特許第6357599号(P6357599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6357599
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】導電性ペースト
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20180702BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20180702BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20180702BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20180702BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20180702BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   H01L31/04 264
   H01L31/04 560
   H01B1/22 A
   H01B1/00 C
   H05K1/09 D
   C23C26/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-25982(P2018-25982)
(22)【出願日】2018年2月16日
【審査請求日】2018年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-33123(P2017-33123)
(32)【優先日】2017年2月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-224502(P2017-224502)
(32)【優先日】2017年11月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】平田 愛子
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/129487(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/203897(WO,A1)
【文献】 特開2010−083952(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/088540(WO,A1)
【文献】 特開2007−019006(JP,A)
【文献】 特開2011−086397(JP,A)
【文献】 特表2012−504179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/0224,31/048
H01B 1/00−1/24
H05K 1/09
C23C 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉と、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含む導電性ペーストを、基板に塗布した後に硬化させることにより基板の表面に電極を形成することを特徴とする、太陽電池用電極の製造方法。
【請求項2】
前記導電性ペーストが溶剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池用電極の製造方法
【請求項3】
前記導電性ペーストが硬化剤を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の太陽電池用電極の製造方法
【請求項4】
前記硬化剤がイミダゾールおよび三フッ化ホウ素アミン系硬化剤の少なくとも一方であることを特徴とする、請求項3に記載の太陽電池用電極の製造方法
【請求項5】
前記銀被覆銅粉に対する銀の量が5質量%以上であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の太陽電池用電極の製造方法
【請求項6】
前記銅粉のレーザー回折式粒度分布装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.1〜15μmであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の太陽電池用電極の製造方法
【請求項7】
前記導電性ペースト中の前記銀被覆銅粉の量が50〜90質量%であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の太陽電池用電極の製造方法
【請求項8】
銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉と、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含む導電性ペーストを基板に塗布した後に硬化させて基板の表面に電極を形成し、この電極にインターコネクタをはんだ付けし、この電極にはんだ付けされたインターコネクタを有するインターコネクタ付セル上に、ポリオレフィン系フィルムを介してカバーガラスを積層することを特徴とする、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記導電性ペーストが溶剤を含むことを特徴とする、請求項8に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記導電性ペーストが硬化剤を含むことを特徴とする、請求項8または9に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項11】
前記硬化剤がイミダゾールおよび三フッ化ホウ素アミン系硬化剤の少なくとも一方であることを特徴とする、請求項10に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項12】
前記銀被覆銅粉に対する銀の量が5質量%以上であることを特徴とする、請求項8乃至11のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項13】
前記銅粉のレーザー回折式粒度分布装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.1〜15μmであることを特徴とする、請求項8乃至12のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項14】
前記導電性ペースト中の前記銀被覆銅粉の量が50〜90質量%であることを特徴とする、請求項8乃至13のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項15】
銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉とナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含む電極にはんだ付けされたインターコネクタを有するインターコネクタ付セルと、カバーガラスの間に、ポリオレフィン系フィルムが積層されていることを特徴とする、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストに関し、特に、導電性の金属粉末として銀被覆銅粉を使用する導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷法などにより電子部品の電極や配線を形成するために、銀粉や銅粉などの導電性の金属粉末に溶剤、樹脂、分散剤などを配合して作製した導電ペーストが使用されている。
【0003】
しかし、銀粉は、体積抵抗率が極めて小さく、良好な導電性物質であるが、貴金属の粉末であるため、コストが高くなる。一方、銅粉は、体積抵抗率が低く、良好な導電性物質であるが、酸化され易いため、銀粉に比べて保存安定性(信頼性)に劣っている。
【0004】
これらの問題を解消するために、導電ペーストに使用する金属粉末として、銅粉の表面を銀で被覆した銀被覆銅粉が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0005】
近年、太陽電池のバスバー電極形成用の導電性ペーストとして、銀粉を用いた導電性ペーストに代えて、銀粉よりも安価な銀被覆銅粉を用いた導電性ペーストを使用することが試みられている。
【0006】
一般的な結晶シリコン型太陽電池では、銀粉を用いた焼成型の導電性ペーストを大気雰囲気下において800℃程度の高温で焼成することにより電極を形成しているが、銅粉や銀被覆銅粉を用いた導電性ペーストを使用すると、大気雰囲気下においてこのような高温で焼成する際に、銅粉や銀被覆銅粉が酸化してしまうため、不活性雰囲気下で焼成するなどの特殊な技術が必要となり、コストが高くなる。
【0007】
一方、HIT(単結晶系ハイブリッド型)太陽電池などでは、一般に銀粉を用いた樹脂硬化型の導電性ペーストを大気雰囲気下において200℃程度に加熱して硬化させることにより電極を形成しており、大気雰囲気下においてこのような低い温度で加熱しても、銅粉や銀被覆銅粉は酸化に耐え得るため、銀被覆銅粉を用いた樹脂硬化型の導電性ペーストを使用することが可能になる。
【0008】
また、従来の樹脂硬化型の導電性ペーストにより形成した電極をタブ線に接続してHIT太陽電池を作製する場合に、電極とタブ線をはんだ付けして接続すると、はんだ付けの温度(380℃程度)で導電性ペーストの樹脂が分解してしまうので、はんだより高価な導電性接着剤を使用して電極とタブ線を接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−174311号公報(段落番号0003)
【特許文献2】特開2010−077495号公報(段落番号0006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
導電性フィラーとして銀被覆銅粉を使用し、樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用した樹脂型の導電性ペーストにより形成したバスバー電極を導電性接着剤によりタブ線に接続してHIT太陽電池を作製したところ、銀粉を使用した場合と同等の高い変換効率を有する太陽電池であることがわかった。
【0011】
しかし、上記のような銀被覆銅粉とビスフェノールA型エポキシ樹脂などを混練して得られた樹脂型の導電性ペーストにより形成したバスバー電極をはんだ付けによりタブ線と接続すると、バスバー電極の抵抗が高くなって、太陽電池の変換効率が低下する場合があることがわかった。なお、上記の樹脂型の導電性ペーストの銀被覆銅粉に代えて銀粉を使用した場合にはこのような問題は生じない。
【0012】
したがって、本発明は、このような問題点に鑑み、銀被覆銅粉を用いた樹脂型の導電性ペーストにより作製した太陽電池のバスバー電極をはんだ付けによりタブ線と接続しても、太陽電池の変換効率の低下を防止することができる、導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉と、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含む樹脂型の導電性ペーストにより太陽電池のバスバー電極を作製すれば、バスバー電極をはんだ付けによりタブ線と接続しても、太陽電池の変換効率の低下を防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明による導電性ペーストは、銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉と、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含むことを特徴とする。この導電性ペーストは、溶剤を含むのが好ましい。また、この導電性ペーストは、硬化剤を含むのが好ましく、この硬化剤がイミダゾールおよび三フッ化ホウ素アミン系硬化剤の少なくとも一方であるのが好ましい。銀被覆銅粉に対する銀の量は5質量%以上であるのが好ましく、銅粉のレーザー回折式粒度分布装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)は0.1〜15μmであるのが好ましい。導電性ペースト中の銀被覆銅粉の量は50〜90質量%であるのが好ましい。
【0015】
また、本発明による太陽電池用電極の製造方法は、上記の導電性ペーストを基板に塗布した後に硬化させることにより基板の表面に電極を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、銀被覆銅粉を用いた樹脂型の導電性ペーストにより作製した太陽電池のバスバー電極をはんだ付けによりタブ線と接続しても、太陽電池の変換効率の低下を防止することができる、導電性ペーストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】比較例8で作製した太陽電池モジュールのインターコネクタ付セルの表面側(カバーガラス側)に形成されたバスバー電極の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す図である。
図2】実施例5で作製した太陽電池モジュールのインターコネクタ付セルの表面側(カバーガラス側)に形成されたバスバー電極の断面のSEM像を示す図である。
図3】実施例5で作製した太陽電池モジュールのインターコネクタ付セルの表面側(カバーガラス側)に形成されたバスバー電極の断面のマッピング分析によるAgマップ像を示す図である。
図4】施例5で作製した太陽電池モジュールのインターコネクタ付セルの表面側(カバーガラス側)に形成されたバスバー電極の断面のマッピング分析によるCuマップ像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による導電性ペーストの実施の形態は、銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉と、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含んでいる。
【0019】
この導電性ペーストに含まれるナフタレン骨格を有する樹脂として、化1に示すようなナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(例えば、大日本インキ化学工業株式会社製のHP4710)を使用することができる。このナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の含有量は、導電性ペーストに対して1〜20質量%であるのが好ましく、3〜10質量%であるのがさらに好ましい。このナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の含有量が少な過ぎると、銀被覆銅粉の表面を熱による酸化から保護する働きが不十分になる。一方、多過ぎると、導電性ペーストにより太陽電池のバスバー電極形状に印刷する際の印刷性や、バスバー電極をタブ線にはんだ付けする際のはんだの接着強度が悪化するとともに、導電性ペーストにより作製した太陽電池のバスバー電極の抵抗が上昇する。なお、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂であるか否かは、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)またはC13−NMRによって同定することができる。
【0020】
【化1】
【0021】
この導電性ペーストは、硬化剤を含むのが好ましく、この硬化剤としてイミダゾールおよび三フッ化ホウ素アミン系硬化剤の少なくとも一方を使用するのが好ましい。この硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂に対して1〜10質量%であるのが好ましく、2〜6質量%であるのがさらに好ましい。
【0022】
この導電性ペーストは、溶剤を含むのが好ましく、この溶剤は、導電性ペーストの使用目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール(BC)、エチルカルビトールアセテート(ECA)、エチルカルビトール(EC)、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラデカン、テトラリン、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、エチルカルビトール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)などから、1種以上の溶媒を選択して使用することができる。この溶剤の含有量は、導電性ペーストに対して0〜20質量%であるのが好ましく、0〜10質量%であるのがさらに好ましい。
【0023】
また、導電性ペーストは、界面活性剤、分散剤、レオロジー調整剤、シランカップリング剤、イオン捕集材などの他の成分を含んでもよい。
【0024】
導電性ペーストでは、銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉を導体として使用する。銀層により被覆された銅粉(銀被覆銅粉)の形状は、略球状でも、フレーク状でもよい。
【0025】
銀層は、銀または銀化合物からなる層であるのが好ましく、90質量%以上の銀からなる層であるのがさらに好ましい。銀被覆銅粉に対する銀の量は、5質量%以上であるのが好ましく、7〜50質量%であるのがさらに好ましく、8〜40質量%であるのがさらに好ましく、9〜20質量%であるのが最も好ましい。銀の量が5質量%未満では、銀被覆銅粉の導電性に悪影響を及ぼすので好ましくない。一方、50質量%を超えると、銀の使用量の増加によってコストが高くなるので好ましくない。
【0026】
銅粉の粒子径は、レーザー回折式粒度分布装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.1〜15μmであるのが好ましく、0.3〜10μmであるのがさらに好ましく、1〜5μmであるのが最も好ましい。累積50%粒子径(D50径)が0.1μm未満では、銀被覆銅粉の導電性に悪影響を及ぼすので好ましくない。一方、15μmを超えると、微細な配線の形成が困難になるので好ましくない。
【0027】
銅粉は、湿式還元法、電解法、気相法などにより製造してもよいが、銅を溶解温度以上で溶解し、タンディッシュ下部から落下させながら高圧ガスまたは高圧水を衝突させて急冷凝固させることにより微粉末とする、(ガスアトマイズ法、水アトマイズ法などの)所謂アトマイズ法により製造するのが好ましい。特に、高圧水を吹き付ける、所謂水アトマイズ法により製造すると、粒子径が小さい銅粉を得ることができるので、銅粉を導電ペーストに使用した際に粒子間の接触点の増加による導電性の向上を図ることができる。
【0028】
銅粉を銀層で被覆する方法として、銅と銀の置換反応を利用した置換法や、還元剤を用いる還元法により、銅粉の表面に銀または銀化合物を析出させる方法を使用することができ、例えば、溶媒中に銅粉と銀または銀化合物を含む溶液を攪拌しながら銅粉の表面に銀または銀化合物を析出させる方法や、溶媒中に銅粉および有機物を含む溶液と溶媒中に銀または銀化合物および有機物を含む溶液とを混合して攪拌しながら銅粉の表面に銀または銀化合物を析出させる方法などを使用することができる。
【0029】
この溶媒としては、水、有機溶媒またはこれらを混合した溶媒を使用することができる。水と有機溶媒を混合した溶媒を使用する場合には、室温(20〜30℃)において液体になる有機溶媒を使用する必要があるが、水と有機溶媒の混合比率は、使用する有機溶媒により適宜調整することができる。また、溶媒として使用する水は、不純物が混入するおそれがなければ、蒸留水、イオン交換水、工業用水などを使用することができる。
【0030】
銀層の原料として、銀イオンを溶液中に存在させる必要があるため、水や多くの有機溶媒に対して高い溶解度を有する硝酸銀を使用するのが好ましい。また、銅粉を銀層で被覆する反応(銀被覆反応)をできるだけ均一に行うために、固体の硝酸銀ではなく、硝酸銀を溶媒(水、有機溶媒またはこれらを混合した溶媒)に溶解した硝酸銀溶液を使用するのが好ましい。なお、使用する硝酸銀溶液の量、硝酸銀溶液中の硝酸銀の濃度および有機溶媒の量は、目的とする銀層の量に応じて決定することができる。
【0031】
銀層をより均一に形成するために、溶液中にキレート化剤を添加してもよい。キレート化剤としては、銀イオンと金属銅との置換反応により副生成する銅イオンなどが再析出しないように、銅イオンなどに対して錯安定度定数が高いキレート化剤を使用するのが好ましい。特に、銀被覆銅粉のコアとなる銅粉は主構成要素として銅を含んでいるので、銅との錯安定度定数に留意してキレート化剤を選択するのが好ましい。具体的には、キレート化剤として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノジ酢酸、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミンおよびこれらの塩からなる群から選ばれたキレート化剤を使用することができる。
【0032】
銀被覆反応を安定かつ安全に行うために、溶液中にpH緩衝剤を添加してもよい。このpH緩衝剤として、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア水、炭酸水素ナトリウムなどを使用することができる。
【0033】
銀被覆反応の際には、銀塩を添加する前に溶液中に銅粉を入れて攪拌し、銅粉が溶液中に十分に分散している状態で、銀塩を含む溶液を添加するのが好ましい。この銀被覆反応の際の反応温度は、反応液が凝固または蒸発する温度でなければよいが、好ましくは10〜40℃、さらに好ましくは15〜35℃の範囲で設定する。また、反応時間は、銀または銀化合物の量や反応温度によって異なるが、1分〜5時間の範囲で設定することができる。
【0034】
また、上記の導電性ペースト(銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉とナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含む導電性ペースト)を基板に塗布した後に硬化させて基板の表面に電極を形成し、この電極にインターコネクタをはんだ付けし、この電極にはんだ付けされたインターコネクタを有するインターコネクタ付セルの表面側(太陽光が入射する側)に保護シートを介してカバーガラスを積層することにより、太陽電池モジュールを作製することができる。保護シートとしては、シクロオレフィンコポリマー(COC)フィルムなどのポリオレフィン系フィルムを使用するのが好ましい。ポリオレフィン系フィルムは、酸素を通すことが知られているが、上記の導電性ペースト(銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉とナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含む導電性ペースト)から形成された電極を使用する太陽電池モジュールに、保護シートとしてポリオレフィン系フィルムを使用すると、電極の酸化が抑制され、太陽電池としての性能を維持することができることがわかった。
【実施例】
【0035】
以下、本発明による導電性ペーストの実施例について詳細に説明する。
【0036】
[実施例1]
アトマイズ法により製造された市販の銅粉(日本アトマイズ加工株式会社製のアトマイズ銅粉SF−Cu 5μm)を用意し、この(銀被覆前の)銅粉の粒度分布を求めたところ、銅粉の体積基準の累積10%粒子径(D10)は2.26μm、累積50%粒子径(D50)は5.20μm、累積90%粒子径(D90)は9.32μmであった。なお、銅粉の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布装置(日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置MT−3300)により測定して、体積基準の累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、累積90%粒子径(D90)を求めた。
【0037】
また、炭酸アンモニウム2.6kgを純水450kgに溶解した溶液(溶液1)と、EDTA−4Na(43%)319kgと炭酸アンモニウム76kgを純水284kgに溶解した溶液に、銀16.904kgを含む硝酸銀水溶液92kgを加えて得られた溶液(溶液2)を用意した。
【0038】
次に、窒素雰囲気下において、上記の銅粉100kgを溶液1に加えて、攪拌しながら35℃まで昇温させた。この銅粉が分散した溶液に溶液2を加えて30分間攪拌した後、ろ過し、水洗し、乾燥して、銀により被覆された銅粉(銀被覆銅粉)を得た。なお、水洗は、ろ過により得られた固形分に純水をかけて、水洗後の液の電位が0.5mS/m以下になるまで行った。
【0039】
このようにして得られた銀被覆銅粉5.0gを、比重1.38の硝酸水溶液を体積比1:1になるように純水で薄めた硝酸水溶液40mLに溶かし、ヒーターで煮沸して銀被覆銅粉を完全に溶解した後、この水溶液に、比重1.18の塩酸水溶液を体積比1:1になるように純水で薄めた塩酸水溶液に少量ずつ添加して塩化銀を析出させ、沈殿が生じなくなるまで塩酸水溶液の添加を続けて、得られた塩化銀から重量法によりAgの含有量を求めたところ、銀被覆銅粉中のAg含有量は10.14質量%であった。
【0040】
また、この銀被覆銅粉0.1gをイソプロピルアルコール40mLに加えて、超音波ホモジナイザー(チップ先端直径20mm)により2分間分散させた後、銀被覆銅粉の粒度分布をレーザー回折式粒度分布装置(日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置MT−3300)により測定した。その結果、銀被覆銅粉の体積基準の累積10%粒子径(D10)は2.5μm、累積50%粒子径(D50)は5.2μm、累積90%粒子径(D90)は10.1μmであった。
【0041】
また、この銀被覆銅粉のBET比表面積をBET比表面積測定器(ユアサアイオニクス株式会社製の4ソーブUS)を使用してBET1点法により測定した。その結果、銀被覆銅粉のBET比表面積は0.31m/gであった。
【0042】
また、得られた銀被覆銅粉87.64重量部と、化1に示すナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製のHP4710)6.49重量部と、溶剤としてブチルカルビトールアセテート(和光純薬工業株式会社製)5.52重量部と、硬化剤としてイミダゾール(四国化成工業株式会社製の2E4MZ)0.25重量部と、分散剤としてオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.10重量部とを、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー社製のあわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(オットハーマン社製のEXAKT80S)により混練することにより、それぞれ(バスバー電極用ペーストとして)導電性ペースト1を得た。なお、この導電性ペースト1のF値(導電フィラーとしての銀被覆銅粉と樹脂と硬化剤の総量に対する銀被覆銅粉の割合)は92.9%になる。この導電性ペースト1の粘度を粘度計(ブルックフィールド社製のDV−III Ultra、コーンとしてCP52を使用)により25℃において1rpmで測定したところ、40Pa・sであった。
【0043】
また、銀イオンとして21.4g/Lの硝酸銀溶液502.7Lに、工業用のアンモニア水45Lを加えて、銀のアンミン錯体溶液を生成した。生成した銀のアンミン錯体溶液に濃度100g/Lの水酸化ナトリウム溶液8.8Lを加えてpH調整し、水462Lを加えて希釈し、還元剤として工業用のホルマリン48Lを加えた。その直後に、ステアリン酸として16質量%のステアリン酸エマルジョン121gを加えた。このようにして得られた銀のスラリーをろ過し、水洗した後、乾燥して銀粉21.6kgを得た。この銀粉をヘンシェルミキサ(高速攪拌機)で表面平滑化処理した後、分級して11μmより大きい銀の凝集体を除去した。なお、水洗は、ろ過により得られた固形分に純水をかけて、水洗後の液の電位が0.5mS/m以下になるまで行った。
【0044】
このようにして得られた銀粉88重量部と、インジウム粉末0.2重量部と、銀テルル被覆ガラス粉1.5重量部と、バインダー樹脂としてエチルセルロース(和光純薬工業株式会社製)0.12重量部およびアクリル樹脂(日本カーバイド工業株式会社製のNISSETSU EU−5638)1.1重量部と、添加剤としてオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.5重量部と、チクソ剤としてステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)0.3重量部と、溶剤としてメチルイソブチルエーテル(MIBE)(JNC株式会社製)3.4重量部およびブチルカルビトールアセテート(和光純薬工業株式会社製)3.4重量部とを、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー社製のあわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(オットハーマン社製のEXAKT80S)により混練することにより、(焼成型Agペーストとして)導電性ペースト2を得た。
【0045】
なお、銀テルル被覆ガラス粉は、以下のように作製した。まず、1Lビーカー中で攪拌されている状態の純水787gに32質量%の硝酸銀水溶液3.47gを混合し、この銀1.11gを含む硝酸銀水溶液に、錯体化剤として28質量%のアンモニア水2.5gを添加して、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を30℃にした後、テルル系ガラス粉(旭硝子株式会社製のBLT−77)10gを添加し、その直後に、還元剤としてのヒドラジン0.3gと銀コロイド10.3gと純水20gとを混合した液を添加し、5分間熟成させ、銀とテルルを主成分とする層によりテルル系ガラス粉を被覆した後、この銀テルル被覆ガラス粉含有スラリーを吸引ろ過し、電位が0.5mS/m以下になるまで純水で洗浄して、得られたケーキを75℃の真空乾燥機で10分間乾燥させて、銀テルル被覆ガラス粉(銀とテルルを主成分とする層で被覆したガラス粉)を得た。
【0046】
次に、2枚のシリコンウエハ(株式会社E&M製、100Ω/□、6インチ単結晶)を用意し、それぞれのシリコンウエハの裏面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)によりアルミペースト(東洋アルミニウム株式会社製のアルソーラー14−7021)を印刷した後に、熱風式乾燥機により200℃で10分間乾燥するとともに、シリコンウエハの表面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により、上記の導電性ペースト2を幅40μmの100本のフィンガー電極形状に印刷した後、熱風式乾燥機により200℃で10分間乾燥し、高速焼成IR炉(日本ガイシ株式会社製の高速焼成試験4室炉)のイン−アウト21秒間としてピーク温度820℃で焼成して、フィンガー電極を形成した。その後、それぞれのシリコンウエハの表面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により、それぞれの導電性ペースト1(銀被覆銅粉から得られた導電性ペースト1)を幅1.3mmの3本のバスバー電極形状に印刷した後、熱風式乾燥機により150℃で10分間加熱した後に200℃で30分間加熱して乾燥させるとともに硬化させて、バスバー電極を形成した。このようにして形成したバスバー電極の抵抗(初期の抵抗値)を測定したところ、3.15Ωであった。また、一方のシリコンウエハのバスバー電極上にはんだ付けの際の熱と同程度の熱が加わるように380℃のはんだごてをバスバー電極に当てて10mm/秒の速度で移動させ、この加熱後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、3.42Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は109%であった。
【0047】
次に、他方のシリコンウエハのバスバー電極とタブ線をSnPb共晶はんだ(融点183℃)により380℃ではんだ付けして太陽電池を作製した。この太陽電池にソーラーシミュレータ(株式会社ワコム電創製)のキセノンランプにより光照射エネルギー100mW/cmの疑似太陽光を照射して電池特性試験を行った。その結果、太陽電池の出力端子を短絡させたときに両端子間に流れる電流(短絡電流)Iscは9.23A、太陽電池の出力端子を開放したときの両端子間の電圧(開放電圧)Vocは0.631V、電流密度Jsc(1cm当たりの短絡電流Isc)は0.038A/cm、最大出力Pmax(=Imax・Vmax)を開放電圧Vocと電流密度Jscの積で除した値(曲線因子)FF(=Pmax/Voc・Isc)は73.64、発電効率Eff(最大出力Pmaxを(1cm当たりの)照射光量(W)で除した値に100を乗じた値)は17.65%、直列抵抗Rsは0.0089Ω/□であった。
【0048】
[実施例2]
硬化剤として、イミダゾール(四国化成工業株式会社製の2E4MZ)に代えて、イミダゾール(四国化成工業株式会社製の2PHZ−PW)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、太陽電池を作製した。なお、この実施例で得られた導電性ペースト1の粘度を実施例1と同様の方法により測定したところ、40±5Pa・sの範囲内であった。
【0049】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は7.56Ω、はんだ付け後の抵抗値は6.58Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は87%であった。
【0050】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは9.23A、開放電圧Vocは0.630V、電流密度Jscは0.038A/cm、曲線因子FFは72.98、発電効率Effは17.45%、直列抵抗Rsは0.0091Ω/□であった。
【0051】
[実施例3]
導電性ペースト1中の硬化剤としてイミダゾール(四国化成工業株式会社製の2E4MZ)に代えて三フッ化ホウ素アミン系の硬化剤(和光純薬工業株式会社製のBF3NH2Et)を使用し、銀被覆銅粉、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、溶剤および硬化剤の量をそれぞれ85.52重量部、8.44重量部、5.62重量部および0.32重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により、太陽電池を作製した。なお、この実施例で得られた導電性ペースト1のF値は90.7%であった。この実施例で得られた導電性ペースト1の粘度を実施例1と同様の方法により測定したところ、40±5Pa・sの範囲内であった。
【0052】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は6.58Ω、はんだ付け後の抵抗値は7.71Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は117%であった。
【0053】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは9.20A、開放電圧Vocは0.628V、電流密度Jscは0.038A/cm、曲線因子FFは71.63、発電効率Effは17.02%、直列抵抗Rsは0.0102Ω/□であった。
【0054】
[実施例4]
導電性ペースト1中のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製のHP4710)に代えて、化1に示すナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製のHP9500)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、太陽電池を作製した。なお、この実施例で得られた導電性ペースト1のF値は90.9%であった。この実施例で得られた導電性ペースト1の粘度を実施例1と同様の方法により測定したところ、40±5Pa・sの範囲内であった。
【0055】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は3.56Ω、はんだ付け後の抵抗値は5.83Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は164%であった。
【0056】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは8.85A、開放電圧Vocは0.627V、電流密度Jscは0.036A/cm、曲線因子FFは70.47、発電効率Effは16.10%、直列抵抗Rsは0.0114Ω/□であった。
【0057】
[比較例1]
導電性ペースト1中のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて化2に示すビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製のEP4901E)を使用し、硬化剤としてイミダゾール(四国化成工業株式会社製の2E4MZ)を使用し、導電性ペースト1の粘度が40±5Pa・sの範囲内になるように溶剤の量を1.94重量部とした以外は、実施例3と同様の方法により、太陽電池を作製した。なお、この導電性ペースト1のF値は90.7%になる。
【0058】
【化2】
【0059】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は4.05Ω、はんだ付け後の抵抗値は18.70Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は462%であった。
【0060】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは6.71A、開放電圧Vocは0.634V、電流密度Jscは0.028A/cm、曲線因子FFは49.96、発電効率Effは8.74%、直列抵抗Rsは0.0162Ω/□であった。
【0061】
[比較例2]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化2に示すビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製のEP4901E)を使用し、導電性ペースト1の粘度が40±5Pa・sの範囲内になるように溶剤の量を1.99重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により、太陽電池を作製した。
【0062】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は2.37Ω、はんだ付け後の抵抗値は7.73Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は326%であった。
【0063】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは7.93A、開放電圧Vocは0.632V、電流密度Jscは0.033A/cm、曲線因子FFは45.47、発電効率Effは9.39%、直列抵抗Rsは0.0228Ω/□であった。
【0064】
[比較例3]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化2に示すビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製のEP4901E)を使用し、導電性ペースト1の粘度が40±5Pa・sの範囲内になるように溶剤の量を1.94重量部とした以外は、実施例3と同様の方法により、太陽電池を作製した。
【0065】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は5.95Ω、はんだ付け後の抵抗値は12.63Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は212%であった。
【0066】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは8.65A、開放電圧Vocは0.630V、電流密度Jscは0.036A/cm、曲線因子FFは64.69、発電効率Effは14.51%、直列抵抗Rsは0.0165Ω/□であった。
【0067】
[比較例4]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化3に示すビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製のJER828)を使用し、導電性ペースト1の粘度が40±5Pa・sの範囲内になるように溶剤の量を1.99重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により、太陽電池を作製した。
【0068】
【化3】
【0069】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は3.50Ω、はんだ付け後の抵抗値は34.93Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は998%であった。
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは7.78A、開放電圧Vocは0.635V、電流密度Jscは0.032A/cm、曲線因子FFは54.49、発電効率Effは11.07%、直列抵抗Rsは0.0181Ω/□であった。
【0070】
[比較例5]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化4に示すビフェニル骨格のエポキシ樹脂(日本化薬株式会社製のNC−3000−H)を使用し、導電性ペースト1の粘度が40±5Pa・sの範囲内になるように溶剤の量を5.32重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により、太陽電池を作製した。
【0071】
【化4】
【0072】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は6.08Ω、はんだ付け後の抵抗値は23.53Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は387%であった。
【0073】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは5.67A、開放電圧Vocは0.635V、電流密度Jscは0.023A/cm、曲線因子FFは54.52、発電効率Effは8.07%、直列抵抗Rsは0.0127Ω/□であった。
【0074】
[比較例6]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化5に示すシクロペンタジエン骨格のエポキシ樹脂(日本化薬株式会社製のXD−1000)を使用し、導電性ペースト1の粘度が40±5Pa・sの範囲内になるように溶剤の量を5.32重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により、太陽電池を作製した。
【0075】
【化5】
【0076】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は4.73Ω、はんだ付け後の抵抗値は21.67Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は458%であった。
【0077】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは4.66A、開放電圧Vocは0.632V、電流密度Jscは0.019A/cm、曲線因子FFは55.01、発電効率Effは6.67%、直列抵抗Rsは0.0182Ω/□であった。
【0078】
これらの実施例および比較例の結果を表1〜表3に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
表1〜表3からわかるように、実施例1〜3の導電性ペーストを太陽電池のバスバー電極の形成に使用すると、比較例1〜6の導電性ペーストを用いた場合と比べて、バスバー電極をはんだ付けによりタブ線と接続しても、バスバー電極の抵抗が高くなるのを防止して、太陽電池の変換効率の低下を防止することができる。
【0083】
[実施例5]
実施例1の銀被覆銅粉79.0重量部と、平均一次粒子径1μmの銀粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製のAg−2−IC)8.8重量部と、化1に示すナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製のHP4710)6.6重量部と、溶剤としてブチルカルビトールアセテート(和光純薬工業株式会社製)5.3重量部と、硬化剤としてイミダゾール(四国化成工業株式会社製の2E4MZ)0.3重量部と、分散剤としてオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.1重量部とを、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー社製のあわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(オットハーマン社製のEXAKT80S)により混練することにより、(後述するシリコンウエハの表面のバスバー電極用ペーストとして)導電性ペーストAを得た。なお、この導電性ペーストAは、導電フィラーとして銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む。
【0084】
また、平均一次粒子径1.9μmの銀粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製のAG−4−8F)88重量部と、エチルセルロース樹脂(和光純薬工業株式会社製)2.4重量部と、テキサノール(JMC株式会社製)とブチルカルビトールエステート(和光純薬工業株式会社製)を1:1で混合した溶剤9.5重量部と、ガラスフリット(日本電気硝子株式会社製のGA−12)1重量部と、分散剤としてオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.5重量部とを、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー社製のあわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(オットハーマン社製のEXAKT80S)により混練することにより、(後述するシリコンウエハの裏面のバスバー電極用ペーストとして)導電性ペーストBを得た。
【0085】
さらに、平均一次粒子径1.3μmの銀粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製のAG−2.5−8F)87.9重量部と、エチルセルロース樹脂(和光純薬工業株式会社製)0.1重量部と、アクリル樹脂(日本カーバイド工業株式会社製のEU−5638)1.1重量部と、メチルイソブチルエーテル(MIBE)(JNC株式会社製)とブチルカルビトールエステート(和光純薬工業株式会社製)を1:1で混合した溶剤6.1重量部と、ガラスフリット(Te−Bi−Li系)1.5重量部と、ステアリン酸マグネシウム0.3重量部と、分散剤としてオレイン酸(和光純薬株式会社製)0.5重量部とを、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー社製のあわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(オットハーマン社製のEXAKT80S)により混練することにより、(フィンガー電極用ペーストとして)導電性ペーストCを得た。
【0086】
次に、シリコンウエハ(株式会社E&M製、100Ω/□、6インチ単結晶)を用意し、このシリコンウエハの裏面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により上記の導電性ペーストBを幅1.3mmの3本のバスバー電極形状に印刷した後、熱風式乾燥機により200℃で10分間加熱して乾燥させた。その後、シリコンウエハの裏面の導電性ペーストBを印刷した部分以外の部分にアルミペースト(東洋アルミニウム株式会社製のアルソーラー14−7021)を印刷した後、熱風式乾燥機により200℃で10分間加熱して乾燥させた。その後、シリコンウエハの表面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により、上記の導電性ペーストCを幅50μmの100本のフィンガー電極形状に印刷した後、熱風式乾燥機により200℃で10分間加熱して乾燥させ、高速焼成IR炉(日本ガイシ株式会社製の高速焼成試験4室炉)のイン−アウト21秒間としてピーク温度820℃で焼成して、シリコンウエハの裏面のバスバー電極と表面のフィンガー電極を形成した。その後、シリコンウエハの表面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により、上記の導電性ペーストAを幅1.3mmの3本のバスバー電極形状に印刷した後、熱風式乾燥機により150℃で10分間加熱して乾燥させた後に200℃で40分間加熱して硬化させて、シリコンウエハの表面のバスバー電極を形成した。
【0087】
このようにして作製した太陽電池の表裏のバスバー電極にフラックスを塗布した後、その太陽電池を50℃のホットプレート上に配置し、その上に0.2mm×1.5mm×176mmの大きさのインターコネクタ材(日立金属株式会社製のSSA−SPS)を載せ、380℃に加熱したはんだごてを押し当てながら約10mm/sの速度で上からなぞって、太陽電池の表裏の両面にはんだ付けを行うことにより、インターコネクタ付セルを得た。その後、表面側から、カバーガラス、EVAシート(エバーフィルム)、シクロオレフィンコポリマー(COC)フィルム(Topas Advanced Polymers GmbH製のTOPAS(登録商標)、厚さ75μm)、EVAシート、上記のインターコネクタ付セル、EVAシート、バックシートの順に積層し、この積層体に真空ラミネーターによりプレス加工して、太陽電池モジュールを得た。この太陽電池モジュールにソーラーシミュレータにより疑似太陽光を照射して、最大出力Pmax、開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FFを求めたところ、最大出力Pmaxは4.7W、開放電圧Vocは0.6V、短絡電流Iscは10.0A、曲線因子FFは71%であった。
【0088】
また、この太陽電池モジュールのPID試験として、PID試験装置(エスペック株式会社製)を使用して、太陽電池モジュールを温度85℃、湿度85%のチャンバ内に入れ、−000Vの電圧を1000時間印加して加速劣化試験を行った。その後、PID試験装置から取り出した太陽電池モジュールにソーラーシミュレータにより疑似太陽光を照射して、最大出力Pmax、開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FFを求めたところ、最大出力Pmaxは4.7W、開放電圧Vocは0.6V、短絡電流Iscは10.0A、曲線因子FFは71%であり、PID試験前と比べて、太陽電池特性が全く劣化していないことが確認された。
【0089】
[比較例7]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化2に示すビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製のEP4901E)を使用した以外は、実施例5と同様の方法により、(バスバー電極用ペーストとして)導電性ペーストAを得た。この導電性ペーストAを使用した以外は、実施例5と同様の方法により、太陽電池モジュールを作製を試みたが、インターコネクタとバスバーが接着せず、太陽電池モジュールを作製することができなかった。
【0090】
[実施例6]
積層体の作製の際にカバーガラス、EVAシート、COCフィルム(Topas Advanced Polymers GmbH製のTOPAS(登録商標)、厚さ75μm)、EPDMゴム、インターコネクタ付セル、EPDMゴム(透明、厚さ300μm)、バックシートの順に積層した以外は、実施例5と同様の方法により、太陽電池モジュールを得た。この太陽電池モジュールにソーラーシミュレータにより疑似太陽光を照射して、最大出力Pmax、開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FFを求めたところ、最大出力Pmaxは4.7W、開放電圧Vocは0.6V、短絡電流Iscは11.0A、曲線因子FFは71%であった。また、この太陽電池モジュールに実施例5と同様のPID試験を行った後、太陽電池モジュールにソーラーシミュレータにより疑似太陽光を照射して、最大出力Pmax、開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FFを求めたところ、最大出力Pmaxは4.9W、開放電圧Vocは0.6V、短絡電流Iscは10.0A、曲線因子FFは70%であり、最大出力が上昇していることから、PID試験前と比べて、太陽電池特性が全く劣化していないことが確認された。
【0091】
[比較例8]
積層体の作製の際に、表面側から、カバーガラス、EVAシート、インターコネクタ付セル、EVAシート、バックシートの順に積層した以外は、実施例5と同様の方法により、太陽電池モジュールを得た。この太陽電池モジュールにソーラーシミュレータにより疑似太陽光を照射して、最大出力Pmax、開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FFを求めたところ、最大出力Pmaxは4.7W、開放電圧Vocは0.6V、短絡電流Iscは11.0A、曲線因子FFは71%であった。また、この太陽電池モジュールに実施例5と同様のPID試験を行ったところ、265時間経過後にインターコネクタ付セルとEVAシートの間で層間剥離(デラミネーション)が生じて、1000時間後の最大出力などを測定することができなかった。この比較例と実施例5および6とを比較すると、実施例1の銀被覆銅粉と、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含む導電性ペーストを使用して、太陽電池モジュールを作製する場合には、カバーガラス側のEVAシートとインターコネクタ付セルとの間にCOCフィルムを積層した方がよいことがわかる。
【0092】
また、PID試験後の太陽電池モジュールのインターコネクタ付セルの表面側(カバーガラス側)に形成されたバスバー電極(実施例1の銀被覆銅粉とナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含む導電性ペーストAにより形成されたバスバー電極)の断面について、オージェ電子分光分析装置(FE−AES)(日本電子株式会社製のJAMP−9500F)を使用して、分析エリアの直径を1μmとして、銀被覆銅粉の銅粒子の断面の中央部の定性分析を行ったところ、酸素が検出された。また、実施例5で作製した太陽電池モジュール(カバーガラスとインターコネクタ付セルの間のEVAシートをEVAシートとシクロオレフィンコポリマー(COC)フィルムとEVAシートに代えた以外は比較例8と同様の太陽電池モジュール)についても、同様の定性分析を行ったところ、酸素は検出されなかった。これらの結果から、実施例5で作製した太陽電池モジュールは、PID試験後でも、酸素が検出されず、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とCOCフィルムを組み合わせることによって、耐酸化性が高くなることがわかる。本比較例と実施例5で作製した太陽電池モジュールのインターコネクタ付セルの表面側(カバーガラス側)に形成されたバスバー電極の断面のSEM像をそれぞれ図1および図2に示す。
【0093】
また、PID試験後の太陽電池モジュールのインターコネクタ付セルの表面側(カバーガラス側)に形成されたバスバー電極の断面について、上記のオージェ電子分光分析装置(FE−AES)を用いて、マッピング分析を行ったところ、銅粒子の略全体に酸素が観察され、銅を被覆していた銀の存在がほとんど確認できなかった。また、実施例5で作製した太陽電池モジュールについても、同様のマッピング分析を行ったところ、銅粒子の表面に銀が検出され、PID試験後でも、銀被覆銅粉の状態で存在していることが確認された。これらの結果から、実施例5で作製した太陽電池モジュールは、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とCOCフィルムを組み合わせることによって、PID試験後でも、銀被覆銅粉の状態を維持することができることがわかる。なお、実施例5で作製した太陽電池モジュールのインターコネクタ付セルの表面側(カバーガラス側)に形成されたバスバー電極の断面のマッピング分析によるAgマップ像とCuマップ像をそれぞれ図3および図4に示す。
【0094】
[実施例7]
平均一次粒子径0.8μmの銀粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製のAG−2−1C)89重量部と、エポキシ樹脂4重量部と、硬化剤0.2重量部と、ウレタン樹脂2重量部と、溶剤としてブチルカルビトールアセテート(和光純薬工業株式会社製)0.4重量部と、分散剤としてオレイン酸0.1重量部とを、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー社製のあわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(オットハーマン社製のEXAKT80S)により混練することにより、導電性ペーストDを得た。
【0095】
次に、ヘテロジャンクション型シリコンウエハを用意し、このシリコンウエハの裏面の全面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により上記の導電性ペーストDを印刷した後、熱風式乾燥機により150℃で10分間加熱して乾燥させた後に200℃で30分間加熱して硬化させた。その後、シリコンウエハの表面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により、上記の導電性ペーストDを幅50μmの100本のフィンガー電極形状に印刷した後、熱風式乾燥機により150℃で10分間加熱して乾燥させた後に200℃で30分間加熱して硬化させた。その後、シリコンウエハの表面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により、実施例5と同様の導電性ペーストAを100本のフィンガー電極形状と幅1.3mmの3本のバスバー電極形状を合わせた形状に印刷した後、熱風式乾燥機により150℃で10分間加熱して乾燥させた後に200℃で30分間加熱して硬化させた。
【0096】
このようにして作製した太陽電池を用いて、実施例5と同様の方法により、太陽電池モジュールを得た。この太陽電池モジュールにソーラーシミュレータにより疑似太陽光を照射して、最大出力Pmax、開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FFを求めたところ、最大出力Pmaxは5.3W、開放電圧Vocは0.7V、短絡電流Iscは11.0A、曲線因子FFは71%であった。また、この太陽電池モジュールに実施例5と同様のPID試験を行った後、太陽電池モジュールにソーラーシミュレータにより疑似太陽光を照射して、最大出力Pmax、開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FFを求めたところ、最大出力Pmaxは4.7W、開放電圧Vocは0.7V、短絡電流Iscは10.0A、曲線因子FFは67%であり、出力劣化率は11%に過ぎず、長期使用に十分耐え得ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明による導電性ペーストは、回路基板の導体パターン、太陽電池などの基板の電極や回路などの電子部品の作製に利用することができる。
【要約】
【課題】銀被覆銅粉を用いた樹脂型の導電性ペーストにより作製した太陽電池のバスバー電極をはんだ付けによりタブ線と接続しても、太陽電池の変換効率の低下を防止することができる、導電性ペーストを提供する。
【解決手段】レーザー回折式粒度分布装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.1〜15μmの銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉と樹脂とからなる導電性ペーストにおいて、樹脂としてナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂を使用し、好ましくは、イミダゾールおよび三フッ化ホウ素アミン系硬化剤の少なくとも一方を硬化剤として添加する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4