特許第6355318号(P6355318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクサイエンスの特許一覧

<>
  • 特許6355318-断面加工観察方法及び装置 図000002
  • 特許6355318-断面加工観察方法及び装置 図000003
  • 特許6355318-断面加工観察方法及び装置 図000004
  • 特許6355318-断面加工観察方法及び装置 図000005
  • 特許6355318-断面加工観察方法及び装置 図000006
  • 特許6355318-断面加工観察方法及び装置 図000007
  • 特許6355318-断面加工観察方法及び装置 図000008
  • 特許6355318-断面加工観察方法及び装置 図000009
  • 特許6355318-断面加工観察方法及び装置 図000010
  • 特許6355318-断面加工観察方法及び装置 図000011
  • 特許6355318-断面加工観察方法及び装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355318
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】断面加工観察方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20180702BHJP
   H01J 37/252 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   H01J37/317 D
   H01J37/252 A
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-228112(P2013-228112)
(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2014-116292(P2014-116292A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2016年7月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-251589(P2012-251589)
(32)【優先日】2012年11月15日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上本 敦
(72)【発明者】
【氏名】満 欣
(72)【発明者】
【氏名】麻畑 達也
【審査官】 橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−134967(JP,A)
【文献】 特開2011−187185(JP,A)
【文献】 特開2004−349118(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/169323(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0212583(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/070727(WO,A1)
【文献】 特開平10−055774(JP,A)
【文献】 特開2004−191187(JP,A)
【文献】 特開2011−185845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/317
H01J 37/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面加工観察装置を用いて、イオンビームを試料に照射し、断面を形成する断面加工工程と、断面に電子ビームを照射し、断面の観察像を取得する断面観察工程と、を繰り返し施し、所定の間隔で互いに略平行に形成された複数の断面の観察像を取得する断面加工観察方法において、
前記断面に前記所定の間隔内の前記試料に侵入可能な前記電子ビームを照射することによりEDS測定を施し、特定の物質のX線を検出した場合、前記物質が前記断面に露出する前に前記断面加工観察装置が自動的に前記物質の複数の断面の観察像を取得するために前記イオンビームの照射条件を変更し、前記物質の断面加工観察を施し、
前記照射条件の変更は、前記間隔を小さくする変更である断面加工観察方法。
【請求項2】
前記照射条件の変更は、前記イオンビームの照射領域を小さくする変更である請求項1に記載の断面加工観察方法。
【請求項3】
前記照射条件の変更は、前記イオンビームの電流量を小さくする変更である請求項1または2に記載の断面加工観察方法。
【請求項4】
前記照射条件を変更し、前記物質の断面加工観察が終了した場合、前記照射条件を変更前の照射条件に変更し、前記試料の断面加工観察を施す請求項1から3のいずれか1項に記載の断面加工観察方法。
【請求項5】
前記特定の物質のX線を検出した場合、前記断面加工観察装置の表示部に前記特定の物質のX線を検出したことを表示する請求項1から4のいずれか1項に記載の断面加工観察方法。
【請求項6】
断面加工観察装置を用いて、イオンビームを試料に照射し、断面を形成する断面加工工程と、断面に電子ビームを照射し、断面の観察像を取得する断面観察工程と、を繰り返し施し、所定の間隔で互いに略平行に形成された複数の断面の観察像を取得する断面加工観察方法において、
前記断面に前記所定の間隔内の前記試料に侵入可能な前記電子ビームを照射することによりEDS測定を施し、予め特定された物質以外の特定外物質のX線を検出した場合、前記特定外物質が前記断面に露出する前に前記断面加工観察装置が自動的に前記特定外物質の複数の断面の観察像を取得するために前記イオンビームの照射条件を変更し、前記特定外物質の断面加工観察を施し、
前記照射条件の変更は、前記間隔を小さくする変更である断面加工観察方法。
【請求項7】
前記照射条件の変更は、前記イオンビームの照射領域を小さくする変更である請求項6に記載の断面加工観察方法。
【請求項8】
前記照射条件の変更は、前記イオンビームの電流量を小さくする変更である請求項6または7に記載の断面加工観察方法。
【請求項9】
前記照射条件を変更し、前記特定外物質の断面加工観察が終了した場合、前記照射条件を変更前の照射条件に変更し、前記試料の断面加工観察を施す請求項6から8のいずれか1項に記載の断面加工観察方法。
【請求項10】
前記特定外物質のX線を検出した場合、前記断面加工観察装置の表示部に前記特定外物質のX線を検出したことを表示する請求項6から9のいずれか1項に記載の断面加工観察方法。
【請求項11】
試料を載置する試料台と、
前記試料にイオンビームを照射するイオンビーム鏡筒と、
前記試料に電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒と、
前記試料から発生する二次電子を検出する二次電子検出器と、
前記試料から発生するX線を検出するEDS検出器と、
前記イオンビームを前記試料に照射し、断面を形成する断面加工工程と、前記断面に前記電子ビームを照射し、前記断面から発生する前記二次電子または前記X線に基づく前記断面の観察像を取得する断面観察工程と、を繰り返し施し、所定の間隔で互いに略平行に形成された複数の断面の観察像を取得する断面加工観察工程の実行中に、前記電子ビーム鏡筒が前記断面に前記所定の間隔内の前記試料に侵入可能な前記電子ビームを照射することにより前記EDS検出器で特定の物質のX線を検出した場合、前記物質が前記断面に露出する前に前記イオンビームの照射条件を自動的に変更する制御部と、を備え、
前記照射条件の変更は、前記間隔を小さくする変更である断面加工観察装置。
【請求項12】
前記照射条件の変更は、前記イオンビームの照射領域を小さくする変更である請求項11に記載の断面加工観察装置。
【請求項13】
前記照射条件の変更は、前記イオンビームの電流量を小さくする変更である請求項11または12に記載の断面加工観察装置。
【請求項14】
前記照射条件を変更し、前記物質の断面加工観察が終了した場合、前記照射条件を変更前の照射条件に変更し、前記試料の断面加工観察を施す請求項11から13のいずれか1項に記載の断面加工観察装置。
【請求項15】
前記特定の物質のX線を検出した場合、前記断面加工観察装置の表示部に前記特定の物質のX線を検出したことを表示する請求項11から14のいずれか1項に記載の断面加工観察装置。
【請求項16】
試料を載置する試料台と、
前記試料にイオンビームを照射するイオンビーム鏡筒と、
前記試料に電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒と、
前記試料から発生する二次電子を検出する二次電子検出器と、
前記試料から発生するX線を検出するEDS検出器と、
前記イオンビームを前記試料に照射し、断面を形成する断面加工工程と、前記断面に前記電子ビームを照射し、前記断面から発生する前記二次電子または前記X線に基づく前記断面の観察像を取得する断面観察工程と、を繰り返し施し、所定の間隔で互いに略平行に形成された複数の断面の観察像を取得する断面加工観察工程の実行中に、前記電子ビーム鏡筒が前記断面に前記所定の間隔内の前記試料に侵入可能な前記電子ビームを照射することにより前記EDS検出器で予め特定された物質以外の特定外物質のX線を検出した場合、前記特定外物質が前記断面に露出する前に前記イオンビームの照射条件を自動的に変更する制御部と、を備え、
前記照射条件の変更は、前記間隔を小さくする変更である断面加工観察装置。
【請求項17】
前記照射条件の変更は、前記イオンビームの照射領域を小さくする変更である請求項16に記載の断面加工観察装置。
【請求項18】
前記照射条件の変更は、前記イオンビームの電流量を小さくする変更である請求項16または17に記載の断面加工観察装置。
【請求項19】
前記照射条件を変更し、前記特定外物質の断面加工観察が終了した場合、前記照射条件を変更前の照射条件に変更し、前記試料の断面加工観察を施す請求項16から18のいずれか1項に記載の断面加工観察装置。
【請求項20】
前記特定外物質のX線を検出した場合、前記断面加工観察装置の表示部に前記特定外物質のX線を検出したことを表示する請求項16から19のいずれか1項に記載の断面加工観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビームで形成した断面を電子顕微鏡で観察する断面加工観察に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどの内部構造や欠陥の解析手法として、集束イオンビームにより試料の断面加工を行い、所望の構造や欠陥を含む断面を露出させ、その断面を走査電子顕微鏡で観察する断面加工観察方法が知られている。この手法によれば、試料内部にある所望の観察対象をピンポイントで露出させることができるので、迅速に構造や欠陥を観察することができる。
【0003】
さらに、断面加工と断面観察とを繰り返し実施し、取得した複数の断面観察像を組み合わせることにより断面加工した領域の三次元画像を構築する方法が開示されている(特許文献1参照)。この方法によれば、観察対象の三次元画像を構築することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−270073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、半導体デバイスの高密度化や寸法の縮小によりデバイスパターンが微細になったため、微小な観察対象の断面加工観察が求められている。微小な観察対象を含む試料を断面加工観察し分析するためには、断面加工のスライス間隔を小さくし、断面数を多くしなければならない。
しかしながら、断面加工観察工程において断面観察に時間がかかるため、断面数が多いと工程にかかる時間が増大するという問題があった。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、微小な観察対象を含む試料であってもスループットの高い断面加工観察方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明においては、微小な観察対象を含む試料に対し、観察対象の手前から一定のスライス間隔で断面加工観察する。この断面観察においてEDS測定を行い、観察対象の物質が検出された場合、スライス間隔を小さくし、観察対象の断面加工観察を行う。これにより、スライス間隔に対し観察対象が小さい場合でも観察対象の分析に十分な断面を効率よく取得することができる。
【0008】
観察対象の物質は予め特定された物質でもよいし、予め特定された物質以外の特定外物質でもよい。
【0009】
第1の発明は、断面加工観察装置を用いて、イオンビームを試料に照射し、断面を形成する断面加工工程と、断面に電子ビームを照射し、断面の観察像を取得する断面観察工程と、を繰り返し施し、所定の間隔で互いに略平行に形成された複数の断面の観察像を取得する断面加工観察方法であって、前記断面のEDS測定を施し、特定の物質のX線を検出した場合、前記物質の複数の断面の観察像を取得するために前記イオンビームの照射条件を変更し、前記物質の断面加工観察を施す。
【0010】
第2の発明は、断面加工観察装置を用いて、イオンビームを試料に照射し、断面を形成する断面加工工程と、断面に電子ビームを照射し、断面の観察像を取得する断面観察工程と、を繰り返し施し、所定の間隔で互いに略平行に形成された複数の断面の観察像を取得する断面加工観察方法であって、前記断面のEDS測定を施し、予め特定された物質以外の特定外物質のX線を検出した場合、前記特定外物質の複数の断面の観察像を取得するために前記イオンビームの照射条件を変更し、前記特定外物質の断面加工観察を施す。
【0011】
第3の発明は、試料を載置する試料台と、前記試料にイオンビームを照射するイオンビーム鏡筒と、前記試料に電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒と、前記試料から発生する二次電子を検出する二次電子検出器と、前記試料から発生するX線を検出するEDS検出器と、前記イオンビームを前記試料に照射し、断面を形成する断面加工工程と、前記断面に前記電子ビームを照射し、前記断面から発生する前記二次電子または前記X線に基づく前記断面の観察像を取得する断面観察工程と、を繰り返し施し、所定の間隔で互いに略平行に形成された複数の断面の観察像を取得する断面加工観察工程の実行中に、前記EDS検出器で特定の物質のX線を検出した場合、前記イオンビームの照射条件を変更する制御部と、を備える断面加工観察装置である。
【0012】
第4の発明は、試料を載置する試料台と、前記試料にイオンビームを照射するイオンビーム鏡筒と、前記試料に電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒と、前記試料から発生する二次電子を検出する二次電子検出器と、前記試料から発生するX線を検出するEDS検出器と、前記イオンビームを前記試料に照射し、断面を形成する断面加工工程と、前記断面に前記電子ビームを照射し、前記断面から発生する前記二次電子または前記X線に基づく前記断面の観察像を取得する断面観察工程と、を繰り返し施し、所定の間隔で互いに略平行に形成された複数の断面の観察像を取得する断面加工観察工程の実行中に、前記EDS検出器で予め特定された物質以外の特定外物質のX線を検出した場合、前記イオンビームの照射条件を変更する制御部と、を備える断面加工観察装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る断面加工観察方法によれば、微小な観察対象を含む試料であっても、効率よく複数の断面の観察像を取得し、試料を分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る実施形態の断面加工観察装置の構成図である。
図2】本発明に係る実施形態の断面加工観察装置の制御部の構成図である。
図3】(a)本発明に係る実施形態の試料の説明図である。(b)、(c)本発明に係る実施形態の断面加工観察の説明図である。
図4】本発明に係る実施形態の断面加工観察の説明図である。
図5】(a)、(b)本発明に係る実施形態の断面加工観察の説明図である。
図6】本発明に係る実施形態のフローチャートである。
図7】本発明に係る実施形態の断面加工観察の説明図である。
図8】本発明に係る実施形態の断面加工観察装置の構成図である。
図9】(a)、(b)本発明に係る実施形態の断面加工観察の説明図である。
図10】本発明に係る実施形態のフローチャートである。
図11】本発明に係る実施形態の断面加工観察の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る断面加工観察方法及び装置の実施形態について説明する。本実施形態の断面加工観察装置は、断面加工観察においてEDS(Energy Dispersive x-ray Spectrometry;エネルギー分散型X線分光法)測定を行い取得したX線に基づく断面の物質と、予め記憶した観察対象の物質とが一致した場合に断面加工観察の条件を変更する制御部を備える。これにより、断面加工観察のスライス幅等の断面加工条件を微小な観察対象の断面加工観察が可能な条件に変更し、観察対象の断面加工観察を行う。
【0016】
図1に示すように、断面加工観察装置は、イオンビーム鏡筒1と、電子ビーム鏡筒2と、試料室10を備える。イオンビーム鏡筒1と、電子ビーム鏡筒2は、試料室10内に収容され試料台5に載置された試料6上の同一位置にイオンビーム3と電子ビーム4を照射できるように配置されている。試料台5はXYZ方向の移動及び傾斜と回転が可能であり、それぞれのビームに対する試料6の配置を調整することができる。
【0017】
また、断面加工観察装置は、イオンビーム制御部11と電子ビーム制御部12を備える。イオンビーム制御部11は、イオンビーム鏡筒1に照射信号を送信し、イオンビーム鏡筒1からイオンビーム3を照射させる。電子ビーム制御部12は、電子ビーム鏡筒2に照射信号を送信し、電子ビーム鏡筒2から電子ビーム4を照射させる。
【0018】
さらに、断面加工観察装置は、二次電子検出器7とEDS検出器8を備える。二次電子検出器7は、イオンビーム3または電子ビーム4を試料6に照射し、試料6から発生した二次電子を検出する。また、EDS検出器8は、電子ビーム4を試料6に照射し、試料6から発生したX線を検出する。
【0019】
また、断面加工観察装置は、観察像を形成する像形成部13と観察像を表示する表示部16を備える。像形成部13は、イオンビーム3を走査させる信号と、二次電子検出器7で検出した二次電子の信号とからSIM(Scanning Ion Microscope;走査型イオン顕微鏡)像を形成する。表示部16はSIM像を表示することができる。また、像形成部13は、電子ビーム4を走査させる信号と、二次電子検出器7で検出した二次電子の信号とからSEM(Scanning Electron Microscope;走査型電子顕微鏡)像を形成する。表示部16はSEM像を表示することができる。また、像形成部13は、電子ビーム4を走査させる信号と、EDS検出器8で検出したX線の信号とからEDSマップを形成する。表示部16はEDSマップを表示することができる。ここでEDSマップとは、検出したX線のエネルギーから各電子ビーム照射点における試料6の物質を特定し、電子ビーム4の照射領域の物質の分布を示したものである。
【0020】
さらに、断面加工観察装置は、制御部14と、入力部15を備える。オペレータは装置制御に関する条件を入力部15に入力する。入力部15は、入力された情報を制御部14に送信する。制御部14は、イオンビーム制御部11、電子ビーム制御部12、像形成部13に制御信号を送信し、断面加工観察装置を制御する。
【0021】
次に、制御部14について、図2を用いて説明する。制御部14は、加工条件記憶部21と、観察条件記憶部22と、断面加工観察制御部23と、特定物質記憶部24と、観察像記憶部25と、特定物質判定部26と、三次元像構築部27と、を備える。
【0022】
加工条件記憶部21は、スライス加工の間隔と、イオンビーム3の加工領域の位置とサイズの設定値を記憶する。加工条件記憶部21は、大きな観察対象や微小な観察対象を見つけるためのスライス加工用のスライス加工の間隔、加工領域のサイズの設定値と、微小な観察対象の分析用のスライス加工の間隔、加工領域のサイズの設定値と、を記憶する。また、加工条件記憶部21は、イオンビーム3の加速電圧と、電流量の設定値を記憶する。低い加速電圧で加速したイオンビーム3を用いると試料に形成されるダメージ層を小さくすることができ、また、電流量の小さいイオンビーム3を用いると拡がりが小さいビーム形状になるので急峻な断面を形成できるので微小な観察対象を加工する場合に好ましい。よって、加工条件記憶部21は、大きな観察対象や微小な観察対象を見つけるためのスライス加工用の高い加速電圧と大きい電流量の設定値と、微小な観察対象の分析用の低い加速電圧と小さい電流量の設定値と、を記憶する。
【0023】
観察条件記憶部22は、観察領域の位置とサイズと、電子ビーム4の加速電圧と、電流量の設定値を記憶する。低い加速電圧で加速した電子ビーム4を用いると電子ビームの侵入長が小さいため断面付近のみの情報を反映した観察像を取得することができ、また、電流量の小さいイオンビーム3を用いると拡がりが小さいビーム形状になるので分解能の高い観察像を取得することできるので微小な観察対象を観察する場合に好ましい。一方、加速電圧が高いと、電子ビームの侵入長が大きいため、試料内部の情報を反映した観察像が取得でき、微小な観察対象を見つけやすい。よって、観察条件記憶部22は、大きな観察対象や微小な観察対象を見つけるための断面観察用の高い加速電圧と大きい電流量の設定値と、微小な観察対象の分析用の低い加速電圧と小さい電流量の設定値と、を記憶する。
【0024】
また、観察条件記憶部22は、観察像の種類を記憶する。観察像の種類には、SEM像と、SIM像と、EDS像がある。SEM像、SIM像を取得する場合は、二次電子検出器7で二次電子を検出し、像形成部13でSEM像、SIM像を形成する。EDS像を取得する場合は、EDS検出器8でX線を検出し、像形成部13でEDSマップを形成する。
【0025】
特定物質記憶部24は、所望の観察対象の物質(特定物質)の元素を記憶する。微小な観察対象を見つけるための断面加工観察でEDS測定により当該元素が測定された場合、断面加工観察の条件を変更する。
【0026】
オペレータが入力部15から上記の設定値及び元素を入力すると、断面加工観察装置はそれぞれの記憶部に設定値及び元素を記憶させる。記憶した加工条件と観察条件の設定値は、断面加工観察制御部23で読み出される。また、当該元素は、特定物質判定部26で読み出される。
【0027】
断面加工観察制御部23は、イオンビーム3の照射条件、つまり加工条件をイオンビーム鏡筒1に送信し、イオンビーム鏡筒1から試料6に向けイオンビーム3を照射させ、試料6を加工する。また、断面加工観察制御部23は、電子ビーム4の照射条件、つまり観察条件を、電子ビーム鏡筒2に送信し、電子ビーム鏡筒2から電子ビーム4を試料6に向け照射し、試料6から発生した二次電子やX線から試料6の観察像を取得する。
【0028】
また、断面加工観察制御部23は、取得する観察像の種類によって二次電子検出器7またはEDS検出器8を制御し、二次電子またはX線を検出させる。検出された二次電子またはX線に基づき、像形成部13で観察像が形成される。
【0029】
観察像記憶部25は、形成された観察像を記憶する。表示部16は観察像記憶部25に記憶された観察像を表示する。また、後述する三次元像を構築する場合は、三次元像構築部27が観察像記憶部25に記憶された観察像を読み出し、三次元像を構築する。表示部16は、構築された三次元像を表示する。
【0030】
特定物質判定部26は、断面加工観察の実行中に、予め記憶された物質(特定物質)の元素を特定物質記憶部24から読み出すとともに、当該断面加工観察で取得したEDSマップを観察像記憶部25から読み出し、EDSマップに当該元素が現れた場合、断面加工観察制御部23に信号を送信する。断面加工観察制御部23は当該信号を受け、後述する照射条件の変更を行う。
【0031】
次に、断面加工観察について図3を用いて説明する。図3(a)は、半導体ウエハの試料6を示した図であり、試料6は内部に微細なデバイス構造を有する。断面加工観察では、試料6内部のデバイス構造や欠陥などの所望の観察対象の断面観察像を取得し、分析する。観察対象が微小である場合、試料台の位置決め精度やデバイス作製の精度との関係から試料6内のどの位置に存在するか正確に把握することは困難である。そこで、観察対象が存在すると思われる位置の近傍にイオンビーム3を照射しエッチング加工により加工溝6aを形成し、観察対象が存在すると思われる位置に向け加工溝6aを広げていくように断面加工の加工領域を設定する。
【0032】
図3(b)は加工溝6a周辺の拡大図であり、図3(c)は図3(b)のA−A断面図である。加工溝6aは、断面30sに電子ビーム4を照射できるように、スロープ形状となっている。断面30sから加工進行方向30dに加工溝6aを広げるようにスライス加工の加工領域31、32、33を設定する。加工領域31、32、33のスライス加工のスライス間隔D1は一定である。
【0033】
次に、断面加工と断面観察を開始する。加工領域31をイオンビーム3aでエッチング加工し、露出した断面31sに電子ビーム4を照射し、断面31sの観察像を取得する。次に、加工領域32をイオンビーム3bでエッチング加工し、露出した断面32sに電子ビーム4を照射し、断面32sの観察像を取得する。次に、加工領域33をイオンビーム3cでエッチング加工し、露出した断面33sに電子ビーム4を照射し、断面33sの観察像を取得する。このように、断面加工と断面観察を繰り返し施し、複数の断面の観察像を取得する。
【0034】
次に、断面加工観察において、微小な観察対象に断面加工観察を施し、観察対象の三次元像を構築する実施例と、微小な観察対象を含む試料の断面加工観察を自動で実施する実施例について説明する。
【0035】
<実施例1>
取得した複数の観察像から三次元像を構築する断面加工観察方法の実施例について説明する。
図4は微小な観察対象である欠陥42を有する試料6を示した図である。試料6には欠陥42より大きいデバイスの構造物41も有する。欠陥42を分析するために試料6の断面加工観察を施す。
【0036】
まず、欠陥42が存在すると思われる位置の周辺に加工溝6aをイオンビーム3のエッチング加工で形成する。次に、断面加工観察の条件設定を行う。
条件設定では、欠陥42を見つけるための加工条件として、スライス加工のスライス間隔D2を50nmとして第一の加工領域43の位置とサイズを設定する。また、観察条件として、電子ビーム4の加速電圧を5kVに設定する。また、観察対象の物質の元素として、炭素または鉄を設定する。
【0037】
加速電圧5kVで加速した電子ビーム4で断面観察すると試料6への電子ビームの侵入長が50nm程度である。そこで、スライス間隔D2を50nmとし、断面に電子ビーム4を照射すると、次にスライス加工される範囲、つまり、スライス間隔D2の範囲で電子ビーム4が入射されるので、この範囲に欠陥が存在する場合は欠陥42のX線を検出することができる。これにより欠陥42の大きさがスライス間隔50nm以下であっても、スライス間隔50nmの断面加工観察で欠陥42を見つけることができる。
また、欠陥42を断面加工観察するための加工条件として、スライス加工のスライス間隔を5nmに設定する。これにより欠陥42に対し、複数の断面を形成することができる。
【0038】
次に、欠陥42を見つけるための断面加工観察を開始する。第一の加工領域43にイオンビーム3を照射し、スライス加工を施す。次にスライス加工で形成された断面に電子ビーム4を照射し、発生するX線をEDS検出器8で検出する。このとき、半導体デバイスである試料6からデバイスを構成する物質であるシリコン、酸素、アルミニウム、銅などのX線が検出される。像形成部13は、電子ビーム4の照射位置と検出されたX線に基づき、電子ビーム4の照射領域の物質の分布であるEDSマップを形成する。このスライス加工とEDSマップ形成を繰り返し実行する。
そして、EDSマップに欠陥42の物質である炭素や鉄が現れた場合、断面加工観察制御部23は欠陥42を断面加工観察するための加工条件を読み出し、加工条件の変更を行う。
【0039】
加工条件の変更は、図5(a)に示すように5nmのスライス間隔D3に変更するものである。また、観察条件として、これまでEDS検出器8でX線を検出したが、ここでは二次電子検出器7で二次電子を検出し、像形成部13でSEM像を形成する条件に変更する。この条件で欠陥42の断面加工観察を実行する。
【0040】
第二の加工領域44にイオンビーム3を照射し、スライス加工を施し、形成した断面のSEM像を取得する。これにより、欠陥42が加工進行方向の長さが60nm程度であったとしても、スライス間隔を5nmでスライス加工しているので12枚程度のSEM像を取得することができるので、欠陥42を十分に分析することができる。
【0041】
また、欠陥42を断面加工観察する加工条件として、加工領域のサイズを小さくし、加工する時間を短縮することも好ましい。欠陥42を見つけるための断面加工観察で欠陥42のX線を検出したEDSマップから欠陥42の位置を確認する。そして、欠陥42の存在する位置周辺のみをスライス加工する加工領域を設定する。
【0042】
図5(b)に示すように、欠陥42を断面加工観察する第三の加工領域45を設定する。第三の加工領域45の加工幅W3は第一の加工領域43の加工幅W2よりも小さいため、加工面積がさらに小さくなり、加工にかかる時間を小さくすることができる。
【0043】
次に、三次元像構築部27により断面加工観察で取得した観察像から三次元像を構築する。三次元像構築部27は観察像記憶部25に蓄積した複数の観察像を取得した順にスライス間隔に対応した間隔で互いに略平行に配列させることにより三次元像を構築する。これにより、観察対象に合わせてスライス間隔を調整し観察像を取得しているので微小な欠陥42も立体的に表示される三次元像を構築することができる。よって、微小な欠陥を含む試料であっても三次元像により分析することができる。
【0044】
<実施例2>
微小な観察対象を含む試料の断面加工観察を自動で実施する断面加工観察方法の実施例について説明する。図6は断面加工観察方法のフローチャートである。図7は、微小な観察対象である欠陥42を有する試料6を示した図である。
【0045】
まず断面加工観察の条件設定を行う(S1)。条件設定では、欠陥42を見つけるための加工観察条件として、スライス加工のスライス間隔D2を50nmとして第一の加工領域43の位置とサイズを設定する。また、観察条件として、電子ビーム4の加速電圧を5kVに設定する。そして、観察対象の物質の元素として、炭素または鉄を設定する。また、欠陥42の加工条件として、スライス加工のスライス間隔を5nmに設定する。また、欠陥42の観察条件として、電子ビーム4の加速電圧を1kVに設定する。
【0046】
次に、断面加工観察を行う(S2)。第一の加工領域43にイオンビーム3を照射し、スライス加工を施す。次にスライス加工で形成された断面に電子ビーム4を照射し、発生するX線をEDS検出器8で検出する。このとき、例えば半導体デバイスである試料6からデバイスを構成する物質であるシリコン、酸素、アルミニウム、銅などのX線が検出される。像形成部13は、電子ビーム4の照射位置と検出されたX線に基づき、電子ビーム4の照射領域の物質の分布であるEDSマップを形成する。このスライス加工とEDSマップ形成を繰り返し実行する。所定のスライス加工数や取得する観察像の枚数に達した場合、加工を終了させる(S3)。
【0047】
そして、断面加工観察の実施中にEDSマップに欠陥42の物質である炭素や鉄が現れた場合(S4)、断面加工観察制御部23は欠陥42の加工観察条件を読み出し、条件変更を行う(S5)。図7の例ではスライス加工のスライス間隔をD2(=50nm)からD3(=5nm)に変更することに相当する。
【0048】
次に、欠陥42の加工観察条件で、第二の加工領域44において断面を形成しながら断面加工観察を行う(S6)。欠陥42の断面加工観察を進め、取得した観察像またはEDSマップから欠陥42が消えた場合、すなわち、欠陥42のスライス加工が終了した場合(S7)、再び条件変更を行う(S8)。図7の例ではスライス加工のスライス間隔をD3(=5nm)からD2(=50nm)に変更することに相当する。この条件変更は、欠陥42を見つけるための加工観察条件に戻す変更であり、新たな欠陥を見つけるために断面加工観察(S2)を再開する。すなわち、第三の加工領域45のスライス加工を行いながら、新たな欠陥を探索する。そして、所定のスライス加工数や取得する観察像の枚数に達した場合、加工を終了させる(S3)。
【0049】
上記の工程を断面加工観察装置により自動で実施することで、微小な観察対象を含む試料であっても、スライス間隔を自動で変更することができるので、効率よく正確に所望の観察像を取得することができる。
【0050】
<実施例3>
上記の断面加工観察装置の代わりに、イオンビーム鏡筒1と電子ビーム鏡筒2の照射軸が直交する配置の断面加工観察装置を用いて断面加工観察方法を実施する実施例について説明する。
【0051】
図8に示すように、イオンビーム鏡筒1と電子ビーム鏡筒2とはそれぞれの照射軸が互いに直交するように配置されている。これにより、小片試料86の向きを変更しなくてもイオンビーム3で加工し露出させた断面に対し、電子ビーム4を垂直に入射することができる。観察像の取得は、観察面に対し直交する方向から電子ビームを照射すると傾斜する方向から照射する場合に比べて分解能の高い観察像を得ることができる。よって、このような装置構成にすることで、断面加工観察において分解能の高い観察像を取得することができる。
【0052】
図9(a)は小片試料86の表面図で、図9(b)は図9(a)のA−A断面図である。電子ビーム4を断面30sに垂直に入射できるように、小片試料86の端部に加工溝86aをイオンビーム3によるエッチング加工で形成する。そして、観察対象が存在すると思われる位置に向け加工溝86aを広げていくように断面加工の加工領域81、82、83を設定する。
【0053】
加工領域81をイオンビーム3aでエッチング加工し、露出した断面81sに電子ビーム4を照射し、断面81sの観察像を取得する。電子ビーム4を断面81sに対し垂直に入射しているので、分解能の高い観察像を取得することができる。次に、加工領域82をイオンビーム3bでエッチング加工し、露出した断面82sに電子ビーム4を照射し、断面82sの観察像を取得する。次に、加工領域83をイオンビーム3cでエッチング加工し、露出した断面83sに電子ビーム4を照射し、断面83sの観察像を取得する。このように、断面加工と断面観察を繰り返し施し、複数の断面の観察像を取得する。
【0054】
本実施例の断面加工観察装置を用いて上述した断面加工観察方法を実施することで、電子ビーム4を観察面に対し斜めに入射する場合に比べて、分解能の高い観察像を取得することができ、より詳細な分析を実施することができる。
【0055】
<実施例4>
上述した実施例においては、特定物質判定部26は、断面加工観察の実行中に、予め記憶された物質(特定物質)の元素を特定物質記憶部24から読みだすとともに、当該断面加工観察で取得したEDSマップを観察像記憶部25から読み出し、EDSマップに当該元素が現れた場合、断面加工観察制御部23に信号を送信する。すなわち、実施例1〜3は、オペレータが予め検出したい元素を把握しており、この予め把握した元素を検出した際の断面加工観察方法に好適に使用される。
【0056】
一方、半導体デバイスのような人工的に製造された装置とは異なる一般的な鉱物等の場合、母材以外に、例えば欠陥としてどのような元素を含むのか明確でないことが多い。このような場合においては、例えば予め把握された母材以外の他の元素を検出することが当該鉱物の欠陥等を容易に検出できる場合が多いと考えられる。そこで、本実施例では予め特定された物質(特定物質)以外の特定外物質(欠陥等)の存在を判定し、断面加工観察を効率的に行うことを狙う。
【0057】
実施例1〜3の場合と同様に、オペレータは特定の元素を入力部15に入力する。しかしながら、ここで入力する元素はオペレータが積極的な検出を希望せず、検出対象からは除外したい元素である。例えば試料6の母材として当然存在することが予め把握されており、詳細な観察を希望しない元素が挙げられる。もちろん検出対象から除外される元素の選び方は条件によって異なる。
【0058】
特定物質判定部26は、断面加工観察の実行中に、入力部15から入力され、予め記憶された物質の元素を特定物質記憶部24から読みだすとともに、当該断面加工観察で取得したEDSマップを観察像記憶部25から読み出す。
【0059】
そして本実施例の場合、特定物質判定部26は、EDSマップにおいて、特定物質記憶部24に記憶された物質以外の特定外物質が現れた場合、断面加工観察制御部23に信号を送信する。断面加工観察制御部23は当該信号を受け、実施例1〜3で述べたのと同様な照射条件の変更を行う。本実施例においては、特定物質判定部26は、入力部15を介してオペレータが特定した特定物質以外の特定外物質を判定するので、特定外物質判定部ということもできる。
【0060】
図10は実施例4の断面加工観察方法のフローチャートである。図11は、微小な観察対象である特定外物質52(例えば欠陥)を含有する試料6を示した図である。
【0061】
まず断面加工観察の条件設定を行う(S11)。条件設定では、加工観察条件として、スライス加工のスライス間隔D2を50nmとして第一の加工領域53の位置とサイズを設定する。また、観察条件として、電子ビーム4の加速電圧を5kVに設定する。そして、特定物質の元素として、例えば試料6の予め特定された少なくとも一種の母材51の元素が設定され、入力部15から入力される。また、母材51の元素以外の特定外物質52が現れた場合の加工条件として、スライス加工のスライス間隔を5nmに設定する。また、当該特定外物質52の観察条件として、電子ビーム4の加速電圧を1kVに設定する。
【0062】
次に、断面加工観察を行う(S12)。第一の加工領域53にイオンビーム3を照射し、スライス加工を施す。次にスライス加工で形成された断面に電子ビーム4を照射し、発生するX線をEDS検出器8で検出する。このとき、例えば鉱山から直接採取した鉱物である試料6から鉱物を構成する物質である鉄、酸素、アルミニウム、銅などの母材51の元素のX線が検出される。像形成部13は、電子ビーム4の照射位置と検出されたX線に基づき、電子ビーム4の照射領域の物質の分布であるEDSマップを形成する。このスライス加工とEDSマップ形成を繰り返し実行する。所定のスライス加工数や取得する観察像の枚数に達した場合、加工を終了させる(S13)。
【0063】
そして、断面加工観察の実施中にEDSマップに母材51の元素以外の特定外物質52が現れた場合(S14)、断面加工観察制御部23は特定外物質52の加工観察条件を読み出し、条件変更を行う(S15)。図11の例ではスライス加工のスライス間隔をD2(=50nm)からD3(=5nm)に変更することに相当する。
【0064】
次に、特定外物質52の加工観察条件で、第二の加工領域54において断面を形成しながら断面加工観察を行う(S16)。特定外物質52の断面加工観察を進め、取得した観察像またはEDSマップから特定外物質52が消えた場合、すなわち、特定外物質52のスライス加工が終了した場合(S17)、再び条件変更を行う(S18)。図11の例ではスライス加工のスライス間隔をD3(=5nm)からD2(=50nm)に変更することに相当する。この条件変更は、特定外物質52を見つけるための加工観察条件に戻す変更であり、新たな特定外物質を見つけるために断面加工観察(S12)を再開する。すなわち、第三の加工領域55のスライス加工を行いながら、新たな特定外物質を探索する。そして、所定のスライス加工数や取得する観察像の枚数に達した場合、加工を終了させる(S13)。
【0065】
上記の工程を断面加工観察装置により自動で実施することで、微小な観察対象を含む試料であっても、スライス間隔を自動で変更することができるので、効率よく正確に所望の観察像を取得することができる。
【0066】
上述した実施例1〜4においては、特定物質または特定外物質のX線が検出された場合、制御部14の断面加工観察制御部23が加工条件を変更している。この変更作業はオペレータから見れば装置による自動的な加工条件の変更操作である。しかしながら、本発明における断面加工観察方法はこのような態様には限定されず、オペレータが手動で加工条件を変更することができる。
【0067】
上述した実施例では、EDS検出器8で特定物質または特定外物質のX線が検出された場合、像形成部13が特定物質または特定外物質を含む観察像を形成し、観察像記憶部25が形成された観察像を記憶する。表示部16は観察像記憶部25に記憶された観察像を表示する。特定物質判定部26が特定物質または特定外物質を観察像記憶部25から読み出し、断面加工観察制御部23に信号を送信し、断面加工観察制御部23は当該信号を受け、照射条件(加工条件)の変更を行う。
【0068】
ここで、特定物質判定部26が上記信号を断面加工観察制御部23に送らず、表示部16に送るように構成することができる。そして、表示部16が観察像記憶部25から観察像を読み出し表示する際、同時に表示部16は特定物質または特定外物質のX線を検出したことを種々の態様(文字、図形など)で表示することができる。表示部16を通じてオペレータはX線の検出を知ることができ、オペレータが入力部15を操作し、手動でスライス間隔等の加工条件を変更することできる。この操作により、加工条件記憶部21に記憶されたスライス加工の間隔や、イオンビーム3の加工領域の位置とサイズの設定値等の加工条件が変更される。尚、図示せぬ音源による音声通知等、他のオペレータへの通知方法を付加してもよい。
【0069】
すなわち、上記の例によれば、EDS検出器8によるEDS測定を、加工条件の変更のためのトリガーとして用いることができ、装置まかせでないオペレータの好みに応じた加工条件の変更が可能となる。
【0070】
上述した実施例1〜4の各手順を実行させるプログラムは制御部14に記憶されているが、断面加工観察装置の他の部分に記憶させることもできる。もちろん、ネットワークを介して断面加工観察装置を当該プログラムにより制御することも可能である。
【0071】
本出願は、2012年11月15日出願の日本特許出願、特願2012−251589に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【0072】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0073】
1…イオンビーム鏡筒、 2…電子ビーム鏡筒、 3、3a、3b、3c…イオンビーム、 4…電子ビーム、 5…試料台、 6…試料、 6a…加工溝、 6s…表面、 7…二次電子検出器、 8…EDS検出器、 10…試料室、 11…イオンビーム制御部、 12…電子ビーム制御部、 13…像形成部、 14…制御部、 15…入力部、 16…表示部、 21…加工条件記憶部、 22…観察条件記憶部、 23…断面加工観察制御部、 24…特定物質記憶部、 25…観察像記憶部、 26…特定物質判定部、 27…三次元像構築部、 30d…加工進行方向、 30s、31s、32s、33s…断面、 31、32、33…加工領域、 41…構造物、 42…欠陥、 43、53…第一の加工領域、 44、54…第二の加工領域、 45、55…第三の加工領域、 51…母材、 52…特定外物質、 80d…加工進行方向、 80s、81s、82s、83s…断面、 81、82、83…加工領域、 86…小片試料、 86a…加工溝、 86s…表面、 D1、D2、D3…スライス間隔、 W2、W3…加工幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11