が1.20×10
−4以下であることが好ましい。上記誘電正接(tanδ)は、1.00×10
−4以下であることがより好ましく、0.95×10
−4以下であることが更に好ましい。上記誘電正接(tanδ)の下限は、特に限定されないが、0.10×10
−4であってよく、0.80×10
−4であってよい。
上記誘電正接は、株式会社関東電子応用開発製空洞共振器を使用して、2.45GHzで測定する。誘電正接が低いほど、伝送効率に優れた誘電体導波線路となる。
【0041】
誘電体導波線路は、方形でも円形でもよいが、方形よりも円形の誘電体導波線路の作製が容易であることから、円形とすることがより好ましい。
【0042】
図2も、本発明の第1及び第2の誘電体導波線路の一例を示す断面図である。
図2の誘電体導波線路1は、誘電体導波線路本体3と誘電体導波線路端部2とから構成されており、誘電体導波線路端部2の断面積が誘電体導波線路本体3の断面積よりも小さい態様を示している。誘電体導波線路端部2の断面積が誘電体導波線路本体3の断面積よりも小さいことにより、誘電率の急激な変化を一層抑制することができる。誘電体導波線路端部2の形状は、円錐状、円錐台状、角錐状又は角錐台状であってよいが、作製が容易であるのは円錐状である。
【0043】
誘電体導波線路本体3の断面積は、0.008mm
2(φ0.1mm:1.8THz)以上18000mm
2(φ150mm:600MHz)以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.28mm
2(φ0.6mm:300GHz)以上64mm
2(φ9mm:20GHz)以下である。
【0044】
誘電体導波線路端部2の断面積は、高い伝送効率が得られることから、誘電体導波線路本体3の断面積に対して1%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、さらには10%以上が好ましい。また、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、さらには70%以下の範囲であることが好ましい。
【0045】
誘電体導波線路端部2は、先端に向かって断面積が徐々に又は段階的に小さくなっていくことも、誘電率の急激な変化を抑制することができることから好ましい。誘電体導波線路端部2の断面積の低下率は、先端に向かって1mm当り0.1%以上が好ましく、0.5%以上がさらに好ましく、さらには1%以上が好ましい。また、誘電体導波線路端部2の断面積の低下率は、先端に向かって1mm当り30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、さらには10%以下が好ましい。
【0046】
誘電体導波線路1は、ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)により形成することが好ましい。PTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)のみからなるホモPTFEであってもよいし、TFEと変性モノマーとからなる変性PTFEであってもよい。上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン(CTFE)等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)等の水素含有オレフィン;パーフルオロアルキルエチレン;エチレン等が挙げられる。また用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
上記変性PTFEにおいて、変性モノマー単位の量は、全単量単位の3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、さらには、1質量%以下であることが好ましい。また、成形性や透明性の向上の点から、0.001質量%以上であることが好ましい。上記変性モノマー単位とは、変性PTFEの分子構造の一部であって変性モノマーに由来する部分を意味し、全単量単位とは、変性PTFEの分子構造における全ての単量体に由来する部分を意味する。
【0047】
上記ポリテトラフルオロエチレンは、標準比重(SSG)が2.130以上2.250以下であってよく、2.150以上が好ましく、2.230以下が好ましく、非溶融加工性を有するものであってよく、フィブリル化性を有するものであってよい。上記標準比重は、ASTM D−4895 10.5に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D−792に準拠した水置換法により測定する値である。
【0048】
中空金属管と本発明の第1又は第2の誘電体導波線路とを備えており、上記中空金属管に上記誘電体導波線路端部が挿入されることによって、上記中空金属管と上記誘電体導波線路とが接続されていることを特徴とする接続構造も本発明の1つでもある。
図3は、本発明の接続構造の一例を示す断面図である。
図3の接続構造は、中空金属管11と誘電体導波線路12とを備えており、上記中空金属管11に誘電体導波線路端部12cが挿入され、誘電体導波線路端部12cが中空金属管内に配置されて、上記中空金属管11と上記誘電体導波線路12とが接続されている。誘電体導波線路12は、誘電体導波線路本体12bと誘電体導波線路端部12cとから構成されており、誘電体導波線路端部12cの誘電率又は密度は誘電体導波線路本体12bよりも低い。誘電体導波線路本体12bと誘電体導波線路端部12cとは、誘電率又は密度が異なるが、両者は異なる材料を接合して形成されておらず、従って誘電体導波線路12に接合面は存在しない。誘電体導波線路12は、上述の誘電体導波線路1と同じである。
【0049】
更に、
図3では、中空金属管11の周方向断面の中空形状と、誘電体導波線路12の周方向断面の形状とが同一であり、大きさもほぼ同一であることから、中空金属管11の内壁に誘電体導波線路12が密接しており、中空金属管11に誘電体導波線路12が固定されている。このように、中空金属管11の周方向断面の中空形状と誘電体導波線路12の周方向断面の形状とを同一とすれば、中空金属管の中心と誘電体導波線路の中心とを一致させることが容易である上、使用中に中心がずれることもないので、より一層反射損失を抑制することができる。
【0050】
誘電体導波線路12は、中空金属管11の中空を完全に埋めるようには挿入されておらず、このため、
図3の接続構造では、空洞13が形成される。空洞13には気体が充満しており、この気体は空気であってよい。
【0051】
誘電体導波線路端部12cの誘電率は、誘電体導波線路本体12bの誘電率よりも低いが、更に、空洞13内の気体(中空金属管11内の気体)の誘電率が誘電体導波線路端部12cの誘電率よりも低いことが好ましい。すなわち、誘電体導波線路端部12cの誘電率を、誘電体導波線路本体12bよりも低く、かつ、気体の誘電率よりも高くすることにより、誘電率の急激な変化を抑制することができ、反射損失を抑制でき、高い伝送効率が得られる。
【0052】
誘電体導波線路端部12cの密度が誘電体導波線路本体12bの密度よりも低いことも好ましい。
一般的に、樹脂線において、密度が小さいほど誘電率が小さくなることが知られており、本発明においては、誘電体導波線路端部12cの密度を誘電体導波線路本体12bの密度よりも低くすることにより、誘電体導波線路端部12cの誘電率を低下させ、空洞13の気体との界面での反射損失を低減化させている。上記密度は、JIS Z 8807に準拠した液中秤量法にて測定する値である。
【0053】
中空金属管及び誘電体導波線路は、方形でも円形でもよいが、上記の理由で形状を同一とすることが好ましい。また、方形よりも円形の誘電体導波線路の作製が容易であることから、いずれも円形とすることがより好ましい。
【0054】
中空金属管11に誘電体導波線路12を挿着するには、誘電体導波線路12のうち、中空金属管11に挿入された挿入部分12aがある程度の長さを有することが好ましいが、長すぎると、その長さに見合った効果が得られないばかりか、大型化してしまう。従って、挿入部分12aの長さは、1mm以上200mm以下とすることが好ましい。また、誘電体導波線路端部12cの長さを1mm以上50mm以下とすることが、誘電率の急激な変化を抑制しやすいことや、小型化の観点から好ましい。
【0055】
図4も、本発明の接続構造の一例を示す断面図である。
図4は、中空金属管11と誘電体導波線路12とを備えており、上記中空金属管11に誘電体導波線路端部12cが挿入されることによって、上記中空金属管11と上記誘電体導波線路12とが接続されており、誘電体導波線路12が、誘電体導波線路本体12bと誘電体導波線路端部12cとから構成されており、誘電体導波線路端部12cの断面積が誘電体導波線路本体12bの断面積よりも小さい態様を示している。誘電体導波線路端部12cの断面積が誘電体導波線路本体12bの断面積よりも小さいことにより、誘電率の急激な変化を一層抑制することができ、反射損失を一層抑制でき、より一層に高い伝送効率が得られる。また、断面積を変化させない場合に比べて、誘電体導波線路端部12cを短くすることができ、小型化が可能になる。誘電体導波線路端部12cの形状は、円錐状、円錐台状、角錐状又は角錐台状であってよいが、作製が容易であるのは円錐状である。
【0056】
誘電体導波線路本体12bの断面積は、0.008mm
2(φ0.1mm:1.8THz)以上18000mm
2(φ150mm:600MHz)以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.28mm
2(φ0.6mm:300GHz)以上64mm
2(φ9mm:20GHz)以下である。
本発明の接続構造は、このように、線路径が小さい誘電体導波路と径の小さい中空金属管とを接続することも可能である。
【0057】
中空金属管への固定が容易であることから、誘電体導波線路本体12bは、長さが1mm以上199mm以下であることが好ましい。また、誘電体導波線路端部12cの長さを、1mm以上50mm以下とすると、小型化できるとともに、誘電率の急激な変化を抑制しやすいことから好ましい。
【0058】
中空金属管11は、中空部分を有する金属管であればよく、変換器であっても、中空導波管であってもよい。中空金属管として変換器を使用する場合の態様は後述する。
【0059】
図5は、
図3及び4において、円形の中空金属管が変換器の一部を構成している場合の態様を示している。
図5において、中空金属管11は、変換器31の一部を構成しており、円形の誘電体導波線路12が挿入されている。誘電体導波線路12は、外層部を備える誘電体導波線路32の内層部を形成しており、誘電体導波線路12の周囲には、誘電体導波線路12よりも誘電率の低い外層部34が設けられている。誘電体導波線路12を中空金属管11に挿入して、中空金属管11内に誘電体導波線路12の挿入部分12aを設置するとともに、挿入部分12aと外層部34との間に中空金属管11を挿入することにより、外層部を備える誘電体導波線路32と変換器31とがしっかりと接続されている。変換器31は、フランジ部33を備えており、フランジ部を介して中空導波管(図示せず)等と接続することが可能である。外層部34の内径は、0.1mm以上150mm以下であってよく、0.6mm以上10mm以下が好ましい。外層部34の外径は、0.5mm以上200mm以下であってよく、1mm以上150mm以下が好ましい。
【0060】
次に、誘電率が低い上記誘電体導波線路端部を有する上記誘電体導波線路、又は、密度が低い上記誘電体導波線路端部を有する上記誘電体導波線路をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)により形成する方法について説明する。上記誘電体導波線路は、樹脂線の末端を長手方向に延伸して得ることができる。
【0061】
上記樹脂線は、公知の成形方法でPTFEを成形して得ることができる。具体的には、PTFEの粉末を押出助剤と混合した後、予備成形機で予備成形体に成形し、上記予備成形体をペースト押出成形して、PTFE線を得ることができる。
また、上記ペースト押出成形は予備成形しなくても実施可能である。具体的には、PTFEの粉体を押出助剤と混合した後、ペースト押出機のシリンダーに直接投入し、ペースト押出成形することによりPTFE線を得ることができる。
得られた樹脂線の末端を長手方向に延伸することによって、端部の誘電率が他の部分よりも低い誘電体導波線路、又は、端部の密度が他の部分よりも低い誘電体導波線路を得ることができる。この際、延伸させたい部分のみを加熱すると、所望の誘電体導波線路端部を作製することが容易である。延伸の倍率は1.2倍以上5倍以下であってよい。
【0062】
樹脂線の末端を長手方向に延伸して得る方法により、前記誘電体導波線路端部の断面積が前記誘電体導波線路本体の断面積よりも小さいことを特徴とする上述の誘電体導波線路を製造することもできる。
延伸は、樹脂線の末端をプライヤー等の工具により挟持して、長手方向に引っ張ることにより実施できる。挟持した部分が延伸されていない場合は、この部分を切断することによって、先端に向かって誘電率又は密度が徐々に又は段階的に低くなっており、先端に向かって断面積が徐々に又は段階的に小さくなっている円錐台状の誘電体導波線路端部を容易に形成することができる。
【0063】
本発明はまた、ポリテトラフルオロエチレンからなる樹脂線を得る工程(2)、該樹脂線の端部を加熱する工程(4)、及び、加熱した該端部を長手方向に延伸して誘電体導波線路を得る工程(5)を含むことを特徴とする誘電体導波線路の製造方法でもある。
【0065】
本発明の製造方法は、工程(2)の前に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の粉末を押出助剤と混合しPTFEからなる予備成形体を成形する工程(1)を含むことが好ましい。
PTFEの粉末は、テトラフルオロエチレン(TFE)のみからなるホモPTFE、TFEと変性モノマーとからなる変性PTFE、またはこれらの混合物から製造される。上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン(CTFE)等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)等の水素含有オレフィン;パーフルオロアルキルエチレン;エチレン等が挙げられる。また用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
上記変性PTFEにおいて、変性モノマー単位の量は、全単量単位の3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、さらには、1質量%以下であることが好ましい。また、成形性や透明性の向上の点から、0.001質量%以上であることが好ましい。
【0066】
上記PTFEは、標準比重(SSG)が2.130以上2.250以下であってよく、2.150以上が好ましく、2.230以下が好ましく、非溶融加工性を有するものであってよく、フィブリル化性を有するものであってよい。上記標準比重は、ASTM D−4895 10.5に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D−792に準拠した水置換法により測定する値である。
【0067】
上記PTFEの粉末と押出助剤と混合して12時間程度室温にて熟成させた後得られる押出助剤混合粉体を予備成形機に入れ、1MPa以上10MPa以下、より好ましくは1MPa以上5MPa以下で1分間以上120分間以下で予備成形することによりPTFEからなる予備成形体を得ることができる。
上記押出助剤としては、炭化水素油等が挙げられる。
上記押出助剤の量は、PTFEの粉末100質量部に対して10質量部以上40質量部以下が好ましく、15質量部以上30質量部以下がより好ましい。
【0068】
工程(2)
この工程は、PTFEからなる樹脂線を得る工程である。
工程(1)においてPTFEからなる予備成形体を成形する場合、工程(2)において当該予備成形体をペースト押出機にて押出して樹脂線を得ることができる。
また、工程(2)の前にPTFEからなる予備成形体を成形しない場合、PTFEの粉体を押出助剤と混合した後、ペースト押出機のシリンダーに直接投入し、ペースト押出成形して樹脂線を得ることができる。
樹脂線が押出助剤を含む場合、樹脂線を80℃以上250℃以下にて、0.1時間以上6時間以下加熱して押出助剤を蒸散させることが好ましい。
上記樹脂線は、方形でも円形でもよいが、方形よりも円形の樹脂線の作製が容易であることから、円形とすることが好ましい。上記樹脂線の直径は、0.1mm以上150mm以下であってよく、好ましくは、0.6mm以上9mm以下である。
【0069】
本発明の製造方法は、工程(2)で得られた樹脂線を加熱する工程(3)を含んでいてもよい。
具体的な加熱条件は、上記樹脂線の形状及び大きさにより適宜変更する。例えば、上記樹脂線を326〜345℃で10秒〜2時間加熱することが好ましい。加熱温度は、330℃以上であることがより好ましく、380℃以下であることがより好ましい。加熱時間は、1時間以上3時間以下であることがより好ましい。
【0070】
上記温度で所定時間加熱することにより、上記樹脂線が含んでいた空気が外部に放出されるため、高い誘電率を有する誘電体導波線路を得ることができると推測される。また、樹脂線を完全に焼成しないので、低い誘電正接を有する誘電体導波線路を得ることができると推測される。また、上記温度で所定時間加熱することにより、樹脂線の硬度が向上し、強度が増す利点がある。
【0071】
上記の加熱は、ソルトバス、サンドバス、熱風循環式電気炉等を使用して行うことができるが、加熱条件の制御が容易である点で、ソルトバスを使用して行うことが好ましい。また、加熱時間が上記範囲内で短くなる点でも有利である。上記ソルトバスを使用した加熱は、例えば特開2002−157930号公報に記載の被覆ケーブルの製造装置を使用して行うことができる。
【0072】
工程(4)
この工程は、工程(2)で得られた樹脂線の端部を加熱する工程である。また、この工程は、工程(3)で得られた樹脂線の端部を加熱する工程であってもよい。
工程(4)において、樹脂線の端部を加熱することにより、所望の誘電体導波線路端部を作製することが容易になる。
工程(4)においては、特に限定されるものではないが、例えば上記樹脂線の先端から0.8mm以上150mm以下の部分を加熱することが好ましく、20mm以下の部分を加熱することがより好ましい。
工程(4)における加熱温度は、100℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上が更に好ましい。工程(4)における加熱温度は450℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、380℃以下が更に好ましい。
【0073】
工程(5)
この工程は、工程(4)で得られた加熱した端部を長手方向に延伸して誘電体導波線路を得る工程である。
延伸は、工程(4)で得られた加熱した端部をプライヤー等の工具により挟持して、長手方向に引っ張ることにより実施できる。挟持した部分が延伸されていない場合は、この部分を切断することによって、先端に向かって誘電率又は密度が徐々に又は段階的に低くなっており、先端に向かって断面積が徐々に又は段階的に小さくなっている円錐台状の誘電体導波線路端部を容易に形成することができる。
延伸倍率は、1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。延伸倍率は、10倍以下が好ましく、5倍以下がより好ましい。
延伸速度は、1%/秒以上が好ましく、10%/秒以上がより好ましく、20%/秒以上が更に好ましい。延伸速度は、1000%/秒以下が好ましく、800%/秒以下がより好ましく、500%/秒以下が更に好ましい。
【0074】
本発明の製造方法は、工程(5)で得られた誘電体導波線路を外層部に挿入する工程(6)を含んでもよい。
上記外層部は、上記誘電体導波線路と同様のPTFEにより形成されるものであってもよい。
また、上記外層部は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの炭化水素系樹脂により形成されるものであってもよく、上記樹脂の発泡体により形成されるものでもよい。
上記外層部がPTFEにより形成される場合、例えば、以下の方法で製造できる。
PTFEの粉体に押出助剤を混合して、1時間以上24時間以下、常温で熟成した後、得られる押出助剤混合粉体を、予備成形機に入れて、1MPa以上10MPa以下で30分程度加圧し、円柱状のPTFEからなる予備成形体を得ることができる。上記PTFEからなる予備成形体を、ペースト押出機にて押出成形を行い、中空円筒状の成形体を得る。この成形体が押出助剤を含む場合、この成形体を80℃以上250℃以下にて、0.1時間以上6時間以下加熱して押出助剤を蒸散させることが好ましい。この成形体を250℃以上320℃以下、より好ましくは280℃以上300℃以下で1.2倍以上5倍以下、より好ましくは1.5倍以上3倍以下に延伸することで中空円筒状の外層部を得ることができる。
外層部の内径は、0.1mm以上150mm以下であってよく、0.6mm以上10mm以下が好ましい。外層部の外径は、0.5mm以上200mm以下であってよく、1mm以上150mm以下が好ましい。
【0075】
本発明の接続構造は、中空金属管と工程(5)で得られた誘電体導波線路とを接続して接続構造を得る工程を含む方法により好適に製造できる。また、本発明の接続構造は、中空金属管と工程(6)で得られた外層部に挿入した誘電体導波線路とを接続して接続構造を得る工程を含む方法により好適に製造できる。
この工程においては、例えば、中空金属管に工程(5)で得られた誘電体導波線路又は工程(6)で得られた外層部に挿入した誘電体導波線路を挿入することによって、接続構造を得ることができる。
中空金属管は、方形でも円形でもよいが、中空金属管の中心と誘電体導波線路の中心とを一致させることが容易である上、使用中に中心がずれることもないので、より一層反射損失を抑制できることから、誘電体導波線路の周方向断面の形状と同一とすることが好ましい。また、方形よりも円形の誘電体導波線路の作製が容易であることから、中空金属管は、円形とすることが好ましい。
中空金属管の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、銅、黄銅(真鍮)、アルミ、ステンレス、銀、鉄などが挙げられる。上記金属は単独、または複数種類を組み合わせて用いてもよい。
中空金属管は、中空部分を有する金属管であればよく、変換器であっても、中空導波管であってもよい。
【0076】
なお、誘電体導波線路をポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂等により形成した場合であっても、樹脂線の末端を長手方向に延伸することにより、誘電体導波線路端部の断面積が誘電体導波線路本体の断面積よりも小さい誘電体導波線路を容易に形成することができる。
【実施例】
【0077】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0078】
実験例
PTFEファインパウダー(SSG:2.175)100質量部に押出助剤としてエクソンモービル社製IsoparGを20.5質量部混合して、12時間常温で熟成させて押出助剤混合粉体を得た後、この押出助剤混合粉体を予備成形機に投入し、3MPaで30分加圧することで円柱状の予備成形体を得た。
この予備成形体をペースト押出機を用いてペースト押出し、200℃にて1時間加熱して押出助剤を蒸散させて、直径3.51mmの樹脂線を得た。
この樹脂線を、全長が660mmとなるように切断した。
外層部:
PTFEファインパウダーに押出助剤としてエクソンモービル社製IsoparGを混合して、12時間常温で熟成させて押出助剤混合粉体を得た後、この押出助剤混合粉体を予備成形機に投入し、3MPaで30分間加圧することで円柱状の予備成形体を得た。
この予備成形体をペースト押出機を用いてペースト押出し、200℃にて1時間加熱して押出助剤を蒸散させて、外径10mm、内径3.6mmの成形体を成形した。この成形体を300℃で2倍に延伸することで外径9.5mm、内径3.6mmの外層部を得た。
上記外層部に樹脂線を挿入することで、外層部を備える誘電体導波線路を得た。
【0079】
実施例1
上記実験例で得られた樹脂線を、330℃にて70分熱処理した。次いで樹脂線の先端から20mm以下の部分(端部)を260℃で加熱し、先端から5mm以下の部分を挟持して端部を長手方向に延伸倍率2倍、延伸速度200%/secで延伸することで端部を40mmに延伸した。延伸後、延伸時に挟持した先端から10mm以下の部分を切断し、誘電体導波線路を得た。
この誘電体導波線路を上記実験例で得られた外層部に挿入し、外層部を備える誘電体導波線路を得た。
【0080】
実施例2
上記実験例で得られた樹脂線を熱処理することなく、先端から20mm以下の部分(端部)を230℃に加熱し、先端から5mm以下の部分を挟持して端部を長手方向に延伸倍率2倍、延伸速度200%/secで延伸することで端部を40mmに延伸した。延伸後、延伸時に挟持した先端から10mm以下の部分を切断し、誘電体導波線路を得た。
この誘電体導波線路を上記実験例で得られた外層部に挿入し、外層部を備える誘電体導波線路を得た。
【0081】
比較例1
上記実験例で得られた樹脂線を、330℃で70分熱処理し、誘電体導波線路を得た。
この誘電体導波線路を上記実験例で得られた外層部に挿入し、外層部を備える誘電体導波線路を得た。
【0082】
得られた誘電体導波線路の物性を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に記載の物性の測定方法は次のとおりである。また、表1に記載のA〜Dを
図6に示す。
図6中、「10」とは、A〜Dのそれぞれの長さが10mmであることを示す。
【0085】
直径及び断面積
得られた誘電体導波線路を先端より10mm間隔で切断し、切断した部分の中心部をノギスにて直径を測定し、断面積を計算した。
【0086】
密度
密度は、JIS Z 8807に準拠した液中秤量法にて測定した。
【0087】
誘電率
誘電体導波線路の構造上、誘電率を直接測定することが困難なため、実施例1〜2及び比較例1で得られた誘電体導波線路の誘電率は、以下の方法にて算出した。樹脂線の直径を2mmとしたこと以外は、実験例と同様の方法で、直径2mmの樹脂線を作製し、押出助剤を蒸散させた後、330℃で70分熱処理した樹脂線を1倍、1.5倍に延伸し、密度2.23g/cm
3と1.80g/cm
3のサンプルを作製した。さらに、樹脂線の直径を2mmとしたこと以外は、実験例と同様の方法で、直径2mmの樹脂線を作製し、押出助剤を蒸散させた後に熱処理せずに、長手方向に1倍、1.5倍及び2倍に延伸し、密度1.60g/cm
3、1.38g/cm
3、0.71g/cm
3のサンプルを作製した。得られたサンプルについて、下記誘電率測定を実施し、表2に示すように、密度と誘電率の相関を確認した。密度0.00g/cm
3における誘電率は、空気の誘電率である。密度はJIS Z 8807に準拠した液中秤量法で測定した。誘電率は、株式会社関東電子応用開発製空洞共振器(摂動法、2.45GHz)とHP社製ネットワークアナライザーHP8510Cを使用して測定した。上記から、誘電率と密度の関係を求めた結果、密度(X)と誘電率(Y)には以下の相関があり、以下の式を用いて、誘電体導波線路の密度から誘電率を計算した。
Y=0.533X+1.01
【0088】
【表2】
【0089】
表3に記載の物性の測定方法は次のとおりである。
【0090】
硬度
JIS K6253−3に規定されたスプリング式硬さ計(JIS−A形)により硬度を測定した。
【0091】
誘電正接(tanδ)
株式会社関東電子応用開発製空洞共振器(2.45GHz)により測定した。
【0092】
屈曲安定性
誘電体導波線路本体を60mmの長さに切断し、サンプルを作製した。まず、得られたサンプルの密度を測定し、密度の値から誘電率(A)を算出した。次に、
図7に示すように、得られたサンプル4を直径10mmの丸棒5a及び5bの間に設置する(
図7(a))。サンプル4を丸棒5aに巻き付けて、270°折り曲げた後(
図7(b))、サンプル4を直線状に戻す(
図7(c))。次に、サンプル4を丸棒5bに巻き付けて、270°折り曲げた後(
図7(d))、サンプル4を直線状に戻す(
図7(e))。この操作を1回として、10回繰り返す。上記の操作の後、サンプル4の密度を測定し、誘電率(B)を算出した。屈曲安定性として、屈曲前後の誘電体導波線路本体の誘電率の変化率(B/A)を算出した。密度(X)から誘電率(Y)への換算は、以下の式を用いた。
Y=0.533X+1.01
【0093】
誘電体導波線路と外層部との誘電率差
誘電体導波線路の誘電率、及び、外層部の誘電率は、誘電体導波線路及び外層部の密度を測定し、以下の式によって換算した。
密度(X)と誘電率(Y)には、以下の相関がある。
Y=0.533X+1.01
さらに誘電体導波線路と外層部との誘電率差は、誘電体導波線路の誘電率から外層部の誘電率を差し引いた値とした。
[誘電体導波線路と外層部との誘電率差]=[誘電体導波線路の誘電率]−[外層部の誘電率]
【0094】
誘電体導波線路端部での反射損失
図5に示すとおり、外層部に挿入した誘電体導波線路の両端を2つの変換器31の中空金属管11にそれぞれ挿入し、両変換器31のフランジ部33に、円形導波管−方形導波管変換器1及び2(いずれも図示せず)それぞれの円形導波管側を接続し、当該円形導波管−方形導波管変換器1及び2それぞれの方形導波管側に方形導波管1及び2を接続した。この方形導波管1及び2それぞれを、ネットワークアナライザーの第1端子部(図示せず)と、第2端子部(図示せず)に接続し、S11を測定し、60GHz−65GHz間の反射の最大値を反射損失とした。0点調整は、誘電体導波線路を挟まずに円形導波管−方形導波管変換器1及び2それぞれの円形導波管側同士を接続し、当該円形導波管−方形導波管変換器1及び2それぞれの方形導波管側に方形導波管1及び2を接続し、当該方形導波管1及び2それぞれを、ネットワークアナライザーの第1端子部と、第2端子部に接続して行った。
【0095】
【表3】
【0096】
実施例3、4及び比較例2
実施例1〜2及び比較例1で得られた外層部に挿入した誘電体導波線路を、
図5に示すとおり、変換器の中空金属管に挿入して、外層部に挿入した誘電体導波線路と変換器の中空金属管とを接続し、伝送損失及び反射損失を測定した。その結果を表4に示す。
【0097】
【表4】
【0098】
表4に記載の物性の測定方法は次のとおりである。
【0099】
伝送損失及び反射損失
図5に示すとおり、外層部に挿入した誘電体導波線路の両端を2つの変換器31の中空金属管11にそれぞれ挿入し、両変換器31のフランジ部33に、円形導波管−方形導波管変換器1及び2それぞれの円形導波管側を接続し、当該円形導波管−方形導波管変換器1及び2それぞれの方形導波管側に方形導波管1及び2を接続した。この方形導波管1及び2それぞれを、ネットワークアナライザーの第1端子部と、第2端子部に接続し、伝送損失はS21を測定し、反射損失はS11を測定した。0点調整は、誘電体導波線路を挟まずに円形導波管−方形導波管変換器1及び2それぞれの円形導波管側同士を接続し、当該円形導波管−方形導波管変換器1及び2それぞれの方形導波管側に方形導波管1及び2を接続し、当該方形導波管1及び2それぞれを、ネットワークアナライザーの第1端子部と、第2端子部に接続して行った。