特許第6356568号(P6356568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356568
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】マグネトロン
(51)【国際特許分類】
   H01J 23/04 20060101AFI20180702BHJP
   H01J 23/12 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   H01J23/04
   H01J23/12 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-208447(P2014-208447)
(22)【出願日】2014年10月9日
(65)【公開番号】特開2016-81574(P2016-81574A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098372
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 保人
(72)【発明者】
【氏名】小畑 英幸
(72)【発明者】
【氏名】宮本 洋之
(72)【発明者】
【氏名】梅田 昭則
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭40−026573(JP,Y1)
【文献】 特開2012−199031(JP,A)
【文献】 実開昭61−004347(JP,U)
【文献】 特開昭50−151458(JP,A)
【文献】 特開昭55−103781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J1/00−1/12
1/32−1/98
5/00−7/46
19/00−27/26
35/00−37/18
37/21
37/24−37/295
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状陽極の中心部に配置される陰極を陰極支持体で支持し、この陰極支持体の円筒を上記陽極の側面開口に接続することにより、上記陰極を片持ち支持するマグネトロンにおいて、
上記陰極支持体円筒の上記陽極側面開口との接続部に設けられ、可塑性のある金属からなる接続支持部と、
上記陰極支持体円筒の一部として設けられ、上記接続支持部よりも可塑性の低い金属からなり、上記陽極に対する上記陰極の位置を調整するための位置調整部と、を設けたことを特徴とするマグネトロン。
【請求項2】
円筒状陽極の中心部に配置される陰極を陰極支持体で支持し、この陰極支持体の円筒を上記陽極の上面開口に接続することにより、上記陰極を陽極中心軸方向から支持するマグネトロンにおいて、
上記陰極支持体円筒の上記陽極上面開口に設けられ、可塑性のある金属からなる接続支持部と、
上記陰極支持体の円筒の一部として設けられ、上記接続支持部よりも可塑性の低い金属からなり、上記陽極に対する上記陰極の位置を調整するための位置調整部と、を設けたことを特徴とするマグネトロン。
【請求項3】
上記位置調整部として、円筒外側へ突起を持つフランジ状円筒を配置し、このフランジ状円筒の円周上の複数箇所に、これらの各箇所と上記陽極との間隔を変化させるねじ機構を設け、このねじ機構により上記陽極に対する上記陰極の位置を調整することを特徴とする請求項1又は2記載のマグネトロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロ波を発振するマグネトロン、特に陰極を円筒状陽極の中心部に配置するマグネトロンの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マグネトロンは、簡便な構造で効率良く大出力のマイクロ波を発振可能なことから、様々なアプリケーションや装置に利用されており、例えば図7(横方向片持ちタイプ),図8(中心軸方向支持タイプ)に示される構造となっている。
【0003】
図7のマグネトロンは、円筒状陽極(アノード)1の中心部に、陰極(カソード)2が配置され、この陰極2は、陽極1の側面方向に設けられた円筒状の陰極支持体4により支持されており、このマグネトロンは、横方向片持ちタイプとなる。即ち、上記陰極支持体4には、線(棒)状の陰極電極5a,5bが配置され、この陰極電極5a,5bを陰極2の上端と下端に接続することで、陰極2が陽極1の中心位置に取付け、固定される。
【0004】
また、上記陰極支持体4では、絶縁材からなる絶縁部6により陰極2が支持され、かつ陽極1と陰極2との間の絶縁が確保されている。更に、この陽極1と円筒状の陰極支持体4の内部は真空に維持され、図示していないが、陽極1の上下には磁石が配置される。
【0005】
図8のマグネトロンは、円筒状陽極11の中心部に陰極12が配置され、この陰極12は、陽極11の中心軸方向に設けられた円筒状の陰極支持体14により支持されており、このマグネトロンは、中心軸方向支持タイプとなる。即ち、陰極支持体14には、円筒状の陰極電極15が配置され、この陰極電極15を陰極12の一端に接続することで、陰極12が陽極11の中心位置に取付け、固定される。
【0006】
また、上記陰極支持体14では、絶縁材からなる絶縁部16により陰極12が支持され、かつ陽極11と陰極12との間の絶縁が確保され、この陽極11と陰極支持体14の内部は真空に維持される。なお、上記の横方向片持ちタイプの一例は下記特許文献1に、中心軸方向支持タイプの一例は下記特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−199031号公報
【特許文献2】特開2005−158276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、マグネトロンでは、陽極1,11に対する陰極2,12の組立位置の精度が極めて重要であり、その精度は0.01mm単位で調整されており、この組立位置が変化すると、陰極2,12と陽極共振回路の距離が周上において一定ではなくなり、場所によって動作点が異なることから、マグネトロンの様々な動作特性に変化が生じ、例えば図5(B)の部分100に示すような不要モードの発振が生じて動作が不安定になるという問題がある。
【0009】
従来のマグネトロンでは、発振周波数を精密に同調させるものがあり、例えば混信を避けるため精密に周波数を変更して探知を行うレーダや、高いQ特性を持つ狭帯域の共振器に、精密に同調したマイクロ波を投入し、電子に加速電界を加えるLinac等に使用されるマグネトロン等の場合には、各種のシステムや動作点の違いに対応した安定動作が要求される。同じ設計で製作されたマグネトロンをシステムの要求により異なる動作点で使用されることが多く、陰極位置の最良点は、これらの使用条件で変わることになる。しかも、不要モードによる不安定発振は、性能を低下させることから好ましくなく、その回避が必要となる。
【0010】
また、マグネトロンの動作中、その管球の内部が加熱されるが、これに伴い陰極2,12を保持する陰極電極5a,5b,15の熱膨張が生じることで、陽極1,11に対する陰極2,12の位置が僅かに変化することが起こる。
【0011】
また、図7のマグネトロンの場合、陽極1の上下方向[図7(B)のz軸方向]の下から上へ磁界が与えられた状態で、陰極電極5a,5bから陰極2へ電流が与えられるため、ローレンツ力が働き、例えば陰極2には、図7(B)のy軸方向で図の奥へ向かう力がかかり、その位置が僅かに変化する。
【0012】
更に、マグネトロンを動作させる電流は、通常、パルスで流れることから、パルス毎に力が働き、陰極2,12の位置を振動させることがある。この振動による動きは、特に図7のマグネトロンの場合、陰極支持体5a,5bの横方向片持ちの構造からねじられて発生することがあり、事前の調整が困難であった。
【0013】
以上のことから、図7のマグネトロンの組立時では、陰極電極5a,5bの熱膨張や陰極2へ与えられるローレンツ力を考慮して、陰極2の位置が確定され、位置決めされるが、この熱膨張やローレンツ力は、使用条件等で変化するものであるため、マグネトロンが使用される各種のシステムや装置によって事後的に調整できれば、特性を最良点に調整可能となり安定動作するマグネトロンを供給することができることになる。
【0014】
図8のマグネトロンの場合は、磁界に対して電界の向きが平行となるためローレンツ力は発生しないが、図7のマグネトロンの場合と同様に、熱膨張や振動により陰極位置が変化する。
【0015】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、組立時の陰極の位置が変化した場合、或いは使用条件の異なる各種のシステムや装置でも、組立後に陰極位置を調整することで、不要モードの発振等をなくした安定動作が確保できるマグネトロンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、円筒状陽極の中心部に配置される陰極を陰極支持体で支持し、この陰極支持体の円筒を上記陽極の側面開口に接続することにより、上記陰極を片持ち支持するマグネトロンにおいて、上記陰極支持体円筒の上記陽極側面開口との接続部に設けられ、可塑性のある金属からなる接続支持部と、上記陰極支持体円筒の一部として設けられ、上記接続支持部よりも可塑性の低い(変形し難い)金属からなり、上記陽極に対する上記陰極の位置を調整するための位置調整部と、を設けたことを特徴とする。
請求項2の発明は、円筒状陽極の中心部に配置される陰極を陰極支持体で支持し、この陰極支持体の円筒を上記陽極の上面開口に接続することにより、上記陰極を陽極中心軸方向から支持するマグネトロンにおいて、上記陰極支持体円筒の上記陽極上面開口に設けられ、可塑性のある金属からなる接続支持部と、上記陰極支持体の円筒の一部として設けられ、上記接続支持部よりも可塑性の低い金属からなり、上記陽極に対する上記陰極の位置を調整するための位置調整部と、を設けたことを特徴とする。
請求項3の発明は、上記位置調整部として、円筒外側へ突起を持つフランジ状円筒を配置し、このフランジ状円筒の円周上の複数箇所に、これらの各箇所と上記陽極との間隔を変化させるねじ機構を設け、このねじ機構により上記陽極に対する上記陰極の位置を調整することを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、陽極の側面開口又は上面開口と陰極支持体円筒との接続部における陰極支持体円筒側に、可塑性金属からなる円筒状の接続支持部を設け、この陰極支持体に位置調整部から力を加えれば、接続支持部の塑性変形によって陰極支持体が僅かに動き、陽極に対する陰極の位置が調整される。
上記請求項3によれば、フランジの円周上に例えば均等に設けられた4箇所のねじ機構を動かし、各箇所の間隔を伸縮変化させることにより、陽極に対する陰極の位置が調整される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のマグネトロンによれば、組立時に設定した陰極の位置が変化した場合、或いは使用条件の異なる各種のシステムや装置においても、組立後(真空封止後)に、陰極位置を調整することが可能となり、不要モードの発振等をなくした安定動作が確保できるという効果がある。
【0019】
また、ローレンツ力により発生する構造上の予想外の陰極位置ずれや振動にも対処が可能となる。
更に、陰極支持体の位置調整部よりも可塑性の高い金属の接続支持部を設けることにより、接続部に例えばベローズのような高価な真空部品を使用する必要がなく、陰極の位置出し機構を有するマグネトロンと比較して、コスト上昇を抑えた製品設計が実現できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る第1実施例のマグネトロンの構成を示し、図(A)は断面図、図(B)は陰極のxyz軸の図である。
図2】第2実施例のマグネトロンの構成を示し、図(A)は断面図、図(B)は陰極のxyz軸の図である。
図3】第3実施例のマグネトロンの構成を示す断面図である。
図4】第4実施例のマグネトロンの構成を示す断面図である。
図5】実施例のマグネトロンの特性[図(A)]と従来のマグネトロンの特性[図(B)]を示すグラフ図である。
図6】実施例の接続支持部の他の構成を示し、図(A)は斜視図、図(B)はひだ部の断面図である。
図7】従来のマグネトロンの一例(横方向片持ちタイプ)の構成を示し、図(A)は断面図、図(B)は陰極のxyz軸の図である。
図8】従来のマグネトロンの他の例(中心軸方向支持タイプ)の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、第1実施例のマグネトロンの構成(出力、磁気回路を除く)が示されており、この第1実施例は、横方向片持ちタイプである。図1に示されるように、マグネトロンでは、円筒状陽極(アノード)1の中心部に陰極(カソード〉2が配置されており、この陽極1はその内側に複数のベーン3を放射状に備え、上記陰極2は円筒体の中央の電子放出部2aと上下のエンドシールド2bを有している。
【0022】
上記陰極2は、その上下のエンドシールド2bが線(棒)状の陰極電極5a,5bで固定され、この陰極電極5a,5bが陰極入力部である絶縁体6に固定されることにより、陰極支持体7により支持される。そして、実施例の陰極支持体7には、円筒本体として、陽極1の側面(円形)開口1Hに接続固定される円筒状の接続支持部8と位置調整部としてのフランジ(フランジ状円筒)9が設けられており、接続支持部8として銅(Cu),ニッケル(Ni),キュープロニッケル(銅-ニッケル合金)等、フランジ9としてコバール(Co)等の金属が用いられる。また、陽極1の側面開口1Hの部分は、例えば銅からなり、絶縁体6はガラスやセラミックで構成されており、これらはロウ付けやアーク溶接で接合される。
【0023】
即ち、接続支持部8として塑性変形が可能な金属を用い、位置調整部であるフランジ9としては、接続支持部8よりも塑性変形が起こり難い金属を用い、フランジ9を把持して陰極支持体7を僅かに動かし、陰極2の位置が変えられるようにしている。また、フランジ9としてコバールを使用するのは、このコバールが絶縁体6の熱膨張係数に近い金属であり、マグネトロン製造工程上の熱処理や、完成後の動作時の昇温での破損を防止できるようにするためでもある。なお、上記接続支持部8としてアニール化した(なました)金属を用いてもよい。
【0024】
上記絶縁体6は、内部の電極保持部6aが内側円筒体6bを介して外側円筒体6cに繋がるように構成されており、フランジ9,接続支持部8及び陽極1側に対し沿面距離(電気的安全性を確保するための距離)を保つように構成される。このような構成により、陰極2が陽極1の中心部の所定位置に取付け、固定されると共に、陽極1及び陰極支持体7の内部が真空に維持され、この陽極1の上下に、電磁石や永久磁石を配置することにより磁界が与えられる。
【0025】
第1実施例は、以上の構成からなり、この例では、陽極1の側面開口に接続される陰極支持体7の円筒体に、銅等の可塑性のある接続支持部8を取り付けているため、フランジ9に力を加えることにより、接続支持部8の塑性変形により陰極支持体7が動き、これにより、陽極1に対する陰極2のx軸,y軸,z軸(3次元)の位置を調整できることになる。上述のように、絶縁体6はガラスやセラミックを材料とするため、この絶縁体6に力を加えて陰極支持体7を動かすことはできず、フランジ9の存在によって陰極2の調整が可能となる。
【0026】
マグネトロンの製作では、組立時に精密な位置合わせが行われており、組立後に行う位置合わせは微調整でよいことから、位置調整部としてのフランジ9を介しての調整も小さなものでよく、この調整は、動作特性に応じて予め把握されている手順に従って実施することになる。
【0027】
図2には、第2実施例のマグネトロンの構成(出力、磁気回路を除く)が示されており、この第2実施例は、中心軸方向支持タイプである。図2に示されるように、マグネトロンでは、円筒状陽極(アノード)11の中心部に陰極(カソード〉12が配置され、この陽極11はその内側に複数のベーン13を放射状に備え、上記陰極12は円筒体の中央の電子放出部12aと上下のエンドシールド12bを有する。
【0028】
この陰極12は、その上側のエンドシールド2bが円筒状の陰極電極15で固定され、この陰極電極15が陰極入力部である絶縁体16に固定されることにより、陰極支持体17により支持される。この陰極支持体17には、円筒本体として、陽極11の上面開口11Hに接続固定される円筒状の接続支持部18と位置調整部としてのフランジ19が設けられており、第1実施例と同様に、接続支持部18として、銅,ニッケル,キュープロニッケル等、フランジ19としてコバール等の金属が用いられる。また、陽極11の側面開口11Hの部分は、例えば銅からなり、絶縁体16はガラスやセラミックで構成されており、これらはロウ付けやアーク溶接で接合される。
【0029】
即ち、接続支持部18として塑性変形が可能な金属を用い、位置調整部であるフランジ19としては、接続支持部18よりも塑性変形が起こり難い金属を用い、フランジ19を介して陰極支持体17を僅かに動かし、陰極12の位置が変えられるようにする。なお、上記接続支持部18としてアニール化した(なました)金属を用いてもよい。
【0030】
このような構成により、陰極12が陽極11の中心部の所定位置に取付け、固定され、陽極11及び陰極支持体17の内部が真空に維持され、この陽極11の上下に、電磁石や永久磁石を配置することにより磁界が与えられる。
【0031】
第2実施例は、以上の構成からなり、この例でも、陽極11の上面開口11Hに接続される陰極支持体17の円筒体に、銅等の可塑性を持つ接続支持部18を取り付けているため、フランジ19に力を加えることにより、接続支持部18の塑性変形を介して陰極支持体17が動き、これにより、陽極11に対する陰極12のx軸,y軸,z軸の位置を調整することが可能となる。この実施例の場合も、絶縁体16はガラスやセラミックが材料となるため、この絶縁体16に力を加えて陰極支持体17を動かすことはできず、フランジ17の役割は大きい。
【0032】
なお、第1実施例及び第2実施例では、位置調整部としてフランジ9,19を設けたが、このフランジの代わりに、円筒に板状の複数の突起を取り付けたものを用いてもよいし、工具等で把持して力を加えられる長さがあれば、単なる円筒でもよく、簡略な構成とすれば、部品の追加が削減でき、コスト上昇を抑制し、空間の省スペース化も図ることができる。
【0033】
図3には、第3実施例のマグネトロンの構成が示されており、この第3実施例は、横方向片持ちタイプにおいて陰極位置調整のためのねじ機構を設けたものである。
図3に示されるように、第1実施例と同様に接続支持部8が設けた構成に加えて、ねじ機構20を具備しており、このねじ機構20には、フランジ21の円周上に均等間隔で4箇所等にネジ調整部が設けられる。このフランジ21の各々のネジ調整部は、雌ねじ部を有する二股部、この二股部の雌ねじ部と陽極1の雌ねじ部lfに螺合するねじ(雄ねじ)体22、二股部に配置されたナット23からなる。
【0034】
このような第3実施例では、ねじ体22が雌ねじ部lfに固定された状態で、それぞれのナット23を回転させることで、陽極1に対する陰極支持体7の位置を変えることができる。例えば、ナット23を(ねじ頭側から見て)時計方向へ回転させれば、可塑性を持つ接続支持部8が伸縮することで、フランジ21を含めた陰極支持体7が陽極1側へ移動し、反時計方向へ回転させれば、フランジ21を含めた陰極支持体7が陽極1から離れる方向へ移動する。このとき、ねじ22は陽極1に結合して固定されているため、調整位置での固定状態も得られる。また、マグネトロンの内部は、接続支持部8の可塑性により真空状態が維持される。
【0035】
図4には、第4実施例のマグネトロンの構成が示されており、この第4実施例は、中心軸方向支持タイプにおいて陰極位置調整のためのねじ機構を設けたものである。
図4に示されるように、第2実施例と同様に接続支持部18が設けた構成に加えて、ねじ機構30を具備しており、このねじ機構30には、フランジ31の円周上に均等間隔で4箇所等にネジ調整部が設けられる。このフランジ31の各々のネジ調整部は、雌ねじ部を有する二股部、この二股部の雌ねじ部と陽極1の雌ねじ部11fに螺合するねじ体22、ナット23からなる。
【0036】
このような第4実施例でも、それぞれのナット23を回転させると、可塑性を持つ接続支持部8が伸縮することにより、陽極1に対する陰極支持体7の位置を変えることができ、調整位置での固定状態も得られることになる。なお、上記第3実施例と第4実施例でも、フランジ21,31の代わりに、円筒の外側に板状の突起を複数設けたものを用い、この板状の突起を二股部として上記のねじ機構を構成するようにしてもよい。
【0037】
図5(A)には、実施例のマグネトロンで陰極位置を調整した場合の特性が示されている。上述のように、従来において位置調整をしない場合は、図5(B)のように、部分100において、不要モードの発振が存在していたが、実施例では、部分101で示されるように、不要モード発振の存在を解消し、安定した動作が得られた。
【0038】
図6には、上記実施例の接続支持部8,18の他の例が示されており、この例では、図6に示されるように、1つのヒダを持つヒダ部(折曲げ部)32を設けている。このヒダ部32には、複数のヒダを設けてもよく、これによれば、接続支持部8,18の伸縮が促進され、調整を容易にするという利点がある。また、このような形状は、型で簡単に製作可能なことから、コストを抑えて有効な可動幅を実現できるという利点がある。
【0039】
以上のように、本発明では、組立時の陰極の位置が変化した場合、或いは使用条件の異なる各種のシステムや装置においても、陰極位置を確定し、真空封止した後でも、陰極の位置を調整することが可能となり、不要モードの発振等をなくした安定動作が確保することができ、またローレンツ力により発生する構造上の予想外の陰極位置ずれや振動にも対処することが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1,11…陽極(アノード)、 2,12…陰極(カソード)、
3…ベーン、 4,14,7,17…陰極支持体、
5a,5b,15…陰極電極、 6,16…絶縁体、
8,18…接続支持部、 9,19,21,31…フランジ、
20,30…ねじ機構、 22…ねじ体、
23…ナット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8