【実施例】
【0090】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0091】
[重合体の構造の解析方法]
1.極性基を有するオレフィンの含量
実施例で得た(共)重合体の構造は、ブルカー(BRUKER)社製ASCEND 500を用いた各種NMR解析により決定した。極性基を有するオレフィンに由来するモノマーユニットの含有率は、溶媒として1,1,2,2−テトラクロロエタン−d
2を使用した120℃における
1H−NMR測定により、極性基を有するオレフィン由来のピークに対する主鎖(0.8〜1.8ppm)の積分比をもとに算出した。
【0092】
2.分子量
数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)製,TSKgel(登録商標) GMHHR−H(S)HTカラム(7.8mmI.D.×30cmを2本直列)を備えた東ソー(株)製高温GPC装置、HLC−8121GPC/HTを用い、ポリスチレンを分子量の標準物質とするサイズ排除クロマトグラフィー(溶媒:1,2−ジクロロベンゼン、温度:145℃)により算出した。
【0093】
[金属錯体1Aの合成]
下記の反応スキームに従って金属錯体触媒1Aを合成した。
【化21】
【0094】
(a)塩化メンチル(化合物1a)の合成
文献(J. Org. Chem., 17, 1116. (1952))記載の手法で、塩化メンチル(化合物1a)の合成を行った。すなわち、塩化亜鉛(77g、0.56mol)の37%塩酸(52mL、0.63mol)溶液に、(−)−メントール(27g、0.17mol)を加え、35℃に加熱しながら、5時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応液にヘキサン(50mL)を加え、分液漏斗を使用して、有機層と水層を分離した。有機層は水(30mL×1)で洗浄後、さらに濃硫酸(10mL×5)及び水(30mL×5)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行い、塩化メンチル(化合物1a)を無色の油状物質として得た。収量は27g(収率91%)であった。
【0095】
(b)塩化ジメンチルホスフィン(化合物1c)の合成
文献(Journal fur Praktische Chemie, 322, 485. (1980))記載の手法で、塩化ジメンチルホスフィン(化合物1c)の合成を行った。すなわち、アルゴン雰囲気下、塩化メンチル(化合物1a;2.6g、15mmol)とマグネシウム(0.63g、26mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(30mL)中で、70℃に加熱しながら反応させて得られた塩化メンチルマグネシウム(化合物1b)の溶液を、三塩化リン(0.63mL、7.2mmol)のTHF(30mL)溶液に−78℃で加えた。室温まで昇温後、70℃に加熱しながら2時間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、蒸留精製を行い、塩化ジメンチルホスフィン(化合物1c)を得た。収量は、0.62g(収率25%)であった。
31P−NMR(162MHz,THF):δ 123.9.
【0096】
(c)2−(ジメンチルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(化合物1d)の合成
ベンゼンスルホン酸(13.2g,83.5mmol)のテトラヒドロフラン溶液(150mL)に、n−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液,66.8mL,167mmol)を0℃で加え、10℃で1時間撹拌した。反応容器を−78℃に冷却した後に、塩化ジメンチルホスフィン(化合物1c;11.5g,33.4mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液を−78℃で加え、室温で16時間撹拌した。反応液にトリフルオロ酢酸(9.52g,83.5mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液を0℃で加えて反応停止した後に、溶媒を減圧留去した。ジクロロメタン(100mL×4回)で抽出した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去後、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=10/1)で精製し、酢酸エチルで洗浄することにより、2−(ジメンチルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(化合物1d)を白色粉末として得た。収量は5.0g(収率32%)であった。
【0097】
(d)2−(ジメンチルホスフィノ)−6−(トリメチルシリル)−ベンゼンスルホン酸(化合物1e)の合成
2−(ジメンチルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(化合物1d;2.50g,5.4mmol)のTHF溶液(40mL)に、n−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液,12.9mL,32.2mmol)を−78℃で加え、10℃で4時間撹拌した。反応容器を−78℃に冷却した後に、トリメチルシリルクロリド(4.05mL,32.2mmol)を−78℃で加え、10℃で16時間撹拌した。反応液を氷水(50mL)に注いで反応停止した後に、酢酸エチル(100mL×3回)にて抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、酢酸エチル(15mL)にて洗浄することにより、2−(ジメンチルホスフィノ)−6−(トリメチルシリル)−ベンゼンスルホン酸(化合物1e)を白色粉末として得た。収量は2.10g(収率73%)であった。
【0098】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ7.99 (d, J = 7.2 Hz, 1 H), 7.57 (dd, J = 7.2, 16.0 Hz, 1 H), 7.47 (m, 1 H), 5.30 (d, J = 339.2 Hz, 1 H), 3.57 (dd, J = 12.4, 27.6 Hz, 1 H), 2.71 (br s, 2 H), 2.03 (br s, 1 H), 1.74 (br s, 6 H), 1.60 (br s, 1 H), 1.41 (br s, 2 H), 1.28 (m, 1 H), 1.09 (m, 6 H), 0.94-0.67 (m, 15 H), 0.46 (s, 9 H), 0.22 (d, J = 6.4 Hz, 3 H).
【0099】
(e)金属錯体触媒1Aの合成
アルゴン雰囲気下、2−(ジメンチルホスフィノ)−6−(トリメチルシリル)−ベンゼンスルホン酸(化合物1e;2.04g,3.79mmol)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.20mL,18.4mmol)の塩化メチレン溶液(30mL)に、(cod)PdMeCl(cod=1,5−シクロオクタジエン、1.00g,3.77mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、残渣を塩化メチレン(10mL)に溶解させ、この溶液を、炭酸カリウム(5.20g,37.6mmol)と2,6−ルチジン(4.40mL,37.8mmol)の塩化メチレン懸濁液(20mL)に加え、室温で1時間撹拌した。この反応液をセライト(乾燥珪藻土)及びフロリジル(ケイ酸マグネシウム)でろ過した後に、溶媒を濃縮し、減圧下乾燥を行った。ヘキサン(5mL×3回)で洗浄することにより、金属錯体触媒1Aを得た。収量は、2.32g(収率80%)であった。
【0100】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 7.80 (d, J = 7.5 Hz, 1 H), 7.77 (t, J = 8.0 Hz, 1 H), 7.54 (t, J = 7.7 Hz, 1 H), 7.36 (dd, J = 7.7, 7.6 Hz, 1 H), 7.10 (d, J = 7.7 Hz, 1 H), 7.05 (d, J = 7.6 Hz, 1 H), 3.70 (m, 1 H), 3.24 (s, 3 H), 3.16 (s, 3 H), 2.5-0.7 (m, 19 H), 0.96 (d, J = 6.4 Hz, 3 H), 0.95 (d, J = 6.4 Hz, 3 H), 0.83 (d, J = 6.6 Hz, 3 H), 0.76 (d, J = 6.7 Hz, 3 H), 0.50 (d, J = 6.6 Hz, 3 H), 0.37 (s, 9 H), 0.36 (m, 3 H), 0.15 (d, J = 6.7 Hz, 3 H).
【0101】
[金属錯体1Bの合成]
【化22】
【0102】
アルゴン雰囲気下、2−(ジメンチルホスフィノ)−6−(トリメチルシリル)−ベンゼンスルホン酸(化合物1e;269.2mg,0.5mmol)及び,炭酸銀(84.7mg,0.5mmol)、炭酸カリウム(692mg,5.0mmol)、ジ−μ−クロロビス(2−アセトアミノフェニル−C,O)二パラジウム(II)(138mg,0.5mmol)に塩化メチレン(6mL)を加え、室温で終夜撹拌した。この反応液をセライト(乾燥珪藻土)及びフロリジル(ケイ酸マグネシウム)でろ過した後に、溶媒を濃縮した。得られた残渣を少量の塩化メチレンに溶解させ、ジエチルエーテルを加え,錯体を析出させた。沈殿を回収し減圧乾燥することにより金属錯体触媒1Bを得た。収量は、174mg(収率45%)であった。
【0103】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ9.17 (br s, 1H), 7.81 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.71 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.40-7.36 (m, 2H), 6.97 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 6.89 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 3.20 (br s, 1H), 2.69 (t, J = 9.8 Hz, 1H), 2.47 (s, 3H), 2.32 (dd, J = 22.3, 10.1 Hz, 1H), 2.07-2.06 (m, 1H), 1.97 (br s, 1H), 1.77-1.69 (br m, 5H), 1.65-1.30 (br m, 5H), 1.10 (dd, J = 21.7, 12.1 Hz, 1H), 0.96-0.73 (m, 10H), 0.68 (3H, d, J = 6.8 Hz), 0.42 (9H, s), 0.37 (3H, d, J = 6.6 Hz), 0.31 (3H, d, J = 6.4 Hz), 0.20 (3H, d, J = 6.8 Hz).;
31P−NMR(162MHz,CDCl
3):δ 31.7.
【0104】
[金属錯体2Aの合成]
下記の反応スキームに従って金属錯体2Aを合成した。
【化23】
【0105】
(f)2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−ベンゼンスルホン酸(化合物2d)の合成
5−イソプロピル−ベンゼンスルホン酸イソプロピルエステル(15.0g,62.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液(120mL)に、n−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液,24.8mL,62.0mmol)を−78℃で加え、−78℃で1時間撹拌した。塩化ジメンチルホスフィン(化合物1c;9.5g,27.5mmol)のテトラヒドロフラン(60mL)溶液を−78℃で加え、室温で16時間撹拌した。反応液に氷水(100mL)を加えて反応停止した後に、酢酸エチル(100mL×3回)で抽出した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過、溶媒留去後、そのまま次の反応に用いた。
2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−ベンゼンスルホン酸イソプロピルエステル(36.3mmol)のテトラヒドロフラン溶液(80mL)に、メタノール(100mL)、水酸化ナトリウム(8.7g,218mmol)、水(40mL)を加え、80℃で16時間撹拌した。室温まで冷却した後、減圧下で溶媒留去し、塩化メチレン(200mL)、水(200mL)を加えた。さらにトリフルオロ酢酸を加えてpH4〜5にした後、ジクロロメタン(100mL×2回)で抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去後、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=30/1)で精製し、2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−ベンゼンスルホン酸(化合物2d)を白色粉末として得た。収量は6.0g(収率42%)であった。
【0106】
(g)2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−6−(トリメチルシリル)−ベンゼンスルホン酸(化合物2e)の合成
2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−ベンゼンスルホン酸(化合物2d;2.0g,3.94mmol)のTHF溶液(40mL)に、n−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液,9.5mL,23.6mmol)を−40℃で加え、10℃で6時間撹拌した。反応容器を−78℃に冷却した後に、トリメチルシリルクロリド(3.0mL,23.6mmol)を−78℃で加え、室温で1時間撹拌した。反応液を氷水(50mL)に注いで反応停止した後に、酢酸エチル(50mL×3回)にて抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=50/1)で精製することにより、2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−6−(トリメチルシリル)−ベンゼンスルホン酸(化合物2e)を白色粉末として得た。収量は0.88g(収率38%)であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 7.5-7.4 (m, 2 H), 5.22 (d, J = 329.2 Hz, 1 H), 3.56 (m, 2 H), 2.67 (br, 2 H), 1.95 (br, 1 H), 1.8-1.6 (br, 7 H), 1.4-1.3 (br, 9 H), 1.2-1.1 (br, 9 H), 1.0-0.8 (br, 12 H), 0.73 (br, 3 H), 0.55 (s, 9 H).
【0107】
(h)金属錯体触媒2Aの合成
アルゴン雰囲気下、2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−6−(トリメチルシリル)−ベンゼンスルホン酸(化合物2e;1.10g,1.89mmol)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.60mL,9.19mmol)の塩化メチレン溶液(10mL)に、(cod)PdMeCl(cod=1,5−シクロオクタジエン、0.47g,1.84mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、残渣を塩化メチレン(10mL)に溶解させ、この溶液を、炭酸カリウム(2.70g,19.5mmol)と2,6−ルチジン(2.3mL,19.7mmol)の塩化メチレン懸濁液(10mL)に加え、室温で1時間撹拌した。この反応液をセライト(乾燥珪藻土)及びフロリジル(ケイ酸マグネシウム)でろ過した後に、溶媒を濃縮し、減圧下乾燥を行った。ヘキサン(10mL)に溶解させ、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することにより、金属錯体触媒2Aを得た。収量は、0.58g(収率39%)であった。
【0108】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 7.63 (t, J = 8.2 Hz, 1 H), 7.53 (t, J = 7.7 Hz, 1 H), 7.29 (d, J = 8.2 Hz, 1 H), 7.10 (d, J = 7.8 Hz, 1 H), 7.04 (d, J = 7.3 Hz, 1 H), 3.88 (m, 2 H), 3.48 (m, 1 H), 3.24 (s, 3 H), 3.14 (s, 3 H), 2.6-1.4 (brm, 18 H), 1.38 (d, J = 6.6 Hz, 3 H), 1.04 (d, J = 6.7 Hz, 3 H), 0.96 (d, J = 6.3 Hz, 3 H), 0.94 (d, J = 6.2 Hz, 3 H), 0.84 (d, J = 6.7 Hz, 3 H), 0.74 (d, J = 6.6 Hz, 6 H), 0.46 (s, 9 H), 0.34 (d, J = 1.1 Hz, 3 H), 0.23 (d, J = 6.6 Hz, 3 H).
【0109】
[金属錯体2Bの合成]
【化24】
【0110】
アルゴン雰囲気下、2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−6−(トリメチルシリル)−ベンゼンスルホン酸(化合物2e;290.0mg,0.5mmol)及び,炭酸銀(82.5mg,0.5mmol)、炭酸カリウム(684mg,0.5mmol)、ジ−μ−クロロビス(2−アセトアミノフェニル−C,O)二パラジウム(II)(138mg,0.5mmol)に塩化メチレン(6mL)を加え、室温で終夜撹拌した。この反応液をセライト(乾燥珪藻土)及びフロリジル(ケイ酸マグネシウム)でろ過した後に、溶媒を濃縮した。得られた残渣を少量の塩化メチレンに溶解させ、ジエチルエーテルを加えた。沈殿を回収し減圧乾燥することにより金属錯体触媒2Bを得た。収量は、180mg(収率44%)であった。
【0111】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ9.50-9.25 (br s, 1H), 7.59 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 7.42-7.40 (m, 1H), 7.30 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.93-6.91 (m, 1H), 6.84-6.82 (m, 2H), 3.51-3.47 (m, 2H), 3.39 (br s, 1H), 2.67 (t, J = 10.8 Hz, 1H), 2.30 (dd, J = 22.0, 10.6 Hz, 1H), 2.09 (dd, J = 17.5, 9.2 Hz, 1H), 1.93-1.90 (m, 1H), 1.70-1.60 (m, 4H), 1.48-1.28 (m, 8H), 1.21 (t, J = 7.0 Hz,2H), 1.11 (d, J = 6.2 Hz, 3H), 0.94 (d, J = 5.8 Hz, 3H), 0.81-0.71 (m, 6H), 0.63 (d, J = 6.2 Hz, 3H), 0.56-0.48 (m, 12H), 0.42-0.36 (m, 3H), 0.20 (d, J = 6.2 Hz, 3H).
31P−NMR(162MHz,CDCl
3):δ 30.2.
【0112】
[比較金属錯体3Aの合成]
下記式
【化25】
で示される比較金属錯体3Aは、特許文献1;特開2011−68881号公報に従って合成した。
【0113】
[比較金属錯体4Aの合成]
【化26】
【0114】
アルゴン雰囲気下、2−(ジメンチルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(化合物1d;0.14g,0.30mmol)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.26mL,1.5mmol)の塩化メチレン溶液(10mL)に、(cod)PdMeClを加え、室温で1時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、残渣を塩化メチレン(10mL)に溶解させ、この溶液を、炭酸カリウム(0.42g,3.0mmol)と2,6−ルチジン(0.35mL,3.0mmol)の塩化メチレン懸濁液(2mL)に加え、室温で1時間撹拌した。この反応液をセライト(乾燥珪藻土)及びフロリジル(ケイ酸マグネシウム)でろ過した後に、溶媒を濃縮し、減圧下乾燥を行い、金属錯体触媒1を得た。収量は、0.17g(収率80%)であった。
【0115】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 8.26 (ddd, J = 7.8, 3.9, 1.4 Hz, 1H), 7.81 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.56 (t, J = 7.7 Hz, 1H), 7.49 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.43 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 7.13 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 3.75 (s, 1H), 3.24 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 2.59 (s, 1H), 2.49-2.39 (m, 2H), 2.29-2.27 (m, 1H), 2.05-1.96 (m, 1H), 1.89-1.37 (m, 12H), 1.21-1.11 (m, 2H), 0.98 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.95 (d, J = 6.2 Hz, 3H), 0.84 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.78 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.58 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.41 (d, J = 2.3 Hz, 3H), 0.08 (d, J = 6.6 Hz, 3H).
31P−NMR(162MHz,CDCl
3):δ 16.6.
【0116】
[重合体の合成]
上記の方法で合成した金属錯体を使用して、オレフィンの(共)重合を行った。重合条件及び重合結果をそれぞれ表に示す。
なお、触媒濃度及び触媒活性は次の式により計算した。
【数1】
【数2】
【0117】
実施例1〜3:プロピレンの単独重合
アルゴン雰囲気下、所定の金属錯体(0.02mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(10mL)を加えた。所定量のプロピレンを充填した後、オートクレーブを50℃で21時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ内の反応液を濃縮し,メタノールを加え、重合体を析出させた。生じた重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、重合体を得た。重合条件と結果をそれぞれ表1に示す。
【0118】
比較例1〜2:プロピレンの単独重合
アルゴン雰囲気下、所定の金属錯体(0.02mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(10mL)を加えた。所定量のプロピレンを充填した後、オートクレーブを50℃で21時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ内の反応液を濃縮した後、減圧下乾燥して、重合体を得た。重合条件と結果をそれぞれ表1に示した。
【表1】
【0119】
実施例4、5:プロピレンとアクリル酸メチル(MA)の共重合
アルゴン雰囲気下、所定の金属錯体(0.02mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、アクリル酸メチル(0.5mL)を加えた。所定量のプロピレンを充填した後、オートクレーブを50℃で20時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ内の反応液を留去し,残留物を回収した。減圧下乾燥して、重合体を得た。重合条件と結果をそれぞれ表2に示した。
【表2】
【0120】
実施例6,7:プロピレンと酢酸アリル(AAc)の共重合
アルゴン雰囲気下、所定の金属錯体(0.02mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、酢酸アリル(0.5mL)を加えた。所定量のプロピレンを充填した後、オートクレーブを50℃で20時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ内の反応液を留去し,残留物を回収した。減圧下乾燥して、重合体を得た。重合条件と結果をそれぞれ表3に示した。
【表3】
【0121】
表1に示すように、本発明の金属錯体を触媒として使用した実施例1〜3では、これまでの触媒を用いた比較例1、2よりも重量平均分子量Mwが高くなり、重量平均分子量Mwが三万以上の高分子量体を得ることが可能であった。これは生成物の性状に顕著に影響し、本実施例においてゴム状の固体として取扱が可能となった。
また、表2及び3に示すように、本発明の金属錯体を触媒として使用することにより、実施例4〜7においてアクリル酸メチルや酢酸アリルといった極性コポリマーとの共重合が可能であることが示された。これらの実施例により、本発明による金属錯体のオレフィン重合触媒としての合理性と有意性、及び従来技術に対する卓越性が明示されている。