特許第6357668号(P6357668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357668
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】波力発電タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 1/20 20060101AFI20180709BHJP
   F03B 13/24 20060101ALI20180709BHJP
   F01D 5/14 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   F01D1/20
   F03B13/24
   F01D5/14
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-115972(P2014-115972)
(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公開番号】特開2015-229953(P2015-229953A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年2月8日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、環境省、地球温暖化対策技術開発・実証研究事業、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】飯田 誠
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 武晃
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 正道
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
(72)【発明者】
【氏名】竹内 孝行
(72)【発明者】
【氏名】岡山 修三
【審査官】 倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−256920(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0142656(US,A1)
【文献】 特表2013−543559(JP,A)
【文献】 特表2013−528737(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/053024(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/20
F01D 5/14
F03B 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒風洞内に配置され、前記円筒風洞と同心軸線上に回転自在に支持された回転軸と、前記回転軸に固着され、半径方向に向かって延在する複数のタービンブレードを有するロータハブとを備え、
前記タービンブレードは、ブレード根元からブレード先端にかけて、最大ブレード厚が漸次先細り状に形成されるとともに、最大ブレード厚の位置が、タービンブレードの後方に漸次移行していることを特徴とする波力発電タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波浪エネルギーを利用して発電を行う波力発電装置、特に振動水柱形波力発電装置に利用されるタービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動水柱形波力発電装置は、下部が海面に開放され、上部が大気への空気通路を有する外部密閉室からなる空気室と、空気通路内に設けられたタービンと、タービンの回転により発電を行う発電機とから構成される。海面の上下運動により空気室内外の圧力差が生じると、その圧力差によって空気通路内に空気流が発生し、この空気流を利用してタービンを回し、発電が行われるようになっている。
【0003】
この発電装置は、可動部が波浪エネルギーを直接受けないため、構造上強度の問題が少ないという特徴があり、メインテナンス上も有利であることから、離島などの電力供給源として有望視されている。
【0004】
従来から、振動水柱形発電装置のタービンとしては、主にウェルズタービンが用いられてきた(特許文献1)。
【0005】
ウェルズタービンは、零揚力面が回転軸に対して垂直となるように取付けられた複数の対称翼型のタービンブレードを有するロータハブを備え、空気流の流れ方向にかかわらず同一方向に回転するように構成されたタービンである。ウェルズタービンは、往復流に対して一方向に駆動力を発生するため、構造が簡単であるという特徴を有する。
【0006】
その一方で、ウェルズタービンは、駆動力が揚力に比べて小さく出力トルクが小さいため、起動時間がかかる。また、迎え角の大きい範囲では失速域が存在する。すなわち、海面の上下運動エネルギーから変換された空気流の流量が増加した場合、タービンブレードが失速して、タービントルクの大幅な降下が発生するため、タービン効率が低下するという問題がある。
【0007】
上記ウェルズタービンの有する課題を解決するために、従来からさまざまな改善策が講じられてきた。
【0008】
例えば、特許文献2には、タービンブレード21の上流側および下流側に、タービンブレードから隔てられた案内羽根22,23が組み込まれたタービンが開示されている(図7参照)。特許文献2に記載されたタービンでは、案内羽根22,23が、タービンブレード流を減少させあるいは消失させるように傾斜させて配設されているため、タービンブレードの失速を低減することができる。しかしながら、特許文献2に開示されたタービンでは、構造が複雑になり、しかも案内羽根22,23の形状の最適化など設計上の問題もある。
【0009】
また、特許文献3には、出力軸32に2個のロータハブ33を互いに平行に離間するように固着し、このロータハブ33の周囲に複数のタービンブレード31をロータハブ33の軸線方向に交差する方向で同軸に二列に整列するように配設されており、二列の対称翼型タービンブレード31を互いに後縁が向かい合うように取付け角度γで対称に配設した対称翼型複葉式ウェルズタービンが開示されている(図8参照)。特許文献3に記載されたタービンでは、タービンブレード31を互いに後縁が向かい合うように取付けられているため、起動特性および平均効率を向上させることが可能である。しかしながら、特許文献3に記載されたタービンにおいても、構造が複雑になるとともに、取付け角度γの最適化など設計上の問題がある。
【0010】
さらに、特許文献4には、回転翼43をその取付け軸周りに同時に回転可能に設け、気体の流速および回転翼43の回転数に応じて、複数の回転翼43の軸周りの回動角度を制御する波力発電タービンが開示されている(図9参照)。特許文献4に記載されたタービンによれば、脈動する気体の流速に応じて、タービンの翼を適正な角度に制御できるので、高いタービン効率で運転できる範囲が拡大され、発電効率の向上を図ることができる。しかしながら、特許文献4に記載されたタービンにおいても、気体の往復流を検知する手段や、回転翼43の回転数を検知する手段が必要となり、構造がさらに複雑になる。しかも、回転翼43を回動させるための動力源などが必要となり、発電した電力を消費してしまうため、装置全体としての発電効率が低下するという問題もある。
【0011】
以上の通り、従来の波力発電タービンでは、いずれも構造が複雑になる。特に、離島で設置される波力発電装置では、メンテナンスフリーであることが要求され、構造の複雑化によって故障頻度が高くなることは、極力避けなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭53−92060号公報
【特許文献2】特開昭54−59538号公報
【特許文献3】特公平6−89645号公報
【特許文献4】特開平9−287546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、波力発電装置に利用される波力発電タービンにおいて、構造が簡単であるという長所を活かしつつ、タービンブレードの失速を低減して、タービン効率を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、円筒風洞内に配置され、円筒風洞と同心軸線上に回転自在に支持された回転軸と、回転軸に固着され、半径方向に向かって延在する複数のタービンブレードを有するロータハブとを備え、タービンブレードは、ブレード根元からブレード先端にかけて、最大ブレード厚が漸次先細り状に形成されるとともに、最大ブレード厚の位置が、タービンブレードの後方に漸次移行していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明による波力発電タービンは、タービンブレードの回転に伴うブレード半径方向での空気流の流入角度変化に追従できるとともに、半径方向の各ブレード断面での仕事量が均一になる。また、これにより空気流の流量が大きくなった場合でも、タービンブレードの失速を防止することができるので、タービン効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】波力発電タービンの斜視図である。
図2】本発明に係る波力発電タービンのタービンブレードおよび空気流の流れを示す斜視図である。
図3図2のA矢視図である。
図4】従来の波力発電タービンのタービンブレードおよび空気流の流れを示す斜視図である。
図5】タービンブレードのスパン位置と迎角の関係を示す図である。
図6】従来の波力発電タービンの構成および空気流の流れを示す斜視図である。
図7】従来技術による固定子羽根を備えた波力発電タービンの構成を示す概略図である。
図8】従来技術によるタービンブレードを傾けた複葉式タービンの構成を示す概略図である。
図9】従来技術による回転翼を回動可能とした波力発電タービンの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、波力発電タービンの斜視図、図2は、本発明に係る波力発電タービンのタービンブレードおよび空気流の流れを示す斜視図、図3は、図2のA矢視図、図4は、従来の波力発電タービンのタービンブレードおよび空気流の流れを示す斜視図、図5は、タービンブレードのスパン位置と迎角の関係を示す図、図6は、従来の波力発電タービンの構成および空気流の流れを示す斜視図である。
【0018】
図1において、1は、空気室(図示せず)と外気との間で空気が出入りするための円筒風洞(空気通路)、2は、ロータハブ、3は、円筒風洞1内に回転自在に支持されるとともにロータハブ2に固着された回転軸、4は、ロータハブ3から半径方向に延在する対称翼型のタービンブレード、5は、回転軸3に連結され発電機であり、6は、円筒風洞1内に発生する空気流(往復流)、7は、波力発電タービンの回転方向を示している。
【0019】
海面の上下運動により、空気室(図示せず)の内外で圧力差が生じると、その圧力差によって、円筒風洞1内に空気流6が発生する。空気流6により、タービンブレード4が回転方向7の方向に回転し、さらにロータハブ2、回転軸3が回転することにより、発電機5にて発電が行われるようになっている。
【0020】
本発明者らは、タービンブレードが失速するメカニズムを解明するために、従来の波力発電タービンにおける空気流の流れ場について解析を行った。その結果を図4〜6に基づいて説明する。
【0021】
図4は、従来の波力発電タービンにおけるタービンブレードまわり空気流の流れを、図6は、従来の波力発電タービンまわりの空気流の流れを、それぞれ解析した結果を示しており、図5は、タービンブレードのスパン位置における迎角の計算結果をグラフ化したものである。
【0022】
図4図6から明らかなように、タービンブレード4の前方を通過した空気流は、タービンブレード4の下流側表面から剥離しており、特にブレード根元では、空気流が大きく剥離してブレード前縁失速流れ13が形成されている。また、図5に示すように、ブレード先端と比較して、ブレード根元の迎角が大きくなっていることがわかる。
【0023】
この解析結果から、ブレード根元における空気流の流入角度の増大、ブレード先端における仕事量の増大によって、タービンブレードの前縁失速を助長していることがわかる。
【0024】
ここで、タービンブレードの同一半径断面における角度として、空気流の流入角度は、タービンブレードの回転平面(図6において回転方向7を含む平面)に対して空気流の流入方向がなす角度である。また、迎角は、ブレードの前縁と後縁とを結ぶ線分である翼弦に対して空気流の流入方向がなす角度である。なお、図4〜6に示す従来例において、タービンブレードの回転平面に対してブレードの翼弦がなす角度である取付け角度は0°としており、空気流の流入角度と仰角とは同じ角度となっている。
【実施例】
【0025】
本発明は、タービンブレードの回転に伴うブレード半径方向での空気流の流入角度変化に追従できるようにするとともに、半径方向の各ブレード断面での仕事量を均一にすることにより、タービン効率を向上させるものである。以下、本発明に係る波力発電タービンの一実施例を図2図3を参照しつつ説明する。
【0026】
図2図3に示すように、本発明による波力発電タービンでは、タービンブレード4が、ブレード根元10からブレード先端9にかけて、厚さが漸次先細り状に形成されており、しかも最大ブレード厚の箇所が、タービンブレード4の回転方向7に対して、漸次後方に移行している。ブレード先端9の前縁を通過したブレード先端空気流11は、ブレード厚の薄いブレード先端9の近傍で、タービンブレード4の表面に沿って流れている。一方、ブレード根元10の前縁を通過したブレード根元空気流12は、ブレード厚の厚いブレード根元10の近傍で、タービンブレード4の表面に沿って流れている。いずれの空気流もタービンブレード4の下流側表面からの剥離が小さく、しかも一定である。
【0027】
なお、本実施例においても、タービンブレードの回転平面(図1において回転方向7を含む平面)に対してブレードの翼弦(図3において一点鎖線で示される線分)がなす角度である取付け角度は0°としており、空気流の流入角度と仰角とは同じ角度となっている。
【0028】
上記構成の波力発電タービンによれば、タービンブレード4の回転に伴う各スパン位置による空気流の流入角度変化に追従でき、スパン位置によらず仕事量が均一になる。これにより、空気流の流量が大きくなった場合でも、タービンブレード4の失速を防止することができるので、タービン効率を向上させることができる。
【0029】
なお、本発明の適用対象は、タービンブレードの取付け角度を0°とした構成に限定されるものではない。例えば上述の図8に示されるような、出力軸に2個のロータハブを互いに平行に離間するように固着し、このロータハブの周囲に複数のタービンブレードをロータハブの軸線方向に交差する方向で同軸に二列に整列するように配設し、この二列の対称翼型タービンブレードを互いに後縁が向かい合うように取付け角度γで対称に配設した対称翼型複葉式ウェルズタービンにも、本発明の「タービンブレードのブレード根元からブレード先端にかけて、最大ブレード厚が漸次先細り状に形成されるとともに、最大ブレード厚の位置が、タービンブレードの後方に漸次移行している」構成を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、波力発電装置に用いられる波力発電タービンに利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 円筒風洞
2 ロータハブ
3 回転軸
4 対称翼型タービンブレード
5 発電機
6 空気流(往復流)
7 回転方向
8 同一半径断面
9 ブレード先端
10 ブレード根元
11 ブレード先端空気流
12 ブレード根元空気流
13 ブレード前縁失速流れ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9