(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルミナ含有コート層は、前記分離膜上に形成され、前記アルミナ含有コート層は、前記アルミナ粉末、及びフッ素含有樹脂またはフッ素含有ゴムを含む結合剤から形成される、請求項10に記載の二次電池。
前記アルミナ含有コート層は、前記分離膜上に形成され、前記アルミナ含有コート層は、前記アルミナ粉末、及びアクリレート系単量体または2種以上の単量体の共重合体を含む結合剤から形成される、請求項10に記載の二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、軽装嵩密度と重装嵩密度との比率が所定の範囲であるアルミナ粉末、アルミナスラリー、アルミナ含有コート層、積層分離膜及び二次電池に関する。
【0035】
<アルミナ粉末>
本発明のアルミナ粉末は、軽装嵩密度(LBD)と重装嵩密度(TBD)の比率(TBD/LBD)が1.5 以上である。
【0036】
TBD及びLBDは、JIS R 9301−2−3の規格に基づいて測定することができる。より具体的には、TBDおよびLBDの測定容器は、内径37mm、高さ186mm、内容積200mLのガラス製シリンダーを用いる。シリンダー上端1cm上から粉末を自然落下させ、シリンダーに満杯になるまで粉末を投入し、メスシリンダー上端からはみ出た分の粉末をガラス棒ですり落とした後、シリンダー内の粉末質量を測定し、質量をシリンダー体積で除して軽装嵩密度(LBD)を算出する。その後、シリンダーを3cmの高さから100回落下させてタッピングを行い、その時の体積を読みとり、質量を体積で除して重装嵩密度(TBD)を算出する。なお、100回のタッピングの途中で粉末の体積減少は飽和していることを確認の上で測定を行う。
【0037】
TBD及びLBDの値の間の差が小さいことは、タッピング後も空隙率に大きな変化がないことを意味し得る。この場合、前記TBD/LBDの値が相対的に減少する。TBD及びLBDの値の間の差が大きいことは、タッピング後の空隙率の減少程度が大きいことを意味し得る。この場合、前記TBD/LBDの値が相対的に増加する。
【0038】
TBD/LBDの値が1.5未満であると、アルミナ粉末に含まれる個々の二次粒子(凝集粒子)の嵩密度が高くなりすぎる。この場合、アルミナ粉末を含むアルミナスラリーにおいてアルミナ凝集粒子の沈殿が起こりやすくなり、前記アルミナ粉末の分散安定性の確保が困難となる。
【0039】
TBD/LBDの値には、上限が無いが、TBDとLBDの関係がアンバランスになると、粒子形状の不均一性が高まったり、粒子の充填性が悪くなったりするため、厚さが均一な薄膜のアルミナ含有コート層を形成することが困難となることがある。
【0040】
前記アルミナ粉末のTBD/LBDの下限は、1.50であり、好ましくは1.60、より好ましくは1.65、さらに好ましくは1.80、より好ましくは1.82である。前記アルミナ粉末のTBD/LBDの上限は、特に規定されていないが、上限は2.00が好ましく、より好ましくは1.90である。例えば、前記アルミナ粉末のTBD/LBDの値は1.80〜1.90の範囲であってもよく、1.82〜1.90の範囲であってもよい。
【0041】
前記のアルミナ粉末のLBD値は0.39g/cm
3以上0.44g/cm
3以下であることが好ましく、前記アルミナ粉末のTBD値は0.72g/cm
3以上0.80g/cm
3以下であることが好ましく、前記TBD/LBDの範囲内で調節することができる。LBD値又はTBD値は、例えば、アルミナ粉末の粒子径、粒度分布、加工方法などにより調節できる。
【0042】
前記アルミナ粉末の粒子径又は粒度分布をさらに制御すること、例えば、前記アルミナ粉末の体積基準の累積平均粒子径を制御することによって、得られるアルミナ含有コート層の膜厚の均一性、耐熱性などを向上させることができる。
【0043】
前記アルミナ粒子について制御される体積基準の累積粒子径は、粒度分布曲線から決定される微粒側から累積百分率50%に対応する粒子径であるD50(体積基準累積百分率50%相当粒子径)、微粒側から累積百分率90%に対応する粒子径であるD90(体積基準累積百分率90%相当粒子径)、微粒側から累積百分率10%に対応する粒子径であるD10(体積基準累積百分率10%相当粒子径)、及び微粒側から累積百分率100%に対応する粒子径D100(体積基準累積百分率100%相当粒子径)を含むことができる。累積粒子径は、レーザー粒度分布測定装置〔マイクロトラック・ベル(株)製「マイクロトラックMT3300EXII」〕を用いてレーザー回折法により測定する。
【0044】
前記アルミナ粉末のD50値は、0.45以上0.65μm以下であることが好ましく、0.50以上0.60μm以下であることがより好ましい。D50値が0.45μm未満であると、粒子間の凝集が過密になり、得られるアルミナ含有コート層の空隙率が低下し、イオン透過性を十分に確保できなくなる恐れがある。一方、D50値が0.65μmを超えると、粗大な粒子径のアルミナ粒子の割合が高くなり、粒子同士の接点数の減少による結着性の低下によって、得られるアルミナ含有コート層の機械的強度が低下したり、厚さ及び物性の均一度が低下したりすることがある。
【0045】
本発明のアルミナ粉末のD90/D10は、2.0以上4.0以下であることが好ましく、3.0以上4.0以下であることがより好ましい。D90/D10の値が2.0を下回ると、粒子の充填性が悪くなり、積層多孔質フィルムの耐熱性が低下してしまう恐れがある。前記D90/D10の値が4.0を超えると、粒度分布の範囲または偏差が増加しすぎて、得られるアルミナ含有コート層の厚さの均一さが低下したり、得られるアルミナ含有コート層の空隙率が過度に低下したりすることがある。
【0046】
さらに、乾式分級、湿式分級、ふるい分け分級などの方法により、前記アルミナ粉末のD100(粒度分布における最大粒子径)を調節することができる。これにより、前記アルミナ粉末を用いて得られるアルミナ含有コート層の薄型化をより効果的に実現できる。
【0047】
前記アルミナ粉末のD100値は3.5μm以下であることが好ましい。D100値が3.5μmを超えると、粗大なアルミナ粒子の割合が増加して、得られるアルミナ含有コート層の薄型化を実現することが困難となったり、得られるアルミナ含有コート層の耐熱性が低下したりすることがある。
【0048】
前記アルミナ粉末には、粒度分布計で検出されない程度の微量の20μm以上の粗大粒子が含まれることがある。20μm以上の粒子径を有する粗大粒子の含有量は、本発明のアルミナ粉末の全質量に対して、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。前記粗大粒子の含有量が100ppmを超えると、得られるアルミナ含有コート層の薄型化を実現することが困難となったり、得られるアルミナ含有コート層において、粗大粒子の周りに空隙ができやすくなることによって得られるアルミナ含有コート層の耐熱性が低下したりすることがある。
【0049】
アルミナ含有コート層を形成するにあたっては、前記アルミナ粉末を含有するアルミナスラリーを作製する必要があるが、前記アルミナ粉末において、前記D100及び20μm以上の粗大粒子の含有量が前記範囲であると、アルミナスラリー中のアルミナ粒子径をさらに小さくするための追加の粉砕工程を省略することができる。これにより、アルミナスラリーの製造にかかる工程コストを低減することができる。
【0050】
さらに、前記アルミナ粉末の比表面積を調節して粒度分布を向上させることができる。前記アルミナ粉末のBET比表面積は、3.0m
2/g以上7.0m
2/g以下であることが好ましい。BET比表面積が3.0m
2/g未満であると、粒子径の大きなアルミナ粒子の割合が高くなり過ぎ、得られるアルミナ含有コート層の耐熱性が低下したり、得られるアルミナ含有コート層の厚さが増加し過ぎることがある。BET比表面積が7.0m
2/gを超えると、粒子径の小さなアルミナ粒子同士の凝集が起こりやすくなり、得られるアルミナ含有コート層の厚さの均一さが低下することがあったり、場所によってはアルミナ粒子間の空隙サイズが大きく異なってしまうことがあったりする。BET比表面積は、マウンテック社製の「HM model−1201」を使用し、JIS−Z8830(2013)に規定された方法に従って、窒素吸着法一点法により求める。
【0051】
前記粒子径、粒度分布及び比表面積の範囲内でアルミナ粉末を製造することにより、前記アルミナ粉末を用いて形成されたアルミナ含有コート層の耐熱性、耐久性などの機械的特性が向上するとともに、膜厚の均一度が向上する。前記アルミナ含有コート層を、例えば二次電池の電極組立体に適用した場合、領域による性能差が実質的に除去され、高温、高電圧での動作信頼性を向上させることができる。
【0052】
前記アルミナ粉末を構成するアルミナの純度は特に制限されない。純度が99.9質量%を超える高純度アルミナを用いてもよく、純度が99.9質量%以下のバイヤーアルミナを用いてもよい。前記高純度アルミナの純度は、99.99質量%以上が好ましい。前記バイヤーアルミナの純度は、通常90質量%以上であり、99質量%以下が好ましい。コストの観点からは、前記バイヤーアルミナを用いることが好ましい。
アルミナの純度は、α−アルミナ中に含まれているSi、Na、Mg、Cu、Fe、Caの質量の合計(%)を100%から差し引いて算出される。すなわち、以下の式で算出される。
純度(%)=100−不純物の質量の合計(%)
電池用途においてアルミナの純度が90質量%を下回ると、αアルミナに含まれるNa等が多くなり、良好な電気絶縁性が得られなくなったり、短絡の原因となる金属性異物の混入量が多くなったりすることがある。
【0053】
以下では、
図1を参照して、本発明のアルミナ粉末の製造方法について説明する。
図1は、本発明の一具体例に係るアルミナ粉末の製造方法を説明するための工程フローチャートである。
【0054】
図1に示すように、連続ボールミル機110内に原料アルミナ粉末を投入した後、ボールミル機により粉砕する。
【0055】
前記原料アルミナ粉末は、当該技術分野で公知の方法により製造したものでもよく、市販品のものでもよい。例えば、前記原料アルミナ粉末は、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム前駆体に成長剤を投入してアルミナ結晶を成長させることにより製造できる。前記原料アルミナ粉末は、バイヤー法などの公知の方法により得ることもできる。
【0056】
前記原料アルミナ粉末は、連続ボールミル機110により粉砕し、分級機120内で分離/選別することができる。例えば、エアブロー装置を連続ボールミル機110に接続し、粉砕した原料アルミナ粉末をエアブローにより分級機120内に導入することができる。
【0057】
分級機120は、回転する分級ホイールを含み、分級点の粒子サイズ(D
th)以下のアルミナ粒子は、前記分級ホイールを通過することができる。一方、分級点の粒子サイズ(D
th)を超えるアルミナ粒子は、前記分級ホイールを通過できず、連続ボールミル機110に戻され、さらにボールミルで粉砕することができる。前記工程を繰り返すことで、実質的に連続ボールミル工程を行うことができる。
【0058】
分級機120を通過したアルミナ粒子は、収集機130に移動及び捕集することができる。
【0059】
分級ホイールを通過できる粗大粒子サイズ(D
th)は、通常5μm未満、好ましくは3μm未満に調整される。
【0060】
収集機130内に捕集されたアルミナ粒子は、複数のバッチで区分及び/又は収集することができる。前記複数のバッチに対して、粒子特性測定部140により、前記範囲の粒度分布、嵩密度及び比表面積を満たしているかどうかを決定することができる。前記範囲を満たすバッチを選別し、本発明のアルミナ粉末として活用することができる。
【0061】
粒子特性測定部140は、当該技術分野で公知の粒度分布測定装置、嵩密度測定装置及びBET測定装置を含むことができる。
【0062】
<アルミナスラリー>
前記アルミナ粉末と結合剤樹脂を溶媒に混合し、必要に応じて、増粘剤及び/又は界面活性剤などの追加の成分をさらに混合して、前記アルミナスラリーを製造することができる。
【0063】
前記アルミナスラリーに含まれる前記結合剤樹脂、又は、増粘剤及び/又は界面活性剤などの前記追加の成分は、非水系電解液二次電池の電解液に不溶であり、かつ、非水系電解液二次電池の使用範囲内で電気化学的に安定なものであることが好ましい。
【0064】
前記結合剤樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンプロピレン共重合体などのポリオレフィン;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テフロン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリクロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フッ化ビニル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体などを含むフッ素含有樹脂;前記フッ素含有樹脂の中でガラス転移温度が約23℃以下であるフッ素含有ゴム;芳香族ポリアミド;芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)、スチレン−ブタジエン共重合体及びその水素化合物、メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンゴム、ポリ酢酸ビニルなどのゴム類;ポリフェニルエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルアミド、ポリエステル、ポリエステルアミドなどの融点またはガラス転移温度が約180℃以上の芳香族ポリマー;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸などの水溶性ポリマーなどを用いることができ、単独であってもよく、2種類以上を組合せてもよい。
【0065】
前記芳香族ポリアミドは、例えば、ポリ(パラフェニレンフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタベンズアミド)、ポリ(4,4'−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4,4'−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン−4,4'−ビフェニレンカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2−クロロパラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体、メタフェニレンテレフタルアミド/2,6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体などを含むことができる。このうち、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)を好ましく用いることができる。
【0066】
また、前記結合剤樹脂として、前記非水溶性ポリマー(例えば、アクリレート系樹脂)を水系溶媒に分散した微細非水溶性ポリマー(エマルジョン)を用いることもできる。
【0067】
前記非水溶性ポリマーとは、水系溶媒に溶解せず、粒子となって水系溶媒に分散しているポリマーを意味し得る。非水溶性ポリマーとは、25℃で当該ポリマー0.5gを水100gと混合したとき、不溶分が90質量%以上となるポリマーを意味し得る。一方、水溶性ポリマーとは、25℃で当該ポリマー0.5gを水100gと混合したとき、不溶物質が0.5質量%未満のポリマーを意味し得る。非水溶性ポリマーの粒子状は、特に限定されないが、球状であることが好ましい。
【0068】
前記非水溶性ポリマーは、例えば、後述する単量体を含む組成物を水系溶媒中で重合し、重合物の粒子に形成することにより製造できる。
【0069】
前記非水溶性ポリマーの単量体は、例えば、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等を含むことができる。
【0070】
前記重合物は、単量体の単独重合体のほか、2種類以上の単量体の共重合体を含み、テフロン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン−ビニル共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素含有樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などを含むことができる。
【0071】
水系溶媒に分散された前記微細非水溶性ポリマーとしては、アルミナ粒子間の結着性の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリレート系単量体の単独重合体、あるいは2種以上の単量体の共重合体を好ましく用いることができる。
【0072】
前記結合剤樹脂は、好ましくはポリオレフィン、フッ素含有樹脂、芳香族ポリアミド、水溶性ポリマー、及び水系溶媒に分散した微細非水溶性ポリマー(エマルジョン)である。中でも、アルミナ含有コート層が、二次電池中において正極に接触して配置される場合、電池作動時の酸性劣化で非水系電解液二次電池の充放電レート特性や抵抗特性(液体抵抗)などの各種性能を維持しやすい点で、フッ素含有樹脂が有利であり、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、トリクロロエチレン及びフッ化ビニルからなる群から選択される少なくとも一つのモノマーとの混成重合単体、およびフッ化ビニリデン単独重合体)が好ましい。
【0073】
本発明のアルミナスラリーに含まれる前記結合剤樹脂として水溶性ポリマー及び水系溶媒に分散された前記微細非水溶性ポリマーを用いる場合、前記アルミナスラリーが含む溶媒として、環境面などに好ましい水を用いることができる。前記水溶性ポリマーは、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウムなどを含み、セルロースエーテルを好ましく用いることができる。
【0074】
セルロースエーテルとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シアノエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを含むことができる。耐久性、寿命、化学的安定性などの側面から、好ましくはCMC又はHECを用いることができ、より好ましくはCMCを用いることができる。
【0075】
アルミナスラリーに配合する前記溶媒は、当該技術分野における通常の溶媒を特に制限なく用いることができ、例えば、水、アセトン、アルコール類(メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノールなど)、1−メチル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン等を含むことができる。これらは単独に又は2種以上を組み合わせて用いることができる。水系溶媒は、水を含み、前記非水溶性ポリマー粒子の分散が可能なものであれば特に制限しない。
【0076】
前記水系溶媒は、水と任意の比率で溶解できるメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N−メチルピロリドンなどの有機溶媒を含むこともできる。前記水系溶媒には、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの界面活性剤、ポリアクリル酸カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩などの分散剤などが含まれ得る。前記溶媒と界面活性剤などの添加剤をともに使用する場合、それぞれ単独または2種以上を混合して用いることができる。有機溶媒の水に対する質量割合は、好ましくは0.1〜99質量%であり、より好ましくは0.5〜80質量%、さらに好ましくは1〜50質量%である。
【0077】
上述のアルミナスラリーに添加し得る溶媒及び結合剤樹脂その他の成分は、単なる例示に過ぎないものであり、アルミナスラリーを塗布する基材及びアルミナスラリーから得られるアルミナ含有コート層の特性及び用途を考慮して適切に選択及び調節することができる。
【0078】
前記アルミナ粉末を骨材とするアルミナ含有コート層を製造する場合において、前記結合剤樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、本発明に係るアルミナ100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。また、本発明に係るアルミナスラリーにおける溶媒の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、本発明に係るアルミナ100質量部に対して、10〜500質量部であることが好ましい。
【0079】
また、本発明に係るアルミナスラリーには、上記成分のほかにも分散安定化または塗工性の向上などを目的として、分散剤、増粘剤、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、酸またはアルカリを含むpH調整剤および電解液分解などの副反応を抑制する機能を有する添加剤などの各種添加剤を加えてもよい。これらの添加剤は、非水電解液二次電池の使用範囲において化学的に安定であり、電池反応に大きく影響しなければ特に限定されない。例えば、分散剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸リチウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどの有機アルカリ塩化合物を用いることができる。また、増粘剤は、HEC、CMC、ポリエチレングリコールなどを用いることができる。また、これらの各種添加剤はアルミナ含有コート層形成時に除去できるものが好ましいが、アルミナ含有コート層内に残存してもよい。それぞれの添加剤の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、本発明に係るアルミナ100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましい。
【0080】
本発明に係るアルミナと、結合剤樹脂と、溶媒とを混合し、分散させることにより本発明に係るアルミナスラリーを調製することができる。アルミナスラリーの分散方法は特に限定されるものではなく、公知のプラネタリーミキサーなどによる攪拌方式または超音波照射、ビーズミルによる分散方法を用いることができる。
【0081】
<アルミナ含有コート層および積層分離膜>
前記アルミナスラリーを基材上に塗布し、乾燥及び/又は焼成を行うことにより、基材上にアルミナ含有コート層を形成することができる。
【0082】
前記基材は、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアクリルなどからなるプラスチックフィルム、導電性フィルム又は炭素系フィルムを含むことができる。基材が二次電池用分離膜であるときには、分離膜上にアルミナ含有コート層が形成された積層分離膜として用いることができる。
【0083】
前記アルミナ粉末を含むアルミナスラリーを用いることにより、薄型の均一な厚さを有し、かつ、耐熱性、機械的強度が高いアルミナ含有コート層を形成することができる。
【0084】
<二次電池>
図2a及び
図2bに示すように、前記二次電池は、分離膜230を介在して対向するように積層された第1電極210及び第2電極220を含む電極組立体200,205を備える。前記二次電池は、複数の電極組立体200,205が積層された電極スタック、および該電極スタックを収容するケースを含むことができる。前記ケース内には電解液を注入することができる。
【0085】
第1電極210及び第2電極220は、それぞれ正極(cathode)及び負極(anode)に対応し得る。この場合、電極集電体にそれぞれ正極活物質及び負極活物質をコートした後、プレス工程により第1電極210及び第2電極220を形成することができる。
【0086】
前記電極集電体は、特に制限されるものではないが、銅、アルミニウム、ニッケル、チタンなどの金属、またはこれらの合金を含むことができる。
【0087】
前記正極活物質は、特に限定されるものではないが、コバルト、マンガン及び/又はニッケルを含有する酸化物を含むことができる。例えば、前記正極活物質は、リチウム酸化物を含み、リチウム−マンガン酸化物系の物質を用いることができる。
【0088】
前記負極活物質は、特に限定されるものではないが、結晶質炭素、非晶質炭素、炭素複合体、炭素繊維などの炭素系の材料、リチウム、リチウムと他の元素との合金、ケイ素またはスズなどを含むことができる。
【0089】
分離膜230は、第1電極210と第2電極220との間に配置され、これらを物理的に分離する一方で、電解液を保持し正負極間のイオン伝導性を確保する。
【0090】
第1電極210及び第2電極220の末端部には、それぞれ電源を接続するための第1電極タブ及び第2電極タブ(図示せず)を結合することができる。前記第1電極タブ及び第2電極タブは、電極組立体200の同一側に配置してもよく、互いに反対側に配置してもよい。
【0091】
第1電極210、第2電極220及び/又は分離膜230の表面上に、本発明のアルミナ含有コート層が形成されることができる。
図2aに示すように、アルミナ含有コート層240は、分離膜230の第1電極210との界面、及び、分離膜230の第2電極220との界面の両方の界面上に形成されることができる。または、アルミナ含有コート層240は、分離膜230の第1電極210との界面、または、分離膜230の第2電極220との界面のどちらか一方の界面上に形成されることもできる。
【0092】
図2bに示すように、アルミナ含有コート層245は、第1電極210及び第2電極220の実質的に全体の表面に形成されることができる。
【0093】
前記アルミナ含有コート層は、本発明のアルミナスラリーを第1電極210、分離膜230及び/又は第2電極220上に塗布した後、乾燥又は焼成することにより形成することができる。本発明のアルミナスラリーを用いると、薄型の均一な厚さを有するアルミナ含有コート層を形成することができる。
【0094】
前記アルミナ含有コート層が第1電極210、分離膜230及び/又は第2電極220上に形成されることにより、第1電極210と第2電極220との間の短絡を防止することができる。分離膜230が樹脂フィルムからなる場合、高温、高電圧動作時に分離膜230が破損し、電極間の短絡が発生することがある。しかし、前記アルミナ含有コート層が分離膜230と第1電極210及び/又は第2電極220との間に介在すると、分離膜の収縮等が抑制されるため、短絡の発生を防止することができる。前記アルミナ含有コート層は、実質的に全領域で均一な厚さに形成されるので、一つの電極組立体の領域によって、または互いに異なる電極組立体によって、動作の偏差が生じることを防止できる。
【0095】
分離膜230は、非水電解液二次電池では、正極と負極との間に配置される多孔質フィルムである。多孔質フィルムは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質かつ膜状の基材(ポリオレフィン系多孔質基材)であればよく、その内部に連結した細孔を有す構造を有し、一方の面から他方の面に気体や液体が透過可能であるフィルムである。
【0096】
多孔質フィルムは、電池が発熱したときに溶融して、非水電解液二次電池用分離膜(セパレータ)を無孔化することにより、該非水電解液二次電池用分離膜にシャットダウン機能を付与するものである。多孔質フィルムは、1つ層からなるものであってもよいし、複数の層から形成されるものであってもよい。
【0097】
多孔質フィルムの突刺強度は3N以上が好ましい。突刺強度が小さすぎると、電池組立プロセスの正負極と分離膜との積層捲回操作や、捲回群の圧締操作、または電池に外部から圧力がかけられた場合等において、正負極活物質粒子によって分離膜が突き破られ、正負極が短絡するおそれがある。また、多孔質フィルムの突刺強度は、10N以下が好ましく、8N以下がより好ましい。
【0098】
多孔質フィルムの膜厚は、非水電解液二次電池を構成する非水電解液二次電池用部材の膜厚を考慮して適宜決定すればよく、4〜40μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましく、6〜15μmであることがさらに好ましい。
【0099】
多孔質フィルムの体積基準の空隙率は、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止(シャットダウン)する機能を得ることができるように、20〜80%であることが好ましく、30〜75%であることがより好ましい。また、多孔質フィルムが有する細孔の平均径(平均細孔径)は、分離膜として用いたときに、充分なイオン透過性を得ることができ、かつ、正極や負極への粒子の入り込みを防止することができるように、0.3μm以下であることが好ましく、0.14μm以下であることがより好ましい。
【0100】
多孔質フィルムにおけるポリオレフィン成分の割合は、多孔質フィルム全体の50体積%以上であることを必須とし、90体積%以上であることが好ましく、95体積%以上であることがより好ましい。多孔質フィルムのポリオレフィン成分には、重量平均分子量が5×10
5〜15×10
6の高分子量成分が含まれていることが好ましい。特に多孔質フィルムのポリオレフィン成分として重量平均分子量100万以上のポリオレフィン成分が含まれることにより、多孔質フィルム及び非水電解液二次電池用分離膜全体の強度が高くなるため好ましい。
【0101】
多孔質フィルムに含まれるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどを重合した高分子量の単独重合体又は共重合体を挙げることができる。多孔質フィルムは、これらのポリオレフィン系樹脂を単独にて含む層、及び/又は、これらのポリオレフィン系樹脂の2種以上を含む層、であり得る。特に、エチレンを主体とする高分子量のポリエチレンが好ましい。なお、多孔質フィルムは、当該層の機能を損なわない範囲で、ポリオレフィン以外の成分を含むことを妨げない。
【0102】
多孔質フィルムの透気度は、通常、ガーレ値で30〜500秒/100ccの範囲であり、好ましくは、50〜300秒/100ccの範囲である。多孔質フィルムが、前記範囲の透気度を有すると、分離膜として用いた際に、十分なイオン透過性を得ることができる。
【0103】
多孔質フィルムの目付は、強度、膜厚、ハンドリング性及び重量、さらには、非水電解液二次電池の分離膜として用いた場合の当該電池の重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を高くできる点で、通常、4〜20g/m
2であり、4〜12g/m
2が好ましく、5〜10g/m
2がより好ましい。
【0104】
次に、多孔質フィルムの製造方法について説明する。ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムの製法は、例えば、多孔質フィルムが超高分子量ポリオレフィンおよび重量平均分子量1万以下の低分子量炭化水素を含む場合には、以下に示すような方法により製造することが好ましい。
【0105】
すなわち、(1)超高分子量ポリオレフィンと、重量平均分子量1万以下の低分子量炭化水素と、孔形成剤とを混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程、(2)前記ポリオレフィン樹脂組成物を圧延ロールにて圧延してシートを成形する工程(圧延工程)、(3)工程(2)で得られたシート中から孔形成剤を除去する工程、(4)工程(3)で得られたシートを延伸して多孔質フィルムを得る工程、を含む方法により得ることができる。なお、上記工程(3)におけるシート中から孔形成剤を除去する操作の前に、上記工程(4)におけるシートを延伸する操作を行なってもよい。
【0106】
上記超高分子量ポリオレフィンは好ましくは粉体である。
【0107】
上記低分子量炭化水素としては、ポリオレフィンワックス等の低分子量ポリオレフィン、及び、フィッシャートロプシュワックス等の低分子量ポリメチレンが挙げられる。上記低分子量ポリオレフィン及び低分子量ポリメチレンの重量平均分子量は、好ましくは200以上、3000以下である。重量平均分子量が200以上であると多孔質フィルムの製造時に蒸散する虞がなく、また、重量平均分子量が3000以下であると超高分子量ポリオレフィンとの混合がより均一に成されるため好ましい。
【0108】
上記孔形成剤としては、無機フィラー、及び可塑剤などが挙げられる。無機フィラーとしては、酸を含有する水系溶剤、アルカリを含有する水系溶剤、または、主に水からなる水系溶剤、に溶解し得る無機フィラーが挙げられる。
【0109】
酸を含有する水系溶剤に溶解しうる無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び硫酸カルシウム等が挙げられ、安価で微細な粉末が得やすい点から炭酸カルシウムが好ましい。アルカリを含有する水系溶剤に溶解しうる無機フィラーとしては、珪酸、及び酸化亜鉛等が挙げられ、安価で微細な粉末が得やすいため、珪酸が好ましい。主に水からなる水系溶剤に溶解しうる無機フィラーとしては、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、及び硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0110】
上記可塑剤としては、流動パラフィン、及びミネラルオイル等の低分子量の不揮発性炭化水素化合物が挙げられる。
【0111】
多孔質フィルムである非水電解液二次電池用分離膜の片面または両面には、上記アルミナ含有コート層が、必要に応じて、積層される。
【0112】
アルミナスラリーの分離膜への塗布方法、つまり、必要に応じて親水化処理が施された分離膜の表面へのアルミナ含有コート層の形成方法は、特に制限されるものではない。分離膜の両面にアルミナ含有コート層を積層する場合においては、分離膜の一方の面にアルミナ含有コート層を形成した後、他方の面にアルミナ含有コート層を形成する逐次積層方法や、分離膜の両面にアルミナ含有コート層を同時に形成する同時積層方法を適用することができる。
【0113】
アルミナ含有コート層の形成方法としては、例えば、アルミナスラリーを分離膜の表面に直接塗布した後、溶媒(分散媒)を除去する方法;アルミナスラリーを適当な支持体に塗布し、溶媒(分散媒)を除去してアルミナ含有コート層を形成した後、このアルミナ含有コート層と分離膜とを圧着させ、次いで支持体を剥がす方法;アルミナスラリーを適当な支持体に塗布した後、塗布面に多孔質フィルムを圧着させ、次いで支持体を剥がした後に溶媒(分散媒)を除去する方法;および、アルミナスラリー中に分離膜を浸漬し、ディップコーティングを行った後に溶媒(分散媒)を除去する方法;等が挙げられる。
【0114】
アルミナ含有コート層の厚さは、塗工後の湿潤状態(ウェット)の塗工膜の厚さ、樹脂と微粒子との重量比、アルミナスラリーの固形分濃度(樹脂濃度と微粒子濃度との和)等を調節することによって制御することができる。尚、支持体として、例えば、樹脂製のフィルム、金属製のベルト、またはドラム等を用いることができる。
【0115】
上記アルミナスラリーを分離膜または支持体に塗布する方法は、必要な目付や塗工面積を実現し得る方法であればよく、特に制限されるものではない。アルミナスラリーの塗布方法としては、従来公知の方法を採用することができる。このような方法として、具体的には、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクターブレードコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、バーコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、およびスプレー塗布法等が挙げられる。
【0116】
溶媒(分散媒)の除去方法は、乾燥による方法が一般的である。乾燥方法としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥、および減圧乾燥等が挙げられるが、溶媒(分散媒)を充分に除去することができるのであれば如何なる方法でもよい。上記乾燥には、通常の乾燥装置を用いることができる。
【0117】
上述した方法により形成される上記アルミナ含有コート層の膜厚は、分離膜を基材として用い、分離膜の片面または両面にアルミナ含有コート層を積層して積層分離膜を形成する場合においては、0.5〜15μm(片面当たり)であることが好ましく、2〜10μm(片面当たり)であることがより好ましく、2〜5μ
mであることがさらに好ましく、2〜3μ
mであることが特に好ましい。
【0118】
アルミナ含有コート層の膜厚が1μm以上(片面においては0.5μm以上)であることが、当該アルミナ含有コート層を備える非水電解液二次電池用積層分離膜において、電池の破損等による内部短絡を充分に防止することができ、また、アルミナ含有コート層における電解液の保持量を維持できるという面において好ましい。一方、アルミナ含有コート層の膜厚が両面の合計で30μm以下(片面においては15μm以下)であることが、当該アルミナ含有コート層を備える非水電解液二次電池用積層分離膜全域におけるリチウムイオン等のイオンの透過抵抗の増加を抑制し、充放電サイクルを繰り返した場合の正極の劣化、レート特性やサイクル特性の低下を防ぐことができる面、並びに、正極および負極間の距離の増加を抑えることにより非水電解液二次電池の大型化を防ぐことができる面において好ましい。
【0119】
アルミナ含有コート層の物性に関する下記説明においては、多孔質フィルムの両面にアルミナ含有コート層が積層される場合には、非水電解液二次電池としたときの、多孔質フィルムにおける正極と対向する面に積層されたアルミナ含有コート層の物性を少なくとも指す。
【0120】
アルミナ含有コート層の単位面積当たりの目付(片面当たり)は、非水電解液二次電池用積層分離膜の強度、膜厚、重量、およびハンドリング性を考慮して適宜決定すればよいものの、非水電解液二次電池用積層分離膜を部材として含む非水電解液二次電池の重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を高くすることができるように、通常、1〜20g/m
2であり、4〜15g/m
2であることが好ましく、4〜12g/m
2であることがより好ましい。アルミナ含有コート層の目付が上記範囲内であることが、当該アルミナ含有コート層を備える非水電解液二次電池用積層分離膜を部材とする非水電解液二次電池の重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を高くすることができ、当該電池の重量が軽くなるため好ましい。
【0121】
アルミナ含有コート層の空隙率は、当該アルミナ含有コート層を備える非水電解液二次電池用積層分離膜が充分なイオン透過性を得ることができるという面において、20〜90体積%であることが好ましく、30〜70体積%であることがより好ましい。また、アルミナ含有コート層が有する細孔の孔径は、当該アルミナ含有コート層を備える非水電解液二次電池用積層分離膜が充分なイオン透過性を得ることができるという面において、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
【0122】
上記積層分離膜の透気度は、ガーレ値で30〜1000 sec/100mLであることが好ましく、50〜800 sec/100mLであることがより好ましい。積層分離膜が上記透気度を有することにより、上記積層分離膜を非水電解液二次電池用の部材として使用した場合に、充分なイオン透過性を得ることができる。
【0123】
透気度が上記範囲を超える場合には、積層分離膜の空隙率が高いために積層分離膜の積層構造が粗になっていることを意味し、結果として分離膜の強度が低下して、特に高温での形状安定性が不充分になるおそれがある。一方、透気度が上記範囲未満の場合には、上記積層分離膜を非水電解液二次電池用の部材として使用した場合に、充分なイオン透過性を得ることができず、非水電解液二次電池の電池特性を低下させることがある。
【0124】
<実施例>
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例及び比較例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で種々の変更及び修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0125】
実施例1〜2および比較例1〜2
バイヤー法の水酸化アルミニウムをガス炉にて焼成して作製した原料アルミナ粉末を、
図1で説明した連続ボールミル機により粉砕し、分級することで、下記の表1に示す実施例1および実施例2のアルミナ粉末を得た。各アルミナ粉末の軽装嵩密度(LBD)、重装嵩密度(TBD)、TBD/LBD、D50、D90、D10、D90/D10、D100、20μm以上の粒子の含有量及びBET比表面積を下記の表1に示す。また、実施例と同様の原料アルミナ粉末をボールミルで粉砕したのみのアルミナ粉末を表1の比較例1に、市販のアルミナ粉末Aを表1の比較例2にそれぞれ示す。
【0126】
軽装嵩密度(LBD)、重装嵩密度(TBD)、TBD/LBD、D50、D90、D10、D90/D10、D100、20μm以上の粒子の含有量(≧20μm(ppm))及びBET比表面積の測定方法は以下に詳述する。
【0127】
(軽装嵩密度(LBD)および重装嵩密度(TBD))
嵩密度は、JIS R 930−2−3に準拠して測定した。測定容器は、内径37mm、高さ186mm、内容積200mLのガラス製シリンダーを用いた。シリンダー上端1cm上から粉末を自然落下させ、シリンダーに満杯になるまで粉末を投入し、メスシリンダー上端からはみ出た分の粉末をガラス棒ですり落とした後、シリンダー内の粉末質量を測定し、質量をシリンダー体積で除して軽装嵩密度(LBD)を算出した。その後、シリンダーを3cmの高さから100回落下させてタッピングを行い、その時の体積を読みとり、質量を体積で除して重装嵩密度(TBD)を算出した。なお、100回のタッピングの途中で粉末の体積減少は飽和していることを確認の上で測定を行った。表1には、TBD/LBDの値も記載した。
【0128】
(粒子径(D50、D90、D10およびD100))
レーザー粒度分布測定装置〔マイクロトラック・ベル(株)製「マイクロトラックMT3300EXII」〕を用いてレーザー回折法により測定した。また、粒度分布の小径側から、質量基準で累積百分率10%、50%、90%、100%相当粒子径を、それぞれD10、D50、D90、D100とした。測定に際しては、0.2質量%のヘキサメタ燐酸ソーダ水溶液で5分間超音波分散し、屈折率は1.76とした。
【0129】
(20μm以上の粗大粒子の含有量(≧20μm(ppm)))
1000mLのビーカーに、αアルミナ粉末200gと、分散剤としてヘキサメタリン酸ソーダを0.4%含有する純水750mLとを入れ、超音波(300W)を5分間照射して分散してαアルミナスラリーを調製した後、該スラリーを20μmの篩を通過させて、篩ごと乾燥させた後、篩上に残存するαアルミナ粉末を回収した。篩上残存のαアルミナ量を、投入したαアルミナ量200gで除して、20μm以上の粗大粒子の含有量(ppmwt)とした。
【0130】
(BET比表面積(m
2/g))
比表面積測定装置として、マウンテック社製の「HM model−1201」を使用し、JIS−Z8830(2013)に規定された方法に従って、窒素吸着法一点法により求めた。ただし、測定前の乾燥処理として、窒素ガス流通下において200℃で20分間加熱して行った。
【0131】
(基材多孔質フィルム(セパレータ)の作製)
超高分子量ポリエチレン粉末(340M、三井化学株式会社製)を70質量%と、質量平均分子量1000のポリエチレンワックス(FNP−0115、日本精鑞株式会社製)30質量%と、この超高分子量ポリエチレンとポリエチレンワックスの合計100質量部に対して、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)0.4質量部と、酸化防止剤(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)0.1質量部と、ステアリン酸ナトリウム1.3質量部とを加え、さらに全体積に対して38体積%となるように平均粒径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製)を加え、これらを粉末のままヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練機で溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物とした。溶融押出された該ポリオレフィン樹脂組成物を表面温度が150℃の一対のロールにて圧延しシートを作製した。このシートを塩酸水溶液(塩酸4mol/L、非イオン系界面活性剤0.5質量%)に浸漬させることで炭酸カルシウムを除去し、続いて105℃で6倍に延伸して基材多孔質フィルム(厚み:16.2μm、目付量:7.3g/m
2、透気度:140秒/100cc)を得た。
【0132】
(アルミナ含有コート層の形成)
前記基材多孔質フィルム上に、アルミナ含有コート層を以下の方法で形成し、積層多孔質フィルムを作成した。
【0133】
ダイセルファインケム株式会社製カルボキシメチルセルロース;品番1110(3質量部)、イソプロピルアルコール(11質量部)、純水(63質量部)及びアルミナ(23質量部)を混合撹拌した後に、クレアミクス(エム・テクニック株式会社製「CLM−0.8S」)で15000rpmで21分間循環分散してスラリーを調製した。次いで、基材多孔質フィルム上に、各番線のバーコーター(#16、#18、#20、#22、#24、#28)にて前記スラリーを塗工した後に乾燥温度65℃で乾燥し、基材多孔質フィルム表面にアルミナ含有コート層を形成し、積層多孔質フィルムを得た。
【0134】
(アルミナ含有コート層の目付量)
積層多孔質フィルムを8cm×8cmの正方形に切り出し、質量W(g)を測定し、積層多孔質フィルムの目付量(g/m
2)=W/(0.08×0.08)をまず算出した。ここから基材多孔質フィルムの目付量を差し引いて、アルミナ含有コート層の目付量を算出した。
【0135】
各アルミナ含有コート層を形成した積層多孔質フィルムに対して、下記の方法でアルミナ含有コート層の薄膜化の評価及び積層多孔質フィルムの耐熱性の評価を行った。評価の結果を下記の表1にまとめて示す。
【0136】
(1)アルミナ含有コート層の薄膜化の評価
前記積層多孔質フィルムの膜厚(単位:μm)は、株式会社ミツトヨ製の高精度デジタル測定機「VL−50A」で測定した。アルミナ含有コート層の膜厚D(μm)は、積層多孔質フィルムの厚みから基材多孔質フィルムの厚みを差し引いた上で算出した。各番線のバーコーター(#16、#18、#20、#22、#24、#28)で作成した積層多孔質フィルムに対して、比較例1で形成したアルミナ含有コート層の膜厚を基準(Ref)にして、基準に比べて減少または増加した膜厚の変化割合(%)を測定した。算出した膜厚の変化割合の平均値(%)を算出し、薄膜化の度合いを、下記の基準に基づいて評価した。
i)◎:Refに比べて20%以上膜厚が減少
ii)○:Refに比べて10%〜19%膜厚が減少
iii)△:Ref(比較例)と同程度(膜厚の減少が10%未満)
iv)×:Refよりも厚い
【0137】
(2)積層多孔質フィルムの耐熱性(加熱形状維持率)の評価
#24のバーコーターで作成した積層多孔質フィルムを8cm×8cmの正方形に切り出し、その中に6cm×6cmの正方形を書き入れたフィルムを紙に挟んで、150℃に加熱したオーブンに入れた。1時間後、オーブンからフィルムを取り出し、書き入れた四角の辺の寸法を測定し、加熱形状維持率を計算した。算出方法は以下の通りである。
MD方向の加熱前の書き入れ線長さ:L1
MD方向の加熱後の書き入れ線長さ:L2
MD加熱形状維持率(%)=(L2/L1)×100
なお、L1とL2はそれぞれ、書き入れた正方形のMD方向の左右両辺の平均値とした。ここで言うMD方向とは、基材多孔質フィルムシート成型時の長尺方向を指す。
【0138】
比較例1の積層多孔質フィルムを基準(Ref)にして、下記の基準に基づいて評価した。
i)◎:積層多孔質フィルムのMD加熱形状維持率が95%以上で、且つ、アルミナ含有コート層の膜厚が6.0μm未満
ii)○:積層多孔質フィルムのMD加熱形状維持率が95%以上で、且つ、アルミナ含有コート層の膜厚が6.0μm以上7.0μm未満
iii)△:Ref(比較例)と同程度(積層多孔質フィルムのMD加熱形状維持率が80%以上95%未満で、且つ、アルミナ含有コート層の膜厚が7.0μm以上)
iv)×:積層多孔質フィルムのMD加熱形状維持率が80%未満
【0140】
表1から、TBD/LBDの値が1.5以上(例えば、1.82〜1.90)であり、0.45〜0.65μmの範囲のD50値を有し、4以下のD90/D10の値を有する実施例1、実施例2の場合は、薄膜化及び耐熱性の両方において優れたことが分かった。なお、実施例で用いられたアルミナ粉末の純度は99.9%と測定された。
【0141】
比較例1及び比較例2の場合は、TBD/LBDの値が1.5よりも小さいことにより、実施例に比べて耐熱性の特性が劣っていた。
【0142】
一方、
図3では、実施例1及び比較例1のアルミナ粉末を用いて、単位面積当たりのアルミナ粉末の量の変化によるコート層の膜厚を示している。
図3から、実施例1のアルミナ粉末を用いることにより、同じ量で、比較例1に比べて薄い薄型コート層を形成できることが確認できた。
【0143】
図4では、実施例2及び比較例1のアルミナ粉末を用いて形成したコート層の膜厚の変化による加熱形状維持率を示している。
図4から、実施例1のアルミナ粉末を用いることにより、比較例1に比べて、より薄い膜厚で高い加熱形状維持率を示し、耐熱性が向上したことを確認することができた。例えば、比較例1は、アルミナ目付量10.4g/m
2のとき、アルミナ含有コート層の膜厚は7.7μmとなり、積層多孔質フィルムの加熱形状維持率は87.1%であったが、実施例1は、アルミナ目付量10.9g/m
2のとき、アルミナ含有コート層の膜厚が5.3μmまで薄く形成できており、積層多孔質フィルムの加熱形状維持率も95.3%と高かった。
本発明は、軽装嵩密度(LBD)に対する重装嵩密度(TBD)の比率(TBD/LBD)が1.5以上である、アルミナ粉末、およびそれを含むアルミナスラリー、アルミナ含有コート層、積層分離膜及び二次電池に関する。