特許第6355890号(P6355890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6355890
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】トリアジン環を含有する重合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/06 20060101AFI20180702BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20180702BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   C08G73/06
   C08L79/04 Z
   G02B1/04
【請求項の数】9
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2013-33815(P2013-33815)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-162830(P2014-162830A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】那須野 一郎
(72)【発明者】
【氏名】八百 篤史
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏寿
(72)【発明者】
【氏名】大石 好行
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−224162(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00380017(EP,A1)
【文献】 米国特許第05652327(US,A)
【文献】 特開2015−025131(JP,A)
【文献】 特開2016−033228(JP,A)
【文献】 特開2004−156001(JP,A)
【文献】 特開2011−037952(JP,A)
【文献】 特開平09−087385(JP,A)
【文献】 特開平02−232230(JP,A)
【文献】 特開平07−113009(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/128661(WO,A1)
【文献】 特開2012−092261(JP,A)
【文献】 特許第6061015(JP,B2)
【文献】 特開2009−117738(JP,A)
【文献】 特開平11−181030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)〜(4)のいずれかで表される繰返し単位を含むトリアジン環含有ポリマー。
【化1】
(式(1)〜(4)中、Rは、2つの2価の芳香族炭化水素基と、−S−、−O−、−NH−、−NR''−、及び−(CO)−から選択される1以上との組み合わせからなる2価の基を表す。Rはさらに置換基によって置換されていてもよい。
R’は、それぞれ水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は1以上の脂肪族炭化水素基及び1以上の芳香族炭化水素基から選択される1以上と、−S−、−O−、−NH−、−NR''−、及び−(CO)−から選択される1以上との組み合わせからなる基を表す。R’はさらに置換基によって置換されていてもよい。
は、水素原子、アセチル基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基と、−S−、−O−、−NH−、−NR''−、及び−(CO)−から選択される1以上との組み合わせからなる基を有する脂肪族炭化水素基を表す。Rはさらに置換基によって置換されていてもよい。
は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基と、−S−、−O−、−NH−、−NR''−、及び−(CO)−から選択される1以上との組み合わせからなる基を有する脂肪族炭化水素基を表す。Rはさらに置換基によって置換されていてもよい。
R''は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は1以上の脂肪族炭化水素基及び1以上の芳香族炭化水素基から選択される1以上の組み合わせからなる基を表す。
は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
は、置換もしくは無置換の炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表す。
Arは、2価の芳香族炭化水素基を表す。
Xは、それぞれヘテロ原子含有基を表す。
mは1〜5の整数を表す
はポリマーにおける繰り返し単位の繰り返し数を表し、2以上10,000以下の整数を表す。)
【請求項2】
前記式(1)〜(4)において、Rが水素原子、アセチル基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、Rが炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、又は環形成炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を有する炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、Rが水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基又は環形成炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であり、Rがメチル基又はエチル基であり、Arが環形成炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基であり、Xがシアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ニトロ基、カルバモイル基、チオール基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基又はアルコキシカルボニルオキシ基である請求項1に記載のトリアジン環含有ポリマー。
【請求項3】
下記式(6)〜(13)、(15)〜(20)、(23)〜(35)及び(38)〜(46)のいずれかで表される繰返し単位を含むトリアジン環含有ポリマー。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
(式(6)〜(13)、(15)〜(20)、(23)〜(35)及び(38)〜(46)中、nはポリマーにおける繰り返し単位の繰り返し数を表し、2以上10,000以下の整数を表す。)
【請求項4】
下記式(21)、(22)、(36)及び(37)のいずれかで表される繰返し単位を含み、D線の屈折率が1.80を超え、アニリン残基を含む、トリアジン環含有ポリマー。
【化7】
(式(21)、(22)、(36)及び(37)中、nはポリマーにおける繰り返し単位の繰り返し数を表し、2以上10,000以下の整数を表す。)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のトリアジン環含有ポリマー及び有機溶剤を含む組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のトリアジン環含有ポリマー及び紫外線硬化剤を含む組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のトリアジン環含有ポリマー及び熱硬化剤を含む組成物。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の組成物を用いて得られた薄膜、フィルム、透明板又はレンズ。
【請求項9】
請求項8に記載の薄膜、フィルム、透明板又はレンズを含む電子デバイス、発光デバイス又は光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアジン環含有ポリマー、それを含む組成物、その組成物からなる薄膜、フィルム、透明板又はレンズ、及びそれらを含む電子デバイス、発光デバイス又は光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル系樹脂や、ポリカーボネート樹脂、透明エポキシ樹脂、透明シリコーン樹脂等の透明樹脂は、ガラスに比較して軽量で、かつ、加工性に優れるため、航空機等の風防樹脂、透明容器、透明コーティング剤等に広く用いられるようになりつつある。また、近年では、眼鏡等の光学部品の分野でも透明樹脂レンズ等の樹脂製品が多用されつつある。
【0003】
さらに、電子材料の分野でも、液晶ディスプレイの反射防止コーティング剤、太陽電池用透明コーティング剤、発光ダイオード、CCDやCMOSセンサーの受光部等の光学電子材料の用途に上述の透明樹脂が多用されつつある。
このような光学電子材料の用途では、透明性ばかりでなく、光取り出し効率の向上や集光性の向上のために高い屈折率が要求される場合が多い。
従来の透明樹脂は、架橋等の手法によって、機械的物性を制御することがある程度可能であるものの、光学特性、特に屈折率を高めるために特殊な技術を必要としていた。
【0004】
特許文献1及び2では、臭素や硫黄等の重原子を有機樹脂に多量に結合させて屈折率を向上させる手法が提案されている。また、特許文献3及び4では、高屈折率の無機酸化物微粒子を有機樹脂に分散して屈折率を向上させる手法が提案されている。さらに、重合性トリアジン系樹脂組成物からなる高屈折率材料も知られている(特許文献5)。特許文献6では線状トリアジン環重合体又はトリアジン環含有ハイパーブランチポリマーが記載されている。
【0005】
特許文献1及び2の手法では、一般に、得られた有機樹脂が熱や光に対して不安定であるため、長期使用時に変色等の劣化を起こしやすいという問題があるうえに、当該樹脂を電子材料部品用途に使用する場合は、電極の腐食等が懸念される。また、特許文献3及び4の手法でも、得られた微粒子分散樹脂の長期保存安定性等に問題があり、また、無機酸化物微粒子の樹脂中での分散安定性を改善するために多量の分散安定剤を必要とするため、屈折率と分散安定性のバランスをとるのが困難になる。
【0006】
また、特許文献5の手法では、樹脂構造中のトリアジン環に由来して比較的高屈折率で、高耐熱性の樹脂が得られるものの、屈折率は十分に高くなく、さらに硬化に寄与する不飽和結合部位が一部反応せず残留するため、長期使用時に変色、変形等の劣化を起こしやすい等の課題があった。特許文献6では、十分には高屈折率とは言えず、また、多分岐高分子であるため温度、撹拌状態等の重合条件によって得られるポリマーの物性が安定せず、条件によっては不溶性のゲルになることもあるという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−164901号公報
【特許文献2】特開2005−350531号公報
【特許文献3】特開2007−270099号公報
【特許文献4】特開2007−308631号公報
【特許文献5】特開2011−038015号公報
【特許文献6】国際公開第2010/128661号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、熱や光に対する不安定性や電極腐食等の問題が内在する重原子や、長期保存安定性や屈折率の分散安定性バランスに問題のある無機酸化物微粒子分散樹脂を使用しなくとも、屈折率が高く、従来公知の高屈折率材料よりもさらに高い屈折率を与える材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下のトリアジン環含有ポリマー等が提供される。
1.下記式(1)〜(5)のいずれかで表される繰返し単位を含むトリアジン環含有ポリマー。
【化1】
(式(1)〜(5)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、又は1以上の2価の脂肪族炭化水素基及び1以上の2価の芳香族炭化水素基から選択される1以上と、単結合、−S−、−O−、−NH−、−NR''−、−(CO)−NH−、−(CO)−O−及び−(CO)−から選択される1以上との組み合わせからなる2価の基を表す。Rはさらに置換基によって置換されていてもよい。
R’は、それぞれ水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は1以上の脂肪族炭化水素基及び1以上の芳香族炭化水素基から選択される1以上と、単結合、−S−、−O−、−NH−、−NR''−、−(CO)−NH−、−(CO)−O−及び−(CO)−から選択される1以上との組み合わせからなる基を表す。R’はさらに置換基によって置換されていてもよい。
は、水素原子、アセチル基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基と単結合、−S−、−O−、−NH−、−NR''−、−(CO)−NH−、−(CO)−O−及び−(CO)−から選択される1以上との組み合わせからなる基を有する脂肪族炭化水素基を表す。Rはさらに置換基によって置換されていてもよい。
は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基と単結合、−S−、−O−、−NH−、−NR''−、−(CO)−NH−、−(CO)−O−及び−(CO)−から選択される1以上との組み合わせからなる基を有する脂肪族炭化水素基を表す。Rはさらに置換基によって置換されていてもよい。
R''は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は1以上の脂肪族炭化水素基及び1以上の芳香族炭化水素基から選択される1以上の組み合わせからなる基を表す。
は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
は、置換もしくは無置換の炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表す。
Arは、2価の芳香族炭化水素基を表す。
Xは、それぞれヘテロ原子含有基を表す。
mは1〜5の整数を表す。
Yは、2価のヘテロ原子含有基(ただし、−NR’−を除く)である。
nはポリマーにおける繰り返し単位の繰り返し数を表し、2以上10,000以下の整数を表す。)
2.前記式(1)〜(5)において、Rが水素原子、アセチル基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、Rが炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、又は環形成炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を有する炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、Rが水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基又は環形成炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であり、Rがメチル基又はエチル基であり、Arが環形成炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基であり、Xがシアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ニトロ基、カルバモイル基、チオール基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基又はアルコキシカルボニルオキシ基であり、Yが−S−又は−O−である1に記載のトリアジン環含有ポリマー。
3.下記式(6)〜(48)のいずれかで表される繰返し単位を含むトリアジン環含有ポリマー。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
(式(6)〜(48)中、nはポリマーにおける繰り返し単位の繰り返し数を表し、2以上10,000以下の整数を表す。)
4.1〜3のいずれかに記載のトリアジン環含有ポリマー及び有機溶剤を含む組成物。
5.1〜3のいずれかに記載のトリアジン環含有ポリマー及び紫外線硬化剤を含む組成物。
6.1〜3のいずれかに記載のトリアジン環含有ポリマー及び熱硬化剤を含む組成物。
7.4〜6のいずれかに記載の組成物を用いて得られた薄膜、フィルム、透明板又はレンズ。
8.7に記載の薄膜、フィルム、透明板又はレンズを含む電子デバイス、発光デバイス又は光学デバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、屈折率の高いトリアジン環含有ポリマーが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得られた中間体のNMRチャートである。
図2】実施例1で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図3】実施例2〜39で得られた中間体のNMRチャートである。
図4】実施例2〜39で得られた中間体のNMRチャートである。
図5】実施例2〜39で得られた中間体のNMRチャートである。
図6】実施例2〜39で得られた中間体のNMRチャートである。
図7】実施例2〜39で得られた中間体のNMRチャートである。
図8】実施例2〜39で得られた中間体のNMRチャートである。
図9】実施例2〜39で得られた中間体のNMRチャートである。
図10】実施例2〜39で得られた中間体のNMRチャートである。
図11】実施例2〜39で得られた中間体のNMRチャートである。
図12】実施例2〜39で得られた中間体のNMRチャートである。
図13】実施例2〜39で得られた中間体のNMRチャートである。
図14】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図15】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図16】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図17】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図18】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図19】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図20】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図21】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図22】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図23】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図24】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図25】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図26】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図27】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図28】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図29】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図30】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図31】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図32】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図33】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図34】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図35】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図36】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図37】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図38】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図39】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図40】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図41】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図42】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図43】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図44】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図45】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図46】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図47】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図48】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図49】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図50】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図51】実施例2〜39で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図52】実施例40〜41で得られた中間体のNMRチャートである。
図53】実施例40〜41で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図54】実施例40〜41で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図55】実施例42で得られた中間体のNMRチャートである。
図56】実施例42、43で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図57】実施例42、43で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図58】比較例1で得られた中間体のNMRチャートである。
図59】比較例1で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図60】比較例2,3で得られた中間体のNMRチャートである。
図61】比較例2,3で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図62】比較例2,3で得られたトリアジン環含有ポリマーのNMRチャートである。
図63】評価例1における屈折率の測定結果を示す図である。
図64】評価例2における屈折率の測定結果を示す図である。
図65】評価例3における屈折率の測定結果を示す図である。
図66】評価例4における屈折率の測定結果を示す図である。
図67】評価例5における屈折率の測定結果を示す図である。
図68】評価例6における屈折率の測定結果を示す図である。
図69】評価例7における屈折率の測定結果を示す図である。
図70】評価例8における屈折率の測定結果を示す図である。
図71】評価例9における屈折率の測定結果を示す図である。
図72】評価例10における屈折率の測定結果を示す図である。
図73】評価例11における屈折率の測定結果を示す図である。
図74】評価例12における屈折率の測定結果を示す図である。
図75】評価例13における屈折率の測定結果を示す図である。
図76】評価例14における屈折率の測定結果を示す図である。
図77】評価例15における屈折率の測定結果を示す図である。
図78】評価例16における屈折率の測定結果を示す図である。
図79】評価例17における屈折率の測定結果を示す図である。
図80】評価例18における屈折率の測定結果を示す図である。
図81】評価例19における屈折率の測定結果を示す図である。
図82】評価例20における屈折率の測定結果を示す図である。
図83】評価例21における屈折率の測定結果を示す図である。
図84】評価例22における屈折率の測定結果を示す図である。
図85】評価例23における屈折率の測定結果を示す図である。
図86】評価例24における屈折率の測定結果を示す図である。
図87】評価例25における屈折率の測定結果を示す図である。
図88】評価例26における屈折率の測定結果を示す図である。
図89】評価例27における屈折率の測定結果を示す図である。
図90】評価例28における屈折率の測定結果を示す図である。
図91】評価例29における屈折率の測定結果を示す図である。
図92】評価例30における屈折率の測定結果を示す図である。
図93】評価例31における屈折率の測定結果を示す図である。
図94】評価例32における屈折率の測定結果を示す図である。
図95】評価例33における屈折率の測定結果を示す図である。
図96】評価例34における屈折率の測定結果を示す図である。
図97】評価例35における屈折率の測定結果を示す図である。
図98】評価例36における屈折率の測定結果を示す図である。
図99】評価例37における屈折率の測定結果を示す図である。
図100】評価例38における屈折率の測定結果を示す図である。
図101】評価例39における屈折率の測定結果を示す図である。
図102】評価例40における屈折率の測定結果を示す図である。
図103】評価例41における屈折率の測定結果を示す図である。
図104】評価例42における屈折率の測定結果を示す図である。
図105】評価例43における屈折率の測定結果を示す図である。
図106】評価例44における屈折率の測定結果を示す図である。
図107】評価例45における屈折率の測定結果を示す図である。
図108】評価例46における屈折率の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のトリアジン環含有ポリマーは、下記式(1)〜(5)のいずれかで表される繰り返し単位を含む。
【化7】
(式(1)〜(5)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、又は1以上の2価の脂肪族炭化水素基及び1以上の2価の芳香族炭化水素基から選択される1以上と、単結合、−S−、−O−、−NH−、−NR''−、−(CO)−NH−、−(CO)−O−及び−(CO)−から選択される1以上との組み合わせからなる2価の基を表す。Rはさらに置換基によって置換されていてもよい。R’は、それぞれ水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は1以上の脂肪族炭化水素基及び1以上の芳香族炭化水素基から選択される1以上と、単結合、−S−、−O−、−NH−、−NR''−、−(CO)−NH−、−(CO)−O−及び−(CO)−から選択される1以上との組み合わせからなる基を表す。R’はさらに置換基によって置換されていてもよい。Rは、水素原子、アセチル基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基と、単結合、−S−、−O−、−NH−、−NR''−、−(CO)−NH−、−(CO)−O−及び−(CO)−から選択される1以上との組み合わせからなる基を有する脂肪族炭化水素基を表す。Rはさらに置換基によって置換されていてもよい。Rは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基と、単結合、−S−、−O−、−NH−、−NR''−、−(CO)−NH−、−(CO)−O−及び−(CO)−から選択される1以上との組み合わせからなる基を有する脂肪族炭化水素基を表す。Rはさらに置換基によって置換されていてもよい。R''は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は1以上の脂肪族炭化水素基及び1以上の芳香族炭化水素基から選択される1以上の組み合わせからなる基を表す。Rは、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表す。Arは、2価の芳香族炭化水素基を表す。Xは、それぞれヘテロ原子含有基を表す。mは1〜5の整数を表す。Yは、2価のヘテロ原子含有基(ただし、−NR’−を除く)である。nはポリマーにおける繰り返し単位の繰り返し数を表し、2以上10,000以下の整数を表す。)
【0013】
本発明のトリアジン環含有ポリマーは上記式(1)〜(5)のいずれかで表されるモノマー構造が線状に連なった構造を有し、薄膜等にしたときに高い屈折率を示す。
【0014】
本発明のトリアジン環含有ポリマーは、Rが上記に示すいずれの基であっても他部位の構造により高い屈折率を示す。
尚、本発明以外の化合物において、Rが立体的に嵩高い2価の芳香族炭化水素基であると、相対的に屈折率が低くなる場合がある。例えば、特許文献6に例示されている化合物、即ち本発明の式(1)においてR’が水素原子、Rが水素原子、Rがフェニル基、Rがフルオレン骨格を含む2価の基である化合物は、各ポリマー分子鎖が相互作用する際フルオレンが立体的に大きく、また相互作用が本発明に比較して弱いため、分子間空隙が増加して相対的に屈折率が低くなる。
【0015】
Rの2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜20が好ましい。2価の芳香族炭化水素基の環形成炭素数は6〜10が好ましい。
Rは、好ましくは、2価の芳香族炭化水素基、又は1以上の2価の芳香族炭化水素基と、単結合、−S−、−O−、−NH−、−NR−、−(CO)−NH−、−(CO)−O−及び−(CO)−から選択される1以上との組み合わせからなる2価の基である。
Rは、他の基によってさらに置換されていてもよく、これら置換基は後述する通りである。
【0016】
R’の脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜20が好ましい。芳香族炭化水素基の環形成炭素数は6〜10が好ましい。
R’が上記に示すいずれの基であっても、本発明のトリアジン環含有ポリマーは他の部位の構造により高屈折率を示すが、R’は、水素原子、芳香族炭化水素基、又は1以上の芳香族炭化水素基と、単結合、−S−、−O−、−NH−、−NR−、−(CO)−NH−、−(CO)−O−及び−(CO)−から選択される1以上との組み合わせからなる基が好ましい。
R’は、他の基によってさらに置換されていてもよく、これら置換基は後述する通りである。
【0017】
の脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜20が好ましい。芳香族炭化水素基の環形成炭素数は6〜10が好ましい。
は、好ましくは水素原子、アセチル基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。
がアセチル基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であると、ポリマー間のR同士の立体反発が少なくなり、分子間空隙が相対的に小さくなるため好ましい。
が水素原子であると、この水素原子が結合している窒素原子以外のアミノ基、ヘテロ原子含有置換基X、又はトリアジン環部位と水素結合を生じて相互作用がさらに強化されるため、分子間空隙がさらに減少し、相対的に高屈折率となるため好ましい。
は、他の基によってさらに置換されていてもよく、これら置換基は後述する通りである。
【0018】
の脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜20が好ましい。芳香族炭化水素基の環形成炭素数は6〜10が好ましい。
は、好ましくは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、又は環形成炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を有する炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。
は、他の基によってさらに置換されていてもよく、これら置換基は後述する通りである。
【0019】
は、好ましくは水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基又は環形成炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。
は、好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0020】
Arは、好ましくは環形成炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基であり、具体的にはフェニル基、ナフチル基が好ましい。炭素数10以下であると、立体反発によって分子間相互作用が阻害されることを低減でき、溶解性に優れ、取扱い容易な材料とすることができる。
【0021】
Xのヘテロ原子含有基としては、窒素原子含有基、酸素原子含有基、硫黄原子含有基等が挙げられ、好ましくはシアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ニトロ基、カルバモイル基、チオール基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基又は下記式(6)で表される基であると、上記の相互作用がさらに強化され、より高屈折率となるため好ましい。
【化8】
(式中、R’はそれぞれ上記と同じである。)
Xは、シアノ基、ニトロ基又はカルバモイル基であるとより好ましい。
XのAr上の置換数、即ちmは1〜5であり、Arに複数のXが置換する場合、それぞれのXは同一でも異なっていてもよい。mは好ましくは1〜3である。
【0022】
Yは、好ましくは−S−又は−O−である。
nは、好ましくは5〜2,000である。
【0023】
上記の置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20の単環又は多環状のシクロアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、芳香族炭化水素基、複素環基、ヘテロ原子含有置換基等が挙げられる。
【0024】
また、式(1)において、側鎖アミノ基部位(−N(−R)(−R))が、窒素原子に直接結合する脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有するアミノ基である場合(即ち、Rが水素原子又は脂肪族炭化水素基であり、及び/又はRが脂肪族炭化水素基である場合)、窒素原子に直接結合する芳香族炭化水素基を少なくとも1つ有するアミノ基である場合(即ち、R及びRのいずれか一方が窒素原子に直接結合する芳香族炭化水素基を含む場合)と比較して、アミン窒素の電子密度が増加するため各分子間の相互作用が強化され、これにより分子間空隙が減少し、さらに、トリアジン環部位の電子密度が増加して相対的に高屈折率となるため好ましい。
また、Rがアセチル基である場合、カルボニル基部位の電子的相互作用のため、アミン窒素の電子密度が増加し、同様な機構で相対的に高屈折率となるため好ましい。
【0025】
式(1)における脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜4であると、それら同士の立体反発が少なくなり分子間空隙が相対的に小さくなるためさらに好ましい。
また、Rが水素原子であり、Rが脂肪族炭化水素基である場合、Rの水素原子が、この水素原子が結合している窒素原子以外のアミノ基又はトリアジン環部位と水素結合を生じ、相互作用がさらに強化されるため、分子間空隙がさらに減少し、相対的に高屈折率となるため好ましい。
【0026】
式(2)において、側鎖アミノ基部位(−N(−R)(−Ar−(X)))が、ヘテロ原子含有置換基を少なくとも1つ有する芳香族炭化水素基を1つ有するアミノ基であるため、ヘテロ原子含有置換基を有さない芳香族炭化水素基を1つ有するアミノ基である場合と比較してアミン窒素の電子密度が増加し、さらに、ヘテロ原子含有置換基とアミノ基上の水素やトリアジン環等の芳香環部位との水素結合等相互作用が生じることにより、各分子間の相互作用が強化されて分子間空隙が減少し、さらに、トリアジン環部位の電子密度が増加するため、相対的に高屈折率となり好ましい。
【0027】
式(3)の場合、側鎖チオエーテル部位(−S−R)において、Rが脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基であるチオエーテル類であると、芳香族炭化水素基を有するアミン類と場合と比較し、チオエーテル部位に基づく各分子間の相互作用が強化されることにより分子間空隙が減少し、かつ、トリアジン環部位の電子密度が増加することにより、相対的に高屈折率となる。
が脂肪族炭化水素基の場合、炭素数が1〜6であると、それら同士の立体反発が少なくなり分子間空隙が相対的に小さくなるために、さらに好ましい。
が芳香族炭化水素基の場合、環形成炭素数が6〜10であると、それら同士の立体反発が少なくなり分子間空隙が相対的に小さくなるために、さらに好ましい。
これら脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基は、ヘテロ原子含有置換基等の置換基を有していてもよい。ヘテロ原子含有置換基としては、窒素原子含有基、酸素原子含有基、硫黄原子含有基等が挙げられ、具体的には後述する通りである。
【0028】
式(4)の場合、側鎖部位(−O−R)が、Rが脂肪族炭化水素基であるアルコキシル基であるため、側鎖がアリールオキシ基や芳香族炭化水素基を有するアミン類である場合と比較し、置換基が立体的に嵩高くないため、分子間空隙が減少し、相対的に高屈折率となる。Rはメチル基、エチル基であると、それら同士の立体反発が少なくなり分子間空隙が相対的に小さくなるために、さらに好ましい。
これら脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基は、ヘテロ原子含有置換基等の置換基を有していてもよい。ヘテロ原子含有置換基としては、窒素原子含有基、酸素原子含有基、硫黄原子含有基等が挙げられ、具体的には後述する通りである。
【0029】
式(5)において、Yは、2価のヘテロ原子含有置換基(ただし、−NR’−である場合を除く)であり、−S−、−O−で表される2価の置換基であると好ましい。
【0030】
上記式(1)〜(5)の構造は、トリアジン環を中心とした場合、トリアジン環の3つの炭素原子にアミノ基の窒素原子が2つ又は3つ結合しており、2つの場合、残り1つの炭素原子にはヘテロ原子である硫黄原子又は酸素原子が結合している。高屈折率を発現するためには、上記構造が電子的にトリアジン環構造の電子密度が相対的に高くなるため好ましい
【0031】
上記式(1)〜(5)に示す高屈折率材料は、それぞれ構造が異なるが、高屈折率となる機構は同様であり、選択する各基の種類によりその効果の度合いが異なり、さらにそれらが複合的に影響するため、これらの優劣については一概に言えない。
【0032】
また、上記式(1)〜(5)のトリアジン環含有ポリマーにおいて、トリアジン環と各置換基、又は各置換基間に、水素結合等の強固な相互作用を発現し、各ポリマー分子鎖が相互作用することにより分子間空隙が減少する置換基を有する構造がさらに好ましい。これは選択するR、R、R、R、R’、X等の種類によりその効果の度合いが異なり、さらにそれらが複合的に影響するため、これらの優劣については一概に言えないが、具体的には、後述する式(6)、(7)、(9)、(13)、(14)、(20)、(21)、(22)、(24)、(27)、(28)、(35)、(36)、(37)、(41)、(42)、(45)で表されるトリアジン環含有ポリマーの場合、nが1.80を超えて特に高屈折率を発現するため、特に好ましい。
【0033】
以下、上記式(1)〜(5)における各基について具体的に説明する。
脂肪族炭化水素基(アルキル基)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
2価の脂肪族炭化水素基としては、上記のものから水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0034】
芳香族炭化水素基(アリール基)としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、ナフタセニル基、クリセニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、ベンゾ[g]クリセニル基、トリフェニレニル基、1−フルオレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、9−フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、ターフェニル基、フルオランテニル基等が挙げられる。
2価の芳香族炭化水素基としては、上記のものから水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0035】
シクロアルキル基としては、上記炭素数3以上のアルキル基の例が脂肪族環構造となったものが挙げられる。
アラルキル基としては、上記アルキル基の水素原子が上記アリール基で置換されたものが挙げられる。
【0036】
複素環基としては、ピロール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、イソキノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、ピロリジン環、ジオキサン環、ピペリジン環、モルフォリン環、ピペラジン環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラン環、ジベンゾフラン環、ベンゾ[c]ジベンゾフラン環、カルバゾール環及びこれらの誘導体から形成される基等が挙げられる。
【0037】
ヘテロ原子含有置換基としては、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ニトロ基、チオール基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、アルコキシカルボニル基又はアルコキシカルボニルオキシ基等が好ましい。
【0038】
アルキルアミノ基としては、アミノ基の1又は2つの水素原子を上記アルキル基で置換したものが挙げられ、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等が挙げられる。
【0039】
アリールアミノ基としては、アミノ基の1又は2つの水素原子を上記アリール基で置換したものが挙げられ、例えば、アニリノ基、トルイジノ基、メシジノ基、又は窒素原子含有基、酸素原子含有基、硫黄原子含有基等のヘテロ原子含有基を有するアニリノ基等が挙げられる。
【0040】
アルキルメルカプト基としては、メルカプト基の水素原子を上記アルキル基で置換したものが挙げられ、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基等が挙げられる。
【0041】
アリールメルカプト基としては、メルカプト基の水素原子を上記アリール基で置換したものが挙げられ、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0042】
アルコキシカルボニル基としては、上記アルキル基、酸素原子及びカルボニル基をこの順に結合してなる基が挙げられ、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0043】
アルコキシカルボニルオキシ基としては、上記アルキル基、カルボニル基及び酸素原子をこの順に結合してなる基が挙げられ、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0044】
本発明のトリアジン環含有ポリマーは、好ましくは下記式(6)〜(48)のいずれかで表される繰り返し単位を含む。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
(式(6)〜(48)中、nはポリマーにおける繰り返し単位の繰り返し数を表し、2以上10,000以下の整数を表す。)
【0045】
本発明のトリアジン環含有ポリマーは、従来公知のジクロロトリアジン化合物と、ジアミン化合物に代表される求核性官能基を有する化合物の縮合反応、又は従来公知の求核性官能基を有するトリアジン環含有化合物と活性エステル化合物との反応を利用して製造することができる。具体的には実施例に記載する通りである。
【0046】
本発明の第1の組成物は、上記のトリアジン環含有ポリマー及び有機溶剤を含む。
有機溶剤としては、上記の高屈折率材料が溶解する範囲において、いかなるものも使用できるが、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルアミドなどのアミド系溶剤、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶剤、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤等が挙げられる。
有機溶剤の含量は、用いる高屈折率材料種、溶剤種、高屈折率組成物の用途、又は使用条件等により一概に定義できないが、通常、組成物全体に対して50〜99.9重量%である。
【0047】
本発明の第2の組成物は、上記のトリアジン環含有ポリマー及び紫外線硬化剤を含む。
紫外線硬化剤としては、従来公知の過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物、イソブチリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート化合物等が挙げられる。
紫外線硬化剤の含量は、組成物全体に対して0.001〜10重量%である。
【0048】
本発明の第3の組成物は、上記のトリアジン環含有ポリマー及び熱硬化剤を含む。
熱硬化剤としては、公知のエポキシ樹脂−脂肪族アミン系硬化剤、ポリイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
熱硬化剤の含量は、組成物全体に対して0.01〜30重量%である。
【0049】
また、他の添加剤として、さらに硬化触媒、安定化剤、膜厚調整材、レベリング材、透明性向上材、強度向上材等を加えてもよい。これらの種類、添加量等は、組成物に含まれるトリアジン環含有ポリマー等に応じて適宜調整すればよい。
【0050】
上記の組成物を用いて、薄膜、フィルム、透明板又はレンズ(薄膜等)を得ることができる。本発明の薄膜等は屈折率が高い。
これらは、公知の方法によって製造でき、具体的にはスピンコート、フローコート、キャスト、延伸、プレス、射出等により製造できる。
【0051】
上記の薄膜等は、電子デバイス、発光デバイス又は光学デバイス等に用いることができる。これらデバイスとしては、例えば、LEDデバイス、有機ELデバイス等からなる照明器具、ディスプレイの他、光学情報処理装置等が挙げられる。
【実施例】
【0052】
実施例1
−50°〜50°の低温温度計、100ミリリットル滴下ロート、ジム・ロート氏冷却管を備えた500ミリリットル三口フラスコに塩化シアヌル14.8g(80ミリモル)のテトラヒドロフラン200ミリリットル溶液を入れ、氷/食塩浴で−10℃に冷却した。側鎖構造前駆体としてメチルアミン2.7g(88ミリモル)のテトラヒドロフラン60ミリリットル溶液を滴下ロートより90分かけて滴下し、終了後、同温度で30分間撹拌を継続した。その後、内容物を、濃塩酸2ミリリットルを含む水400ミリリットルに投入後、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で2回洗浄後、溶媒を減圧留去することで、目的中間体である2−メチルアミノ−4,6−ジクロロトリアジン(A−1)12.9g(収率90%)を得た。目的中間体のNMRチャートを図1に示す。
【化14】
【0053】
次いで、200℃温度計、50ミリリットル滴下ロート、ジム・ロート氏冷却管を備えた100ミリリットル三口フラスコに、主鎖ジアミン骨格前駆体として4,4’−ジアミノベンズアニリド2.3g(10mmolミリモル)、及びN,N’−ジメチルアセトアミド20ミリリットルを入れ、事前に100℃に設定したオイルバス中で10分間撹拌して溶解させた。この溶液に、トリアジンモノマーとして得た2−メチルアミノ−4,6−ジクロロトリアジン(A−1)1.8g(10ミリモル)のN,N’−ジメチルアセトアミド10ミリリットル溶液を滴下ロートより5秒程度で一気に投入し、100℃で5分間撹拌した。アニリン0.5ミリリットルを一気に投入し、10分間さらに撹拌した後、室温まで放冷した。この溶液を炭酸カリウム3.75gの水200ミリリットル溶液に投入し析出した結晶をろ別した。この結晶をエタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより目的物(B−1)を定量的に得た。目的物のNMRチャートを図2に示す。
【化15】
【0054】
実施例2〜39
側鎖構造前駆体として表1に記載の側鎖構造前駆体を用いた以外は実施例1と同様にして目的中間体(A−2)〜(A−11)を得た。目的中間体(A−2)〜(A−11)のNMRチャートを図3図13に示す。
次いで、得られた目的中間体を用いて、主鎖ジアミン骨格前駆体として表1に記載の主鎖ジアミン骨格前駆体を用いた以外は実施例1と同様にして目的物(B−2)〜(B−39)を得た。目的物(B−2)〜(B−39)のNMRチャートを図14〜51に示す。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【0055】
実施例40、41
実施例1におけるメチルアミンのテトラヒドロフラン溶液の代わりに、表1に記載の側鎖構造前駆体のテトラヒドロフラン溶液に等モル量の水素化ナトリウムを加え、ナトリウム塩とした懸濁液を用いた以外は、実施例1と同様にして目的中間体(A−12)を得た。目的中間体(A−12)のNMRチャートを図52に示す。
次いで、得られた目的中間体を用いて、主鎖ジアミン骨格前駆体として表1に記載の主鎖ジアミン骨格前駆体を用いた以外は実施例1と同様にして目的物(B−40)、(B−41)を得た。目的物のNMRチャートを図53、54に示す。
【化22】
【0056】
実施例42、43
実施例15と同様にして目的中間体(A−4−2)を得た。
次いで、得られた中間体(A−4−2)を用いて、主鎖ジアミン骨格前駆体として、4,4’−ジアミノベンズアニリドの代わりに表1に記載の主鎖ジアミン骨格前駆体のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液を用い、室温(25℃)で30分間反応させ、精製することにより重合中間体(A−42)、(A−43)を得て、精製した重合中間体を同様の方法により100℃で反応させた以外は実施例15と同様にして目的物(B−42)、(B−43)を得た。重合中間体(A−42)と目的物(B−42)、(B−43)のNMRチャートを図55〜57に示す。
【化23】
【0057】
【表1-1】
【0058】
【表1-2】
【0059】
比較例1
国際公開第2010/128661号パンフレットの実施例5に記載の方法と同じ方法で目的物を得た。即ち、側鎖構造前駆体として、モノメチルアミンの代わりにアニリンを用いた以外は実施例1と同様にして目的中間体(C−1)を得た。
次いで、中間体(C−1)を用いて、主鎖ジアミン骨格前駆体として4,4’−ジアミノベンズアニリドの代わりに9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンを用いた以外は実施例1と同様にして目的物(D−1)を得た。
中間体(C−1)、目的物(D−1)のNMRチャートを図58,59に示す。
【化24】
【0060】
比較例2,3
実施例1におけるメチルアミンのテトラヒドロフラン溶液の代わりに、N−フェニルアセトアミドのテトラヒドロフラン溶液に等モル量の水素化ナトリウムを加え、ナトリウム塩とした懸濁液を用いた以外は、実施例1と同様にして(C−2)を得た。目的中間体(C−2)のNMRチャートを図60に示す。
次いで、得られた目的中間体を用いて、主鎖ジアミン骨格前駆体として4,4’−ジアミノベンズアニリド(比較例2)又は9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(比較例3)を用いた以外は実施例1と同様にして目的物(D−2)、(D−3)を得た。目的物のNMRチャートを図61、62に示す。
【化25】
【0061】
評価例1〜46
塗布溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン、固形分として実施例1〜43及び比較例1〜3で得られたトリアジン環含有ポリマー(B−1)〜(B−43)及び(D−1)〜(D−3)を用い、固形物含量が2.5重量%となるように塗布液を作成した。スピンコーターに2cm×2cm、厚さ1mmの合成石英基板を固定し、この基板上に、孔径0.2μのフィルターにてろ過した上記塗布液を滴下し、2000rpmで60秒回転して基板上に均一に塗布した。その後、予め200℃に設定したホットプレート上に上記基板を置き、30分加熱乾燥させることにより溶媒を揮発させ、基板上にトリアジン環含有ポリマーからなる薄膜を形成した。
【0062】
上記薄膜について、分光エリプソメトリー装置を用い、一般分散式化モデルにて解析して、190〜1700nmの波長範囲における屈折率を求めた。結果を図63〜108に示す。また、図63〜108より求めたn、アッベ数を表2に示す。
【0063】
尚、アッベ数とは、屈折率の波長分散を表す数値であり、(n−1)/(n−n)により算出した。n、n、nは以下の通りである。
:D線(589.3nm)の屈折率
:F線(486.1nm)の屈折率
:C線(656.3nm)の屈折率
【0064】
【表2-1】
【表2-2】
【0065】
これらの結果より、本発明のトリアジン環含有ポリマーを用いて得られた薄膜は高屈折率であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のポリマーから得られる薄膜は、電子デバイス、発光デバイス、光学デバイス等に使用できる。
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