【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創出推進事業研究開発テーマ「高齢者の自立を支援し安全安心社会を実現する自律運転知能システム」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1の装置であって、前記操舵アシストトルク決定手段が、前記操舵角偏差の大きさが不感帯閾値を下回るときには、前記操舵アシストトルクの第一の成分を0に設定し、前記干渉度合が大きいときの前記不感帯閾値が、前記干渉度合が小さいときに比して増大されるよう設定される装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
車両の構成
図1(A)を参照して、本発明の運転支援制御装置の好ましい実施形態が組み込まれる自動車等の車両10に於いては、通常の態様にて、左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RR、運転者によるアクセルペダルの踏込みに応じて各輪(図示の例では、後輪駆動車であるから、後輪のみ。前輪駆動車、四輪駆動車であってもよい。)に制駆動力を発生する駆動系装置(一部のみ図示)と、前輪の舵角を制御するための操舵装置20(更に、後輪用の操舵装置が設けられていても良い。)と、各輪に制動力を発生する制動系装置(図示せず)とが搭載される。駆動系装置は、通常の態様にて、エンジン及び/又は電動機(図示せず。エンジンと電動機との双方を有するハイブリッド式の駆動装置であってもよい。)から、変速機(図示せず)、差動歯車装置14を介して、駆動トルク或いは回転力が後輪12RL、12RRへ伝達されるよう構成される。差動歯車装置14としては、左右輪へ伝達される駆動力の配分の調節によるトルクベクタリング制御を実行する場合には、かかるトルクベクタリング制御が実行可能な左右駆動力配分デフが採用されてよい。なお、左右輪の制駆動力の配分の調節は、制動系装置によって各輪制動力を独立に調節することによって行われてもよい(その場合、差動歯車装置14に駆動力配分機能がなくてもよい。)。更に、駆動系装置は、インホイールモータの形式の駆動装置であってもよく、その場合には、左右輪毎に発生される制駆動力の調節が為されることとなる。
【0028】
操舵装置20には、運転者によって操舵されるステアリングホイール(ハンドル)22の回転を、その操舵トルクを倍力装置24により倍力しながら、タイロッド26L、Rへ伝達し前輪12FL、10FRを転舵するパワーステアリング装置が採用されてよい。また、本発明による運転支援制御に於いては、後に説明される如く、倍力装置24に、制御指令が与えられ、操舵アシストトルクTaが発生させられる(操舵アシスト機構)。操舵アシストトルクTaは、後に説明される電子制御装置50に於いて、実操舵角θsw、ステアリングシャフト22aに作用するトルク等を利用して決定されるので、操舵角θswを検出するセンサ(図示せず)及びステアリングシャフト22aに作用するトルクを検出するセンサ22b(
図3(B))が設けられる。更に、本発明の運転支援制御は、その基本的な考え方として、操舵アシストトルクを運転者に感知させて、これにより、運転者の操舵を“より”理想的な操舵へ誘導することによって、運転者入力に基づく制御と機械入力に基づく制御との協調を図るものであるので、本実施形態の構成に於いては、転舵輪(図示の例では、左右前輪)に於けるヨー方向のトルクの発生状態がハンドルを通じて運転者に感知されるように、ハンドルと転舵輪とが機械的に直結された操舵装置が採用される。
【0029】
また更に、本発明の運転支援制御装置の好ましい実施形態が適用される車両10に於いては、車両周辺の状況、例えば、道路白線(又は黄線)、他車、障害物等を検出するための車載カメラ40、レーダー装置等42、GPS人工衛星と通信して自車の位置情報等の種々の情報を取得するGPS装置(カーナビゲーションシステム)44が設けられていてよい。
【0030】
上記の車両の各部の作動制御及び本発明による運転支援制御装置の作動制御は、電子制御装置50により実行される。電子制御装置50は、通常の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を含んでいてよい。後に説明される本発明の運転支援制御装置の各部の構成及び作動は、それぞれ、プログラムに従った電子制御装置(コンピュータ)50の作動により実現されてよい。電子制御装置50には、ステアリングシャフトに作用するトルクTo、操舵角θsw、ジャイロセンサ30からのヨーレートγ及び/又は横加速度Yg、車載カメラ40、レーダー装置等42、GPS装置44等からの情報s1〜s3などが入力され、後述の態様にて、操舵アシストトルクTa、左右輪の制駆動力配分制御のための制御量(例えば、駆動力配分比kr)などを表す制御指令が対応する装置へ出力される。なお、図示していないが、本実施形態の車両に於いて実行されるべき各種制御に必要な種々のパラメータ、例えば、前後Gセンサ値、車輪速等の各種検出信号が入力され、各種の制御指令が対応する装置へ出力されてよい。また、運転支援制御が実行中であるか否かの視覚又は聴覚情報info.を電子制御装置50から受信し運転者に提供するための表示器32が設けられていてよい。
【0031】
運転支援制御装置の構成
図1(B)を参照して、本発明による運転支援制御装置の具体的な構成に於いては、まず、目標経路決定部に於いて、車両周辺情報、例えば、カメラ等から得られる道路白線の位置、先行車や障害物の有無とその位置、道路の延在方向等の情報やGPS装置等から得られるルート又はコースの道路線形等の情報及び/又は運転者が希望する目的地に対して設定される好適な走行ルート(将来軌跡)の情報を用いて、車両の運転をより最適に実現するよう決定された目標経路が決定され、更に、その目標経路に沿って車両を運動させるための目標横変位(機械目標横変位)Ys
*が決定される。目標横変位Ys
*は、規範運転者モデル部へ入力され、そこに於いて、後に詳細に説明される態様にて、目標横変位Ys
*と車両の横変位量Yd、ヨーレートγ、ヨー角Ψ、車速V等の車両の現在の状態を表す指標値とを用いて、目標操舵角θsw
*が決定され、更に、操舵アシストトルク演算部に於いて、目標操舵角θsw
*、実操舵角θsw、ゲインK、C、不感帯閾値esw、eswvを用いて、操舵アシストトルクTaが決定され、それを実現する制御指令が操舵装置へ与えられる。
【0032】
また、運転支援制御に於いて、左右輪の制駆動力配分制御を利用する場合には、更に、左右輪制駆動力差演算部にて、実操舵角θswとゲインW
DYCとを用いて、左右輪制駆動力差によって発生させられるべきヨーモーメントの目標値Mzが算出され、目標ヨーモーメントMzを与えるための制御指令が左右輪制駆動力配分機構へ送信される。なお、ここでの制御指令は、目標ヨーモーメントMzを駆動力の配分の調節によるトルクベクタリング制御により発生させる場合には、左右駆動力配分デフ14にて発生させるべき駆動力配分比krを表す制御指令であり、目標ヨーモーメントMzを各輪制動装置に於ける制動力差により発生させる場合には、各輪制動装置にて発生させるべき制動力を表す制御指令となる。
【0033】
上記に於いて、操舵アシストトルク演算部にて参照されるゲインK、C、不感帯閾値esw、eswvと、左右輪制駆動力差演算部にて参照されるゲインW
DYCは、それぞれの決定部に於いて、運転者の運転技能レベルを表す干渉度合Iに基づいて決定される。干渉度合Iは、後に詳細に説明される如く、過去の所定の期間に於ける操舵アシストトルクTaと運転者により与えられた操舵トルク(運転者操舵トルク)Tdとに基づいて決定される。運転者操舵トルクTdは、典型的には、ステアリングシャフト22aに作用するトルクの検出値Toを用いて推定された値が用いられる。
【0034】
本発明による運転支援制御の原理
(1)操舵アシストトルクの概念と演算式
本発明の車両の運転支援制御の目標は、端的に述べれば、車両周辺情報を用いて、車両の理想的な経路の一つである目標経路を設定し、その目標経路に沿って理想的な操舵を行って車両を走行させるよう操舵角を制御することである(理想的な経路は、任意に設定されてよく、例えば、車両の走行に於いて重視したい事項(走行時間、消費エネルギー、安全性など)によって一つ以上考えられ得る。)。かかる制御に於いては、より具体的には、上記に触れたように、目標経路が設定された後に、車両を目標経路に沿って移動させるために要求される目標横変位Ys
*を理想的な又は規範的な運転を実行する運転者モデル(規範運転者モデル)によって達成する場合の操舵角(目標操舵角θsw
*)が決定され、実際の操舵角θswが目標操舵角θsw
*に合わされることとなる。かかる操舵角の制御を、運転支援システムによる操舵のみで、即ち、機械入力に基づく制御のみで実行するときには、「発明の概要」の欄にて述べた如く、運転者の意志が車両の運動に全く反映されないこととなり、特に、運転者が機械入力の意図(制御動作の方向と量)を把握しておらず、或いは、機械入力による制御の作動が運転者の予想又は期待と異なっているとすれば、運転者に強い違和感が発生することとなる。そこで、このような状況を回避すべく、本発明に於いては、運転者による操舵入力(ハンドルの回転による運転者入力)が車両の運動に反映される状態、即ち、運転者入力による制御(運転者操舵トルク)と機械入力による制御(操舵アシストトルク)とが同時に実行され得る状態、を維持しながら、機械入力に基づく制御の意図を運転者に感知させて、運転者入力を機械入力に基づく制御の意図と整合するように誘導し、これにより、運転者入力に基づく制御と機械入力に基づく制御とによって、これらを協調させて、上記の実操舵角θswを目標操舵角θsw
*に合わせる操舵角の制御の達成が図られる。
【0035】
上記の如き運転者入力に基づく制御と機械入力に基づく制御との協調を図るための構成として、特に、本発明の運転支援制御に於いては、既に述べた如く、まず、運転者の把持するハンドルと転舵輪とが機械的に直結された操舵装置が採用され、その操舵装置に於いて、操舵アシスト機構を用いて、実操舵角θswを(機械入力に基づいて決定された)目標操舵角θsw
*へ近づける方向に、目標操舵角θsw
*と実操舵角θswとの偏差θsw
*−θsw(操舵角偏差)と伴に増減し該操舵角偏差を低減する方向に作用する「操舵アシストトルクTa」が付与される。かかる操舵アシストトルクTaは、操舵装置に付与されると、ステアリングシャフト22aを通じてハンドル22へ伝達され、そうすると、操舵アシストトルクTaの方向と大きさが、目標操舵角の方向へ引っ張る回転力として、ハンドルを把持する手の触感を通じて、運転者により感知され、これにより、運転者は、機械入力に基づく制御、即ち、より理想的な運転状態を達成する制御の方向を認知できることとなり、操舵アシストトルクTaを頼りに、これに追従して操舵トルク(運転者操舵トルクTd)をハンドル22の回転を通じて与えることが期待される。また、実操舵角が目標操舵角に近づくにつれて、操舵アシストトルクTaが低減し、実操舵角が目標操舵角に到達すると、操舵アシストトルクTaが0となるので、運転者は、操舵アシストトルクTaの大きさを頼りに、自身の付与する操舵トルクを調節して、実操舵角を目標操舵角にもたらすことが可能となる。即ち、操舵アシストトルクTaは、操舵角を変位させるために付与される補助のためのトルクであると同時に、実操舵角を目標操舵角へ変位させるために必要な制御の方向と制御量の大きさとの指標となり、操舵アシストトルクTaと整合する方向に運転者操舵トルクTdを誘引する機能を果たし、これにより、操舵アシストトルクTaと運転者操舵トルクTdとが協調して作用することによって、実操舵角が目標操舵角に整合させられることとなる。
【0036】
なお、操舵アシストトルクTaに於いては、より好適には、目標操舵角の変化速度dθsw
*/dtと実操舵角の変化速度dθsw/dtとの偏差dθsw
*/dt−dθsw/dt(操舵角速度偏差)と伴に増減し該操舵角速度偏差を低減する方向に作用する成分(第二の成分)が含まれていてもよい。この成分は、操舵角速度偏差が大きいほど、大きくなるので、実際の操舵角の変化速度と規範運転者モデルのより理想的な運転の場合の操舵角の変化速度とのずれがあるときには、操舵アシストトルクTaが修正する方向に変化することとなる。従って、この場合、運転者は、操舵アシストトルクTaの大きさを頼りに操舵アシストトルクTaが低減するように操舵を実行することにより、実操舵角を目標操舵角に整合すると伴に、操舵角の変化速度を理想的操舵角の変化速度に追従させることも可能となる。
【0037】
図2は、上記の制御、即ち、機械入力に基づく制御と運転者入力に基づく制御とを協調して実行し実操舵角を目標操舵角へもたらす制御の考え方を抽象化して表した概念図である。同図を参照して、左側のブロックが規範運転者に於ける目標操舵角θsw
*の位置を、右側のブロックが実際の運転者に於ける実操舵角θswの位置を、それぞれ、表しており(実際の操舵装置では、目標操舵角θsw
*の変位前に於いて、目標操舵角θsw
*と実操舵角θswとは一致しているが、説明の目的で、両者は間をおいて描かれている。)、二つのブロックは、ばねK及び/又はダンパCにて連結された状態となっている。ここで、ばねKの弾性力が操舵アシストトルクTaの操舵角偏差によって与えられる成分(第一の成分)であり、ダンパCの粘性力が操舵アシストトルクTaの操舵角速度偏差によって与えられる成分(第二の成分)である。この図示の如き構成に於いて、例えば、同図の左側の規範運転者が目標操舵角θsw
*を左方へ変位したとき(図中、左側のブロックが点線の位置から実線の位置まで移動したとき)、目標操舵角θsw
*と実操舵角θswとのずれが増大することによって、操舵アシストトルクTaが左方へ向かって発生することとなる。操舵アシストトルクTaは、ここでは、図中のばねK及び/又はダンパCの伸びによって発生する反力に相当する。そうすると、ばねK及び/又はダンパCの反力、即ち、操舵アシストトルクTaが、右側の実際の運転者のブロックを引っ張るので、運転者は、その反力の方向と大きさから、規範運転者の運転に於ける操舵角の変化とその速度を感知することができることとなり、これにより、操舵アシストトルクTaに追従して、即ち、操舵アシストトルクTaが0となるように(反力を感じなくなるように)、運転者操舵トルクTdを付与できることとなる。そして、右側の実操舵角θswを表すブロックが、操舵アシストトルクTaと運転者操舵トルクTdとによって、目標操舵角θsw
*の変位分だけ移動すると、ばねK及び/又はダンパCの伸びがなくなるので、操舵アシストトルクTaが0となり、これと伴に、運転者も運転者操舵トルクTdの付与を止めることとなる。
【0038】
かくして、上記の制御に於いては、操舵アシストトルクTaは、操舵角偏差θsw
*−θsw及び/又は操舵角速度偏差dθsw
*/dt−dθsw/dtを低減する方向に作用すると伴に、運転者に対して機械入力に基づく制御の方向と大きさとの指標としての機能を果たすこととなる。そして、運転者が、操舵アシストトルクTaを頼りに、運転者操舵トルクTdを操舵アシストトルクTaに追従して、操舵アシストトルクTaが0となるように付与することにより、実操舵角を目標操舵角に一致させ、或いは、操舵角速度を理想的な速度に一致させる制御が達成されることとなる。
【0039】
操舵アシストトルクTaは、具体的には、下記の式のいずれかによって表される。
Ta=K(θsw
*−θsw) …(1)
又は
Ta=K(θsw
*−θsw)+C(dθsw
*/dt−dθsw/dt) …(2)
ここで、Kは、操舵角偏差に対するゲイン(
図2中のばねの弾性係数に相当する。)であり、Cは、操舵角速度偏差に対するゲイン(
図2中のダンパの減衰係数に相当する。)である。なお、下記に説明される如く、操舵アシストトルクTaについての不感帯を設ける場合には、上記の式は、更に修正されることとなる。
【0040】
(2)運転技能レベルに応じた操舵アシストトルクの調節
上記の如く操舵アシストトルクTaを付与し、運転者入力の機械入力への誘導を行う場合に、運転者が規範運転者モデルの操舵に追従した操舵を実行できるか否かは、運転者の運転特性、特に、運転技能レベルに依存する。実際、運転技能レベルの高い運転者であれば、操舵アシストトルクTaに対して速やかに追従して実操舵角θswを目標操舵角θsw
*へ調節できるのに対し、運転技能レベルの低い運転者の場合には、実操舵角θswを目標操舵角θsw
*へ、中々、うまく調節できないことが起き得ると予想される。
図2の概念図を参照して説明すると、目標操舵角が変化した際に、運転者の運転技能レベルが高ければ、反力が小さくても、すぐに実操舵角を目標操舵角に一致させることができるが、運転者の運転技能レベルが低ければ、反力を大きくして、実操舵角を目標操舵角へ誘導する作用を大きくした方が有利である。そこで、上記の操舵アシストトルクTaによる本発明の運転支援制御に於いては、更に、車両の走行中に運転者の運転技能レベルを評価して、その運転技能レベルが低いほど、操舵アシストトルクTaが、高くなるよう調節される。
【0041】
運転者の運転技能レベルの評価方法は、種々考えられるところ、特に、本発明に於いては、運転者がハンドルを通じて付与した操舵トルク(運転者操舵トルク)と操舵アシストトルクTaとの差(操舵トルク偏差)の大きさに基づいて算定される「干渉度合」と称される値を運転技能レベルの指標値とする。上記の説明、例えば、
図2に関連した説明、から理解される如く、運転者の運転技能レベルが高いほど、目標操舵角に対する実操舵角の追従性が良好であり、操舵トルク偏差が低減する一方、運転者の運転技能レベルが低いほど、操舵トルク偏差が大きくなるので、操舵トルク偏差の大きさに基づいて運転技能レベルが評価可能である。(下記注参照)。そこで、本発明では、操舵トルク偏差の大きさに基づいて決定される運転技能レベルの指標値として、「干渉度合」を算出し、この「干渉度合」を用いて、操舵アシストトルクTaの大きさの調節が為される。なお、かかる運転技能レベルの指標値、即ち、「干渉度合」は、本発明の運転支援制御による操舵アシストトルクTaの付与時には、既に得られている必要があるので、「干渉度合」は、過去の、即ち、制御実行中の各時点に於ける操舵アシストトルクTaの付与の際よりも以前の時点の、操舵トルク偏差の大きさを用いて決定される。また、或る時点のみの操舵トルク偏差の瞬間的な大きさだけでは、精度よく運転技能レベルを評価できないので、任意の期間に亘る操舵トルク偏差の履歴を用いて、「干渉度合」が算定されてよい。そして、運転技能レベルが低いほど、即ち、「干渉度合」が大きいほど、運転支援制御の有用性が高くなるので、ゲインK、Cは、増大されることとなる。
【0042】
具体的には、「干渉度合」は、例えば、下記の式により、演算されてよい。
I=∫(Td−Ta)
2dt …(3)
ここで、積分区間は、過去の任意に設定された期間であってよく、後述の如く、例えば、本発明の運転支援制御を実行する時期によって種々の態様にて設定されてよい。
【0043】
(注)より厳密に説明すると、本発明の制御に於いては、後述のセルフアライニングトルクの作用を考慮して、実操舵角θswの制御は、操舵アシストトルクと運転者操舵トルクとセルフアライニングトルクとの総和(Ta+Td+T
SAT)によって為されることとなる(セルフアライニングトルクは、常に舵角を低減する方向に作用する。)。ここで、規範運転者による操舵角制御の場合に付与されるトルクTid(理想操舵トルク)を仮定したとき、Tid=Ta+Td+T
SATのときに、操舵アシストトルクと運転者操舵トルクとによる制御が規範運転者による制御に相当したものとなっていることとなる。その場合、かならずしも、Ta=Tdとなっていなくてもよく、TaとTdとの割合は、任意であってよい。しかしながら、通常、Tid=Ta+Td+T
SATとなる状態が正確に実現されることは殆どなく、また、典型的には、操舵アシストトルクTaに於いて、ゲインK、Cが適合により調節されるところ、操舵アシストトルクTaが理想操舵トルクの半分程度の大きさになるように、設定されるので、運転技能レベルの高い運転者の場合、運転者操舵トルクTdは、概ね、操舵アシストトルクTaに一致し、また、実操舵角が速やかに目標操舵角に概ね合わされて、操舵アシストトルクTaが低減されて、操舵トルク偏差Td−Taの大きさが小さくなるのに対し、運転技能レベルの低くなるほど、操舵アシストトルクTaからの運転者操舵トルクTdのずれが大きくなり、実操舵角が目標操舵角に概ね合うまでの時間をより長く要するので、操舵トルク偏差Td−Taの大きさが大きくなる。従って、上記の干渉度合により運転技能レベルが評価できることとなる。
【0044】
(3)操舵アシストトルクTaの不感帯の設定
上記の式(1)又は(2)の如く、操舵角偏差又は操舵角速度偏差と伴に増減するよう操舵アシストトルクTaを設定した場合、操舵角偏差又は操舵角速度偏差の絶対値が小さい領域では、実操舵角は目標操舵角に近接していることになるので、操舵アシストトルクTaの必要性は相対的に低減される。また、操舵角偏差又は操舵角速度偏差が0付近となっている場合、操舵角の調節幅が細かくなるので、運転者がハンドルを通じて実操舵角と目標操舵角へ正確に合わせることはやや難しくなり、偏差の0付近で、運転者入力が過剰となって、ハンチングが発生し易くなる。そこで、本発明の運転支援制御に於いては、操舵角偏差又は操舵角速度偏差の絶対値が小さい領域に、操舵角偏差又は操舵角速度偏差に対する操舵アシストトルクTaの不感帯を設け、操舵角偏差又は操舵角速度偏差の絶対値が所定の閾値以下のときには、操舵アシストトルクTaが0に設定されてよい。この点に関し、偏差の0付近でハンチングの発生し易さは、やはり、運転者の運転技能レベルに依存するので、不感帯の幅が上記の「干渉度合」に基づいて決定されてよい。その場合、運転技能レベルが低いほど(「干渉度合」が大きいほど)、操舵角調節が的確に実行しづらくなる範囲が大きく成るので、不感帯の幅は、「干渉度合」が大きいほど大きくなっていてよい。かくして、上記の式(1)、(2)に於いて、不感帯を設ける場合には、操舵アシストトルクの表式は、下記の如く修正される。
Ta=K(θsw
*−θsw−esw) …(4)
又は
Ta=K(θsw
*−θsw−esw)+C(dθsw
*/dt−dθsw/dt−eswv) …(5)
ここで、esw、eswvは、それぞれ、不感帯の範囲を画定する不感帯閾値であり、干渉度合に基づいて決定される。
【0045】
(4)左右輪の制駆動力配分制御によるセルフアライニングトルクの低減
車両の操舵が実行されて車輪の舵角が有意な角度となり、タイヤに横力が発生すると、セルフアライニングトルクが舵角を小さくする方向に発生する。即ち、セルフアライニングトルクは、実操舵角を増大させる場合には、抗力として作用し、実操舵角を低減させる場合には、推力として作用することとなり、本発明の運転支援制御に於いても、前輪の操舵のみで車両の旋回を実行する場合には、セルフアライニングトルクが存在すると、実操舵角を目標操舵角へ変位させる過程に於いて、運転者は、セルフアライニングトルク存在を考慮して操舵トルクを付与することが必要となるので、運転者の操舵トルクの調節が複雑となり得る。(操舵アシストトルクは、操舵角偏差及び/又は操舵角速度偏差によって決定されるので、そのトルクの大きさには、セルフアライニングトルクを打ち消すための成分は含まれない。)。
【0046】
ところで、左右輪の制駆動力配分制御(ダイレクト・ヨー・モーメント(DYC)制御)によって、車輪の舵角によらずに、車両にヨーモーメントを発生させると、上記のタイヤのセルフアライニングトルクは低減される。従って、本発明の運転支援制御に於いて、より好適には、車両の旋回時にDYC制御を用いて車両の旋回方向へのヨーモーメントを付与し、セルフアライニングトルクの作用を低減して、運転者が操舵アシストトルクに追従して操舵する際の運転者操舵トルクの調節がより容易となるようになっていてよい。
【0047】
DYC制御によりタイヤのセルフアライニングトルクT
SATが低減される理由は、下記の通りである。まず、質量mの車両の二輪モデルに於いて、定常特性のみを考慮すると、横加速度a
yのときの運動方程式は、
ma
y=2(Yf+Yr) …(6a)
2l
fYf−2l
rYr+Mz=0 …(6b)
にて与えられる。ここで、Yf、Yr、l
f、l
r、Mzは、それぞれ、前輪コーナリングフォース、後輪コーナリングフォース、車両の重心と前輪軸との間の距離車両の重心と後輪軸との間の距離、左右輪の制駆動力差によるヨーモーメントである。一方、タイヤのセルフアライニングトルクT
SATは、複雑なサスペンション機構の作用を無視すると、
T
SAT=−2ξYf/n …(7)
により表される。ここで、ξ、nは、それぞれ、トレイル、ステアリングギア比である。かくして、式(6a)、(6b)、(7)を整理すると、セルフアライニングトルクT
SATは、
T
SAT=−ξ/{n(l
f+l
r)}(ml
ra
y−Mz) …(8)
となる。従って、左右輪の制駆動力差によるヨーモーメントMzを付与することにより、セルフアライニングトルクT
SATが低減されることが理解される。
【0048】
実際の制御に於いて付与するヨーモーメントMzについて、単純な車両運動のモデルでは、横加速度a
yは、実操舵角θswに比例すると考えてよいので、式(8)の右辺の最後の括弧内の値が低減するように、ヨーモーメントMzは、下記の式により与えられてよい。
Mz=K
mzθsw …(9)
K
mzは、実験又は理論的に設定されてよい。また、操舵アシストトルクの場合と同様に、ヨーモーメントMzについても運転者の運転技能レベルに応じて増減されてよく、その場合には、ヨーモーメントMzは、
Mz=W
DYCK
mzθsw …(9)
により与えられてよい。W
DYCは、ヨーモーメントMzに対するゲインであり、干渉度合が大きくなるほど、大きく設定される。
【0049】
本発明による運転支援制御の作動
(1)運転支援制御の実行時期
本発明の運転支援制御装置による運転支援制御は、車両の走行中に任意に設定された時期に実行されてよい。一つの態様として、車両の走行中に、運転者の指示により運転支援制御が継続的に実行するようになっていてもよく(継続的実行態様)、別の態様として、車両の走行中に進行方向に回避すべき障害物が検出された場合など、特定の状況に於いてのみ運転支援制御が実行されるようになっていてよい(間歇的実行態様−
図6(A)参照)。
【0050】
(2)運転支援制御に於ける具体的な処理過程
図1(B)を再度参照して、本発明による運転支援制御に於いて実行される具体的な処理に於いては、まず、目標経路決定部に於いて、車両周辺情報を用いて、目標経路が決定され、その目標経路に沿って車両を運動させるための目標横変位(機械目標横変位)Ys
*が決定される。そして、規範運転者モデル部が、機械目標横変位Ys
*と現在の車両の運動状態とを参照して、機械目標横変位Ys
*を達成する目標操舵角θsw
*を決定する。目標操舵角θsw
*は、例えば、前方注視モデルに従って、下記の表式により決定されてよい。
【数1】
ここで、h
*、Tn
*、Tp
*は、それぞれ、規範運転者モデルの運転特性を表す操舵ゲイン、1次遅れ時定数、前方注視時間であり、sは、ラプラス変換後の周波数変数である。Yd、Ψ、Vは、車両の現在の横変位(横位置)、ヨー角、車速である。車速Vは、例えば、車輪速センサによって得られた車輪速値から任意の手法にて得られた値であってよい。また、
図3(A)に模式的に描かれている如く、目標横変位Ys
*、車両の横変位Yd、ヨー角Ψは、任意に設定された基準点及び基準方向から計った値であってよい。車両に基準点及び基準方向が設定された場合には、車両の横変位Yd、ヨー角Ψは、それぞれの値は0となり、目標横変位Ys
*は、現在の位置から前方注視時間後に到達すべき横位置までの距離となる。上記の式に於いて、h
*、Tn
*、Tp
*は、車両の運転に於いて理想的な応答する場合の運転者の運転特性値であり、予めに実験等を通じて任意に設定されてよい。目標操舵角θsw
*は、既に述べた如く、規範運転者モデルに従って算出されることとなるので、車両が目標経路に沿って理想的に走行する場合に実操舵角が合わされるべき値となる。
【0051】
目標操舵角θsw
*が決定されると、操舵アシストトルク演算部にて、操舵アシストトルクTaが、式(4)又は(5)を用いて算出され、操舵アシストトルクTaを発生するための制御指令が倍力装置24へ与えられる。式(4)又は(5)のいずれを用いるかは、装置の製造者又は運転者により任意に選択されてよい。式(4)又は(5)に於いて、実操舵角θswは、ステアリングシャフト22a等に設けられた操舵角センサ(図示せず)の検出値が用いられてよい。
【0052】
式(4)又は(5)に於けるゲインK、C及び不感帯閾値esw、eswvは、既に述べた如く、式(3)により算出される干渉度合Iを用いて決定され、干渉度合Iは、過去の任意に設定される期間に亘る操舵トルク偏差(操舵アシストトルクTaと運転者操舵トルクTdとの差分)を積分して得られた値であってよい。式(3)に於いて、運転者操舵トルクTdの値は、例えば、
図3(B)に例示されている如き、ステアリングシャフト22aに取り付けられたトルクセンサ22bの検出値から推定されてよい
。実際には、検出トルク値Toからノイズを除去するフィルタ処理等が施された上で、運転者操舵トルクTdが推定される。
【0053】
式(3)に於ける操舵トルク偏差の積分期間(即ち、上記の「過去の任意に設定される期間」)は、車両の走行中に運転支援制御を継続的に実行する継続的実行態様の場合には、現在よりも前の期間であってよく、干渉度合Iは、逐次的に操舵トルク偏差の積分が実行されて算出されてよい。一方、特定の状況に於いてのみ運転支援制御が実行される間歇的実行態様の場合、操舵トルク偏差の積分期間は、或る時点で開始される運転支援制御の実行に対しては、その前回の運転支援制御の実行中の期間であってよく、干渉度合Iは、かかる前回の運転支援制御の実行中の操舵トルク偏差の積分が実行されて算出されてよい。
【0054】
ゲインK、C及び不感帯閾値esw、eswvの具体的な値は、
図4(A)〜(D)に例示されている如く、予め準備された干渉度合Iに対するゲインK、C及び不感帯閾値esw、eswvの値を表すマップを用いて決定されてよい。これらのマップから理解される如く、ゲインK、C及び不感帯閾値esw、eswvは、それぞれ、干渉度合Iと伴に増大されることとなるので、
図4(E)に模式的に描かれている如く、干渉度合Iが小さく、運転技能レベルが高い場合(図中実線)に比して、干渉度合Iが大きく、評価された運転技能レベルが低いほど(図中点線)、操舵角偏差(又は操舵角速度偏差)に対する操舵アシストトルクTaの比率が増大される。また、操舵アシストトルクTaの不感帯の幅についても、干渉度合Iが大きい場合の幅ehが、干渉度合Iが小さい場合の幅elに比して増大されることとなる。(
図4(E)に於いては、説明の目的で、横軸は、操舵角偏差のみで表しているが、操舵アシストトルクTaは、操舵角速度偏差に対しても同様に変化することは理解されるべきである。)
【0055】
更に、上記の操舵アシストトルクTaの付与と伴に、DYC制御によるヨーモーメントMzを発生させて、セルフアライニングトルクの低減を図る場合には、左右輪制動力差演算部にて、式(9)を用いて発生されるべきヨーモーメントMzが算出され、算出されたヨーモーメントMzを用いて、車両の非転舵輪である左右後輪のそれぞれの目標制駆動力Fxrl、Fxrrが下記の式にて算出される。
Fxrl=(1/2)ma
x−Mz/d …(13a)
Fxrr=(1/2)ma
x+Mz/d …(13b)
ここに於いて、ヨーモーメントMzは、左旋回方向が正方向であり、a
xは、車両の前後加速度であり、dはトレッドである。式(9)に於いて、ゲインW
DYCは、操舵アシストトルクTaの場合と同様に干渉度合Iを用いて、
図5(B)に例示されている如き、予め準備された干渉度合Iに対するゲインW
DYCの値を表すマップを用いて決定されてよい。そして、算出された目標制動力Fxrl、Fxrrが左右制駆動力配分機構へ送信され、左右輪にて目標制駆動力と一致するよう制駆動力が調節される。
【0056】
なお、操舵アシストトルクTaの算出のためのゲインK、C、不感帯閾値esw、eswv、ヨーモーメントMzの算出のためのゲインW
DYCは、干渉度合Iを用いて設定した後、操舵アシストトルクTa及びヨーモーメントMzの安定性を確保するべく、好適には、或る程度の期間、設定された値に維持される。例えば、運転支援制御を継続的に実行する継続的実行態様の場合は、ゲインK、C、不感帯閾値esw、eswv、ゲインW
DYCは、任意に設定されてよい所定の期間毎に、その時の干渉度合Iを参照して更新されるようになっていてよい。また、特定の状況に於いてのみ運転支援制御を実行する間歇的実行態様の場合は、ゲインK、C、不感帯閾値esw、eswv、ゲインW
DYCは、或る時点での運転支援制御の実行に対して、前回の運転支援制御の実施に於ける操舵トルク偏差を用いて算出された干渉度合Iを用いて設定された後、その回の運転支援制御の実行中は、実行開始の際に設定されていた値に維持されてよい(即ち、運転支援制御が実行される度に更新される。)
【0057】
特に、本発明による運転支援制御を車両の進行方向に障害物を検出したときなどの特定の状況に於いてのみ実行する場合には、
図6(A)に模式的に表されている如く、自車両が障害物から十分に離れているときには、運転支援制御は実行されず、運転者が操舵を実行する通常走行となるところ、自車両と障害物とがやや近くなったときには、本発明の運転支援制御(協調制御)が実行される(なお、自車両と障害物とが更に近接した場合には、運転者入力を受け付けずに、機械入力のみに基づく制御が実行されるようになっていてよい。その場合は、ハンドルと転舵輪の機械的連結が解除されることになろう。)。
【0058】
上記の如く、自車両と障害物とがやや近くなったときに(
図6(A)の右方に示されている如く自車両と障害物とが近接する前まで)、本発明による運転支援制御(協調制御)が実行される場合には、制御に於いて使用されるパラメータは、例えば、
図6(B)に模式的に例示されている如く、変化することとなる。なお、下記に於いて、協調制御実行フラグと更新フラグは、制御プログラム内での制御状態を表すための指標パラメータである。かくして、まず、自車両と障害物とがやや近くなったときなど、特定の状況になって、運転支援制御が実行される段階となると、協調制御実行フラグが立ち(1)(制御装置内のフラグの値が0から1となる。)、支援制御装置が作動する。そして、協調制御実行フラグが立っている間(フラグが1の間)、その間の操舵トルク偏差を用いて、干渉度合の演算が実行される(2)。また、協調制御実行フラグが立っている間には、その前までに得られている干渉度合Iを用いて決定されたゲインK、C、不感帯閾値esw、eswv、ゲインW
DYCを用いて算出される操舵アシストトルクTaとヨーモーメントMzの付与が実行される(3)。なお、車両の運転を開始して、最初に協調制御を実行する際に干渉度合Iが演算されていないときには、任意に設定された、例えば、平均的な運転技能レベルに対応して設定されたゲイン、不感帯閾値が操舵アシストトルクTaとヨーモーメントMzの演算に使用されてよい。
【0059】
しかる後、自車両と障害物との距離が開くか、自車両が障害物を回避しながら通過すると、協調制御実行フラグがオフとなり(0となり)、操舵アシストトルクTaとヨーモーメントMzの付与が終了する(4)。かくして、協調制御が終了すると、更新フラグが立ち(5)、終了した協調制御実行中に得られた干渉度合Iを用いて、ゲインK、C、不感帯閾値esw、eswv、ゲインW
DYCの更新が実行されてよい(6)。なお、かかる更新処理は、次の協調制御実行の実行開始時であってもよい(ただし、次の協調制御実行開始前に更新しておく方が実行開始後の演算負荷が低減して有利である。)。
【0060】
その後、再び、自車両と障害物とがやや近くなったときには、協調制御実行フラグが立ち(7)、干渉度合Iの演算(8)と、操舵アシストトルクTaとヨーモーメントMzの付与(9)が実行される。その際のゲインK、C、不感帯閾値esw、eswv、ゲインW
DYCは、先の更新処理(6)にて更新された値が使用される。そして、協調制御実行フラグがオフとなると(10)、操舵アシストトルクTaとヨーモーメントMzの付与が終了し、その後、適時、更新フラグが立ち(11)、ゲインK、C、不感帯閾値esw、eswv、ゲインW
DYCの更新処理が実行される。
【0061】
かくして、上記の本発明の運転支援制御の一連の構成によれば、操舵アシストトルクを運転者に感知されるように付与し、運転者が操舵アシストトルクに追従するようにハンドルの操舵を実行することにより、運転者自らが操舵を実行しつつ、機械入力に基づく制御による目標経路に沿った車両の走行が達成できることとなり、運転者入力に基づく制御と機械入力に基づく制御との協調が図られることとなる。また、操舵アシストトルクが運転者の運転技能レベルを表す干渉度合によって調節されることにより、運転者の運転技能レベルに適合した運転支援を提供できることとなる。また、干渉度合が車両の走行中の操舵トルク偏差によって算出されることによれば、車両の運転中の運転者の運転技能レベルの変化にも適合して運転支援を提供できる点で有利である。なお、上記の構成に於いて、本発明の運転支援制御の実行開始及び実行中に於いては、車載の表示器32によって、運転支援制御が実行中であることが視覚的に又は聴覚的に運転者に報知されるようになっていてよい。かかる構成によれば、運転者が運転支援制御の実行の有無を把握できることとなり、運転支援制御の理解度が高まり、違和感の更なる低減が図られることとなる。
【0062】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。