特許第6357259号(P6357259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6357259自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6357259
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/06 20060101AFI20180702BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20180702BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20180702BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20180702BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20180702BHJP
   C11D 3/395 20060101ALI20180702BHJP
   C11D 7/54 20060101ALI20180702BHJP
   A47L 15/42 20060101ALI20180702BHJP
   A47L 15/46 20060101ALI20180702BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20180702BHJP
   C11D 7/10 20060101ALI20180702BHJP
   C11D 7/12 20060101ALI20180702BHJP
   C11D 3/10 20060101ALI20180702BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   C11D7/06
   C11D1/72
   C11D3/33
   C11D3/37
   C11D7/22
   C11D3/395
   C11D7/54
   A47L15/42 Z
   A47L15/46 Z
   C11D7/32
   C11D7/10
   C11D7/12
   C11D3/10
   C11D3/04
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-63952(P2017-63952)
(22)【出願日】2017年3月28日
【審査請求日】2017年12月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-67910(P2016-67910)
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-48000(P2017-48000)
(32)【優先日】2017年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(73)【特許権者】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100126413
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】小倉 智恵子
(72)【発明者】
【氏名】野積 拓也
(72)【発明者】
【氏名】荒井 博紀
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−003895(JP,A)
【文献】 特開2012−001685(JP,A)
【文献】 特表2010−519351(JP,A)
【文献】 特開2007−238951(JP,A)
【文献】 特開平11−021586(JP,A)
【文献】 特開2010−144087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 7/06
A47L 15/42
A47L 15/46
C11D 1/72
C11D 3/04
C11D 3/10
C11D 3/33
C11D 3/37
C11D 3/395
C11D 7/10
C11D 7/12
C11D 7/22
C11D 7/32
C11D 7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としてアルカリ金属水酸化物40質量%以上、50質量%以下、
(B)成分としてアミノカルボン酸系キレート剤25質量%以上、45質量%以下、
(C)成分として高分子ポリマー0.1質量%以上、10質量%以下、
(D)成分として水、
を含み、(A)成分と(C)成分の質量比、(A)/(C)の値が8以上、35以下であるとともに、質量比で(A)/{(A)+(D)}の値が0.60以上、0.69以下であることを特徴とする自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物。
【請求項2】
(C)成分の高分子ポリマーが、アクリル酸/スルホン酸共重合体またはその塩である請求項1記載の自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物。
【請求項3】
更に(E)成分として5質量%以下のノニオン界面活性剤を含有する請求項1又は2に記載の自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に(F)成分として15質量%以下の無機ビルダーを含有する請求項1〜のいずれかに記載の自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物。
【請求項5】
更に(G)成分として安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された塩素系漂白剤を含有する請求項1〜のいずれかに記載の自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物。
【請求項6】
(G)成分の安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された塩素系漂白剤の、塩素系漂白剤と安息香酸塩の質量比、塩素系漂白剤/安息香酸塩の値が、0.001以上、1,000以下である請求項5記載の自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物を、下端部分に排出口を有する溶出ホッパー内に設置し、給水ノズルから水を供給してホッパー内の自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物を水に溶解させ、自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物濃度を0.01質量%以上、0.09質量%以下に調整した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して食器類を洗浄する工程、洗浄後すすぎ液ですすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項8】
前記すすぐ工程において、すすぎ液を洗浄機の平面積2500cmあたり、1L以上、3L以下噴射して食器類をすすぐ請求項7に記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融混合した洗浄剤組成物を固化して得られる自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動食器洗浄機用の洗浄剤としては液体又は粉末の洗浄剤組成物が使用されていたが、液体タイプの洗浄剤組成物は嵩張るため運搬、保管に問題があった。また粉末タイプの洗浄剤組成物は液体タイプに比してコンパクト化を図ることができるが、粉末飛散による環境汚染や作業性低下を生じるという問題や、粉末洗浄剤組成物中の配合成分の溶解速度の相違等によって洗浄液の組成や濃度が常に一定にならず均一な洗浄性が得られにくいという問題があった。近年、環境意識の高まりにより、有効成分がより濃縮された低濃度で使用できる無リン洗浄剤の需要が高まっており、液体タイプ、粉末タイプの洗浄剤組成物に代えて、高濃度でコンパクト化が可能であり、粉末タイプに比して各成分の溶解性が均一で安定した洗浄性が発揮される自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物が求められている。
【0003】
一方、自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物として、水酸化アルカリ金属塩20〜60重量%、アミノカルボン酸塩等の金属イオン封鎖剤を含み、水酸化アルカリ金属塩の一部が無水水酸化アルカリ金属塩の状態で分散している固形洗浄剤(特許文献1)、少なくとも一部がナトリウム等であるアルカリ源を約2〜15重量%と、少なくとも一部がカリウム塩であるアミノカルボン酸型金属イオン封鎖剤を約20〜40重量%とを含む固形型洗浄剤(特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−3895号公報
【特許文献2】特表平6−501717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物は、各成分を溶融混合した組成物をプラスチック等の容器に充填収納し、冷却固形化したカートリッジ式洗浄剤として流通されている。しかしながら、水酸化アルカリ金属塩とアミノカルボン酸系キレート剤を高濃度で配合した場合、溶融混合したスラリーの粘度が急激に高くなり、スラリーの容器への充填効率が悪くなったり、容器に充填する前にスラリーが固形化してしまい充填が困難となったりする問題があった。また特許文献2に記載されている固形洗浄剤は、高濃度のアミノカルボン酸型金属イオン封鎖剤の一部にカリウム塩を含むことにより、固形化後の製品が保存中に潮解しやすいという問題があった。また、低濃度で安定した性能を発揮するためには、成形後の組成物において成分の偏りなどがなく均一で、かつ適正な溶解度を有することにより安定に供給できることが重要であるが、従来までの技術では、高温充填時に粘度が低くなり成分の偏りが生じてしまったり、また融点が低く解けやすかったり、固すぎて解けにくかったりと、低濃度での供給安定性が十分ではなかった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みなされたもので、アルカリ金属水酸化物とアミノカルボン酸系キレート剤とを含有する従来の自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物の問題点を解決し、コンパクトで成分の偏りがなく長期貯蔵安定性に優れ、かつ溶解安定性が良好で、低濃度での洗浄性とスケール防止性に優れた自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意研究した結果、アルカリ金属水酸化物、アミノカルボン酸系キレート剤、高分子ポリマーを特定の割合で配合し、且つアルカリ金属水酸化物と水の比率を特定の範囲とすることで、アルカリ金属水酸化物とアミノカルボン酸系キレート剤とを高濃度で配合した溶融固形型洗浄剤組成物が有していた問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、
(1)(A)成分としてアルカリ金属水酸化物40質量%以上、50質量%以下、
(B)成分としてアミノカルボン酸系キレート剤25質量%以上、45質量%以下、
(C)成分として高分子ポリマー0.1質量%以上、10質量%以下、
(D)成分として水、
を含み、(A)成分と(C)成分の質量比、(A)/(C)の値が8以上、35以下であるとともに、質量比で(A)/{(A)+(D)}の値が0.60以上、0.69以下であることを特徴とする自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物、
(2)(C)成分の高分子ポリマーが、アクリル酸/スルホン酸共重合体またはその塩である上記(1)の自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物、
(3)更に(E)成分として5質量%以下のノニオン界面活性剤を含有する上記(1)又は(2)の自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物、
(4)更に(F)成分として15質量%以下の無機ビルダーを含有する上記(1)〜(3)のいずれかの自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物、
(5)更に(G)成分として安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された塩素系漂白剤を含有する上記(1)〜(4)のいずれかの自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物、
(6)(G)成分の安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された塩素系漂白剤の、塩素系漂白剤と安息香酸塩の質量比、塩素系漂白剤/安息香酸塩の値が、0.001以上、1,000以下である上記(5)の自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物、
(7)上記(1)〜(6)のいずれかの自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物を、下端部分に排出口を有する溶出ホッパー内に設置し、給水ノズルから水を供給してホッパー内の自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物を水に溶解させ、自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物濃度を0.01質量%以上、0.09質量%以下に調整した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して食器類を洗浄する工程、洗浄後すすぎ液ですすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(8)前記すすぐ工程において、すすぎ液を洗浄機の平面積2500cmあたり、1L以上、3L以下噴射して食器類をすすぐ上記(7)の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物(以下、単に溶融固形型洗浄剤組成物という場合がある)は、アルカリ金属水酸化物とアミノカルボン酸系キレート剤とを高濃度で含んでいながら、各成分を溶融したスラリーを容器に充填して製品化する際に、スラリー粘度が急激に上昇したり、充填前に固形化して容器への充填が困難となったりすることがなく、効率よく製造が可能でありコンパクトな形態の製品として提供することができる。また本発明の溶融固形型洗浄剤組成物は、保管性に優れ製品保存中に潮解する等の虞がなく、溶解安定性も良好で過剰に溶解したり溶解不良を生じることがなく、低濃度で安定して供給することができる等の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物において、(A)成分として用いるアルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムやこれらの混合物が挙げられるが、水酸化ナトリウムが好ましい。また(B)成分として用いるアミノカルボン酸系キレート剤としては、ニトリロ三酢酸又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、グルタミン酸二酢酸又はその塩、メチルグリシン二酢酸又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸又はその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸又はその塩、トリエチレンテトラミン六酢酸又はその塩等が挙げられる。これらアミノカルボン酸系キレート剤の中でも、洗浄効果が良好なことからニトリロ三酢酸又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、グルタミン酸二酢酸又はその塩、メチルグリシン二酢酸又はその塩が好ましく、特に製造効率性が良好なことからニトリロ三酢酸又はその塩、及びエチレンジアミン四酢酸又はその塩が好ましい。
【0011】
(C)成分の高分子ポリマーとしては、カルボン酸系ポリマー、スルホン酸系ポリマーやこれらの塩が挙げられ、高分子ポリマーは2種以上を組み合わせて用いることができる。カルボン酸系ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合体、メタクリル酸系共重合体等が挙げられるが、ポリアクリル酸やアクリル酸/マレイン酸共重合体がより好ましい。カルボン酸系ポリマーの重量平均分子量が3,000以上、120,000以下が好ましく、特に好ましくは10,000以上、90,000以下である。カルボン酸系ポリマーの重量平均分子量が3,000未満では再汚染防止性の点で好ましくなく、120,000を超えると貯蔵安定性の点で好ましくない。ポリマレイン酸の重量平均分子量については、300以上、2,000以下が好ましく、400以上、1,500以下であることが特に好ましい。スルホン酸系ポリマーとしては、アクリル酸/スルホン酸モノマー共重合体が挙げられ、スルホン酸系ポリマーの重量平均分子量は1,000以上、20,000以下が好ましく、特に好ましくは2,000以上、15,000以下である。スルホン酸系ポリマーの重量平均分子量が1,000未満であると、スケール防止性の点で好ましくなく、20,000を超えると貯蔵安定性の点で好ましくない。高分子ポリマーとして用いるカルボン酸系ポリマー、スルホン酸系ポリマーの塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が好ましい。(C)成分として用いる高分子ポリマーとしては、溶融固形型洗浄剤組成物の嵩張りを抑制する点、スケール防止性の点でアクリル酸/スルホン酸共重合体、アクリル酸/マレイン酸共重合体、あるいはこれらの塩が、好ましく、アクリル酸/スルホン酸共重合体あるいはその塩が特に好ましい。
【0012】
(D)成分の水としては、水道水、軟水化処理水、純水、RO水、イオン交換水、蒸留水等を用いることができるが、純水、RO水、イオン交換水、蒸留水が好ましい。
【0013】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物は、(A)成分のアルカリ金属水酸化物40質量%以上、50質量%以下、(B)成分のアミノカルボン酸系キレート剤25質量%以上、45質量%以下、(C)成分の高分子ポリマー0.1質量%以上、10質量%以下含有し、(A)成分、(B)成分、(C)成分合計の残りを(D)成分の水が占めるが、(A)成分41質量%以上、45質量%以下、(B)成分28質量%以上、35質量%以下、(C)成分1質量%以上、5質量%以下が好ましい。(A)成分の量が40質量%未満では、低濃度使用時に洗浄性やスケール防止性が低下し、また50質量%を超えると、製造時に粘度が上昇してしまい製造することが困難となる。(B)成分の量が25重量%未満では、低濃度使用時に洗浄性やスケール防止性が低下し、また45質量%を超えると製造時に粘度が上昇してしまい製造することが困難となる。(C)成分の量が0.1質量%未満ではスケール防止性が低下し、また製造時の粘度が不十分となるため固化後の成分が不均一となるし、10質量%を超えると製造時に粘度が上昇してしまい製造することが困難となる。また(A)成分のアルカリ金属水酸化物は、(A)成分と(D)成分の水との合計量に対し、質量比で(A)/{(A)+(D)}の値が0.58以上、0.75以下となるように配合するが、(A)/{(A)+(D)}の値が0.60以上、0.72以下となるように配合することが好ましく、(A)/{(A)+(D)}の値が0.63以上、0.69以下となるように配合することがより好ましい。(A)成分の配合割合が40質量%以上、50質量%以下の範囲内であっても、(A)/{(A)+(D)}の値が0.58未満の場合、溶解性が悪くなったり、成分の均一性や長期貯蔵安定性が悪化し、0.75を超える場合には、製造時に粘度が上昇してしまい製造することが困難となったり、長期貯蔵安定性が悪化したりする。
【0014】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物は、(A)成分と(C)成分の質量比、(A)/(C)の値が5以上、39以下となるように含むことが好ましく、(A)/(C)の値が8以上、35以下となるように含むことがより好ましい。(A)/(C)の値が5以上、39以下であると、嵩が小さくコンパクトな組成物となり、また長期貯蔵時に潮解などの発生がなく、低濃度使用時のスケール防止性が良好な組成物となる。
【0015】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物は、上記(A)成分〜(D)成分の他に、更に(E)成分としてノニオン界面活性剤を5質量%以下配合することができる。(A)成分〜(D)成分の他に、更に5質量%以下の(E)成分を配合すると、洗浄性、被洗浄物への食物汚れの再付着防止性、並びに抑泡性が向上する。(E)成分を5質量%超える量配合すると、貯蔵安定性や成型性(溶融固形型洗浄剤組成物が固化しにくい)の点で好ましくない。(E)成分は、0.1質量%以上、4質量%以下配合することがより好ましく、1質量%以上、3質量%以下配合することが更に好ましい。(E)成分として用いるノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダム、ブロックの何れでもよい)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル(エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダム、ブロックの何れでもよい)等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリエチレングリコールプロピレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキシド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド又はそのエチレンオキシド付加物、脂肪酸−N−メチルモノエタノールアミド又はそのエチレンオキシド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリセリンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、N−長鎖アルキルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、洗浄性、抑泡性、成分の均一性に優れることからリバースプルロニック型ブロックポリマーが好ましい。具体的には、ADEKA社製のアデカプルロニック25R−1やアデカプルロニック25R−2が好ましい。
【0016】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物には、更に(F)成分として15質量%以下の無機ビルダーを配合することができる。無機ビルダーとしては、炭酸塩、硫酸塩、塩酸塩が挙げられる。具体的には、炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸リチウム、セスキ炭酸ナトリウム、セスキ炭酸カリウム、セスキ炭酸リチウム、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。なかでも、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムが挙げられる。無機ビルダーを配合すると、洗浄補助効果や長期貯蔵安定性の向上効果などがある。無機ビルダーを配合する場合、0.5質量%以上、10質量%以下がより好ましい。無機ビルダーとして珪酸塩は珪酸スケールの発生原因となり、リン酸塩のリンは湖沼等の富栄養化の原因となるため配合しないことが好ましいが、スケール発生や富栄養化の問題が生じない程度の量であれば配合することができる。
【0017】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物には、更に(G)成分として安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された塩素系漂白剤を配合することができる。溶融固形型洗浄剤組成物の製造時において、スラリー水溶液中に安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された塩素系漂白剤を配合しても、有効塩素量の低下がみられない。また、溶融固形型洗浄剤組成物を使用して洗浄する際、有効塩素安定性、速溶性に優れるため、十分な洗浄性、バイオフィルム防止性、漂白性を発揮することができる。溶融固形型洗浄剤組成物中の配合量は、良好な洗浄性、バイオフィルム防止性、漂白性を得るために0.01質量%以上、10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、5質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以上、3質量%以下である。この範囲において、良好な洗浄性、バイオフィルム防止性、漂白性が得られる。
また、被覆量は、塩素系漂白剤と安息香酸塩の質量比、塩素系漂白剤/安息香酸塩の値が0.001以上、1,000以下が好ましく、より好ましくは0.01以上、100以下、更に好ましくは0.1以上、10以下である。塩素系漂白剤と安息香酸塩の質量比が、0.001未満では十分な安定化効果が期待できない虞があり、1,000を超えてもそれ以上の効果は期待できない。
安息香酸塩を含む被覆剤で被覆されていない塩素系漂白剤を使用すると、本発明の溶融固形型洗浄剤組成物の製造時に温度や水、他の薬剤との接触により塩素成分が分解することや、溶融固形型洗浄剤組成物を希釈して使用する際、水(お湯)に接触した部分の塩素成分が分解してしまい、バイオフィルム防止性、漂白性を発揮することができない。また、被覆剤として界面活性剤を使用すると、食器洗浄機中で泡立ってしまうため洗浄効率が低下してしまう。被覆剤としてシリカやステアリン酸カルシウムなどを使用すると、食器洗浄機中に残留してしまい、洗浄阻害が発生するため好ましくない。
【0018】
塩素系漂白剤としては、クロラミンB(N−クロロベンゼンスルホンアミドナトリウム)、ジクロラミンB(N,N’−ジクロロベンゼンスルホンアミド)、クロラミンT(N−クロロ−P−トルエンスルホンアミドナトリウム)、ジクロラミンT(N,N’−ジクロロ−P−トルエンスルホンアミド)等のクロロアミン化合物。トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、又はそれらの塩等の塩素化イソシアヌル酸類、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸塩、塩化リン酸三ナトリウム、二酸化塩素等が挙げられる。これらの中でも、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムが好ましく、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムが特に好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。被覆剤は、安息香酸塩を含んでいれば良いが、安息香酸塩を50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、特に95質量%以上含むことが好ましい。安息香酸塩としては、例えば、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウムなどが挙げられるが、洗浄時の溶解性の点で安息香酸ナトリウムが好ましい。塩素系漂白剤を被覆する方法としては、特に限定するものではないが、例えば乾燥した塩素系漂白剤に対して、安息香酸塩を水、エタノール、メタノール、エーテル等の溶媒に溶解あるいは懸濁させた液を噴霧し、乾燥させ被覆する方法、また乾燥した塩素系漂白剤に安息香酸塩微粉末を混ぜ水等の結合剤を噴霧し被覆する方法等が挙げられる。
【0019】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物は、上記成分の他に、更に必要に応じて任意成分としてシリコーン、塩素剤等を含有していても良い。更に当該技術分野で通常使用される、粘度調整剤、防腐剤、殺菌剤、pH調整剤、香料、色素等の成分を含有していても良い。
【0020】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物は、各成分を加熱下に溶融混合したスラリーを冷却固形化して得られるが、通常、スラリーをプラスチック等の容器に充填し、容器内で冷却固化して製品化される。
【0021】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物を用いて自動食器洗浄機で食器類の洗浄を行う方法としては、溶融固形型洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で水に溶解させ、溶融固形型洗浄剤組成物濃度を0.01質量%以上、0.09質量%以下に調整した洗浄液を洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して食器類を洗浄する工程、洗浄後にすすぎ液ですすぐ工程とを連続して行う方法が挙げられる。溶融固形型洗浄剤組成物濃度を0.01質量%以上、0.09質量%以下となるように溶融固形型洗浄剤組成物を水に溶解させるには、溶融固形型洗浄剤の水溶液の電気伝導度は、溶解した溶融固形型洗浄剤の濃度に比例するため、溶融固形型洗浄剤を溶解した洗浄タンクの水溶液の電気伝導度を測定することで溶融固形型洗浄剤の濃度が制御可能となる。通常、洗浄タンクの水溶液の電気伝導度は溶融固形型洗浄液濃度が機械的に測定され、電気伝導度が低い場合には、自動的に溶融固形型洗浄剤が供給される。その際の供給方法としては、容器に溶融固形型洗浄剤組成物を充填した溶出ホッパーを用いて、ホッパー内の溶融固形型洗浄剤組成物の必要量を水で溶解し、供給管を通って食器洗浄機に送る方法が挙げられる。溶融固形型洗浄剤組成物を所定濃度に希釈調製した洗浄液は、洗浄液タンク内で通常、40℃以上、70℃以下で保持される。洗浄液は洗浄機庫内の食器類に対し、30秒以上、120秒以下噴射される。すすぎ液としては通常、水道水が用いられるがリンス剤を用いても用いなくても良い。すすぎ液は、洗浄機の食器設置平面積2500cm2当たり1L以上、3L以下が好ましい。またすすぎ液の温度は40℃以上、95℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以上、90℃以下である。溶融固形型洗浄剤組成物の希釈水やすすぎ液の水道水としては、例えば、東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度2.7°DH(そのうち、カルシウム硬度2.0°DH、マグネシウム硬度0.7°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物15mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.2mg/L、フッ素及びその化合物0.1mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.016mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.7mg/L)が挙げられる。
【実施例】
【0022】
以下に本発明を実施例、比較例を挙げてより具体的に説明する。なお、以下の実施例等において「%」は特に記載がない限り質量%を表し、表中における実施例および比較例の配合の数値は純分の質量%を表す。実施例、比較例において使用した化合物を以下に記す。
【0023】
(A)成分
A−1:水酸化ナトリウム 商品名:粒状苛性ソーダ、旭硝子社製
A−2:水酸化カリウム 商品名:フレーク苛性カリ、東亞合成社製
【0024】
(B)成分
B−1:ニトリロ三酢酸ナトリウム塩 商品名:Trilon A92R、BASF社製
B−2:エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 商品名:ディゾルビンNA、アクゾノーベル社製
B−3:グルタミン酸二酢酸ナトリウム塩 商品名:ディゾルビンGL−47−S、アクゾノーベル社製
B−4:メチルグリシン二酢酸ナトリウム塩 商品名:Trilon M Powder、BASF社製
B−5:3-ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸四ナトリウム塩 商品名:HIDS、純分50%、日本触媒社製
【0025】
(C)成分
C−1:アクリル酸/スルホン酸モノマー共重合体ナトリウム1(重量平均分子量が5,000)
C−2:アクリル酸/マレイン酸共重合体ナトリウム(重量平均分子量が70,000)
C−3:ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量が4,000)
C−4:アクリル酸/スルホン酸モノマー共重合体ナトリウム2(重量平均分子量が11,000)
C−5:ポリマレイン酸ナトリウム(重量平均分子量が500)
【0026】
(D)成分
D−1:イオン交換水
【0027】
(E)成分
E−1:リバースプルロニック型ブロックポリマー1(ポリオキシエチレン鎖の両端にポリオキシプロピレン鎖が結合したブロックポリマー)オキシエチレン鎖の含有率が20%、商品名:アデカプルロニック25R−2、ADEKA社製
E−2:リバースプルロニック型ブロックポリマー2(ポリオキシエチレン鎖の両端にポリオキシプロピレン鎖が結合したブロックポリマー)オキシエチレン鎖の含有率が10%、商品名:アデカプルロニック25R−1、ADEKA社製
E−3:脂肪族アルコールアルコキシレート、商品名:プルラファックLF403、BASF社製
【0028】
(F)成分
F−1:炭酸ナトリウム
F−2:硫酸ナトリウム
【0029】
(G)成分 安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された塩素系漂白剤
G−1:コーティングジクロロイソシアヌル酸ナトリウム1(被覆剤は株式会社ウエノフードテクノ製の安息香酸ナトリウム:製品名 安息香酸ナトリウムウエノ、純分99.0%以上)
G−2:コーティングジクロロイソシアヌル酸ナトリウム2(被覆剤は和光純薬工業株式会社製の安息香酸カリウム:製品名 安息香酸カリウム、純分99.0%以上)
G−3:コーティング次亜塩素酸カルシウム(被覆剤は株式会社ウエノフードテクノ製の安息香酸ナトリウム:製品名 安息香酸ナトリウムウエノ、純分99.0%以上)
G−4:コーティングトリクロロイソシアヌル酸ナトリウム(被覆剤は株式会社ウエノフードテクノ製の安息香酸ナトリウム:製品名 安息香酸ナトリウムウエノ、純分99.0%以上)
G−5:コーティングジクロロイソシアヌル酸ナトリウム3(被覆剤は株式会社ウエノフードテクノ製の安息香酸ナトリウム:製品名 安息香酸ナトリウムウエノ、純分99.0%以上と、和光純薬工業株式会社製のアジピン酸二カリウム:製品名 アジピン酸二カリウム 純分95.0%以上、を質量比2:1で混合したもの)
(G)成分は、回転ドラム(コーティングパン)に顆粒状の塩素系漂白剤を入れて回転しながら、スプレーガンにより、圧縮空気とともにコーティング液(被覆剤を溶解したメタノール液)をエアースプレーする。なるべく塩素系漂白剤全体に均一にコーティング液がゆきわたるように噴霧する。スプレー後、70℃の熱風で乾燥させることによって調製した。得られた安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された塩素系漂白剤の有効塩素量をチオ硫酸ナトリウム滴定で求め、被覆量が塩素系漂白剤と安息香酸塩の質量比で、塩素系漂白剤/安息香酸塩の値で2.5になるように調製した。
【0030】
その他成分
その他:シリコーン 商品名:DOW CORNING TORAY FSアンチフォーム1266、東レ・ダウコーニング社製
【0031】
実施例1〜90、比較例1〜6
表1〜表10に示す配合のスラリーを調製し、これを冷却固化して溶融固形型洗浄剤組成物を得た。溶融固形型洗浄剤組成物の洗浄性、スケール防止性、製造効率、溶融安定性、成分の均一性、長期貯蔵安定性の各試験、嵩比重の測定を下記条件で行った。結果を表1〜表10に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】
【0039】
【表8】
【0040】
【表9】
【0041】
【表10】
【0042】
※1:洗浄性試験1(66℃)
<被洗浄物>
直径20cmのガラス皿に市販のマヨネーズ(キューピー社製)2gを均一に塗布し、室温で乾燥させた汚染皿を被洗浄物とした。
<試験方法>
溶融固形型洗浄剤組成物の濃度を0.04質量%に希釈した洗浄液を洗浄機の洗浄液タンクに貯留して66℃で保持し、洗浄ラックに汚染皿5枚を設置し、以下の条件で洗浄、すすぎを行った。溶融固形型洗浄剤組成物の希釈水、すすぎ水は塩化カルシウムを用いて硬度3°DHに調製した人工硬水を用いた。
<洗浄条件>
洗浄機:ホシザキ社製、電気製自動食器洗浄機JWE−680AJ
洗浄温度:66℃
洗浄時間:41秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
すすぎ1回当たりの水量:2L
<洗浄性評価>
洗浄、すすぎ後の皿を室温で乾燥後、暗室において蛍光灯を照射、反射させて汚れの残存状況を目視判定により以下の基準で評価した。
◎:清浄な皿と比較して差がない。
○:うすい曇りのみが認められる。
×:曇りとスポットが認められる。
とし、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0043】
※2:スケール防止性試験
<試験方法>
洗浄ラックに250mLのグラス36個を設置し、塩化カルシウムで硬度10°DHに調製した人工硬水より溶融固形型洗浄剤組成物の濃度を0.01質量%、0.09質量%に希釈した洗浄液により下記条件で洗浄後、すすぎをおこない、インターバル(供給停止時間)の工程で、洗浄機を200回連続運転後、洗浄機庫内のスケール付着量を目視判定し、以下の基準で評価した。
<洗浄条件>
洗浄機:ホシザキ社製、電気製自動食器洗浄機JWE−680AJ
洗浄温度:66℃
洗浄時間:41秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
インターバル:5秒
すすぎ1回当たりの水量:2L
<評価基準>
◎:スケールの付着が全く認められなかった。
○:スケールの付着がほとんど認められなかった。
△:スケールの付着が若干認められるが、使用上問題ないレベル。
×:著しいスケールの付着が認められた。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0044】
※3:製造効率性試験(粘度、充填速度)
<試験方法>
1Lステンレスビーカーにて溶融スラリーを1kg作成後、1Lポリ容器に全量充填し、以下の基準で評価した。
<充填条件>
充填温度:65℃
<評価基準>
◎:10秒未満にほぼ全量(99%以上)充填できた。
○:10秒以上、30秒未満にほぼ全量(99%以上)充填できた。
×:30秒以上時間がかかっても、全量は充填できなかった(99%未満)。
とし、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0045】
※4:溶解安定性試験
<試験方法>
1Lガラスビーカーに1Lの水を入れ60℃に保持し、長さ40mm、直径8mmの回転子を用いてマグネティックスターラー(型番RS‐4DR(アズワン株式会社))で回転速度600rpmにして撹拌した。そこへ、高さが10mm以上、15mm以下の正四角錐台状の溶融固形型洗浄剤組成物3.2gを1個入れ、溶解して目視で確認できなくなるまでに要した時間を測定し、以下の基準で評価した。
◎:溶解までに要した時間が90秒以上、240秒未満。
○:溶解までに要した時間が30秒以上、90秒未満又は240秒以上、600秒未満、
×:溶解までに要した時間が30秒未満又は600秒以上。
とし、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0046】
※5:成分の均一性試験(偏在)
<試験方法>
溶融固形型洗浄剤組成物の溶融スラリーを1kg作成し、溶融スラリーの一部(10g程度)を採取して、キレート力を測定。その後スラリーの全量を65℃にて充填し1L容積のポリエチレン瓶に入れ、24時間25℃にて放置し固化させた後、容器上部、容器下部の固化物を30g以上採取し、キレート力を測定した。溶融スラリーのキレート力を理論値として、以下の評価基準にて評価した。
<キレート力の測定法>
100mLビーカーに洗浄剤組成物を正確に秤量し、蒸留水で約100mLに希釈する。1mol/L NaOHを2mL、1/100mol/L塩化カルシウム2水和物溶液を10mL加える。NN指示薬(1−(2−ヒドロキシ−4−スルホ−1−ナフチルアゾ)−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸)を約0.1g加えよく撹拌する。1/100mol/L EDTA溶液で滴定し、赤紫から青に変色した点を終点とする。下記式(1)によりキレート力を算出する。洗浄剤を加えないブランクを滴定した時の滴定量と、洗浄剤を加えた次式によりキレート力を算出する。
(数1)
キレート力(CaCOmg/g)= {(a)−(b)}×100.09/(s)・・・(1)
(a): 試料を加えないときの滴定量(mL)
): 試料を加えたときの滴定量(mL)
(s): 試料採取量
<評価基準> 理論値と比較して
◎:上部、下部のキレート力のズレが5%未満。
○:上部、下部のキレート力のズレが5%以上、15%未満。
×:上部、下部のキレート力のズレが15%以上。
とし、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0047】
※6:長期貯蔵安定性(潮解)
溶融固形型洗浄剤組成物の溶融スラリーを、1L容積のポリエチレン瓶に入れ、24時間25℃にて放置し固化させた後、恒温恒湿器(HIFLEX FX214C、楠本化成株式会社製)により温度40℃、湿度70%の雰囲気下に置き、その状態で1カ月保管した。そして、その外観を目視により観察し、下記の評価基準で評価した。
<評価基準>
◎:1カ月後、表面の潮解は認められなかった。
○:1カ月後、表面の潮解はほとんど認められなかった。
×:1カ月後、表面の潮解が顕著に認められた。
とし、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0048】
※7:嵩比重試験
<試験方法>
1Lのステンレスビーカーに質量500gの溶融固形型洗浄剤組成物を、スリーワンモーターを用いて300rpmで激しく撹拌して製造した。スラリー状の溶融固形型洗浄剤組成物を温度65℃にて容器に充填し、そのときの質量と体積から比重を測定し、以下の基準で評価した。
◎:比重が1.5以上。
○:比重が1.3以上、1.5未満。
×:比重が1.3未満。
とし、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0049】
※8:洗浄性試験2(40℃)
<被洗浄物>
直径20cmのガラス皿に市販のマヨネーズ(キューピー社製)2gを均一に塗布し、室温で乾燥させた汚染皿を被洗浄物とした。
<試験方法>
溶融固形型洗浄剤組成物の濃度を0.04質量%に希釈した洗浄液を洗浄機の洗浄液タンクに貯留して40℃で保持し、洗浄ラックに汚染皿5枚を設置し、以下の条件で洗浄、すすぎを行った。溶融固形型洗浄剤組成物の希釈水、すすぎ水は塩化カルシウムを用いて硬度3°DHに調製した人工硬水を用いた。
<洗浄条件>
洗浄機:ホシザキ社製、電気製自動食器洗浄機JWE−680AJ
洗浄温度:40℃
洗浄時間:41秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
すすぎ1回当たりの水量:2L
<洗浄性評価>
洗浄、すすぎ後の皿を室温で乾燥後、暗室において蛍光灯を照射、反射させて汚れの残存状況を目視判定により以下の基準で評価した。
◎:清浄な皿と比較して差がない。
○:うすい曇りのみが認められる。
△:曇りのみ認められる。
×:曇りとスポットが認められる。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0050】
※9 バイオフィルム防止性試験
<試験方法>
各溶融固形型洗浄剤組成物5gを滅菌済みのミューラーヒントン培地〔日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製〕を用いて全量を100gにして、各溶融固形型洗浄剤組成物の5質量%コンク溶液を調製した。本コンク溶液を更に滅菌済みミューラーヒントン培地を用いて溶融固形型洗浄剤組成物の濃度として0.07質量%となるように希釈調製し、それぞれ24穴マイクロプレート〔旭テクノグラス株式会社製〕に2mL量りとった。
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa NBRC13275)、クレブシェラ菌(Klebsiella pneumoniae ATCC13883)をそれぞれLB培地〔日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製〕を用いて、37℃で18時間前培養して増殖した菌液を、ピペットマンを用いて当該マイクロプレート内の試験溶液に100μL接種した。これを37℃で48時間培養後に培養液を廃棄し、滅菌精製水2mLで各ウェル内を5回洗浄した。マイクロプレート壁に付着したバイオフィルムを0.1質量%クリスタルバイオレット液で染色し、滅菌水でリンス後、バイオフィルムの形成状態を目視によって観察した。
◎:バイオフィルムがプレート壁面の20%未満を覆う状態。
○:バイオフィルムがプレート壁面の20%以上、40%未満を覆う状態。
△:バイオフィルムがプレート壁面の40%以上、60%未満を覆う状態。
×:バイオフィルムがプレート壁面の60%以上、100%以下を覆う状態。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0051】
※10 漂白性試験
<洗浄条件>
使用洗浄機:ホシザキ社製、電気製自動食器洗浄機JWE−680AJ
洗浄温度:66℃
洗浄時間:40秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:9秒
洗浄液:溶融固形型洗浄剤組成物の0.07質量%希釈液
溶融固形型洗浄剤組成物希釈用及びすすぎ用の使用水:炭酸カルシウム換算で、ドイツ硬度3°DHの硬水
すすぎ1回当たりの水量:2L
<被洗浄物の調整>
白色磁器皿(直径12cm)を80℃の紅茶に5分間浸漬した後、100℃で30分間加温し、褐色化させた汚染皿を漂白性試験用被洗浄物とした。
<試験方法>
上記の方法で調整した汚染皿10枚を食器洗浄機の洗浄ラックに設置し、上記洗浄条件にて洗浄、すすぎ後、室温にて乾燥させた。茶渋の残存状況を目視判定により以下の基準で評価した。
◎:茶渋が除去されている。
○:茶渋がほとんど除去されている。
△:茶渋は除去されているが、茶渋の残存が認められる。
×:茶渋が除去されていない。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0052】
※11 金属腐食防止性試験
<試験方法>
テストピース[ステンレス(SUS430)、ねずみ鋳鉄(FC200)]は、予め中性洗剤で洗浄しアセトン処理して乾燥させたもの使用する。炭酸カルシウム換算で、75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で各溶融固形型洗浄剤組成物を0.07質量%に希釈し、60mLを70mL容量の蓋付ガラス瓶に入れ、その中にテストピースを浸漬し、70℃の恒温器内で5日間保存した。保存後のテストピースを取り出し、イオン交換水にてすすぎをおこない乾燥させて、テストピース表面の状態を目視により外観観察し、下記基準で腐食性を判定した。
<金属腐食防止性評価基準>
◎:腐食がない。
○:ほとんど腐食がない。
△:やや腐食がみられるが、使用上問題ないレベル。
×:ひどく腐食した。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0053】
※12 臭気性試験
<洗浄条件>
洗浄機:ホシザキ社製、電気製自動食器洗浄機JWE−680AJ
洗浄温度:66℃
洗浄時間:40秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
すすぎ1回当たりの水量:2L
洗浄液:溶融固形型洗浄剤組成物の0.1質量%希釈液
溶融固形型洗浄剤組成物希釈用及びすすぎ用の使用水:炭酸カルシウム換算で、ドイツ硬度3°DHの硬水
<被洗浄物>
直径20cmのガラス皿にマヨネーズ(キューピー社製)2gを均一に塗布し、室温で乾燥させた汚染皿を被洗浄物とした。
<試験方法>
被洗浄物を洗浄機内にセットし洗浄及びすすぎをおこない、洗浄機のドアを開けて、洗浄機内の雰囲気中の臭気を5人のパネラーにて5段階の評価(5:臭わない、4:ほとんど臭わない、3:わずかに臭う、2:臭う、1:臭いが強い)をおこない、全パネラーの評価の平均点より、以下の基準で評価した。
<評価基準>
○:平均点が3.5以上、5以下。
△:平均点が2.5以上、3.5未満。
×:平均点が1以上、2.5未満。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【要約】
【課題】効率よく製造が可能でコンパクトな製品として提供でき、保管性が良好で製品保存中に潮解する虞がないとともに、溶解安定性が良好で過剰に溶解したり溶解不良を生じることがなく、低濃度で安定して供給することができる自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の自動食器洗浄機用溶融固形型洗浄剤組成物は、(A)成分としてアルカリ金属水酸化物40質量%以上、50質量%以下、(B)成分としてアミノカルボン酸系キレート剤25質量%以上、45質量%以下、(C)成分として高分子ポリマー0.1質量%以上、10質量%以下、(D)成分として水、を含み、質量比で(A)/{(A)+(D)}=0.58以上、0.75以下であることを特徴とする。
【選択図】なし