(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357788
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】プリプレグ、金属張り積層板及び印刷配線板
(51)【国際特許分類】
B29B 11/16 20060101AFI20180709BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20180709BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20180709BHJP
B29K 101/10 20060101ALN20180709BHJP
【FI】
B29B11/16
B32B15/08 105Z
B32B15/08 J
H05K3/46 T
B29K101:10
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-22957(P2014-22957)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-147912(P2015-147912A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100193976
【弁理士】
【氏名又は名称】澤山 要介
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 猛
【審査官】
大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−172982(JP,A)
【文献】
特開2002−265646(JP,A)
【文献】
特開平04−251712(JP,A)
【文献】
特開平08−012776(JP,A)
【文献】
特開昭58−140240(JP,A)
【文献】
特開2014−198407(JP,A)
【文献】
特開昭59−202681(JP,A)
【文献】
実開昭58−105166(JP,U)
【文献】
特開昭52−138669(JP,A)
【文献】
特開2013−123907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08−15/14
C08J 5/04−5/10;5/24
B32B 1/00−43/00
H05K 1/00−1/02;3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質基材に熱硬化性樹脂ワニスを含浸し、加熱乾燥して得られるプリプレグであって、繊維質基材に熱硬化性樹脂ワニスを含浸する塗工工程において、繊維質基材に樹脂ワニスを含浸する際、基材表裏の樹脂付着量に差異が施されるものであり、前記繊維質基材の厚さが0.05mm以下であり、前記基材表裏の樹脂付着量が、厚さで10μm以下である、プリプレグ。
【請求項2】
前記樹脂付着量の差異が、厚さで5μm以上である、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプリプレグの両面に厚さの異なる金属箔を配置し、加熱加圧してなる金属張り積層板であって、プリプレグの樹脂付着量の多い側の面に厚い金属箔が配置される金属張り積層板。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプリプレグを使用する回路密度が表裏異なる印刷配線板であって、プリプレグの樹脂付着量の少ない側の面が回路密度の小さい側にされる印刷配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、金属張り積層板及び印刷配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に印刷配線板に使用されるプリプレグは、繊維質基材に熱硬化性樹脂を有機溶剤で希釈した熱硬化性樹脂ワニスを含浸した後、乾燥炉にて溶剤を揮発させ、熱硬化性樹脂をBステージまで硬化して製造される(例えば、特許文献1参照)。繊維質基材に熱硬化性樹脂ワニスを含浸させる塗工工程においては、含浸槽内の熱硬化性樹脂ワニス中に支持ロールにより搬送されてくる繊維質基材を浸入させ、その後、計量装置により付着量を調整している。また、金属張り積層板は、上記プリプレグを金属箔で挟み込み、Cステージ状態まで所定の時間、圧力と温度を掛け成形する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−334号公報
【特許文献2】特開2012−77250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の方法で製造された金属張り積層板において、プリプレグの表裏に厚さの異なる金属箔を配置した場合、薄箔側に凹反りが発生し、搬送性、加工性が著しく低下する課題がある。また、配置される金属箔の厚さが表裏対称の金属張り積層板であっても回路密度が表裏異なる場合、低密度回路側に凹反りが発生し、実装性が著しく低下する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、配置される金属箔の厚さや回路密度が表裏対称でない金属張り積層板の仕上がり反りを小さくすることのできるプリプレグ、金属張り積層板及び印刷配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次のものに関する。
1.繊維質基材に熱硬化性樹脂ワニスを含浸し、加熱乾燥して得られるプリプレグであって、繊維質基材に熱硬化性樹脂ワニスを含浸する塗工工程において、繊維質基材に樹脂ワニスを含浸する際、基材表裏の樹脂付着量に差異が施されるプリプレグ。
2.上記1に記載のプリプレグの両面に厚さの異なる金属箔を配置し、加熱加圧してなる金属張り積層板であって、プリプレグの樹脂付着量の
多い側の面に厚い金属箔が配置される金属張り積層板。
3.上記1に記載のプリプレグを使用する回路密度が表裏異なる印刷配線板であって、プリプレグの樹脂付着量の少ない側の面が回路密度の小さい側にされる印刷配線板。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、配置される金属箔の厚さや回路密度が表裏対称でない金属張り積層板の仕上がり反りを小さくすることのできるプリプレグ、金属張り積層板及び印刷配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明におけるプリプレグを製造するために使用される含浸装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明における金属張り積層板の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、塗工工程では、繊維質基材に熱硬化性樹脂ワニスを含浸、計量する際、基材が計量ロール間隙を通過するときの位置を変化させることで、基材表裏に付着する樹脂量に差異を設ける。基材の位置変更をするには、計量ロールにより近い位置に配置されるワニス槽内ロールの位置を変位させることが好ましい。表裏の樹脂付着量が異なるプリプレグは、プリプレグ単独で加熱加圧成形すると、樹脂付着量の多いほど熱収縮が大きいため、樹脂付着量の多い面を上側に凹反りとなる。樹脂付着量の差異は、プリプレグ外観の観点から成形後厚さで5μmから10μm程度が好ましい。
本発明は、上記プリプレグを使用し、その両面に厚さの異なる金属箔を加熱加圧してなる金属張り積層板の成形後の反りを小さくするものである。金属箔の厚さが表裏対称でない場合、金属箔の厚さが厚いほど加熱加圧工程で伸びが大きく、厚い金属箔を上側に凸反りとなる。したがって、プリプレグの樹脂付着量の
多い側の面に厚い金属箔を配置することで、成形後の反りが抑制できる。
【0010】
また、配線板の回路加工において、回路密度が表裏対称でない場合、回路密度が大きい側を上側に凸反りとなる。したがって、プリプレグの樹脂付着量の少ない側の面を回路密度の小さい側にすることで回路加工後の反りを抑制することができる。
【0011】
以下、本発明を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のプリプレグ含浸装置の概略図である。含浸装置1は、熱硬化性樹脂ワニス2を入れた含浸槽3、含浸槽3内の槽内ロール4および計量装置6(一例としてスクイズロールとする。)とを備える。搬送されてくる繊維質基材5を含浸槽3に浸入させ、槽内ロール4の下側を通過させ、熱硬化性樹脂ワニス2を含浸させた後、計量装置6で付着量を制御する。槽内ロール4は、任意に位置を調整できる構造とすることが好ましい。
【0012】
また、金属張り積層板構成を図面を使用して説明する。
図2は、繊維質基材7と、金属箔8を示し、熱硬化性樹脂9は、金属箔の厚さ、回路密度により樹脂付着量を調整できる。
【0013】
本発明に用いられる繊維質基材としては、特に限定されないが、無機繊維または有機繊維の織布、不織布等が挙げられる。基材強度、取り扱いの点から、ガラス繊維の織布が好ましく、繊維質基材の厚さは、10〜200μmが好ましい。
【0014】
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、トリアジン環を有する熱硬化性樹脂が適用できる。また、必要に応じて、水酸化アルミニウム、クレー等の無機充填材が添加される。さらに、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で他の化合物を配合することも可能である。
【0015】
前記熱硬化性樹脂、その他の成分は、溶剤に溶解または分散させてワニスとして使用される。使用される溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤が挙げられ、これらは何種類かを混用して用いてもよい。熱硬化性樹脂ワニス中の固形濃度は、50〜80質量%になるようにすることが好ましい。
【0016】
繊維質基材への熱硬化性樹脂ワニスの計量方法には、特に制限はないが、スクイズロール方式、カットバー方式が一般的である。このとき、繊維質基材への熱硬化性樹脂ワニスの付着量は、熱硬化性樹脂固形分と繊維質基材の総量に対して、樹脂固形分が40〜80質量%になるようにすることが好ましい。
【0017】
得られたプリプレグは、所定の寸法に裁断され、1枚または適宜任意枚数を積層して、その両面に金属箔を重ねて加熱加圧成形することにより金属張り積層板とすることができる。このときの条件としては、加熱温度が150〜250℃、圧力が2〜5MPaの条件とすることが好ましく、この条件に0.5〜2.0時間さらすことが好ましい。また、金属箔としては、銅箔、アルミ箔等が使用される。金属箔の厚さは、用途にもよるが3〜100μmのものが好適に用いられる。
【0018】
金属張り積層板の成形工程において、両側に配置する金属箔の厚さが異なる場合、成形後に反りが発生する。また、回路加工工程において表裏の回路密度が異なる場合においても反りが発生する。本発明においては、プリプレグ表裏の樹脂付着量を変化させることで反りの発生を抑制し、加工性、搬送性を改善することができる。
【実施例】
【0019】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
(実施例1)
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量480、臭素含有量21.5質量%)100質量部、ジシアンジアミド2.6質量部及び2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部をメチルエチルケトンに溶解して固形分60質量%の熱硬化性樹脂ワニスを作製した。また、
図1に示すような含浸装置を用いた。上記の樹脂硬化性樹脂ワニスを含浸槽に入れ、これに、厚さ0.05mmのガラスクロス織布を通過させて、熱硬化性樹脂付着量を上側5μm、下側10μmに調整し、ガラスクロス織布に含浸させ、次いで、熱硬化性樹脂ワニスが含浸されたガラスクロス織布を乾燥炉に通して樹脂分45質量%のプリプレグを製造した。得られたプリプレグの上側に18μm、下側に35μmの銅箔を配置し、この材料をステンレス製の厚さ1.5mmの鏡板にはさみ、これら構成品を15回重ね合わせ、プレス熱板間に挿入し、多段プレスにて温度185℃、圧力4MPaの条件下で85分間成形し、両面銅張積層板を作成した。
【0021】
(実施例2)
プリプレグの両側に18μmの銅箔を配置した以外は、実施例1に準じた。また、回路密度(残銅率)は上側30%、下側70%とした。
【0022】
(比較例1)
樹脂付着量を表裏8μmに調整したこと以外は、実施例1に準じた。
【0023】
(比較例2)
樹脂付着量を表裏8μmに調整したこと以外は、実施例2に準じた。
【0024】
実施例1、比較例1の銅張積層板および実施例2、比較例2の印刷配線板反り量を測定した。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1から明らかなように実施例1、2は、比較例1、2より、反り量が小さいことを確認した。
【符号の説明】
【0027】
1 含浸装置、2 熱硬化性樹脂ワニス、3 含浸槽、4 槽内ロール、5 繊維質基材、6 計量装置、7 繊維質基材、8 金属箔、9 熱硬化性樹脂。