(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356204
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】海洋環境情報取得システム
(51)【国際特許分類】
G01W 1/00 20060101AFI20180702BHJP
G01D 21/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
G01W1/00 Z
G01D21/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-230240(P2016-230240)
(22)【出願日】2016年11月28日
(62)【分割の表示】特願2013-24583(P2013-24583)の分割
【原出願日】2013年2月12日
(65)【公開番号】特開2017-75956(P2017-75956A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594199315
【氏名又は名称】株式会社エコニクス
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大重 智博
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅英
(72)【発明者】
【氏名】松村 学
(72)【発明者】
【氏名】式田 一億
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中斉 修
(72)【発明者】
【氏名】桜庭 將藏
(72)【発明者】
【氏名】松中 隆之
(72)【発明者】
【氏名】門間 義之
(72)【発明者】
【氏名】豊永 雅信
【審査官】
伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−031465(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3091570(JP,U)
【文献】
特開2011−234270(JP,A)
【文献】
特開2000−065647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00
G01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋に設置される海洋設備と、
前記海洋設備に接続されたケーブルと、
前記ケーブルに接続され、前記海洋設備近傍の情報を取得する情報取得手段と、
を具備し、
前記情報取得手段によって取得された前記情報を、前記ケーブルによって陸地に伝送し、陸地で前記情報を確認することが可能である海洋設備近傍の海洋環境情報取得システムであって、
前記海洋設備は、陸地まで敷設される海洋設備用ロープと接続され、
前記ケーブルは、光ファイバを有する光ケーブルであり、前記海洋設備用ロープに編み込まれ、
前記情報取得手段は、少なくとも、水温を測定する温度センサ、潮流情報を取得するセンサ又は塩分濃度情報を取得するためのセンサのいずれかのセンサを含み、
前記光ケーブルと、前記センサとは、密封接続箱内で接続され、
前記光ケーブルの一部の光ファイバを伝送する光を、光電変換器によって電力に変換することで、前記センサを駆動することを特徴とする海洋環境情報取得システム。
【請求項2】
海洋に設置される海洋設備と、
前記海洋設備に接続されたケーブルと、
前記ケーブルに接続され、前記海洋設備近傍の情報を取得する情報取得手段と、
を具備し、
前記情報取得手段によって取得された前記情報を、前記ケーブルによって陸地に伝送し、陸地で前記情報を確認することが可能である海洋設備近傍の海洋環境情報取得システムであって、
前記海洋設備は、陸地まで敷設される海洋設備用ロープと接続され、
前記ケーブルは、光ファイバを有する光ケーブルであり、前記海洋設備用ロープに編み込まれ、
前記情報取得手段は、少なくとも水温を測定する温度センサを含み、
前記温度センサは、前記光ケーブルの一部の光ファイバを用いて直接水温を測定する光ファイバ温度センサであることを特徴とする海洋環境情報取得システム。
【請求項3】
前記密封接続箱を、前記海洋設備近傍の海上から沈降させることを特徴とする請求項1記載の海洋環境情報取得システム。
【請求項4】
前記密封接続箱を、前記海洋設備近傍の海上に浮遊させることを特徴とする請求項1記載の海洋環境情報取得システム。
【請求項5】
前記海洋設備は、海洋に設置される定置網であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の海洋環境情報取得システム。
【請求項6】
前記情報取得手段は、少なくとも電力駆動機器を含み、
前記光ケーブルと、前記電力駆動機器とは、密封接続箱で接続され、
前記光ケーブルの一部の光ファイバを伝送する光を、光電変換器によって電力に変換することで、前記電力駆動機器を駆動することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の海洋環境情報取得システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定置網等の海洋設備の近傍における、自然情報や魚群情報等を地上で把握することが可能な海洋環境情報取得システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
海洋において定置網等の海洋設備が設置される場合がある。このような定置網に対して、効率良く漁獲量を得るためには、定置網近傍の各種情報を得ることが重要である。例えば、水温や海流などの自然情報や、定置網近傍の魚群情報を把握することが重要である。
【0003】
このような情報を得るために、常に定置網まで船を出して情報収集を行うことは、時間や燃料費などが無駄となる。したがって、地上で定置網近傍の各種情報を取得することが望ましい。このような情報を地上で得ることができれば、最適なタイミングで定置網へ船を出せばよいため、非常に効率が良い。このように、漁協、漁業者などは、漁場環境(情報)を知ることで、時化等の海況の判断材料、漁獲時期等の予測など、効率的な漁業活動を行うことができる。また、水産試験場などの公的機関は、沿岸環境データを把握することで、海洋環境の変化に伴う水産資源の変化を予測・解析することができる。
【0004】
このような、海洋における各種情報を得る方法としては、海中の映像を無線システムによって地上に情報を発信することで、地上でこれらの情報を得る方法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11―298884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような無線システムは、非常に高価である。また、このような無線システム自体の故障による通信不良等の問題もある。したがって、定置網近傍の情報を地上で把握するため、より低コストで、より信頼性の高いシステムが望まれている。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、低コストで信頼性の高い海洋環境情報取得システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明は、海洋に設置される海洋設備と、前記海洋設備に接続されたケーブルと、前記ケーブルに接続され、前記海洋設備近傍の情報を取得する情報取得手段と、を具備し、前記情報取得手段によって取得された前記情報を、前記ケーブルによって陸地に伝送し、陸地で前記情報を確認することが可能である海洋設備近傍の海洋環境情報取得システムであって、
前記海洋設備は、陸地まで敷設される海洋設備用ロープと接続され、前記ケーブルは、光ファイバを有する光ケーブルであり、
前記海洋設備用ロープに編み込まれ、前記情報取得手段は、少なくとも、水温を測定する温度センサ、潮流情報を取得するセンサ又は塩分濃度情報を取得するためのセンサのいずれかのセンサを含み、前記光ケーブルと、前記センサとは、密封接続箱内で接続され、前記光ケーブルの一部の光ファイバを伝送する光を、光電変換器によって電力に変換することで、前記センサを駆動することを特徴とする海洋環境情報取得システムである。また、海洋に設置される海洋設備と、前記海洋設備に接続されたケーブルと、前記ケーブルに接続され、前記海洋設備近傍の情報を取得する情報取得手段と、を具備し、前記情報取得手段によって取得された前記情報を、前記ケーブルによって陸地に伝送し、陸地で前記情報を確認することが可能である海洋設備近傍の海洋環境情報取得システムであって、
前記海洋設備は、陸地まで敷設される海洋設備用ロープと接続され、前記ケーブルは、光ファイバを有する光ケーブルであり、
前記海洋設備用ロープに編み込まれ、前記情報取得手段は、少なくとも水温を測定する温度センサを含み、前記温度センサは、前記光ケーブルの一部の光ファイバを用いて直接水温を測定する光ファイバ温度センサであることを特徴とする海洋環境情報取得システムであってもよい。前記海洋設備は、海洋に設置される定置網であることが望ましい。なお、海洋環境情報とは、水温情報、潮流情報、塩分濃度情報、魚群情報などの海洋におけるあらゆる情報を指す。
【0009】
このように、無線ではなく有線によって海洋設備近傍の各種センサからの情報を地上に伝達するため、高価な無線システムが不要となる。したがって、低コストであり、無線システムの故障等の恐れもない。
【0010】
このように、海洋設備までの伝送ケーブルを光ケーブルとすることで、ケーブルでの漏電の恐れがない。特に、本システムは、陸地から海洋設備までの距離が離れているため、電力ケーブルで情報や駆動用の電力を送電するためには、比較的高い電圧が必要である。したがって、電力ケーブルの絶縁破壊等の恐れがある。しかし、光ケーブルであれば、このような絶縁破壊の恐れはない。
また、このように、ケーブルを海洋設備用ロープに編み込むことで、海洋設備用ロープの布設
と同時に、ケーブルの敷設を完了することができる。また、海洋設備用ロープの外周にケーブルが露出しないため、敷設等の際に、ケーブルが損傷を受けることを防止することができる。
【0011】
また、重要な情報である水温を検知するための温度センサを、光ファイバを用いた光ファイバ温度センサとすることで、温度センサの駆動や、情報を伝送するための電力が不要である。
【0012】
前記情報取得手段は、少なくとも電力駆動機器を含み、前記光ケーブルと、前記電力駆動機器とは、密封接続箱で接続され、前記光ケーブルの一部の光ファイバを伝送する光を、光電変換器によって電力に変換することで、前記電力駆動機器を駆動することが望ましい。
【0013】
このように、電気によって駆動する魚群探知機などの電力駆動機器に対しては、光ケーブルによって伝送された光を、海洋設備近傍で電力に変換することで駆動させることができる。このため、陸地から定置網までの間に、駆動用の電力ケーブルを敷設する必要がない。
【0015】
このように、ケーブルを海洋設備用ロープに編み込むことで、海洋設備用ロープの布設と同時に、ケーブルの敷設を完了することができる。また、海洋設備用ロープの外周にケーブルが露出しないため、敷設等の際に、ケーブルが損傷を受けることを防止することができる。
【0016】
前記密封接続箱を、前記海洋設備近傍の海上から沈降させてもよく、前記密封接続箱を、前記定置網近傍の海上に浮遊させてもよい。
【0017】
密封接続箱を海上から沈降させて配置することで、波の影響や潮位変化に伴い、密封接続箱から露出する部位のケーブルに大きな曲げ変形などが付与されることを抑制することができる。一方、密封接続箱を海上に浮遊させることで、海中に沈降させる場合と比較して、水圧の影響を受けにくく、また、接続作業などを行う際に、船上に密封接続箱を引き上げるのが容易となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低コストで信頼性の高い海洋環境情報取得システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】海洋環境情報収集システム10を示す概略構成図。
【
図2】(a)は定置網用ロープ3に固定部材で光ファイバケーブル5を固定した状態を示す図、(b)は定置網用ロープ3に光ファイバケーブル5を編み込んだ状態を示す図、(c)は(b)のAーA線断面図。
【
図3】海洋環境情報収集システム10の構成を示すブロック図。
【
図4】海洋環境情報収集装置1を示すハードウェア構成図。
【
図5】海洋環境情報共有システム40の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態にかかる海洋環境情報収集システムについて説明する。
図1は、海洋環境情報収集システム10を示す概略構成図である。海洋環境情報収集システム10は、主に、海洋環境情報収集装置1、定置網用ロープ3、光ファイバケーブル5、クロージャ11、定置網13等から構成される。海洋環境情報収集システム10は、例えば、定置網13近傍の海洋環境情報を取得するシステムである。
【0021】
海洋環境情報収集装置1は、地上に設置される。海洋環境情報収集装置1は、例えばコンピュータであり、図示を省略した電力ケーブルやネットワークケーブルが接続される。海洋環境情報収集装置1については、詳細を後述する。
【0022】
海洋環境情報収集装置1には、図示を省略した光電変換器やコネクタ等を介して光ファイバケーブル5が接続される。光ファイバケーブル5は、例えばスロットの外周に設けられた溝に、複数のテープ心線が設けられ、内部にテンションメンバが設けられた多心光ファイバを用いることができるが、他の構造の多心光ファイバや、単心ファイバでもよい。また、スロットの外周部には、防水シースが設けられる。
【0023】
光ファイバケーブル5は、陸上で定置網用ロープ3と一体化される。
図2(a)は、光ファイバケーブル5と定置網用ロープ3とを結合した一例を示す図である。光ファイバケーブル5は、例えばバンドや紐部材等の固定部材15によって、定置網用ロープ3に沿って固定される。なお、光ファイバケーブル5は、定置網用ロープ3の曲げに追随できるように、固定部材15による固定部間に、多少の余長を設けても良い。
【0024】
また、
図2(b)に示すように、光ファイバケーブル5を定置網用ロープ3と一体に編み込んでも良い。
図2(c)は、
図2(b)のA−A線断面図である。
図2(c)に示すように、定置網用ロープ3は、例えば、複数のワイヤロープ3aが撚り合わされ、その外周に繊維ロープ3b等が設けられる。このような場合に、例えば、ワイヤロープ3aと繊維ロープ3bとの隙間などに、光ファイバケーブル5を編み込むこともできる。なお、定置網用ロープ3の断面構造は図示した例に限られない。定置網用ロープ3がいずれの断面構造であっても、光ファイバケーブル5を素線等の隙間に編み込むことで、定置網用ロープ3と光ファイバケーブル5とを一体化することができる。
【0025】
図1に示すように、定置網用ロープ3は、その一端が地上に係留され、海中または海上に敷設され、他端が海洋に設けられた海洋設備である定置網13に接合される。なお、陸地に近い部分では、他の漁を行うための船等の邪魔にならないように、定置網用ロープ3は海底に沈められ、陸地からある程度離れた位置で、定置網用ロープ3をブイ9によって海上に浮上させる。この際、海底に沈められる範囲の定置網用ロープ3には、保護管7を設ける。保護管7は、例えば樹脂製の可撓管である。保護管7を用いることで、海流等の影響で、定置網用ロープ3および光ファイバケーブル5が、海底との接触によって損傷を受けることを防止することができる。
【0026】
定置網用ロープ3は、所定間隔でブイ9によって定置網13まで海上に敷設される。定置網13近傍には、密封接続箱であるクロージャ11が設けられる。クロージャ11には、クロージャ11近傍で定置網用ロープ3から分離された光ファイバケーブル5が導入される。また、クロージャ11内で、光ファイバケーブル5には、各種の情報取得手段が接続される。情報取得手段は、定置網13近傍に配置される。情報取得手段によって、定置網13近傍の各種海洋環境情報を得ることができる。
【0027】
なお、クロージャ11は、定置網13近傍において、海中に沈められて配置されても良い。例えば、定置網13を係留するロープ等にクロージャ11を固定し、海面から所定の深さにクロージャ11を配置しても良い。このようにすることで、クロージャ11が、波や潮位変化の影響を受けにくくすることができる。したがって、クロージャ11から引出されるケーブル類に、過剰な曲げ変形等が付与されることを抑制することができる。この場合には、密閉構造のクロージャ11が浮き上がらないように、浮力を調整可能な構造を設けても良い。
【0028】
また、クロージャ11は、定置網13近傍において、海上に浮遊させることもできる。例えば、定置網13近傍のブイ9に固定しても良い。このようにすることで、クロージャ11に付与される水圧の影響を小さくすることができ、また、クロージャ11の位置を容易に把握することができるため、メンテナンス等が容易である。この場合には、クロージャ11が沈まないように、浮力を向上させる構造を設けても良い。
【0029】
次に、海洋環境情報収集システム10の詳細について説明する。
図3は、海洋環境情報収集システム10の構成を示すブロック図である。コネクタ部18では、光ファイバケーブル5の各光ファイバ心線が分岐され、光ファイバケーブル5の一部の光ファイバ心線には、光源17から光が導入される。
【0030】
光が導入された光ファイバ心線は、定置網用ロープ3とともに、クロージャ11まで敷設される。クロージャ11内では、光ファイバ心線が光電変換器19に接続される。光電変換器19は、光を電力に変換する。すなわち、光ファイバ心線に導入され、クロージャ11まで伝送された光は、光電変換器19によって電力に変換される。
【0031】
光電変換器19には、電力ケーブルを介して給電ユニット21が接続される。給電ユニット21は、電力で駆動する機器(情報取得手段)に電力を供給する。図示した例では、給電ユニット21に魚群探知機23が接続される。
【0032】
クロージャ11から引出された魚群探知機23は、海底に向けて超音波の発振および受振を行う。得られた情報は、再び光電変換器19によって光信号に変換される。光電変換器19には、光ファイバケーブル5の一部の光ファイバ心線が接続され、定置網用ロープ3とともにコネクタ部18まで敷設される。
【0033】
魚群探知機23からの魚群情報(海洋環境情報)を伝達する光ファイバ心線は、コネクタ部18において、光電変換器27に接続され、電気信号として海洋環境情報収集装置1に送られる。
【0034】
また、その他の情報取得手段としては、例えば温度センサ等が用いられる。温度センサは、魚群探知機23と同様に、電力によって駆動させても良いが、図示したように、光温度センサ25を用いることで、光ファイバ心線によって、直接温度を測定することもできる。このように、光温度センサ25を用いれば、温度センサ用の駆動電源等が不要となる。光温度センサ25で得られた水温情報(海洋環境情報)は、光のまま直接光電変換器27まで送られて、電気信号として海洋環境情報収集装置1に送られる。
【0035】
なお、定置網13近傍の海洋環境情報を取得するためのセンサとしては図示した例には限られず、潮流情報、塩分濃度情報、映像情報などを取得するための、電力または光で駆動する各種情報取得機器を用いることができる。
【0036】
次に、海洋環境情報収集装置1について説明する。
図1は、海洋環境情報収集装置1を示すハードウェア構成図である。海洋環境情報収集装置1は、例えばコンピュータであり、制御部33、記憶部35、メディア入出力部37、通信制御部39、入力部41、表示部43、周辺機器I/F部45等から構成され、それらがバス47を介して接続される。
【0037】
制御部33は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。CPUは、記憶部35、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス47を介して接続された各装置を駆動制御し、海洋環境情報収集装置1が行う処理を実現する。
【0038】
ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部35、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部33が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0039】
記憶部35は、HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(フラッシュSSD)(ソリッドステートドライブ)であり、制御部33が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、後述の処理に相当するアプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、制御部33により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。また、記憶部35には、本発明において用いられる、各種データが保管される。
【0040】
メディア入出力部37(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CDドライブ(−ROM、−R、RW等)、DVDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、MOドライブ等のメディア入出力装置を有する。
【0041】
通信制御部39は、通信制御装置、通信ポート等を有し、コンピュータとネットワーク間の通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワークを介して、例えば、制御部33によって天気情報や気温情報をインターネット上から取得することができる。
【0042】
入力部41は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。入力部41を介して、コンピュータに対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
【0043】
表示部43は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。
【0044】
周辺機器I/F(インタフェース)部45は、コンピュータに周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部45を介してコンピュータは周辺機器とのデータの送受信を行う。
【0045】
バス47は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0046】
図1に示すように、定置網用ロープ3および光ファイバケーブル5の敷設が完了すると、制御部33は、光源17を発光させて、各情報取得機器を駆動する。また、制御部33は、各情報取得機器からの情報(水温情報、潮流情報、塩分濃度情報、魚群情報など)を、継続的に、または所定時間毎に取得して、記憶部35に保存する。なお、得られた情報に基づいて、制御部33は、予め記憶部35に記憶された情報と比較して、現状での漁獲予測を行うこともできる。例えば、過去の温度情報、潮流情報、魚群情報と、漁獲量情報との相関を記憶部35に記憶しておき、現状の温度情報、潮流情報、魚群情報と比較することで、過去の実績に対して、現在の漁獲量予測を行うこともできる。
【0047】
制御部33により取得された情報は、リアルタイムで表示部43等に表示させることもできる。また、制御部33は、得られた情報を、リアルタイムで、または所定の間隔で、他のサーバに送ることもできる。
【0048】
図5は、海洋環境情報供給システム50を示すブロック図である。制御部33は、海洋環境情報収集装置1で収集された各種の情報を、海洋環境情報収集装置1に直接またはネットワークを介して接続されたサーバ53に保存することができる。サーバ53は、例えばコンピュータであり、海洋環境情報収集装置1と同様の構造である。
【0049】
サーバ53の記憶部に保存された各種情報は、ネットワーク51を介して各端末55で見ることができる。また、サーバ53の制御部は、各端末55に対して、各種情報を自動送信することもできる。なお、サーバ53から各端末55に対する情報の送信等を行うネットワーク51は、無線であっても有線であっても良い。
【0050】
このように、本実施の形態によれば、定置網13近傍の海洋環境情報を、無線システムを用いることなく地上で得ることができる。したがって、高価な無線システムを用いる必要がなく、無線システムの故障等の問題がない。
【0051】
また、伝送ケーブルとして光ファイバケーブル5を用いることで、漏電等の恐れがない。この場合、光温度センサなどの光を用いたセンサを用いることで、光のみによって海洋環境種情報を取得することができる。
【0052】
また、電力を要するセンサ類については、光を電力に変換する光電変換器19を用いることで、電力ケーブルの使用を最小限に抑えることができる。
【0053】
また、光ファイバケーブル5は、定置網用ロープ3とともに敷設されるため、敷設作業が容易であるとともに、破断などの発生を抑制することができる。なお、使用後は、定置網用ロープ3とともに、容易に光ファイバケーブル5を回収することができる。
【0054】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0055】
例えば、前述の実施形態では、光ファイバケーブル5を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、電力ケーブルを定置網用ロープ3に一体化しても良い。このようにすれば、光電変換器が不要となり、電力によって駆動する各種情報取得機器を使用することができる。また、海洋設備として、定置網に適用する例を説明したが、海洋に設置され、陸地までロープ等が敷設される海洋設備であれば、例えばブイなどの他の海洋設備に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1………海洋環境情報収集装置
3………定置網用ロープ
3a………ワイヤロープ
3b………繊維ロープ
5………光ファイバケーブル
7………保護管
9………ブイ
10………海洋環境情報収集システム
11………クロージャ
13………定置網
15………固定部材
17………光源
18………コネクタ部
19、27………光電変換器
21………給電ユニット
23………魚群探知機
25………光温度センサ
33………制御部
35………記憶部
37………メディア入出力部
39………通信制御部
41………入力部
43………表示部
45………周辺機器I/F部
47………バス
50………海洋環境情報共有システム
51………ネットワーク
53………サーバ
55………端末