【文献】
SHIMIZU,H. et al,siRNA-based therapy ameliorates glomerulonephritis,J Am Soc Nephrol,2010年,Vol.21, No.4,p.622-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ブロックコポリマーが、前記親水性ポリマー鎖セグメントとして、前記カチオン性ポリアミノ酸セグメントの片端に配置された2つの前記ポリ(エチレングリコール)鎖を有する、請求項1または2に記載のユニット構造型医薬組成物。
必要により緩衝化された水溶液中で、ブロックコポリマーと核酸とを、[ブロックコポリマー中のカチオン性基の総数(N)]/[核酸中のリン酸基の総数(P)]として定義されるN/P比が1.0以上となるように混合することを含み、
該核酸の鎖長が、10〜30塩基であり、
該ブロックコポリマーが、カチオン性ポリアミノ酸セグメントと、該カチオン性ポリアミノ酸セグメントの片端に配置された該親水性ポリマー鎖セグメントとしてのポリ(エチレングリコール)鎖とを有し、
該ポリ(エチレングリコール)鎖が、該核酸の長さ以上の慣性半径を有する、
請求項1から6のいずれかに記載のユニット構造型医薬組成物を含む医薬製剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<A.ユニット構造体>
本発明のユニット構造体は、カチオン性ポリアミノ酸セグメントと親水性ポリマー鎖セグメントとを有するブロックコポリマーと、核酸とを含み、該カチオン性ポリアミノ酸セグメントの正電荷と該核酸の負電荷とが相殺されて電気的に中性であり、該核酸が該親水性ポリマー鎖セグメントに覆われている。このようにカチオン性ポリアミノ酸セグメントの電荷量と核酸の電荷量との関係を調整し、かつ、核酸を親水性ポリマー鎖セグメントで覆うことにより、血液中のタンパクや酵素に対する電荷的な誘引や物理的(電荷に依存しない)な接近に起因した該核酸の代謝または分解を防止できるので、カチオン性ポリマー型キャリアにおける核酸の血中滞留性能を大幅に向上できる。
【0010】
本明細書において、「ユニット構造体が電気的に中性である」という状態は、該ユニット構造体におけるカチオン性ポリアミノ酸セグメントのカチオン性基に由来する電荷の合計と核酸に由来する電荷の合計との相違が±10%程度の範囲、より厳格には±5%程度の範囲、にある状態を排除しない。例えば、核酸の電荷の合計が40である場合、ユニット構造体におけるカチオン性基に由来する電荷の合計が36〜44、厳格には38〜42の範囲、より厳格には39〜41の範囲、にある状態を排除しない。なお、本発明に用いられるブロックコポリマーにおいては、親水性ポリマー鎖セグメントおよびカチオン性ポリアミノ酸セグメントはそれぞれ、ある程度の多分散性を示し得る。よって、本明細書において、該ブロックコポリマーの特性(例えば、分子量、重合度、慣性半径)について言及する際は、特段の記載がない限り、多分散性を示すポリマー全体の平均について言及するものとする。したがって、上記電荷量は、実際に測定して得られる重合度を平均重合度とみなし、該重合度に基づいて算出するものとする。例えば、ポリリシンの重合度は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0011】
本明細書において、「核酸が親水性ポリマー鎖セグメントに覆われている」という状態は、親水性ポリマー鎖セグメントによって、核酸の全体が覆われている状態を意味する。より具体的には、核酸の全体が親水性ポリマー鎖セグメントの空間的な広がり(慣性半径)の中に包まれている状態を意味する。複数個のブロックコポリマーによってユニット構造体が形成されている場合、1つのブロックコポリマーの親水性ポリマー鎖セグメントが核酸の全体を覆っている必要はなく、それぞれのブロックコポリマーの親水性ポリマー鎖セグメントに由来する総合的な空間的広がりの中に核酸の全体が包まれていればよい。
【0012】
図1(a)および(b)はそれぞれ、本発明の実施形態の一例によるユニット構造体の推定構造を説明する概略図である。本発明を限定するものではないが、本発明のユニット構造体100aまたは100bにおいては、ブロックコポリマー10のカチオン性ポリアミノ酸セグメント11が核酸20に沿って配置されて該核酸20と静電結合30を形成し、親水性ポリマー鎖セグメントが空間的に広がって該核酸20を覆っていると推定される(図中、符号12で表される球は、親水性ポリマー鎖セグメントの空間的広がりを表す)。なお、
図1(a)および(b)はそれぞれ、カチオン性ポリアミノ酸セグメントが核酸の伸びる方向に沿って直線状に配置されている形態を例示するが、カチオン性ポリアミノ酸セグメントの配置状態は核酸の負電荷を相殺し得る限りにおいて制限されず、例えば、核酸のらせん構造に沿って巻き付くように配置されている形態も可能である。
【0013】
図1(a)および(b)に例示されるように、本発明のユニット構造体は、不特定多数のブロックコポリマーと1つまたは複数の核酸とを含み、組成を特定することが困難な従来の複合体(例えば、従来の核酸内包コア−シェル型ポリマーミセル)とは異なり、ブロックコポリマーおよび核酸とを各々の電荷量に基づいて決定される所定の含有数ずつ含むことを1つの特徴とし得る。1つの実施形態においては、本発明のユニット構造体は、m×N個の核酸と、n×N個のブロックコポリマーとを含み得る(ここで、Nは、1以上の整数であり、mおよびnはそれぞれ独立して、例えば1〜9の整数である)。なお、ユニット構造体に含まれるブロックコポリマーおよび核酸の数は、例えば、後述の実施例に記載の方法によって確認することができる。
【0014】
本発明のユニット構造体に含まれるブロックコポリマーの数は、核酸と電気的に中性なユニット構造体を構成でき、かつ、親水性ポリマー鎖セグメントの空間的な広がりによって該核酸を覆うことができる限りにおいて制限は無く、例えば、1〜8の整数であり得る。また、本発明のユニット構造体は、核酸として、一本鎖核酸または二本鎖核酸を1つ含むことが好ましく、より好ましくは二本鎖核酸を1つ含む。カチオン性ポリアミノ酸セグメントとの静電結合および親水性ポリマー鎖セグメントによる封入が好適に行われ得るからである。具体例としては、
図1(a)に示されるように、本発明のユニット構造体100aは、2つのブロックコポリマー10と1つの核酸20とを含んでもよい。また、
図1(b)に示されるように、本発明のユニット構造体100bは、4つのブロックコポリマー10と1つの核酸20とを含んでもよい。このように、本発明のユニット構造体は、2つ以上のブロックコポリマーを用いて構成することができる。また、本発明のユニット構造体は、1つのブロックコポリマーを用いて構成することもできる(図示せず)。
【0015】
<A−1.ブロックコポリマー>
本発明のユニット構造体を形成し得るブロックコポリマーは、カチオン性ポリアミノ酸セグメントと親水性ポリマー鎖セグメントとを有する。1つの実施形態においては、該カチオン性ポリアミノ酸セグメントが、該ユニット構造体に含有されるべき核酸の負電荷を相殺して該ユニット構造体を電気的に中性にする正電荷を有し、該親水性ポリマー鎖セグメントが、該核酸を覆う鎖長を有する。親水性ポリマー鎖セグメントは、例えば、カチオン性ポリアミノ酸セグメントの端部(片端または両端)に配置され得る。また、該端部に代えてまたは加えて、カチオン性ポリアミノ酸セグメントの中間部分(好ましくは略中央部分)の側鎖にグラフトされてもよく、2つの隣接するカチオン性ポリアミノ酸セグメントの間に配置されてもよい。2つの隣接するカチオン性ポリアミノ酸セグメントの間に配置される場合、親水性ポリマー鎖セグメントは、これらカチオン性ポリアミノ酸セグメントの配列方向と交差する方向に伸びるように配置されることが望ましい。
【0016】
上記ブロックコポリマーは、好ましくは複数の親水性ポリマー鎖セグメントを有する(例えば、1つのブロックコポリマーあたり親水性ポリマー鎖セグメントを2つ以上有する)。複数の親水性ポリマー鎖セグメントを有するブロックコポリマーによれば、核酸をより厳重に覆うことができるので、酵素等による代謝または分解を好適に回避し得る。その結果、血中滞留性により優れたユニット構造体が得られ得る。各部位に配置される親水性ポリマー鎖セグメントの数は、例えば、1〜4であり得る。親水性ポリマー鎖セグメントは、多分岐型の親水性ポリマーの構造によって複数個が配置された状態にあってもよい。ブロックコポリマーに配置される親水性ポリマー鎖セグメントの数は4以上であってもよい。より具体的には、1つのブロックコポリマーによってユニット構造体が構成されている場合、当該1つのブロックコポリマーが親水性ポリマー鎖セグメントを4つ以上有していてもよい(例えば、カチオン性ポリアミノ酸セグメントの両端部のそれぞれに2つずつの親水性ポリマー鎖セグメントを有し得る)。また、上記ブロックコポリマーは、必要に応じて、親水性ポリマー鎖側末端に結合した標的結合部位をさらに有していてもよい。標的結合部位を有することにより、標的となる所望の部位への核酸の到達性を向上できる。なお、本明細書において、ブロックコポリマーは、当該ブロックコポリマーの薬学的に許容可能な塩も包含する。
【0017】
上記カチオン性ポリアミノ酸セグメントを構成するアミノ酸としては、側鎖にカチオン性基(代表的には、アミノ基、好ましくは一級アミノ基)を有する任意の適切なカチオン性アミノ酸が用いられ得る。例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸にカチオン性基を導入したアミノ酸誘導体等が挙げられる。核酸の負電荷はリン酸基に由来するので、核酸は負の電荷を1ずつ(電荷量=−1)略等間隔で有する。よって、核酸中の各リン酸基と好適に静電結合を形成する観点から、側鎖にカチオン性基を1つ有するアミノ酸、より具体的には血中pHにおいて側鎖に正電荷を1つ有するアミノ酸が好ましく用いられ得る。
【0018】
上記カチオン性ポリアミノ酸セグメントにおいては、主鎖から側鎖上のカチオン性基までの距離が短いことが好ましい。具体的には、カチオン性基が好ましくは1〜6個、より好ましくは2〜4個の原子を介して主鎖に結合していることが好ましい。このような側鎖構造を有するブロックコポリマーを用いることにより、ユニット構造体の血中滞留性(結果として、核酸の血中滞留性)を向上させ得るからである。
【0019】
上記カチオン性ポリアミノ酸セグメントは、好ましくはユニット構造体に含まれる核酸の負電荷に対して略等量、略半量、略1/4量、または略1/8量の正電荷を有する。カチオン性ポリアミノ酸セグメントがこのような電荷量を有することにより、ブロックコポリマーの含有数が異なる(例えば、1個、2個、4個、または8個)種々のユニット構造体が得られ得る。
【0020】
1つの好ましい実施形態においては、カチオン性ポリアミノ酸セグメントは、ユニット構造体に含まれる核酸の負電荷に対して略半量の正電荷を有する。血中pHにおいて側鎖に正電荷を1つ有するアミノ酸によってこのような正電荷を有するポリアミノ酸セグメントを構成すると、1つの核酸に対して2つのブロックコポリマーを含むユニット構造体(代表的には、1つの核酸と2つのブロックコポリマーを含むユニット構造体)が形成され、当該ユニット構造体によれば、血中滞留性(結果として、核酸の血中滞留性)が向上し得るからである。当該効果が奏される理由は定かではないが、例えば、このような比率でブロックコポリマーを含むことにより、核酸の全長に渡ってカチオン性ポリアミノ酸セグメントが配置されやすくなり、その結果、核酸の負電荷を好適に相殺し得ると推測される。
【0021】
上記カチオン性ポリアミノ酸セグメントが含むアミノ酸残基数は、該セグメントに所望される電荷量に応じて適切に設定され得る。カチオン性ポリアミノ酸セグメントは、本発明の効果を損なわない範囲において、非カチオン性アミノ酸残基を含んでいてもよい。非カチオン性アミノ酸残基の数は、カチオン性ポリアミノ酸セグメントが含むアミノ酸残基の総数の、例えば20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下とすることができる。
【0022】
上記親水性ポリマー鎖セグメントは、任意の適切な親水性ポリマーによって構成され得る。該親水性ポリマーとしては、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリサッカライド、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリアミノ酸、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(オキサゾリン)またはこれらの誘導体が挙げられる。ポリサッカライドの具体例としては、デンプン、デキストラン、フルクタン、ガラクタン等が挙げられる。これらのなかでも、ポリ(エチレングリコール)は、末端に種々の官能基を有する末端反応性ポリエチレングリコールが市販されており、また、種々の分子量のものや分岐型のものが市販されており、容易に入手できることから、好ましく用いられ得る。
【0023】
上記親水性ポリマー鎖セグメントの長さは、ユニット構造体に含まれる核酸の鎖長に応じて、適切な長さに設定され得る。具体的には、親水性ポリマー鎖セグメントは、該核酸を覆うことができる長さに設定される。本発明においては、ユニット構造体中の少なくとも1つの親水性ポリマー鎖セグメントが、該ユニット構造体に含まれる核酸の長さ(複数の核酸が含まれる場合には、各核酸の長さの合計)以上の慣性半径(Rg)を有する場合、該核酸の全体が親水性ポリマー鎖セグメントに覆われていると判断される。例えば、分子量が21,000Daまたは42,000Daであるポリ(エチレングリコール)の慣性半径(Rg)はそれぞれ、約6.5nmまたは約9.7nmであるので、これらは単独でsiRNA(長さ:約5.7nm)を覆うことができると判断される。また、核酸の一方の末端側に回転中心(例えば、ポリアミノ酸セグメントとの連結部位)を有するように配置された親水性ポリマー鎖セグメントと他方の末端側に回転中心を有するように配置された親水性ポリマー鎖セグメントとを含むユニット構造体については、該核酸の両端の親水性ポリマー鎖セグメントの慣性半径(Rg)の合計が該ユニット構造体に含まれる核酸の長さ以上であれば、該核酸の全体が親水性ポリマー鎖セグメントに覆われていると判断できる。このようなユニット構造体においては、各親水性ポリマー鎖セグメントが、好ましくは核酸の長さの半分以上の慣性半径(Rg)を有し、より好ましくは核酸の長さ以上、さらに好ましくは核酸の長さの1.2倍以上、さらにより好ましくは1.3倍以上の慣性半径(Rg)を有する。核酸の全体を厳重に覆うことができ、該核酸の代謝または分解を好適に回避し得、結果として血中滞留性を向上させることができるからである。ただし、3つ以上のブロックコポリマーによってユニット構造体が形成されている場合、それぞれのブロックコポリマーの親水性ポリマー鎖セグメントに由来する総合的な空間的広がりの中に核酸の全体が包まれる限り、核酸の双方の末端側に回転中心を有するように配置された各親水性ポリマー鎖セグメントが核酸の長さの半分未満の慣性半径(Rg)を有していても構わない。なお、親水性ポリマー鎖セグメントの長さの上限は、その慣性半径(Rg)がユニット構造体に含まれる核酸の長さの例えば2.5倍以下、好ましくは1.6倍以下となる長さとされ得る。このような長さであれば、立体障害等の影響を受け難く、ユニット構造体の形成に有利となり得る。なお、該慣性半径(Rg)は、親水性ポリマー鎖セグメントを構成する親水性ポリマーの分子量と回転二乗半径との関係に基づいて算出することができる。例えば、ポリ(エチレングリコール)の場合、分子量から重合度(DP)を算出し、下記式(1)に代入することよって、慣性半径(Rg)を算出することができる(Polymer38,2885−2891(1997))。
Rg=0.181×DP
0.58 (1)
【0024】
核酸がsiRNAである場合の1つの好ましい実施形態において、ユニット構造体は、1つのsiRNAと2つのブロックコポリマーとから構成され、該ブロックコポリマーは、ポリアミノ酸鎖セグメントの片端に親水性ポリマー鎖セグメントとして2本鎖PEGを有する。それぞれのPEG鎖は、好ましくは10,000Da〜80,000Da、より好ましくは20,000Da〜60,000Da、さらに好ましくは30,000Da〜45,000Daの分子量を有する。
【0025】
上記ブロックコポリマーにおいて、カチオン性ポリアミノ酸セグメントと親水性ポリマー鎖セグメントとは、任意の適切な連結基によって連結されている。該連結基としては、エステル結合、アミド結合、イミノ基、炭素−炭素結合、エーテル結合等が挙げられる。また、これらのセグメントは、生体内で開裂可能な連結基(例えば、ジスフィルド結合、ヒドラゾン結合、マレアメート結合、アセタール基)によって連結されていてもよい。なお、上記ブロックコポリマーのカチオン性ポリアミノ酸側末端および/または親水性ポリマー鎖側末端には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限り、任意の適切な修飾がなされ得る。
【0026】
上記標的結合部位は、標的となる組織や目的等に応じて任意の適切な部位であり得る。標的結合部位は、例えば、標的結合部位を有する化合物を上記ブロックコポリマーの親水性ポリマー鎖側の末端に結合させることにより形成され得る。標的結合部位と親水性ポリマー鎖との連結基としては、任意の適切な基を用いることができ、例えば、任意のアミノ酸残基等が挙げられる。なお、本明細書において、標的結合部位とは、生体およびウイルスに由来する物質に対し特異的に結合して当該物質と生物学的な結合対を形成し得る、生物学的な認識機能を有する部位をいう。
【0027】
上記標的結合部位を有する化合物としては、標的となる組織や目的等に応じて、任意の化合物を結合させればよい。例えば、抗体もしくはその断片、またはその他の機能性もしくは標的指向性を有するタンパク質、ペプチド、アプタマー、ラクトース等の糖、葉酸等の生理活性物質等が挙げられる。
【0028】
上記ブロックコポリマーの好ましい具体例は、以下の一般式(1)または(2)で表され得る。
【化1】
【化2】
(上記各式において、
R
1a〜R
1dは、相互に独立して、水素原子、未置換もしくは置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝状のアルキル基、あるいは以下の式(I)で表される基であり、
【化3】
ここで、kは1〜5の整数を表し、Dは標的結合部位を表し、
R
2は、水素原子、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキル基あるいは炭素数1〜24の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキルカルボニル基であり、
R
3は、ヒドロキシル基、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキルオキシ基、炭素数2〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルケニルオキシ基、炭素数2〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキニルオキシ基あるいは炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキル置換イミノ基であり、
R
4aおよびR
4bは、相互に独立して、メチレン基またはエチレン基を表し、
R
5aおよびR
5bは、相互に独立して、下記の基:
−NH−(CH
2)
p1−〔NH−(CH
2)
q1−〕
r1NH
2 (i);
−NH−(CH
2)
p2−N〔−(CH
2)
q2−NH
2〕
2 (ii);
−NH−(CH
2)
p3−N{〔−(CH
2)
q3−NH
2〕〔−(CH
2)
q4−NH−〕
r2H} (iii);および
−NH−(CH
2)
p4−N{−(CH
2)
q5−N〔−(CH
2)
q6−NH
2〕
2}
2 (iv)
よりなる群の同一もしくは異なる基から選ばれ、
ここで、p1〜p4、q1〜6、およびr1〜2は、それぞれ相互に独立して、1〜5の整数であり、
Qは、−NH
2、−NHC(=NH)NH
2、または以下の式(II)で表される基であり、
【化4】
Lは、二価の連結基または原子価結合であり、
x1〜x4は、相互に独立して、110〜2,000の整数であり、
y、z、およびvは、相互に独立して、0〜60の整数であり、ただし、5≦y+z+v≦60の関係を満たし、
wは、1〜6の整数であり、
lおよびmは、相互に独立して、0〜5の整数であり、
nは、0または1である。)
【0029】
上記式(1)または(2)において、Lは、二価の連結基または原子価結合である。二価の連結基としては、任意の適切な連結基が採用され得る。例えば、式(1)において、Lは、−L
1−L
2−L
3−であり得、式(2)において、Lは、−L
4−L
5−L
6−であり得る。ここで、L
1およびL
4は、相互に独立して、−(O−(CH
2)
a)
b−L
1a−であり、ここでaは1〜5、bは0〜300の整数であり、bが2以上の時aはすべて同一である必要は必ずしもなく、L
1aは原子価結合、−S−S−、−NH−、−O−、−O−CH(CH
3)−O−、−OCO−、−OCONH−、−NHCO−、−NHCOO−、−NHCONH−、−CONH−またはCOOであり;L
2およびL
5は、相互に独立して、原子価結合または−L
2a−L
2b−L
2c−であり、ここでL
2aおよびL
2cはスペーサーとなる構造であり、特に限定はされないが、例えば置換または未置換の炭素数1〜12のアルキル基であり、L
2bは下記式(III)〜(V)に示す構造のいずれかであり;L
3は、−((CH
2)
c−O)
d−(CH
2)
e−L
3a−であり、ここでcは1〜5、dは0〜500、eは0〜5の整数であり、dが2以上の時cはすべて同一である必要は必ずしもなく、L
3aは−NH−または−O−であり;L
6は、−((CH
2)
f−O)
g−(CH
2)
h−L
6a−(CH
2)
i−CO−であり、ここでfは1〜5、gは0〜300、hは0〜5、iは0〜5の整数であり、gが2以上の時fはすべて同一である必要は必ずしもなく、L
6aは−OCO−、−NHCO−、−OCONH−、−NHCOO−、−NHCONH−、−CONH−または−COO−である。
【化5】
【0030】
上記R
1a〜R
1d、R
2、またはR
3の基で定義する、炭素数1〜12の直鎖または分枝状のアルキルオキシ基、アルキル置換イミノ基、およびアルキル基のアルキル部分としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、デシル基、およびウンデシル基等を挙げることができる。炭素数2〜12の直鎖または分枝状のアルケニルオキシ基または炭素数2〜12の直鎖または分枝状のアルキニルオキシ基における、アルケニルまたはアルキニル部分は、炭素数が2以上の上記に例示したアルキル基中に二重結合または三重結合を含むものを挙げることができる。
【0031】
このような基または部分について、「置換された」場合の置換基としては、限定されるものでないが、C
1−6アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールC
1−3オキシ基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、C
1−6アルコキシカルボニル基、C
2−7アシルアミド基、トリ−C
1−6アルキルシロキシ基、シロキシ基、シリルアミノ基を示すか、またはアセタール化ホルミル基、ホルミル基、塩素またはフッ素等のハロゲン原子を挙げることができる。ここで、例えば、「C
1−6」の表示は、炭素数1〜6を意味し、以下同様な意味を表すものとして使用する。さらに、炭素数1〜24の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキルカルボニル基の内の炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキル部分は上述した例示を参考にでき、炭素数13以上のアルキル部分は、例えば、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ノナデシル基、ドコサニル基およびテトラコシル基等を挙げることができる。
【0032】
R
5aおよびR
5bの基について定義する、
−NH−(CH
2)
p1−〔NH−(CH
2)
q1−〕
r1NH
2 (i);
−NH−(CH
2)
p2−N〔−(CH
2)
q2−NH
2〕
2 (ii);
−NH−(CH
2)
p3−N{〔−(CH
2)
q3−NH
2〕〔−(CH
2)
q4−NH−〕
r2H} (iii);および
−NH−(CH
2)
p4−N{−(CH
2)
q5−N〔−(CH
2)
q6−NH
2〕
2}
2 (iv)
よりなる群から選ばれる基は、同一の基であることが好ましく、式(i)の基であることがさらに好ましい。また、p1〜p4およびq1〜6は、それぞれ相互に独立して2または3であることが好ましく、より好ましくは2である。一方、r1およびr2は、それぞれ相互に独立して、1〜3の整数であることが好ましい。R
5aおよびR
5bの基は、属する繰り返し単位全てについて同一の基が選択されてもよく、各々の繰り返し単位について異なる基が選択されてもよい。
【0033】
Qは、属する繰り返し単位全てについて同一の基が選択されてもよく、各々の繰り返し単位について異なる基が選択されてもよい。また、wは、例えば、1、2、3、または4である。
【0034】
エチレングリコールの繰り返し数を表すx1〜x4は、所望のユニット構造体に含まれる核酸の長さに応じて適切に設定され得る値である。例えば、21塩基対の二本鎖RNAを1つ含むユニット構造体を形成する場合、x1〜x4は、相互に独立して、下限が例えば120、また例えば200、また例えば450であり、上限が例えば1200、また例えば1000、また例えば850である。
【0035】
y、z、およびvはそれぞれ、所望のユニット構造体に含まれる核酸の負の電荷量およびブロックコポリマーの数に応じて適切に設定され得る値である。例えば、21塩基対の二本鎖RNAを1つとブロックコポリマーを2つ含むユニット構造体を形成する場合、y、z、およびvは、カチオン性ポリアミノ酸セグメント中のカチオン性基の数が、好ましくは18〜22、より好ましくは19〜21、さらに好ましくは19〜20の整数となるように設定され得る。このように、本発明のユニット構造体は、2つのブロックコポリマーによって構成され、それぞれのブロックコポリマーにおけるカチオン性ポリアミノ酸セグメントが18〜22個のカチオン性アミノ酸残基を含む状態にあってよい。
【0036】
nは、0または1であり、好ましくは1である。2本のポリ(エチレングリコール)鎖を有するブロックコポリマーによれば、血中滞留性が顕著に優れたユニット構造体が得られ得る。
【0037】
Dは、1〜200個のアミノ酸残基を有するペプチドであることが好ましく、1〜100個のアミノ酸残基を有するペプチドであることがより好ましく、1〜30個のアミノ酸残基を有するペプチドであることがさらに好ましい。
【0038】
上記ペプチドとしては、例えば、血管新生や内膜肥厚、悪性腫瘍の増殖に関与するインテグリンと特異的に結合することができるペプチドが挙げられ、具体的には、RGDペプチドが挙げられる。RGDペプチドを標的結合部位として用いることにより、疾患部分を特異的に認識可能な粒子および該粒子を用いた医薬組成物が得られる。ここで、RGDペプチドとは、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)配列を含むペプチドをいう。好ましくは、RGDペプチドは環状RGD(cRGD)ペプチドである。具体的には、Dは、下記式(VI)で表わされるペプチドであり得る。
【化6】
【0039】
式(1)または(2)において、カチオン性ポリアミノ酸セグメントを構成する各繰り返し単位の結合順は任意であり、ランダム構造であってもよく、ブロック構造であってもよい。
【0040】
上記ブロックコポリマーは、任意の適切な方法によって調製され得る。例えば、必要に応じ保護基が導入された所定のアミノ酸のN−カルボン酸無水物(NCA)を、ω末端がアミノ化された親水性ポリマー(例えばポリ(エチレングリコール))の末端アミノ基を開始剤として順次重合し、次いで脱保護または側鎖変換によってポリカチオンセグメントに変換してもよく、まず必要に応じ保護基が導入されたポリアミノ酸を合成し、次いで親水性ポリマーと結合させてから必要に応じ脱保護または側鎖変換によってポリカチオンセグメントを有するブロックコポリマーを合成するのでもよい。ポリアミノ酸と親水性ポリマーを結合させる方法としては種々の方法が用いられるが、それぞれの末端に反応性の官能基を導入しておきカップリングさせる方法が代表的なものである。例えば、カルボキシル基とアミノ基を縮合剤を用いてまたは活性エステル化して結合させる方法、マレイミドとチオールによる方法、アルキンとアジドによる所謂クリックケミストリーによる方法等が挙げられる。さらに、α末端に標的結合部位を有する親水性ポリマーを用いてブロックコポリマーの合成を行うか、またはα末端に後から標的結合部位を導入できるような官能基を有する親水性ポリマーを用いてブロックコポリマーの合成を行った後に標的結合部位を導入することにより、親水性ポリマーの末端に標的結合部位を持つブロックコポリマーを合成することができる。標的結合部位を導入する方法としては種々の方法が用いられるが、例えば親水性ポリマー鎖側の末端がアセタール化されたブロックコポリマーとシステイン末端を有する所望の標的結合部位を有する化合物とを酸性溶液中で混合することにより、親水性ポリマー鎖側の末端に上記標的結合部位を付与することができる。
【0041】
<A−2.核酸>
上記核酸としては、プリンまたはピリミジン塩基、ペントース、リン酸からなるヌクレオチドを基本単位とするポリもしくはオリゴヌクレオチドを意味し、オリゴもしくはポリ二本鎖RNA、オリゴもしくはポリ二本鎖DNA、オリゴもしくはポリ一本鎖DNAおよびオリゴもしくはポリ一本鎖RNAを挙げることができる。また、同一の鎖にRNAとDNAが混在したオリゴもしくはポリ2本鎖核酸、オリゴもしくはポリ1本鎖核酸も含まれる。当該核酸に含有されるヌクレオチドは天然型であっても、化学修飾された非天然型のものであっても良く、またアミノ基、チオール基、蛍光化合物などの分子が付加されたものであっても良い。
【0042】
上記核酸の鎖長は、例えば、4〜20,000塩基、好ましくは10〜10,000塩基、さらに好ましくは18〜30塩基であり得る。
【0043】
上記核酸としては、その機能または作用を考慮すると、プラスミドDNA、siRNA、micro RNA、shRNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸、アプタマーおよびリボザイムを好ましく挙げることができる。
【0044】
上記siRNAとしては、例えば、標的とする遺伝子またはポリヌクレオチドに対し、任意の適切な方法で設計されたすべてのものを用いることができる。siRNAの鎖長は、二重鎖を構成する部分の長さが好ましくは15〜50塩基、より好ましくは18〜30塩基であることができ、当該技術分野で公知の化合物、また、それらと同様な作用または機能を有するすべてのヌクレオチドを包含する。限定されるものでないが、siRNAの具体例は、遺伝子療法の対象となりうる遺伝子を参照して設計することができる。
【0045】
<A−3.ユニット構造体の調製方法>
本発明のユニット構造体は、例えば、上記ブロックコポリマーとsiRNA等の核酸とを、必要により緩衝化された水溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、HEPES緩衝液)中で混合することにより調製することができる。
【0046】
<B.医薬製剤>
本発明の医薬製剤は、A項に記載のユニット構造体を含む。1つの実施形態において、本発明の医薬製剤は、必要により緩衝化された水溶液中で上記ブロックコポリマーと核酸とを好ましくは1.0〜2.5、より好ましくは1.1〜2.0、さらに好ましくは1.2〜1.6のN/P比となるように混合することによって得られ得る。このようなN/P比とすることにより、遊離の核酸またはブロックコポリマーが減少し、上記ユニット構造体を高い含有率で含む医薬製剤が得られ得る。また、N/P比を1.1〜2.0、さらには1.2〜1.6、の範囲に設定することで、ユニット構造体の含有率を高めつつ核酸と静電結合していないブロックコポリマー(遊離のブロックコポリマー)を一定量含ませた医薬製剤によれば、遊離のブロックコポリマーによる遊離核酸の再捕捉作用と、対象細胞に向けたユニット構造体からの円滑な核酸リリースとを高次にバランスさせることができるため、核酸の血中滞留性の向上と抗腫瘍効果をより顕著に両立できる。ここで、N/P比とは、[ブロックコポリマー中のカチオン性基の総数(N)]/[核酸中のリン酸基の総数(P)]を意味する。
【0047】
別の実施形態において、本発明の医薬製剤は、必要により緩衝化された水溶液中で上記ブロックコポリマーと核酸とを例えば2.5より大きいN/P比となるように、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上のN/P比となるように混合することによって得られ得る。このようにN/P比を大きくすることにより、医薬製剤に含まれる核酸の血中安定性を大幅に向上することができる。N/P比の上限は、例えば50、また例えば30、また例えば20である。
【実施例】
【0048】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例においては、PEGの分子量(kDa)およびポリアミノ酸の重合度の順序でポリマー構造を記す。また、PEG鎖が複数ある場合は、PEGの分子量(kDa)、鎖数、ポリアミノ酸の重合度の順序でポリマー構造を記す。例えば、親水性ポリマー鎖セグメントが各々の分子量が10kDaである2鎖型のPEGで構成され、カチオン性ポリアミノ酸セグメントが20個のリシン残基で構成されている場合は、「PEG−PLys(10×2−20)」と略記する。
【0049】
<ブロックコポリマーの調製>
イオン交換カラム(GEヘルスケア・ジャパン社製、製品名「CM−Sephadex C−50」)で精製した下記式(3)に示す2本鎖型のポリ(エチレングリコール)誘導体(日油社製、製品名「SUNBRIGHT GL2-400PA」、平均分子量=42,000Da(21,000Da×2))0.80gと、チオ尿素1.07gとをナスフラスコに量り取り、アルゴン置換の後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)12mlを加えた。該混合物を加熱して溶解させ、さらに2時間撹拌した。Nε−トリフルオロアセチル−L−リシン N−カルボン酸無水物(Lys(TFA)−NCA)0.13g(25当量相当)をアルゴン下でナスフラスコに量り取り、DMF2mlに溶解した。得られた溶液を上記2本鎖型のPEGが入ったナスフラスコにシリンジで加えた。アルゴン下25℃の水浴中で撹拌しながら2日間反応させた。IRでNCA特有の吸収ピークの消失を確認した後、メタノール7mlを加えた。得られた溶液を210mlの冷ジエチルエーテル中に撹拌しながら注ぎ、再沈殿させた。上清を取り除き、メタノール14mlを加え加熱して再溶解させた後、冷ジエチルエーテルを注ぎ込み再沈殿させることをさらに2回繰り返した。沈殿をフィルターでろ過し、真空乾燥してPEG−PLys(TFA)の白色粉末を0.85g得た。0.40gのPEG−PLys(TFA)をメタノール40mlに溶解した。得られた溶液に1N NaOH水溶液4mlを加え35℃の水浴中で撹拌しながら17時間反応させた。反応液を透析チューブ(MWCO=6,000〜8,000)に入れ、0.01N塩酸を外液として4回、純水を外液として3回透析を行った。チューブ内液を凍結乾燥することにより、PEG−PLys(塩酸塩)の白色粉末を0.35g得た。
1H-NMRにより、PLysの重合度は20と決定された。また、GPCにより、ブロックコポリマー:PEG−PLys(21×2−20)が得られたことが確認された。
【化7】
(式中、x1およびx2は、それぞれ約450〜470である。)
【0050】
上記と同様の方法によって、PEGの種類および/またはポリリシンの重合度が異なる種々のブロックコポリマーを得た。
【0051】
<医薬製剤の調製>
ブロックコポリマーとsiRNAとを、10mM HEPES緩衝液(pH7.3)に別々に溶解し、所定のN/P比となるように混合することによって、医薬製剤を調製した。用いたsiRNAの配列を以下に示す(小文字は2’−O−メチル化修飾部位を表す)。なお、siRNAは、必要に応じて、Cy5等の蛍光分子で標識して用いた。また、siRNAの5’末端は脱リン酸化されている。
(1)siGL3(ホタルルシフェラーゼに対するsiRNA):
センス鎖:5’−CUUACGCUGAGUACUUCGAdTdT−3’(配列番号1)
アンチセンス鎖:5’−UCGAAGUACUCAGCGUAAGdTdT−3’(配列番号2)
(2)sihVEGF(ヒト血管内皮成長因子に対するsiRNA):
センス鎖:5’−GAUCUCAUCAGGGUACUCCdTdT−3’(配列番号3)
アンチセンス鎖:5’−GGAGUACCCUGAUGAGAUCdTdT−3’(配列番号4)
(3)siPLK1(ポロ様キナーゼ1に対するsiRNA):
センス鎖:5’−AGAuCACCCuCCUuAAAuAUU−3’(配列番号5)
アンチセンス鎖:5’−UAUUUAAgGAGGGUGAuCUUU−3’(配列番号6)
【0052】
<ユニット構造体の構造評価>
種々のブロックコポリマーとCy5−siGL3とを用いて調製した医薬製剤(N/P=1)中のユニット構造体の構成を表1に示す。各測定条件は以下の通りである。
(1)ポリリシンの重合度
核磁気共鳴装置(日本電子社製、製品名「JNM−ECS400」)を用い、溶媒:D2O、温度:25℃で、核磁気共鳴スペクトル(
1H-NMRスペクトル)を測定した。
1H-NMRスペクトルからポリリシン側鎖のメチレン基数を算出することにより、ポリリシンの重合度を求めた。
(2)ユニット構造体の分子量
分析用超遠心機(ベックマン・コールター社製、製品名「Optima XL−A」を用いて、150mM NaClを含む10mM HEPES緩衝液中で20℃にて、ユニット構造体の分子量を測定した。
(3)ユニット構造体中のsiRNA数
40×対物レンズ(C−Apochromat、Carl Zeiss社製)およびConfoCor3モジュールを搭載した共焦点レーザスキャン顕微鏡(Carl Zeiss社製、製品名「LSM510」)を用い、蛍光相関分光法によって、150mM NaClを含む10mM HEPES緩衝液中で室温にて、Cy5−siRNA由来の蛍光分子数を測定した。siRNAのみの時の蛍光分子数を基準にして、ユニット構造体中のsiRNA数を見積もった。
(4)ユニット構造体中のブロックコポリマーの数
PEGの分子量および上記(1)〜(3)の値から算出した。
【表1】
【0053】
<siRNAの血中滞留性>
6週齢の雄性BALB/c−nuマウスに、異なるブロックコポリマーを用いて調製した医薬製剤(N/P=1.4)、またはnaked siRNAを尾静脈投与した。このとき、siRNAの投与量が24μgとなるように投与した。また、ユニット構造体を形成するsiRNAとして、Cy5−siGL3を用いた。その後、経時的にマウスから血液サンプルをヘパリンで回収し、血清中のCy5量を超微量分光光度計(Thermo Fisher Scientific社製、製品名「ナノドロップ」)で定量した。次いで、次式によってsiRNAの血中滞留率を求めた。各医薬製剤の投与後10分におけるsiRNAの血中滞留率(N=3)を
図2Aに示す。また、医薬製剤の投与後120分までのsiRNAの血中滞留率の変化(N=1)を
図2Bに示す。
siRNAの血中滞留率(%)={(血清中のCy5量)/(投与した全Cy5量)}×100
【0054】
図2Aに示されるように、本発明の医薬製剤によれば、比較例の医薬製剤よりも投与後10分におけるsiRNAの血中滞留性に優れる。特に、2本のPEG鎖を有するブロックコポリマーを含むユニット構造体によれば、顕著に優れたsiRNAの血中滞留率が実現された。また、
図2Bに示されるように、naked siRNAを投与した場合、10分後における血中滞留率はほぼ0%であるが、本発明の医薬製剤を投与した場合、10分後のsiRNAの血中滞留率は40%以上であり、60分後においてもsiRNAが血中に滞留していることが確認された。
【0055】
<ユニット構造体の標的細胞への集積性>
6週齢の雄性BALB/c−nuマウスの皮下に腎がん細胞(OS−RC−2)を1×10
7個/200μl移植した。がん細胞移植後6日目に各マウスに、異なるブロックコポリマーを用いて調製した医薬製剤(N/P=1.4)を尾静脈投与した。このとき、siRNAの投与量が24μgとなるように投与した。また、ユニット構造体を形成するsiRNAとして、Cy5−siGL3を用いた。投与から4時間後に、皮下移植がん組織を摘出し、IVISにてCy5の蛍光強度を測定した。結果を
図3に示す。
【0056】
図3に示されるように、本発明の医薬製剤を投与したマウスの皮下のがん組織においては、Cy5−siGL3に起因する強い蛍光シグナルが確認された。このことから、尾静脈投与されたユニット構造体が血中からがん細胞に効率的に取り込まれたことがわかる。
【0057】
<ユニット構造体のin vitro RNAi活性>
腎がん細胞(OS−RC−2)を12ウェルの培養ディッシュに80%コンフルエントとなるように播種し、10%FCS、ペニシリン(100U/ml)、およびストレプトマイシン(100μg/ml)を含むRPMI培地で48時間培養した。次いで、培地を交換するとともに、異なるブロックコポリマーを用いて調製した医薬製剤(N/P=1.4)、またはnaked siRNAを添加した。このとき、siRNA濃度が900nM/ウェルとなるように添加した。また、ユニット構造体を形成するsiRNAとしてsiPLK1またはsiGL3(対照)を用いた。48時間培養した後、製品名「Cell Counting Kit8」(同仁化学研究所社製)によって生細胞数を測定し、細胞生存率を算出した(N=4)。結果を
図4に示す。
【0058】
図4に示されるように、siGL3を含む医薬製剤またはnaked siPLK1と共に培養した細胞の生存率は90%以上であったが、siPLK1を含む医薬製剤と共に培養した細胞の生存率はいずれも50%未満であった。このことから、本発明のユニット構造体によれば、naked siRNAよりも好適に細胞内にsiRNAを送達することができ、配列特異的にPLK1遺伝子の発現を抑制できることが示唆される。
【0059】
<ユニット構造体の抗腫瘍効果1>
6週齢の雄性BALB/c−nuマウスの皮下に腎がん細胞(OS−RC−2)を1×10
7個/200μl移植した。がん細胞移植後6日目から各マウスに、siRNAの投与量が24μgとなるように異なるsiRNAを用いて調製した医薬製剤(N/P=1.4)、または生理食塩水を3日に1回39日目まで尾静脈投与した。このとき、ユニット構造体を形成するブロックコポリマーとしてPEG−PLys(21×2−20)を用いた。また、sihVEGFとsiPLK1との両方を投与する群については、各siRNAを等量(モル基準)ずつ用いた。投与開始後の経過日数と生存マウス数との関係を
図5に示す(N=7)。
【0060】
図5に示されるように、siRNAとしてsiPLK1のみ、または、sihVEGFとsiPLK1との両方を投与したマウスは、生理食塩水またはsiRNAとしてsiGL3を投与したマウスと比べて、生存日数が長くなることが確認された。
【0061】
<ユニット構造体の抗腫瘍効果2>
9週齢の雄性BALB/c−nuマウスの皮下に腎がん細胞(OS−RC−2)を1×10
7個/200μl移植した。がん腫瘤が初めて認められた日を治療1日目として、各マウスにsiRNAの投与量が24μgとなるように医薬製剤(N/P=1.4)、naked siRNA、または生理食塩水を毎日1回、20日間尾静脈投与した。このとき、ユニット構造体を形成するsiRNAとしてsihVEGFを用い、ブロックコポリマーとしてPEG−PLys(21×2−20)を用いた。投与開始後の腫瘍体積の変化および体重の変化をそれぞれ
図6Aおよび
図6Bに示す(N=8〜10)。
【0062】
図6Aに示されるように、生理食塩水またはnaked siRNAを投与したマウスでは、日数の経過とともに腫瘍体積が増加したのに対し、本発明の医薬製剤を投与したマウスでは、腫瘍体積がほぼ一定に抑制されているか、または、縮小しており、顕著な抗腫瘍効果が確認された。また、
図6Bに示されるように、本発明のユニット構造体を投与したマウスには、体重の減少が見られなかった。
【0063】
さらに、治療21日目に達したマウスから腫瘍を摘出し、RNA抽出用試薬(日本ジーン社製、製品名「Isogen」)を用い、マニュアルに記載の方法に準じてRNAを抽出した。得られたRNAを超微量分光光度計(Thermo Fisher Scientific社製、製品名「ナノドロップ」)で定量した。各試料からcDNAを合成し、RT−PCRによりhVEGF mRNAの発現量を調べた。生理食塩水投与群、naked siRNA投与群、および医薬製剤投与群における発現量(平均値)はそれぞれ、ハウスキーピング遺伝子に対する相対値として、0.415(N=6)、0.364(N=3)、および0.191(N=2)であった。この結果は、医薬製剤投与群においてsihVEGFによる高いRNAi効果が奏されていることを示しており、上記抗腫瘍効果を支持するものである。
【0064】
<ユニット構造体の抗腫瘍効果3>
9週齢の雄性BALB/c−nuマウスの皮下に腎がん細胞(OS−RC−2)を1×10
7個/200μl移植した。がん腫瘤が初めて認められた日を治療1日目として、各マウスにsiRNAの投与量が24μgとなるように医薬製剤(N/P=2.5)、naked siRNA、または生理食塩水を毎日1回、20日間尾静脈投与した。このとき、ユニット構造体を形成するsiRNAとしてsihVEGFとsiPLK1とを等量(モル基準)ずつ用い、ブロックコポリマーとしてPEG−PLys(21×2−20)を用いた。投与開始後の腫瘍体積の変化および体重の変化をそれぞれ
図7Aおよび
図7Bに示す(N=8〜10)。
【0065】
図7Aに示されるように、生理食塩水またはnaked siRNAを投与したマウスに比べて、本発明の医薬製剤を投与したマウスでは、腫瘍体積の増加が大幅に抑制されており、顕著な抗腫瘍効果が確認された。また、
図7Bに示されるように、マウスの体重については有意な違いは認められなかった。
【0066】
さらに、治療21日目に達したマウスから腫瘍を摘出し、上記<ユニット構造体の抗腫瘍効果2>と同様にして、RNAの抽出およびcDNAの合成を行った。得られたcDNAを用いてRT−PCRを行ったところ、生理食塩水投与群、naked siRNA投与群、および医薬製剤投与群におけるhVEGF mRNAの発現量(平均値)はそれぞれ、ハウスキーピング遺伝子に対する相対値として、0.415(N=6)、0.520(N=6)、および0.254(N=4)であった。また、PLK1 mRNAの発現量(平均値)はそれぞれ、ハウスキーピング遺伝子に対する相対値として、0.0065(N=5)、0.0064(N=8)、および0.0041(N=6)であった。この結果は、医薬製剤投与群においてsihVEGFおよびsiPLK1による高いRNAi効果が奏されていることを示しており、上記抗腫瘍効果を支持するものである。
【0067】
<親水性ポリマー鎖セグメントの鎖長を変化させた場合のsiRNAの血中滞留性>
6週齢の雄性BALB/c−nuマウスに、表2に示す医薬製剤(N/P=10)を尾静脈投与した。このとき、siRNAの投与量が24μgとなるように投与した。また、siRNAとして、Alexa647−siGL3を用いた。その後、経時的にマウスから血液サンプルをヘパリンで回収し、血清中のAlexa647量を超微量分光光度計(Thermo Fisher Scientific社製、製品名「ナノドロップ」)で定量した。
【表2】
【0068】
その結果、それぞれ21kDaの2本鎖PEGを有するブロックコポリマーを用いて得られる医薬製剤Aにおいて、Alexa647由来の蛍光強度の半減期は57分間であった。一方、それぞれ37kDaの2本鎖PEGを有するブロックコポリマーを用いて得られる医薬製剤BにおけるAlexa647由来の蛍光強度の半減期は160分間であった。このことから、親水性ポリマー鎖として2本鎖のPEGを用いることにより、約1時間もの長いsiRNAの血中滞留性が実現できることが確認された。さらに、PEG鎖長を長くすることにより、siRNAの血中滞留性を大幅に向上し得ることがわかる。
【0069】
<N/P比を変化させた場合のsiRNAの血中滞留性>
6週齢の雄性BALB/c−nuマウスに、種々のN/P比となるように調製した医薬製剤を尾静脈投与した。このとき、siRNAの投与量が24μgとなるように投与した。また、siRNAとしてAlexa647‐siGLを用い、ブロックコポリマーとしてPEG−PLys(37×2−19)を用いた。血中滞留性に関しては、生体内共焦点蛍光顕微鏡(ニコン社製、製品名「A1R」)によりマウス耳介真皮深層の血流中を流れるAlexa647‐siGLの蛍光強度を測定することにより算出した。
【0070】
その結果、Alexa647由来の蛍光強度の半減期は、N/P比が1である場合に約10分間であり、N/P比が3である場合に約55分間であり、N/P比が5である場合に約75分間であり、N/P比が10である場合に約160分間であった。このことから、N/P比を高くすることにより、siRNAの血中滞留性を大幅に向上し得ることがわかる。