(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0020】
先ず、本発明のシリコーンゴム組成物について説明する。本発明のシリコーンゴム組成物は、
平均粒子径が0.05〜30μmである球状酸化物微粒子、
下記平均組成式(1):
R
a2SiO (1)
(式中、R
aは1価の炭化水素基を表し、該炭化水素基は置換基を有していてもよい。)
で表される繰り返し単位を有し、1分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、及び
下記平均組成式(2):
R
b2SiO (2)
(式中、R
bは1価の炭化水素基を表し、該炭化水素基は置換基を有していてもよい。)
で表される繰り返し単位を有し、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
を含有する組成物であり、
該組成物の硬化物の25℃、大気圧条件下における全体積に対する前記球状酸化物微粒子の体積分率V
P(単位:体積%)が下記式(3):
11×log(D
P)+9≦V
P≦15×log(D
P)+16 (3)
(式中、D
Pは前記球状酸化物微粒子の平均粒子径(単位:nm)を表す。)
で表される条件を満たし、
前記ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が、前記オルガノポリシロキサン全量に対して0.05〜1.0質量%であり、
前記ケイ素原子結合水素原子の含有量が、前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン全量に対して0.10〜1.0質量%である、
ことを特徴とするものである。
【0021】
(i)球状酸化物微粒子
本発明に用いられる球状酸化物微粒子(以下、「球状酸化物微粒子(i)」という。)としては特に制限はないが、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の酸化物、及びこれらの複合酸化物が挙げられる。このような酸化物微粒子としては、その形状が球状であれば、内部に空隙(例えば、中空、多孔質)を有するものであってもよい。また、これらの球状酸化物微粒子は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0022】
球状酸化物微粒子(i)の平均粒子径は0.05〜30μmである。球状酸化物微粒子(i)の平均粒子径が前記下限未満になると、微粒子同士の凝集が起こり、本発明の効果が発現せず、また、前記上限を超えると、球状酸化物微粒子(i)の配合量を増加させる必要があり、ゴムとしての特性が損なわれる。また、本発明の効果をより確実に発現させるという観点から、球状酸化物微粒子(i)の平均粒子径としては0.1〜15μmが好ましい。なお、本発明において、球状酸化物微粒子(i)の平均粒子径は、球状酸化物微粒子(i)の水分散液について動的光散乱法により測定した粒子径分布(体積基準)の積算値50%における粒子径D
50である。
【0023】
球状酸化物微粒子(i)の粒子径分布としては、球状酸化物微粒子(i)の水分散液について動的光散乱法により測定した粒子径分布(体積基準)の積算値90%における粒子径D
90と積算値10%における粒子径D
10との比(ΔD=D
90/D
10)が1≦ΔD<100であることが好ましく、1≦ΔD<50であることがより好ましい。ΔDが前記範囲内にある、すなわち、粒子径が均一な球状酸化物微粒子(i)は、規則正しく配列しやすいため、ひずみ速度が速い場合に、微粒子同士が接触して力の伝達効果が発現し、シリコーンゴム組成物の硬化物が硬くなりやすい(測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率が8.0MPa以上となる)傾向にある。一方、100<ΔDになる、すなわち、粒子径が不均一な球状酸化物微粒子(i)は、不規則に配列しやすいため、ひずみ速度が速い場合に、微粒子同士の接触が十分ではなく、力の伝達効果が発現しにくく、シリコーンゴム組成物の硬化物が硬くなりにくい(測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率が8.0MPa未満となる)傾向にある。
【0024】
(ii)1分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
本発明に用いられるアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(以下、「アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)」という。)は、下記平均組成式(1):
R
a2SiO (1)
(式中、R
aは1価の炭化水素基を表し、該炭化水素基は置換基を有していてもよい。)
で表される繰り返し単位を有するものである。前記平均組成式(1)中のR
aとしては、例えば、メチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ビニル基、アリル基、プロピニル基が挙げられる。また、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)は、基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、一部の分岐構造を含んでいてもよい。このようなアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)のうち、シリコーンゴム組成物の硬化物の硬度と可撓性の観点から、前記平均組成式(1)で表される繰り返し単位がジメチルシロキサン単位であるものが好ましい。
【0025】
また、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)は、ケイ素原子に結合したアルケニル基(以下、「ケイ素原子結合アルケニル基」という。)を1分子中に少なくとも1個有するものである。ケイ素原子結合アルケニル基がオルガノポリシロキサン1分子中に1個未満になると、網目構造が形成されず、良好な硬化物が得られない。このようなケイ素原子結合アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロピニル基等が挙げられ、中でも、ヒドロシリル化反応の反応性が高いことから、ビニル基が好ましい。このアルケニル基は、ケイ素原子に結合していれば、オルガノポリシロキサン分子中のどこに存在していてもよいが、分子末端に存在していることが好ましい。
【0026】
このようなアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)としては、例えば、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖のジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖のジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖のジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖のジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体等が挙げられる。これらのアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明において、ケイ素原子結合アルケニル基の含有量はアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)全量に対して0.05〜1.0質量%である。ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が前記下限未満になると、得られるシリコーンゴム組成物の硬化物の貯蔵弾性率が低く、十分な機械的強度を有する硬化物が得られない。特に、ひずみ速度が速い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が硬くならない(測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率が8.0MPa未満となる)。他方、ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が前記上限を超えると、得られる硬化物の架橋密度が高くなりすぎる。特に、ひずみ速度が遅い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が柔らかくならない(測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率が1.5MPaを超える)。また、本発明の効果をより確実に発現させるという観点から、ケイ素原子結合アルケニル基の含有量としては0.05〜0.5質量%がより好ましい。
【0028】
本発明に用いられるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)は、25℃において液状であることが好ましい。アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)の25℃における粘度としては、200〜3000mPaが好ましく、500〜2000mPaがより好ましい。粘度が前記下限未満のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)は、分子量が小さく、ゴム弾性を発現するために十分な分子長さを有しておらず、得られる硬化物が硬く、脆いものとなる傾向にある。特に、ひずみ速度が遅い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が柔らかくならない(測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率が1.5MPaを超える)場合がある。他方、粘度が前記上限を超えるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)は、分子量が大きく、架橋点間距離が長く、得られる硬化物が柔らかくなり、機械的強度が不足する傾向にある。特に、ひずみ速度が速い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が硬くならない(測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率が8.0MPa未満となる)場合がある。このようなアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)の粘度は、前記範囲内となるように、2種類以上のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)を混合して調整してもよい。
【0029】
また、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)の平均重合度としては、50以上600未満が好ましい。平均重合度が前記下限未満のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)は、ゴム弾性を発現するために十分な分子長さを有しておらず、得られる硬化物が硬く、脆いものとなる傾向にある。特に、ひずみ速度が遅い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が柔らかくならない(測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率が1.5MPaを超える)場合がある。他方、平均重合度が前記上限以上のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)は、架橋点間距離が長く、得られる硬化物が柔らかくなり、機械的強度が不足する傾向にある。特に、ひずみ速度が速い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が硬くならない(測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率が8.0MPa未満となる)場合がある。また、本発明の効果をより確実に発現させるという観点から、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)の平均重合度としては100以上500以下がより好ましい。
【0030】
(iii)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
本発明に用いられるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(以下、「オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)」という)は、下記平均組成式(2):
R
b2SiO (2)
(式中、R
bは1価の炭化水素基を表し、該炭化水素基は置換基を有していてもよい。)
で表される繰り返し単位を有するものである。前記平均組成式(1)中のR
bとしては、例えば、水素原子、メチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ビニル基、アリル基、プロピニル基が挙げられる。また、前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)の分子構造としては特に制限はなく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0031】
また、前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)は、ケイ素原子に結合した水素原子(以下、「ケイ素原子結合水素原子」という。)を1分子中に少なくとも2個有するものである。ケイ素原子結合水素原子がオルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中に2個未満になると、網目構造が形成されず、良好な硬化物が得られない。このケイ素原子結合水素原子は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン分子中のどこに存在していてもよい。
【0032】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)としては、例えば、両末端トリメチルシロキシ基封鎖のメチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖のジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖のジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン環状共重合体等が挙げられる。これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明において、ケイ素原子結合水素原子の含有量はオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)全量に対して0.10〜1.0質量%である。ケイ素原子結合水素原子の含有量が前記下限未満になると、得られるシリコーンゴム組成物の硬化物の貯蔵弾性率が低く、十分な機械的強度を有する硬化物が得られない。特に、ひずみ速度が速い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が硬くならない(測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率が8.0MPa未満となる)。他方、ケイ素原子結合水素原子の含有量が前記上限を超えると、得られる硬化物の架橋密度が高くなりすぎすぎる。特に、ひずみ速度が遅い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が柔らかくならない(測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率が1.5MPaを超える)。また、本発明の効果をより確実に発現させるという観点から、ケイ素原子結合水素原子の含有量としては0.10〜0.60質量%がより好ましい。
【0034】
本発明に用いられるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)は、25℃において液状であることが好ましい。オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)の25℃における粘度としては、200〜3000mPaが好ましく、500〜2000mPaがより好ましい。粘度が前記下限未満のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)は、分子量が小さく、ゴム弾性を発現するために十分な分子長さを有しておらず、得られる硬化物が硬く、脆いものとなる傾向にある。特に、ひずみ速度が遅い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が柔らかくならない(測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率が1.5MPaを超える)場合がある。他方、粘度が前記上限を超えるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)は、分子量が大きく、架橋点間距離が長く、得られる硬化物が柔らかくなり、機械的強度が不足する傾向にある。特に、ひずみ速度が速い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が硬くならない(測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率が8.0MPa未満となる)場合がある。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)の粘度は、前記範囲内となるように、2種類以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)を混合して調整してもよい。
【0035】
また、前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)の平均重合度としては、50以上600未満が好ましい。平均重合度が前記下限未満のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)は、ゴム弾性を発現するために十分な分子長さを有しておらず、得られる硬化物が硬く、脆いものとなる傾向にある。特に、ひずみ速度が遅い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が柔らかくならない(測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率が1.5MPaを超える)場合がある。他方、平均重合度が前記上限以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)は、架橋点間距離が長く、得られる硬化物が柔らかくなり、機械的強度が不足する傾向にある。特に、ひずみ速度が速い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が硬くならない(測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率が8.0MPa未満となる)場合がある。また、本発明の効果をより確実に発現させるという観点から、前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)の平均重合度としては100以上500以下がより好ましい。
【0036】
(iv)触媒
本発明のシリコーンゴム組成物においては、必要に応じて触媒(iv)を配合してもよい。このような触媒(iv)としては、ヒドロシリル化反応に用いられる白金族系触媒であれば特に制限はなく、例えば、Pt触媒(Speier触媒、Karstedt触媒、白金錯体(例えば、塩化白金酸をアルコール、キシレン、ケトン、オレフィン、シロキサン等に溶解させたもの)等)、Rh触媒(Wilkinson触媒等)、Pd触媒(Trost触媒等)が挙げられる。
【0037】
(v)添加剤
本発明のシリコーンゴム組成物においては、必要に応じて各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、顔料、充填剤、湿潤材、耐熱性向上剤、離型剤、接着性付与剤、可塑剤等が挙げられる。また、室温での硬化反応を制御するために、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン等の硬化調整剤やアセチレンアルコール(例えば、メチルイソブチノール)等の禁止剤を配合してもよい。
【0038】
(シリコーンゴム組成物)
本発明のシリコーンゴム組成物は、前記球状酸化物微粒子(i)、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)、前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)、及び必要に応じて前記触媒(iv)を含有するものである。本発明のシリコーンゴム組成物において、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)との比率としては、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)中のケイ素原子結合アルケニル基1molに対して、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)中のケイ素原子結合水素原子の量が0.5〜20molであることが好ましく、0.7〜5molであることがより好ましい。ケイ素原子結合水素原子の量が前記下限未満になると、架橋構造が十分に形成されないため、得られる硬化物の機械的強度が不足する傾向にある。特に、ひずみ速度が速い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が硬くならない(測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率が8.0MPa未満となる)場合がある。他方、ケイ素原子結合水素原子の量が前記上限を超えると、架橋構造が多くなりすぎ、得られる硬化物が脆くなる傾向にある。特に、ひずみ速度が遅い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が柔らかくならない(測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率が1.5MPaを超える)場合がある。
【0039】
なお、補強等の目的かつ本発明の効果を損なわない範囲で、アルケニル基を多量に含有するオルガノポリシロキサン、アルケニル基を含む表面処理剤で表面処理した球状酸化物微粒子やフィラーを使用する場合には、これらのアルケニル基に対応する量のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを追加することが好ましい。
【0040】
また、本発明のシリコーンゴム組成物において、球状酸化物微粒子(i)は、球状酸化物微粒子(i)の平均粒子径D
P(単位:nm)と、前記組成物の硬化物の25℃、大気圧条件下における全体積に対する球状酸化物微粒子(i)の体積分率V
P(単位:体積%)とが下記式(3):
11×log(D
P)+9≦V
P≦15×log(D
P)+16 (3)
で表される条件を満たすように配合する。これにより、球状酸化物微粒子(i)の体積分率V
Pを増加させること(好ましくは30体積%以上、より好ましくは35体積%以上、特に好ましくは40体積%以上)が可能となり、ひずみ速度が遅い場合には柔らかくなり、ひずみ速度が速い場合には硬くなる(測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率が1.5MPa以下かつ測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率が8.0MPa以上となる)シリコーンゴム硬化物が得られる。一方、V
P<11×log(D
P)+9になると、得られる硬化物が柔らかくなり、機械的強度が不足する。特に、ひずみ速度が速い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が硬くならない(測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率が8.0MPa未満となる)。他方、V
P>15×log(D
P)+16になると、得られる硬化物が硬く、脆くなる。特に、ひずみ速度が遅い場合に、シリコーンゴム組成物の硬化物が柔らかくならない(測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率が1.5MPaを超える)。
【0041】
なお、前記式(3)で表される条件は以下のようにして決定される。すなわち、球状酸化物微粒子(i)、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)、及びオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)を均一になるまで混練する。得られた混練物をステンレス製の板と厚さ5mmのスペーサーによって形成された凹部(40mm×40mm×5mm)に流し込んだ後、もう1枚のステンレス製の板を重ねてボルトで締め付けて固定し、120℃で120分間、オーブンで加熱して成形品を作製する。なお、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)のアルケニル基とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)の水素原子とのモル比は1.3〜1.8:1とする。
【0042】
得られた成形品からカッターナイフを用いて試験片(10mm×10mm×5mm)を切出し、動的粘弾性測定装置を用いて、測定温度:室温、ひずみ振幅:0.1%、試料変形モード:圧縮の条件で、周波数:0.1〜50Hzの範囲内の6水準の測定周波数おいて貯蔵弾性率を測定する。得られた結果に基づいて、貯蔵弾性率を測定周波数の1次関数として表して外挿し、測定周波数10
−2Hz及び10
3Hzにおける貯蔵弾性率を求める。この測定を、球状酸化物微粒子(i)の体積分率V
Pを変化させて行い、得られた貯蔵弾性率(単位:Pa)を球状酸化物微粒子(i)の体積分率V
P(単位:体積%)に対してプロットし、この結果に基づいて、測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率が8.0MPa以上となる球状酸化物微粒子(i)の体積分率V
Pの範囲(下限値)並びに測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率が1.5MPa以下となる球状酸化物微粒子(i)の体積分率V
Pの範囲(上限値)を求める。
【0043】
平均粒子径D
Pが異なる球状酸化物微粒子(i)についても同様にして、測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率が8.0MPa以上となる球状酸化物微粒子(i)の体積分率V
Pの範囲(下限値)並びに測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率が1.5MPa以下となる球状酸化物微粒子(i)の体積分率V
Pの範囲(上限値)を求める。
【0044】
得られた結果に基づいて、球状酸化物微粒子(i)の平均粒子径D
P(単位:nm)と体積分率V
P(単位:体積%)の下限値及び上限値との関係式を求めると、それぞれ式(3a)及び(3b):
V
Pの下限値=11×log(D
P)+9 (3a)
V
Pの上限値=15×log(D
P)+16 (3b)
となる。
【0045】
したがって、動的粘弾性測定において、測定周波数が10
3Hzの場合に貯蔵弾性率が8.0MPa以上となり、測定周波数が10
−2Hzの場合に貯蔵弾性率が1.5MPa以下となる球状酸化物微粒子(i)の体積分率V
P(単位:体積%)は、前記式(3)で表される条件を満たすもの(
図1中の斜線部)となる。
【0046】
さらに、本発明のシリコーンゴム組成物において、触媒(iv)を配合する場合、その配合量としては、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)との合計量に対して、白金系金属の量が0.1〜1000ppmとなる量が好ましく、1〜500ppmとなる量がより好ましい。触媒(iv)の配合量が前記下限未満になると、架橋反応が十分に進行しない場合があり、他方、前記上限を超える量を配合しても反応性は向上しない傾向にあり、経済的に好ましくない。
【0047】
(硬化物及びその用途)
このような本発明のシリコーンゴム組成物を硬化させることによって、ひずみ速度が遅い場合には柔らかくなり(測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率が1.5MPa以下となり)、ひずみ速度が速い場合には硬くなる(測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率が8.0MPa以上となる)シリコーンゴム硬化物が得られる。
【0048】
本発明のシリコーンゴム組成物の硬化条件としては、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)とがヒドロキシル化反応して架橋構造を形成する条件であれば特に制限はないが、例えば、硬化温度としては20〜200℃が好ましい。また、触媒(iv)を配合することによってヒドロキシル化反応が促進されるため、この硬化温度を低くすることができる。硬化時間は、硬化温度に依存するが、通常、10分〜30時間に設定される。
【0049】
本発明のシリコーンゴム組成物の硬化物は、上述したように、ひずみ速度が遅い場合には柔らかくなり、ひずみ速度が速い場合には硬くなるものであるため、例えば、燃料電池スタックにおいて、複数の単セルを積層させた積層体とケースとの間に配置される部材(例えば、ケースに設置される外部拘束部材、単セルの角に設置される緩衝用ゴム部材、積層体とケースや外部拘束部材との隙間を埋める隙間調整剤等の燃料電池拘束部材)として使用することによって、燃料電池スタックの通常使用時には単セルの変形に追従できる柔らかさを発現して単セルの変形や破損を防ぐことができ、燃料電池スタックに大きな衝撃が加わった場合には硬さを発現して単セルの積層位置のずれを防止することが可能となる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各物性の測定方法、及び実施例等で使用した原料を以下に示す。
【0051】
(1)平均粒子径及び粒子径分布の測定方法
球状酸化物微粒子(i)の水分散液(濃度:0.125質量%)を調製し、動的光散乱式粒度分布測定装置(大塚電子(株)製「ELS−Z」)を用いて25℃において球状酸化物微粒子(i)の粒子径分布(体積基準)を測定した。得られた粒子径分布(体積基準)の積算値50%の粒子径D
50を球状酸化物微粒子(i)の平均粒子径D
Pとした。また、得られた粒子径分布(体積基準)から、積算値90%の粒子径D
90と積算値10%の粒子径D
10との比ΔD=D
90/D
10を求めた。
【0052】
(2)ケイ素原子結合アルケニル基含有量の測定方法
アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)のCDCl
3溶液(濃度:0.5質量%)を調製し、核磁気共鳴(NMR)装置(日本電子(株)製「JNM−ECX400P型」)を用いて周波数400MHzにおいて
1H−NMR測定を行なった。得られた
1H−NMRスペクトルのアルケニル基に由来するピークとその他の官能基に由来するピークの積分比から、水素原子の数を算出し、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)中のケイ素原子結合アルケニル基の含有量を求めた。
【0053】
(3)ケイ素原子結合水素原子含有量の測定方法
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)のCDCl
3溶液(濃度:0.5質量%)を調製し、核磁気共鳴(NMR)装置(日本電子(株)製「JNM−ECX400P」)を用いて周波数400MHzにおいて
1H−NMR測定を行なった。得られた
1H−NMRスペクトルのケイ素原子結合水素原子に由来するピークとその他の官能基に由来するピークの積分比から、水素原子の数を算出し、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)中のケイ素原子結合水素原子の含有量を求めた。
【0054】
(i)球状酸化物微粒子
・球状シリカ微粒子KE−P10
(株)日本触媒製アモルファスシリカ「シーホスターKE−P10」、真比重:2.0g/cm
3、平均粒子径D
P:100nm、ΔD:2.9。
・球状シリカ微粒子KE−P100
(株)日本触媒製アモルファスシリカ「シーホスターKE−P100」、真比重:2.0g/cm
3、平均粒子径D
P:1000nm、ΔD:1.4。
・球状シリカ微粒子KE−P250
(株)日本触媒製アモルファスシリカ「シーホスターKE−P250」、真比重:2.0g/cm
3、平均粒子径D
P:2500nm、ΔD:1.4。
・球状シリカ微粒子SO−E6
(株)アドマテックス製「SO−E6」、比重:2.3g/cm
3、平均粒子径D
P:1990nm、ΔD:4.0。
・球状アルミナ微粒子AO−809
(株)アドマテックス製「AO−809」、比重:3.7g/cm
3、平均粒子径D
P:12000nm、ΔD:50。
・球状シリカ混合微粒子
前記球状シリカ微粒子KE−P10と(株)日本触媒製アモルファスシリカ「シーホスターKE−P15」と(株)日本触媒製アモルファスシリカ「シーホスターKE−P20」とを体積比1:1:1で混合したもの、比重:2.0g/cm
3、平均粒子径D
P:150nm、ΔD:3.7。
【0055】
(ii)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
・ビニル基末端ポリジメチルシロキサンDMS−V21
Gelest社製「DMS−V22」、比重:0.97g/cm
3、ケイ素原子結合ビニル基含有量:1.20質量%。
・ビニル基末端ポリジメチルシロキサンDMS−V22
Gelest社製「DMS−V22」、比重:0.97g/cm
3、ケイ素原子結合ビニル基含有量:0.60質量%。
・ビニル基末端ポリジメチルシロキサンDMS−V31
Gelest社製「DMS−V31」、比重:0.97g/cm
3、ケイ素原子結合ビニル基含有量:0.22質量%。
・ビニル基末端ポリジメチルシロキサンDMS−V33
Gelest社製「DMS−V33」、比重:0.97g/cm
3、ケイ素原子結合ビニル基含有量:0.13質量%。
・ビニル基末端ポリジメチルシロキサンDMS−V35
Gelest社製「DMS−V35」、比重:0.97g/cm
3、ケイ素原子結合ビニル基含有量:0.10質量%。
・ビニル基末端ポリジメチルシロキサンDMS−V46
Gelest社製「DMS−V46」、比重:0.97g/cm
3、ケイ素原子結合ビニル基含有量:0.04質量%。
・ビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1051J(A)
信越シリコーン社製「KE−1051J(A)」、比重:0.97g/cm
3、ケイ素原子結合ビニル基含有量:0.24質量%。
・ビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1012J(A)
信越シリコーン社製「KE−1012J(A)」、比重:0.97g/cm
3、ケイ素原子結合ビニル基含有量:0.35質量%。
【0056】
(iii)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
・オルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051J(B)
信越シリコーン社製「KE−1051J(B)」、比重:0.97g/cm
3、ケイ素原子結合水素原子含有量:0.14質量%。
・オルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1012J(B)
信越シリコーン社製「KE−1012J(B)」、比重:0.97g/cm
3、ケイ素原子結合水素原子含有量:0.19質量%。
・オルガノハイドロジェンポリシロキサンDMS−H21
Gelest社製「DMS−H21」、比重:0.97g/cm
3、ケイ素原子結合水素原子含有量:0.03質量%。
【0057】
(iv)触媒
白金錯体溶液(Gelest社製「SIP6830.0」)。
【0058】
<球状酸化物微粒子(i)の体積分率の下限値及び上限値の算出>
球状シリカ微粒子SO−E6とビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1012J(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1012J(B)とを均一になるまで混練した。得られた混練物をステンレス製の板と厚さ5mmのスペーサーによって形成された凹部(40mm×40mm×5mm)に流し込んだ後、もう1枚のステンレス製の板を重ねてボルトで締め付けて固定し、120℃で120分間、オーブンで加熱して成形品を作製した。なお、前記混練物は、ビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1012J(A)のビニル基とオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1012J(B)の水素原子とのモル比が1.8:1となるように、また、球状シリカ微粒子SO−E6の体積分率V
Pが、30体積%、39体積%、50体積%、56体積%、又は63体積%となるように調製した。
【0059】
得られた成形品からカッターナイフを用いて試験片(10mm×10mm×5mm)を切出し、各試験片について、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御(株)製「DVA−220」)を用いて、測定温度:室温、ひずみ振幅:0.1%、試料変形モード:圧縮の条件で、周波数:0.1〜50Hzの範囲内の6水準の測定周波数おいて貯蔵弾性率G’を測定した。得られた結果に基づいて、貯蔵弾性率G’を測定周波数の1次関数として表して外挿し、測定周波数10
−2Hz及び10
3Hzにおける貯蔵弾性率G’を求めた。得られた貯蔵弾性率G’(単位:Pa)を球状酸化物微粒子(i)の体積分率V
P(単位:体積%)に対してプロットし(
図2)、この結果に基づいて、測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率G’が8.0MPa以上となる球状酸化物微粒子(i)の体積分率V
Pの範囲(下限値)並びに測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率G’が1.5MPa以下となる球状酸化物微粒子(i)の体積分率V
Pの範囲(上限値)を求めた。
【0060】
また、球状シリカ微粒子SO−E6の代わりに、平均粒子径が異なる他の球状酸化物微粒子(KE−P10、AO−809、混合微粒子)を用いた以外は上記と同様にして、球状酸化物微粒子(i)の体積分率V
Pの下限値及び上限値を求めた。
【0061】
得られた結果に基づいて、球状酸化物微粒子(i)の平均粒子径D
P(単位:nm)と体積分率V
P(単位:体積%)の下限値及び上限値との関係式を求めたところ、
V
Pの下限値=11×log(D
P)+9 (3a)
V
Pの上限値=15×log(D
P)+16 (3b)
となった。
図1は、球状酸化物微粒子(i)の平均粒子径D
P(単位:nm)に対して、球状酸化物微粒子(i)の体積分率V
P(単位:体積%)の下限値及び上限値をプロットした結果、及び前記関係式(3a)及び(3b)を示したものである。
【0062】
(実施例1)
8.0gの球状シリカ微粒子SO−E6と1.0gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1012J(A)と1.0gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1012J(B)とを均一になるまで混練した。得られた混練物をステンレス製の板と厚さ5mmのスペーサーによって形成された凹部(40mm×40mm×5mm)に流し込んだ後、もう1枚のステンレス製の板を重ねてボルトで締め付けて固定し、120℃で120分間、オーブンで加熱して成形品を作製した。
【0063】
(実施例2)
混練物として、7.8gの球状シリカ微粒子SO−E6と1.3gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1012J(A)と1.3gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1012J(B)とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0064】
(実施例3)
混練物として、8.4gの球状シリカ微粒子SO−E6と1.8gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1012J(A)と1.8gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1012J(B)とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0065】
(実施例4)
混練物として、6.4gの球状シリカ微粒子KE−P10と3.0gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1051J(A)と3.0gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051(B)とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0066】
(実施例5)
混練物として、7.8gの球状シリカ微粒子KE−P100と2.1gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1051J(A)と2.1gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051(B)とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0067】
(実施例6)
混練物として、8.4gの球状シリカ微粒子KE−P250と1.8gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1051J(A)と1.8gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051(B)とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0068】
(実施例7)
混練物として、9.4gの球状シリカ微粒子KE−P100と1.3gのビニル基末端ポリジメチルシロキサンDMS−V22と3.9gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051J(B)と1μlの白金錯体溶液とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0069】
(実施例8)
混練物として、7.4gの球状シリカ微粒子KE−P100と2.0gのビニル基末端ポリジメチルシロキサンDMS−V31と2.0gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051J(B)と1μlの白金錯体溶液とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0070】
(実施例9)
混練物として、4.8gの球状シリカ微粒子KE−P100と1.6gのビニル基末端ポリジメチルシロキサンDMS−V33と1.0gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051J(B)と1μlの白金錯体溶液とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0071】
(実施例10)
混練物として、5.2gの球状シリカ微粒子KE−P100と1.8gのビニル基末端ポリジメチルシロキサンDMS−V35と1.0gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051J(B)と1μlの白金錯体溶液とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0072】
(実施例11)
混練物として、8.4gの球状シリカ混合微粒子と2.8gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1051J(A)と2.8gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051J(B)とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0073】
(実施例12)
混練物として、9.6gの球状アルミナ微粒子AO−809と1.0gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1012J(A)と1.0gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1012J(B)とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0074】
(比較例1)
混練物として、7.2gの球状シリカ微粒子SO−E6と2.4gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1012J(A)と2.4gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1012J(B)とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0075】
(比較例2)
混練物として、5.4gの球状シリカ微粒子KE−P10と3.3gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1051J(A)と3.3gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051J(B)とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0076】
(比較例3)
混練物として、8.0gの球状シリカ微粒子KE−P100と2.9gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1051J(A)と2.9gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051J(B)とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0077】
(比較例4)
混練物として、7.2gの球状シリカ微粒子KE−P250と2.4gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1051J(A)と2.4gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051J(B)とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0078】
(比較例5)
混練物として、9.4gの球状シリカ微粒子KE−P100と0.7gのビニル基末端ポリジメチルシロキサンDMS−V21と4.4gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051J(B)と1μlの白金錯体溶液とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0079】
(比較例6)
混練物として、9.4gの球状シリカ微粒子KE−P100と0.9gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1051J(A)と4.3gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンDMS−H21とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0080】
(比較例7)
混練物として、9.4gの球状シリカ微粒子KE−P100と4.3gのビニル基末端ポリジメチルシロキサンDMS−V46と0.9gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051J(B)と1μlの白金錯体溶液とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0081】
(比較例8)
混練物として、10.8gの球状シリカ混合微粒子と2.3gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1051J(A)と2.3gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1051J(B)とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0082】
(比較例9)
混練物として、8.6gの球状アルミナ微粒子AO−809と1.9gのビニル基含有ポリジメチルシロキサンKE−1012J(A)と1.9gのオルガノハイドロジェンポリシロキサンKE−1012J(B)とを均一になるまで混練したものを用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0083】
表1に、実施例及び比較例における各成分の種類と含有量をまとめた。さらに、各実施例及び各比較例において、各成分の含有量と比重から球状酸化物微粒子の体積分率V
Pを算出した。また、球状酸化物微粒子の平均粒子径D
Pを用いて前記関係式(3a)及び(3b)により体積分率V
Pの下限値と上限値を算出した。これらの結果を表2に示す。
【0084】
<貯蔵弾性率>
各実施例及び各比較例で得られた成形品からカッターナイフを用いて試験片(10mm×10mm×5mm)を切出し、各試験片について、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御(株)製「DVA−220」)を用いて、測定温度:室温、ひずみ振幅:0.1%、試料変形モード:圧縮の条件で、測定周波数10
−2Hz及び10
3Hzにおける貯蔵弾性率G’を測定した。その結果を表2に示す。また、球状酸化物微粒子の体積分率V
P(単位:体積%)と平均粒子径D
P(単位:nm)と貯蔵弾性率G’(単位:Pa)との関係を
図3に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表2及び
図3に示した結果から明らかなように、球状酸化物微粒子の体積分率V
Pが前記式(3)で表される条件を満たし、かつアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)のケイ素原子結合アルケニル基の含有量及びオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)のケイ素原子結合水素原子の含有量が所定の範囲内にあるシリコーンゴム組成物の硬化物(実施例1〜12)は、測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率G’が1.5MPa以下、測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率G’が8MPa以上となり、ひずみ速度が遅い場合には柔らかく、速い場合には硬くなるものであり、本発明のシリコーンゴム組成物は、例えば、通常使用時には単セルの変形や破損を防止することができ、大きな衝撃が加わった場合には単セルの積層位置のずれを防止することができる燃料電池拘束部材として適していることが確認された。
【0088】
一方、球状酸化物微粒子の体積分率V
Pが前記下限値未満のシリコーンゴム組成物の硬化物(比較例1〜4、9)は、測定周波数10
3Hzにおける貯蔵弾性率G’が8MPa未満となり、ひずみ速度が速い場合に十分に硬くならず、大きな衝撃が加わった場合に単セルの積層位置のずれを防止するための燃料電池拘束部材として適していないものであることがわかった。また、球状酸化物微粒子の体積分率V
Pが前記上限値を超えるシリコーンゴム組成物の硬化物(比較例8)は、測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率G’が1.5MPaを超過し、ひずみ速度が遅い場合に十分に柔らかくならず、通常使用時に単セルの変形や破損を防止するための燃料電池拘束部材として適していないものであることがわかった。さらに、球状酸化物微粒子の体積分率V
Pが前記式(3)で表される条件を満たす場合であっても、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)のケイ素原子結合アルケニル基の含有量が所定量より多いシリコーンゴム組成物の硬化物(比較例5)は、測定周波数10
−2Hzにおける貯蔵弾性率G’が1.5MPaを超過し、ひずみ速度が遅い場合には十分に柔らかくならず、通常使用時に単セルの変形や破損を防止するための燃料電池拘束部材として適していないものであることがわかった。また、球状酸化物微粒子の体積分率V
Pが前記式(3)で表される条件を満たす場合であっても、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)のケイ素原子結合水素原子の含有量が所定量より少ないシリコーンゴム組成物の硬化物(比較例6)及びアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ii)のケイ素原子結合アルケニル基の含有量が所定量より少ないシリコーンゴム組成物の硬化物(比較例7)は、測定周波数10
3Hzにおける硬化物の貯蔵弾性率G’が8MPa未満となり、ひずみ速度が速い場合には十分に硬くならず、大きな衝撃が加わった場合に単セルの積層位置のずれを防止するための燃料電池拘束部材として適していないものであることがわかった。