特許第6357910号(P6357910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6357910光学用ポリウレタン組成物、薄膜成形体、光学フィルム、及び薄膜成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357910
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】光学用ポリウレタン組成物、薄膜成形体、光学フィルム、及び薄膜成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20180709BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20180709BHJP
   C08K 5/134 20060101ALI20180709BHJP
   C08K 5/372 20060101ALI20180709BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20180709BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20180709BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180709BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20180709BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   C08L75/04
   C08G18/10
   C08K5/134
   C08K5/372
   G02B1/04
   C09D175/04
   C09D7/12
   B32B27/40
   B05D7/24 302T
   B05D7/24 303E
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-130287(P2014-130287)
(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公開番号】特開2016-8271(P2016-8271A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】樋口 大地
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/049722(WO,A1)
【文献】 特開2012−255096(JP,A)
【文献】 特開2012−246410(JP,A)
【文献】 特開2012−131852(JP,A)
【文献】 特開2000−053856(JP,A)
【文献】 特開2006−193650(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0292049(US,A1)
【文献】 特開平07−062162(JP,A)
【文献】 特開平03−124092(JP,A)
【文献】 特開2011−236335(JP,A)
【文献】 特開平04−039382(JP,A)
【文献】 特表2002−524591(JP,A)
【文献】 米国特許第05962617(US,A)
【文献】 特開2011−231317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C08G 18/00 − 18/87
C08G 71/00 − 71/04
C09D 1/00 − 10/00
C09D 101/00 − 201/10
G02B 1/00 − 1/08
G02B 3/00 − 3/14
B05D 1/00 − 7/26
B32B 1/00 − 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネート(A)と脂肪族及び/又は脂環式ポリオール(B)とを反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)を含有する主剤と、イソシアネート基反応性化合物(D)を含有する硬化剤とを含み、前記主剤又は硬化剤中に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)及びチオエーテル系酸化防止剤(E2)とを含む光学用2液硬化型ポリウレタン組成物であって、
前記脂肪族及び/又は脂環式ポリオール(B)が、数平均分子量が300〜5000のポリエステルポリオール又は数平均分子量が500〜3500のポリエーテルポリオールを含むものであり、
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)が、[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであり、
前記チオエーテル系酸化防止剤(E2)が、ジラウリル−3,3−チオジプロピオネートを含むものであり、
前記光学用2液硬化型ポリウレタン組成物において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)の含有率が0.5〜3質量%であり、チオエーテル系酸化防止剤(E2)の含有率が0.1〜2質量%であることを特徴とする光学用2液硬化型ポリウレタン組成物。
【請求項2】
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)が[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンであり、且つ、前記チオエーテル系酸化防止剤(E2)がジラウリル−3,3−チオジプロピオネートである請求項1記載の光学用2液硬化型ポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)のイソシアネート当量が、100〜10000g/eqの範囲である請求項1又は2記載の光学用2液硬化型ポリウレタン組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の光学用2液硬化型ポリウレタン組成物硬化塗膜を含む薄膜成形体であって、前記硬化塗膜の膜厚が10〜2000μmの範囲であることを特徴とする薄膜成形体。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか一項に記載の光学用2液硬化型ポリウレタン組成物硬化塗膜を含む光学フィルムであって、前記硬化塗膜の膜厚が10〜200μmの範囲であり、且つ、JIS K7361−1に準拠して測定した全光線透過率が92.0%以上であることを特徴とする光学フィルム。
【請求項6】
請求項1〜3の何れか一項に記載の光学用2液硬化型ポリウレタン組成物を基材上に塗布して、常温条件下にて硬化、又は60〜180℃の温度条件で硬化させる硬化塗膜を含む薄膜成形体の製造方法であって、前記硬化塗膜が、厚10〜200μmのフィルム、又は膜厚200μmを超えて膜厚800μm以下のシートであることを特徴とする薄膜成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用ポリウレタン組成物、薄膜成形体、光学フィルム、及び薄膜成形体の製造方法に関する。
【0002】
更に詳しくは、本発明の光学用ポリウレタン組成物は、脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネートと、脂肪族及び/又は脂環式ポリオールとを反応させて得られる分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する主剤と、イソシアネート基に対して反応性を有する化合物を含有する硬化剤、及び特定のヒンダードフェノール系酸化防止剤と特定のチオエーテル系酸化防止剤を必須に配合して得ることができ、従来にない優れた耐熱黄変性、耐ブリード性、柔軟性、透明性などの性能を発現することができる。
【0003】
本発明の薄膜成形体は、前記光学用ポリウレタン組成物を用いて得られ、従来にない優れた耐熱黄変性、耐ブリード性、柔軟性、透明性などの性能を発現できるので、例えば、光学用部材(例えば光学フィルム、光学シートなど)、導光部材、光学用コーティング材料、繊維、電子・電機材料、食品パッケージ、化粧品パッケージ、加飾フィルムなどの広範囲の光学用途に有用である。
【背景技術】
【0004】
近年、市場が急速に拡大している液晶テレビ、携帯電話、ゲーム機などの電気・電機機器、通信機器、事務機器、娯楽機器、医療機器、生活機器などの多くの電子機器や部品には、液晶表示部位やスィッチング部位が設けてあり、その側面から入射した発光ダイオード光(LED光)を面状に伝達させるための導光フィルム(光学フィルム)や導光シート(光学シート)などの薄膜成形体が用いられている。
【0005】
これら薄膜成形体には、従来から、ポリカーボネート(PC)樹脂やポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂などが使用されてきた。しかしながら、これら樹脂は何れも硬すぎて薄膜に加工した際に柔軟性に乏しく、薄膜成形体としての用途が限定されるという問題があった。
【0006】
また、シリコン樹脂は、柔軟性に富み、耐熱黄変性にも優れるが、高価格であること、生産性や加工性に劣ること、などの問題があり、やはり、用途が限定されていた。
【0007】
一方、ポリウレタン樹脂は、柔軟性を活かして、例えば、フィルムやシートなどの薄膜成形体に加工されて用いられていた。
【0008】
しかしながら、ポリウレタン樹脂を用いて得られる薄膜成形体では、柔軟性、伸縮性、強靭性などの性能は比較的良好であるが、(1)添加剤として用いた酸化防止剤が成形体の表面にブリード(粉が噴いたり、表面がベトベトする現象)してしまい、ブロッキング(加工物の表面同士が密着して離れ難くなる現象)の原因になること、(2)耐熱黄変性に劣り、特にLEDなどの熱源に近接する部分が経時で黄変するため、高度な透明性が要求される光学用部材(例えば、光学フィルム、光学シート)などの光学用途には適用が困難であること、などの問題があった。
【0009】
かかる問題を改良するために、種々の提案がなされてきた。例えば、ポリオール成分を含むA液と、ポリイソシアネート成分を含むB液と、からなる2液型ウレタン樹脂組成物であって、前記ポリオール成分は、水酸基価が550〜675mgKOH/gである3官能以上のポリオール化合物を含有し、前記ポリイソシアネート成分は、脂環式ポリイソシアネートと、前記脂環式ポリイソシアネートのイソシアネート基残存プレポリマーを含有し、イソシアネート基含有率が26.0〜30.0質量%である、2液型ウレタン樹脂組成物、が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
前記特許文献1によれば、ポリオール成分とイソシアネート成分との相溶性に優れ、均一でガラス転移温度が高い硬化体を得ることが可能なウレタン樹脂組成物を提供することができるという。
【0011】
しかしながら、特許文献1のウレタン樹脂組成物は、耐熱黄変性に劣るため、LEDなどに用いた場合には使用中に発熱により黄変し易く、特に高い透明性が要求される光学用部材に用いられる薄膜成形体(例えば、光学フィルム、光学シートなど)への適用が困難であった。
【0012】
また、薄膜成形体の表面に成形体中から添加剤である酸化防止剤がブリードしてきて、薄膜成形体を積層した場合にブロッキングを起こしたり、あるいは、薄膜成形体と接する物品を汚染したりしていた。特に製品からの酸化防止剤のブリードは、安全・品質・美観(透明性、光沢、触感など)を重視する食品パッケージや化粧品パッケージなどの分野では重大な問題となっていた。
【0013】
また、ポリオール組成物とイソシアネート基含有化合物を含むポリウレタン組成物であって、前記ポリオール組成物が、水酸基含有共役ジエンポリマー水素化物、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化触媒を含むポリウレタン組成物、が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0014】
特許文献2によれば、耐黄変性、透明性、耐熱性、耐候性が改良されたポリウレタンを提供できるという。
【0015】
しかしながら、特許文献2も前記特許文献1と同様に、耐熱黄変性、耐ブリード性、透明性などに劣っており、解決には至っておらず実用上問題であった。
【0016】
以上のように、従来のポリウレタン樹脂を用いた薄膜成形体(例えばフィルムやシートなど)は、柔軟性、伸縮性、強靭性などの性能は比較的良好であるが、(1)薄膜成形体中の酸化防止剤が成形体の表面にブリードしてきてしまい、薄膜成形体の保管中にブロッキングなどのトラブルを起こすこと、(2)耐熱黄変性に劣り、特にLEDなどの熱源に近接する部分が経時で黄変するため、高度な透明性が要求される光学用部材(例えば光学フィルム、光学シート)などの光学用途には適用が困難であること、などの未だ解決すべき問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2012−131852号公報
【特許文献2】特開2011−231317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、従来にない優れた耐熱黄変性、耐ブリード性、柔軟性、透明性を有する光学用ポリウレタン組成物、それを用いた薄膜成形体、光学フィルム、及び薄膜成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を進めた結果、脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネートと脂肪族及び/又は脂環式ポリオールとを反応させて得られる分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する主剤と、イソシアネート基に対して反応性を有する化合物を含有する硬化剤、及び特定のヒンダードフェノール系酸化防止剤と特定のチオエーテル系酸化防止剤を必須に配合することにより、従来にない優れた耐熱黄変性、耐ブリード性、柔軟性、透明性などの性能を発現可能な光学用ポリウレタン組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0020】
即ち、本発明は、脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネート(A)と脂肪族及び/又は脂環式ポリオール(B)とを反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)を含有する主剤と、イソシアネート基反応性化合物(D)を含有する硬化剤、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)とチオエーテル系酸化防止剤(E2)とを含む2液硬化型ポリウレタン組成物であって、前記ポリウレタン組成物中に、[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルからなる群より選ばれる少なくとも1種のヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)0.5〜3質量%と、チオエーテル系酸化防止剤(E2)としてジラウリル−3,3−チオジプロピオネート0.1〜2質量%を配合することを特徴とする光学用ポリウレタン組成物に関するものである。
【0021】
本発明は、前記光学用ポリウレタン組成物を基材上に塗布して硬化させて得られる硬化塗膜であり、前記硬化塗膜の膜厚が10〜2000μmの範囲であることを特徴とする薄膜成形体に関するものである。
【0022】
本発明は、前記光学用ポリウレタン組成物を基材上に塗布して硬化させて得られる硬化塗膜であり、前記硬化塗膜の膜厚が10〜200μmの範囲であり、且つ、JIS K7361−1に準拠して測定した全光線透過率が92.0%以上であることを特徴とする光学フィルムに関するものである。
【0023】
本発明は、前記光学用ポリウレタン組成物を基材上に塗布して、常温条件下にて硬化、又は60〜180℃の温度条件で硬化させて得られる硬化塗膜であり、前記硬化塗膜の膜厚が10〜200μmのフィルム、又は200μmを超えて800μm以下のシートであることを特徴とする薄膜成形体の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光学用ポリウレタン組成物は、従来にない優れた耐熱黄変性、耐ブリード性、柔軟性、透明性などの性能を発現できるので、例えば光学用部材(例えば光学フィルム、光学シートなど)、導光部材、光学用コーティング材料、繊維、電子・電機材料、食品パッケージ、化粧品パッケージ、加飾フィルムなどの広範囲の光学用途に適した薄膜成形体に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<光学用ポリウレタン組成物>
先ず、本発明の光学用ポリウレタン組成物の必須の構成について、以下に説明する。
【0026】
(A)脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート
本発明の光学用ポリウレタン組成物は、脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネート(A)と脂肪族及び/又は脂環式ポリオール(B)とを反応させて得られる分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)(以下「イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)」と云う。)を含有する主剤と、イソシアネート基に対して反応性を有する化合物(D)(以下「イソシアネート基反応性化合物(D)」と云う。)を含有する硬化剤、及び特定のヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)と特定のチオエーテル系酸化防止剤(E2)を共に必須に配合して得ることができる。
【0027】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)は、前記ポリイソシアネート(A)と前記ポリオール(B)を公知の方法に従い反応させて得ることができ、その反応方法や反応条件などは、特に限定しない。
【0028】
尚、前記ポリイソシアネート(A)とは、分子中に2以上のイソシアネート基(以下、NCO基とも云う。)を有する化合物をいう。
【0029】
前記ポリイソシアネート(A)としては、公知の脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートの何れも用いることができる。
【0030】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0031】
前記脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0032】
これらポリイソシアネート(A)の中でも、前記ポリオール(B)との適度な反応性、及び作業性などの点から、好ましくは水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネートである。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明では、前記ポリイソシアネート(A)として、脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネートを用いることが必須であるが、前記ポリイソシアネートを用いずに、芳香族ポリイソシアネートのみを用いた場合には、初期の透明性及び黄色度が低下し、且つ耐熱黄変性が著しく悪化するため、本発明の目的を達成することが困難になる。
【0034】
尚、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、芳香族ポリイソシアネートを前記ポリイソシアネート(A)と併用してもよい。
【0035】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、公知のものであり、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(MDI;その4,4’体、2,4’体又は2,2’体、若しくはそれらの混合物、クルードMDI)、カルボジイミド変性MDI(変性MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネ−ト(TDI;その2,4体、又は2,6体、若しくはそれらの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0036】
(B)脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール
本発明で必須に用いる脂肪族ポリオールと脂環式ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、低分子量グリコールなどが挙げられる。
【0037】
前記ポリエステルポリオールは、通常、ポリカルボン酸とポリオールを原料にして製造される。
【0038】
前記ポリエステルポリオールの製造に使用できるポリカルボン酸としては、芳香族骨格を有さないポリカルボン酸であればよく、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ポリカルボン酸類;あるいは1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ポリカルボン酸類が挙げられる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0039】
本発明では、前記ポリカルボン酸の他にも、その誘導体を使用することも可能であり、例えば、メチルエステル体など低級エステル、酸無水物、酸ハロゲン化物などの反応性を有する誘導体が挙げられる。
【0040】
尚、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、前記芳香族骨格を有さないポリカルボン酸と共に、芳香族骨格を有するポリカルボン酸(即ち、芳香族ポリカルボン酸)を用いてもよい。
【0041】
前記芳香族ポリカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0042】
前記ポリエステルポリオールの製造に使用できるポリオールとしては、芳香族骨格を有さないポリオールであればよく、例えば、エチレングリコール(EG)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ポリオール類;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ポリオール類などが挙げられる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0043】
また、本発明では、前記ポリエステルポリオールの他にも、ラクトン(例えばε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトンなど)が開環付加重合したポリエステルポリオールなども使用できる。
【0044】
尚、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、前記芳香族骨格を有さないポリオールと共に、芳香族骨格を有するポリオールを併用してもよい。
【0045】
前記芳香族骨格を有するポリオールとしては、例えば、ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールAF、ビスフェノールSi2、及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ポリオール類が挙げられる。
【0046】
また、前記ポリエステルポリオールの製造原料として、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、しょ糖、アコニット糖等のアルコール類;あるいはアミン類なども使用できる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記ポリエステルポリオールには、上記以外のポリカルボン酸、ポリオール、ポリアミン等を併用して得られるポリエステルジオール、ポリアミドポリエステルジオールなども含まれる。
【0048】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量(以下「Mn」とも云う。)は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)の使用時の目標溶融粘度を考慮して設定することが望ましく、好ましくは300〜5000の範囲、より好ましくは500〜3500の範囲である。前記ポリエステルポリオールのMnがかかる範囲であるならば、反応を正常に制御でき、適度な溶融粘度のウレタンプレポリマーを得ることができる。
【0049】
また、前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレンプロピレングリコール(PEPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、変性ポリテトラメチレングリコール(PTXG)、あるいはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の少なくとも3個以上の水酸基を有する化合物を出発原料にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合して得られるポリ(オキシアルキレン)グリコール等が挙げられる。これらの中でも、ポリテトラメチレングリコール(PTMG、Mn=650〜2000のもの)、変性ポリテトラメチレングリコール(PTXG、Mn=800〜5000のもの)が好ましい。前記ポリエーテルポリオールは、直鎖、分岐、環状の何れの構造を有していてもよい。
【0050】
前記ポリエーテルポリオールのMnは、好ましくは500〜3500の範囲、より好ましくは600〜3000の範囲、更に好ましくは650〜2000の範囲である。前記ポリエーテルポリオールのMnがかかる範囲であるならば、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)の異常な粘度上昇が起こらず、適度な溶融粘度のウレタンプレポリマーを得ることができる。
【0051】
ポリテトラメチレングリコールなどの前記ポリエーテルポリオールにラクトン(例えばε−カプロラクトンなど)が開環付加重合したポリオールなども使用できる。
【0052】
また、前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸と脂肪族ポリオールとをエステル化反応して得られるポリオールなども使用することができる。具体的には、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のようなジオールと、ジメチルカーボネートやホスゲン等との反応生成物などが挙げられる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0053】
また、前記低分子量グリコールとしては、例えば、エチレングリコール(EG)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ポリオール類、あるいは1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環族ポリオール類、あるいはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の水酸基含有化合物などが挙げられ、これらの中でも1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコールが好ましい。前記低分子量グリコールは、直鎖、分岐、環状の何れの構造を有していてもよい。
【0054】
前記低分子量グリコールの分子量は、好ましくは50〜300の範囲であり、より好ましくは50〜200の範囲である。前記低分子量グリコールの分子量がかかる範囲であるならば、前記ポリオール(B)として併用した場合に、反応性の制御がより容易にでき、成形性(歩留まり、成形ムラ)がより良好になるので、好ましい。
【0055】
また、前記ポリオール(B)として、例えば、カプロラクトンモノマーの開環重合により得られるポリカプロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油系ポリオールなども使用できる。
【0056】
更に、前記ポリオール(B)と共に、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他のポリオールを使用してもよい。
【0057】
前記その他のポリオールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の少なくとも3個以上の水酸基を有する出発原料にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合して得られるポリ(オキシアルキレン)グリコール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール等のポリエーテルポリオール;あるいはアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸等の多価カルボン酸とエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オタンジオール,ネオペンチルグリコール、2,−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルポリオール;あるいはポリラクトンポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、又はポリブタジエンポリオール、ポリエーテルエステルポリオールの存在下で、アクリロニトリルやスチレン等のエチレン性不飽和単量体を重合させるポリマーポリオール等が挙げられる。
【0058】
また、ポリアミンも併用することができる。前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミンや、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、メチルジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、ノルボルネンジアミンなどが挙げられる。
【0059】
(C)イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー
次いで、本発明で用いるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)について、説明する。
【0060】
本発明の光学用ポリウレタン組成物では、前記脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネート(A)と前記脂肪族及び/又は脂環式ポリオール(B)とを常法に従い反応させて得られる分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)(以下「イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)」と云う。)を主剤として用いる。
【0061】
尚、本発明でいう「主剤」とは、組成物の合計量に対して50質量%を超える組成を云う。
【0062】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)は、前記ポリイソシアネート(A)の有するイソシアネート基(以下「NCO基」と云う。)が、前記ポリオール(B)の有する水酸基(以下「OH基」とも云う。)に対して、当量比で過剰となる条件にて、公知の方法により反応させ得ることができる。
【0063】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)の合成において、前記ポリイソシアネート(A)のイソシアネート当量(以下「NCO当量」と云う。)と前記ポリオール(B)の水酸基当量(以下「OH当量」と云う。)との比(即ち[NCO/OH当量比])としては、目標とする物性、製品品質、反応挙動などを考慮して設定すればよく、特に限定しないが、1.1/1.0〜20.0/1.0の範囲で行うことが好ましく、2.0/1.0〜13.0/1.0の範囲であることがより好ましい。
【0064】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)の合成方法としては、例えば、〔方法1〕反応容器中に仕込んだポリイソシアネート(A)に、水分を除去したポリオール(B)を滴下、分割、一括など適当な手段にて仕込み、前記ポリオール(B)の有する水酸基が実質的に無くなるまで反応させる方法、あるいは〔方法2〕反応容器中に仕込んだ水分を除去したポリオール(B)に、ポリイソシアネート(A)を滴下、分割、一括など適当な手段にて仕込み、前記ポリオール(B)の有する水酸基が実質的に無くなるまで反応させる方法、などを挙げることができる。
【0065】
反応中の発熱を穏やかに制御しながら安全且つ正常に反応を進行させるためには、滴下あるいは分割による仕込方法が、より好ましい。
【0066】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)の製造は、通常、無溶剤で行なうが、溶剤中で反応させ製造してもよい。溶剤中で反応させる場合には、反応を阻害しない溶剤を使用すればよく、その種類は特に限定しない。反応に使用した溶剤は、反応途中又は反応終了後に、減圧加熱や薄膜留去等の適当な方法により除去することが望ましい。
【0067】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)の反応条件(温度、時間、圧力など)は、反応挙動(安全性、安定性)や製品品質などを考慮して正常に制御できる範囲で設定すればよく、特に限定しない。通常は、反応温度50〜90℃で、反応時間2〜24時間の条件にて行うことが好ましい。圧力は、常圧、加圧、減圧の何れでもよい。
【0068】
反応方式は、例えば、バッチ、半連続、連続など、公知の反応方式を選択することができ、特に限定しない。
【0069】
また、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)を製造する際には、必要に応じてウレタン化触媒を使用することができる。前記触媒は、原料仕込工程、反応工程の任意の段階で適宜加えることができる。また、触媒の添加方法は、一括、分割、連続など特に限定しない。
【0070】
前記ウレタン化触媒としては、公知のものが使用でき、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジブチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の含窒素化合物;あるいはチタンテトラブトキシド、ジブチルスズオキシド、ジラウリン酸ジブチルスズ、2−エチルカプロン酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルカプロン酸亜鉛、グリコール酸モリブデン、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物;あるいは塩化鉄、塩化亜鉛等の無機化合物などが挙げられる。
【0071】
通常、反応は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、乾燥空気雰囲気下又は密閉条件下などの水分が混入しない条件下で行ってもよい。
【0072】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)のイソシアネート当量(以下「NCO当量」とも云う。)は、好ましくは100〜10000の範囲であり、より好ましくは200〜1000の範囲である。前記(C)のNCO当量がかかる範囲であるならば、異常な粘度上昇も起こらず、作業性に優れる。
【0073】
尚、本発明でいう「イソシアネート当量」(単位:g/eq)とは、後記したJIS K 7301に従い測定した値である。
【0074】
また、本発明では、ウレタンプレポリマーとして、市販品を使用してもよく、例えば、デュラネートTSA−100(商品名;旭化成ケミカルズ株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体と2エチルヘキシルアルコールのイソシアネートプレポリマー)の他に、TSS−100(同社製)、TSE−100(同社製)、TSR−100(同社製)、THA−100(同社製)、D101(同社製)、A201H(同社製)、TKA−100(同社製)などが挙げられる。
【0075】
(D)イソシアネート基反応性化合物
次いで、前記主剤に配合する硬化剤について、以下に説明する。
【0076】
前記硬化剤は、イソシアネート基に対して反応性を有する化合物(D)(以下「イソシアネート基反応性化合物(D)」)と云う。)を含有する。
【0077】
本発明では、前記イソシアネート基反応性化合物(D)として、前記ポリオールや前記ポリアミンなどの活性水素原子を有する化合物(以下「活性水素原子含有化合物」と云う。)を用いることができる。
【0078】
前記イソシアネート基反応性化合物(D)としては、例えば、脂肪族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミンなどの、芳香族骨格のない官能基を有する活性水素含有化合物が挙げられる。
【0079】
前記イソシアネート基反応性化合物(D)の中でも、脂肪族ポリオールが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの低分子量グリコールを選択することが、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)と前記チオエーテル系酸化防止剤(E2)との溶解性がより良好であり、濃度の高い溶液を作成できる点から、より好ましい。
【0080】
(E1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、(E2)チオエーテル系酸化防止剤
本発明の光学用ポリウレタン組成物は、特定のヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)と特定のチオエーテル系酸化防止剤(E2)の2種類を必須に組み合わせて配合することにより、初めて、従来にない優れた耐熱黄変性、耐ブリード性、柔軟性、透明性などの性能を発現することができる。
【0081】
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)としては、例えば、[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルなどが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]であり、より好ましくは、[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンである。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0082】
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)の市販品としては、例えば、スミライザーGA−80(商品名、住友化学株式会社製、[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)、イルガノックス245(商品名、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)])、イルガノックス1076(商品名、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルなどが挙げられる。
【0083】
前記酸化防止剤(E1)の配合量は、光学用ポリウレタン組成物中に0.5〜3質量%の範囲であり、好ましくは1〜2質量%の範囲である。前記(E1)の配合量がかかる範囲であるならば、分散安定性がより向上し、且つチオエーテル系酸化防止剤(E2)と互いに相乗的に作用し合い、優れた耐熱黄変性、耐ブリード性、透明性を発現できる。
【0084】
しかしながら、前記酸化防止剤(E1)の配合量が0.5質量%未満の場合には良好な耐熱黄変性を得ることが困難になり、本発明の目的を達成できない。また、前記酸化防止剤(E1)の配合量が3質量%を超える場合にも、良好な耐熱黄変性を得ることが困難になり、本発明の目的を達成できない。
【0085】
本発明で必須に用いるチオエーテル系酸化防止剤(E2)とは、ジラウリル−3,3−チオジプロピオネートである。
【0086】
本発明は、チオエーテル系酸化防止剤(E2)の中でも特にジラウリル−3,3−チオジプロピオネートを、前記特定のヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)と選択的に組み合わせて配合することにより、優れた効果を発現させることができる。
【0087】
前記チオエーテル系酸化防止剤(E2)の市販品としては、例えば、スミライザーTPL−R(商品名、住友化学株式会社製)、イルガノックスPS−800((商品名、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)などが挙げられる。
【0088】
前記チオエーテル系酸化防止剤(E2)の配合量は、光学用ポリウレタン組成物中に0.1〜2質量%の範囲であり、好ましくは0.2〜1質量%の範囲である。前記(E2)の配合量がかかる範囲であるならば、分散安定性がより向上し、且つ前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)と相乗的に作用し合い、優れた耐熱黄変性、耐ブリード性、透明性などの効果を発現することができる。
【0089】
しかしながら、前記酸化防止剤(E2)の配合量が0.1質量%未満の場合には、良好な耐熱黄変を得ることが困難になり、本発明の目的を達成できない。また、前記酸化防止剤(E2)の配合量が2質量%を超える場合にも、良好な耐熱黄変を得ることが困難になり、本発明の目的を達成できない。
【0090】
このように、本発明の光学用ポリウレタン組成物は、特定のヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)と特定のチオエーテル系酸化防止剤(E2)とを夫々特定の範囲の量で併用して配合した場合に、従来にない優れた耐熱黄変性、耐ブリード性、柔軟性、透明性などの効果を得ることできる。
【0091】
本発明の光学用ポリウレタン組成物は、上記のように調整した主剤と硬化剤を処方に従い配合し、混合することにより得ることができる。
【0092】
前記主剤と硬化剤の配合比、即ち〔主剤であるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)が有するNCO基の全モル数(α)〕/〔硬化剤であるイソシアネート基反応性化合物(D)が有するNCO反応性基(即ち、OH基+NH基)の合計モル数(β)〕としては、好ましくはβ/α=1/0.5〜1/1.2の範囲であり、より好ましくは1/0.6〜1/1.1の範囲である。
【0093】
前記主剤と硬化剤の配合比〔(β)/(α)〕がかかる範囲であるならば、良好な離型性を有する硬化物を得ることができる。
【0094】
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)単独使用、あるいは前記チオエーテル系酸化防止剤(E2)単独使用の場合よりも、本発明の如く、前記(E1)と(E2)を併用する場合の方が、耐熱黄変性、耐ブリード性、柔軟性、透明性など点で格段に優れた効果を得ることができる。
【0095】
通常、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)とチオエーテル系酸化防止剤(E2)を溶解させた前記硬化剤と前記主剤とは、別々に貯蔵しておき、使用時に前記硬化剤又は前記主剤に必要量を配合して混合して成形を行うことが好ましい。
【0096】
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)とチオエーテル系酸化防止剤(E2)を薄膜成形体中に均一に含有させるためには、前記光学用ポリウレタン組成物の原料となる前記ポリオール(B)や、前記ウレタンプレポリマー(C)、必要に応じて使用される可塑剤などの添加剤に、予め溶解・混合・分散等させた状態で薄膜成形体の製造時に用いることが好ましい。
【0097】
本発明の光学用ポリウレタン組成物には、上記した原料以外にも、各種添加剤を本発明の目的を逸脱しない範囲内で、製造工程の何れの段階においても用いることができる。
【0098】
かかる添加剤としては、例えば、整泡剤、酸化防止剤、脱泡剤、砥粒、充填剤、顔料、染料、着色剤、増粘剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、粘着付与剤、硬化触媒、安定剤、シランカップリング剤、ワックス等の公知のものが使用できる。また、必要に応じて、ブレンド用樹脂として、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜、選択して使用することができる。尚、前記添加剤はほんの一例であって、本発明の目的を阻害しない限り、特にその種類及び使用量を限定するものではない。
【0099】
前記粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペン樹脂や、石油樹脂としてC5系の脂肪族樹脂、C9系の芳香族樹脂、およびC5系とC9系の共重合樹脂等を使用することができる。
【0100】
前記可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、トリオクチルホスフェート、エポキシ系可塑剤、トルエン−スルホアミド、クロロパラフィン、アジピン酸エステル、ヒマシ油等を使用することができる。メチルアシッドホスフェート(AP−1)、アクリル系表面調整剤(BYK−361N)などが挙げられる。
【0101】
前記安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール化合物、硫黄化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ヒンダードアミン化合物等を使用することができる。
【0102】
前記充填材としては、例えば、ケイ酸誘導体、タルク、金属粉、炭酸カルシウム、クレー、カーボンブラック等を使用することができる。
【0103】
<薄膜成形体、光学フィルム>
本発明の薄膜成形体は、前記光学用ポリウレタン組成物を用いて得られ、従来にない優れた耐熱黄変性、耐ブリード性、柔軟性、透明性などの性能を有する。
【0104】
前記薄膜成形体としては、例えば、光学用部材(例えば光学フィルム、光学シートなど)、導光部材、光学用コーティング材料、繊維、電子・電機材料、食品パッケージ、化粧品パッケージ、加飾フィルム、塗膜など、種々の形態が挙げられる。
【0105】
本発明の薄膜成形体は、前記光学用ポリウレタン組成物を基材上に塗布して硬化させて得られる硬化塗膜であり、前記硬化塗膜の膜厚は、2000μm以下であり、好ましくは10〜2000μmの範囲、より好ましくは10〜1000μmの範囲、更に好ましくは10〜800μmの範囲である。
【0106】
尚、本発明では、日本国内で一般に呼称されている基準に従い、厚さが200μm以下の部材を「フィルム」と定義し、200μmを超える部材を「シート」と定義する。
【0107】
本発明の光学フィルムは、前記光学用ポリウレタン組成物を基材に塗布して硬化させて得られる硬化塗膜であり、前記硬化塗膜の膜厚が、好ましくは10〜200μmの範囲である。
【0108】
更に、本発明の光学フィルムは、JIS K7361−1に準拠して測定した全光線透過率が92.0%以上であるので、光透過性に優れており、特に導光フィルムなどの光学用途に好適に使用できる。
【0109】
<薄膜成形体の製造方法>
本発明の薄膜成形体の製造方法としては、例えば、本発明の光学用ポリウレタン組成物を離型基材上に塗布して、常温条件下にて硬化あるいは加熱条件下(好ましくは60〜180℃の範囲)にて硬化させて得られる硬化塗膜であり、前記硬化塗膜の膜厚が、20000μm以下、好ましくは10〜2000μmの範囲、より好ましくは10〜1000μmの範囲、更に好ましくは10〜800μmの範囲の薄膜成形体(例えば、フィルム、シート、塗膜などの硬化物)を得る方法などが挙げられる。
【0110】
前記基材としては、例えば、金属(板、箔など)、プラスチック(板、シート、フィルムなど)、紙(離型紙など)、ガラス、陶器、木版(化粧版など)、セラミック、布などが挙げられ、特に限定しない。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例により、更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0112】
また、本発明では、特に断りのない限り、「部」は「質量部」であり、「%」は「質量%」である。
【0113】
尚、本発明で用いた測定方法及び評価方法は、以下の通りである。
【0114】
〔イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)のイソシアネート当量の測定方法〕
本発明で用いるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C)のイソシアネート当量(単位:g/eq)は、JIS K 7301に従い測定した値である。具体的には、得られたウレタンプレポリマーの試料を三角フラスコに精秤して、乾燥トルエンで溶解してジ−n−ブチルアミン溶液10mlを加えた後、均一にしてから静置し、0.5規定塩酸の標準溶液でブロムクレゾールグリーンを指示薬として用いて中和滴定にて定量した。
【0115】
〔薄膜成形体の作製方法〕
実施例及び比較例で得られたポリウレタン組成物を直ちに80℃に予熱しておいた所定の形状の金型に注入した。注入後、そのまま、2時間放置し、成形品を取り出し、厚み2mmの薄膜成形体を得た。
【0116】
〔薄膜成形体の初期黄色度(YI)の評価方法と判定基準〕
実施例及び比較例で得られた薄膜成形体の厚み方向のイエローインデックス(YI)をJIS Z8722に準拠して多光源分光測色計(スガ試験機株式会社製)により測定し、下記の基準に従い評価した。
初期黄色度の判定基準
○:厚み方向のYIが0.7以下の場合、初期黄色度に優れる。
×:厚み方向のYIが0.7を超える場合、初期黄色度に劣る。
【0117】
〔薄膜成形体の耐熱黄変性の評価方法と判定基準〕
前記で作成した薄膜成形体を乾燥機中で120℃×96時間暴露し、暴露後の黄色度(イエローインデックス:YI)をJIS Z8722に準拠して多光源分光測色計(スガ試験機株式会社製)により測定し、下記の基準に従い評価した。
耐熱黄変性の判定基準
○:厚み方向のYIが1.0以下の場合、耐熱黄変性に優れる。
×:厚み方向のYIが1.0を超える場合、耐熱黄変性に劣る。
【0118】
〔薄膜成形体の耐ブリード性の評価方法と判定基準〕
前記で作成した薄膜成形体を23℃×相対湿度50%に調整した恒温恒湿室に14日間放置した後、薄膜成形体の表面を目視と指触で確認し、下記の基準に従い評価した。
耐ブリード性の判定基準
○:ブリードがない場合、耐ブリード性に優れる。
×:ブリードがある場合、耐ブリード性に劣る。
【0119】
〔薄膜成形体の透明性の評価方法と判定基準〕
前記で作成した薄膜成形体の全光線透過率(%)を日本電色工業株式会社製NDH−2000により、JIS K7361−1に準拠して測定し下記の基準に従い評価した。
透明性の判定基準
○:全光線透過率が91.0%以上である場合、透明性に優れる。
×:全光線透過率が91.0%未満である場合、透明性に劣る。
【0120】
〔薄膜成形体の柔軟性の評価方法と判定基準〕
前記で作成したフィルムの柔軟性は、JIS A硬度で判断した。尚、前記フィルムが柔軟性に富みJIS A硬度では測定できない場合は、ASKER C硬度にて測定して、その値を記載した。
柔軟性の判定基準
○:JIS A硬度が98以下である場合、柔軟性に優れる。
×:JIS A硬度が98を超える場合、柔軟性に劣る。
【0121】
〔合成例1〕
≪イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C1)の合成≫
反応容器に、脂肪族ポリオール(B)として、予め50℃に加温して融解しておいたポリオキシテトラメチレングリコール(商品名、PTMG−1000、三菱化学株式会社製、数平均分子量(Mn)1000のもの。)114部を入れて攪拌を開始した。
次いで、脂環式ポリイソシアネート(A)として、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下「水添MDI」と略す。)を100部加え、発熱に注意しながら内温を85℃に上昇させた後、温度を保ちながら3時間攪拌して、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(C1)(イソシアネート当量400の水添MDIプレポリマー。)を得た。
【0122】
〔実施例1〕
合成例1で得たウレタンプレポリマー(C1)100部に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)としてスミライザーGA−80(商品名、住友化学株式会社製)を1.0部と、チオエーテル系酸化防止剤(E2)としてスミライザーTPL−R(商品名、住友化学株式会社製)0.4部、及び耐候安定剤としてサノールLS−765(商品名、三共株式会社製)0.5部、ウレタン化触媒ネオスタンU−100(商品名、日東化成株式会社製)0.01部を配合して、撹拌しながら内温80℃で溶解混合させた。
次いで、硬化剤としてイソシアネート基反応性化合物(D1)(1,4ブタンジオール/トリメチロールプロパン=4/6質量比の混合物)10.4部を加えて混合攪拌して、本発明の光学用ポリウレタン組成物(X1)を調製した後、直ちに80℃に予熱しておいた所定の形状の金型に注入した。注入後、そのまま、2時間放置し、成形品を取り出し、厚み2mmの薄膜成形体(P1)を得た。
前記光学用ポリウレタン組成物(X1)を用いて得た本発明の薄膜成形体(P1)は、優れた耐熱黄変性、耐ブリード性、透明性、及び適度な柔軟性(表面硬度)を有していた。実施例1の評価結果を第1表にまとめた。
【0123】
〔実施例2及び3〕
実施例2及び3は、使用するウレタンプレポリマー(C)、イソシアネート基反応性化合物(D)、酸化防止剤などの種類と使用量を第1表に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作にて本発明の光学用ポリウレタン組成物(X2)と(X3)を調製して、それを用いて本発明の薄膜成形体(P2)と(P3)を得た。
【0124】
前記薄膜成形体(P2)と(P3)は、何れも優れた耐熱黄変性、耐ブリード性、透明性、及び適度な柔軟性(表面硬度)を有していた。実施例2と3の評価結果を第1表にまとめた。
【0125】
〔実施例4〜6〕
実施例4〜6は、ウレタンプレポリマー(C2)としてデュラネートTSA−100(商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体と2エチルヘキシルアルコールとの反応生成物であるイソシアネートプレポリマー)を用いて、イソシアネート基反応性化合物(D2)としてPTXG−1800(商品名、旭化成せんい株式会社製、テトラハイドロフランとネオペンチルグリコールとの共重合体、数平均分子量800〜5000)を用いた以外は、酸化防止剤などの種類と使用量を第1表に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作にて本発明の光学用ポリウレタン組成物(X4)〜(X6)を調製して、それを用いて本発明の薄膜成形体(P4)〜(P6)を得た。
前記薄膜成形体(P4)〜(P6)は、何れも優れた耐熱黄変性、耐ブリード性、透明性、及び適度な柔軟性(表面硬度)を有していた。実施例4〜6の評価結果を第1表にまとめた。
【0126】
尚、実施例2、4、5は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(E1)として、2種類の異なる酸化防止剤を用いて行った。
【0127】
〔比較例1〜6〕
比較例1〜6は、使用するウレタンプレポリマー(C)、イソシアネート基反応性化合物(D)、酸化防止剤などの種類と使用量を第2表に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作にて行い、夫々ポリウレタン組成物(X7)〜(X12)を調製して、それを用いて薄膜成形体(P7)〜(P12)を得た。
比較例1で得た薄膜成形体(P7)は、耐ブリード性に劣り、実用性に乏しかった。
比較例2〜6で得た薄膜成形体(P8)〜(P12)は、いずれも耐熱黄変性に劣り、実用性に乏しかった。
比較例1〜6の評価結果を第2表にまとめた。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
尚、第1表及び第2表中の略号は、下記名称を意味する。
【0131】
水添MDI:4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
PTMG−1000:商品名、三菱化学株式会社製、ポリオキシテトラメチレングリコール、数平均分子量1000
デュラネートTSA−100:商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体と2エチルヘキシルアルコールとの反応生成物であるイソシアネートプレポリマー
BG:1,4−ブタンジオール
TMP:トリメチロールプロパン
PTXG−1800:商品名、旭化成せんい株式会社製、テトラハイドロフランとネオペンチルグリコールとの共重合体、数平均分子量800〜5000
スミライザーGA−80:商品名、住友化学株式会社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)
Irg245:商品名、イルガノックス245、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)
Irg1076:商品名、イルガノックス1076、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル
スミライザーTPL−R:商品名、住友化学株式会社製、チオエーテル系酸化防止剤、ジラウリル−3,3−チオジプロピオネート
アデカスタブAO−503:商品名、株式会社ADEKA製、チオエーテル系酸化防止剤、ジ(トリデシル)−3,3’−チオジプロピオネート
PS802FF:商品名、揚州Sunchem株式会社製、チオエーテル系酸化防止剤、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート
スミライザーTP−D:商品名、住友化学株式会社製、チオエーテル系酸化防止剤、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)
スミライザーGP:商品名、住友化学株式会社製、リン系酸化防止剤
サノールLS−765:商品名、三共株式会社製、ヒンダードアミン系光安定剤、デカン二酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)
ネオスタンU−100:商品名、日東化成株式会社製、スズ系触媒)
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の光学用ポリウレタン組成物は、従来にない優れた耐熱黄変性、耐ブリード性、柔軟性、透明性などの性能を発現できるので、例えば光学用部材(例えば光学フィルム、光学シートなど)、導光部材、光学用コーティング材料、繊維、電子・電機材料、食品パッケージ、化粧品パッケージ、加飾フィルムなどの広範囲の光学用途に適した薄膜成形体に有用である。