特許第6355320号(P6355320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355320
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】即席麺の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/113 20160101AFI20180702BHJP
【FI】
   A23L7/113
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-245893(P2013-245893)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-100346(P2015-100346A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 充
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 佳文
(72)【発明者】
【氏名】中世古 拓男
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−130687(JP,A)
【文献】 特開2012−060998(JP,A)
【文献】 特開昭59−088055(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/013185(WO,A1)
【文献】 特開昭59−082061(JP,A)
【文献】 特開2003−038114(JP,A)
【文献】 特開2003−174853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109−7/113
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
即席麺の製造方法であって、
加熱処理を行う庫内の温度が130℃〜220℃であり、
該温度での大気圧下における水蒸気の絶対湿度の−5%〜0%(ただし、0%は除く)に絶対湿度が±0%から調整された高温流体の雰囲気下で加熱処理が行われる工程を含む、即席麺の製造方法。
【請求項2】
即席麺の製造方法であって、
生麺線を製麺する工程と、前記切出された生麺線を加熱処理する工程と、前記加熱処理後の麺線を乾燥させる工程と、の各工程を含み、
前記加熱処理工程が複数回あり、
最初の加熱処理工程は、加熱処理を行う庫内の温度が130℃〜220℃であり、
該温度での大気圧下における水蒸気の絶対湿度の−5%〜0%(ただし、0%は除く)に絶対湿度が±0%から調整された高温流体の雰囲気下で行われる、即席麺の製造方法。
【請求項3】
加熱処理時聞が5秒から90秒以内である、請求項1または2に記載の即席麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席麺の製造方法に関する。より詳しくは、特定の湿度における加熱処理工程を含む即席麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
即席麺は、水分含量が極めて低く、乾燥状態であるために長期の保存性に優れている。また、調理においても熱湯に浸して数分間放置するか、1〜数分程度熱湯で茹でるだけで復元して喫食でき、極めて簡便性の高い食品である。
【0003】
一般に、即席麺は、小麦粉等の穀粉を主原料としており、製造工程においては、生の麺線が含有する澱粉をα化した後に乾燥する。例えば、麺線を飽和水蒸気で蒸すことでα化してから、乾燥される方法が多用されている。
【0004】
近年、消費者の嗜好の多様化により、即席麺においても、ストレート麺に対する需要や、より生麺に近い風味食感に対する需要等、本格志向が高まっている。
【0005】
ここで、『生麺らしい』風味食感とは、麺線表面の歯触り、生麺を調理したときに麺線中心に残るような硬さ、麺のコシ、麺の香り等から総合的に判断される。そのため、どれか一つが良好であっても、他の判断項目を満たしていない場合には、『生麺らしい』とは言い難い。
【0006】
ところで、飽和水蒸気で麺線を蒸した場合、生麺のような風味食感は得られにくい。これは、生の麺線を茹でる場合と比べて、麺線に水が入り込んでα化が進むようなことがなく、また、麺線に対する熱のかかり方が異なるためである。その結果、歯触り、麺のコシ、麺の香り等、生の麺線を調理したときとは異なる風味食感となってしまう。
【0007】
一方、飽和水蒸気を用いて生麺に近い風味食感を付与する他の方法として、食感改良剤を付与する技術が開示されている(特許文献1参照)。この技術は、食感改良剤を付与することにより、弾力性、口当たり等を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−236829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、食感改良剤を付すことで食感については改善されたものの、他の『生麺らしさ』を判断するための要素の改善についてはいまだ十分なものではない。また、食感改良剤のコストがかかるため、最終製品の価格が上がってしまうといった問題もある。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、生麺のような風味食感を有する即席麺の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、生麺のような風味食感を持つ即席麺の製造方法について鋭意検討したところ、特定の温湿度条件下で加熱処理工程を行うことで、生麺のような風味食感が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、加熱処理を行う庫内の温度が130℃〜220℃であり、該温度での大気圧下における水蒸気の絶対湿度の−5%〜+10%の雰囲気下で加熱処理が行われる工程を含む、即席麺の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、生麺線を製麺する工程と、前記切出された生麺線を加熱処理する工程と、前記加熱処理後の麺線を乾燥させる工程と、の各工程を含み、前記加熱処理工程が複数回あり、最初の加熱処理工程は、庫内の温度が130℃〜220℃であり、該温度での大気圧下における水蒸気の絶対湿度の−5%〜+10%の雰囲気下で行われる、即席麺の製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、加熱処理時間が、5秒〜90秒以内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法によれば、従来製造されていた即席麺と比較して食感が生麺に近く、麺線表面は柔らかいが麺線の中心が硬めの状態で喫食できるコシのある即席麺を製造することができる。また、風味の点でも優れ、小麦粉の風味を有し、さらに対象の麺が中華麺の場合には、所謂かんすい臭を含む独特の香りが増強される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の即席麺の製造方法を具体的に説明する。
本発明の麺線は、常法により形成された生麺を、後述する加熱処理等に付して製造されたものである。
【0017】
(加熱処理工程以前)
本発明では、まず、常法により生の麺線を準備する。具体的には、小麦粉等の原料粉に、副原料、練り水を加えて混練した後、複合・圧延・切出すことで生の麺線を得ることができる。切出しではなく、エクストルーダ等で押し出して麺線としても良い。主原料たる原料粉としては小麦粉、澱粉等が使用される。副原料としては、かんすい、食塩、増粘剤、グルテン、卵白、色素、ビタミン、カルシウム等を必要に応じて添加することができる。
【0018】
本発明の麺線の厚みは特に限定されないが、例えば0.6〜3.0mmの範囲の厚みを例示することができる。
【0019】
(加熱処理工程)
次いで準備した生の麺線を加熱処理する。本発明における加熱処理は、麺線を短時間、高温流体にさらすことで行われる。そして、加熱処理する際の絶対湿度が特定範囲内にあることを特徴とする。また、本発明の加熱工程は複数回行われても良いが、最初の加熱処理が特定の温湿度範囲で行われることが特徴である。
【0020】
ここで、本願で言う「高温流体」とは、例えば、高温空気、高温蒸気等を含むが、これに限定されない。
【0021】
本発明に用いる高温流体の温度としては、130℃〜220℃の範囲が好ましく、140℃〜190℃の範囲がより好ましい。
また、130℃〜220℃の高温流体に麺線をさらす時間は、過乾燥を避けるため、5秒〜90秒という短時間で実施する。好ましくは、5秒〜50秒である。
【0022】
本発明における絶対湿度の特定範囲とは、加熱処理を行う庫内温度での大気圧下における水蒸気の絶対湿度の−5%〜+10%の範囲のことを指す。好ましくは、−2%〜+8%の範囲であり、より好ましくは、0%〜+8%の範囲である。
麺線表面がさらされる絶対湿度がこの範囲内であると、麺線表面が柔らかく、中心部がやや硬めという生麺のような食感が得られる。なお、11%以上にするためには、特殊な装置等が必要となるため、10%以内であることが好ましい。一方、−6%以下にしてしまうと、過乾燥になる恐れがあり、好ましくない。
【0023】
高温流体の絶対湿度を調整する方法としては、例えば、高温流体に水蒸気、空気、不活性ガス等を混ぜることがあげられる。このとき、水蒸気または空気を混ぜた混合流体を庫内温度が保てる温度まで加熱してから用いても良いし、先に加熱してから混合して用いても良い。これにより、加熱処理を行う庫内の温度を一定に保つことができる。
【0024】
また、所定温度での大気圧下における水蒸気の絶対湿度よりも庫内の絶対湿度を上げる方法として、庫内の圧力を上げる方法が考えられる。
【0025】
庫内の圧力を上げる方法としては、例えば、庫内の開放口をできる限り狭くした上で、配管内で圧をかけた流体を庫内の圧力よりも高い圧力で噴出す方法が考えられる。このとき、高圧流体は高速で噴出すことが好ましい。
【0026】
高圧流体の噴出し速度としては、2m/s〜30m/sであることが好ましく。4m/s〜25m/sであることがより好ましく、6m/s〜15m/sであることがさらにより好ましい。庫内の気圧を大気圧下に戻すために開放口から排出される流体の上限量を上回る流体を高圧・高速で供給することで、庫内の圧力を上げることができると考えられるためである。これにより、庫内の圧力が大気圧よりも高くなり、結果として絶対湿度を上げることができる。
【0027】
なお、麺線を高温流体にさらす方法としては、高温流体を直接または間接的に麺線に吹き付けるか、高温流体で満たされた庫内を通過させることで行われる。
また、加熱処理する際に使用する流体については、気体に限られない。なお、ここでいう乾燥とは、相対湿度30%未満のものをいう。
【0028】
本発明においては、加熱処理工程において、麺線に表面へ水分を付与しても良い。水分付与の方法としては、霧吹き、シャワー、浸漬、低温物質が高温環境下におかれたときに発生する結露現象が挙げられる。水分付与は、加熱処理庫内で行っても良いし、加熱処理庫内から一旦系外へ出しても良い。
【0029】
なお、加熱処理工程は複数回行っても良い。2回目以降の加熱処理工程は特に制限されず、飽和水蒸気による蒸煮処理や茹で槽でのボイル等の既存技術を用いることもできる。例えば、飽和水蒸気による1〜3分程度の蒸煮といった条件であっても良い。各加熱処理工程との間に、水分を付与する工程を設けておくことが好ましい。水分付与工程に関しては、シャワーによる方法や水槽への浸漬方法等が挙げられる。
【0030】
シャワー又は浸漬する水又はお湯の温度は高いものであることが好ましく、具体的には40℃以上が好ましく、特に50℃以上がもっとも好ましい。また、用いる水は、少量の調味料や乳化剤、結着防止剤等を添加、溶解させておいても良い。好ましい加水量としては、加熱処理前の麺線重量に対して5%〜30%となるように加水するのが良い。
【0031】
(乾燥工程)
加熱処理工程が完了した麺線を、最後に、乾燥工程に付すことで麺線を乾燥させて即席麺とする。乾燥工程に付す前には、通常1食分量の重量にカットされて、リテーナ等に型詰めされる。その型詰めされた状態で乾燥工程を実施する。ただし、麺線のカットは、前述した加熱処理を行う以前に実施しても良い。
【0032】
本発明では、乾燥工程の種類は特に限定されず、即席麺の製造において一般的に使用されている乾燥処理を適用することができる。具体的には、フライ(油揚げ)乾燥処理のほか、熱風乾燥処理、真空凍結乾燥処理、マイクロ波乾燥、低温での送風乾燥といったノンフライ乾燥処理があげられる。これらを組み合わせて乾燥工程を実施することもできる。
【0033】
以上の方法により製造された即席麺は、生麺のような風味食感を持ちながら、復元性が良好であった。
また、本発明の即席麺は、熱湯注加によって3〜5分程度待つだけで喫食可能なカップ麺、または、1〜3分程度炊いて調理する袋入り即席麺として用いることができる。そして、いずれの場合でも優れた復元性と、麺質を付与できる。また、太麺、細麺でも適用可能である。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
実験1
<実施例1>
小麦粉900g、澱粉100gからなる麺原料粉1kgに、食塩15g、炭酸ナトリウム6gを溶解した練り水340mlを加えて、これらをミキサーでよく混練し麺生地を得た。得られた麺生地を成形、複合して麺帯化し、圧延を繰り返して最終麺厚1.2mmの麺帯とした後、20番丸刃の切刃で切出した。
【0036】
この切出された生麺線を高温流体で加熱処理した。加熱処理条件は、温度140℃、絶対湿度550g/m^3、風速9m/sの高温流体を60秒間当てて麺線を処理した。このとき、絶対湿度は、140℃での大気圧下における飽和水蒸気の絶対湿度の103%であった。
【0037】
加熱処理庫は、ネットコンベアの上下からコンベア上を搬送される麺線に向かって高温流体を吹き付ける噴出口を有し、これらをコンベアの進行方向に多数有する構造となっており、この噴出口から高温流体を麺線に向かって吹き付けて麺線を加熱処理した。
【0038】
麺線のさらされる高温流体の温度及び絶対湿度の測定方法としては、温湿度センサーを庫内に固定しておき、庫内において麺線がさらされる高温流体の温度と絶対湿度を測定した。
【0039】
この加熱処理した麺を、1食分100gとなるように麺線をカットして、乾燥用リテーナに充填し、熱風乾燥機で90℃、風速4m/s、20分間で乾燥した。このようにして製造した即席ノンフライ麺を、冷却して保存し、実施例1のサンプルとした。
【0040】
<実施例2>
高温流体の絶対湿度520g/m^3としたこと以外は、実施例1と同様に作成し、実施例2とした。なお、このときの絶対湿度は、140℃での大気圧下における飽和水蒸気の絶対湿度の97%であった。
【0041】
<実施例3>
高温流体の温度170℃、絶対湿度530g/m^3としたこと以外は、実施例1と同様に作成し、実施例3とした。なお、このときの絶対湿度は、170℃での大気圧下における飽和水蒸気の絶対湿度の106%であった。
【0042】
<実施例4>
高温流体の温度170℃、絶対湿度490g/m^3としたこと以外は、実施例1と同様に作成し、実施例4とした。なお、このときの絶対湿度は、170℃での大気圧下における飽和水蒸気の絶対湿度の97%であった。
【0043】
<比較例1>
上記実施例1に対して、高温流体の絶対湿度を480g/m^3としたこと以外は、実施例1と同様に作成し、比較例1とした。なお、このときの絶対湿度は、140℃での大気圧下における飽和水蒸気の絶対湿度の90%であった。
【0044】
<比較例2>
上記実施例3に対して、高温流体の絶対湿度を450g/m^3としたこと以外は、実施例3と同様に作成し、比較例2とした。なお、このときの絶対湿度は、170℃での大気圧下における飽和水蒸気の絶対湿度の90%であった。
【0045】
<比較例3>
上記実施例は高温流体による加熱処理工程であるが、これを飽和水蒸気に変えたこと以外は、実施例1と同様に作成し、比較例3とした。このとき、温度は100℃、絶対湿度582g/m^3であった。
【0046】
この実施例1〜4、比較例1〜3のサンプルを、鍋に張った500mlの沸騰水中で3分間加熱調理して復元し、喫食した。喫食時の評価方法は、ベテランパネラー5人によって評価し、食感や風味について検討するとともに、4点満点で総合評価を行った。
【0047】
なお、総合評価の点数は4点が湯戻り及び食感ともに良好、3点が湯戻り又は食感のいずれかがもう一歩、2点が湯戻り及び食感ともにやや不良、1点が湯戻り及び食感ともに不良であり、最高評価の4点であれば一般消費者が従来品に対して絶対湿度による効果を十分識別でき差別化できるものと判断し、合格点とした。
【0048】
上記実施例1〜4および比較例1〜3についての結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
実験2
<実施例5>
小麦粉900g、澱粉100gからなる麺原料粉1kgに、食塩15g、炭酸ナトリウム6gを溶解した練り水340mlを加えて、これらをミキサーでよく混練し麺生地を得た。得られた麺生地を成形、複合して麺帯化し、圧延を繰り返して最終麺厚1.2mmの麺帯とした後、20番丸刃の切刃で切出した。
【0051】
この切出された生麺線を高温流体で加熱処理した。加熱処理条件は、温度170℃、絶対湿度530g/m^3、風速9m/sの高温流体を30秒間当てて麺線を処理した。
【0052】
この加熱処理した麺を60℃のお湯を入れた浸漬槽に5秒間浸漬した。次いで、先ほどと同じ条件で再度高温流体による加熱処理を行った。
【0053】
このようにして加熱処理した麺を、1食分140gとなるように麺線をカットして、乾燥用のリテーナに充填し、熱風乾燥機で90℃、風速4m/s、20分間で乾燥した。このようにして製造した即席ノンフライ麺を、冷却して保存し、実施例5のサンプルとした。
【0054】
このサンプルを鍋に張った500mlの沸騰水中で3分間加熱調理して復元し、喫食した。その結果、従来の即席麺とは異なる生麺のような風味食感のある良好な麺が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、生麺のような風味食感に優れた乾燥麺を製造することが可能となる。