【実施例】
【0035】
以下、本発明による導電性ペーストの実施例について詳細に説明する。
【0036】
[実施例1]
アトマイズ法により製造された市販の銅粉(日本アトマイズ加工株式会社製のアトマイズ銅粉SF−Cu 5μm)を用意し、この(銀被覆前の)銅粉の粒度分布を求めたところ、銅粉の体積基準の累積10%粒子径(D
10)は2.26μm、累積50%粒子径(D
50)は5.20μm、累積90%粒子径(D
90)は9.32μmであった。なお、銅粉の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布装置(日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置MT−3300)により測定して、体積基準の累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)、累積90%粒子径(D
90)を求めた。
【0037】
また、炭酸アンモニウム2.6kgを純水450kgに溶解した溶液(溶液1)と、EDTA−4Na(43%)319kgと炭酸アンモニウム76kgを純水284kgに溶解した溶液に、銀16.904kgを含む硝酸銀水溶液92kgを加えて得られた溶液(溶液2)を用意した。
【0038】
次に、窒素雰囲気下において、上記の銅粉100kgを溶液1に加えて、攪拌しながら35℃まで昇温させた。この銅粉が分散した溶液に溶液2を加えて30分間攪拌した後、ろ過し、水洗し、乾燥して、銀により被覆された銅粉(銀被覆銅粉)を得た。なお、水洗は、ろ過により得られた固形分に純水をかけて、水洗後の液の電位が0.5mS/m以下になるまで行った。
【0039】
このようにして得られた銀被覆銅粉5.0gを、比重1.38の硝酸水溶液を体積比1:1になるように純水で薄めた硝酸水溶液40mLに溶かし、ヒーターで煮沸して銀被覆銅粉を完全に溶解した後、この水溶液に、比重1.18の塩酸水溶液を体積比1:1になるように純水で薄めた塩酸水溶液に少量ずつ添加して塩化銀を析出させ、沈殿が生じなくなるまで塩酸水溶液の添加を続けて、得られた塩化銀から重量法によりAgの含有量を求めたところ、銀被覆銅粉中のAg含有量は10.14質量%であった。
【0040】
また、この銀被覆銅粉0.1gをイソプロピルアルコール40mLに加えて、超音波ホモジナイザー(チップ先端直径20mm)により2分間分散させた後、銀被覆銅粉の粒度分布をレーザー回折式粒度分布装置(日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置MT−3300)により測定した。その結果、銀被覆銅粉の体積基準の累積10%粒子径(D
10)は2.5μm、累積50%粒子径(D
50)は5.2μm、累積90%粒子径(D
90)は10.1μmであった。
【0041】
また、この銀被覆銅粉のBET比表面積をBET比表面積測定器(ユアサアイオニクス株式会社製の4ソーブUS)を使用してBET1点法により測定した。その結果、銀被覆銅粉のBET比表面積は0.31m
2/gであった。
【0042】
また、得られた銀被覆銅粉87.64重量部と、化1に示すナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製のHP4710)6.49重量部と、溶剤としてブチルカルビトールアセテート(和光純薬工業株式会社製)5.52重量部と、硬化剤としてイミダゾール(四国化成工業株式会社製の2E4MZ)0.25重量部と、分散剤としてオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.10重量部とを、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー社製のあわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(オットハーマン社製のEXAKT80S)により混練することにより、それぞれ(バスバー電極用ペーストとして)導電性ペースト1を得た。なお、この導電性ペースト1のF値(導電フィラーとしての銀被覆銅粉と樹脂と硬化剤の総量に対する銀被覆銅粉の割合)は92.9%になる。この導電性ペースト1の粘度を粘度計(ブルックフィールド社製のDV−III Ultra、コーンとしてCP52を使用)により25℃において1rpmで測定したところ、40Pa・sであった。
【0043】
また、銀イオンとして21.4g/Lの硝酸銀溶液502.7Lに、工業用のアンモニア水45Lを加えて、銀のアンミン錯体溶液を生成した。生成した銀のアンミン錯体溶液に濃度100g/Lの水酸化ナトリウム溶液8.8Lを加えてpH調整し、水462Lを加えて希釈し、還元剤として工業用のホルマリン48Lを加えた。その直後に、ステアリン酸として16質量%のステアリン酸エマルジョン121gを加えた。このようにして得られた銀のスラリーをろ過し、水洗した後、乾燥して銀粉21.6kgを得た。この銀粉をヘンシェルミキサ(高速攪拌機)で表面平滑化処理した後、分級して11μmより大きい銀の凝集体を除去した。なお、水洗は、ろ過により得られた固形分に純水をかけて、水洗後の液の電位が0.5mS/m以下になるまで行った。
【0044】
このようにして得られた銀粉88重量部と、インジウム粉末0.2重量部と、銀テルル被覆ガラス粉1.5重量部と、バインダー樹脂としてエチルセルロース(和光純薬工業株式会社製)0.12重量部およびアクリル樹脂(日本カーバイド工業株式会社製のNISSETSU EU−5638)1.1重量部と、添加剤としてオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.5重量部と、チクソ剤としてステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)0.3重量部と、溶剤としてメチルイソブチルエーテル(MIBE)(JNC株式会社製)3.4重量部およびブチルカルビトールアセテート(和光純薬工業株式会社製)3.4重量部とを、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー社製のあわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(オットハーマン社製のEXAKT80S)により混練することにより、(焼成型Agペーストとして)導電性ペースト2を得た。
【0045】
なお、銀テルル被覆ガラス粉は、以下のように作製した。まず、1Lビーカー中で攪拌されている状態の純水787gに32質量%の硝酸銀水溶液3.47gを混合し、この銀1.11gを含む硝酸銀水溶液に、錯体化剤として28質量%のアンモニア水2.5gを添加して、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を30℃にした後、テルル系ガラス粉(旭硝子株式会社製のBLT−77)10gを添加し、その直後に、還元剤としてのヒドラジン0.3gと銀コロイド10.3gと純水20gとを混合した液を添加し、5分間熟成させ、銀とテルルを主成分とする層によりテルル系ガラス粉を被覆した後、この銀テルル被覆ガラス粉含有スラリーを吸引ろ過し、電位が0.5mS/m以下になるまで純水で洗浄して、得られたケーキを75℃の真空乾燥機で10分間乾燥させて、銀テルル被覆ガラス粉(銀とテルルを主成分とする層で被覆したガラス粉)を得た。
【0046】
次に、2枚のシリコンウエハ(株式会社E&M製、100Ω/□、6インチ単結晶)を用意し、それぞれのシリコンウエハの裏面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)によりアルミペースト(東洋アルミニウム株式会社製のアルソーラー14−7021)を印刷した後に、熱風式乾燥機により200℃で10分間乾燥するとともに、シリコンウエハの表面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により、上記の導電性ペースト2を幅40μmの100本のフィンガー電極形状に印刷した後、熱風式乾燥機により200℃で10分間乾燥し、高速焼成IR炉(日本ガイシ株式会社製の高速焼成試験4室炉)のイン−アウト21秒間としてピーク温度820℃で焼成して、フィンガー電極を形成した。その後、それぞれのシリコンウエハの表面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により、それぞれの導電性ペースト1(銀被覆銅粉から得られた導電性ペースト1)を幅1.3mmの3本のバスバー電極形状に印刷した後、熱風式乾燥機により150℃で10分間加熱した後に200℃で30分間加熱して乾燥させるとともに硬化させて、バスバー電極を形成した。このようにして形成したバスバー電極の抵抗(初期の抵抗値)を測定したところ、3.15Ωであった。また、一方のシリコンウエハのバスバー電極上にはんだ付けの際の熱と同程度の熱が加わるように380℃のはんだごてをバスバー電極に当てて10mm/秒の速度で移動させ、この加熱後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、3.42Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は109%であった。
【0047】
次に、他方のシリコンウエハのバスバー電極とタブ線をSnPb共晶はんだ(融点183℃)により380℃ではんだ付けして太陽電池を作製した。この太陽電池にソーラーシミュレータ(株式会社ワコム電創製)のキセノンランプにより光照射エネルギー100mW/cm
2の疑似太陽光を照射して電池特性試験を行った。その結果、太陽電池の出力端子を短絡させたときに両端子間に流れる電流(短絡電流)Iscは9.23A、太陽電池の出力端子を開放したときの両端子間の電圧(開放電圧)Vocは0.631V、電流密度Jsc(1cm
2当たりの短絡電流Isc)は0.038A/cm
2、最大出力Pmax(=Imax・Vmax)を開放電圧Vocと電流密度Jscの積で除した値(曲線因子)FF(=Pmax/Voc・Isc)は73.64、発電効率Eff(最大出力Pmaxを(1cm
2当たりの)照射光量(W)で除した値に100を乗じた値)は17.65%、直列抵抗Rsは0.0089Ω/□であった。
【0048】
[実施例2]
硬化剤として、イミダゾール(四国化成工業株式会社製の2E4MZ)に代えて、イミダゾール(四国化成工業株式会社製の2PHZ−PW)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、太陽電池を作製した。なお、この実施例で得られた導電性ペースト1の粘度を実施例1と同様の方法により測定したところ、40±5Pa・sの範囲内であった。
【0049】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は7.56Ω、はんだ付け後の抵抗値は6.58Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は87%であった。
【0050】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは9.23A、開放電圧Vocは0.630V、電流密度Jscは0.038A/cm
2、曲線因子FFは72.98、発電効率Effは17.45%、直列抵抗Rsは0.0091Ω/□であった。
【0051】
[実施例3]
導電性ペースト1中の硬化剤としてイミダゾール(四国化成工業株式会社製の2E4MZ)に代えて三フッ化ホウ素アミン系の硬化剤(和光純薬工業株式会社製のBF3NH2Et)を使用し、銀被覆銅粉、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、溶剤および硬化剤の量をそれぞれ85.52重量部、8.44重量部、5.62重量部および0.32重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により、太陽電池を作製した。なお、この実施例で得られた導電性ペースト1のF値は90.7%であった。この実施例で得られた導電性ペースト1の粘度を実施例1と同様の方法により測定したところ、40±5Pa・sの範囲内であった。
【0052】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は6.58Ω、はんだ付け後の抵抗値は7.71Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は117%であった。
【0053】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは9.20A、開放電圧Vocは0.628V、電流密度Jscは0.038A/cm
2、曲線因子FFは71.63、発電効率Effは17.02%、直列抵抗Rsは0.0102Ω/□であった。
【0054】
[実施例4]
導電性ペースト1中のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製のHP4710)に代えて、化1に示すナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製のHP9500)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、太陽電池を作製した。なお、この実施例で得られた導電性ペースト1のF値は90.9%であった。この実施例で得られた導電性ペースト1の粘度を実施例1と同様の方法により測定したところ、40±5Pa・sの範囲内であった。
【0055】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は3.56Ω、はんだ付け後の抵抗値は5.83Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は164%であった。
【0056】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは8.85A、開放電圧Vocは0.627V、電流密度Jscは0.036A/cm
2、曲線因子FFは70.47、発電効率Effは16.10%、直列抵抗Rsは0.0114Ω/□であった。
【0057】
[比較例1]
導電性ペースト1中のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて化2に示すビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製のEP4901E)を使用し、硬化剤としてイミダゾール(四国化成工業株式会社製の2E4MZ)を使用し、導電性ペースト1の粘度が40±5Pa・sの範囲内になるように溶剤の量を1.94重量部とした以外は、実施例3と同様の方法により、太陽電池を作製した。なお、この導電性ペースト1のF値は90.7%になる。
【0058】
【化2】
【0059】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は4.05Ω、はんだ付け後の抵抗値は18.70Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は462%であった。
【0060】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは6.71A、開放電圧Vocは0.634V、電流密度Jscは0.028A/cm
2、曲線因子FFは49.96、発電効率Effは8.74%、直列抵抗Rsは0.0162Ω/□であった。
【0061】
[比較例2]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化2に示すビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製のEP4901E)を使用し、導電性ペースト1の粘度が40±5Pa・sの範囲内になるように溶剤の量を1.99重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により、太陽電池を作製した。
【0062】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は2.37Ω、はんだ付け後の抵抗値は7.73Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は326%であった。
【0063】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは7.93A、開放電圧Vocは0.632V、電流密度Jscは0.033A/cm
2、曲線因子FFは45.47、発電効率Effは9.39%、直列抵抗Rsは0.0228Ω/□であった。
【0064】
[比較例3]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化2に示すビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製のEP4901E)を使用し、導電性ペースト1の粘度が40±5Pa・sの範囲内になるように溶剤の量を1.94重量部とした以外は、実施例3と同様の方法により、太陽電池を作製した。
【0065】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は5.95Ω、はんだ付け後の抵抗値は12.63Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は212%であった。
【0066】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは8.65A、開放電圧Vocは0.630V、電流密度Jscは0.036A/cm
2、曲線因子FFは64.69、発電効率Effは14.51%、直列抵抗Rsは0.0165Ω/□であった。
【0067】
[比較例4]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化3に示すビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製のJER828)を使用し、導電性ペースト1の粘度が40±5Pa・sの範囲内になるように溶剤の量を1.99重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により、太陽電池を作製した。
【0068】
【化3】
【0069】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は3.50Ω、はんだ付け後の抵抗値は34.93Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は998%であった。
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは7.78A、開放電圧Vocは0.635V、電流密度Jscは0.032A/cm
2、曲線因子FFは54.49、発電効率Effは11.07%、直列抵抗Rsは0.0181Ω/□であった。
【0070】
[比較例5]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化4に示すビフェニル骨格のエポキシ樹脂(日本化薬株式会社製のNC−3000−H)を使用し、導電性ペースト1の粘度が40±5Pa・sの範囲内になるように溶剤の量を5.32重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により、太陽電池を作製した。
【0071】
【化4】
【0072】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は6.08Ω、はんだ付け後の抵抗値は23.53Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は387%であった。
【0073】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは5.67A、開放電圧Vocは0.635V、電流密度Jscは0.023A/cm
2、曲線因子FFは54.52、発電効率Effは8.07%、直列抵抗Rsは0.0127Ω/□であった。
【0074】
[比較例6]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化5に示すシクロペンタジエン骨格のエポキシ樹脂(日本化薬株式会社製のXD−1000)を使用し、導電性ペースト1の粘度が40±5Pa・sの範囲内になるように溶剤の量を5.32重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により、太陽電池を作製した。
【0075】
【化5】
【0076】
この太陽電池のバスバー電極とタブ線をはんだ付けする前後のバスバー電極の抵抗を測定したところ、バスバー電極のはんだ付け前の抵抗値(初期の抵抗値)は4.73Ω、はんだ付け後の抵抗値は21.67Ωであり、初期の抵抗値に対する抵抗変化率は458%であった。
【0077】
また、実施例1と同様の方法により、太陽電池の電池特性試験を行ったところ、短絡電流Iscは4.66A、開放電圧Vocは0.632V、電流密度Jscは0.019A/cm
2、曲線因子FFは55.01、発電効率Effは6.67%、直列抵抗Rsは0.0182Ω/□であった。
【0078】
これらの実施例および比較例の結果を表1〜表3に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
表1〜表3からわかるように、実施例1〜3の導電性ペーストを太陽電池のバスバー電極の形成に使用すると、比較例1〜6の導電性ペーストを用いた場合と比べて、バスバー電極をはんだ付けによりタブ線と接続しても、バスバー電極の抵抗が高くなるのを防止して、太陽電池の変換効率の低下を防止することができる。
【0083】
[実施例5]
実施例1の銀被覆銅粉79.0重量部と、平均一次粒子径1μmの銀粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製のAg−2−IC)8.8重量部と、化1に示すナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製のHP4710)6.6重量部と、溶剤としてブチルカルビトールアセテート(和光純薬工業株式会社製)5.3重量部と、硬化剤としてイミダゾール(四国化成工業株式会社製の2E4MZ)0.3重量部と、分散剤としてオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.1重量部とを、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー社製のあわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(オットハーマン社製のEXAKT80S)により混練することにより、(後述するシリコンウエハの表面のバスバー電極用ペーストとして)導電性ペーストAを得た。なお、この導電性ペーストAは、導電フィラーとして銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む。
【0084】
また、平均一次粒子径1.9μmの銀粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製のAG−4−8F)88重量部と、エチルセルロース樹脂(和光純薬工業株式会社製)2.4重量部と、テキサノール(JMC株式会社製)とブチルカルビトールエステート(和光純薬工業株式会社製)を1:1で混合した溶剤9.5重量部と、ガラスフリット(日本電気硝子株式会社製のGA−12)1重量部と、分散剤としてオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.5重量部とを、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー社製のあわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(オットハーマン社製のEXAKT80S)により混練することにより、(後述するシリコンウエハの裏面のバスバー電極用ペーストとして)導電性ペーストBを得た。
【0085】
さらに、平均一次粒子径1.3μmの銀粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製のAG−2.5−8F)87.9重量部と、エチルセルロース樹脂(和光純薬工業株式会社製)0.1重量部と、アクリル樹脂(日本カーバイド工業株式会社製のEU−5638)1.1重量部と、メチルイソブチルエーテル(MIBE)(JNC株式会社製)とブチルカルビトールエステート(和光純薬工業株式会社製)を1:1で混合した溶剤6.1重量部と、ガラスフリット(Te−Bi−Li系)1.5重量部と、ステアリン酸マグネシウム0.3重量部と、分散剤としてオレイン酸(和光純薬株式会社製)0.5重量部とを、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー社製のあわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(オットハーマン社製のEXAKT80S)により混練することにより、(フィンガー電極用ペーストとして)導電性ペーストCを得た。
【0086】
次に、シリコンウエハ(株式会社E&M製、100Ω/□、6インチ単結晶)を用意し、このシリコンウエハの裏面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により上記の導電性ペーストBを幅1.3mmの3本のバスバー電極形状に印刷した後、熱風式乾燥機により200℃で10分間加熱して乾燥させた。その後、シリコンウエハの裏面の導電性ペーストBを印刷した部分以外の部分にアルミペースト(東洋アルミニウム株式会社製のアルソーラー14−7021)を印刷した後、熱風式乾燥機により200℃で10分間加熱して乾燥させた。その後、シリコンウエハの表面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により、上記の導電性ペーストCを幅50μmの100本のフィンガー電極形状に印刷した後、熱風式乾燥機により200℃で10分間加熱して乾燥させ、高速焼成IR炉(日本ガイシ株式会社製の高速焼成試験4室炉)のイン−アウト21秒間としてピーク温度820℃で焼成して、シリコンウエハの裏面のバスバー電極と表面のフィンガー電極を形成した。その後、シリコンウエハの表面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により、上記の導電性ペーストAを幅1.3mmの3本のバスバー電極形状に印刷した後、熱風式乾燥機により150℃で10分間加熱して乾燥させた後に200℃で40分間加熱して硬化させて、シリコンウエハの表面のバスバー電極を形成した。
【0087】
このようにして作製した太陽電池の表裏のバスバー電極にフラックスを塗布した後、その太陽電池を50℃のホットプレート上に配置し、その上に0.2mm×1.5mm×176mmの大きさのインターコネクタ材(日立金属株式会社製のSSA−SPS)を載せ、380℃に加熱したはんだごてを押し当てながら約10mm/sの速度で上からなぞって、太陽電池の表裏の両面にはんだ付けを行うことにより、インターコネクタ付セルを得た。その後、表面側から、カバーガラス、EVAシート(エバーフィルム)、シクロオレフィンコポリマー(COC)フィルム(Topas Advanced Polymers GmbH製のTOPAS(登録商標)、厚さ75μm)、EVAシート、上記のインターコネクタ付セル、EVAシート、バックシートの順に積層し、この積層体に真空ラミネーターによりプレス加工して、太陽電池モジュールを得た。この太陽電池モジュールにソーラーシミュレータにより疑似太陽光を照射して、最大出力Pmax、開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FFを求めたところ、最大出力Pmaxは4.7W、開放電圧Vocは0.6V、短絡電流Iscは10.0A、曲線因子FFは71%であった。
【0088】
また、この太陽電池モジュールのPID試験として、PID試験装置(エスペック株式会社製)を使用して、太陽電池モジュールを温度85℃、湿度85%のチャンバ内に入れ、−000Vの電圧を1000時間印加して加速劣化試験を行った。その後、PID試験装置から取り出した太陽電池モジュールにソーラーシミュレータにより疑似太陽光を照射して、最大出力Pmax、開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FFを求めたところ、最大出力Pmaxは4.7W、開放電圧Vocは0.6V、短絡電流Iscは10.0A、曲線因子FFは71%であり、PID試験前と比べて、太陽電池特性が全く劣化していないことが確認された。
【0089】
[比較例7]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化2に示すビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製のEP4901E)を使用した以外は、実施例5と同様の方法により、(バスバー電極用ペーストとして)導電性ペーストAを得た。この導電性ペーストAを使用した以外は、実施例5と同様の方法により、太陽電池モジュールを作製を試みたが、インターコネクタとバスバーが接着せず、太陽電池モジュールを作製することができなかった。
【0090】
[実施例6]
積層体の作製の際にカバーガラス、EVAシート、COCフィルム(Topas Advanced Polymers GmbH製のTOPAS(登録商標)、厚さ75μm)、EPDMゴム、インターコネクタ付セル、EPDMゴム(透明、厚さ300μm)、バックシートの順に積層した以外は、実施例5と同様の方法により、太陽電池モジュールを得た。この太陽電池モジュールにソーラーシミュレータにより疑似太陽光を照射して、最大出力Pmax、開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FFを求めたところ、最大出力Pmaxは4.7W、開放電圧Vocは0.6V、短絡電流Iscは11.0A、曲線因子FFは71%であった。また、この太陽電池モジュールに実施例5と同様のPID試験を行った後、太陽電池モジュールにソーラーシミュレータにより疑似太陽光を照射して、最大出力Pmax、開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FFを求めたところ、最大出力Pmaxは4.9W、開放電圧Vocは0.6V、短絡電流Iscは10.0A、曲線因子FFは70%であり、最大出力が上昇していることから、PID試験前と比べて、太陽電池特性が全く劣化していないことが確認された。
【0091】
[比較例8]
積層体の作製の際に、表面側から、カバーガラス、EVAシート、インターコネクタ付セル、EVAシート、バックシートの順に積層した以外は、実施例5と同様の方法により、太陽電池モジュールを得た。この太陽電池モジュールにソーラーシミュレータにより疑似太陽光を照射して、最大出力Pmax、開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FFを求めたところ、最大出力Pmaxは4.7W、開放電圧Vocは0.6V、短絡電流Iscは11.0A、曲線因子FFは71%であった。また、この太陽電池モジュールに実施例5と同様のPID試験を行ったところ、265時間経過後にインターコネクタ付セルとEVAシートの間で層間剥離(デラミネーション)が生じて、1000時間後の最大出力などを測定することができなかった。この比較例と実施例5および6とを比較すると、実施例1の銀被覆銅粉と、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含む導電性ペーストを使用して、太陽電池モジュールを作製する場合には、カバーガラス側のEVAシートとインターコネクタ付セルとの間にCOCフィルムを積層した方がよいことがわかる。
【0092】
また、PID試験後の太陽電池モジュールのインターコネクタ付セルの表面側(カバーガラス側)に形成されたバスバー電極(実施例1の銀被覆銅粉とナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含む導電性ペーストAにより形成されたバスバー電極)の断面について、オージェ電子分光分析装置(FE−AES)(日本電子株式会社製のJAMP−9500F)を使用して、分析エリアの直径を1μmとして、銀被覆銅粉の銅粒子の断面の中央部の定性分析を行ったところ、酸素が検出された。また、実施例5で作製した太陽電池モジュール(カバーガラスとインターコネクタ付セルの間のEVAシートをEVAシートとシクロオレフィンコポリマー(COC)フィルムとEVAシートに代えた以外は比較例8と同様の太陽電池モジュール)についても、同様の定性分析を行ったところ、酸素は検出されなかった。これらの結果から、実施例5で作製した太陽電池モジュールは、PID試験後でも、酸素が検出されず、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とCOCフィルムを組み合わせることによって、耐酸化性が高くなることがわかる。本比較例と実施例5で作製した太陽電池モジュールのインターコネクタ付セルの表面側(カバーガラス側)に形成されたバスバー電極の断面のSEM像をそれぞれ
図1および
図2に示す。
【0093】
また、PID試験後の太陽電池モジュールのインターコネクタ付セルの表面側(カバーガラス側)に形成されたバスバー電極の断面について、上記のオージェ電子分光分析装置(FE−AES)を用いて、マッピング分析を行ったところ、銅粒子の略全体に酸素が観察され、銅を被覆していた銀の存在がほとんど確認できなかった。また、実施例5で作製した太陽電池モジュールについても、同様のマッピング分析を行ったところ、銅粒子の表面に銀が検出され、PID試験後でも、銀被覆銅粉の状態で存在していることが確認された。これらの結果から、実施例5で作製した太陽電池モジュールは、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とCOCフィルムを組み合わせることによって、PID試験後でも、銀被覆銅粉の状態を維持することができることがわかる。なお、実施例5で作製した太陽電池モジュールのインターコネクタ付セルの表面側(カバーガラス側)に形成されたバスバー電極の断面のマッピング分析によるAgマップ像とCuマップ像をそれぞれ
図3および
図4に示す。
【0094】
[実施例7]
平均一次粒子径0.8μmの銀粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製のAG−2−1C)89重量部と、エポキシ樹脂4重量部と、硬化剤0.2重量部と、ウレタン樹脂2重量部と、溶剤としてブチルカルビトールアセテート(和光純薬工業株式会社製)0.4重量部と、分散剤としてオレイン酸0.1重量部とを、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー社製のあわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(オットハーマン社製のEXAKT80S)により混練することにより、導電性ペーストDを得た。
【0095】
次に、ヘテロジャンクション型シリコンウエハを用意し、このシリコンウエハの裏面の全面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により上記の導電性ペーストDを印刷した後、熱風式乾燥機により150℃で10分間加熱して乾燥させた後に200℃で30分間加熱して硬化させた。その後、シリコンウエハの表面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により、上記の導電性ペーストDを幅50μmの100本のフィンガー電極形状に印刷した後、熱風式乾燥機により150℃で10分間加熱して乾燥させた後に200℃で30分間加熱して硬化させた。その後、シリコンウエハの表面にスクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)により、実施例5と同様の導電性ペーストAを100本のフィンガー電極形状と幅1.3mmの3本のバスバー電極形状を合わせた形状に印刷した後、熱風式乾燥機により150℃で10分間加熱して乾燥させた後に200℃で30分間加熱して硬化させた。
【0096】
このようにして作製した太陽電池を用いて、実施例5と同様の方法により、太陽電池モジュールを得た。この太陽電池モジュールにソーラーシミュレータにより疑似太陽光を照射して、最大出力Pmax、開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FFを求めたところ、最大出力Pmaxは5.3W、開放電圧Vocは0.7V、短絡電流Iscは11.0A、曲線因子FFは71%であった。また、この太陽電池モジュールに実施例5と同様のPID試験を行った後、太陽電池モジュールにソーラーシミュレータにより疑似太陽光を照射して、最大出力Pmax、開放電圧Voc、短絡電流Isc、曲線因子FFを求めたところ、最大出力Pmaxは4.7W、開放電圧Vocは0.7V、短絡電流Iscは10.0A、曲線因子FFは67%であり、出力劣化率は11%に過ぎず、長期使用に十分耐え得ることが確認された。