【実施例】
【0033】
以下、本発明による銀微粒子分散液の実施例について詳細に説明する。
【0034】
[実施例1]
まず、28質量%のアンモニア水0.31kgとヘプタン酸0.36kgをイオン交換水1.2kgに混合した原料液Aと、85質量%の含水ヒドラジン0.39kgをイオン交換水1.0kgで希釈した原料液Bと、硝酸銀結晶1.4kgを加温したイオン交換水1.2kgに溶解させた原料液Cを用意した。
【0035】
次に、還流冷却器付の反応槽にイオン交換水を11kg添加して攪拌しながら加熱し、液温が30〜50℃の範囲になったときに、攪拌しながら原料液A、B、Cを順次添加して、銀微粒子の合成反応を開始させた。この反応中に液温が60℃以上にならないように、反応槽に設置した冷却管により反応槽内を冷却した。この反応槽の冷却を止めても、反応熱による昇温がなくなった時点で反応終了した。
【0036】
この反応により得られた反応液(ヘプタン酸が周囲に配置された銀微粒子を含む液)を別の容器に移して24時間静置した後、上澄み液を取り除いて反応液を濃縮した。このようにして得られた濃縮物を気密性の高い蓋付き瓶に入れて冷暗所で3か月静置した後、上澄み液を適度に取り除いて、さらに濃縮された反応液を得た。
【0037】
このようにして濃縮された反応液にアンモニア水を添加してpH6.0に調整し、3日間静置して(銀微粒子の周囲から)過剰なヘプタン酸を解離させた後、上澄み液を取り除いて、ヘプタン酸で被覆された銀微粒子を含む液を得た。なお、この銀微粒子の平均粒径は18nmであった。
【0038】
このようにして得られた(ヘプタン酸で被覆された)銀微粒子を含む液に、(基板上に塗布する際に基板との密着性を高めるために高TgポリマーとしてTgが73℃の)塩化ビニルコポリマーラテックスと、(粘度調整のために)ポリウレタンシックナーと、(湿潤剤として)プロピレングリコールと、(銀濃度を調整するために)上記のpH調整後に得られた上澄み液を添加して攪拌することにより、61質量%銀微粒子と、3.0質量%の塩化ビニルコポリマーラテックス(Tg=73℃)と、2.0質量%のポリウレタンシックナーと、2.5質量%のプロピレングリコールを含む導電性Agインクを得た。
【0039】
この導電性Agインク200gに、43質量%のポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンと57質量%のポリ(オキシエチレン)アルキルエーテルとからなる表面調整剤(BYK社製のBYK302)(不揮発成分を95質量%以上含み、表面張力低下能力が中程度)0.41g(Agインクに対して0.20質量%)と、上記のpH調整前に得られた上澄み液4.98gを添加して、Ag濃度59.4質量%の銀微粒子分散液を得た。
【0040】
このようにして得られた銀微粒子分散液をメンブレンフィルタと超遠心分離機により固液分離し、液体中のアンモニア濃度と硝酸濃度をイオンクロマトグラフにより測定したところ、アンモニア濃度は0.4質量%であり、硝酸濃度は1.0質量%であった。また、銀微粒子分散液に硝酸を過剰に添加して加熱し、完全に金属成分を溶解させた後、n−ヘキサンで4回抽出し、その後、ガスクロマトグラフ質量分析計(ヒューレット・パッカード社製)により、有機酸(ヘプタン酸)を定量したところ、銀に対するヘプタン酸の量は5質量%であった。なお、以下に示す実施例2〜12および比較例1〜7において、銀微粒子分散液の液中のアンモニア濃度および硝酸濃度と銀に対するヘプタン酸の量は上記の値とほぼ同じ値(それぞれ0.4質量%、1.0質量%および5質量%)であった。
【0041】
また、この銀微粒子分散液のpHを(JIS Z8802(1984年度版)のpH測定法に準拠した)pH計(株式会社堀場製作所製のハンディーpH/DoメータD−55)で測定したところ、pH5.84であった。なお、このpH測定前にpH6.86とpH4.01の標準液で2点校正を行い、pH測定は、よく攪拌した後に30秒〜1分程度静置した後に検査端としてpH電極(株式会社堀場製作所製の9611−10D)を銀微粒子分散液に浸けて行った。
【0042】
また、この銀微粒子分散液の粘度をレオメーター(HAAKE社製のReostress600C、コーンはC35/2)を使用して11.7(1/s)、108(1/s)および1000(1/s)で測定したところ、それぞれ383mPa・s、143mPa・s、102mPa・sであり、チキソ比(={11.7(1/s)のときの粘度}/{1000(1/s)のときの粘度})は4であった。また、この銀微粒子分散液のラメラ長をラメラ長測定子として線材直径0.40mm、リング直径14.4mmの白金リングを使用し、自動表面張力計(協和界面科学株式会社製のDY−300)により、ステージ上下速度1.0mm/秒、プリウェットステージ上下速度1.0mm/秒、プリウェット浸漬距離2.50mm、プリウェット浸漬時間5秒で測定したところ、6回の測定値の平均値が4.5mm(標準偏差0.15、変動係数3.4%)であった。
【0043】
次に、簡易フレキソ印刷機(RK Print Coat Instruments Ltd.製のフレキソループ100)と、フレキソ印刷版(株式会社渡辺護三堂製、印刷版の材質は旭化成株式会社製の板状感光性樹脂AWP グレードDEF、表面加工150ライン、96DOT%)を使用し、アニロックス容量20cc/m
2(150線/インチ)、印刷速度20m/分として、紙の基材(三菱製紙株式会社製のDFカラーM70、表面粗さ1.6μm)上に、
図1Aに示す形状および大きさの塗膜(長さ30mm×幅9.5mmの領域内に線幅0.5mm、幅方向間隔0.5mmで折り返した塗膜)を形成するように、基材を(矢印Aで示す方向に)移動させて、上記の銀微粒子分散液を(矢印Bで示す印刷方向に)塗布した。
【0044】
このように銀微粒子分散液を塗布した後に、
図1Bに斜線で示す領域に形成された(銀微粒子分散液の)水かき状の薄膜の長さLを測定して、その平均値を求めたところ、1.9mmであった。
【0045】
また、上記の銀微粒子分散液を上記と同様の方法により
図2に示す形状(全長32.0mm、全幅18.5mm、線幅0.5mmのRFIDアンテナ10の形状)に印刷した後、ホットプレート上において140℃で30秒間熱処理して焼成することによって、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製した。
【0046】
この銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。
【0047】
銀導電膜の膜厚は、レーザーマイクロスコープ(KEYENCE社製の型式VK−9700)を用いて、銀導電膜が形成された基材の表面と銀導電膜の表面との高低差を100箇所測定し、平均値を算出することによって求めた。その結果、銀導電膜の膜厚は2.0μmであった。
【0048】
銀導電膜のライン抵抗(
図3に示すDとEの間の電気抵抗)をテスター(CUSTOM社製の型式CDM−03D)により測定したところ、33Ωであった。
【0049】
銀導電膜の体積抵抗率は、銀導電膜の膜厚、幅(0.5mm)、長さ(237.4mm)と電気抵抗から求めた。その結果、銀導電膜の体積抵抗率は14.0μΩ・cmであった。
【0050】
[実施例2]
表面調整剤に代えてシリコーン消泡剤(信越化学株式会社製のKM−7750)を使用し、この消泡剤0.02g(Agインクに対して0.01質量%)とpH調整前に得られた上澄み液5.35gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、Ag濃度59.4質量%の銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.85であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で295mPa・s、108(1/s)で129mPa・s、1000(1/s)で80mPa・sであり、チキソ比は4であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が1.1mm(標準偏差0.12、変動係数10.5%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は0mmであった。
【0051】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.3μm、ライン抵抗は29Ω、体積抵抗率は13.9μΩ・cmであった。
【0052】
[実施例3]
消泡剤の添加量を0.04g(Agインクに対して0.02質量%)とし、pH調整前に得られた上澄み液の添加量を5.35gとした以外は、実施例2と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.85であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で358mPa・s、108(1/s)で169mPa・s、1000(1/s)で104mPa・sであり、チキソ比は3であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が1.0mm(標準偏差0.07、変動係数6.9%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は0mmであった。
【0053】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.3μm、ライン抵抗は29Ω、体積抵抗率は14.1μΩ・cmであった。
【0054】
[実施例4]
消泡剤の添加量を0.41g(Agインクに対して0.20質量%)とし、pH調整前に得られた上澄み液の添加量を4.98gとした以外は、実施例2と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.85であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で358mPa・s、108(1/s)で169mPa・s、1000(1/s)で105mPa・sであり、チキソ比は3であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が0.9mm(標準偏差0.11、変動係数13.0%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は0mmであった。
【0055】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.3μm、ライン抵抗は30Ω、体積抵抗率は14.4μΩ・cmであった。
【0056】
[実施例5]
表面調整剤に代えてシリコーン消泡剤(信越化学株式会社製のKM−90)を使用し、この消泡剤0.02g(Agインクに対して0.01質量%)とpH調整前に得られた上澄み液5.35gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.85であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で311mPa・s、108(1/s)で134mPa・s、1000(1/s)で82mPa・sであり、チキソ比は4であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が1.3mm(標準偏差0.18、変動係数14.0%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は0mmであった。
【0057】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.1μm、ライン抵抗は31Ω、体積抵抗率は13.8μΩ・cmであった。
【0058】
[実施例6]
消泡剤の添加量を0.04g(Agインクに対して0.02質量%)とし、pH調整前に得られた上澄み液の添加量を5.35gとした以外は、実施例5と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.85であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で340mPa・s、108(1/s)で164mPa・s、1000(1/s)で103mPa・sであり、チキソ比は3であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が1.3mm(標準偏差0.13、変動係数9.9%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は0mmであった。
【0059】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は1.8μm、ライン抵抗は35Ω、体積抵抗率は13.6μΩ・cmであった。
【0060】
[実施例7]
消泡剤の添加量を0.41g(Agインクに対して0.20質量%)とし、pH調整前に得られた上澄み液の添加量を4.98gとした以外は、実施例5と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.85であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で308mPa・s、108(1/s)で163mPa・s、1000(1/s)で108mPa・sであり、チキソ比は3であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が1.0mm(標準偏差0.10、変動係数9.6%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は0mmであった。
【0061】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は1.9μm、ライン抵抗は33Ω、体積抵抗率は13.4μΩ・cmであった。
【0062】
[比較例1]
表面調整剤を添加せず、pH調整前に得られた上澄み液の添加量を5.39gとした以外は、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.85であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で420mPa・s、108(1/s)で191mPa・s、1000(1/s)で112mPa・sであり、チキソ比は4であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が5.3mm(標準偏差0.08、変動係数1.6%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は25mmであった。
【0063】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.1μm、ライン抵抗は33Ω、体積抵抗率は14.8μΩ・cmであった。
【0064】
[実施例8]
表面調整剤としてポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとポリエーテルの混合物からなる表面調整剤(BYK社製のBYK331)(不揮発成分を98質量%以上含み、表面張力低下能力が中程度)を使用し、この表面調整剤0.41g(Agインクに対して0.20質量%)とpH調整前に得られた上澄み液4.98gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.83であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で384mPa・s、108(1/s)で155mPa・s、1000(1/s)で111mPa・sであり、チキソ比は3であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が4.6mm(標準偏差0.12、変動係数2.6%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は2.2mmであった。
【0065】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.2μm、ライン抵抗は34Ω、体積抵抗率は15.4μΩ・cmであった。
【0066】
[実施例9]
表面調整剤の添加量を0.62g(Agインクに対して0.30質量%)とし、pH調整前に得られた上澄み液の添加量を4.77gとした以外は、実施例8と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.85であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で737mPa・s、108(1/s)で341mPa・s、1000(1/s)で200mPa・sであり、チキソ比は4であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が4.5mm(標準偏差0.09、変動係数2.1%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は4.2mmであった。
【0067】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.1μm、ライン抵抗は33Ω、体積抵抗率は14.4μΩ・cmであった。
【0068】
[実施例10]
表面調整剤の添加量を1.03g(Agインクに対して0.50質量%)とし、pH調整前に得られた上澄み液の添加量を4.36gとした以外は、実施例8と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.85であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で5434mPa・s、108(1/s)で894mPa・s、1000(1/s)で269mPa・sであり、チキソ比は20であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が4.5mm(標準偏差0.10、変動係数2.3%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は3.0mmであった。
【0069】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.0μm、ライン抵抗は34Ω、体積抵抗率は14.0μΩ・cmであった。
【0070】
[比較例2]
表面調整剤の添加量を0.10g(Agインクに対して0.05質量%)とし、pH調整前に得られた上澄み液の添加量を5.28gとした以外は、実施例8と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.85であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で312mPa・s、108(1/s)で158mPa・s、1000(1/s)で103mPa・sであり、チキソ比は3であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が4.9mm(標準偏差0.15、変動係数3.1%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は17mmであった。
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.1μm、ライン抵抗は33Ω、体積抵抗率は14.7μΩ・cmであった。
【0071】
[比較例3]
表面調整剤の添加量を0.21g(Agインクに対して0.10質量%)とし、pH調整前に得られた上澄み液の添加量を5.18gとした以外は、実施例8と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.85であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で312mPa・s、108(1/s)で171mPa・s、1000(1/s)で116mPa・sであり、チキソ比は3であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が4.8mm(標準偏差0.06、変動係数1.3%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は10mmであった。
【0072】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.1μm、ライン抵抗は33Ω、体積抵抗率は14.1μΩ・cmであった。
【0073】
[比較例4]
表面調整剤の添加量を1.54g(Agインクに対して0.75質量%)とし、pH調整前に得られた上澄み液の添加量を3.85gとした以外は、実施例8と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.85であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で30940mPa・s、108(1/s)で1891mPa・s、1000(1/s)で335mPa・sであり、粘度が非常に高く、チキソ比は92であった。また、ラメラ長は、粘度が高過ぎて測定することができなかった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は2.7mmであった。
【0074】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.1μm、ライン抵抗は30Ω、体積抵抗率は13.3μΩ・cmであった。
【0075】
[実施例11]
表面調整剤としてポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとポリエーテルの混合物からなる表面調整剤(BYK社製のBYK333)(不揮発成分を97質量%以上含み、表面張力低下能力が高い)を使用し、この表面調整剤0.62g(Agインクに対して0.30質量%)とpH調整前に得られた上澄み液4.77gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.83であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で392mPa・s、108(1/s)で167mPa・s、1000(1/s)で115mPa・sであり、チキソ比は3であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が3.2mm(標準偏差0.40、変動係数12.5%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は0mmであった。
【0076】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.2μm、ライン抵抗は34Ω、体積抵抗率は15.9μΩ・cmであった。
【0077】
[実施例12]
表面調整剤の添加量を1.03g(Agインクに対して0.50質量%)とし、pH調整前に得られた上澄み液の添加量を4.36gとした以外は、実施例11と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.85であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で1593mPa・s、108(1/s)で397mPa・s、1000(1/s)で182mPa・sであり、チキソ比は9であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が1.9mm(標準偏差0.09、変動係数4.6%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は0mmであった。
【0078】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.4μm、ライン抵抗は31Ω、体積抵抗率は15.6μΩ・cmであった。
【0079】
[比較例5]
表面調整剤の添加量を1.54g(Agインクに対して0.75質量%)とし、pH調整前に得られた上澄み液の添加量を3.85gとした以外は、実施例11と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.85であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で18240mPa・s、108(1/s)で2041mPa・s、1000(1/s)で329mPa・sであり、粘度が非常に高く、チキソ比は55であった。また、ラメラ長は、粘度が高過ぎて測定することができなかった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は0mmであった。
【0080】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.1μm、ライン抵抗は31Ω、体積抵抗率は13.9μΩ・cmであった。
【0081】
[比較例6]
表面調整剤として76質量%のポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンと24質量%のポリグリコールとからなる表面調整剤(BYK社製のBYK348)(不揮発成分を96質量%以上含み、表面張力低下能力が高い)を使用し、この表面調整剤0.41g(Agインクに対して0.20質量%)とpH調整前に得られた上澄み液4.98gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.84であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で347mPa・s、108(1/s)で127mPa・s、1000(1/s)で96mPa・sであり、チキソ比は4であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が5.1mm(標準偏差0.16、変動係数3.2%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は26mmであった。
【0082】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は2.0μm、ライン抵抗は33Ω、体積抵抗率は13.9μΩ・cmであった。
【0083】
[比較例7]
表面調整剤として85質量%のポリエーテル変性シロキサンと15質量%のポリエーテルとからなる表面調整剤(BYK社製のBYK349)(不揮発成分を94質量%以上含み、表面張力低下能力が高い)を使用し、この表面調整剤0.41g(Agインクに対して0.20質量%)とpH調整前に得られた上澄み液4.98gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を作製し、pH、粘度およびラメラ長を測定した。その結果、銀微粒子分散液のpHは5.84であった。また、銀微粒子分散液の粘度は、11.7(1/s)で347mPa・s、108(1/s)で133mPa・s、1000(1/s)で94mPa・sであり、チキソ比は4であった。また、ラメラ長は6回の測定値の平均値が4.9mm(標準偏差0.10、変動係数2.1%)であった。また、実施例1と同様の方法により、銀微粒子分散液を塗布して、水かき状の薄膜の長さLを測定したところ、その平均値は24mmであった。
【0084】
また、この銀微粒子分散液を使用して、実施例1と同様の方法により、銀導電膜からなるRFIDアンテナを作製し、銀導電膜の膜厚および電気抵抗(ライン抵抗)を測定するとともに、銀導電膜の体積抵抗率を算出した。その結果、銀導電膜の膜厚は1.9μm、ライン抵抗は34Ω、体積抵抗率は13.9μΩ・cmであった。
【0085】
実施例および比較例の銀微粒子分散液の組成および特性とそれらの銀微粒子分散液を用いて作製した銀導電膜の特性を表1〜表3に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】