特許第6357695号(P6357695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製粉株式会社の特許一覧

特許6357695キャラメリゼ様トッピング材及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357695
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】キャラメリゼ様トッピング材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/54 20060101AFI20180709BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   A23G3/54
   A23G3/34 101
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-208674(P2014-208674)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-77166(P2016-77166A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】日本製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】増成 彩子
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−59330(JP,A)
【文献】 特表2005−516633(JP,A)
【文献】 カラメルチップ☆色んなものに使えます!!,Cookpad ,2011年12月13日,レシピID:861853,[平成30年5月11日検索]インターネット<URL:http://cookpad.com/recipe/861853>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 3/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖組成物を焼成したものの粉砕物の粒子表面を、前記粉砕物中の糖の合計100質量部に対し21〜48質量部の融点20〜50℃の油脂で被覆したキャラメリゼ様トッピング材。
【請求項2】
糖組成物を焼成し、得られた焼成物を粉砕し、得られた粉砕物の粒子表面を前記粉砕物中の糖の合計100質量部に対し21〜48質量部の融点20〜50℃の油脂で被覆することを特徴とするキャラメリゼ様トッピング材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
カリカリとした食感が維持され、吸湿し難いキャラメリゼ様トッピング材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャラメリゼ(Carameliser)とは、食品表面に糖を付着させ、火であぶることにより香ばしさや焦げ色、カリカリした食感を付与する調理方法である。製造現場において食品にキャラメリゼを施す場合、その食品の上にグラニュー糖などを適量振り掛け、ガスバーナーで炙っていた。この点、事故予防の観点から生産工場でのガスバーナーの使用は出来るだけ避けたいという要請がある。また個別の食品に対してガスバーナー処理が必要であるために焦げ目にバラつきができ易く、一定の品質を維持する為の管理方法が難しい、さらに、流通時にキャラメリゼが食品に由来する水分を吸湿して潮解し、カリカリした食感が失われるという問題があった。
食品に使用する糖類を主成分とするトッピング材は、キャラメリゼと同様に流通時に食品由来の水分を吸湿し潮解してしまうという問題点があり、この問題点を解決する為に様々な試みが行われてきた。
例えば特許文献1には乳化剤であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル及び/又はポリグリセリン酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルをカラメル調製時に添加することで、割れ易く吸湿し難い固形カラメルが開示されている。
特許文献2には粉末糖の粒子表面を融点50〜70℃の油脂で被覆し、更にその外表面に融点26〜40℃の油脂で被覆した難吸湿性の油脂被覆粉末糖が開示されている。
特許文献3には砂糖と水あめ及び粉糖からなる混合物であって、耐熱性と耐水性が良好で、かつ食感と風味を食品に付与することができるキャンディーチップが開示されている。
特許文献4には粉糖類の粒子表面に融点50℃以下の油脂を被覆させ、吸湿性が低くかつドーナツ等への付着性が良好な被覆粉糖類が開示されている。
特許文献5にはブドウ糖とデキストリン及び融点が異なる2種の油脂からなる、低吸湿性の口溶けと食感が良好なコーティングシュガーが開示されている。
特許文献6には粉糖と澱粉及び/又は澱粉加工品の混合物を融点30〜60℃の油脂でコーティングした潮解し難い粉糖組成物が開示されている。
特許文献1〜6には潮解し難く食感や風味の良い粉末又は粉砕糖が開示されているが、これらはキャラメリゼの特徴を再現したものではなく、また、十分に潮解を防止するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−249568
【特許文献2】特開2014−39506
【特許文献3】特開2006−280323
【特許文献4】特開平11−56290
【特許文献5】特開平09−201166
【特許文献6】特開平07−184699
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はカリカリとした食感が維持され、吸湿し難いキャラメリゼ様トッピング材及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、糖組成物を焼成したものの粉砕物の粒子表面を、前記粉砕物中の糖の合計100質量部に対し21〜48質量部の融点20〜50℃の油脂で被覆したキャラメリゼ様トッピング材により上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するにいたった。
すなわち本発明は以下の通りである。
(1)糖組成物を焼成したものの粉砕物の粒子表面を、前記粉砕物中の糖の合計100質量部に対し21〜48質量部の融点20〜50℃の油脂で被覆したキャラメリゼ様トッピング材及び
(2)糖組成物を焼成し、得られた焼成物を粉砕し、得られた粉砕物の粒子表面を前記粉砕物中の糖の合計100質量部に対し21〜48質量部の融点20〜50℃の油脂で被覆することを特徴とするキャラメリゼ様トッピング材の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、カリカリとした食感を持つ吸湿し難いキャラメリゼ様トッピング材を提供することが出来る。本発明のキャラメリゼ様トッピング材は菓子類、冷菓、ベーカリーなどの各種製品へ使用することができる。また、食品の生産工場におけるガスバーナーの使用を回避することにより作業性を改善すると共に、吸湿性の低減により、流通安定性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は糖組成物を焼成したものの粉砕物の粒子表面を、前記粉砕物中の糖の合計100質量部に対し21〜48質量部の融点20〜50℃の油脂で被覆したキャラメリゼ様トッピング材に関する。
【0008】
「キャラメリゼ(Carameliser)」とは、食品表面に糖を付着させ、火であぶることにより糖類の酸化、縮合、脱水、転移反応などが起こり、香ばしさや焦げ色、カリカリとした食感を付与する調理方法である。製造現場において食品にキャラメリゼを施す場合、一般的にはその食品の上にグラニュー糖などを適量振り掛け、ガスバーナーで炙る等して行うことが多い。
【0009】
本発明の「キャラメリゼ様トッピング材」とは、食品にトッピングすることでキャラメリゼにより食品に付与される香ばしさや焦げ色、カリカリとした食感を模した外観や食感を付与する為の材料である。本発明のキャラメリゼトッピング材を使用できる食品としては、特に限定はなく、例えばベーカリー製品や洋菓子、焼菓子、冷菓、アイスクリーム、果物など様々な食品に使用できる。具体的には、クレームブリュレやカタラーナ、クイニーアマン、プリン、ゼリーなどを挙げることができる。
【0010】
本発明において糖組成物は固形糖を含む。固形糖とは固形状の形状の糖を意味し、液糖や水飴状の糖を除く概念である。加熱の際の熱ムラを防止し、均一なキャラメリゼを容易に得ることができるという観点から粉末状や結晶状であることが好ましく、粉末状であることがさらに好ましい。
固形糖の種類は食品に使用される糖であれば特に限定されないが、例えば粉砂糖、グラニュー糖、上白糖、三温糖、白双糖、中双糖、黒砂糖、白下糖、カソナード(赤砂糖)、和三盆、メープルシュガー等のショ糖を主成分とするいわゆる砂糖や、固形糖の形状のショ糖、ブドウ糖、麦芽糖、果糖、乳糖、トレハロース等及びこれらの組み合わせを使用することが出来る。
【0011】
糖組成物は、糖組成物を焼成する工程において色付きや焦げやすさ程度を調節し、操作性を向上させる観点から、色付きや焦げやすさの程度が異なる複数の固形糖を含むことが好ましく、ショ糖又はショ糖を主成分とする砂糖とブドウ糖、麦芽糖又はトレハロースを含むことがより好ましく、ショ糖とブドウ糖を含むことが最も好ましい。糖組成物は成分として、ショ糖100質量部に対しショ糖以外の糖45〜85質量部含むことが好ましい。ショ糖100重量部に対しショ糖以外の糖が50重量部未満になると、キャラメリゼの着色が強くなるとともに焦げ臭が発生し易くなる。ショ糖100重量部に対しショ糖以外の糖が80重量部を超えると、キャラメリゼの着色と香気が弱くなる。
【0012】
本発明において糖組成物の焼成は特に制限なく行うことが出来るが、焼きむらのない均一なキャラメリゼを得る観点からシート状に焼成することが好ましい。例えばオーブンの天板状に糖組成物を平らになるように広げ、170〜190℃に加熱して溶解させ、カラメル色(茶〜こげ茶色)になるまで約15〜25分焼成することにより行うことができる。
【0013】
本発明において糖組成物は固形糖の他に乳化油脂、粉乳、香料、その他食品に使用される添加物を含むことが出来る。糖組成物におけるその他の成分の全量は糖組成物の全量に対し5%未満であることが好ましい。
【0014】
本発明において焼成物を粉砕する方法は特に制限はなく、例えばサイレントカッターなどのような機器によって行うことが出来る。粉砕物は吸湿性や食感への影響の観点から粒子が小さすぎるものを除く為に篩い分けを行っても良く、その場合、篩の目開きは1〜6mmが好ましく、より好ましくは2mmである。篩いを通過しないキャラメリゼ粉砕物の形状およびサイズは不揃いであっても特に問題はない。
【0015】
本発明において、上記粉砕物の粒子表面を、融点20〜50℃の油脂で被覆する。融点20〜50℃の油脂としては食用油であれば特に制限はないが、例えばチョコレート用油脂が挙げられる。融点が50℃よりも高い油脂、例えば硬化油を使用すると、口溶けや嗜好性が悪くなる。融点が20℃未満の油脂、例えばサラダ油を使用すると、キャラメリゼ粉砕物と油が混ざって塊になり、トッピング材としての使用に適さない。
被覆用油脂の使用量は粉砕物中の糖の合計100質量部に対し21〜48質量部であり、25〜45重量部であることが好ましい。粉砕物中の糖の合計100重量部に対して21重量部未満になると、コーティングが不十分で吸湿または潮解がおこり食感が劣る傾向にある。48重量部を超えると、表面が白濁してキャラメリゼらしい色調が損なわれ、脂っぽい舌触りになると共にカリカリとした食感が損なわれる傾向にある。
【0016】
被覆用油脂による被覆の方法は特に限定されない。例えば粉砕物をミキサーに投入し、事前に60〜70℃に加温して溶解した被覆用油脂を少しずつ添加しながら混合し、混合物をバットに広げて自然冷却し油脂を固化させることにより行うことが出来る。好ましくは添加から冷却までの工程を複数行うことにより、粉砕物が隙間なく油脂で被覆されたキャラメリゼ様トッピング材を得ることが出来る。
【実施例】
【0017】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
試験例1 [キャラメリゼ様トッピングの製造例]
1.キャラメリゼシート原料としてショ糖、ブドウ糖及び乳化用油脂を表2および3に規定した比で配合し、均等になるようにミキサーで混合した。
2.天板1枚あたり500gになるように前記混合物を量り取り、天板上に平らになるように広げ、170〜190℃に加熱して溶解させ、15〜25分間、カラメル色(茶〜こげ茶色)になるまで焼成した。
3.自然冷却した後、キャラメリゼのシートをサイレントカッターに投入し、2分間粉砕した。
4.前記粉砕物を目開き2mmのメッシュで篩い、メッシュを通過しない粉砕物を回収した。回収歩留まりは60〜70%であった。
5.前記粉砕物を5kgミキサーに投入し、粉砕物中のショ糖とブドウ糖の合計100質量部に対し、表2及び3に規定した半量のチョコレート用低融点油脂(製品名「メラノSS400」(不二製油社製)、植物油脂を主成分とする、融点36℃、事前に60〜70℃に加温して溶解してあるもの)を少しずつ添加しながら混合することで粉砕物を油脂で被覆させた。
6.バットに広げて自然冷却して油脂を固化させた。
7.工程5及び工程6の操作を繰り返し、合計して表2及び3に規定した量の油脂で粉砕物を被覆させることにより、キャラメリゼ様トッピング材を得た。
【0018】
(キャラメリゼ様トッピングの色調及び食感の評価方法)
得られたキャラメリゼ様トッピング材をカタラーナにトッピングし、トッピングしたカタラーナを−20℃で1ヶ月保管した後、4名のパネラーにより下記表1に示す評価基準により色調及び食感を評価した。
【0019】
【表1】
【0020】
試験1 ブドウ糖添加量とキャラメリゼの色調との関係
【表2】
*被覆用油脂の使用量はキャラメリゼシート粉砕物中のショ糖とブドウ糖の合計100質量部に対する値である。
実施例1〜4はいずれもかためのカリカリした食感があり、非常によい食感であった。ショ糖100質量部に対しブドウ糖が45質量部未満である実施例3では、色つきが濃い結果となった。ショ糖100質量部に対しブドウ糖が85質量部を超える実施例4では色つきが薄かった。
【0021】
試験2 被覆用油脂配合量と食感との関係
【表3】
*被覆用油脂の使用量はキャラメリゼシート粉砕物中のショ糖とブドウ糖の合計100質量部に対する値である。
実施例5、1及び6はいずれも良好な食感と色調を示した。
キャラメリゼシート粉砕物中のショ糖とブドウ糖の合計100質量部に対する被覆用油脂の使用量が21質量部未満である比較例1では、カリカリ感が無い結果となった。キャラメリゼシート粉砕物中のショ糖とブドウ糖の合計100質量部に対する被覆用油脂の使用量が48質量部を超える比較例2では、カリカリ感が少なく、粒子表面が白濁した外観でベタ付いた食感となった。
油脂で被覆しなかった比較例3は、冷凍保管中にトッピングが潮解してしまい、色調及び食感の評価をすることができなかった。