【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。当業者は、本発明の意義を逸脱することなく様々な態様に本発明を変更することができ、かかる変更も本発明の範囲に含まれる。
【0039】
1.材料と方法
1−1.荷電性N-アルキルアミノ酸含有ペプチドのリボソーム合成
翻訳系の調製、ペプチドをコードするDNA鋳型、及びN-アルキル-アミノアシル- tRNA
Asn-E2GUGの調製は、後述する「3.補足」に記載する。
0.04 μM DNA鋳型、それぞれ0.5 mMのMet、Tyr、Lys、50 μMの[
14C]-Asp、0.03 μMのMetRS、0.02 μMのTyrRS、0.11 μMのLysRS、0.13 μMのAspRS、及び100 μMのN-アルキル-アミノアシル-tRNA
Asn-E2GUG を含む翻訳混合液(表2)を、37℃で60分インキュベートした。得られた翻訳産物を、tricine-SDS PAGEとオートラジオグラフィー(Pharox FX、BIO-RAD)で解析した。
MALDI-TOF解析では、上記[
14C]-Aspの代わりにAspを用いて反応させた。
【0040】
アジドの脱保護は、翻訳産物に100mMのTCEPを加え、42℃、pH8.4で30分インキュベートして行った。
カルボキシルエステルの脱保護は、翻訳産物にカルボキシエステラーゼ(Sigma & Aldrich)を加え、42℃、pH8.4で18時間インキュベートして行った。
サンプルをC-TIP(Nikkyo Technos)で脱塩し、80%アセトニトリル、0.5%酢酸(CHCA飽和)で溶出し、autoflexII(BRUKER DALTONICS)のlinear positive modeで解析した。
【0041】
1−2.提示効率解析のための、ビオチン化ペプチド/mRNA/cDNA複合体のストレプトアビジンpull down
TRAPシステムの調製、ペプチドをコードするDNA鋳型、及びN-biotinyl-Phe-tRNA
iniCAUの調製は、後述する「3.補足」に示す。
DNA鋳型は、TRAPシステム(各0.5 mMのTyr、Gly、Ser、DNA鋳型を含む10% v/vのPCR反応液、2.5 μMのピューロマイシン-DNAリンカー(配列は表S1)、25 μMのN-biotinyl-Phe-tRNA
iniCAU、1 μMのT7 RNA polymerase、及び、100 μMのHis、
N3C2Gly-tRNA
Asn-E2GUG、
MeGlu(OMe)-tRNA
Asn-E2GUGのいずれかを含む)内で、37℃で25分、転写し、ビオチン化ペプチドに翻訳した。
EDTAによるリボソームとの解離後、G5S-4.R20プライマーとRNase H-inactivated reverse transcriptase (TOYOBO, Japan)を用いて、mRNAの逆転写反応を行った。逆転写反応をEDTAにより停止させ、HEPESで溶液を中和した後、ビオチン化ペプチドを提示したcDNA/mRNA複合体を、ストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズ(VERITAS)で選択的に回収し、T7SD8M2.F44フォワードプライマーとG5S-4.an21.R41リバースプライマーを用いた定量PCRで定量した。
【0042】
2.結果
正電荷をもつアミンを含むN-アルキルアミノ酸を電荷のないアジド基で保護したN-アルキルアミノ酸前駆体をリボソームによってペプチドに取り込み、翻訳後にStaudinger反応により、トリアルキルホスフィンで脱保護し(参考文献40)、正電荷をもつアミンを含むN-アルキルアミノ酸を露出させる(
図1A)という2段階のステップにより、正電荷を有するN-アルキルアミノ酸がペプチドに取り込まれるか調べた。
同様に、負電荷をもつカルボン酸を含むN-アルキルアミノ酸が、メチルエステル化されたカルボン酸を含むN-アルキルアミノ酸を用いてペプチドを翻訳合成し、翻訳後にカルボキシエステラーゼでカルボン酸を露出させることにより、翻訳合成されたペプチドに取り込まれるか否かも調べた(
図1B)。
さらに、芳香族性の側鎖を有するN-アルキルアミノ酸も、その嵩高さにかかわらずリボソームによる翻訳の基質となること(参考文献13、19)、また、ベンジル基で修飾したN-メチルセリンとN-メチルトレオニンが、修飾していないN-メチルセリン及びN-メチルトレオニンと同等の効率でペプチドに取り込まれることを見出したことから(
図5)、ベンジルエステル化されたカルボン酸を含むN-アルキルアミノ酸が、翻訳合成において基質となり、翻訳後にカルボキシエステラーゼを反応させて脱保護できるか否かも調べた(
図1B)。
【0043】
アジドを含むN-アルキルアミノ酸がリボソームによって取り込まれるか調べるため、まずN-メチルアジドノルロイシン(
MeAnl、
図1A)、3,5-ジニトロベンジルエステル(DBE)を化学合成し、人工tRNAアミノアシル化リボザイム(flexizymes)(参考文献41-43)の基質とした。
MeAnl-DBEとマイクロヘリックスRNA(tRNAアナログ)を用いて、アミノアシル化の条件を最適化し、
MeAnlが、α-N-メチルリシン(
MeLys)と同様にtRNAに結合することを確認した(
図7)。
リボソームペプチドへの取り込み効率を評価するために、
MeAnl、及びコントロールのLys及び
MeLysを、アンチコドンGUGを有する大腸菌のAsn tRNA(tRNA
Asn-E2)に、flexizymeを用いて結合させた(参考文献44)。
N-アルキルアミノ酸の取り込みのために、HisのCACコドンを有し、且つ、[
14C]-Aspで同位体標識するためにC末端にFLAGタグが結合したペプチドをコードするDNA鋳型も調製した(
図2A)。DNA鋳型と、非アミノアシル化tRNA
Asn-E2GUGを含むHis欠損再構成無細胞翻訳系では、[
14C]-Aspで標識されたペプチドは産生されなかった(
図2B、レーン1)。同様に、
MeLys-tRNA
Asn-E2GUG存在下では、ペプチドは産生されなかった(
図2B、レーン3)。
このことは、過去の報告(参考文献13)と同様に、正電荷を帯びた
MeLysが翻訳に不適合であることを示す。一方、
MeAnl-tRNA
Asn-E2GUGを含む翻訳系では、タンパク質性Lys-tRNA
Asn-E2GUGに産生されるペプチドに匹敵する量のペプチドが発現した(
図2B、レーン2及び4)。
このことは、電荷を有するアミンを、中性の小さなアジドでマスキングすることによって、取り込み効率が劇的に改善されることを示す。
MeAnlの取り込みは、脱塩した翻訳産物のMALDI-TOF-MS解析によって、最終的に確認した(
図2C、8)。アジド基を脱保護し、MALDI-TOF-MSで解析するために、翻訳産物を、100mMのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)と共に、42℃、pH=8.4で0.5時間インキュベートした。この温度とpHは、in vitroペプチドセレクションの際の逆転写に用いたものである。
主生成物の分子量は、所望の
MeLysを含むペプチド(及び未知の副生成物のマイナーシグナル)と一致しており、
MeAnlをリボソームによって取り込み、生体直行型のStaudinger反応によってアジド基を変換してアミノ基にすることにより、結果として
MeLysがリボソームによってペプチドに取り込まれたことが確認された。
【0044】
利用可能な、アミノ基を含むN-アルキルアミノ酸ビルディングブロックを拡大するため、N-(3-azidopropyl)-glycine (
N3C3Gly)、N-(2-azidoethyl)-glycine (
N3C2Gly)、cis-4-azido-proline [Pro(N
3]] (
図1A)、及びコントロールとしてN-(3-aminopropyl)-glycine (
NH2C3Gly)、並びにそれぞれに対応するDBE誘導体を、flexizymeによって、最適条件下でtRNA
Asn-E2にチャージして用いた(
図6)。
ネガティブコントロールであるN-(2-aminoethyl)-glycine (
NH2C2Gly)及びcis-4-amino-proline [Pro(NH
2]]のDBEは、アミノアシル化産物を産生しなかった。これは、これらのaa-DBEまたはaa-tRNAにおいて、アミノ酸が自己環状化し、ラクタムを形成したためと考えられる。
N3C3Gly-、
N3C2Gly-、又はPro(N
3)-tRNA
Asn-E2GUGを含む翻訳系は、[
14C]-Aspで標識されたペプチドを発現し(
図2B、レーン6−8)、質量分析の結果、翻訳産物にはリボソームによって
N3C3Gly、
N3C2Gly及びPro(N
3)が取り込まれたことが確認された(
図2C及び7)。その後、上述のとおりアジド基を除去することにより、
NH2C3Gly、
NH2C2Gly、又はPro(NH
2)を含むペプチドに対応する明らかな質量のシフトが観察された。
N3C3Gly及びPro(N
3)については、
MeAnlを含むペプチドのTCEP還元で見られたのと同様にマイナーな未知の副生成物のピークが見られたが、
N3C2Glyを含むペプチドのTCEP還元では、均一な
NH2C3Glyを含むペプチドが得られた。
【0045】
これまでに、骨格を修正した非タンパク質性アミノ酸の中には、単独では効率よく取り込まれるものの、複数連続の取り込みは生じにくいものがあることが確認されていたので(参考文献45)、次に、fMet-(Tyr)
3-(
Raa)
2-Arg-(Tyr)
3(
Raaは、N-アルキルアミノ酸を示す)を発現させて、アジドを含むN-アルキルアミノ酸の連続した2つの取り込みを試験した(
図8A)。脱塩した翻訳産物のMALDI-TOF-MS解析により、アジド前駆体が連続してペプチドに取り込まれたことが示された(
図8B)。TCEPで処理したサンプルをMALDI-TOF-MSで解析した結果、すべてのアジド前駆体について所望の産物が得られたことが示された。また、
図2Cと同様に
N3C2Glyを含むペプチドの場合に、もっとも均一に正電荷を有するN-アルキルアミノ酸を含むペプチドが得られた。
【0046】
次に、エステル化されたカルボン酸を含むN-アルキルアミノ酸がリボソームによって取り込まれるか調べるために、化学合成したN-メチルアスパラギン酸O-メチルエステル及びO-ベンジルエステルのDBE(
図1B、
MeAsp(OMe)及び
MeAsp(OBn))を合成し、いずれのエステルも、N−メチルアスパラギン酸(
MeAsp)と同様にtRNAに結合することを確認した(
図6)。
Hisの代わりに
MeAsp(OBn)-tRNA
Asn-E2GUGを加えた翻訳系を用いた翻訳アッセイでは、以前の実験結果(参考文献13)と同様に、負電荷を有する
MeAspはペプチドに導入されないことが示された(
図2B、レーン2)。
一方、
MeAsp(OMe)-tRNA
Asn-E2 GUG及びand
MeAsp(OBn)-tRNA
Asn-E2 GUGを含む翻訳系では、タンパク質性のGlu-tRNA
Asn-E2GUGを含むペプチドに匹敵する量のペプチドが発現した(
図2B、レーン1と3及び4との比較。)。
このことは、カルボン酸のメチルエステルもベンジルエステルも、取り込み効率を著しく増大させることを示す。しかしながら、脱塩した翻訳産物を質量分析したところ、いずれのペプチドも、目的とした
MeAsp(OMe)及び
MeAsp(OBn)ではなく、aspartimideを主として含んでいた。
MeAsp(OMe)及び
MeAsp(OBn)は翻訳の際うまくペプチドに取り込まれたものの、Fmocを用いたペプチドの固相合成でもよく見られるように、βカルボキシルエステルと骨格のアミドが閉環しaspartimideが形成されたものと思われる。ただし、カルボキシエステラーゼで加水分解した際は、
MeAspを含むペプチドが検出されることから、このaspartimideの形成は質量分析の際に起こっていると考えられる。
【0047】
次に、リボソームによってペプチドに取り込まれる他のエステル化したカルボン酸を含むN-アルキルアミノ酸を探索した(
図1B)。
N-メチルグルタミン酸とN-(2-カルボキシエチル)-グリシンのO-メチルエステル及びO-ベンジルエステル(それぞれ、
MeGlu(OMe)、
MeGlu(OBn)、
COOMeC2Gly及び
COOBnC2Gly;
図1B)が結合したtRNA
Asn-E2を、対応するDBEとflexizymeによって最適条件下で調製した(
図6)。
N-カルボキシメチル-グリシンのO-メチルエステル及びO-ベンジルエステル(
COOMeC1Gly及び
COOBnC1Gly、
図1B)でアミノアシル化を解析したところ、主バンドは、N-カルボキシメチル-グリシル-RNAに相当し、目的とするエステル化N-カルボキシメチル-RNAのバンドはかすかなバンドしか見られなかった。これはおそらくアミノアシル化の際に、側鎖のα-カルボキシルエステルが加水分解されたことによるものと考えられる(データなし)。そこで、
COOMeC1Gly及び
COOBnC1Glyの直接翻訳アッセイにより、アミノアシル化の時間を最適化したところ、18時間のアミノアシル化によって[
14C]-Asp標識したペプチドが得られることがわかった。同様に、
MeGlu(OMe)、
MeGlu(OBn)、
COOMeC2Gly及び
COOBnC2Glyはペプチドに取り込まれるが(
図3B、レーン6、7、9、10、12及び13)、負電荷を有する
MeGlu、
COOHC2Gly及び
COOHC1Glyは、まったく取り込まれないことを確認した(
図3B、レーン5、8及び11)。発現したペプチドの質量分析を行ったところ、試験に用いたすべてのアミノ酸について、エステル化されたカルボン酸含有N-アルキルアミノ酸が取り込まれたことが確認された(
図3C及び9)。
【0048】
次に、エステルが、対応するカルボン酸に温和な条件で変換されることを示すために、翻訳産物を精製せずに、市販のカルボキシエステラーゼで42℃、pH8.4で18時間処理した。エステラーゼ処理したサンプルのMALDI-TOF-MSスペクトルによって、すべてのアミノ酸について、エステル基が定量的にカルボン酸に変換され、カルボン酸含有N-アルキルアミノ酸が露出したことが確認された(
図3C及び9)。
さらに、単独で効率よく取り込まれた
MeGlu(OMe)が、2つ連続して取りこまれ、且つ、カルボキシエステラーゼで脱保護されることも、MALDI-TOF-MSで確認した(
図8)。
【0049】
最後に、翻訳後の脱保護を介した荷電性N-アルキルアミノ酸の取り込みについて、本発明者らが開発したin vitro TRAP(Transcription-translation coupled with Association of Puromycin-linker)ディスプレイへの適合性を調べた(
図4A)。TRAPディスプレイでは、mRNAの3'末端で、相補的なオリゴDNAリンカーの3'末端にピューロマイシンを結合させ、無細胞転写-翻訳系に直接加える(
図4A)。この系(TRAPシステム)では、DNAは連続的に転写されてペプチドに翻訳され、ペプチドは、自身をコードするmRNAにピューロマイシンリンカーを介して自発的に提示される(trapped)。このように、ペプチド-mRNA複合体は、TRAPシステム内で対応する鋳型DNAから作られる。
【0050】
荷電性N-アルキルアミノ酸を含むペプチドの提示効率は、fMet-(Tyr)
3-aa-(Gly)
5-SerペプチドをコードするDNAを構築して評価した(
図4B)。N-biotinyl-Phe(
BiotF)をtRNA
iniCAUに結合させ、ペプチドのN末端においてビオチンでペプチドを標識するために用いた(
図4a)。His、
N3C2Gly-tRNA
Asn-E2GUG、又は
MeGlu(OMe)-tRNA
Asn-E2GUGを、鋳型DNAと
BiotF-tRNA
iniCAUを含むTRAPシステムに加えた。
N3C2Gly-tRNA
Asn-E2GUG又は
MeGlu(OMe)-tRNA
Asn-E2GUGを含む翻訳産物からのストレプトアビジンによるpull-down、及びTCEP又はカルボキシルエステラーゼによる脱保護により、荷電性N-アルキルアミノ酸(
MeGlu又は
NH2C2Gly)を含むビオチン化ペプチドが、コントロールのタンパク質性ペプチドと同等の効率で、そのmRNA上に提示されることが確認された(
図4C)。
また、非アミノアシル化tRNA
Asn-E2GUGを含むコントロールの翻訳産物に対するストレプトアビジンpull-down実験では、ビオチン化ペプチドはmRNAに提示されないことが示された(
図4C)。
【0051】
3.補足
3−1.N-アルキルアミノ酸 3,5-ジニトロベンジルエステルの合成
すべてのN-アルキルアミノ酸、Boc基で保護したN-アルキルアミノ酸、及びFmoc基で保護したN-アルキルアミノ酸は、Watanabe Chemical、TCI、Chem-Impex、又はApollo Scientificから購入した。アジド基含有N-アルキルアミノ酸は、対応する一級アミン含有N-アルキルアミノ酸から、参考文献46の方法で合成した。すべてのN-アルキルアミノ酸は、参考文献13、41、及び19の方法で3,5-ジニトロベンジルエステル(DBE)に変換した。N-アルキルアミノ酸DBEのメチルエステル化は、トリメチルシリルジアゾメタンで行った。N-アルキルアミノ酸DBEのベンジルエステル化は、臭化ベンジルを用いて、アミノ酸の3,5-ジニトロベンジルエステル化(参考文献41)と同様の方法で行った。
【0052】
3−2.フレキシザイムによる、マイクロヘリックスRNAとN-アルキルアミノ酸のアミノアシル化アッセイ
マイクロヘリックスRNAとジニトロフレキシザイム(dFx)は、適切な鋳型のrun-off transcriptionにより調製した(参考文献41)。アミノアシル化効率は、マイクロヘリックスRNAを用いて測定した。反応は、通常以下の条件で行った。5 μLの25 μM dFx、25 μM マイクロヘリックスRNA、及び5 mM N-アルキルアミノ酸DBE(0.1 M Hepes-K buffer pH 7.5中)、20 mM MgCl
2並びに20 % DMSO(氷上)。
手順は、以下のとおりである。50 μMマイクロヘリックスRNA(0.2 M Hepes-Kバッファ、pH 7.5 (2.5 μL)中)を、95℃で1分加熱し、5分間で室温まで冷却した。MgCl
2(100 mM、1 μL)及びdFx(250 μM、0.5 μL)を混合液に加えた。N-アルキルアミノ酸DBE(DMSO中25mM、1μL)を加えて反応を開始させ、氷上でインキュベートした。15μLのローディングバッファ(150 mM酢酸ナトリウムpH 5、10 mM EDTA、及び83%ホルムアミド)を加えて反応を停止した。このサンプルを、20%変性酸PAGE(50mM 酢酸ナトリウム pH5、6M 尿素)で解析した。RNAをエチジウムブロマイドで染色し、Pharos FX (BIO-RAD)で解析した。
【0053】
3−3.N-アルキルアミノ酸でアミノアシル化したtRNA
Asn-E2のフレキシザイムによる調製
tRNA
Asn-E2は、参考文献19、44の方法で、適切な鋳型のrun-off transcriptionによって調製した。tRNA
Asn-E2のアミノアシル化は、通常以下の条件で行った。50 μLの25 μM dFx、25 μM tRNA
Asn-E2、及び5 mM N-アルキルアミノ酸DBE(0.1 M Hepes-Kバッファ、pH 7.5中)、20 mM MgCl
2並びに20 % DMSO(氷上)。
手順は以下のとおりである。50 μM tRNA
Asn-E2(0.2 M Hepes-Kバッファ、pH 7.5 (25 μL)中)を95℃で1分間加熱し、5分間で室温まで冷却した。MgCl
2(100 mM、10 μL)とdFx(250 μM、5 μL)を混合物に加えた。N-アルキルアミノ酸DBE(DMSO中25 mM、10 μL)を加えて反応を開始させ、氷上でインキュベートした。150μLの0.6M酢酸ナトリウムpH5を加えて反応を停止した。エタノール沈殿でRNAを回収し、70%エタノールでリンスした。
【0054】
3−4.ペプチドをコードする鋳型DNAの調製
鋳型DNAを調製するために用いたプライマーを表1に示す。
図2Aに示されるペプチドをコードする鋳型DNAは、プライマー伸長にはフォワードプライマーT7pEpsSD6MY3.F37とリバースプライマーeSD6MY3HFlag.R40を用い、増幅にはフォワードプライマーT7pEpsSD6.F40とリバースプライマーFlaguaa.R33を用いた。
図8Aに示されるペプチドをコードする鋳型DNAは、プライマー伸長にはフォワードプライマーT7pEpsSD6MY3.F37及びリバースプライマーeSD6MY3H2RY3.R40を用い、増幅にはフォワードプライマーT7pEpsSD6.F40及びリバースプライマーRY3uaa2.R18を用いた。
図4Bに示されるペプチドをコードする鋳型DNAは、プライマー伸長にはフォワードプライマーSD8M2-Y3H-G5S-4.F40及びリバースプライマーG5S-4.an21.R41を用い、アニーリングと伸長はTaq DNAポリメラーゼ(Genscript)を用いた。続いて、得られたdsDNAを、フォワードプライマーT7SD8M2.F44及びリバースプライマーG5S-4.an21.R41を用い、Taq DNAポリメラーゼを用いて増幅した。
【0055】
3−5.無細胞再構成翻訳系の調製
再構成翻訳系は、過去の報告(参考文献22、20、16、45)にしたがって調製した。翻訳反応液におけるタンパク質因子及びリボソームの濃度を表2に示す。翻訳反応液にtRNA及び低分子化合物の濃度を表3に示す。
【0056】
3−6.TRAPシステムの調製
TRAPシステムは、2.5μMのピューロマイシンリンカー(BEX, Japan)と、1μM T7 RNAポリメラーゼを含む上記翻訳系で調製した。
【0057】
3−7.N-biotinyl-Phe-tRNA
fMetCAUの調製
Enhanced flexizyme(eFx)及びtRNA
fMetCAUは、参考文献41、47に従って適切な鋳型のrun-off transcriptionにより調製した。N- biotinyl -Phe-CMEは参考文献48に従って調製した。tRNA
fMetCAUのアミノアシル化は、以下の条件で行った。50 μLの25 μM eFx、25 μMのtRNA
fMetCAU及び5 mMのN-biotinyl-Phe-CME(0.1 M Hepes-KバッファpH 8)、600 mM MgCl
2 並びに20 % DMSO(氷上)。手順は以下のとおりである。50 μM tRNA
fMetCAU (0.2 M Hepes-K バッファ pH 7.5(25 μL)中)を95℃で1分間加熱し、5分間で室温まで冷却した。MgCl
2 (3 M、10 μL)及びeFx(250 μM、5 μL)を反応液に加えた。N-biotinyl-Phe-CME(DMSO中25 mM、10 μL)を加えて反応を開始させ、氷上でインキュベートした。150μLの0.6M酢酸ナトリウムpH5を加えて反応を停止した。エタノール沈殿でRNAを回収し、0.1M酢酸ナトリウム(pH5)を含む70%エタノールで2回リンスし、70%エタノールで1回リンスした。
【0058】
3−8.連続した2つのN-アルキルアミノ酸を含むペプチドのリボソーム合成
0.04 μMのDNA鋳型、それぞれ0.5 mMのMet、Tyr、Arg、0.03 μMのMetRS、0.02 μMのTyrRS、0.03 μM ArgRS、及び100 μMのN-アルキルアミノアシル-tRNA
Asn-E2GUGを含む反応液を、37℃で60分インキュベートした。MALDI-TOF MS解析のために、翻訳産物をC-TIP(Nikkyo Technos)で脱塩し、80%アセトニトリル、0.5%酢酸(CHCA飽和)で溶出し、autoflexII(BRUKER DALTONICS)のlinear positive modeで解析した。
【0059】
逆転写反応、TRAPディスプレイ法又はペプチドをコードする鋳型DNAの調製に用いたオリゴDNA(Greiner Bio-One又はBEXから購入した。)
【表1】
翻訳混合液におけるタンパク質成分とリボソームの濃度。Creatine kinaseはRoche Diagnostics社より、MyokinaseはSigma-Aldrichより購入した。
【表2】
翻訳混合液における低分子化合物とtRNAの濃度。Creatine phosphateと、E. coli total tRNAはRoche Diagnosticsより購入した。10-ホルミル-5,6,7,8テトラヒドロ葉酸は合成した。
【表3】
【0060】
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